まず、実施の形態によるシート綴じ装置およびこれを備える後処理装置(いわゆるフィニッシャ)について説明する。
<装置構成>
図1は、実施形態による後処理装置Fの概略縦断面図である。
本実施形態による後処理装置Fは、例えば、後処理装置Fと通信可能に接続される画像形成装置Pから出力されるシートを受け取り、当該シートに対して綴じ処理、折り処理、孔あけ処理などの各種処理を施す。例えば、ここでの画像形成装置Pおよび後処理装置Fにより、シート綴じシステムを構成することができる。
後処理装置Fは、処理機能として、例えば綴じ処理部、折り処理部、ステイプラ,孔あけ部などを備えている。特に、本実施の形態による後処理装置Fにおける綴じ処理部は、シート上に形成されるトナー像を熱によって溶融させることにより、シート同士を接着する。
まず、画像形成装置Pにて画像を形成されたシートは、画像形成装置Pに備わる不図示の各種搬送ローラ等により後処理装置Fへと搬送される。なお、ここでの画像形成装置P(接着剤付与部)は、所定の形状、パターン、輪郭、濃度を有するトナー像を、印字対象であるシート上の所定の接着対象領域(例えば、シートの角部やシートの端部に沿った帯状の領域等)に形成することができる。
なお、ここでは、一例として、画像形成装置Pにてシート上にトナー像を形成するトナー(熱可塑性樹脂を含む接着剤)は、所定温度以上に加熱することによって色を透明化したり薄めたりして、色の視認を困難化することが可能な色材(いわゆる消色可能トナー)を採用している。もちろん、これに限られるものではなく、加熱等の処理を施しても色を消去できない従来の色材としてのトナーを採用してもよい。なお、加熱によって色の視認を困難化できるトナーに限らず、もともと透明に近い色合いで製造されたトナーを用いてもよい。これにより、溶融させたトナーによって接着されたシート束の接着部位の色が目立つことがない。もちろん、下地となるシートの色によっては、結果として接着部位の色が視認し難い状態となれば、色のついたトナーを採用することも可能である。例えば、イエローの色紙をシートとして採用する場合、イエロートナーを接着剤として使用すれば、接着部位は目立たない。
続いて、画像形成装置Pにて所定のトナー像を形成され後処理装置F内に供給されたシートは、搬送部31等により所定の搬送先としての待機トレイ32(いわゆるバッファトレイ)上へと搬送される。待機トレイ32は、その積載面上に一時的に積載したシートを、その下方に位置する処理トレイ102(トレイ)の積載面上に落下させる機能を有している。なお、待機トレイ32は、シートを一枚だけ一時的に保持し、保持した一枚のシートを処理トレイ102上に落下させる場合と、搬送部31によって搬送される複数枚のシートを一時的に保持し、保持した複数枚のシート束を処理トレイ102上に落下させる場合とがある。待機トレイ32は、複数枚のシートをまとめて保持する場合、これら複数枚のシートをまとめて処理トレイ102上に落下させる。
待機トレイ32から処理トレイ102上に落下させるシートは、不図示の回転パドル等によって処理トレイ102上に叩き落とされる(図1に示す破線矢印を参照)。
処理トレイ102上に積載されたシートは、後述のシート綴じ機構による綴じ処理を施された後、処理トレイ102上から装置外へと排出される(図1に示す破線矢印を参照)。
以下、実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図2は、本実施の形態によるシート綴じ装置の概略構成を示す概観斜視図である。図3は、本実施の形態によるシート綴じ装置の概略構成を示す概観側面図である。
図2および図3に示すように、本実施の形態によるシート綴じ装置は、上述した構成に加え、例えば、整合部と、発熱体Hと、加熱押圧機構などを備えることができる。
ここで、整合部は、回転軸101aと、回転軸101aを回転軸として回転する整合ローラ101と、整合ローラ101の回転軸101aに回転駆動力を伝達するモータM2と、を備えている。これにより、モータM2が回転駆動されると、整合ローラ101が回転する。
上述のような構成を有する整合部は、トレイ102の積載面102s上に載置されたシートを搬送し、例えばトレイ102に設けられている所定の突き当て位置102tに突き当ててシート端部を整合させる(後述の図8等を参照)。
整合部は、さらに、回転軸101a、整合ローラ101およびモータM2を昇降させるためのラックL1およびピニオンギアG1と、ピニオンギアG1を回転駆動するモータM1と、を備えている。ラックL1は、上記モータM2と一体的に昇降可能なようにモータM2のケーシングに固定されている。また、ラックL1および回転軸101a等は、スムーズに昇降可能なように、シート綴じ装置の筐体に固定された不図示のガイド部材によってガイドされている。
後述のCPU701がモータM1を正逆転させると、モータM1の出力軸に固定されているピニオンギアG1も正逆転し、ピニオンギアG1と噛み合っているラックL1を昇降させる。
上記ラックL1、ピニオンギアG1およびモータM1等からなる昇降機構によって、整合ローラ101は、トレイ102上に載置されるシートの上面に当接してシートを搬送する「当接位置」と、搬送部によるトレイ上へのシートの載置を妨げないように退避する「離間位置」との間で移動可能となっている(図2において上方を向く実線矢印および下方を向く破線矢印を参照)。
発熱体H(第2の発熱体)は、トレイ102のシート載置面102s上における、シート載置面102sに整合されて載置されたときのシート上に形成される所定のトナー像に対応する位置に配置されている。また、発熱体Hは、シート上に形成される所定のトナー像に対応する形状に形成されている。具体的に、発熱体Hは、ステンレス等の導体からなり、加熱対象となるシート上の接着対象領域を覆う波形状に加工された導線Hcと、この導線Hcを上下から挟んでコーティングするフィルムHfと、を備えている。導線Hcには、後述のCPU701によって制御される電源回路Vが接続されており、電源回路Vからの電力供給により、導線Hcからの発熱量を制御する。
なお、ここでは、発熱体Hがトレイ102のシート載置面102s上に配置されている構成を例示するが、これに限られるものではなく、結果としてトレイ102上に載置されるシートの接着対象領域を加熱することができるように設けられていればよい。例えば、発熱体Hをトレイ102のシート載置面102sに埋め込むこともできる。発熱体Hは、このような構成により、トレイ102上に載置されるシートの接着対象領域を下方から加熱する。
これによれば、加熱対象となるシートの加熱処理を行うために、後述の導体105h(第1の発熱体)単体では発熱量不足である場合でも、発熱体H(第2の発熱体)による加熱を補助的に行うことで、加熱量不足による接着不良等の発生を抑えることができる。
フィルムHfの素材としては、例えば、炭化ケイ素、ポリイミド等を採用することができるが、これに限られるものではなく、導線Hcによる加熱に耐えることができ、且つシート上に形成されたトナー像を溶かす際にシートに貼り付くことのない素材であれば採用可能である。
加熱押圧機構は、例えば、ラックL3、モータM3、ピニオンギアG3等を備えることができる。図2に示すように、ラックL3の下端にはシートの幅方向に延びる押圧部材105が一体的に設けられている。後述のCPU701がモータM3を正逆転させると、ピニオンギアG3が正逆転し、ピニオンギアG3と噛み合っているラックL3が昇降する。また、ラックL3および押圧部材105等は、スムーズに昇降可能なように、シート綴じ装置の筐体に固定された不図示のガイド部材によってガイドされている。押圧部材105の底部には、導体105h(第1の発熱体)が設けられている。には、後述のCPU701によって制御される電源回路Vが接続されており、電源回路Vからの電力供給により、導体105hからの発熱量を制御する。
押圧部材105は、トレイ102上のシートの発熱体Hによって加熱される領域の少なくとも一部を押圧可能な底面を有している。したがって、押圧部材105により押圧可能な領域と、発熱体Hの導体Hcのパターンがカバーする領域とは、必ずしも一致している必要はなく、結果として導体105h単体もしくは導体105hおよび発熱体Hによって加熱される領域を、接着するのに十分な面積、範囲、形状で押圧することができればよい。
このような構成の加熱押圧機構(進退機構)により、トレイ102上で整合されたシートの接着対象領域の少なくとも一部を押圧しながら加熱する「加熱位置」と、トレイ102上へのシートの積載を妨げない位置まで退避する「退避位置」と、の間で、発熱体H(第1の発熱体)を備える押圧部材105を移動させる。
図4は、後処理装置F(シート綴じ装置)をそなえるシート綴じシステムについて説明するための機能ブロック図である。
本実施の形態による後処理装置Fおよびこれを備えるシート綴じシステムは、例えば、CPU701、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)702、MEMORY703、STRAGE(例えば、Hard Disk Drive等)704、画像形成部P、シート搬送部31、待機トレイ32、シート排出部、モータM1、モータM2、モータM3、電源回路V等を備えている。
本実施の形態による後処理装置Fにおいて、CPU701は、後処理装置Fおよび画像形成装置Pにおける各種処理を行う役割を有しており、またMEMORY703、STRAGE704等に格納されているプログラムを実行することにより種々の機能を実現する役割も有している。なお、CPU701は、同等の演算処理を実行可能なMPU(Micro Processing Unit)により代替することも可能であることは言うまでもない。また、STRAGE704についても同様に、例えばフラッシュメモリ等の記憶装置により代替可能である。
MEMORY703は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、VRAM(Video RAM)、フラッシュメモリ等から構成されることができ、後処理装置Fにおいて利用される種々の情報やプログラムを格納する役割を有している。
電源回路Vは、CPU701によって制御され、導体Hcおよび導体105hそれぞれに選択的に電流を流す。具体的には、電源回路Vは、CPU701からの指示に基づき、導体Hcのみに電力供給し導体Hcだけを発熱させるモードと、導体105hのみに電力供給し導体105hだけを発熱させるモードと、導体Hcおよび導体105hの双方に電力供給し導体Hcおよび導体105hの双方を発熱させるモードと、を選択的に実行可能である。
<動作説明>
図5は、後処理装置Fにおける処理の流れについて説明するためのフローチャートである。図6〜図14は、後処理装置Fでのシート綴じ処理における各構成部品の動作を示す図である。
まず、CPU701(積載情報取得部)は、待機トレイ32に複数枚のシートがまとめて保持されるか否かを示す「積載情報」を、画像形成装置Pもしくは後処理装置Fから取得する(ACT101)。ここで、待機トレイ32に複数枚のシートがまとめて保持されることを示す積載情報が得られる場合、待機トレイ32にまとめて一時的に保持される複数枚のシートが、まとめて処理トレイ102上に落下することを意味する。従って、例えば、後述の図6に示す状態における「積載情報」は、待機トレイ32に一度に保持されるシートが1枚であることを示し、後述の図11に示す状態における「積載情報」は、待機トレイ32に一度に保持されるシートが3枚であることを示す。
また、CPU701(枚数情報取得部)は、綴じ処理の対象となるシート束を構成するシート枚数に関する「枚数情報」を、例えば画像形成装置P等から取得する(ACT101)。具体的に、ここでの「枚数情報」とは、例えば、これから処理トレイ102上に載置されるシートが、綴じ対象であるシート束の内の最終ページのシート(例えば、表紙に相当するシート)であるのか否か、を示す情報である。もちろん、ここでの「枚数情報」とは、直接的に最終ページであるか否かを示す情報である必要はなく、少なくとも、綴じ対象であるシート束を構成する総シート枚数と、これら処理トレイ102上に載置されるシートが何枚目に処理トレイ102上に載置されるのかを示す情報を含んでいればよい。
なお、CPU701による「積載情報」および「枚数情報」の取得は、両者を同時に取得してもよいし、いずれか一方の取得処理を先に開始した後に他方の取得処理を開始することもできる。すなわち、後述のACT102およびACT103における判定を行うまでに双方のデータが取得されていればよく、その取得順序は問わない。
まず、基本動作として、2枚のシートを綴じる処理(ACT102およびACT103の双方においてNoであるケース)について説明する。
画像形成部から後処理装置Fへと1枚目のシートが搬送されると、搬送部31は当該シート(Sheet1)を待機トレイ32上に載置する(図6)。なお、シート(Sheet1)の接着対象領域にはトナー像は形成されていないものとする。もちろん、シート間の接着を目的としないトナー像(冊子としての題目や図形、文字等)の形成は行われていてもよい。
この際、CPU701は、モータM1およびM3を回転駆動し、整合ローラ101を「離間位置」に移動させ、押圧部材105を「退避位置」に移動させる。これにより、待機トレイ32にて保持しているシート(Sheet1)を処理トレイ102上に落下させる際に、整合ローラ101や押圧部材105が、シート(Sheet1)の処理トレイ102上への移動を妨げることがない。
処理トレイ102は、図7に示すように、突き当て位置102t側が低くなるように傾斜している。待機トレイ32から落下するシート(Sheet1)は、処理トレイ102の載置面102sを突き当て位置102tへ向けて滑り落ちる。
CPU701は、モータM1およびモータM2を駆動し、整合ローラ101を回転させながら「当接位置」へと移動させる。これにより、処理トレイ102上に落下したシート(Sheet1)をシート搬送方向下流側へと搬送し、シート先端を突き当て位置102tに確実に突き当てる(図8)。
続いて、CPU701は、同様の手順により、処理トレイ102上に2番目に載置されるシート(Sheet2)を待機トレイ32から落下させる(図9)。なお、2番目に落下するシート(Sheet2)の処理トレイ102上に落下した状態でのシート下面の所定の接着対象領域には、例えば画像形成部Pにて所定のトナー像が形成されている(図9)。この所定のトナー像が、シート間を接着する接着剤の役割を果たす。
処理トレイ102上に載置されているシート(Sheet1)上に載置されたシート(Sheet2)は、直前のシート(Sheet1)と同様に、整合ローラ101によって突き当て位置102tに突き当てられる。
次に、CPU701は、モータM3を駆動して押圧部材105を「加熱位置」まで移動させ、電源回路Vによって導体105hを発熱させる。このようにして、接着対象領域を加熱されながら押圧される両シート(Sheet1およびSheet2)間は、導体105hからの熱により溶融したトナーによって接着される(図10)(ACT104)。
このように、所定の接着対象領域に所定のトナー像が形成されたシート同士が重なった状態で、所定の接着対象領域を加熱しながら押圧することにより、シート間での強力な接着を実現することができる。また、加熱動作と押圧動作を、一つの駆動機構によって実現でき、装置全体としての部品点数の削減、省スペース化を図ることができる。特に、加熱しながら押圧することで、熱を効率的にシートに伝達することができ、熱のロスが少ない。
続いて、待機トレイ32に一時的にまとめて保持される複数枚のシートを、まとめて処理トレイ102上に落下させる場合のシート綴じ処理について説明する(図11)。ここでは、一例として、綴じ対象である3枚のシートが一時的にまとめて待機トレイ32に保持される場合を示す(ACT102,Yes)。直前に後処理の対象となったシート束が、加熱押圧にて接着され装置外に排出されるまでの時間に、次に後処理の対象となるシート束を構成するシート群として画像形成装置Pから搬送されてくるシート群の先頭の数ページ(ここでは、一例として1枚目〜3枚目等)を待機トレイ32に一時的にまとめて溜めておくことで画像形成装置P側から後処理装置Fへのシート搬送を滞らせることがなく、印刷生産性を落とすことがない。
このとき、待機トレイ32に保持される3枚のシートの内の最下位に位置するシート(Sheet1)は、図6〜図10にて示したシート(Sheet1)と同様、接着対象領域にはトナー像は形成されていないものとする。また、待機トレイ32に保持される3枚のシートの内の最上位および真ん中に位置するシート(Sheet2およびSheet3)は、図9および図10にて示したシート(Sheet2)と同様、シート下面の接着対象領域にはトナー像が形成されているものとする。
CPU701は、モータM1およびM3を回転駆動し、整合ローラ101を「離間位置」に移動させ、押圧部材105を「退避位置」に移動させる。これにより、待機トレイ32にて保持している3枚のシート(Sheet1〜Sheet3)が処理トレイ102上に落下する際に、整合ローラ101や押圧部材105が、シート(Sheet1)の処理トレイ102上への移動を妨げることがない。
CPU701は、待機トレイ32にて保持している3枚のシート(Sheet1〜Sheet3)を処理トレイ102上に落下させると、図7および図8に示したように、整合ローラ101による整合動作を実行させる。
次に、CPU701(制御部)は、処理トレイ102上に、待機トレイ32から複数枚のシート群が一度にまとめて積載されていると判定される本ケースにおいて(ACT102,Yes)、押圧部材105を「加熱位置」とした状態で、導体Hc(第2の発熱体)と導体105h(第1の発熱体)との間にシート群(ここではSheet1〜Sheet3)を挟んで双方の発熱体による加熱を行わせる(ACT105)。このようにして、接着対象領域を加熱されながら押圧されるシート群(Sheet1〜Sheet3)間は、導体Hcおよび導体105hからの熱により溶融したトナーによって接着される(図13)
待機トレイ32に複数枚保持し、保持した複数枚のシート群をまとめて処理トレイ102上に積載させる構成では、シート間の接着のための加熱動作を、一度に複数枚のシートに対して行わなければならない。このような場合に、待機トレイ32から処理トレイ102に一度にまとめて積載されるシート枚数が多すぎると、導体105h(第1の発熱体)からの加熱量だけでは十分でなくなり、結果として接着強度ムラを生じてしまうおそれがある。
そこで、本実施の形態では、待機トレイ32から一度にまとめて積載されるシート枚数が所定枚数を超える場合には、導体105h(第1の発熱体)による加熱に加えて導体Hc(第2の発熱体)による加熱も同時に行わせる(待機トレイ32から落下したシート束を導体105h(第1の発熱体)および導体Hc(第2の発熱体)で挟みながら加熱する)ことにより、厚いシート束の接着に要する熱量不足を補う。
また、一般に、待機トレイ32に一度に複数枚のシートを保持(バッファリング)するのは、画像形成装置側から搬送されてくるシートの処理がシート綴じ装置側で追いつかない前半のシート群である。
したがって、待機トレイ32での複数枚まとめてのバッファリングの後、待機トレイ32からトレイへ向けて一枚ずつ積載される状態に移行したら、導体Hc(第2の発熱体)の補助がなくとも導体105h(第1の発熱体)のみにより加えられる熱量で十分であるため、導体105h(第1の発熱体)のみを用いてシートの押圧および加熱を行えばよい。これにより、電力の消費を抑制することが可能となるとともに、加熱接着時のシートの負荷を低減することが可能となる。
もちろん、単に待機トレイ32に複数枚のシートがまとめて保持された場合だけでなく、例えば、所定枚数以上のシートがまとめて一度に保持された場合に、ACT105に示すような加熱処理を実行することもできる。これにより、例えば2枚など、1つの熱源からの発熱量で十分に接着できるような少ない枚数のシートが待機トレイ32にまとめて保持された場合に、2つの熱源を用いて必要以上の加熱温度でシート綴じ処理を行ってしまうことを回避することができる。
また、CPU701(制御部)は、これから加熱しようとしているシートが、綴じ対象であるシート束を構成するシート群の内の最後に処理トレイ102上に載置されるシート(最終シート)である場合((ACT102,No)であり且つ(ACT103,Yes))、「加熱位置」に移動させた導体105h(第1の発熱体)による加熱に加えて導体Hc(第2の発熱体)による加熱も同時に行わせる(待機トレイ32から落下した最終シート(Shett7)を含むシート束(Sheet1〜Shett7)を、導体105h(第1の発熱体)および導体Hc(第2の発熱体)で挟みながら加熱する)(図14)。
このように、綴じるべきシート束を構成するシート全てが処理トレイ102上に載置された場合に、最後の仕上げとして導体105h(第1の発熱体)および導体Hc(第2の発熱体)双方による加熱処理を行うことにより、接着が不十分であった箇所をより強固に接着させるとともに、シート束全体に均一な力で加圧しながら加熱することにより、ムラの少ない美しいシート綴じ処理を実現することができる。
上述のシート綴じ装置での処理における各動作は、メモリ702にロードされるシート綴じプログラムをCPU701に実行させることにより実現されるものである。
なお、導体105h(第1の発熱体)による単位時間当たりの加熱量は、導体Hc(第2の発熱体)による単位時間当たりの加熱量よりも大きいことが望ましい。
例えば、導体105h(第1の発熱体)による加熱を主とし、導体105h(第1の発熱体)だけでは熱量が足りないときに第2の発熱体を補助的に使用する構成の場合、頻繁に利用されるメインヒータとしての導体105h(第1の発熱体)の発熱量を、補助ヒータとしての導体Hc(第2の発熱体)の発熱量よりも高くしておけば、導体105h(第1の発熱体)単体で加熱処理を行う際の接着不良等の発生を抑制することができる。そこで、例えば、本実施の形態における導体105h(第1の発熱体)の単位時間当たりの発熱量は、75[J/sec]、導体Hc(第2の発熱体)の単位時間当たりの発熱量は、30[J/sec]に設定されている。
なお、上述の実施の形態では、第1の発熱体が、単に「加熱位置」と「退避位置」との間を移動可能な構成としたが、これに限られるものではなく、例えば第1の発熱体をシート搬送方向と直交する方向(図2におけるy軸方向)に移動可能としてもよい。このようにすることにより、シート上の所望の位置のみを局所的に加熱することができ、シート上の接着対象領域が局所的(例えば、シートの角部等)である場合に無駄に接着対象領域以外の領域を加熱してしまうことがなく、省エネルギーの観点で好ましい。
また、上述の実施の形態では、第1の発熱体が、ON/OFFを一体として行う一つのヒータである構成としたが、これに限られるものではなく、例えば第1の発熱体をシート搬送方向と直交する方向(図2におけるy軸方向)において複数個に分割配置する構成としてもよい。このようにすることにより、シート上の所望の位置のみを局所的に加熱することができ、シート上の接着対象領域が局所的(例えば、シートの角部等)である場合に無駄に接着対象領域以外の領域を加熱してしまうことがなく、省エネルギーの観点で好ましい。
また、待機トレイ上に一度にまとめて保持されるバッファリング枚数をできる限り少なく設定することにより、バッファリングされてトレイ上に積載されるシート群に対する第1および第2の発熱体による加熱量を低減させることができ、省エネルギーの観点から望ましい。
また、上述の各実施の形態では、色材がトナーである構成を例示したが、これに限られるものではなく、加熱によってシートを接着可能な色材であれば採用可能である。また、シートを綴じる接着剤としては、上記で説明したトナー以外にも、例えば、インクジェット方式における色材としての「インク」や、「インクリボン」等を採用することもできる。この場合、これらトナー、インク、インクリボン等には、所定温度まで加熱すると溶融し、冷えると固まる「熱可塑性樹脂」を含ませることができる。もちろん、何らかの色材に含有させる場合に限らず、「熱可塑性樹脂」単体を接着剤として利用することもできる。ここで、熱可塑性の接着剤としては、例えば、いわゆるホットメルト接着剤等が挙げられる。上記のような、熱可塑性の接着機能を有する物質をシートの接着領域に予め塗布しておき、上記各実施の形態のように発熱体で加熱することによって、熱可塑性接着剤の樹脂が軟化して冷え固まることでシート同士を接着して綴じることが可能となる。
また、上述の各実施の形態では、シート上の接着対象領域へのトナー等の接着作用を有する物質の塗布を画像形成装置Pに備わる画像形成部によって行う構成を例示したが、これに限られるものではない。例えば、後処理装置F内に印字機能を有するユニットを設け、上記のような接着剤として利用可能な物質を綴じ対象であるシート上の接着対象領域への付与を、後処理装置F内で画像形成装置から独立して実行可能なようにしてもよい。このように、シート綴じ装置内に、綴じ処理の対象であるシート上への接着剤付与を可能とするユニットを搭載することにより、シート綴じ装置単体で、シートへの接着剤材付与から実際のシート同士の接着動作までを実行することが可能となる。
更に、シート綴じ装置およびこれを備える後処理装置Fを構成するコンピュータにおいて上述した各動作を実行させるプログラムを、シート綴じプログラムとして提供することができる。本実施の形態では、発明を実施する機能を実現するための当該プログラムが、装置内部に設けられた記憶領域に予め記録されている場合を例示したが、これに限らず同様のプログラムをネットワークから装置にダウンロードしても良いし、同様のプログラムをコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶させたものを装置にインストールしてもよい。記録媒体としては、プログラムを記憶でき、かつコンピュータが読み取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であっても良い。具体的に、記録媒体としては、例えば、ROMやRAM等のコンピュータに内部実装される内部記憶装置、CD−ROMやフレキシブルディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカード等の可搬型記憶媒体、コンピュータプログラムを保持するデータベース、或いは、他のコンピュータ並びにそのデータベースや、回線上の伝送媒体などが挙げられる。またこのように予めインストールやダウンロードにより得る機能は装置内部のOS(オペレーティング・システム)等と共働してその機能を実現させるものであってもよい。
なお、プログラムは、その一部または全部が、動的に生成される実行モジュールであってもよい。
また、上述の各実施の形態にてプログラムをCPUやMPUに実行させることにより実現される各種処理は、その少なくとも一部を、ASIC702にて回路的に実行させることも可能であることは言うまでもない。
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。