A.第1の実施形態の全体構成:
図1は、本発明の第1の実施形態としてのグロープラグ10の概略構成を表わす断面模式図である。また、図2は、図1において領域Xとして示した部分の拡大断面図である。本実施形態のグロープラグ10は、ディーゼルエンジン等の内燃機関に取り付けられて、内燃機関の始動時における点火を補助する熱源として機能する。グロープラグ10は、ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)の再活性バーナーシステムの熱源として用いることもできる。
図1に示すように、グロープラグ10は、主な構成要素として、ハウジング20、ヒータ素子40、中軸50、およびリング60を備えている。また、グロープラグ10は、内燃機関のシリンダ内の圧力(燃焼圧)を検出する圧力センサとしての機能をさらに有している。グロープラグ10は、圧力センサとして圧力検出素子35を備えている。さらにグロープラグ10は、圧力センサに付随して必要な他の構成要素として、ダイアフラム33、連結部材70、伝達スリーブ32、およびセンサ固定部材34を備えている。以下では、図2に基づいて各部について説明する。なお、本明細書では、図1におけるグロープラグ10の軸線O方向の下方側をグロープラグ10の「先端側」と呼び、上方側を「後端側」と呼ぶ。
ハウジング20は、導電性材料(例えば、炭素鋼やステンレス鋼などの金属材料)によって形成されており、主体金具22とキャップ部24とを備える。主体金具22は、軸線Oに沿って延びる略円筒状の部材である。主体金具22の内部には、軸線Oに沿って主体金具22を貫通する軸孔21が形成されている。また、主体金具22は、その後端側の外表面に、内燃機関のシリンダヘッド(図示せず)のプラグ取付孔に形成された雌ねじに螺合するための雄ねじが形成された雄ねじ部23(図1参照)を備えている。キャップ部24は、主体金具22の先端側に配置される環状の部材である。キャップ部24の先端面には先端側に向かって縮径するテーパ部25が設けられている。このテーパ部25が、プラグ取付孔に設けられたシート面(図示せず)に接することにより、エンジンの燃焼室の気密が確保される。
ヒータ素子40は、軸線Oに沿って延びる略円柱状の部材であり、絶縁部41と、導電部42とを備えている。ヒータ素子40の後端部側は、主体金具22の先端部において軸孔21内に収納されており、また、ヒータ素子40の先端部側は、キャップ部24を貫通してキャップ部24の先端から突出している。ヒータ素子40は、電力が供給されることによって発熱する。
絶縁部41は、絶縁性のセラミックによって形成されている。本実施形態では、絶縁部41は窒化珪素によって形成されている。ただし、絶縁部41は、窒化珪素に限らず、例えば、アルミナやサイアロン等の他の絶縁性のセラミックによって形成されていてもよい。この絶縁部41は、ヒータ素子40の基体を成す部位である。
導電部42は、絶縁部41の内部に埋設されており、軸線O方向に伸長すると共に先端側を頂点にして折り曲げられたU字状の構造であり、通電によって抵抗発熱する導電性のセラミックによって形成されている。本実施形態では、導電部42は、タングステンカーバイドおよび窒化珪素によって形成されている。ただし、導電部42を構成する導電性のセラミックスは、タングステンカーバイドおよび窒化珪素に限らず、例えば、二珪化モリブデンや二珪化タングステン等の他の導電性のセラミックスであってもよく、他の導電性のセラミックスをさらに含んでいてもよい。
U字状に形成された導電部42の両端部は、ヒータ素子40の後端面において露出する。一方の端部が第1の電位側の端部(プラス側端部)44であり、他方の端部が、一方の端部よりも低電位になる第2の電位側の端部(マイナス側端部)43である。また、導電部42には、上記第1の電位側の端部(プラス側端部)44の近傍において、ヒータ素子40の側面で露出する第1の電位側の接続端子(プラス側接続端子)46が形成されている。さらに導電部42には、上記第2の電位側の端部(マイナス側端部)43の近傍であって、上記第1の電位側の接続端子46よりも先端側の位置に、ヒータ素子40の側面で露出する第2の電位側の接続端子(マイナス側接続端子)45が形成されている。なお、本実施形態では、第1の電位側の接続端子46および第2の電位側の接続端子45は、導電部42の他の部位と同じ材料で形成されており、導電部42の一部として形成されている。ただし、第1の電位側の接続端子46および第2の電位側の接続端子45は、導電部42の他の部位と別体で形成されていてもよい。
中軸50は、軸線Oに沿って延びる形状を有し、導電性材料(例えば、SUS430等のステンレス鋼、アルミニウム、銅、および鉄などの金属材料)によって形成される棒状の部材であり、主体金具22の軸孔21内に収納されて、ヒータ素子40の後端側に配置されている。なお、本実施形態では、中軸50の軸線は、グロープラグ10の軸線Oと一致している。
リング60は、導電材料(例えば、SUS410、SUS630等の金属材料)で形成された円筒状部材である。リング60は、主体金具22の軸孔21の内部に配置され、ヒータ素子40の後端部と中軸50の先端部とが、内部に嵌め込まれている。ヒータ素子40の後端部のリング60への嵌め込みは圧入により行なわれ、これによりヒータ素子40の側面に露出する第1の電位側の接続端子(プラス側接続端子)46がリング60の内壁に接する。その結果、ヒータ素子40の導電部42の第1の電位側の接続端子(プラス側接続端子)46が、リング60を介して中軸50に電気的に接続される。本実施形態では、中軸50の先端部とリング60の後端部とは、溶接(例えばレーザ溶接)により接続されるが、圧入により接続することとしてもよい。なお、本実施形態では、中軸50およびリング60の表面(側面)に、さらに絶縁体53が配置されている。絶縁体53については、後に詳しく説明する。
ここで、リング60内において、ヒータ素子40の後端と中軸50の先端とは離間している。これにより、ヒータ素子40の導電部42と中軸50との間は、第1の電位側の接続端子(プラス側接続端子)46を経由する経路でのみ導通する。なお、ヒータ素子40の後端部と中軸50の先端部とを離間させる代わりに、両者の間に絶縁性部材を配置することとしてもよい。
ヒータ素子40の側面には、リング60の嵌め込み位置よりも先端側に第1外筒30が配置されており、第1外筒30よりも先端側には第2外筒31が配置されている。第1外筒30および第2外筒31は、導電性材料(例えば、SUS410、SUS630等の金属材料)で形成された円筒状部材であり、第1外筒30および第2外筒31内にヒータ素子40を圧入することにより組み付けられる。第1外筒30内にヒータ素子40を圧入することにより、導電部42の第2の電位側の接続端子(マイナス側接続端子)45が、第1外筒30の内壁に接触し、導電部42と第1外筒30とが電気的に接続される。なお、第2外筒31は、絶縁性材料により形成することも可能である。また、第1外筒30および第2外筒31とヒータ素子40とは、圧入を行なうことなく、第1外筒30および第2外筒31内にヒータ素子40を挿入した後にロウ付けすることにより組み付けてもよい。
ハウジング20の内壁面と、ヒータ素子40、中軸50およびリング60との間には、連結部材70、伝達スリーブ32、ダイアフラム33、およびセンサ固定部材34が配置されている。これらの部材は、いずれも導電性材料によって形成されている。連結部材70は、例えばSUS630などのステンレス鋼やニッケル合金などの金属材料により形成することができる。伝達スリーブ32、ダイアフラム33、およびセンサ固定部材34は、例えば炭素鋼やステンレス鋼などの金属材料によって形成することができる。なお、本実施形態では、伝達スリーブ32およびダイアフラム33が、課題を解決する手段における「導電性部材」に相当すると共に「伝達部材」に相当する。
連結部材70は、軸線Oに沿ったヒータ素子40の移動を許容しつつ、ヒータ素子40とハウジング20とを連結する膜状の弾性部材であり、キャップ部24内に配置されている。連結部材70には、ヒータ素子40が貫通する孔部が中央部に形成されている。そして、上記孔部が形成される内周部(連結部材70の先端側)は、ヒータ素子40の外周に設けられた第2外筒31の後端部に溶接されており、連結部材70の外周部(連結部材70の後端側)は、センサ固定部材34の先端部に溶接されている。連結部材70は、上記のようにヒータ素子40とハウジング20とを連結することで、ハウジング20内の気密を確保する役割も果たす。なお、連結部材70は、弾性変形することによってヒータ素子40の軸線Oに沿った移動を許容できれば良く、例えばベローズであってもよい。
センサ固定部材34は、略円筒形状の部材である。センサ固定部材34は、主体金具22の軸孔21の内壁面に沿って配置されており、その先端近傍には、径方向外側に突出する鍔状のフランジ部36が形成されている。このフランジ部36は、主体金具22の先端面およびキャップ部24の後端面に溶接されている。
伝達スリーブ32は、略円筒状の部材であり、主体金具22の軸孔21内においてセンサ固定部材34よりも径方向内側に配置されている。伝達スリーブ32の先端は、第1外筒30の外側に嵌め込まれて第1外筒30に溶接されている。これにより、ヒータ素子40が、軸線O方向に沿ってハウジング20に対して相対的に変位したときには、伝達スリーブ32も一緒に変位する。その結果、伝達スリーブ32は、軸線Oに沿ったヒータ素子40の変位を後端側(ダイアフラム33)へと伝達する。なお、第1外筒30はリング60よりも厚く形成されているため、リング60およびリング60内に嵌め込まれる中軸50と伝達スリーブ32とは、離間している。
ダイアフラム33は、環状の部材である。ダイアフラム33の中央には、中軸50が貫通する開口部37が設けられている。ダイアフラム33の内周部には、伝達スリーブ32の後端が溶接されている。このため、燃焼ガスの圧力(燃焼圧)を受けてヒータ素子40が軸線Oに沿って変位すると、伝達スリーブ32によってその変位量がダイアフラム33に伝達され、ダイアフラム33が変形する。ダイアフラム33の外周部には、センサ固定部材34の後端が溶接されている。本実施形態では、このセンサ固定部材34によって、ダイアフラム33がハウジング20内の中央部付近に固定されている。
ダイアフラム33の上面(後端側の面)には、ダイアフラム33の変形量(伝達された変位量)を電気信号に変換して圧力を検出する圧力検出素子35が設けられている(図2参照)。本実施形態では、圧力検出素子35として、ピエゾ抵抗素子が用いられている。なお、圧力検出素子35は、ピエゾ抵抗型素子以外の異なる種類のセンサ素子、例えば圧電素子を用いることとしてもよい。
本実施形態の圧力検出素子35(ピエゾ抵抗素子)は、ダイアフラム33の変形量に応じてその抵抗値が変化する。圧力検出素子35には、ハウジング20内の所定の部位に設けられた集積回路(図示せず)が電気的に接続されている。集積回路は、圧力検出素子35の抵抗値の変化を検出することによって、内燃機関の燃焼圧を検出する。集積回路は、こうして検出された燃焼圧を示す電気信号を、ハウジング20の後端から挿入された配線(図示せず)を通じて外部のECU等に出力する。
図1に戻り、ハウジング20の後端側には保護筒72が取り付けられている。保護筒72の内部には、中軸50と電気的に接続する端子金具73が配置されている。
以上のように構成されたグロープラグ10では、端子金具73から電力が供給されると、中軸50、リング60および第1の電位側の接続端子46を通じて導電部42に電力が供給され、ヒータ素子40が発熱する。このとき、導電部42の第2の電位側の接続端子45は、第1外筒30、伝達スリーブ32、ダイアフラム33、センサ固定部材34、ハウジング20、および内燃機関のシリンダヘッドを通じて接地される。すなわち、第1外筒30、伝達スリーブ32、ダイアフラム33、センサ固定部材34、およびハウジング20は、接地電位を有する。なお、本願明細書において接地電位とは、厳密な意味でグラウンドを指すのではなく、給電の方向としてヒータ素子の下流側に配置されてエンジンヘッドを介して接地される側の部材の電位であることを指す。
B.絶縁体の配置:
絶縁体53は、中軸50およびリング60を囲むように配置され、絶縁性材料によって構成される筒状の部材である。絶縁体53は、中軸50およびリング60の表面の一部の領域に密着している。絶縁体53を設けることにより、中軸50およびリング60と、中軸50およびリング60の外周側に配置されて中軸50およびリング60とは異なる電位を有することとなる部材(導電性部材)と、の間の絶縁を確保することができる。以下に、絶縁体53の配置の態様について説明する。
図3は、ヒータ素子40の後端部と中軸50の先端部とを含む領域の構成を拡大して示す断面模式図である。中軸50は、軸線O方向に平行に延びる形状の伸長部54と、中軸50の先端に位置する嵌め込み部52と、伸長部54と嵌め込み部52とを繋ぐ部位である拡径部55と、を備える。中軸50は、軸線O方向に垂直な断面(以下、横断面とも呼ぶ)が略円形であって、上記した各部は、横断面の直径の大きさが異なっている。なお、図3では、伸長部54、嵌め込み部52、拡径部55、および後述する太径部56が配置されている軸線方向の範囲を、軸線方向に延びる矢印によって示している。
伸長部54は、横断面の直径が最も小さく、横断面の直径の大きさは伸長部54全体でほぼ同一である。嵌め込み部52は、伸長部54よりも横断面の直径が大きく形成されており、拡径部55は、伸長部54から嵌め込み部52に向かって次第に横断面の直径が大きくなる形状を有する。嵌め込み部52は、先端部がリング60内に嵌め込まれる。嵌め込み部52は、リング60内に嵌め込まれる部位の横断面の直径が、嵌め込み部52における他の部位の横断面の直径に比べて、リング60の厚みに応じた長さだけ短く形成されている。そのため、嵌め込み部52をリング60内に嵌め込むと、嵌め込み部52とリング60とを合わせた全体の横断面の直径が、ほぼ均一となる。
本実施形態では、中軸50およびリング60が、課題を解決する手段における「給電部材」を構成する。また、伸長部54、拡径部55、拡径部55の側面は、それぞれ、課題を解決する手段における「細径部」、「中間部」、「接続面」に該当する。また、嵌め込み部52およびリング60は、課題を解決する手段における「太径部」に相当する。以下の説明では、嵌め込み部52とリング60とを合わせて太径部56と呼び、拡径部55の側面を接続面57と呼ぶ(図3参照)。なお、太径部56の横断面の直径と細径部(伸長部54)の細径部の直径との差は、例えば、0.5mm以上とすることができ、1.0mm以上とすることが好ましく、1.05mm以上とすることがより好ましい。また、上記差は、2.7mm以下とすることができ、2.1mm以下とすることが好ましく、1.95mm以下とすることがより好ましい。
絶縁体53は、軸線方向に沿って、リング60の先端(太径部56の先端)から中軸50の中ほどにわたって連続して設けられている。中軸50およびリング60上において絶縁体53が設けられた軸線O方向の範囲を、図1では範囲Yとして示している。
絶縁体53は、太径部56と密着している。具体的には、本実施形態では、絶縁体53は、太径部56全体と密着している。また、絶縁体53は、伸長部54における拡径部55との境界を含む一部の領域を除く領域で、伸長部54と密着している。また、絶縁体53は、中軸50上において、接続面57と太径部56の外側面との境界を含み、接続面57側に延びる領域、具体的には、伸長部54における拡径部55との境界を含む一部の領域と接続面57とを合わせた領域において、中軸50と密着することなく離間している。以下の説明では、中軸50上における上記した非密着領域を領域61と呼び、領域61上において絶縁体53との間に形成される空間を空間80と呼ぶ(図3参照)。中軸50上において、絶縁体53と離間する上記領域61は、課題を解決する手段における「第1の領域」に相当し、第1の領域において中軸50と絶縁体53との間に形成される空間80は、課題を解決する手段における「第1の空間」に相当する。また、図3では、接続面57と太径部56の外側面との境界を、境界59として一点鎖線で示している。
なお、本実施形態では、中軸50の拡径部55における伸長部54との境界に、溶融部58が形成されている。溶融部58は、拡径部55を備える部材と伸長部54を構成する部材とを溶接することにより形成され、伸長部54よりも横断面の径が大きく形成されている。そのため、溶融部58を含む領域61、領域61上に形成される空間80は、それぞれ、課題を解決する手段における「第2の領域」、「第2の空間」にも相当する。
また、本実施形態では、領域61は、伸長部54の表面の一部の領域であって、伸長部54と接続面57との境界から伸長部54側に延びる領域であるということができる。そのため、領域61、空間80は、それぞれ、課題を解決する手段における「第3の領域」、「第3の空間」にも相当する。
絶縁体53は、絶縁性材料、例えば、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ゴム、およびこれらの混合物から選択される材料によって形成することができる。
本実施形態では、特に、樹脂が熱収縮する性質を利用して、中軸50およびリング60上に絶縁体53を固着させている。すなわち、絶縁体53とするための熱収縮チューブを中軸50およびリング60上に被せて加熱し、熱収縮チューブを熱収縮させることにより、絶縁体53を取り付けている。このような熱収縮チューブを構成する材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびパーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエーテルブロックアミド共重合体等のポリアミド系エラストマー樹脂、PEEK樹脂、シリコーン樹脂、フッ素化シリコーンゴムを挙げることができる。
また、絶縁体53を構成する材料は、ヤング率が70GPa以下とすればよい。このような構成とすることで、グロープラグ10の防振効果を高めることができる。上記した各樹脂およびゴムは、この数値範囲を満たすため望ましい。絶縁体53を構成する材料のヤング率は、10GPa以下が好ましく、7GPa以下がより好ましく、5GPa以下が更に好ましい。なお、絶縁体53を構成する材料のヤング率の下限に特に制限はないが、通常は0.005GPa以上となる。
C.製造方法:
図4は、グロープラグ10の製造方法を表わす工程図である。グロープラグ10を製造する際には、まず、リング60の後端側から先端側へとヒータ素子40の先端を挿入し、リング60内にヒータ素子40を圧入する(ステップS100)。これにより、導電部42の第2の電位側の接続端子(プラス側接続端子)46がリング60の内壁に接触して、導電部42とリング60とが電気的に接続される。このとき、ヒータ素子40がリング60内に圧入されることで、プラス側接続端子46とリング60の内壁との密着状態が高められ、導電部42とリング60とが電気的に接続される際の抵抗が十分に抑えられる。
その後、第1外筒30および第2外筒31内にヒータ素子40を圧入し、第2外筒31の先端からヒータ素子40の先端部を突出させる(ステップS110)。これにより、導電部42の第2の電位側の接続端子(マイナス側接続端子)45が第1外筒30の内壁面に密着され、導電部42と第1外筒30とが電気的に接続される。
次に、中軸50において嵌め込み部52および拡径部55となる部分を備える部材を、リング60の後端部に嵌め込み、上記部材の表面とリング60の後端とが接する位置でこれらを溶接する(ステップS120)。そして、上記部材における拡径部55となる部分の後端に、中軸50において伸長部54となる部分から成る部材を溶接する(ステップS130)。これにより、嵌め込み部52、拡径部55、および伸長部54を備える中軸50が完成し、拡径部55と伸長部54との間には溶融部58が形成される。なお、本実施形態では、ヒータ素子40が嵌め込まれたリング60の後端側に、中軸50を構成する部材を取り付ける前に、第1外筒30および第2外筒31内にヒータ素子40を圧入したが、これらの工程の順序は逆であってもよい。すなわち、ステップS110は、ステップS120の後に行なってもよく、ステップS130の後に行なってもよい。
次に、絶縁体53を形成するための円筒状の部材内に、リング60と一体化した中軸50を嵌め込み、伸長部54における拡径部55との境界の近傍を除く一部の領域、および太径部56と重なる領域を加熱して、上記円筒状の部材を収縮させる(ステップS140)。これにより、所定の箇所で中軸50およびリング60と密着する絶縁体53を完成する。
図5は、ステップS140の様子を表わす説明図である。図5(A)は、絶縁体53となる筒状の熱収縮チューブ153に、リング60と一体化した中軸50を嵌め込む様子を示す。図5(A)で用意する熱収縮チューブ153は、中軸50の嵌め込み部52の横断面の直径よりも一回り大きな内径を有している。熱収縮チューブ153の嵌め込みの動作は、熱収縮チューブ153の先端が、リング60の先端に重なるように行なっている。
図5(B)は、熱収縮チューブ153の所定の箇所を加熱する様子を示す。図5(B)では、加熱箇所を矢印により示している。加熱温度は、例えば50℃〜550℃とすることができ、用いる熱収縮チューブ153の種類に応じて適宜設定すれば良い。上記加熱は、例えば、ヒートガン等を用いた熱風の吹きつけや、ヒータを用いた加熱により行なうことができ、所望の箇所に対する局所的な加熱が可能であればよい。熱収縮チューブ153の特定箇所を加熱して収縮させることで、リング60および中軸50の所望の位置で、リング60および中軸50と絶縁体53とを密着させることができる。本実施形態では、熱収縮チューブ153は、太径部56上で収縮される。これにより、熱収縮チューブ153は、太径部56と密着する。また、熱収縮チューブ153は、伸長部54における接続面57から離間した領域上で収縮される。これにより、熱収縮チューブ153は、伸長部54における接続面57から離間した領域と密着する。
図5(C)は、リング60および中軸50に対する絶縁体53の取り付けが完了した様子を示す。本実施形態の絶縁体53は、リング60および中軸50上に密着させた箇所における外周の直径が、グロープラグ10内でリング60および中軸50の外周側に配置される他の部材(例えば、伝達スリーブ32およびダイアフラム33)の内周の直径よりも小さくなるように形成される。
図4に戻り、ステップS140の後、上記したヒータ素子40、中軸50、リング60、および絶縁体53を備える中間部材に対して、さらに、伝達スリーブ32、ダイアフラム33、センサ固定部材34、および主体金具22を組み付ける(ステップS150)。ここでは、伝達スリーブ32、ダイアフラム33、およびセンサ固定部材34を所定の箇所で溶接し、内側に配置される伝達スリーブ32を軸線O方向に貫通する貫通孔内に、上記ヒータ素子40等を備える上記中間部材を配置する。さらに、センサ固定部材34の外周側に主体金具22を配置する(図2参照)。
その後、センサ固定部材34の先端部のフランジ部36と主体金具22の先端とを溶接すると共に、ヒータ素子40(具体的には第1外筒30)と伝達スリーブ32の先端部とを溶接する。また、連結部材70の後端部とセンサ固定部材34の先端部の間、および、連結部材70の先端部とヒータ素子40(具体的には第2外筒31の後端部)の間を溶接する。また、キャップ部24をヒータ素子40の先端側から嵌め込み、さらにセンサ固定部材34の先端部に圧入し、センサ固定部材34のフランジ部36とキャップ部24とを溶接する(図2参照)。その後、主体金具22の後端側に保護筒72を取り付けると共に、中軸50と端子金具73とを接続して、グロープラグ10を完成する(ステップS160)。
以上のように構成された本実施形態のグロープラグによれば、中軸50において、接続面57と太径部56の外側面との境界(境界59)を含み伸長部54側に延びる領域61と、絶縁体53との間に、空間80(第1の空間)が形成されている。グロープラグ10内では、上記境界59において、絶縁体53が径方向内側に折れ曲がる。本実施形態では、上記した空間80が形成されることにより、空間80を形成することなく境界59から後端側へと絶縁体53を接続面57に密着させて絶縁体53を折れ曲げる場合に比べて、絶縁体53において境界59上の折れ曲がり部にかかるテンションを低減することができる。絶縁体53における上記折れ曲がり部でのテンションが過剰であると、振動等に伴って、上記折れ曲がり部で絶縁体53が損傷する可能性がある。本実施形態では、上記折れ曲がり部にかかるテンションを軽減することにより絶縁体53の損傷を抑制し、このような損傷に起因する中軸50およびリング60(給電部材)と、伝達スリーブ32およびダイアフラム33(導電性部材)と、の間の短絡の発生を抑えることができる。
特に、絶縁体53を既述したようにゴムまたは樹脂で構成する場合には、太径部56の外側面と接続面57との境界59を間に挟んだ先端側と後端側とにおいて、絶縁体53を給電部材に密着させると、絶縁体が弾性を有することにより、境界59上で絶縁体53にテンションがかかりやすくなる。そのため、絶縁体53をゴムまたは樹脂で構成する場合には、絶縁体53の形状を図3に示す形状にすることで、絶縁体53にかかるテンションを低減することによる効果を顕著に得ることができる。また、既述したヤング率を示すゴムまたは樹脂により絶縁体53を構成することにより、グロープラグ10の防振性を高める効果も得られる。
また、本実施形態では、中軸50の表面における溶融部58を含む領域と絶縁体53との間に空間80(第2の空間)が形成されている。そのため、溶融部58において絶縁体53にテンションがかかることを防ぎ、溶融部58に起因する絶縁体53の損傷を抑えることができる。なお、中間部の表面における溶融部58の少なくとも一部を含む第2の領域と絶縁体53との間に、空間(第2の空間)を設けない場合であっても、第1の空間を設けることによる効果を得ることができる。
さらに、本実施形態では、中軸50の伸長部54の表面において、伸長部54と接続面57の境界から伸長部54側に延びる領域と絶縁体53との間に空間80(第3の空間)が設けられている。このような第3の空間を設けることにより、絶縁体53が伸長部54と密着する位置が、より後端側となる。その結果、グロープラグ10における軸線Oを含む断面において、接続面57と絶縁体53とがなす角θ(図3参照)が、より大きくなり、境界59において絶縁体53にかかるテンションが、より小さくなるため、絶縁体53の損傷を抑える効果を高めることができる。
また、本実施形態によれば、絶縁体53の損傷を抑制できるため、絶縁体53をより薄く形成し、グロープラグの外径をより細くして、グロープラグを小型化することが可能になる。すなわち、外径がより細いグロープラグにおいて本実施形態の絶縁体53を適用することにより、絶縁体53の損傷を抑え、その結果、グロープラグを長寿命化し、あるいはグロープラグの性能を安定化させる効果を顕著に得ることができる。例えば、本実施形態のように圧力センサつきのグロープラグにおいて、主体金具22の雄ねじ部23の外径を、呼び径でM10以下とする場合には、絶縁体53の損傷を抑えることによる効果を顕著に得ることができる。本実施形態の絶縁体53を適用することにより、上記呼び径は、例えばM9、M8、あるいはM6とすることも可能になる。
なお、中軸50において、絶縁体53の配置に先立って、太径部56の外側面と接続面57との境界59である角部を、曲面に加工することが望ましい。すなわち、中軸50における軸線Oを含む断面において、嵌め込み部52の外輪郭と接続面57とは曲線で結ばれていることが望ましい。曲面に加工すべき太径部56の外側面と接続面57との境界59である角部を、図3において角部Zとして示す。このような構成とすれば、境界59における絶縁体53の損傷を抑える効果を高めることができる。なお、上記断面において嵌め込み部52の外輪郭と接続面57とが曲線で結ばれているとは、嵌め込み部52の外輪郭と接続面57とを結ぶ曲線部の曲率半径をRとしたときに、0.005mm≦R≦0.25mmの関係式を満たすことをいう。
図6は、第1の実施形態の変形例を示す説明図である。図6では、第1の実施形態のグロープラグとは異なる部位について説明するために、太径部56、拡径部55、伸長部54、および絶縁体53のみを示している。図6では、第1の実施形態と共通する部位には同じ参照番号を付して詳しい説明を省略する。
図6(A)は、接続面57と太径部56の外側面との境界59の一部の部位から接続面57側に延びる領域では、中軸50と絶縁体53との間に空間81が形成されるものの、境界59の他の部位から接続面57側に延びる領域では、中軸50と絶縁体53とが密着している様子を表わす。このような構成としても、少なくとも空間81が形成される部位では、境界59における絶縁体53の損傷を抑える効果が得られる。
図6(B)は、接続面57全体と絶縁体53との間に空間82(第1の空間)が形成されているものの、伸長部54全体が絶縁体53と密着している点が、図3に示す構成と異なっている。すなわち、課題を解決する手段における「第3の空間」が形成されていない。このような構成としても、第1の空間を設けることにより境界59において絶縁体53にかかるテンションを低減する同様の効果が得られる。
図6(C)は、拡径部55の中ほどにおいて、拡径部55と絶縁体53とが接する接触部51が形成されている点が、図3に示す構成と異なっている。すなわち、図6(C)では、課題を解決する手段における「第1の空間」に相当する空間83と、溶融部58を含む「第2の領域」である領域62上に形成される「第2の空間」に相当する空間84とが、互いに分離して設けられている。接触部51では、拡径部55と絶縁体53とが密着することとしてもよい。このような構成としても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
図6(D)は、絶縁体53において、伸長部54と重なる領域の一部において、絶縁体53の後端まで軸線方向に沿って伸長部54と密着しない領域が設けられている点が、図3に示す構成と異なっている。このような構成とすれば、第1の実施形態と同様の効果に加えて、さらに、軸線方向後端側にわたって伸長部54と接触していない部位では、境界59において絶縁体53にかかるテンションがさらに低減されて、絶縁体53の損傷が抑えられる効果を高めることができる。
D.第2の実施形態:
図7は、第2の実施形態のグロープラグが備える絶縁体53の形状を表わす説明図である。第2の実施形態のグロープラグは、絶縁体53の形状以外は第1の実施形態と同様であり、第1の実施形態と共通する部位には同じ参照番号を付して詳しい説明を省略する。
第2の実施形態では、給電部材において、太径部56の外側面のみが絶縁体53と密着している。そして、給電部材は、軸線Oに対して垂直な方向に投影したときに絶縁体53と重なる領域のうち、接続面57と太径部56の外側面との境界59よりも後端側の領域全体において、絶縁体53と密着しておらず、絶縁体53と中軸50との間には空間86が形成されている。このような構成とすれば、第1の実施形態と同様の効果が得られると共に、境界59において絶縁体53にかかるテンションをさらに低減することができる。
なお、図7に示すように、伸長部54と絶縁体53とが密着しない場合であっても、グロープラグ10内において、例えば振動や重力等により、伸長部54(細径部)の少なくとも一部が、絶縁体53と接していてもよい。図7では、軸線O方向に対して垂直な方向に投影したときに伸長部54(細径部)と重なる絶縁体53における領域を、領域65として、その範囲を矢印で示している。また、図7では、軸線O方向に対して垂直な方向に投影したときに太径部56と重なる絶縁体53における領域を、領域66として、その範囲を矢印で示している。伸長部54(細径部)と絶縁体53とが密着しない場合であっても、絶縁体53は、領域65の少なくとも一部が、領域66よりも、中軸50(給電部材)の中心軸に近接するように配置されることになる。
E.第3の実施形態:
図8は、第3の実施形態のグロープラグが備える絶縁体53の形状を表わす説明図である。第3の実施形態のグロープラグは、絶縁体53の形状以外は第1の実施形態と同様であり、第1の実施形態と共通する部位には同じ参照番号を付して詳しい説明を省略する。
第3の実施形態の給電部材においては、軸線Oに対して垂直な方向に投影したときに絶縁体53と重なる領域のうち、伸長部54の外側面と接続面57との境界から後端側に離間した位置を起点として後端側の領域のみが、絶縁体53と密着している。そして、この給電部材においては、軸線Oに対して垂直な方向に投影したときに絶縁体53と重なる領域のうち、上記密着している領域よりも先端側の領域全体が、絶縁体53とは密着しておらず、給電部材と絶縁体53との間には空間87が形成されている。このような構成とすれば、第1の実施形態と同様の効果が得られると共に、境界59において絶縁体53にかかるテンションをさらに低減することができる。このとき、給電部材と絶縁体53とが密着していない領域において、給電部材の少なくとも一部が絶縁体53と接していてもよい。
給電部材において、軸線Oに対して垂直な方向に投影したときに絶縁体53と重なる領域のうち、境界59よりも先端側、あるいは境界59よりも後端側のいずれかの領域の一部において、給電部材と絶縁体53とが密着していれば、境界59における絶縁体53の損傷を抑えることができる。絶縁体53と一体化した給電部材をグロープラグ内に組み付ける動作を支障無く行なうことができる程度に、給電部材において、絶縁体53と密着する領域が確保されていればよい。
F.第4の実施形態:
図9は、第4の実施形態のグロープラグにおける、ヒータ素子40の後端部と中軸50の先端部とを含む領域の構成を、拡大して示す断面模式図である。第4の実施形態は、中軸50の形状が異なる点を除いては、第1の実施形態と同様の構成を有しており、第1の実施形態と共通する部位には同じ参照番号を付して詳しい説明を省略する。
第4の実施形態では、中軸50は拡径部55を有しておらず、嵌め込み部52と伸長部54との間は、急激に横断面の直径が変化する段差が設けられている。第4の実施形態では、中軸50の表面における上記段差の部分が、接続面57となる。第4の実施形態では、中軸50上において、接続面57(接続面57と太径部56の外側面との境界)から伸長部54側に延びる領域63と、絶縁体53との間に、空間88が形成されている。このような第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
G.第5の実施形態:
図10は、第5の実施形態のグロープラグ110の概略構成を表わす断面模式図である。グロープラグ110は、グロープラグ10とは異なり圧力センサを有していない。第5の実施形態では、第1実施形態と共通する部位には同じ参照番号を付して詳しい説明を省略する。
グロープラグ110は、主な構成要素として、主体金具22、外筒130、ヒータ素子40、中軸50、リング60、および絶縁体53を備えている。グロープラグ110においても、グロープラグ10と同様に、ヒータ素子40の後端部と中軸50の先端部とがリング60に嵌め込まれており、ヒータ素子40の第1の電位側の接続端子(プラス側接続端子)46がリング60を介して中軸50に電気的に接続されている。また、グロープラグ110では、ヒータ素子40は外筒130内に圧入されており、ヒータ素子40の第2の電位側の接続端子(マイナス側接続端子)45が外筒130を介して主体金具22に電気的に接続されている。
グロープラグ110が備える中軸50およびリング60は、第1の実施形態と同様の形状を有している。そして、リング60および中軸50上において、リング60の先端から中軸50の伸長部54の中ほどの位置にわたって、第1の実施形態と同様の形状の絶縁体53が設けられている。グロープラグ110においては、給電部材(リング60および中軸50)とは異なる電位を有することとなる導電性部材は、主体金具22となり、絶縁体53を設けることにより、給電部材と導電性部材との間の絶縁を確保することができる。このような第5の実施形態においても、絶縁体53の形状を、既述した各実施形態と同様の形状とすることにより、接続面57と太径部56の外側面との境界59における絶縁体53の損傷を抑制する同様の効果を得ることができる。
特に、グロープラグ110は、内部構成がよりシンプルであるため、絶縁体53の形状を既述した各実施形態と同様の形状とすることにより、グロープラグの外径をより細くしてグロープラグを小型化できる効果を、より顕著に得ることができる。すなわち、外径がより細いグロープラグにおいて、既述した各実施形態と同様の絶縁体53を適用することにより、絶縁体53の損傷を抑え、その結果、グロープラグを長寿命化し、あるいはグロープラグの性能を安定化させる効果を顕著に得ることができる。例えば、絶縁体53の損傷を抑えることによる効果を確保しつつ、主体金具22の雄ねじ部23の外径を、呼び径でM6以下とする等のグロープラグの小型化が、より容易となる。
H.変形例:
・変形例1(給電部材の形状の変形):
上記各実施形態では、先端側に太径部を有し、後端側に細径部を有する給電部材を用いたが、異なる構成としてもよい。すなわち、給電部材において、細径部が太径部よりも先端側に配置されていてもよい。
上記各実施形態では、給電部材の横断面の形状を円形としたが、異なる構成としてもよい。例えば、給電部材の横断面の形状を、楕円形あるいは多角形としてもよい。この場合には、給電部材における「横断面の径」とは、横断面における重心を通る径(横断面の重心を通り、横断面の外周上に両端点がある線分)のうち、最も長いものをいう。
上記した第1から第3および第5の実施形態では、中間部(拡径部55)と伸長部54(細径部)との間(中間部における後端)に溶融部58を設けたが、異なる構成としてもよい。例えば、中間部の中ほどに溶融部を設けることとしてもよい。給電部材上における溶融部を含む第2の領域と、絶縁体との間に、第2の空間が設けられていれば、実施形態における第2の空間と同様の効果が得られる。なお、中間部において溶融部を設けないこととしてもよい。例えば、溶接工程を伴うことなく切削工程により、伸長部54と嵌め込み部52とを有する中軸を一体形成してもよい。ただし、横断面の径が異なる部材を溶接して、溶融部を有する中軸を形成する場合には、中軸形成に必要な金属材料を削減することができて望ましい。また、横断面の径の大きさが近い(あるいは等しい)部材同士を溶接することにより、溶接の動作を簡素化し、溶接に必要なエネルギを削減することができる。
いずれの場合であっても、太径部の少なくとも一部から細径部の少なくとも一部にわたって絶縁体を設ける場合に、本願発明を適用するならば、太径部の外側面と細径部の外側面とを繋ぐ接続面と、太径部の外側面と、の境界における絶縁体の損傷を抑制する同様の効果を得ることができる。
・変形例2(絶縁体の変形):
上記した第1、第2、第4、および第5の実施形態では、絶縁体53は、太径部56における周方向全体で太径部56と密着することとしたが、異なる構成としてもよい。例えば、太径部56の外表面において、接続面57との境界59の一部から軸線方向先端側に延びる領域では、絶縁体53と密着することなく離間することとしてもよい。
また、上記各実施形態では、リング60の先端から後端側に向かって、すなわち、リング60全体を覆うように絶縁体53を設けたが、異なる構成としてもよい。例えば、リング60における軸線方向の中ほどの位置から後端側に向かって絶縁体53を設け、リング60の先端部は絶縁体53に覆われない構成としてもよい。あるいは、リング60上には絶縁体53を設けず、中軸50の嵌め込み部52のみを絶縁体53で覆って、嵌め込み部52のみによって課題を解決する手段における「給電部材」の「太径部」を構成してもよい。
上記各実施形態では、中軸50の嵌め込み部52とリング60とによって、給電部材の太径部56を構成し、この太径部全体で横断面の直径をほぼ一定としたが、異なる構成としてもよい。例えば、中軸50の嵌め込み部52よりもリング60の方が横断面の直径が大きくなるように形成してもよい。この場合には、リング60を、課題を解決する手段における大径部とし、中軸50の嵌め込み部52を、課題を解決する手段における細径部としてもよい。この場合には、さらに、中軸50の嵌め込み部52を、課題を解決する手段における太径部とし、中軸50の伸長部54を、課題を解決する手段における細径部とすることができる。
図11は、このような変形例のグロープラグにおける絶縁体53の形状を表わす説明図である。この変形例のグロープラグは、給電部材および絶縁体53の形状以外は第1の実施形態と同様であり、第1の実施形態と共通する部位には同じ参照番号を付して詳しい説明を省略する。
図11では、中軸50の嵌め込み部52は横断面の直径が一定に形成されており、嵌め込み部52の先端部がリング60内に嵌め込まれている。すなわち、リング60の横断面の直径は、中軸50の嵌め込み部52の横断面の直径よりも大きく形成されている。図11では、嵌め込み部52においてリング60の後端から露出する部分を、露出部154として示している。
図11の変形例では、リング60の後端から露出部154側に向かって、中軸50と絶縁体53との間に空間180が形成されている。そのため、リング60、露出部154、リング60の後端面157、空間180は、各々、課題を解決する手段における太径部、細径部、接続面、第1の空間に相当する。なお、図11では、リング60(太径部)の外側面と後端面157(接続面)との境界の位置を、境界159として示している。
また、図11の変形例では、露出部154の後端部の領域(領域151)において周方向全体で絶縁体53と密着すると共に、露出部154から伸長部54側に向かって、中軸50と絶縁体53との間に、第1の実施形態と同様の空間80が形成されている。そのため、露出部154、拡径部55、伸長部54、接続面57、空間80は、各々、課題を解決する手段における太径部、中間部、細径部、接続面、第1の空間に相当する。
・変形例3(大径部の配置の変形):
上記各実施形態では、給電部材において、太径部56および伸長部54(細径部)が1箇所ずつ設けられていたが、異なる構成としてもよい。例えば、太径部と細径部の少なくとも一方を複数設けることとしてもよい。
図12は、このような変形例のグロープラグにおける絶縁体53の形状を表わす説明図である。図12では、第1の実施形態と共通する部位には同じ参照番号を付して、詳しい説明を省略する。
図12のグロープラグでは、給電部材において、2箇所の太径部156,256と、これらの太径部156,256に挟まれて配置される1箇所の伸長部54(細径部)と、が設けられている。伸長部54と太径部156との間には拡径部155が形成されており、伸長部54と太径部256との間には拡径部255が形成されている。
図12の変形例では、絶縁体は、太径部156から拡径部155上を経由して伸長部54の途中の位置まで設けられている。ここでは、給電部材は、軸線Oに対して垂直な方向に投影したときに絶縁体53と重なる領域のうち、太径部156に含まれる領域において、周方向の全体にわたって絶縁体53と密着している。また、給電部材の伸長部54上においては、拡径部155から離間した領域において、周方向の全体にわたって給電部材と絶縁体53とが密着している。そして、給電部材の拡径部155を含む領域において、給電部材と絶縁体53との間には、第1の実施形態と同様の空間80が形成されている。
このような構成としても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。なお、給電部材と絶縁体53との間に設ける第1の空間の形状は、第1の実施形態で示した各変形例や、第3の実施形態のように、異なる形状としても良い。また、絶縁体53の形状は、例えば太径部256側へとさらに延ばした形状として、絶縁体53における太径部156から離間した側の端部は、伸長部54上に位置するのではなく、拡径部255上に位置することとしてもよい。いずれの構成としても、絶縁体53を設けた範囲において、給電部材と、給電部材の外周側に配置されて給電部材とは異なる電位を有することになる導電性部材との間の絶縁性を向上できると共に、接続面と太径部の外側面との境界において、絶縁体53の損傷を抑制する効果が得られる。
・変形例4(絶縁体の形成方法の変形):
上記各実施形態では、絶縁体53を熱収縮チューブにより構成し、熱収縮チューブを熱収縮させることにより絶縁体53と給電部材とを密着させたが、異なる構成としてもよい。例えば、絶縁性材料から成るシートにより絶縁体53を構成することとし、この絶縁シートを給電部材の所定の位置に巻き付けて、接着剤により給電部材に接着してもよい。
・変形例5(中軸とは異なる電位を有する導電性部材の変形):
第1ないし第4の実施形態では、給電部材の外周側に配置され、給電部材とは異なる電位を有することとなる導電性部材を、伝達スリーブ32およびダイアフラム33としており、第5の実施形態では、上記導電性部材を主体金具22としたが、異なる構成としてもよい。上記導電性部材は、中軸50の外周側に配置され、中軸50とは異なる電位を有する部材であればよく、接地電位を有する部材に限定されない。例えば、圧力センサを備えるグロープラグにおいて、圧力センサの信号線を形成する部材を上記導電性部材として、本願発明を適用してもよい。
・変形例6(ヒータ素子の構成の変形):
上記各実施形態では、グロープラグが備えるヒータ素子として、絶縁性のセラミックスによって形成される絶縁部41内に、導電性セラミックスによって形成される導電部42が埋設されるヒータ素子40を用いたが、異なる構成としてもよい。例えば、絶縁性のセラミックスから成る絶縁部の表面に露出するヒータ発熱体を用いる構成としてもよい。あるいは、金属製のシース管内に発熱コイルが配置されたメタルヒータを用いてもよい。ヒータ素子に電力を供給する給電部材として、太径部と細径部とを有する給電部材を備えるグロープラグにおいて、太径部の少なくとも一部から細径部の少なくとも一部にわたって絶縁体を設ける際に、本願発明を適用することにより、実施形態と同様の効果を得ることができる。
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。