以下に、本発明の実施の形態にかかる誘導加熱調理器および非接触給電システムを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる誘導加熱調理器の分解斜視図である。本実施の形態の誘導加熱調理器100は、受電機器60と無線通信により通信可能である。図1に示すように、本実施の形態の誘導加熱調理器100は、第一の加熱部11、第二の加熱部12、第三の加熱部13、およびグリル部14を備える。第一の加熱部11、第二の加熱部12および第三の加熱部13は、本体筐体7に収容される。また、誘導加熱調理器100は、被加熱物または受電機器60を載置可能な天板4を有している。以下、本体筐体7および本体筐体7に収容される各部、すなわち誘導加熱調理器100のうち天板4を除く部分を、本体と呼ぶこともある。なお、以下では、本発明にかかる非接触給電装置の一例として誘導加熱調理器100を例に挙げて説明するが、本発明にかかる非接触給電にかかる構成および動作は、誘導加熱調理器100に限らず、受電機器60と通信を行う機能を有し非接触給電を行う非接触給電装置に適用可能である。
天板4は、金属で構成される金属負荷である被加熱物を誘導加熱するための加熱口として、第一の加熱口1、第二の加熱口2および第三の加熱口3を備える。第一の加熱口1、第二の加熱口2および第三の加熱口3は、第一の加熱部11、第二の加熱部12および第三の加熱部13の加熱範囲にそれぞれ対応する位置に設けられ、各々が被加熱物を載置可能である。各加熱口に載置された被加熱物は、各加熱口に対応する加熱部により誘導加熱される。また、第一の加熱口1、第二の加熱口2および第三の加熱口3に、コイルを備える受電機器60が天板4の第一の加熱口1に載置された場合には、誘導加熱調理器100は、受電機器60に対して非接触給電を行う。図1では、負荷として被加熱物5が天板4の第二の加熱口2に載置され、受電機器60が天板4の第一の加熱口1に載置された例を示している。
図1に示した例では、本体の手前側に左右に並べて第一の加熱部11と第二の加熱部12が設けられ、本体の奥側ほぼ中央に第三の加熱部13が設けられている。なお、手前とは、誘導加熱調理器100を操作者が利用する際に操作者が位置する側であり、図1の紙面の左下側である。なお、各加熱口の配置はこれに限るものではない。例えば、3つの加熱口を概略直線状に横に並べて配置しても良い。また、第一の加熱部11の中心と第二の加熱部12の中心との奥行き方向の位置が異なるように配置しても良い。また、本実施の形態1では3つの加熱部が設けられているが、加熱部の数は3つに限定されず、1つまたは2つであってもよく、4つ以上であってもよい。天板4には、加熱部の数に応じた加熱口が設けられる。
天板4は、全体が耐熱強化ガラス、結晶化ガラス等の赤外線を透過する材料で構成されており、誘導加熱調理器100の本体筐体7の上面の開口外周との間にゴム製パッキン、またはシール材、またはこれらの組み合わせを介して水密状態に固定される。天板4には、第一の加熱部11、第二の加熱部12、および第三の加熱部13のそれぞれの加熱範囲、すなわち各加熱口を示す範囲に、被加熱物または受電機器の大まかな載置位置を示す円形の表示、すなわち鍋位置表示が、塗料の塗布または印刷等により形成されている。
天板4には、第一の加熱部11、第二の加熱部12、および第三の加熱部13で被加熱物を加熱する際の投入火力すなわち投入電力、および調理メニューの設定を受け付けるための入力装置すなわち受信部として、操作部40a、操作部40b、および操作部40cが設けられている。調理メニューとしては、例えば、湯沸しモード、揚げ物モードなどが挙げられる。なお、以下、操作部40a、操作部40b、および操作部40cを操作部40と総称する場合がある。操作部40a、操作部40b、および操作部40cは、例えば、ボタン、レバー、タッチパネルである。
天板4には、報知手段として、誘導加熱調理器100の動作状態、操作部40および受電機器60から入力された入力情報および制御内容、無線通信中の受電機器60に関する情報、無線通信の有無等を表示する表示部41a、表示部41b、および表示部41cが設けられている。すなわち、表示部41a,41b,41cは、誘導加熱調理器100の動作状態を示す情報、誘導加熱調理器100に対する設定情報、受電機器60から受信した制御信号に基づく情報、および受電機器60との間の通信状態を示す情報のうち少なくとも1つを表示する。表示部41a、表示部41b、および表示部41cは、例えば液晶モニタ、LED(Light Emitting Diode)で構成される。以下、表示部41a、表示部41b、および表示部41cを表示部41と総称することがある。なお、本実施の形態における報知とは、画像および文字等による表示だけでなく音により、操作者に認識される動作を含んでいてもよい。
なお、図1の例では、操作部40a〜40cが加熱口ごとに設けられているが、加熱口の少なくとも2つ以上を一括した操作部を設けてもよい。また、同様に、加熱口の少なくとも2つ以上を一括した表示部を設けてもよい。また、操作部40と表示部41を兼ねた表示操作部を設けてもよく、操作部および表示部の具体的な構成は特に限定するものではない。
グリル部14は、負荷加熱手段として、ヒータを有する。また、グリル部14は、第一の加熱部11、第二の加熱部12、および第三の加熱部13と同様に、加熱手段としてコイルを備えて誘導加熱を行ってもよい。この場合、グリル部14の加熱手段に対しても、第一の加熱部11、第二の加熱部12、および第三の加熱部13と同様に駆動回路を備える。以下では、グリル部14は負荷加熱手段としてヒータを用いる前提として、本実施の形態では動作の説明を省略する。グリル部14が誘導加熱を行う場合には、グリル部14の加熱手段に対して、第一の加熱部11、第二の加熱部12、および第三の加熱部13に対応する制御と同様の制御を実施すればよい。
天板4の下方であって本体筐体7の内部には、上述したように、第一の加熱部11、第二の加熱部12、および第三の加熱部13が設けられる。各々の加熱部はコイル、すなわち加熱コイルで構成されている。
さらに、誘導加熱調理器100の本体筐体7の内部には、第一の加熱部11、第二の加熱部12、および第三の加熱部13の加熱コイルに電力を供給する駆動部50と、駆動部50を含め誘導加熱調理器100全体の動作を制御するための制御部45と、受電機器60との間での無線通信を実行する通信部6とが設けられている。誘導加熱調理器100と受電機器60の間の無線通信は、例えば、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)または赤外線通信を用いることができる。
第一の加熱部11、第二の加熱部12、および第三の加熱部13を構成する各加熱コイルは、略円形の平面形状を有し、絶縁皮膜された任意の金属からなる導電線を円周方向に巻き付けることにより構成される。加熱コイルを構成する金属としては、例えば銅、アルミを用いることができる。誘導加熱調理器100では、駆動部50により高周波電力が各加熱コイルに供給されることで、誘導加熱動作が行われる。
駆動部50は、各加熱部にそれぞれ対応する3つの駆動回路51を備える。図2は、実施の形態1にかかる誘導加熱調理器100の駆動回路51の構成例を示す図である。図2では、第一の加熱部11に対応する駆動回路51の構成例を示すが、各加熱部に対応する駆動回路は同一であってもよいし、加熱部ごとに異なっていてもよい。
駆動回路51は、図2に示すように、直流電源回路22、インバータ回路23、共振コンデンサ24、入力電流検出部25aおよび出力電流検出部25bを備える。
入力電流検出部25aは、交流電源21から直流電源回路22へ入力される電流、すなわち駆動回路51へ入力される電流を検出し、検出した値すなわち入力電流値を示す電圧信号を制御部45へ出力する。交流電源21は、例えば商用交流電源である。
直流電源回路22は、ダイオードブリッジ22a、リアクタ22b、平滑コンデンサ22cと、を備え、交流電源21から入力される交流電圧を直流電圧に変換して、インバータ回路23へ出力する。
インバータ回路23は、スイッチング素子としてのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)23a、23bが直流電源回路22の出力に直列に接続された、いわゆるハーフブリッジ型のインバータである。インバータ回路23では、フライホイールダイオードとしてダイオード23c、23dがそれぞれIGBT23a、23bと並列に接続されている。インバータ回路23は、直流電源回路22から出力される直流電力を20kHz〜80kHz程度の高周波の交流電力、いわゆる高周波電力に変換して、加熱コイルである第一の加熱部11と共振コンデンサ24とからなる共振回路に供給する。
共振コンデンサ24は第一の加熱部11に直列接続されており、この共振回路は第一の加熱部11のインダクタンスおよび共振コンデンサ24の容量等に応じた共振周波数を有する。なお、第一の加熱部11のインダクタンスは、受電機器60のコイルまたは被加熱物5が磁気結合した際に受電機器60のコイルまたは被加熱物5の特性に応じて変化し、このインダクタンスの変化に応じて共振回路の共振周波数が変化する。
このように構成することで、第一の加熱部11には数十A程度の高周波電流が流れ、流れる高周波電流により発生する高周波磁束によって第一の加熱部11の直上の天板4上に被加熱物5が載置された場合には、被加熱物5が誘導加熱される。一方、第一の加熱部11の直上の天板4上に受電機器60が載置された場合には、上述した高周波磁束によって受電機器60に電磁誘導により電流が流れることにより受電機器60への給電が行われる。すなわち、第一の加熱部11の直上の天板4上に受電機器60が載置された場合、第一の加熱部11であるコイルは送電側コイルとして機能し、受電機器60のコイルは受電側コイルとして機能する。
スイッチング素子であるIGBT23a、23bは、例えばシリコン系からなる半導体で構成されているが、炭化珪素、あるいは窒化ガリウム系材料などのワイドバンドギャップ半導体を用いた構成でも良い。
スイッチング素子にワイドバンドギャップ半導体を用いることで、スイッチング素子の通電損失を減らすことができ、またスイッチング周波数すなわち駆動周波数を高周波にしても、すなわち高速にスイッチングしても駆動部50の放熱が良好となる。このため、駆動部50の放熱フィンを小型にすることができ、駆動部50の小型化および低コスト化を実現することができる。
出力電流検出部25bは、第一の加熱部11と共振コンデンサ24とからなる共振回路に接続されている。出力電流検出部25bは、例えば、第一の加熱部11に流れる電流すなわち駆動回路51から出力される電流を検出し、検出した値に相当する電圧信号を制御部45に出力する。
図3は、IGBT23a、23bに制御部45から入力される制御信号の一例を示す図である。この制御信号は、例えば、IGBT23a、23bをオンとすることを示す値とIGBT23a、23bをオフとすることを示す値とのいずれかの値を示す信号である。図3の例では、制御信号の信号値がHighである場合にオンを示し、制御信号の信号値がLowである場合にオフを示す例を示しているが、制御信号の値とIGBT23a、23bのオン/オフとの関係はこの例に限定されない。IGBT23a、23bはスイッチング周期と呼ばれる繰り返し周期でオン/オフする。オン時間、オフ時間はそれぞれスイッチング周期の半分の時間である。図3に示すように、IGBT23aと、IGBT23bとでは、オンするタイミングに180°の位相差を設ける。これにより、IGBT23aおよびIGBT23bは、同時にオンすることはない。
スイッチング周期を短くすると、スイッチング周期の逆数であるスイッチング周波数が高くなり、第一の加熱部11のインピーダンスが大きくなるため、駆動回路51が供給する高周波電流が小さくなり、出力電力が抑制される。反対に、スイッチング周期を長くすると、スイッチング周波数が低くなり、第一の加熱部11のインピーダンスが小さくなるため、駆動回路51が供給する高周波電流が大きくなり、出力電力が上昇する。上記の制御方法は、スイッチング周波数の高さによって出力電力を制御するため、スイッチング周波数制御またはパルス周波数制御と呼ばれている。なお、IGBT23aおよびIGBT23bが同時にオンすると、インバータ回路23が短絡するため、実際の回路ではIGBT23a、23bがともにオフするデッドタイムと呼ばわれる期間を設ける。このため、オン時間はスイッチング周期の半分の時間より短く、オフ時間はスイッチング周期の半分の時間より長くなる。
図4は、IGBT23a、23bのオン/オフを制御する制御信号の別の一例を示す図である。図3の例と同様に、制御信号は、IGBT23a、23bをオンとすることを示す値とIGBT23a、23bをオフとすることを示す値とのいずれかの値を示す信号である。IGBT23a、23bは、図3の例と同様に、スイッチング周期と呼ばれる繰り返し周期でオン/オフする。また、図3の例と同様に、IGBT23aと、IGBT23bとでは、オンするタイミングに180°の位相差を設ける。このため、IGBT23aおよびIGBT23bは、同時にオンすることはない。
図4の例では、図3の例と異なり、オン時間はスイッチング周期の半分よりも短い時間である。IGBT23a、23bが両方ともオフしている時、インバータ回路23は電力を出力しない。このため、オン時間を短くすると、駆動回路51が、第一の加熱部11に供給する高周波電流が小さくなり、出力電力が抑制される。オン時間のスイッチング周期に対する比をデューティー比と呼び、上記の制御方法は、デューティー比によって出力電力を制御するため、デューティー比制御と呼ばれている。図4の例では、図3の例に比べデューティー比が小さいため、図3の例に比べ駆動回路51からの出力電力が小さくなる。
図5は、実施の形態1にかかる誘導加熱調理器100の別の駆動回路51の例を示す図である。図5では、図2と同様の構成要素は、図2と同一の符号を付している。図5に示す構成例では、図2に示した駆動回路51に対して、スイッチング素子としてのIGBT23e、23fと、フライホイールダイオードとしてダイオード23g、23hとを追加した構成である。図5に示したインバータ回路23は、図2に示したインバータ回路23にIGBT23e、23fとダイオード23g、23hとを追加した構成を有し、いわゆるフルブリッジ型のインバータである。図5に示したインバータ回路23は図2に示したインバータ回路23と同様に、直流電源回路22から出力される直流電力を20kHz〜80kHz程度の高周波の交流電力に変換して、第一の加熱部11と共振コンデンサ24からなる共振回路に供給する。
図6は、図5に示したIGBT23a、23b、23e、23fのオン/オフを制御する制御信号の例を示す図である。IGBT23a、23b、23e、23fはスイッチング周期と呼ばれる繰り返し周期でオン/オフする。オン時間、オフ時間はそれぞれスイッチング周期の半分の時間である。IGBT23aと、IGBT23bとでは、オンするタイミングに180°の位相差を設ける。これにより、IGBT23aおよびIGBT23bは、同時にオンすることはない。IGBT23eと、IGBT23fとでは、オンするタイミングに180°の位相差を設ける。これにより、IGBT23eおよびIGBT23fは、同時にオンすることはない。
IGBT23aおよびIGBT23f、もしくはIGBT23bおよびIGBT23eがともにオンしている期間において、インバータ回路23が電力を供給する。IGBT23aがオンするタイミングと、IGBT23eがオンするタイミングとに位相差を設けることで、IGBT23aおよびIGBT23f、もしくはIGBT23bおよびIGBT23eがともにオンする期間を設け、インバータ回路23が供給する電力を制御する。上記の制御方法は、位相差によって出力電力を制御するため、位相制御と呼ばれている。なお、IGBT23aおよびIGBT23b、もしくはIGBT23eおよびIGBT23fが同時にオンすると、インバータ回路23が短絡する。このため、実際の回路では、IGBT23aおよびIGBT23bがともにオフする期間と、IGBT23eおよびIGBT23fがともにオフする期間とを設ける。このため、オン時間はスイッチング周期の半分の時間より短く、オフ時間はスイッチング周期の半分の時間より長くなる。
なお、実施の形態1に係る誘導加熱調理器100の駆動回路51の構成は、図2、図5に示す例に限るものではなく、例えば、一石電圧共振回路などの回路方式により構成することもできる。一石電圧共振回路は図2のインバータ回路23と同様に、直流電源回路22から出力される直流電力を20kHz〜80kHz程度の高周波の交流電力に変換して、第一の加熱部11と共振コンデンサ24からなる共振回路に供給する。
制御部45は、入力電流検出部25a、出力電流検出部25b、操作部40a、通信部6から与えられた信号に応じて、駆動部50が第一の加熱部11、第二の加熱部12、第三の加熱部13に供給する高周波電力を制御するための制御信号を送信する。
また、制御部45は、誘導加熱調理器100の動作状態、操作部40、および受電機器60の制御内容等を報知する制御信号を通信部6に送信する。
通信部6は、受電機器60と無線通信を行うための無線通信手段であり、無線信号を送受信することができる。具体的には、制御部45から受信した制御信号に対して受電機器60との間の通信方式に応じた送信処理を施し、無線信号として受電機器60に送信することができる。または、受電機器60から無線信号として送信された情報を受信して、無線信号から情報を抽出して制御部45に送信することができる。または、上述した無線信号の送信動作と無線信号の受信動作との両方の動作を行うことができる。
通信部6は、制御部45と配線により接続されているが、配線が長いほどノイズの影響を受けやすいため、通信部6と制御部45は近くに配置し、通信部6と制御部45を接続する配線を短くすることが望ましい。
通信部6は、内部に無線信号を送信または受信、または送受信するアンテナ部を有しており、より無線信号を送受信しやすくするため、通信部6のアンテナ部が天板4の直下となるように配置することが望ましい。
なお、制御部45は、処理回路により実現されるが、この処理回路は、専用のハードウェアであっても、メモリとメモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)とを備える制御回路であってもよい。ここで、メモリとは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disk)等が該当する。
制御部45が、専用のハードウェアで実現される場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものである。
制御部45がCPUを備える制御回路で実現される場合、この制御回路は例えば図7に示す構成の制御回路400である。図7に示すように制御回路400は、CPUであるプロセッサ401と、メモリ402とを備える。制御部45が制御回路400により実現される場合、プロセッサ401がメモリ402に記憶された、制御部45の処理に対応するプログラムを読み出して実行することにより実現される。また、メモリ402は、プロセッサ401が実施する各処理における一時メモリとしても使用される。
図8は、受電機器60の構成例、および誘導加熱調理器100の制御部45の構成例を示す図である。なお、図8では、操作部40と表示部41を兼ねた表示操作部43を備える例を示している。図8に示すように、受電機器60は、電力の受電に用いるコイル61と、受電した電力を所望の電圧および電流となるように変換するとともに、通信部64を介して受電機器60の動作のために必要な電力、電流および電圧といった情報を外部へ送信する変換回路62と、変換された電力によって動作する負荷63と、誘導加熱調理器100と無線通信を行う通信部64とを備える。受電機器60の変換回路62は、受電機器60に電力が供給されると、受電機器60であることを示す情報とともに受電機器60の動作のために必要な電力、電流および電圧といった情報を、通信部64を介して送信する。受電機器60の動作のために必要な電力、電流および電圧といった情報を以下、必要電力に関する情報と呼ぶ。受電機器60は、例えば、コーヒーミルまたはブレンダー、ジャーポットである。受電機器60がコーヒーミルまたはブレンダーなどである場合には、負荷63はモータであり、受電機器60がジャーポットなどである場合には、負荷63は電熱線により実現されるヒータである。
また、図8に示すように、制御部45は、演算部451、通信周期検出部452および駆動制御部453を備える。図8では、誘導加熱調理器100のうち第一の加熱部11と第一の加熱部11の制御にかかる構成要素を図示し、第二の加熱部12および第三の加熱部13と、これらの制御にかかる構成要素の図示を省略している。
次に実施の形態1にかかる誘導加熱調理器100の動作を説明する。以下、第一の加熱部11、第二の加熱部12および第三の加熱部13をそれぞれ加熱部11、加熱部12および加熱部13ともいう。
演算部451は、加熱部11〜13のそれぞれに対応する加熱口に載置された負荷が、被加熱物5であるまたは受電機器60であるかを判定する処理、すなわち負荷判定処理を実施する。演算部451は、加熱部11〜13にそれぞれ載置された負荷が、被加熱物5である場合、操作部40から入力される入力情報に基づいて加熱部11〜13ごとの目標電力を算出し、目標電力を駆動制御部453へ指示する。目標電力は、操作部40から入力された調理メニューまたは投入火力などに応じて算出される指令値である。駆動制御部453は、目標電力と、入力電流検出部25aによる電流の検出値と、出力電流検出部25bによる電流の検出値とに基づいて、駆動回路51のインバータ回路23の各スイッチング素子のオン/オフを制御するための制御信号を生成し、インバータ回路23へ入力する。
投入火力が電力により指示されていない場合、例えば、強、中、弱などにより指示されている場合、演算部451は、入力情報を電力に変換して、変換により得られた値を目標電力に設定する。また、調理メニューにより指示されている場合、演算部451は、あらかじめ定められた調理メニューごとの投入電力の動作情報に従って、加熱部11〜13ごとの目標電力を算出する。投入電力の動作情報とは、例えば、第一の加熱口1、第二の加熱口2、第三の加熱口3の温度を検出する図示しない温度センサを用いて、第一の加熱口1、第二の加熱口2、第三の加熱口3の温度が第1の温度となるまでは投入電力を第1の値に設定し、第一の加熱口1、第二の加熱口2、第三の加熱口3の温度が第1の温度になった後は、投入電力を第2の値に設定するなどの動作を示す情報である。
演算部451は、加熱部11〜13にそれぞれ載置された負荷が、受電機器60である場合、受電機器60への非接触給電を実施するための制御を行うとともに、受電機器60の動作を制御可能な場合には、受電機器60を制御するための制御信号を生成して通信部6経由で受電機器60へ送信する。
通信周期検出部452は、通信部6が実行する無線通信に周期性が有るか否かを判定し、無線通信に周期性が有る場合、周期を算出する。
図9は、本実施の形態の負荷判定処理手順の一例を示すフローチャートである。誘導加熱調理器100は、操作者が操作部40を操作することにより、動作の開始を指示する動作指令が入力される。誘導加熱調理器100は、動作指令が入力されると(ステップS1)、まず、受電機器60が無線通信可能となる電力を負荷へ給電する(ステップS2)。具体的には、操作部40から動作指令が入力されたことを通知されると、演算部451は、あらかじめ定められた一定期間、あらかじめ定められた値を目標電力として、駆動制御部453へ入力する。駆動制御部453は、目標電力に基づいて、駆動回路51のインバータ回路23の各スイッチング素子のオン/オフを制御するための制御信号を生成し、インバータ回路23へ入力する。
誘導加熱調理器100は、負荷から無線通信があったか否かを判断する(ステップS3)。具体的には、演算部451は、通信部6を介して負荷から負荷が受電機器であることを示す情報、および必要電力に関する情報が格納された無線信号を受信したか否かを判断する。負荷から無線通信があった場合(ステップS3 Yes)、演算部451は、負荷が受電機器であると判定し(ステップS4)、受電機器60からの通信内容、すなわち受電機器60から受信した必要電力に関する情報に応じた電力での加熱コイルの動作を開始させ(ステップS5)、負荷判定処理を終了する。
ステップS5では、具体的には、演算部451は、必要電力に関する情報に基づいて、目標電力を決定して、目標電力を駆動制御部453へ指示する。駆動制御部453は、目標電力と、入力電流検出部25aによる電流の検出値と、出力電流検出部25bによる電流の検出値とに基づいて、駆動回路51のインバータ回路23の各スイッチング素子のオン/オフを制御するための制御信号を生成し、インバータ回路23へ入力する。
一方、演算部451は、負荷から無線通信が無かった場合(ステップS3 No)、負荷判定期間が経過したか否かを判断する(ステップS6)。具体的には、演算部451は、負荷判定の動作の開始からの経過時間すなわちステップS2で電力を供給し始めてからの経過時間とあらかじめ決めた負荷判定期間とを比較し、経過時間が負荷判定期間に達したか否かを判断する。負荷判定期間が経過していない場合(ステップS6 No)、演算部451はステップS2へ戻る。負荷判定期間が経過した場合(ステップS6 Yes)、演算部451は、負荷が被加熱物5であると判定し(ステップS7)、操作部40を介してなされた入力に基づく火力での加熱コイルの動作を開始させ(ステップS8)、負荷判定処理を終了する。以上のように、本実施の形態の誘導加熱調理器100は、動作開始の指令を受領すると、一定期間の間あらかじめ定められた電力を出力するよう駆動回路51を制御し、一定期間の間に受電機器であることを示す無線信号を受信した場合には、第一の加熱部11に対応する負荷が受電機器であると判定し、一定期間の間に受電機器であることを示す無線信号を受信しない場合には、第一の加熱部11に対応する負荷が被加熱物であると判定する。
本実施の形態では、制御部45は、非接触給電を開始した後に、通信部6と受電機器60が無線通信を行う期間において、駆動部50が供給する高周波電力を変更する制御、すなわち電力変更制御を行う。以下、電力変更制御について説明する。
図10は、駆動回路51が第一の加熱部11へ供給する高周波電力と、通信部6が無線通信を行う期間との関係の一例を示す図である。以下、第一の加熱部11を例に説明するが、第二の加熱部12、第三の加熱部13においても、同様の制御を行ってもよい。図10では、上段に第一の加熱部11に入力される電流を示し、下段に無線通信の状態を示している。また、図10の上段の点線は、本来の指令値に対応する電流の振幅である出力指令値振幅を示している。図10に示した例では、制御部45の演算部451は、通信部6が無線通信を実行する期間すなわち第1の期間において、駆動回路51が供給する高周波電力を停止させる。具体的には、例えば、制御部451は、駆動制御部453に本来の指令値とは異なる制御目標値である目標電力として0を出力する。これにより、第一の加熱部11で発生する漏洩磁束を少なくし、無線信号への漏洩磁束による干渉を抑制する。なお、高周波電力の供給が停止された受電機器60が有する図示しない内部の電池などで動作の継続が可能な時間を過ぎてしまうと、受電機器60は通信を継続できなくなる。したがって、高周波電力を停止させる期間は、受電機器60が有する通信部64が通信部6との間での無線通信を継続可能な時間、すなわち受電機器60が内部の電池などにより通信の動作を実施可能な時間より短い時間であるとする。
また、受電機器60が、高周波電力の停止時間に、無線通信の内容、すなわち必要電力に関する情報をすべて送信できない場合には、情報を分割して複数回に分けて送信するようあらかじめ受電機器60を構成しておく。または、演算部451が、通信部6を介して、情報を分割して複数回に分けて送信するよう受電機器60へ指示してもよい。ここで、通信部6が無線通信を行う期間は、通信部6が受電機器60への送信を行う期間、および受電機器60から受信を行う期間である。演算部451は、受電機器60への送信を行う期間は通信部6から取得することができる。また、受電機器60から受信を行う期間は、後述するように通信周期検出部452により周期性を元に推定される期間、または受信機器60から送信された無線信号を通信部6が検出した期間である。
図11は、駆動回路51が第一の加熱部11へ供給する高周波電力と、通信部6が無線通信を行う期間との関係の別の一例を示す図である。図11では、上段に第一の加熱部11に入力される電流を示し、下段に無線通信の状態を示している。また、図11の上段の点線は、本来の指令値、すなわち受電機器60の必要電力に関する情報に基づいて決定される電流の振幅である出力指令値振幅を示している。図11に示した例では、通信部6が無線通信を実行する期間すなわち第1の期間において、駆動回路51が供給する高周波電力を抑制する。すなわち図11に示した例では、通信部6が無線通信を実行する期間すなわち第1の期間では、駆動回路51が供給する高周波電力は、無線通信を実行していない期間すなわち第2の期間に比べて小さい。
具体的には、例えば、演算部451は、駆動制御部453に対して、本来の指令値の替わりに指示値として無線通信を実行していない期間に比べて小さい電力を指定する。これにより、第一の加熱部11で発生する漏洩磁束を少なくし、無線信号への漏洩磁束による干渉を抑制し、かつ、図10に示したように供給する高周波電力を停止する場合と比べて、より本来の指令値に近い出力電力を得ることができる。本来の指令値とは、漏洩磁束を少なくするために出力電力を抑制する前の指令値であり、受電機器60の必要電力に関する情報に基づいて算出される指令値である。
通信周期検出部452は、通信部6から出力される通信開始および終了を示す信号に基づいて、通信部6と受電機器60との間の無線通信に周期性が有るか否かを判断する。なお、通信部6は、受電機器60と無線接続すると、受電機器60との間の通信の開始および終了時に通信周期検出部452へそれぞれ通信開始および終了を示す信号を出力する。通信周期検出部452は、通信開始および終了を示す信号に基づいて、例えば、通信開始および終了の時刻を記憶し、過去の通信開始の時刻から、通信開始の時刻間の時間差Δt1を算出する。通信周期検出部452は、複数のΔt1を算出し、複数のΔt1を統計処理して、標準偏差または分散があらかじめ定められたしきい値以下である場合に、周期性が有ると判定する。周期性の有無の判定方法はこの例に限定されない。
通信周期検出部452は、通信部6と受電機器60の間の無線通信に周期性が有ると判断した場合、複数のΔt1に基づいて通信部6と受電機器60の間の無線通信の周期を算出する。また、通信開始の時刻から終了までの時間を算出し、算出した値に基づいて、周期内での、通信の継続時間すなわち無線通信を実行する期間を算出する。周期内において、無線通信を実行する期間を除いた期間を、無線通信を実行しない期間、または無線通信の休止期間と呼ぶ。以上の処理により、通信周期検出部452は、無線通信を実行する期間と無線通信の休止期間とを把握することができる。通信周期検出部452は、無線通信を実行する期間と無線通信の休止期間との開始時刻を予測し、演算部451へ通知する。
演算部451は、予測した無線通信を実行する期間が通知されると、通知された無線通信を実行する期間の開始とともに、または通知された無線通信を実行する期間の開始の直前に、上述したように、駆動制御部453に出力する目標電力を変更する制御を行う。無線通信の実行を検出してから、駆動制御部453に出力する指示値を変更すると、無線通信の開始から目標電力が変更されるまでの間、第一の加熱部11で発生する漏洩磁束が無線信号に干渉する可能性が有る。本実施の形態では、無線通信の周期を求め、無線通信を実行する期間を予測して上記の制御を行うことで、無線通信を実行する期間において、はじめから第一の加熱部11で発生する漏洩磁束を抑制することができるため、通信品質を向上させることができる。
なお、通信周期検出部452は、通信部6と受電機器60が無線通信に周期性が無いと判断した場合には、演算部451にその旨を通知し、無線通信の開始および終了を検出するたびに、演算部451に、無線通信の開始および終了を通知する。演算部451は、無線通信の開始が通知されると、駆動制御部453に出力する目標電力を変更し、無線通信の終了が通知されると駆動制御部453に出力する目標電力を本来の指令値、すなわち変更する前の目標電力に戻す。
図12は、本実施の形態1の電力変更制御手順の一例を示すフローチャートである。図12は、受電機器60との通信中に電力を変更する処理を実施する場合のフローチャートである。まず、誘導加熱調理器100の制御部45は、操作部40の操作または受電機器60からの制御信号により非接触給電の開始を指示されると、非接触給電を開始する。操作部40の操作または受電機器60からの制御信号により、非接触給電の動作の停止を指示する命令である動作停止命令が入力されたか否かを判断する(ステップS11)。動作停止命令が入力された場合(ステップS11 Yes)、制御部45は、非接触給電を終了する(ステップS12)。
動作停止命令が入力されていない場合(ステップS11 No)、誘導加熱調理器100は、非接触給電動作を継続する(ステップS13)。具体的には、制御部45は、受電機器60からの制御信号に基づいて目標電力を生成して、駆動回路51へ指示し、駆動回路51は第一の加熱部11へ高周波電力を入力する。初期状態では、目標電力は、指令値である。
また、加熱動作の継続中に、制御部45は、通信部6と受電機器60が行っている無線通信の周期を検出する(ステップS14)。具体的には、通信周期検出部452が、通信部6と受電機器60が行っている無線通信に周期性が有るか否かの判定を行い、周期性が有ると判定した場合、周期の算出処理と無線通信を実行する期間の予測処理とを実施する。
制御部45は、通信部6と受電機器60が行っている無線通信に周期性が有ると判定した場合(ステップS15 Yes)、無線通信を実行する期間の予測に基づいて、第一の加熱部11へ供給する高周波電力を変更する制御を行い(ステップS16)、ステップS11へ戻る。具体的には、制御部45は、上述したように、無線通信を実行する期間の予測に基づいて、無線通信を実行する期間に第一の加熱部11へ供給する高周波電力を抑制し、無線通信の休止期間では、高周波電力を元に戻す制御を実施する。
制御部45は、通信部6と受電機器60が行っている無線通信に周期性が無いと判定した場合(ステップS15 No)、無線通信の実行を検出してから第一の加熱部11へ供給する高周波電力を変更する制御を行い(ステップS17)、ステップS11へ戻る。上述したように、制御部45は、第二の加熱部12、第三の加熱部13についてもそれぞれ同様の制御を実施してもよい。
また、制御部45は、受電機器60に対して、無線通信を行う周期を指定する制御信号を生成し、通信部6経由で受電機器60へ送信するようにしてもよい。例えば、制御部45は、受電機器60から受電機器60の種類を示す情報を受信し、受電機器60の種類に基づいて頻繁な通信を必要としないと判断した場合には、無線通信の回数を標準値より少なくする。これにより、駆動回路51が供給する高周波電力を可変する回数を少なくできるため、より正確に電力を供給することができる。
以上の処理により、駆動回路51は、通信部6と受電機器60が無線通信を実行しない期間において、第一の加熱部11に供給する高周波電力を抑制または停止することができる。無線通信を行う時に第一の加熱部11への出力電力を抑制または停止する制御を行う場合、平均出力電力が指令値よりも小さくなるが、無線通信に周期性がある場合、無線通信の休止期間に駆動回路51が供給する高周波電力を本来の指令値に対応する値より上昇させておけば、より本来の指令値に近い平均出力電力を第一の加熱部11に供給することができる。例えば、本来の指令値をXとした場合、無線通信を実行する期間がTaであり、無線通信の休止期間がTbである場合、制御部45は、無線通信を実行する期間の目標電力をX−ΔXとし、無線通信の休止期間の目標電力をX+ΔX×Ta/Tbとする。
また、誘導加熱調理器100は、図9に示した負荷判定処理の替わりに図13に示す処理を実施してもよい。図13は、本実施の形態の負荷判定処理手順の別の一例を示すフローチャートである。図13に示す処理では、負荷判定期間において受電機器60から負荷が受電機器であることを示す無線信号を受信した場合には、負荷が受電機器であると判定し、必要電力に関する情報を受信するための無線通信が失敗した場合でも、受電機器60から必要電力に関する情報を正しく受信できるまで負荷判定動作を継続する。すなわち、一定期間の間に受電機器であることを示す無線信号を受信した後に、受電機器を制御するための制御情報すなわち必要電力に関する情報の受信に失敗した場合、一定期間が経過するまでは加熱部に対応する負荷が受電機器であるという判定を維持して前記制御情報の受信を待機する。これによって、負荷判定において、受電機器を被加熱物として判定することを防止し、なおかつ、受電機器を適切に動作させるために必要な情報をより確実に取得できる。
図13に示したステップS21およびステップS22は、図9のステップS1およびステップS2と同様である。ステップS22の後、誘導加熱調理器100の演算部451は、受電機器60から受電機器であることを示す信号を受信した場合(ステップS23 Yes)、負荷が受電機器であると判定する(ステップS24)。誘導加熱調理器100の演算部451は、受電機器60の制御内容の受信に成功したか否か、すなわち必要電力に関する情報を全て正常に受信したか否かを判断する(ステップS25)。
受電機器60の制御内容の受信に成功した場合(ステップS25 Yes)、ステップS26へ進む。受電機器60の制御内容の受信に失敗した場合(ステップS25 No)、演算部451は、ステップS22へ戻る。ステップS26は、図9のステップS5と同様である。また、ステップS23で、受電機器60から受電機器であることを示す信号を受信しない場合(ステップS23 No)、ステップS27へ進む。ステップS27、ステップS28およびステップS29は、図9のステップ6、ステップS7およびステップS8と同様である。
また、誘導加熱調理器100は、非接触給電動作期間中において受電機器60との無線通信が失敗した場合には、あらかじめ定めた通信限度期間が経過するまでは、負荷が受電機器であることを認識したまま、非接触給電動作を継続し、通信限度期間の間連続して無線通信に失敗した場合、非接触給電動作を停止させるなどの通信失敗時の制御を実施するようにしてもよい。これによって、誘導加熱調理器100が受電機器60の動作状態が不明確なまま、動作し続けることを防止し、より安全に非接触給電が可能となる。また、通信限度期間の間連続して無線通信に失敗した場合に行う動作としては、非接触給電動作の停止を行う例に限定されず、起動時の負荷判定動作に戻る、無線通信時の出力を変更する期間をそれまでの設定値より長くするなどの動作を行ってもよい。
図14は、上記の通信限度期間を用いた判定を含む非接触給電動作手順の一例を示すフローチャートである。ステップS31、ステップS32およびステップS33は、図12のステップS11、ステップS12およびステップS13と同様である。ステップS33の後、演算部451は、出力を変更して無線通信を実行する(ステップS34)。すなわち、上述したように、演算部451は、無線通信を実行する期間の動作として、高周波電力を停止させるまたは出力を低下させる。演算部451は、この無線通信を実行する期間における受電機器60との間の無線通信に成功したか否かを判断する(ステップS35)。
受電機器60との間の無線通信に成功した場合(ステップS35 Yes)、演算部451は、受電機器60から受信した制御内容、すなわち受電機器60から受信した必要電力に関する情報に応じた制御を実行し(ステップS36)、ステップS33へ戻る。受電機器60との間の無線通信に成功しなかった場合(ステップS35 No)、無線通信に成功しないまま通信限度期間が経過したか否かを判断する、すなわち無線通信に成功しない期間が通信限度期間に達したか否かを判断する(ステップS37)。無線通信に成功しないまま通信限度期間が経過した場合(ステップS37 Yes)、ステップS32へ進む。無線通信に成功しない期間が通信限度期間に達していない場合(ステップS37 No)、演算部451は、現在の制御内容を維持し(ステップS38)、ステップS33に戻る。以上のように、図13の例では、誘導加熱調理器100は、受電機器との間の無線通信に通信限界期間の間連続して失敗した場合には、予め定められた通信失敗時の制御を行う。なお、図14では、通信限度期間連続して無線通信が失敗した場合の制御として、非接触給電動作を停止する場合を例として説明しているが、上述したように、通信限度期間連続して無線通信が失敗した場合の動作は、非接触給電動作の停止に限定されない。
無線通信が正しく行われているかすなわち無線通信に成功したか否かの判定は、例えば、次の方法により実施する。受電機器60から通信部6に無線信号が送信された場合、通信部6は、受信した制御信号の内容を確認する信号を受電機器60に送信する。そして、受電機器60は受信した信号から、通信部6で正しく制御信号が受信されたか否かに関する信号を、通信部6に再度送信する。これにより、通信部6は、無線通信が正確に行われているか否かを確認することができる。通信部6は、無線通信が正確に行われているか否かを示す情報を制御部45へ通知する。この通知に基づいて制御部45は、無線通信が正確に行われているか否かを判断することができる。もしくは、逆の場合として、通信部6から受電機器60に制御信号が送信された場合、受信した制御信号の内容を確認する信号を受電機器60から通信部6に送信する。そして、通信部6は受信した信号から、受電機器60で正しく制御信号が受信されているか否かを確認する方法がある。あるいは、これら両方の方法を実施してもよい。
また、無線通信が正確に行われていることの判定を行う別の方法として、受電機器60と通信部6間で無線通信する制御信号の形式を予め定めておき、受信した制御信号が正しい形式であるか否かによって判定する方法もある。
他にも、無線通信が正確に行われていることの判定を行う別の方法は、受電機器60と通信部6間で通信する制御信号の、少なくとも開始と終了箇所に無線通信成功の目印となる符号を付加して、全ての目印を含めて制御信号が受信できたか否かによって判定を行う方法もある。無線通信が正確に行われていることの判定を行う方法は、上記の例に限定されず、どのような方法を用いてもよい。
以上のように、本実施の形態の誘導加熱調理器100では、負荷が受電機器60であるか否かを判定し、受電機器60と無線通信を実行する期間では、受電機器60と無線通信を実行しない期間より、第一の加熱部11に供給する電力を小さくするようにした。これにより、誘導加熱調理器100は、受電機器60との間で送信または受信される無線信号に対する漏洩磁束による干渉を抑制することができる。
実施の形態2.
図15は本発明の実施の形態2にかかる誘導加熱調理器200の制御部45aの構成例を示す図である。本実施の形態の誘導加熱調理器200は、実施の形態1の制御部45の替わりに制御部45aを備える以外は、実施の形態1の誘導加熱調理器100と同様である。制御部45aは、演算部451aと実施の形態1と同様の駆動制御部453とを備える。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素には、実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。以下、実施の形態1と異なる点を説明する。
第一の加熱部11から発生する漏洩磁束の大きさは交流電源21から供給される交流電力の周波数の2倍の周波数で脈動するが、本実施の形態では、この脈動の際の谷付近の期間において無線通信を実行する制御を行う。
図16は、実施の形態2において駆動回路51が供給する高周波電力と、通信部6が無線通信を行う期間との関係の一例を示す図である。直流電源回路22の出力電圧が完全に平滑化されない場合、駆動回路51が第一の加熱部11に供給する電流は交流電源21から供給される交流電力の周波数の2倍の周波数で脈動するため、第一の加熱部11で発生する漏洩磁束の大きさも交流電源21から供給される交流電力の周波数の2倍の周波数で脈動する。交流電源21から供給される交流電力の周波数の2倍の周波数を、以下、電源2倍周波数と呼ぶ。
誘導加熱調理器200は、出力電流検出部25bにより第一の加熱部11の電流を測定し、第一の加熱部11の電流ピークが、電源2倍周波数での脈動により、あらかじめ定められた電流範囲になる、すなわち電流の振幅があらかじめ定めた閾値以下となる期間で無線通信を行う。第一の加熱部11の電流ピークとは、第一の加熱部11へ出力される電流の各スイッチング周期内での最大値を示す。図16に示すように、電流ピークは、電源2倍周波数で脈動する。第一の加熱部11の電流ピークが閾値以下となる期間で無線通信を行うことによって、第一の加熱部11で発生する漏洩磁束が少ない期間において無線通信を行うことができる。したがって、第一の加熱部11で発生する漏洩磁束が無線信号に干渉することを抑制し、無線通信の品質を高めることができる。出力電力の指令値が大きいほど第一の加熱部11の電流ピークの最大値が大きいが、無線通信を行う期間を第一の加熱部11の電流ピークが電流範囲になる期間とすることで、出力電力の指令値によらず、第一の加熱部11で発生する漏洩磁束が少ない期間において無線通信を行うことができる。
図17は、本実施の形態の通信制御手順の一例を示すフローチャートである。ステップS11、ステップS12およびステップS13は、実施の形態1のステップS11、ステップS12およびステップS13とそれぞれ同様である。非接触給電動作を継続しているとき、演算部451aは、出力電流検出部25bによる電流の検出値に基づいて、第一の加熱部11の電流ピーク、すなわち第一の加熱部11に入力される電流のピーク値を検出する(ステップS41)。演算部451aは、第一の加熱部11の電流ピークが閾値を超えるか否かを判断し(ステップS42)、閾値を超える場合(ステップS42 Yes)、演算部451aは、無線通信実行不可と判断し(ステップS43)、通信部6へ無線通信の禁止を通知し、ステップS1へ戻る。第一の加熱部11の電流ピークが閾値以下の場合(ステップS42 No)、演算部451aは、無線通信実行可と判断し(ステップS44)、通信部6へ無線通信の許可を通知し、ステップS11へ戻る。
第一の加熱部11の電流ピークは、直接第一の加熱部11へ出力される電流を測定して求めることが望ましい。しかしながら、第一の加熱部11の電流を測定する替わりに、第一の加熱部11の電流ピークを推定する手段として、入力電流検出部25aにより検出される入力電流を用いて、入力電流があらかじめ定めた電流範囲になる期間から推定する手段を用いてもよい。例えば、第一の加熱部11へ出力される電流が閾値以下となる期間の替わりに、入力電流検出部25aにより検出される入力電流があらかじめ定めた電流範囲になる期間を用いてもよい。
また、第一の加熱部11の電流ピークが、閾値以下になる期間を推定する別の手段として、電圧センサ等の電圧検出部を用いて、直流電源回路22の入力電圧、もしくは直流電源回路22の出力電圧を測定し、入力電圧または出力電圧があらかじめ定めた電圧範囲になる期間を用いて、第一の加熱部11の電流ピークが閾値以下になる期間を推定する手段を用いてもよい。例えば、第一の加熱部11へ出力される電流が閾値以下となる期間の替わりに、入力電圧または出力電圧があらかじめ定めた電圧範囲になる期間を用いてもよい。
また、第一の加熱部11の電流ピークが、閾値以下になる期間を推定する別の手段として、ホールセンサ等の磁束検出部を用いて、第一の加熱部11で発生する磁束を測定し、磁束があらかじめ定めた閾値以下となる期間を用いて、第一の加熱部11の電流ピークが閾値以下になる期間を推定する手段を用いてもよい。この場合、ホールセンサは通信部6の近くに配置することが望ましい。例えば、第一の加熱部11へ出力される電流が閾値以下となる期間の替わりに、上記の磁束が閾値以下となる期間を用いてもよい。
以上のように、本実施の形態では、第一の加熱部11の電流ピークが閾値以下になる期間で通信を許可し、第一の加熱部11の電流ピークが閾値より大きい場合に通信不可とするようにした。このため、誘導加熱調理器200は、受電機器60との間で送信または受信される無線信号に対する漏洩磁束による干渉を抑制することができる。
以上、実施の形態1では、無線通信を実行する期間と無線通信の休止期間とを予測して、無線通信を実行する期間では、駆動回路51から第一の加熱部11へ出力する電力を、無線通信の休止期間において駆動回路51から第一の加熱部11へ出力する電力より小さくする制御を行うようにした。一方、実施の形態2では、第一の加熱部11の電流ピークが閾値以下になる期間で通信を許可し、第一の加熱部11の電流ピークが閾値より大きい場合に通信不可とする制御を行うようにした。実施の形態2では、第一の加熱部11の電流ピークは、通信不可の期間すなわち無線通信の休止期間より、通信を許可する期間すなわち無線通信を実行する期間の方が小さい。このため、実施の形態2においても、無線通信を実行する期間では、駆動回路51から第一の加熱部11へ出力する電力は、無線通信の休止期間において駆動回路51から第一の加熱部11へ出力する電力より小さい。なお、実施の形態1の誘導加熱調理器100に実施の形態2で述べた通信制御の機能を追加し、実施の形態1の動作と実施の形態2の動作との両方を実施するようにしてもよい。
また、加熱部が複数あり、加熱部にそれぞれ対応した複数の駆動回路を備え、同時に駆動回路が動作しているとする。この場合、通信部6と受電機器60が無線通信を行うときに、実施の形態1の制御部45が、一部、または全部の第一の加熱部11に供給する高周波電力を変更する制御を行うことで、一部、または全部の加熱部で発生する漏洩磁束を少なくする。または、実施の形態2の制御部45aが、一部、または全部の第一の加熱部11について上述した通信制御を行うことで、一部、または全部の加熱部で発生する漏洩磁束を少なくする。これによって、無線信号への加熱部で発生する漏洩磁束の干渉を抑制することができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。