JP6362446B2 - 乳化重合用分散剤およびそれを用いて得られる酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、ならびに接着剤 - Google Patents

乳化重合用分散剤およびそれを用いて得られる酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、ならびに接着剤 Download PDF

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Description

本発明は、酢酸ビニルの乳化重合の際に用いられる分散剤に関し、詳細には、優れた耐水接着性および常温保存時の粘度安定性を両立してなる酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを得るに際して有用な乳化重合用分散剤およびそれを用いて得られる酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、ならびに接着剤に関するものである。
従来から、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンは、接着剤、塗料、繊維・紙・皮革等の加工剤、各種材料のバインダー等、広範な用途に利用されている。このような酢酸ビニル系樹脂エマルジョンは、それを乾燥させて形成された接着層やコーティング層の耐水性の向上や保存時の粘度安定性の向上を図るため、従来から様々な検討が行なわれている。
例えば、特許文献1の技術では、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール(以下、AA−PVAという)を乳化重合用分散剤として、酢酸ビニルモノマーとアセトアセチル基含有モノマーを乳化重合させたエマルジョンに炭酸カルシウムを添加することにより耐水性及び耐熱性を向上させることが提案されている。
また、特許文献2では、AA−PVAと特定のヨード呈色度を有するPVAを含有する乳化重合用分散安定剤により、流動安定性、低温安定性、放置安定性、耐水接着力に優れたビニル樹脂系エマルジョンが得られることが開示されている。
特開平11−279362号公報 特開2001−139612号公報
上記の技術のように、AA−PVAを含有する乳化重合用分散剤は種々の検討が行われ、AA−PVA以外の成分(未変性PVAや各種添加剤)についての検討は行われているが、AA−PVA自体の最適化にはまだまだ研究の余地があった。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、優れた耐水接着性および常温保存時の粘度安定性を有する酢酸ビニルエマルジョンが得られる乳化重合用分散剤を提供するものである。
本発明者らは、耐水接着性と常温保存時の粘度安定性に優れた酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを得るために検討した結果、乳化重合用分散剤として、アセトアセチル基変性度分布の半値幅が2.3モル%以上であるアセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂を用いた酢酸ビニルエマルジョンが、優れた耐水接着性と常温保存時の粘度安定性を有することを見出し本発明に到達した。
AA-PVAを乳化重合用分散剤として得られた酢酸ビニルエマルジョンを含む接着剤の耐水接着性は、AA−PVAのアセトアセチル基含有量(以下、AA化度という)を増やすことにより向上するが、AA化度が上がるとエマルジョンの保存時に粘度上昇が起こりやすく、耐水性の向上と保存安定性の両立は難しいものであった。
これは、高AA化度のAA−PVAは、接着性に対する寄与は大きいが、水相中に存在すると、AA−PVA同士が反応し、エマルジョンの粘度上昇を引き起こす要因となるため、AA−PVAを積極的にエマルジョン液滴に吸着させ、水相中には存在させないことが好ましいと考えられている。そこで本発明者は、AA基変性度分布(以下、AA化度分布という)の広いAA−PVAを用いることにより、上述の問題が解決されることを見出した。これは、分布幅の狭いAA−PVA中に多く存在するAA化度が中程度のAA−PVAが、高AA化度のAA-PVAがエマルジョン液滴に吸着することを妨げるのに対し、分布幅を広くしたため、中程度のAA化度のAA−PVAが減り、低AA化度のAA−PVAと高AA化度のAA−PVAが増えた結果、耐水接着性が向上し、保存時の粘度安定性に優れる酢酸ビニルエマルジョンが得られたと推測される。
本発明の乳化重合用分散剤を用いて、酢酸ビニルを乳化重合して得られる酢酸ビニル系樹脂エマルジョンは、耐水接着力及び常温保存時の粘度安定性に優れる。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に限定されるものではない。
以下、本発明について詳細に説明する。
<乳化重合用分散剤>
本発明の乳化重合用分散剤(以下、「分散剤」と略記する場合がある。)は、AA化度分布の半値幅が2.3モル%以上であるAA-PVAを含有することを最大の特徴とする。
[AA−PVA]
上記のAA−PVAは、ビニルエステル系モノマーの重合体であるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られるポリビニルアルコール系樹脂にアセトアセチル基(以下、AA基という)を導入したものである。具体的には、下記の式(1)で表される構造単位を有するものであり、このAA基を有する構造単位以外に、ビニルアルコール構造単位、さらには未ケン化部分であるビニルエステル構造単位を有している。
Figure 0006362446
上記原料となるビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等があげられるが、経済性の点から酢酸ビニルが好ましく用いられる。
また、上記ビニルエステル系モノマーとこのビニルエステル系モノマーと共重合性を有するモノマーとの共重合体のケン化物等を用いることもでき、このような共重合モノマーとしては、例えば、エチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート等があげられる。
なお、上記共重合モノマーの導入量はモノマーの種類によって適宜設定されるが、通常は10モル%以下、特には5モル%以下であり、導入量が多すぎると、水溶性や耐薬品性が損なわれる場合があるため好ましくない。
また、通常のPVAの場合、主鎖の結合様式は1,3−ジオール結合が主であり、1,2−ジオール結合の含有量は1.5〜1.7モル%程度であるが、ビニルエステル系モノマーを重合する際の重合温度を高温にすることによって、その含有量を1.7〜3.5モル%としたものを使用することも可能である。
上記AA−PVAの製造方法としては、例えば、[1]PVAとジケテンを反応させる方法、[2]PVAとアセト酢酸エステルを反応させてエステル交換する方法、[3]酢酸ビニルとアセト酢酸ビニルの共重合体をケン化する方法等があげられる。なかでも、製造工程が簡便で、良質のAA−PVAを得ることができるという点から、上記[1]の方法が好ましい。
上記[1]のPVAとジケテンを反応させることによりAA基を導入する方法としては、例えば、PVAとガス状または液状のジケテンを直接反応させる方法、酢酸等の有機酸をPVAに予め吸着吸蔵させた後、これに不活性ガス雰囲気下でガス状または液状のジケテンを反応させる方法、あるいはPVAに有機酸とジケテンの混合物を噴霧して反応させる方法、等があげられる。
上記反応に際して使用される反応装置としては、加温可能で撹拌機の付いた装置が好ましく、例えば、ニーダー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、その他各種ブレンダーを用いることができる。
上記AA−PVAにおけるAA化度の平均値は、通常1〜20モル%、さらに好ましくは3〜10モル%、特に好ましくは4〜8モル%である。AA基を有する構造単位の含有量が少なすぎると、耐水接着性が低下する傾向がみられ、含有量が多すぎると、増粘する傾向がみられる。
また、AA化度分布の半値幅は2.3モル%以上であり、好ましくは2.7〜15モル%、更に好ましくは3.0〜10モル%である。
かかる半値幅が小さすぎると本発明の効果が得られない傾向があり、大きすぎると粗粒子が増大する傾向がある。なお、「半値幅」は、AA化度を横軸に、このAA化度の存在量を縦軸としたとき、チャートのピークの高さの半分の高さにおけるチャートの幅であり、AA化度(変性度)の分布のバラツキを表す指標である。以下に、AA化度分布の半値幅の測定について詳しく説明する。
<AA化度分布の半値幅の測定>
まずは、高速液体クロマトグラフィーで、目的のAA−PVAのAA化度分布を表すクロマトグラムを得る。
次に、上記で測定されたクロマトグラムの溶出時間をAA化度に変換するための検量線を作成するのであるが、検量線作成にあたっては平均のAA化度とケン化度が化学分析によって既知である試料4点の(試料の平均AA化度の差は0.3モル%以上とすることが好ましい)クロマトグラムを上記と同様に測定し、得られた生のクロマトグラムにピークトップと平均AA化度の関係をー次関数的な関係として、溶出時間をAA化度に変換する。
上記の手順により、目的のAA−PVAのAA化度分布を表すクロマトグラムの半値幅をAA化度に変換して、AA−PVAのAA化度分布の広がりを表す指標を求める。
また、半値幅が2.3モル%以上のAA−PVAを得る方法としては、1.AA化度の異なるAA−PVAを2種以上併用して用いる、2.PVAに対して膨潤性の低い溶媒(例えば、酢酸メチル等)とPVAを混合し、その混合物にジケテンを添加することによりAA化反応を行う、3.ビニルエステル系単量体と共重合性の低いアセトアセチル基含有モノマーと共重合し、ケン化するなどの方法が挙げられる。
1の方法においては、AA化度が異なるAA−PVAを混合することで、AA化度のピークトップが複数あるため、結果的にAA化度分布の広いAA−PVAを得ることができる。2の方法においては、AA化反応が不均一に起きるために、結果的にAA化度分布の広いAA−PVAを得ることが出来る。3の方法においては、ビニルエステル系単量体と共重合性が低いモノマーを用いることにより、反応にムラが出て、不均一となり、結果的にAA化度分布の広いAA−PVAを得ることができる。上記の1〜3の中でも、調整が容易な点で、1の方法が好ましく用いられる。1の方法について、以下詳細に説明する。
AA化度分布の広いAA−PVAを作るために、AA化度の異なる2種以上のAA−PVAを混合するわけであるが、かかる2種以上のAA−PVAのAA化度の差(最小AA化度と最大AA化度の差)は通常、1〜20モル%、好ましくは2〜10モル%、特に好ましくは2〜5モル%である。かかるAA化度の差が大きすぎると、得られたエマルジョンが増粘する傾向があり、小さすぎるとAA化度分布が小さくなるため、本発明の効果が得られにくくなる。
また、これらのAA−PVAのケン化度の差は通常、30モル%以下、10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下である。かかるケン化度差が大きすぎると粗粒子量が増加する傾向がある。
重合度の差は、通常2000以下、好ましくは1000以下、特に好ましくは500以下である。かかる差が大きすぎると、重合度の大きいAA−PVAを含有することになり、得られたエマルジョンが増粘する傾向がある。
また3種以上混合する混合比は、AA化度差に応じて適宜調整すればよいが、2種混合の場合の重量比は、高AA化AA−PVA/低AA化AA-PVAが通常5/95〜50/50、好ましくは10/90〜40/60、特に好ましくは15/85〜25/75である。複数の混合物の場合、高AA化AA−PVAの量が多いと、得られたエマルジョンが増粘する傾向がある。
そして、上記AA−PVAにおけるケン化度(AA−PVAの原料となるPVAのケン化度)は、通常50〜99.9モル%、さらに好ましくは60〜99.5モル%、特に好ましくは70〜99.8モル%、殊には93〜99.8モル%である。AA−PVAのケン化度が低すぎると、水への溶解性が低下する傾向がある。
また、上記AA−PVAの平均重合度(JIS K6726に準拠)は、通常300〜4000、特に好ましくは400〜2000、さらに好ましくは800〜1500である。
さらに、上記AA−PVAとしては、4重量%水溶液の粘度が、通常1.5〜20mPa・s、さらに好ましくは4〜12mPa・s、特に好ましくは5〜10mPa・sである。なお、上記粘度とは、JIS K6726に準拠して測定した20℃における4重量%水溶液の粘度をいう。
上記AA−PVAの4重量%粘度および平均重合度が小さすぎると、耐水接着性が低下する傾向がみられ、4重量%粘度および平均重合度が大きすぎると、増粘する傾向がみられ好ましくない。
本発明の乳化重合用分散剤は、上記のAA−PVAのほかに、未変性PVAやその他の変性種で変性されたPVAを含有していても良く、好ましくは未変性PVAを含有することが好ましい。
また、他のPVAを含有する際の含有量としては、変性種や変性度により異なるため一概には言えないが、AA−PVA100重量部に対して、通常、10〜1000重量部の範囲で用いられる。また、未変性PVAを用いる場合には、AA−PVA100重量部に対して好ましくは50〜500重量部、80〜120重量部用いられる。かかる含有量が多すぎると本発明の効果が得られにくくなる。
また併用する場合の未変性PVAのケン化度は、通常70〜100モル%、好ましくは80〜95モル%、特に好ましくは85〜90モル%である。かかるケン化度が低すぎると耐水性が低下する傾向がある。
重合度は、通常200〜3000、好ましくは300〜2000、特に好ましくは300〜1000である。かかる重合度が高過ぎると粘度安定性が低下する傾向があり、低すぎると耐水性が低下する傾向がある。
<酢酸ビニル系樹脂エマルジョン>
本発明の酢酸ビニルエマルジョンは、上記の特定のAA−PVAを乳化重合用分散剤として酢酸ビニルを乳化重合して得られるものである。
上記乳化重合の際に用いられる本発明の乳化重合用分散剤は、粉末状あるいは水溶液にして使用に供される。また、乳化重合用分散剤の使用量は、要求される酢酸ビニル系樹脂エマルジョンの粘度や要求される酢酸ビニル系樹脂エマルジョンの樹脂分等によって適宜設定されるものであるが、通常は上記酢酸ビニルモノマーおよび酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体の合計量に対して1〜50重量%、好ましくは2〜20重量%程度の範囲から適宜選択される。
本発明の酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを乳化重合にて製造する際には、上記酢酸ビニル、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体、そして前述の乳化重合用分散剤とともに、通常、重合開始剤が用いられる。
上記重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ系重合開始剤等があげられる。
上記重合開始剤の含有量は、酢酸ビニル100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、より好ましくは0.05〜5重量部、特に好ましくは0.1〜3重量部である。
さらに、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを乳化重合にて製造する際に用いられる配合成分としては、上記重合開始剤以外に、例えば、炭酸ナトリウム,酢酸ナトリウム,リン酸ナトリウム等のpH調整剤、重合調整剤、フタル酸エステルやリン酸エステル等の可塑剤、造膜助剤等があげられる。
本発明の酢酸ビニル系樹脂エマルジョンは、例えば、次のようにして製造される。すなわち、上記AA−PVAを含有する乳化重合用分散剤を準備し、これととともに酢酸ビニルモノマーを乳化重合することにより製造される。この際、先に述べた、重合開始剤、pH調整剤、重合調整剤、可塑剤、造膜助剤等の他の成分を必要に応じて配合する。
そして、上記乳化重合としては、例えば、[1]水、AA−PVAを含有する乳化重合用分散剤の全量、さらに酢酸ビニルの全量を反応缶に仕込み、昇温し重合する方法、[2]反応器に、水、AA−PVAを含有する乳化重合用分散剤の全量、酢酸ビニルの一部を仕込み、昇温し重合した後、残りの酢酸ビニルを滴下または分割添加して重合を継続する方法、[3]反応器に、水、AA−PVAを含有する乳化重合用分散剤の全量を仕込み昇温した後、酢酸ビニルを全量滴下または分割添加して重合する方法等があげられる。中でも、重合温度の制御が容易であるという点から、上記[2]、[3]の方法が好ましい。
上記乳化重合条件において、乳化重合時の温度としては、通常40〜100℃、好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃である。また、乳化重合の反応時間としては、通常1〜100時間、好ましくは3〜50時間、さらに好ましくは5〜30時間である。
そして、上記乳化重合にて得られる酢酸ビニル系樹脂エマルジョンに対して、必要に応じて他のエマルジョン、さらに架橋剤、高沸点溶剤等の体質顔料、酸化チタン等の有色顔料、防腐剤、防虫剤、消泡剤、小麦粉、木粉等の増量剤、少量のホルマリン系縮合樹脂等をその用途等に応じて適宜配合することができる。また、酢酸ビニル以外の単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アシピン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸またはメタクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ならびにこれらのアルカリ金属塩のアンモニウム塩類;アクリル酸メチル又はメタクリル酸メチル、アクリル酸エチル又はメタクリル酸エチル、アクリル酸プロピルまたはメタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチルまたはメタクリル酸ブチル等のエチレン性不飽和カルボン酸およびそのアルキルエステル類;ステアリン酸アリル、ラウリン酸アリル、ヤシ油脂肪酸アリル、オクチル酸アリル、酢酸アリル等の飽和カルボン酸のアリルエステル類;エチレン、プロピレン、α−ヘキセン、α−オクテン、α−デセン等のα−オレフィン類;プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテルなどのアルキルアリルエーテル類;アクリルアミドまたはメタクリルアミド、アクリロントリルまたはメタクリロントリル、N−メチロールアクリルアミドまたはN−メチロールメタクリルアミド、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート、グリシジルビニルエーテル、アセトアセトキシメチルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、スチレン、塩化ビニル等を少量含有していても良い。
上記他の単量体の使用量は、酢酸ビニルに対して通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下である。
本発明の酢酸ビニル系樹脂エマルジョンの用途としては、例えば、接着剤、塗料、繊維・紙・皮革等の加工剤、各種材料のバインダー等があげられる。特に接着剤として有用であり、上記接着剤としての使用に際しては、本発明の酢酸ビニル系樹脂エマルジョンは、通常固形分濃度が30〜60重量%程度にて使用され、その固形分中の添加剤量は1〜30重量%程度が好ましく、更に、充填剤、消泡剤(あるいは発泡剤)、着色剤、造膜助剤、防腐・防虫剤、防錆剤等の添加剤を適宜配合することにより接着剤用途に供される。また、対象となる接着物(被着体)としては、木材、紙、プラスチックス、繊維等があげられる。
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」は、重量基準を意味する。
[実施例1]
<AA−PVA(1)の作製>
PVA粉末(ケン化度95.1モル%、平均重合度1200)を酢酸で膨潤させ、攪拌しながら、65℃に昇温後、ジケテンを滴下し、反応させることにより、AA基を7.9モル%含有したAA−PVA(1a)を作製した。
PVA粉末(ケン化度96.1モル%、平均重合度1200)を酢酸で膨潤させ、攪拌しながら、65℃に昇温後、ジケテンを滴下し、反応させることにより、AA基を4.5モル%含有したAA−PVA(1b)を作製した。
得られたAA−PVA(1a)20部及びAA−PVA(1b)80部を混合することにより、AA−PVA(1)を得た。
得られたAA−PVA(1)は、ケン化度は95.9モル%、重合度は1200、AA化度は5.2モル%であった。かかる値は、AA−PVA(1a)と(1b)のケン化度、重合度、AA化度の値と配合比から算出した。
<半値幅の測定>
まずは、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製LC−10ADvp』)にコロナ荷電化粒子検出器(CAD)(esa社製『Corona plus CAD』)を取り付け、AA−PVA(1)のAA化度分布を表すクロマトグラムを得た。
測定条件は、移動相の流速は0.5mL/分とし、溶離液は2種類の溶媒A(水)、溶媒B(テトラヒドロフラン)を用い、かかる溶媒の混合比を時間とともに変化させるグラジエント溶出法で行った。まず、測定開始時は溶媒Aの比率が96%で、5分間96%に保った後、測定開始から42.5分後に溶媒Aが64%になるように直線的に変化させた。試料溶液は溶媒として水とテトラヒドロフランの体積比が96対4の比で混合した溶媒を用い、約2mg/mLの試料濃度に調整した。注入量は20マイクロリットルとした。カラムは逆相系カラムであるC18カラム(GLサイエンス社の『GL−Pack Nucleosil C18−100』)を1本使用した。また、カラムの温度は50℃に設定した。コロナ荷電化粒子検出器(CAD)は供給ガス(窒素ガス)1.2L、ネブライザー温度60℃、エバポレーターの温度は90℃で測定した。
次に、上記で測定された溶出時間をAA化度に変換するための検量線を作成するのであるが、検量線作成にあたっては平均のAA化度とケン化度が化学分析によって既知であるAA-PVA4点(それぞれのAA−PVAの平均AA化度の差は0.3モル%以上とすることが好ましい)のクロマトグラムを上記と同様に測定し、得られた生のクロマトグラムにピークトップと平均AA化度の関係をー次関数として、溶出時間をAA化度に変換した。
上記の手順により、AA−PVA(1)のAA化度分布を表すクロマトグラムの半値幅をAA化度に変換して、AA−PVA(1)のAA化度分布の広がりを表す指標を求めた結果、3.2モル%であった。
<酢酸ビニル系樹脂エマルジョンの作製>
上記で得られたAA−PVA(1)10部、未変性PVA(1)(ケン化度87.9モル%、平均重合度300)10部、さらに水109部を反応器(容量2.5リットル、撹拌翼パドル型)に仕込み、回転数230rpmで撹拌しながら、反応器内の温度を65〜72℃に昇温した。上記撹拌は重合反応終了まで同じ回転数にて続けた。昇温後、重合開始剤として過硫酸アンモニウムの10重量%水溶液を0.96部、酢酸ビニル10部を反応器に仕込み、1時間重合した。
そして反応器内の温度を70〜75℃に昇温後、酢酸ビニル90部を5時間かけて連続滴下し、過硫酸アンモニウムの10重量%水溶液を30分毎に0.19部で計10回の合計1.92重量部を5時間かけて分割仕込みをした。
ついで、過硫酸アンモニウムの10重量%水溶液0.32部を2回に分けて仕込み、1.5時間重合を行なった。その後、反応器を冷却して、単量体として残った酢酸ビニルを除去し、pH調整剤0.61部と粘度安定化剤(亜硫酸水素ナトリウム)0.35部を添加することにより酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを製造した。
[比較例1]
<酢酸ビニル系樹脂エマルジョンの作製>
実施例1にて使用したAA−PVA(1)に代えて、AA−PVA(2)(ケン96.3モル%、平均重合度1200、AA化度5.2モル%、半値幅2.2モル%)を用いた。それ以外は実施例1と同様に酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを製造した。
[比較例2]
<酢酸ビニル系樹脂エマルジョンの作製>
実施例1にて使用したAA−PVA(1)に代えて、AA−PVA(3)(ケン96.4モル%、平均重合度1200、AA化度4.5モル%、半値幅1.6モル%)を用いた。それ以外は実施例1と同様に酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを製造した。
このようにして得られた各酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを用いて、下記に示す耐水接着力評価試験および粘度安定性試験に供した。その結果を後記の表1に併せて示す。
[耐水接着力評価試験]
得られた酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを接着剤として用い、下記に示す条件にて、BSEN 204:2001 DIN D3に準拠して引張剪断試験を行い、耐水接着力の評価を行なった。
・接着剤塗布量:250〜300g/m
・接着剤塗布面積:20×100mm
・試験片形状:2プライラップジョイント
・圧締条件:0.7MN/m
・圧締時間:24時間
・放置、浸漬条件:室温(25℃)×7日放置+室温(25℃)水浸漬×4日
・引張せん断試験条件:クロスヘッドスピード50mm/分
・試験片数:10
[粘度安定性試験]
上記にて得られた酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを23℃で3ヶ月密閉保存し、目視で流動性を確認し、以下のように評価した。
○;流動性あり
△:やや流動性があるが、ゲル化している
×:流動性なし
Figure 0006362446
上記結果から、AA化度分布の半値幅の大きいAA−PVAを用いた実施例1のエマルジョンでは、耐水接着力と常温保存時の粘度安定性の双方ともに優れた酢酸ビニル系樹脂エマルジョンが得られた。
本発明の乳化重合用分散剤を用いて乳化重合により得られてなる酢酸ビニル系樹脂エマルジョンは、例えば、各種接着剤、塗料、繊維・紙・皮革等の加工剤、各種材料のバインダー等、広範な用途に有用である。特に、木材、紙、プラスチックス、繊維等の接着剤に好適に用いられる。

Claims (4)

  1. アセトアセチル基変性度分布の半値幅が2.3モル%以上であるアセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂を含有することを特徴とする酢酸ビニル系樹脂エマルジョン乳化重合用分散剤。
  2. アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度が、1〜20モル%である請求項1記載の乳化重合用分散剤。
  3. 請求項1又は2に記載の乳化重合用分散剤を用いて酢酸ビニルを乳化重合して得られる酢酸ビニル系樹脂エマルジョン。
  4. 請求項3記載の酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを含有することを特徴とする接着剤。
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