以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る絶縁検知装置を含む車両の充電システムのブロック図である。本例の絶縁検知装置は、バッテリに接続され、強電回路の地絡を検知する装置である。なお、絶縁検知装置は、車両内の強電回路に限らず、他の強電回路に接続されてもよい。また、以下では車両を電気自動車として説明するが、車両は電気自動車に限らず、バッテリを備えたハイブリッド車両等の他の車両であってもよい。
図1に示すように、充電システムは、交流電源(商用電源)1と、スイッチ回路2と、モータ3と、コンバータ回路4と、バッテリ5と、絶縁検知装置10とを備えている。
交流電源1は、例えば家庭用の系統電力であり、車両の外部電源である。交流電源1は、充電ケーブルを介して車両に接続される。スイッチ回路2は、交流電源1から出力される交流電力を昇圧して、コンバータ回路4に出力する回路である。スイッチ回路2は、充電ケーブルを介して交流電源1に接続され、配線によりモータ3に接続されている。スイッチ回路2は、トランジスタ等のスイッチング素子を少なくとも有している。
モータ3は、車両の駆動源である。力行時には、モータ3はバッテリ5の電力を用いて、車両の駆動輪を回転させるように駆動する。また回生時には、モータ3はバッテリ5に対して電力を供給する。
コンバータ回路4は、直流と交流との間で電力を変換するための回路である。モータ3の力行時には、コンバータ回路4は、バッテリ5の出力電力を交流電力に変換して、モータ3に出力する。モータ3の回生時には、モータ3の回転により発生した交流電力を直流電力に変換して、バッテリ5に出力する。また、交流電源1の電力によりバッテリ5を充電する場合には、コンバータ回路4は、スイッチ回路2から出力される交流電力を直流電力に変換して、バッテリ5に出力する。
バッテリ5は、リチウムイオン電池などの複数の二次電池(セル電池)を直列又は並列に接続して構成されており、充放電可能な電池である。なお、モータ3の回生によりバッテリ5を充電する場合には、モータ3が交流電源となり、充電電力がモータ3からコンバータ回路4を介してバッテリ1に供給される。また、交流電源1の電力でバッテリ5を充電する場合には、交流電源1が交流電源のとなり、充電電力がコンバータ回路4を介してバッテリ1に供給される。
絶縁検知装置10はバッテリ5の負極側に接続されている。絶縁検知装置10は、バッテリ5を含む強電回路の絶縁状態を検知する。
次に、図2を用いて、絶縁検知装置10の構成を説明する。図2は、バッテリ5、絶縁検知装置10、及び充電制御用の電子制御ユニット50(ECU)のブロック図である。
絶縁検知装置10は、地絡検知回路20と、スイッチ(SW)部31、IR電圧検出部32、比較器33、制御モード判定部34、NOT回路35、39、フリップフロップ36、診断モード設定部37、セレクトスイッチ部38、及びスイッチ故障診断部40を有している。
地絡検知回路20は、カップリングコンデンサ21と、抵抗22、23と、増幅器24、25と、CPU26とを有している。地絡検知回路20のアース線は、車両のボディに接続されている。カップリングコンデンサ21は、バッテリ5を含む強電回路と地絡検知回路20の弱電回路との間で、直流成分の絶縁を確保するための回路素子である。カップリングコンデンサ21の一端は、SW部31を介してバッテリ5の負極側に接続されている。カップリングコンデンサ21の他端は、地絡検知回路20の測定点Aに接続されている。
抵抗22はカップリングコンデンサ21と増幅器24との間に接続されている。抵抗23はカップリングコンデンサ21と増幅器25との間に接続されている。増幅器24は、CPU26から出力されるパルス信号を増幅する。増幅器25は、抵抗23を介して印加される入力電圧を増幅する。増幅器24はCPU26の出力側に接続され、増幅器25はCPU26の入力側に接続されている。
CPU26は、パルス発信器と、A/D変換器と、地絡検知部を有しつつ、地絡の有無を検知するため制御回路である。CPU26は、パルス発信器によりパルス信号を出力する。パルス信号は、増幅器24で増幅されて、測定点Aに入力される。CPU26は、パルス信号の出力に対する応答電圧として、増幅器25からCPU26に入力される電圧をA/D変換器を用いて測定する。
バッテリ5に地絡が発生していない場合には、CPU26から出力されたパルス信号は、主に、測定点A及び抵抗23を流れて、増幅器25を介してCPU26のA/D変換器に入力される。そのため、測定点Aの電圧は高く、A/D変換器で測定される電圧振幅も高くなる。一方、バッテリ5に地絡が発生している場合には、CPU26から出力されたパルス信号は、測定点Aに入力され、カップリングコンデンサ21を通り、バッテリ5側に流れてしまう。そのため、測定点Aの電圧は、地絡の発生していない時の電圧と比較して、低くなり、A/D変換器で測定される電圧振幅も低くなる。
SW部31は、NOT回路39の出力の基づき、バッテリ5の負極側と地絡検知回路20との間の電気的な導通及び遮断を切り替えるスイッチである。IR電圧検出部32は、カップリングコンデンサ21の両端電圧を検出するためのセンサである。カップリングコンデンサ21の両端への印加電圧のうち、測定点A側の端子に印加される電圧は弱電回路の電圧であり、SW部31側の端子に印加される電圧は強電回路の電圧である。そのため、IR電圧検出部32は、バッテリ5を含む強電回路と、地絡検知回路20の弱電回路との間の電圧を検出していることになる。そして、IR電圧検出部32は、カップリングコンデンサ21の両端電圧が高いほど検出値を高くし、当該検出値を比較器33に出力する。
比較器33は、IR電圧検出部32で検出された検出電圧と、予め設定されている基準電圧とを比較する。基準電圧は、強電回路に流れる交流ノイズを検出するための電圧閾値であって、予め設定されている。比較器33は、IR電圧検出部32の検出電圧が基準電圧以上である場合には、論理値「1」をフリップフロップ36のセット端子(S端子)に出力する。また、比較器33は、IR電圧検出部32の検出電圧が基準電圧未満である場合には、論理値「0」をフリップフロップ36のセット端子(S端子)に出力する。
制御モード判定部34は、ECU50から送信されるモード信号に基づき、バッテリ5の制御モードを判定する。制御モードには、バッテリ5を充電する充電モードと、バッテリ5の充電を停止している停止モードがある。
そして、制御モード判定部34は、制御モードが充電モードである場合には、論理値「1」をNOT回路35に出力する。また、制御モード判定部34は、充電モード以外の制御モード(停止モード)のときに、論理値「0」をNOT回路35に出力する。NOT回路35は、制御モード判定部34からの入力値を反転させて、フリップフロップ36のリセット端子(R端子)に出力する。すなわち、制御モードが充電モードのとき、フリップフロップ36のリセット端子に入力される論理値は「0」となる。制御モードが停止モードのときは、フリップフロップ36のリセット端子に入力される論理値「1」になる。
フリップフロップ36は、比較器33の出力及び制御モード判定部34の出力に基づき、SW部31のオフ状態を保持するための論理回路である。フリップフロップ36のセット端子に入力される論理値が「1」、かつ、フリップフロップ36のリセット端子に入力される論理値が「0」である場合には、フリップフロップ36は、出力端子(Q端子)から論理値「1」を出力する。また、フリップフロップ36は、出力端子(Q端子)から論理値「1」を出力した後、リセット端子に入力される論理値が「0」から「1」に切り替わらない限り、Q端子からの論理値を、「1」の状態で保持する。そして、リセット端子に入力される論理値が「0」から「1」に切り替わった場合には、フリップフロップ36は、Q端子から論理値「0」を出力する。フリップフロップ36の出力端子(Q端子)の論理値「0」の状態で、フリップフロップ36のセット端子に入力される論理値が「0」である場合には、フリップフロップ36は、出力端子(Q端子)から論理値「0」を出力する。
診断モード設定部37は、スイッチ故障診断部40から出力される診断信号に基づき、絶縁検知装置10を診断モードで動作させる。後述するように、診断モードは、SW部31のショート故障を診断するためのモードである。診断モード設定部37は、診断信号を受信すると、SW部31をオフ状態にするための指令値(SWオフ指令値)をセレクトスイッチ(SW)部38に出力する。
セレクトスイッチ(SW)部38は、フリップフロップ36の出力に基づき、SW部31のオン、オフを切り替えるための論理値を、NOT回路39に出力する。また、診断モード設定部37からSWオフ指令値がセレクトスイッチ部38に入力された場合には、セレクトスイッチ部38は、オフ指令値の信号を選択して、論理値「1」をNOT回路39に出力する。一方、診断モード設定部37からオフ指令値がセレクトスイッチ部38に入力されてない場合には、セレクトスイッチ部38は、フリップフロップ36からの出力信号を選択する。そして、フリップフロップ36の論理値が「1」である場合には、セレクトスイッチ部38は論理値「1」をNOT回路39に出力し、フリップフロップ36の論理値が「0」である場合には、セレクトスイッチ部38は論理値「0」をNOT回路39に出力する。
NOT回路39は、セレクトスイッチ部38からの入力値を反転させてSW部31に出力する。そして、NOT回路39から出力される論理値が「0」であるときには、SW部31はオフ状態になり、論理値が「1」であるときには、SW部31はオン状態になる。
スイッチ(SW)故障診断部40は、SW部31の故障を診断する。スイッチ故障診断部40で診断されるSW部31の故障は、SW部31のショート故障(オン固着)である。ショート故障を診断する際には、スイッチ故障診断部40は、SW部31をオフ状態にするための指令値を、診断モード設定部37等を介して、NOT回路39の入力側に出力する。そして、スイッチ故障診断部40は、IR電圧検出部32の検出電圧から、SW部31が、指令値通り、オフ状態になっているか否かを判定する。
なお、スイッチ故障診断部40は、SW部31のショート故障に限らず、SW部31のオープン故障を診断してもよく、SW部31のショート故障及びオープン故障を両方、診断してもよい。オープン故障を診断する際には、スイッチ故障診断部40は、SW部31をオン状態にするための指令値を、診断モード設定部37等を介して、NOT回路39の入力側に出力する。そして、スイッチ故障診断部40は、IR電圧検出部32の検出電圧から、SW部31が、指令値通り、オン状態になっているか否かを判定する。
ECU50は、バッテリ5の状態を管理しつつ、スイッチ回路2及びコンバータ回路4を制御することで、バッテリ5の充電及び放電を制御するためのコントローラである。またECU50は、スイッチ故障診断部40から診断開始信号を受信した場合、又は、スイッチ故障診断部40から充電禁止信号を受信した場合には、バッテリ5の充電を禁止する。診断開始信号は、スイッチ故障診断部40によりSW部31の故障の診断が実行されることを示す信号である。充電禁止信号は、SW部31の故障により、バッテリ5の充電を禁止することを示す信号である。
次に、絶縁検知装置10の動作について、図2を用いて説明する。まず、SW部31の故障を診断する際の動作について説明する。
スイッチ故障診断部40は、SW部31の故障を診断する際には、診断信号(診断開始信号)を診断モード設定部37及びECU50に出力する。ECU50は、診断信号を受信すると、バッテリ5の充電を停止する。
すなわち、ECU50は、SW部31の故障診断中、交流電源1の電力によるバッテリ5の充電を禁止する。これにより、バッテリ5の充電中の交流ノイズが、カップリングコンデンサ21に流れることで、スイッチ故障診断部40が、SW部31の状態を誤って判定することを防ぐ。
また、スイッチ故障診断部40は、診断信号を受信すると、SWオフ指令値をセレクトスイッチ部38に出力し、SW部31には、NOT回路39から論理値「0」が入力される。
そして、SWオフ指令値がセレクトスイッチ部38に入力しているときに、IR電圧検出部32は、カップリングコンデンサ21の電圧を検出する。SW部31が正常である場合には、SW部31は指令値どおり、オフ状態になり、カップリングコンデンサ21の両端電圧は、一定値(ゼロ、又は、カップリングコンデンサ21に蓄積された電荷による電圧値)になる。
一方、SW部31にショート故障が発生している場合には、SW部31はオン状態になり、カップリングコンデンサ21の一端は、バッテリ5の負極側と電気的に導通する。そのため、SW部31の正常時におけるカップリングコンデンサ21の両端電圧と比較して、カップリングコンデンサ21の両端電圧は、高くなり、不安定になる。
IR電圧検出部32は、カップリングコンデンサ21の両端電圧の検出電圧をスイッチ故障診断部40に出力する。スイッチ故障診断部40は、SW部31の入力値がOFF指令値(論理値「0」)の時に、IR電圧検出部32の検出電圧が閾値電圧以下である場合、または、IR電圧検出部32の検出電圧の変動幅が所定値以下である場合には、SW部31が正常であると判定する。閾値電圧は、SW部31が正常であるときのカップリングコンデンサ21の両端電圧を示し、予め設定される閾値である。また所定値は、SW部31が正常であるときのカップリングコンデンサ21の両端電圧の変動幅を示し、予め設定される電圧幅の閾値である。
スイッチ故障診断部40は、SW部31が正常であると判定した場合には、診断制御の終了を示す診断信号を、診断モード設定部37及びECU50に出力する。また、スイッチ故障診断部40は、バッテリ5の充電を許可するための信号(充電許可信号)をECUに出力する。
診断モード設定部37は、診断終了を示す診断信号を受信した場合には、診断モードの設定を解除しつつ、SWオフ指令値の出力を停止する。
一方、スイッチ故障診断部40は、SW部31の入力値がOFF指令値(論理値「0」)の時に、IR電圧検出部32の検出電圧が閾値電圧より高い場合、または、IR電圧検出部32の検出電圧の変動幅が所定値より大きい場合には、SW部31にショート故障が発生している、と判定する。スイッチ故障診断部40は、SW部31がショート故障であると判定した場合には、診断終了を示す診断信号を、診断モード設定部37及びECU50に出力する。また、スイッチ故障診断部40は、バッテリ5の充電を禁止するための信号(充電禁止信号)をECU50に出力する。
そして、ECU50は、充電禁止信号を受信すると、バッテリ5の充電を禁止する。これにより、SW部31の故障により絶縁の検知ができない場合には、バッテリ5の充電が禁止されるため、充電システムの安全性を高めることができる。
診断モードから通常モードに切り替わる場合において、SW部31の指令値、SW部31の状態、IR電圧検出部32の検出電圧、及び充電許可信号(充電許可フラグ)の時間的な推移を、図3及び図4を用いて説明する。図3は、SW部31の正常時の推移を示し、図4は、SW部31のショート故障時の推移を示す。なお、図3及び図4の横軸は時間を示しており、時刻(t0)より前の時間は診断モードの時間帯を示し、時刻(t0)以降の時間は通常モードの時間を示す。
SW部31の正常時では、SW指令値のオフ指令値に伴い、SW部31の状態はオフ状態になる。そして、カップリングコンデンサ21の両端電圧は一定値(VL)で推移する。スイッチ故障診断部40は、時刻(t0)までの時間帯で、IR電圧検出部32の検出電圧が一定値(VL)であることを確認して、SW部31が正常であると判定する。そして、スイッチ故障診断部40は、時刻(t0)の時点で、診断モードから通常モードに移行する。
通常モードに切り替わると、時刻t1の時点で、スイッチ故障診断部40は充電許可信号(充電許可フラグ:ON)をECU50に出力する。そして、ECU50は、制御モード判定部34にモード信号を出力することで、SW部31には、オン状態の指令値(論理値「1」)が入力される。そして、SW部31はオン状態になる。
SW部31のショート故障時では、SW指令値のオフ指令値がSW部31に入力されても、SW部31の状態はオン状態のままである。そのため、カップリングコンデンサ21の両端電圧は、は一定値(VL)より高いVHとなり、不安定な状態で推移する。スイッチ故障診断部40は、時刻(t0)までの時間帯で、IR電圧検出部32の検出電圧が一定値(VL)より高く、または、不安定であることを確認して、SW部31がショート故障であると判定する。そして、スイッチ故障診断部40は、時刻(t0)の時点で、診断モードから通常モードに移行し、時刻(t1)の時点で、充電禁止信号(充電許可フラグ:OFF)をECU50に出力する。
次に、バッテリ5の充電中、交流ノイズを検知する際の動作について説明する。図1に示すように、シングルコンバータ方式の充電システムでは、交流成分をもった充電電流がバッテリ5に流れる。そして、交流成分の電流は、バッテリ5に接続された地絡検知回路20にもノイズとして流れる。そのため、ノイズの発生時には、カップリングコンデンサに印加される電圧波形が、図5に示すような波形となる。図5は、バッテリ5の充電中に発生したノイズがカップリングコンデンサ21に入力された場合の電圧波形(Vc)を示す。
ここで、図6に示すように、制御モードは、停止モード、充電モード、及び停止モードの順で遷移したとする。図6は、制御モード、IR電圧検出部の検出電圧、及びSW部31の状態の時間的な推移を示している。
ECU50は、停止モードの信号(モード信号)を制御モード判定部34に出力する。制御モード判定部34は、停止モードから充電モードに遷移した場合には、論理値「0」を論理値「1」にする。フリップフロップ36のリセット端子には、論理値「0」が入力される。フリップフロップ36のセット端子に「1」が入力されると、フリップフロップ36の出力はそのまま「1」を保持する。NOT回路39は、フリップフロップ36の出力値(論理値「1」)を反転させて、論理値「0」をSW部31に出力する。そして、SW部31はオフ状態になる。
制御モード判定部34は、充電モードを維持している間、論理値「1」を出力する。フリップフロップ36のリセット端子には、論理値「0」が継続して入力される。また、停止モードでは、バッテリ5は充電されないため、交流ノイズは、カップリングコンデンサ21に流れない。IR電圧検出部32で検出される検出電圧は、基準電圧(Vth)より低くなり、比較器33は、論理値「0」をフリップフロップ36のセット端子に出力する。そのため、フリップフロップ36は、論理値「0」を出力し、SW部31はオン状態となる。
時刻taの時点で、制御モードが停止モードから充電モードに切り替わる。ECU50は、充電モードの信号を制御モード判定部34に出力する。制御モード判定部34は、モードの切り替わりにより、論理値「0」を論理値「1」にする。フリップフロップ36のリセット端子には、論理値「0」が入力される。時刻(ta)の時点で、フリップフロップ36は論理値「0」を保持しているため、リセット端子に論理値「1」が入力されても、Q端子の論理値は「0」のままである。そのため、SW部31はオン状態を維持する。
時刻taから時刻tbの間は、バッテリ5は充電されているが、カップリングコンデンサ21の両端電圧が、交流ノイズを検知できる程度まで上昇していないため、IR電圧検出部32の検出電圧は、基準電圧(Vth)より低く、フリップフロップ36のセット端子には、論理値「0」が入力される。また、制御モード判定部34は、モードを切り替えた後は、論理値「1」を出力し、フリップフロップ36のリセット端子には、論理値「0」が入力される。そのため、フリップフロップ36は、論理値「0」を継続して出力し、SW部31はオン状態を維持する。
時刻tbの時点で、カップリングコンデンサ21の両端電圧が、交流ノイズを検知できる程度まで上昇し、IR電圧検出部32の検出電圧は、基準電圧(Vth)以上になる。そして、フリップフロップ36のセット端子には、論理値「1」が入力される。制御モードは充電モードで維持されているため、制御モード判定部34は、論理値「1」を出力し、フリップフロップ36のリセット端子には、論理値「0」が入力される。すなわち、フリップフロップ36のセット端子とリセット端子には、論理値「1」と「0」がそれぞれ入力され、フリップフロップ36は、Q端子の論理値を「0」から「1」にする。そして、SW部31はオン状態からオフ状態に切り替わる。
時刻tbから時刻tcの間、制御モードは充電モードで維持されるため、フリップフロップ36のリセット端子には、論理値「1」が入力されず、フリップフロップ36はQ端子の出力を論理値「1」で保持し、SW部31はオフ状態を継続する。
時刻tcの時点で、制御モードが充電モードから停止モードに切り替わる。制御モード判定部34は、モードの切り替わりにより、論理値「1」を論理値「0」にする。フリップフロップ38のリセット端子には、論理値「1」が入力される。時刻(tc)の時点で、フリップフロップ38は保持していた論理値「1」をリセットして、論理値「0」をNOT回路39に出力する。そして、SW部31はオフ状態からオン状態に切り替わる。
すなわち、制御モードが充電モードであり、かつ、IR電圧検出部32の検出電圧が基準電圧(Vth)以上である場合に、SW部31はオフ状態となる。そして、少なくとも制御モードが充電モードから充電モード以外のモード(停止モード)に切り替わるまでは、フリップフロップ36が、SW部31をオフ状態で保持するように、論理値「1」を保持する。これにより、本例は、バッテリ5の充電中、交流ノイズが閾値を超えた場合には、強電回路と弱電回路とを切断した状態を維持できる。そのため、例えば、バッテリ5の充電中、交流ノイズの振幅電圧が一時的に閾値より低くなった場合でも、切断状態が維持され、地絡検知回路20を強電回路から確実に絶縁できる。また、交流ノイズが大きく変動する条件下においても、SW部31の切替のチャタリングを回避できる。
次に、図7を用いて、本例の絶縁検知装置の制御フローを説明する。図7は、制御フローを示すフローチャートである。なお、図7において、ステップS4以降の制御フローはループさせているが、例えば交流電源1の電力による充電を停止させた場合には、ループを抜け出して、図7の制御フローを終了させる。
ステップS1にて、IR電圧検出部32はカップリングコンデンサ21の電圧を検出し、スイッチ故障診断部40は、IR電圧検出部32の検出電圧に基づいて、SW部31の故障を診断する。ステップS2にて、スイッチ故障診断部40は、SW部31の故障の有無を判定する。SW部31が故障していると判定された場合には、ステップS3にて、スイッチ故障診断部40は、充電禁止信号をECU50に送信する。そして、ECU50はバッテリ5の充電を禁止して、図7の制御フローは終了する。
一方、SW部31が故障していないと判定された場合には、ステップS4に進む。ステップS4にて、スイッチ故障診断部40は充電許可信号をECU50に送信する。ステップS5にて、制御モード判定部34は、ECU50から送信されるモード信号に基づき、制御モードを判定する。ステップS6にて、制御モード判定部34は、充電モードであるか否かを判定する。制御モードが充電モードである場合には、ステップS7に進み、制御モードが停止モードである場合にはステップS14に進む。
ステップS7にて、フリップフロップ36で保持している論理値が「1」を保持しているか否かによって、交流ノイズが有る状態を保持しているか否かが判定される。「交流ノイズ有り」の状態が保持されている場合、すなわち、フリップフロップ36の保持する論理値が「1」である場合には、ステップS8にて、SW部31はオフ状態を維持することで、強電回路と弱電回路との間の切断状態を維持する。そして、ステップS5に戻る。
ステップS7において、「交流ノイズ有り」の状態が保持されていない場合、すなわち、フリップフロップ36の保持する論理値が「0」である場合には、ステップS9にて、IR電圧検出部32はカップリングコンデンサ21の電圧を検出し、比較器33は、IR電圧検出部の検出電圧と基準電圧(Vth)とを比較することで、交流ノイズの発生の有無を検知する。ステップS10にて、比較器33から出力される論理値が「1」であるか否かによって、ノイズが発生しているか否かが判定される。ノイズ有りと判定された場合には、ステップS11にて、フリップフロップ36はQ端子の出力を論理値「0」から論理値「1」に切り替えつつ、論理値「1」で保持することで、ノイズ有りの状態が保持される。ステップS12にて、SW部31はオン状態からオフ状態に切り替えて、強電回路と弱電回路との間を切断する。そして、ステップS5に戻る。
ステップS10において、ノイズが無しと判定された場合には、ステップS13にて、SW部31はオン状態となり、強電回路と弱電回路との間は接続される。そして、ステップS5に戻る。
ステップS6において、制御モードが停止モードである場合には、ステップS14にて、フリップフロップ36のリセット端子にリセット信号(論理値「1」)が入力されて、フリップフロップ36の論理値が「0」にリセットされる。これにより、ノイズ有りの状態がリセットされる。なお、停止モードの継続中は、ステップS6の「NO」に進んだ後、ステップS14の制御フローは実行されず、ステップS15に進む。
ステップS15にて、SW部31はオン状態となり、強電回路と弱電回路との間は接続される。そして、ステップS5に戻る。
上記のように、本例は、地絡検知回路20により、バッテリ5を含む強電回路の地絡を検知し、地絡検知回路に含まれる弱電回路と強電回路との間にSW部31を接続し、バッテリ5の充電中に、SW部のオン状態とオフ状態と切り替える。これにより、強電回路で発生したノイズが地絡検知回路20に印加することで、地絡検知回路20が誤って動作することを防ぐ。
また本例は、バッテリ5の充電により強電回路に印加される交流ノイズの電圧を、IR電圧検出部32で検出し、IR電圧検出部32の検出電圧が閾値電圧(Vth)以上である場合に、SW部31をオフ状態にする。これにより、バッテリ5の充電中に、交流ノイズが閾値を超えるまで高くなった場合に、強電回路と弱電回路とを切断できるため、適切な条件下で、充電システムの絶縁を検知できる。
また本例は、スイッチ故障診断部40によりSW部31の故障を診断する。これにより、SW部の故障により、強電回路と弱電回路とを切断できない条件下においても、地絡検知回路20の誤動作を防ぐことができる。
なお、本発明の変形例として、図8に示すように、絶縁検知装置10は、上記の構成の他にセル電圧検出部41を備えている。セル電圧検出部41は、バッテリ5に含まれるセル電池の両端の電圧を検出する。セル電圧検出部41は検出電圧を比較器33に出力する。バッテリ5の充電中に、交流ノイズが発生し、ノイズによる交流電圧がバッテリ5に印加された場合には、セル電池の振幅電圧が高くなる。そのため、セル電池の電圧が、ノイズ検出用の閾値以上になることを検知することで、交流ノイズを検出できる。
また、本発明の他の変形例として、図9に示すように、セル電圧検出部41は、バッテリ5の両端の電圧を測定してもよい。
上記のSW部31が本発明の「スイッチ」に相当し、IR電圧検出部32又はセル電圧検出部が本発明の「電圧測定手段」に相当し、スイッチ故障診断部40が本発明の「故障診断部」に相当し、比較器33、制御モード判定部34、NOT回路35、39、フリップフロップ36、診断モード設定部37、及びセレクトスイッチ部38が本発明の「制御手段」に相当する。