この発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
実施の形態1.
図1から図8は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1は空気調和システムが備える各要素の配置の一例を模式的に示す図、図2は空気調和システムが備える空気調和装置の斜視図、図3は図2に示す空気調和装置の縦断面図、図4は空気調和システムが備える加湿機の斜視図、図5は図4に示す加湿機の断面図、図6は空気調和システムの制御系統の構成を示すブロック図、図7は空気調和システムの動作を示すフロー図、図8は空気調和システムの効果の一例を説明する図である。
図1に示すように、この発明の実施の形態1における空気調和システム(ウイルス不活化空間生成システム)は、加湿機1及び空気調和装置2を備えている。空気調和装置2は、室内に送風する機能を有する送風装置である。送風装置は、少なくとも送風機能を有しているもの(例えば送風機等)であればよい。また、送風装置は、送風機能の他に空気調和機能等を併せて備えていてもよい。ここでは、送風装置として送風機能と空気調和機能とを有する空気調和装置2を用いた場合を例として挙げて説明する。
送風装置としての空気調和装置2は、室内の壁面又は天面に設置されている。ここでは、空気調和装置2は、室内の壁面に設置されているとする。空気調和装置2は、送風方向を少なくとも上下に変更可能である。後述するように、ここでは、空気調和装置2は、送風方向を上下及び左右に変更可能であるとする。
加湿機1は、室内の空気調和装置2(送風装置)とは異なる位置に設置されている。ここでは、加湿機1は、室内の床に置かれたテーブルの上面に置かれているとする。なお、加湿機1の設置場所は使用者が適宜決定してよく、他の場所、例えば床の上等であってもよい。
空気調和装置2が稼動して送風を行うと、室内に気流4が生成される。また加湿機1が稼動すると、加湿機1が室内に加湿空気を放出し、室内に加湿気流5が生成される。
次に、図2及び図3を参照しながら、送風装置として空気調和装置2の構成について説明する。図2に示すのは空気調和装置2の外観である。空気調和装置2は、空気調和機の室内機である。空気調和装置2の筐体は、横長で前面から下面にかけては滑らかな曲面となった略直方体状に形成されている。
空気調和装置2の上面部には、空気吸込口10が形成されている。空気吸込口10は、外部から空気調和装置2の内部に空気を取り込むための開口である。空気調和装置2の前面下部は、前面パネル6に覆われている。空気調和装置2の前面下部には、空気吹出口9が形成されている。空気吹出口9は、空気調和装置2の内部から外部へと空気を排出するための開口である。
空気吹出口9には、上下風向板7a、7b、8a、8bが設けられている。これらの上下風向板は、空気吹出口9から吹き出す空気の上下方向の吹き出し角度を調整するためのものである。
上下風向板は、空気調和装置2の正面に向かって手前側と奥側とにそれぞれ設置されている。また、手前側と奥側の各上下風向板は、それぞれ左右に分割されている。すなわち、手前側の上下風向板は、空気調和装置2の正面に向かって左側の左手前側上下風向板7aと、右側の右手前側上下風向板7bとに分割されている。また、奥側の上下風向板は、空気調和装置2の正面に向かって左側の左奥側上下風向板8aと、右側の右奥側上下風向板8bとに分割されている。
それぞれの上下風向板が左右に分割される位置は、空気調和装置2の正面に向かって長手方向(空気吹出口9の左右方向)のほぼ中央である。左手前側上下風向板7aと右手前側上下風向板7bとの間には、僅かな隙間が形成されている。同様に、左奥側上下風向板8aと右奥側上下風向板8bとの間にも、僅かな隙間が形成されている。左手前側上下風向板7a、右手前側上下風向板7b、左奥側上下風向板8a及び右奥側上下風向板8bは、それぞれ、断面が円弧状となるように湾曲している。
上下風向板7a、7b、8a、8bは、それぞれが図示しない支持腕を介して空気調和装置2の筐体に取り付けられている。それぞれの支持腕は空気調和装置2の筐体に対して回転可能に取り付けられており、支持腕が筐体に対して回転することで、それぞれの上下風向板の向きを変えることができるようになっている。そして、上下風向板の向きを変えることで、空気調和装置2は、送風方向を上下に変更可能である。
なお、ここでは、それぞれの支持腕は、上下風向制御用ステッピングモーター(図示せず)の駆動により互いに独立して角度を調節できるように設けられている。したがって、左手前側上下風向板7a、右手前側上下風向板7b、左奥側上下風向板8a及び右奥側上下風向板8bは、それぞれが独立して空気吹出口9から吹き出す空気の上下方向の吹き出し角度(送風方向)を調整することができる。
空気調和装置2の前面中央には、人体センサ11が取り付けられている。人体センサ11は、空気調和装置2が設置された室内の人の位置を検出する人検出手段である。人体センサ11は、例えば、上下方向に並べた複数(例えば8個)の赤外線センサ(受光素子)を備えている。そして、人体センサ11は、例えば図示しないステッピングモーターにより、上下に並んだ複数の赤外線センサを、予め設定された角度範囲内において左右に向きを変えることができる。このようにすることで、上下に並んだ複数の赤外線センサのそれぞれを左右方向に走査させて、空気調和装置2前方の予め設定された範囲(以下、「温度検出対象範囲」という)内の全域について検出を行うことができる。
人体センサ11は、このような構成により、温度検出対象範囲内を走査して当該範囲内の温度分布(熱画像)を取得する。そして、人体センサ11は、取得した温度分布(熱画像)に基づいて、背景との温度差から、室内における人の有無及びその位置、人体の表面温度、人の身体の部位(肌の露出部と非露出部、頭部等)等を検出することができる。
さらに、人体センサ11を、体感温度を検知する体感温度センサとしても用いることができる。この場合、肌が露出されている人体ほど体感温度を検出しやすい。なお、人体センサ11に用いる受光素子の画素数が多いほど、人体センサ11の検出精度は高くなる。具体的に例えば、30画素以上の画素数を有する受光素子を用いれば、室内の人の位置及び人体センサ11から当該人までの距離を精度よく検出することができる。
人体センサ11は、温度検出対象範囲を左右に走査しながら温度検出対象の温度を検出する。なお、ここでの左右は、空気調和装置2側から見た場合の左右である。室内の壁及び床の熱画像データ(温度分布データ)を取得する場合、例えば、人体センサ11の向きを図示しないステッピングモーターにより左右方向に動かし、ステッピングモーターの回転(すなわち、人体センサ11の向きの回転)を一定角度毎に一定時間だけ停止させる。この際の一定角度は例えば1〜5度とする。また、この際の一定時間は例えば0.1〜0.2秒とする。そして、人体センサ11の向きの変更を停止した後、前記の一定時間(0.1〜0.2秒)よりも短い時間だけ待って、人体センサ11の8個の受光素子の検出結果(熱画像データ)を取り込む。
人体センサ11による検出結果の取り込み終了後、再びステッピングモーターを前記一定角度だけ回転して再度停止し、同様の動作で人体センサ11の検出結果(熱画像データ)を取り込む。このような動作を繰り返し行って、左右方向に例えば90〜100箇所の人体センサ11の検出結果をもとにして、温度検出対象範囲の熱画像データ(温度分布データ)を演算する。そして、室内における人体の有無及びその位置の検出は、例えば、このようにして得た熱画像データ(温度分布データ)の差分により行うことができる。
なお、人体センサ11の向きを、例えばステッピングモーター等により上下方向にも変更するようにしてもよい。このようにすることで、上下方向においても左右方向と同様に詳細な熱画像データの取得が可能となり、人体の位置及び部位判定の精度を向上することができる。
また、人体センサ11は、前述した赤外線センサだけに限られず、例えば、カメラ、フレネルレンズを用いた焦電センサ、超音波センサ等を用いて構成することもできる。さらに、人体センサ11の設置箇所は、空気調和装置2の前面に限られず、例えば、空気調和装置2の左右の一端部等に設けるようにしてもよい。このようにして、人体センサ11は、空気調和装置2が設置された室内の人の位置を検出する人検出手段を構成している。
次に、図3も参照しながら、空気調和装置2の内部の構成について説明する。空気調和装置2の内部には、空気吸込口10から空気吹出口9へと通じる風路が形成されている。空気吸込口10には、図示しないプレフィルターが設置されている。プレフィルターは、空気吸込口10から空気調和装置2の内部へと入る空気に含まれている、比較的大きなごみ、塵、埃等を取り除くためのものである。
風路におけるプレフィルターの風下側には、熱交換器14が設置されている。熱交換器14は、風路を流れる空気と熱交換を行って、風路を流れる空気を加熱又は冷却する。空気を加熱するか冷却するかは、空気調和装置2が暖房運転であるか冷房運転であるかによる。
風路における熱交換器14の風下側には、送風ファン12が設置されている。送風ファン12は、空気吸込口10から空気吹出口9へと向かう空気流を風路中に生成するためのものである。
空気吹出口9における上下風向板7a、7b、8a、8bの風上側(奥側)には、左右風向板13が設けられている。左右風向板13は、空気吹出口9から吹き出す空気の左右方向の吹き出し角度を調整するためのものである。左右風向板13は、空気調和装置2の正面に向かって長手方向(空気吹出口9の左右方向)に渡って配置されている。上下風向板7a、7b、8a、8bと同様に、図示しない左右風向制御用ステッピングモーターの駆動により角度を調節できるようにして取り付けられている。
送風ファン12が動作すると、空気吸込口10から空気吹出口9へと向かう空気流が風路中に生成され、空気吸込口10から空気が吸い込まれ、空気吹出口9から空気が吹き出される。空気吸込口10から吸い込まれた空気は、空気調和装置2の内部の風路を、プレフィルター、熱交換器14、送風ファン12の順に通過する空気流となり、空気吹出口9から吹き出す。この際、送風ファン12の風下側に配置された上下風向板7a、7b、8a、8b及び左右風向板13により、空気吹出口9から吹き出される風の方向(送風方向)が調整(変更)される。
次に、図4及び図5を参照しながら、この発明の実施の形態1に係る加湿機1の構成について説明する。図4に示すのは加湿機1の外観である。加湿機1の前面上部には、加湿空気発生口15が形成されている。加湿機1の後側には、給水タンク16が着脱自在に取り付けられている。加湿機1の上部には、風路スライド部17が設けられている。
図5も参照しながら、加湿機1の内部の構成について説明する。前述したように、加湿機1の後側には給水タンク16が取り付けられる。この給水タンク16の下部には、給水弁18が設けられている。給水弁18は、給水タンク16の下部から下方に突出している。
加湿機1の内部における後部下側には、給水部19が設けられている。給水部19は、上方に向けて開放された凹状を呈する。そして、加湿機1に給水タンク16が取り付けられた際に、給水弁18が給水部19の凹状の内側に入るようになっている。なお、給水部19には、図示しない水位検知部が設けられている。
加湿機1の内部における前側下部には、高湿空気生成部が設けられている。この高湿空気生成部は、貯水部20及びヒータ21を備えている。貯水部20は有底円筒状を呈する。貯水部20の底部には、給水管22の一端が接続されている。給水管22の他端は、給水部19の底部に接続されている。こうして、加湿機1に取り付けられた給水タンク16内の水が、給水弁18、給水部19及び給水管22を介して貯水部20へと供給される。貯水部20の外周面の下部には、ヒータ21が取り付けられている。
このようにして構成された高湿空気生成部の上方には、貯水部カバー23が取り付けられている。貯水部カバー23は、貯水部20の上側に着脱可能に取り付けられる。貯水部カバー23は、貯水部20の上端からさらに上方へ延びるように形成される。貯水部カバー23の上部には、前方に向けて開口が形成されている。そして、貯水部カバー23のこの開口は、前述した加湿空気発生口15に接続されている。こうして、貯水部20の内部から貯水部カバー23の内部を通って加湿空気発生口15まで一続きに通じている。
貯水部カバー23及び加湿空気発生口15の上方には、前述した風路スライド部17が配置される。加湿機1の内部における給水部19と貯水部20との間の位置には、ファン24が設けられている。ファン24の上方には、送風ダクト25が延びて設けられている。送風ダクト25の一端は、ファン24が収容されたファンケースに接続されている。
風路スライド部17の前端部には、アシスト風吹出口26が形成されている。アシスト風吹出口26は、加湿空気発生口15の上方に位置している。送風ダクト25の他端側は、前方へと曲がって、風路スライド部17の内部を通っている。そして、送風ダクト25の他端は、アシスト風吹出口26に接続されている。こうして、ファン24が設置されたファンケース内の空間は、送風ダクト25及びアシスト風吹出口26を介して加湿機1の外部と通じている。
風路スライド部17は、加湿機1の本体の上面に設けられたレールを介して、加湿機1の本体に取り付けられている。風路スライド部17は、加湿機1の本体に対して前後方向にスライドし、加湿機1の本体に対する前後位置を変更することが可能である。したがって、風路スライド部17を前後に移動させることで、加湿空気発生口15に対するアシスト風吹出口26の前後方向の位置を調節することができる。
また、アシスト風吹出口26の周縁の上部には、ルーバー27が設けられている。このルーバー27により、アシスト風吹出口26が吹き出す空気流(以下において「アシスト風」という)の向きを、水平よりも下向きにすることができる。
加湿機1の運転開始前に、給水タンク16を加湿機1から取り外して給水タンク16内に水を入れてから、給水タンク16を加湿機1の給水部19に入れる。給水タンク16内の水は、給水弁18、給水部19及び給水管22を経て貯水部20に流れ込む。この際に流れ込む水量は、給水弁18によって調節される。
加湿機1を運転させると、ヒータ21は、貯水部20の内部の水を加熱する。貯水部20の内部の水は、加熱により水温が上昇して殺菌される。さらにヒータ21により加熱されると、貯水部20の内部の水は蒸気となって上昇し貯水部カバー23の内部に進入する。発生した蒸気は、貯水部カバー23の内部に充満した後、加湿空気発生口15から放出される。
加湿機1の運転中において、ファン24は、加湿機1の後面に形成された図示しない開口部から外部の空気を取り入れ、送風ダクト25の内部に空気を送る。送風ダクト25を通過した空気は、アシスト風吹出口26から外部へ放出されアシスト風となる。アシスト風の風向は、ルーバー27により調節される。アシスト風は、ルーバー27により水平方向よりやや下方へ向かって送風される。加湿空気発生口15から外部へ放出された蒸気は、アシスト風吹出口26から放出されたアシスト風により、上昇を抑制されつつ前方に搬送される。
次に、図6を参照しながら、以上のように構成された加湿機1及び空気調和装置2を備えた空気調和システムの制御系統の構成について説明する。加湿機1は、加湿機制御部30を備えている。加湿機制御部30は、例えば、プロセッサ及びメモリを備えたマイクロコンピュータからなる。そして、加湿機制御部30は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより予め設定された処理を実行し、加湿機1の制御を実現する。具体的には、加湿機1の運転を開始すると、加湿機制御部30は、ヒータ21及びファン24の動作を制御して、加湿機1から加湿空気を放出させる。
空気調和装置2は、空気調和装置制御部40を備えている。空気調和装置制御部40も、加湿機制御部30と同じく、例えば、プロセッサ及びメモリを備えたマイクロコンピュータからなる。そして、空気調和装置制御部40は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより予め設定された処理を実行し、後述する内容を含む空気調和装置2の具体的な制御を実現する。
また、加湿機1は加湿機側送受信部31を備えており、空気調和装置2は空気調和装置側送受信部41を備えている。加湿機1及び空気調和装置2は、加湿機側送受信部31及び空気調和装置側送受信部41を介して、それぞれの運転状態についての情報を相互に送受信する。このようにして、加湿機1と空気調和装置2とは、互いの運転状態についてやり取りすることで、連動して動作することが可能となる。
なお、この加湿機1と空気調和装置2との間での相互通信は、直接に行ってもよいし、例えば、空気調和システムが備えるサーバーを介して行ってもよい。このサーバーは、加湿機1及び空気調和装置2から送信された運転状態についての情報を記憶蓄積することができるようにしてもよい。さらに、加湿機制御部30及び空気調和装置制御部40、並びに、次に述べる加湿機稼動検知部42の機能の一部又は全部を、サーバーに備えるようにしてもよい。
空気調和装置2は、加湿機稼動検知部42を備えている。加湿機稼動検知部42は、加湿機側送受信部31から送信されて空気調和装置側送受信部41により受信された、加湿機1の運転状態に関する情報に基づいて、加湿機1が稼動していることを検知するものである。なお、ここでいう「加湿機1が稼動している」とは、加湿機1が室内に加湿空気を放出している状態を指している。
空気調和装置制御部40は、加湿機稼動検知部42の検知結果、及び、人体センサ11の検出結果に基づいて、送風ファン12の動作及び各風向板の向きを制御する。なお、各風向板の向きの制御は、それぞれの風向板の制御用ステッピングモーターの動作を制御することにより行う。
具体的には、加湿機稼動検知部42が、加湿機1が稼動していることを検知している、すなわち、加湿機1が室内に加湿空気を放出していることを検知している場合には、空気調和装置制御部40は、送風ファン12を動作させて空気調和装置2の空気吹出口9から送風を行う。また、この際に、空気調和装置制御部40は、人体センサ11により検出された室内の人の位置よりも上方に向けて送風されるように、左手前側上下風向板7a、右手前側上下風向板7b、左奥側上下風向板8a及び右奥側上下風向板8bの向きを制御する。このようにして、空気調和装置2は、加湿機1が室内に加湿空気を放出している場合に、室内の人の位置よりも上方に向けて送風する。
次に、以上のように構成された、この実施の形態1に係る空気調和システムの動作の流れの一例を、図7を参照しながら説明する。まず、使用者が、加湿機1を例えば枕元等に設置して、加湿機1の運転を開始させる。運転を開始した加湿機1は、加湿空気発生口15から加湿空気を放出するとともに、アシスト風吹出口26からアシスト風を放出し、加湿空気(蒸気)の上昇を抑制しつつ前方の使用者の顔へと向けて加湿空気を搬送する。そして、空気調和装置2が例えば暖房運転を開始すると、ステップS1において、空気調和装置制御部40は、人体センサ11による室内の人体の検出を開始させる。
続くステップS2において、空気調和装置制御部40は、人体センサ11により室内の人体が検出されたか否かを確認する。人体センサ11により室内の人体が検出されなければ、ステップS1へと戻り、人体センサ11による室内の人体の検出を継続する。
一方、ステップS2で人体センサ11により室内の人体が検出されれば、ステップS3へと進む。ステップS3においては、空気調和装置制御部40は、加湿機稼動検知部42により加湿機1の動作の検知を行う。
そして、ステップS4へと進み、空気調和装置制御部40は、加湿機稼動検知部42により加湿機1が稼動している、すなわち、加湿機1が室内に加湿空気を放出していることを検知したか否かを確認する。加湿機稼動検知部42により加湿機1の稼動が検知されず、すなわち、加湿機1が室内に加湿空気を放出していることが検知されない場合には、ステップS3へと戻り、加湿機稼動検知部42による加湿機1の動作の検知を継続する。
一方、ステップS4で加湿機稼動検知部42により加湿機1の稼動が検知された、すなわち、加湿機1が室内に加湿空気を放出していることが検知された場合には、ステップS5へと進む。
ステップS5においては、空気調和装置2は風除け送風を行う。すなわち、空気調和装置制御部40は、左手前側上下風向板7a、右手前側上下風向板7b、左奥側上下風向板8a及び右奥側上下風向板8bの向きを制御して、空気吹出口9からの送風方向を、人体センサ11が検出した室内の人の位置よりも上方へと向くようにする。そして、ステップS5が完了すると一連の動作フローは終了となる。
次に、以上のように構成された空気調和システムの作用について説明する。図1に示すように、この発明の実施の形態1における空気調和システム(ウイルス不活化空間生成システム)が適用される室内には、これまでに説明した構成を備えた加湿機1及び空気調和装置2が設置されている。この室内には、使用者3がいる。ここでは、使用者3は、例えば、ベッドでの就寝時に、加湿機1及び空気調和装置2を使用しているとする。
加湿機1は、ベッドで寝ている使用者3の高さに合わせて、例えば、使用者3の枕元のテーブルの上面等に置かれている。加湿機1から放出される加湿気流5は、ベッドで寝ている使用者3の顔に向けられている。加湿機1は、加湿気流5が使用者3の顔に届く位置に置かれている。
空気調和装置2は、前述したように、室内の壁面又は天面(ここでは、壁面)に設置されている。したがって、空気調和装置2は、加湿機1よりも上方に配置されている。そして、空気調和装置2は、加湿機1が室内に加湿空気を放出している場合に、気流4を室内の使用者3の位置よりも上方に向けて送風する。
このようにすることで、空気調和装置2からの気流4が使用者3に当たることなく、加湿機1から発生した蒸気を上方ではなく、空気調和装置2からの気流4の下に搬送することができ、使用者3の顔付近に加湿空気を効率的に搬送することが可能となる。
図8は、この発明の実施の形態1に係る空気調和システム(ウイルス不活化空間生成システム、以下単に「システム」という)を稼動させた場合と、システムを稼動させない場合とにおける、経過時間とインフルエンザウイルスの感染価との関係を示したものである。ウイルスの感染価とは、使用者3の周囲の空気中に含まれる感染性を有するウイルスの量のことである。図8の横軸は経過時間を表している。図8の縦軸は、インフルエンザウイルスの感染価を、経過時間が0における感染価を100%とした場合の割合で表している。なお、図8は、縦軸を対数目盛にした片対数グラフである。
この図8から分かるように、システムを稼動させた場合も稼動させない場合も、ウイルス感染価は、時間の経過とともに次第に減少していく。しかし、システムを稼動させない場合は、20分経過後のウイルス感染価は10%強であるのに対し、システムを稼動させた場合には、20分経過後のウイルス感染価は0.1%前後にまで減少させることができた。すなわち、システムを稼動させることでシステムを稼動させない場合と比較して2桁(99%)の感染価抑制効果が確認できた。
このように、この発明の実施の形態1に係る空気調和システムは、加湿機1が室内に加湿空気を放出している場合に、気流4を室内の使用者3の位置よりも上方に向けて送風することで、空気調和装置2からの気流4を使用者3に直接当てることなく、かつ、加湿機1から発生した蒸気を上方に逃がさずに気流4の下に抑え込み使用者3の周囲に加湿空気を効率的に搬送することができる。そして、このため、加湿機1からの加湿空気で、使用者3の周囲の必要な箇所のみを加湿し、その空間のウイルスを不活化し、使用者3の周囲の空気中のウイルス感染価を低減させることができ、かつ、室内を必要以上に加湿しないで済み、窓や壁等に結露が生じるのを抑制することが可能である。
なお、以上においては、人体センサ11を空気調和装置2に備えた場合について説明した。しかし、人体センサ11の設置場所はこれに限られず、他に例えば、室内の壁面、天面、又は、空気調和装置2もしくは加湿機1のリモコン等に設けるようにしてもよい。
実施の形態2.
図9は、この発明の実施の形態2に係るもので、空気調和システムの制御系統の構成を示すブロック図である。
ここで説明する実施の形態2は、前述した実施の形態1の構成において、加湿機1の位置を検出する加湿機位置検出手段を設け、加湿機1が室内に加湿空気を放出している場合に、空気調和装置2(送風装置)が、加湿機1の位置よりも上方に向けて送風するようにしたものである。
以下、この実施の形態2に係る空気調和システムについて、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
すなわち、図9に示すように、この実施の形態2では、空気調和装置2は、加湿機位置検出部43を備えている。加湿機位置検出部43は、加湿機1の位置を検出する加湿機位置検出手段である。ここで、加湿機位置検出部43が検出する加湿機1の位置は、送風装置すなわち空気調和装置2の位置を基準とした相対位置である。
加湿機位置検出部43が加湿機1の位置を検出する方法には、大きく分けて2つある。1つめは、加湿機位置検出部43は、加湿機1から送信された位置信号を用いて加湿機1の位置を検出する方法である。この1つめの方法を採用する場合、加湿機1は、加湿機1自身の空気調和装置2との相対的な位置情報を含む信号(これを「位置信号」という)を加湿機側送受信部31から送信する。空気調和装置2は、空気調和装置側送受信部41により、加湿機1から送信された位置信号を受信する。そして、加湿機稼動検知部42は、この受信した加湿機1の位置信号を基づいて、空気調和装置2に対する加湿機1の相対位置を検出する。
加湿機位置検出部43が加湿機1の位置を検出する方法の2つめは、加湿機1から放出された加湿空気の位置を検出することで加湿機1の位置を検出するものである。この2つめの方法を採用する場合、加湿機位置検出部43は、例えば、実施の形態1の人体センサ11と同様な、温度分布(熱画像)を取得可能な赤外線センサを備えている。そして、加湿機位置検出部43は、赤外線センサにより取得した温度分布(熱画像)に基づいて、蒸気すなわち加湿空気の位置を検出し、この加湿空気の位置を加湿機1の位置として検出する。
空気調和装置制御部40は、加湿機稼動検知部42の検知結果、及び、加湿機位置検出部43の検出結果に基づいて、送風ファン12の動作及び各風向板の向きを制御する。具体的には、加湿機稼動検知部42が、加湿機1が稼動していることを検知している、すなわち、加湿機1が室内に加湿空気を放出していることを検知している場合には、空気調和装置制御部40は、送風ファン12を動作させて空気調和装置2の空気吹出口9から送風を行う。
また、この際に、空気調和装置制御部40は、加湿機位置検出部43により検出された加湿機1の位置よりも上方に向けて送風されるように、左手前側上下風向板7a、右手前側上下風向板7b、左奥側上下風向板8a及び右奥側上下風向板8bの向きを制御する。このようにして、空気調和装置2は、加湿機1が室内に加湿空気を放出している場合に、加湿機1の位置よりも上方に向けて送風する。
なお、他の構成については実施の形態1と同様であって、その詳細説明は省略する。
次に、以上のように構成された空気調和システムの作用について説明する。この発明の実施の形態2における空気調和システム(ウイルス不活化空間生成システム)が適用される室内には、実施の形態1と同じく、例えば図1に示すように、加湿機1、空気調和装置2及び使用者3が存在している。加湿機1から放出される加湿気流5は、使用者3に向けられており、かつ、加湿機1は、加湿気流5が使用者3の届く位置に置かれている。
空気調和装置2は、室内の壁面又は天面(ここでは、壁面)に設置されている。したがって、空気調和装置2は、加湿機1よりも上方に配置されている。そして、空気調和装置2は、加湿機1が室内に加湿空気を放出している場合に、気流4を加湿機1の位置よりも上方に向けて送風する。
ここで、前述した特許文献2に示された従来技術においては、例えば、加湿機が特定の場所に向けて加湿気流を放出している場合に、空気調和機からの気流を加湿機に向けて空気調和機からの気流で加湿機からの加湿気流が乱れてしまう。このため、加湿機が本来目的としていた場所に加湿空気を送ることができなくなってしまうおそれがある。
これに対し、この発明の実施の形態2に係る空気調和システムは、加湿機1が室内に加湿空気(加湿気流5)を放出している場合に、気流4を加湿機1の位置よりも上方に向けて送風することで、空気調和装置2からの気流4により加湿機1からの加湿気流5を乱すことなく、かつ、加湿機1から発生した蒸気(加湿気流5)を上方に逃がさずに気流4の下に抑え込み使用者3の周囲に加湿空気を効率的に搬送することができる。そして、このため、実施の形態1と同様に、加湿機1からの加湿空気で、使用者3の周囲の必要な箇所のみを加湿し、その空間のウイルスを不活化し、使用者3の周囲の空気中のウイルス感染価を低減させることができ、かつ、室内を必要以上に加湿しないで済み、窓や壁等に結露が生じるのを抑制することが可能である。