〔第一実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の第一実施形態に係る光ファイバ被覆除去システムについて説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の光ファイバ被覆除去システム1は、光ファイバ被覆除去装置2(以下、被覆除去装置2と略して呼ぶ。)と、外部装置3と、を備える。
図1に示すように、被覆除去装置2は、通信部11、制御部12、記憶部13、ヒータ14、保守情報取得部15、及びブザー音出力部16を備えている。また、外部装置3は、端部の被覆が除去された光ファイバ同士を融着して接続する光ファイバ融着接続装置(以下、融着接続装置と略して呼ぶ。)である。以下、外部装置3を融着接続装置3として本実施形態の説明を行う。融着接続装置3は、入力部31、制御部32、記憶部33、通信部34、及び出力部35を備えている。
ここで、光ファイバ被覆除去システム1(被覆除去装置2及び融着接続装置3)の構造について説明する。図2に示すように、被覆除去装置2は、ベース21を備えている。図1に示す通信部11、制御部12、記憶部13、ヒータ14、及び保守情報取得部15は、いずれもベース21に収容されている。また、図2には示さないが、ブザー音出力部16は、ベース21の表面に設けられている。さらに、図示はしないが、ベース21の表面には、ブザー音が発生する際に点灯または点滅するLEDランプが設けられ、ベース21には、内蔵バッテリが収容されている。
ベース21には、ヒータ14が形成されており、ヒータ14の側方には、蓋部材23が設けられている。蓋部材23は、端辺がベース21と接続されており、この端辺を軸として回動することによって開閉可能とされている。蓋部材23が閉じることにより、ヒータ14に載置された光ファイバをヒータ14と蓋部材23とで挟み込むことができる。
なお、本実施形態では、ベース21にのみ被覆加熱のためのヒータが設けられているが、これに限らず、例えば、蓋部材23にも被覆加熱のヒータを設けることも可能である。
ベース21におけるヒータ14及び蓋部材23の前端部には、それぞれ被覆除去刃24が設けられている。これらの被覆除去刃24を、蓋部材23が閉じることでヒータ14及び蓋部材23の間に挟み込まれる光ファイバの被覆に入れることができる。
ベース21の前方には、スライドシャフト25でガイドされてベース21に対して近づいたり遠ざかったりする方向に移動可能なクランプ部26が取り付けられており、クランプ部26は、光ファイバを把持するファイバホルダ27をクランプ可能とされている。 光ファイバの被覆除去の際には、光ファイバの被覆に被覆除去刃24を入れ、除去する端末部の被覆をヒータ14によって加熱して軟化させる。その上でクランプ部26を操作してクランプ部26のクランプする光ファイバの本体部(光ファイバの端末部以外の部分)をベース21に対して離間させることで、光ファイバの端末部における被覆が除去される。なお、光ファイバの被覆除去の手順については、後に詳細に説明する。また、光ファイバの被覆除去の際の被覆加熱条件については、さらに後に詳しく説明する。
融着接続装置3は、融着接続部本体41と、表示モニタ42と、を備えている。融着接続部本体41には、光ファイバ同士を融着接続する図示しない融着接続部が設けられている。また、融着接続部本体41には、図1に示す、入力部31、制御部32、記憶部33、及び通信部34、さらには図示しない内蔵バッテリなどが収容されている。また、表示モニタ42は、例えば液晶モニタであり、表示モニタ42の表示画面が出力部35となる。なお、表示モニタ42は、液晶モニタ以外の表示装置などあってもよい。
表示モニタ42の側方には、入力キー43が設けられている。入力キー43には、エスケープキー43A、アップキー43B、メニューキー43C、ダウンキー43D、及びエンターキー43Eが含まれている。エスケープキー43A及びメニューキー43Cは、表示モニタ42の表示画面に表示する内容を決定するキーである。アップキー43B及びダウンキー43Dは、それぞれ表示モニタ42の表示画面に表示されるカーソルを上下させるキーであり、エンターキー43Eは、後に説明する接続プログラムや予加熱温度などの各種パラメータ等を決定し、被覆加熱条件の設定変更などを行うためのキーである。入力部31は、入力キー43の操作に応じた各種情報を入力して制御部32に出力する。
また、この例では、被覆除去装置2と融着接続装置3は、電源コード4を介して電気的に接続されている。融着接続装置3は、電源コード4を介して被覆除去装置2に電力を供給している。このため、被覆除去装置2は、融着接続装置3から充電を行っている。また、電源コード4には、通信信号を重畳することができ、被覆除去装置2と融着接続装置3の間では、電源コード4を介して各種情報の送受信が行われている。
図1に示す被覆除去装置2における通信部11は、電源コード4及び制御部12に接続されている。通信部11は、電源コード4を介して融着接続装置3の通信部34からの情報を受信して取得し、制御部12に出力する。また、通信部11は、制御部12から出力された各種情報を、融着接続装置3の通信部34に対して電源コード4を介して送信する。融着接続装置3の通信部34からの情報には、例えば、後に説明する複数の光ファイバ種類の中からユーザにより選択された光ファイバ種類を特定する光ファイバ種類情報が含まれる。そして、通信部11は、融着接続装置3からの光ファイバ種類情報に基づく情報として、被覆加熱条件情報を受信する。
制御部12は、通信部11や保守情報取得部15から出力された各種情報や記憶部13に記憶される各種の情報に基づいて、種々の演算処理等に基づく制御を行っている。例えば、記憶部13に記憶された設定被覆加熱条件に基づいて、ヒータ14の加熱温度及び/又は加熱時間を制御したり、通信部11が融着接続装置3からの光ファイバ種類情報に基づく情報を取得したときに、その情報に含まれる被覆加熱条件を記憶部13に記憶させたりする。また、すでに設定被覆加熱条件が記憶部13に記憶されているときに、通信部11が融着接続装置3からの情報をさらに取得して新たに設定被覆加熱条件を設定する場合には、制御部12は、すでに記憶部13に記憶された設定被覆加熱条件を書き換えて、設定被覆加熱条件を変更する。制御部12では、それ以外にも、通信部11、記憶部13、ヒータ14、及びブザー音出力部16に各種の情報を出力し、各種制御を行っている。
記憶部13は、被覆除去装置2における光ファイバの被覆除去に必要な各種情報を記憶している。また、記憶部13は、制御部12によって求められた各種情報を記憶している。制御部12は、必要に応じて記憶部13に各種情報を書き込んで記憶させたり、記憶部13に記憶された各種情報を読み出したりする。
ヒータ14は、例えば、記憶部13に記憶され制御部12により読みだされた設定被覆加熱条件を使用して、光ファイバの被覆加熱を行う。また、ヒータ14は、複数の光ファイバ種類の中からユーザ(作業者)により選択された光ファイバ種類を特定する光ファイバ種類情報に基づく情報に応じた複数の条件で被覆加熱を実行可能である。さらには、ヒータ14は、光ファイバ種類情報に基づく情報を使用するので、光ファイバ種類情報に応じた複数の条件で被覆加熱を実行可能である。制御部12は、融着接続装置3からの光ファイバ種類情報に基づく情報に応じて、複数の被覆加熱条件を設定被覆加熱条件として設定可能である。なお、以後の説明では、設定被覆加熱条件における被覆加熱温度及び被覆加熱時間をそれぞれ設定被覆加熱温度及び設定被覆加熱時間という。
保守情報取得部15は、内蔵バッテリの残量、内蔵バッテリの充放電回数、被覆除去刃24の使用回数、及び、異常発生等の保守情報を取得している。保守情報取得部15は、取得した保守情報を制御部12に出力する。保守情報取得部15は、内蔵バッテリの残量、内蔵バッテリの充放電回数、被覆除去刃24の使用回数、及び、異常発生のうちの少なくとも1以上の保守情報を取得するものであればよい。制御部12は、出力された保守情報に基づく情報を通信部11に出力し、通信部11は、保守情報取得部15が取得した保守情報に基づく情報を融着接続装置3に送信する。また、記憶部13には、被覆除去装置2の識別情報であるID番号が記憶されている。制御部12は、保守情報を通信部11に出力する際に記憶部13に記憶された識別情報を読み出し、保守情報とともに通信部11に出力する。通信部11は、識別情報に基づく情報を保守情報に基づく情報とともに融着接続装置3に送信する。
通信部11は、融着接続装置3からの、被覆除去装置2に対するブザー音量設定指示に基づく情報を受信する。ブザー音出力部16は、後に説明するブザー音発生条件が成立した場合に、制御部12から出力されたブザー音量設定指示に基づく情報であるブザー音量情報を使い、ブザー音を出力する。ブザー音出力部16は、ブザー音量情報に応じた複数のブザー音量でブザー音を出力可能である。
融着接続装置3における入力部31は、入力キー43の操作に応じた各種情報等を入力する。入力部31は、入力した各種情報を制御部32に出力する。
制御部32は、入力部31から入力された各種情報や、電源コード4を介して被覆除去装置2の通信部11から送信され、融着接続装置3の通信部34から出力される各種情報に基づいて、種々の設定処理等を行っている。制御部32では、これらの設定処理等の結果に基づいて、記憶部33、通信部34、及び出力部35等に各種の情報を出力する。
記憶部33は、後に説明する接続プログラムなど融着接続装置3における光ファイバの融着接続に必要な各種情報や、被覆除去装置2の被覆除去に必要な各種情報を記憶している。また、制御部32は、必要に応じて記憶部33に各種情報を書き込んで記憶させたり、記憶部33に記憶された各種情報を読み出したりする。
融着接続装置3は、光ファイバの種類に応じた複数の接続プログラムを記憶部33に記憶している。これらの複数の接続プログラムには、例えば、光ファイバ種類情報が含まれ、光ファイバ種類情報には被覆加熱条件情報が含まれている。制御部32は、記憶部33に記憶された複数の接続プログラムのうち、作業者により選択された接続プログラム(選択中の接続プログラム)を、入力部31への入力を用いて特定し、図示せぬ融着接続部を制御して、選択中の接続プログラムを用いて融着接続を行う。
通信部34は、電源コード4及び制御部32に接続されている。通信部34は、電源コード4を介して被覆除去装置2の通信部11から送信される各種情報を制御部32に出力する。また、通信部34は、制御部32から出力された各種情報を、被覆除去装置2の通信部11に対して電源コード4を介して送信する。出力部35は、制御部32から出力される情報に基づいて、接続プログラムや保守情報などの各種情報を表示して出力する。例えば、融着接続装置3は、被覆除去装置2の通信部11からの保守情報に基づく情報を受信し、その保守情報を出力部35から出力する。出力部35は、例えば、後述する表示モニタ42であり、保守情報は、表示モニタ42に出力される。融着接続装置3は、受信した保守情報に基づく情報を使い、保守情報を表示モニタ42から出力する。また、融着接続装置3は、受信した識別情報に基づく情報を使い、被覆除去装置2の識別情報を表示モニタ42から出力する。
また、融着接続装置3は、商用交流電源から電力の供給を受けて稼働する。被覆除去装置2は、電源コード4を介して融着接続装置3から電力供給を受けて稼働する。融着接続装置3は、商用交流電源から内蔵バッテリに切り替えて、内蔵バッテリを電源として稼働することもできる。被覆除去装置2は、融着接続装置3からの電力供給から内蔵バッテリに切替えて内蔵バッテリを電源として稼働することもできる。
融着接続装置3は、電源が商用交流電源から内蔵バッテリに切り変わった場合、内蔵バッテリの電力消費を減らすために省電力動作を行う。具体的には、一定の時間、例えば30秒間無操作である場合に、表示モニタ42の電源を切る。
融着接続装置3において電源が商用交流電源から内蔵バッテリに切り変わった場合、被覆除去装置2においても省電力動作が行われる。融着接続装置3は、電源が商用交流電源から内蔵バッテリに切り変わり、省電力モードがONになった場合に、省電力動作設定指示に基づく情報として省電力情報を被覆除去装置2に送信する。被覆除去装置2の通信部11は、融着接続装置3からの省電力情報を受信する。通信部11は、受信した省電力情報を制御部12に出力する。制御部12は、出力された省電力情報を使い、省電力動作の設定指示を行う。制御部12は、省電力動作の設定指示が行われない通常状態では、ヒータ14の予加熱を行って、光ファイバの被覆除去を行う際にヒータ14を短時間で加熱温度に到達するようにしている。制御部12は、省電力動作の設定指示が行われた省電力状態では、被覆除去装置2が一定の時間、例えば10分間無操作であるときにヒータ14の予加熱を中止する設定を行う。被覆除去装置2は、ヒータ14の予加熱を中止することで電力消費を抑えている。ヒータ14は、通信部11が受信した省電力情報を使い、ヒータ14の予加熱を制御している。
ここで、被覆除去装置2による光ファイバの被覆除去の手順について説明する。被覆除去装置2によって光ファイバの被覆除去を行う際には、まず、作業者が、クランプ部26をベース21に近接させ、ベース21に設けられた蓋部材23を開く。作業者は、光ファイバの端末部をヒータ14上に配置するように、ファイバホルダ27をクランプ部26に載置し、ファイバホルダ27をクランプ部26にクランプさせる。
それから、作業者は、蓋部材23を閉じて、ヒータ14と蓋部材23とで光ファイバを挟み込む。蓋部材23が閉じられることにより、光ファイバの被覆に被覆除去刃24が入る。蓋部材23が閉じたことを図示せぬセンサが検出すると、ヒータ14が光ファイバの除去する端末部の被覆の加熱を開始する。その後、光ファイバの端末部における被覆は、制御部12の設定した加熱温度(設定被覆加熱温度)で、制御部12の設定した加熱時間(設定被覆加熱時間)だけ加熱される。この設定被覆加熱時間が経過した後、例えばブザー音出力部16からブザー音が出力され、被覆の引き抜きの準備が完了した旨が作業者に報知される。そして、作業者がクランプ部26をベース21から遠ざける方向に移動させることにより、加熱されて軟化した光ファイバの端末部における被覆が引き抜かれる。このようにして、光ファイバの被覆が除去される。
光ファイバの被覆を被覆除去刃24で除去する前には、被覆引き抜き力が小さくなる被覆加熱温度及び/又は被覆加熱時間で被覆を加熱する、例えば、被覆引き抜き力が最も小さくなる最適被覆加熱温度(設定被覆加熱温度)及び/又は最適被覆加熱時間(設定被覆加熱時間)で被覆を加熱する必要がある。最適被覆加熱温度については、特開平1−90003号公報の第4図に示されている。被覆除去時に被覆から光ファイバを引き抜く力は被覆加熱温度によって変化する。被覆引き抜き力が高いと、被覆除去時に光ファイバに大きな張力が印加され、被覆除去途中で光ファイバが折れる、あるいは折れなくても光ファイバの強度が低下して長期信頼性の低下が発生する。したがって、被覆引き抜き力が小さくなる被覆加熱温度、より好適には被覆引き抜き力が最も小さくなる最適被覆加熱温度で被覆を加熱する必要がある。
最適被覆加熱温度で被覆を加熱しても、被覆内部まで温度が伝達されるには数秒の時間を要する。被覆内部にまで熱が伝わらない状態で被覆除去を行うと、被覆引き抜き力が大きくなり、被覆除去途中で光ファイバが折れる、あるいは折れなくても光ファイバの強度が低下して長期信頼性の低下が発生する。
また、最適被覆加熱温度で被覆を加熱しても、加熱時間が必要以上の長時間であった場合、被覆材によっては問題が発生する。被覆材が長時間加熱によって粉末化し、被覆除去後に光ファイバ表面に粉が残る。清掃によって除去されない光ファイバガラス表面の粉が融着接続中に燃焼し、光ファイバの強度劣化を引き起こす。
次に、光ファイバの被覆除去を行う際の被覆加熱条件について説明する。光ファイバの被覆除去を行う際には、光ファイバの被覆を加熱するための被覆加熱条件を設定する被覆加熱条件設定処理を行う。以下、被覆加熱条件設定処理の手順について、図3を参照して説明する。
図3に示すように、被覆加熱条件設定処理において、制御部32は、接続プログラムの選択が確定したか否かを判断する(ステップS1)。その結果、接続プログラムの選択が確定していない場合(ステップS1;NO)には、そのまま被覆加熱条件設定処理を終了する。
融着接続装置3の記憶部33には、光ファイバ同士を融着接続する際の接続プログラムが複数記憶されている。これらの複数の接続プログラムには、それぞれ接続プログラム番号が付されている。作業者が接続プログラムの選択を行う際には、例えば、図4に示すように、融着接続装置3における表示モニタ42の表示画面に複数の接続プログラムの番号(接続プログラム番号)及び名称(接続プログラム名)が表示される。接続プログラム名には、融着接続する光ファイバを特定する情報が含まれている。
図4に示す例では、5つの接続プログラム番号及び接続プログラム名が表示されている。
接続プログラム番号1の接続プログラム名は、「NZ12 TYPE−P ITUTG655」である。
接続プログラム番号2の接続プログラム名は、「SM4 TYPE−C ITUTG652」である。
接続プログラム番号3の接続プログラム名は、「NZ12 TYPE−P ITUTG655」である。
接続プログラム番号4の接続プログラム名は、「SM1 TYPE−A ITUTG652」である。
接続プログラム番号5の接続プログラム名は、「MM4 TYPE−S ITUTG651」である。
各接続プログラムにおいて、第1の文字列が光ファイバの分類及び心数を表し、第2の文字列が光ファイバの品種を表し、第3の文字列が国際標準ITU−Tの規格番号を表す。例えば、接続プログラム「NZ12 TYPE−P ITUTG655」において、「NZ12」は、非零分散シフトファイバという分類の心数12の光ファイバ(テープ型光ファイバ)を表し、「TYPE−P」は、その光ファイバのある特定の品種を表し、「ITUTG655」は、その光ファイバの国際標準ITU−Tの規格番号G.655を表す。
例えば、作業者は、図2に示す入力キー43を操作することにより、接続プログラムを選択して確定することができる。図4に示す例では、カーソルが位置している接続プログラム「NZ12 TYPE−P ITUTG655」が選択されている。この状態から、アップキー43Bまたはダウンキー43Dを操作することにより、カーソルが上下動し、選択される接続プログラム番号が変更される。
所望の接続プログラム番号にカーソルが位置したら、作業者は、エンターキー43Eを操作する。エンターキー43Eが操作されることにより、カーソルが位置している接続プログラムの選択が確定する。それまでの入力キー43への一連の入力情報を複数の光ファイバ種類の中からユーザ(作業者)により選択された光ファイバ種類情報として入力部31が入力して制御部32に出力する。なお、光ファイバ種類情報とは、光ファイバ種類を特定する情報である。本実施形態では、この光ファイバ種類情報に被覆加熱条件情報が含まれている。制御部32では、光ファイバ種類情報に基づいて、光ファイバ種類を特定する。例えば図4に示す状態でエンターキー43Eが操作されたときには、制御部32は、接続プログラム「NZ12 TYPE−P ITUTG655」に含まれる光ファイバ種類を特定する。融着接続装置3は、この光ファイバ種類が含まれる接続プログラムを選択して確定した接続プログラムとして特定する。
ステップS1において、接続プログラムの選択が確定した場合(ステップS1;YES)、制御部32は、選択中の接続プログラムに含まれる被覆加熱条件情報を記憶部33から読み出す(ステップS2)。記憶部33に記憶された接続プログラムには、光ファイバ同士を融着して接続するための複数の項目が含まれている。
具体的には、図5に示すように、接続プログラム番号、接続プログラム名のほか、光ファイバ同士を融着接続する際の放電加熱電流、放電加熱時間、光ファイバ押込み量等の各項目が含まれている。接続プログラムのうち、接続プログラムに含まれる「放電加熱電流」、「放電加熱時間」、「光ファイバ押し込み量」の各項目の値は、その接続プログラムに対応する光ファイバの種類に適した値となっている。融着接続装置3は、これらの項目の値を用いて、図示せぬ融着接続部により光ファイバの融着接続を行う。接続プログラムに含まれる「放電加熱電流」、「放電加熱時間」、「光ファイバ押し込み量」等の情報は、光ファイバの種類を特定する光ファイバ種類情報となる。
さらに、接続プログラムの項目には、接続する光ファイバの被覆を被覆除去装置2で加熱除去する際の被覆加熱条件も含まれている。被覆加熱条件には、被覆除去装置2におけるヒータ14の加熱温度及び加熱時間が含まれている。制御部32は、選択中の接続プログラムに含まれる被覆加熱条件を記憶部33から読み出す。例えば、選択中の接続プログラム「NZ12 TYPE−P ITUTG655」に含まれる被覆加熱条件を光ファイバ種類情報に基づく情報として記憶部33から読み出す。
続いて、制御部32は、読み出した被覆加熱条件に応じた被覆加熱条件情報を、通信部34を介して送信する(ステップS3)。被覆除去装置2では、被覆加熱条件設定処理を開始すると、融着接続装置3からの被覆加熱条件情報の送信を待つ処理が行われている。被覆加熱条件情報が送信された場合、被覆除去装置2における通信部11は、融着接続装置3からの被覆加熱条件情報を受信し、制御部12に出力する。制御部12は、通信部11から出力された被覆加熱条件情報を設定被覆加熱条件として、記憶部13に記憶させる(ステップS4)。このとき、記憶部13にすでに設定被覆加熱条件が記憶されているときには、記憶されている設定被覆加熱条件に新たな設定被覆加熱条件を上書きして、設定被覆加熱条件を設定変更する。こうして、被覆加熱条件設定処理を終了する。
被覆加熱条件設定処理が終了した後、被覆除去装置2における光ファイバの被覆除去を行うにあたり、蓋部材23を閉じてヒータ14による光ファイバの被覆の加熱が開始されたら、被覆除去装置2の被覆加熱処理が行われる。以下、被覆加熱処理の手順について、図6を参照して説明する。
図6に示すように、被覆除去装置2の被覆加熱処理が開始されると、制御部12は、記憶部13に記憶されている設定被覆加熱条件を読み出し、読み出した設定被覆加熱条件でヒータ14の被覆加熱を行う(ステップS11)。このようにして、ヒータ14は、設定被覆加熱条件情報を使用して光ファイバの被覆加熱を行う。設定被覆加熱条件情報は、図7に示すように、被覆加熱温度及び被覆加熱時間(設定被覆加熱温度及び設定被覆加熱時間)を含んでいる。制御部12は、読み出した設定被覆加熱条件、ここでは、T3℃でt3秒の被覆加熱を行う。こうして、被覆加熱処理を終了する。
ここで、被覆加熱処理が行われているときのヒータ14の温度変化について説明する。図8(A)には、省電力動作が行われ、ヒータ14の予加熱が中止されているときに被覆加熱処理を行う場合のヒータの温度変化を示している。図8(A)に示すように、省電力動作が行われているときには、ヒータ14は、被覆加熱処理が開始されるまで室温に保たれている。時間t11秒で作業者が蓋部材23を閉じると、制御部12は、ヒータ14を制御して被覆加熱処理を開始する。
ヒータ14は、加熱することによって昇温する。それから時間が経過して、時間t12秒でヒータ14の温度が設定被覆加熱温度に到達すると、制御部12は、ヒータ14の定温制御を始めて、ヒータ14の温度を設定被覆加熱温度に維持する。制御部12は、ヒータ14の温度が設定被覆加熱温度に到達した時間t12秒から、設定被覆加熱時間の計測を開始する。
それから、設定被覆加熱時間が経過して時間t13秒となると、制御部12は、ブザー音出力部16にブザー音を出力させて、設定被覆加熱時間の経過を知らせる。この時間t13秒が被覆除去の最適タイミングである。このタイミングで、例えば、LEDランプを制御して、点灯または点滅させてもよい。これらの知らせに気づいた作業者がクランプ部26をベース21から遠ざける方向に移動させることにより、加熱されて軟化した光ファイバの端末部における被覆が引き抜かれる。このようにして、光ファイバの被覆が除去される。作業者が時間t14秒で被覆の除去された光ファイバを取り出すために蓋部材23を開いたとする。蓋部材23の開いたことを例えば図示せぬセンサにより検知すると、制御部12は、ヒータ14の加熱を終了させる。制御部12がヒータ14の加熱を終了させることにより、被覆加熱処理が終了する。その後、ヒータ14の温度は徐々に室温まで低下する。
こうして、設定被覆加熱条件の被覆加熱処理が行われる。なお、本実施形態では、被覆加熱時間の計測は、ヒータ14が設定被覆加熱温度に到達したときから開始されるものと定義される(被覆加熱時間=t13秒−t12秒)が、ヒータ14の加熱が開始されたときから開始されると定義してもよい(被覆加熱時間=t13秒−t11秒)。設定被覆加熱時間の起点は、ヒータ14の設定被覆加熱温度の到達時間としてもよいし、ヒータ14の加熱開始時間としてもよい。
次に、被覆加熱条件設定処理の第一変形例について説明する。第一変形例の被覆加熱条件設定処理は、主に、被覆除去装置2の記憶部13及び融着接続装置3の記憶部33にそれぞれ記憶される情報並びに被覆除去装置2の制御部12及び融着接続装置3の制御部32の制御が上記の実施形態と相違している。以下、上記の実施形態との相違点を中心として、第一変形例について説明する。
第一変形例では、融着接続装置3から被覆除去装置2には、光ファイバ種類情報に基づく情報として、接続プログラム番号が送信される。接続プログラム番号は、融着接続装置3における作業者の接続プログラムの選択によって選択される。被覆除去装置2の制御部12は、送信された接続プログラム番号を使用して被覆加熱条件を特定する。記憶部13は、特定された被覆加熱条件の情報を設定被覆加熱条件情報として記憶する。ヒータ14は、接続プログラム番号を使用して特定された被覆加熱条件を読み出し、読み出した被覆加熱条件で光ファイバを被覆加熱する。こうして、ヒータ14は、受信した接続プログラム番号を使用して、光ファイバの被覆加熱を行う。以下、第一変形例における被覆加熱条件設定処理について説明する。
第一変形例における被覆加熱条件設定処理では、図9に示すように、制御部32は、接続プログラムの選択が確定したか否かを判断する(ステップS21)。この判断は、上記実施形態のステップS1(図3参照)と同様にして行われる。その結果、接続プログラムの選択が確定していない場合(ステップS21;NO)には、そのまま被覆加熱条件設定処理を終了する。
また、接続プログラムの選択が確定している場合(ステップS21;YES)には、制御部32は、選択中の接続プログラム番号を被覆除去装置2に対して通信部34を介して送信する(ステップS22)。被覆除去装置2では、被覆加熱条件設定処理を開始すると、融着接続装置3からの接続プログラム番号の送信を待つ処理が行われている。接続プログラム番号が送信された場合、被覆除去装置2における制御部12は、通信部11を介して融着接続装置3から送信された接続プログラム番号を、記憶部13に記憶されている被覆加熱プログラムに参照し、接続プログラム番号に対応する被覆加熱プログラムに含まれる被覆加熱条件を設定被覆加熱条件として記憶させる(ステップS23)。
第一変形例における被覆除去装置2の記憶部13には、図10に示す被覆加熱プログラムが記憶されている。被覆加熱プログラムには、融着接続装置3の接続プログラムに応じた被覆加熱温度及び被覆加熱時間が含まれている。さらに説明すると、被覆加熱プログラムには、被覆加熱プログラム番号と共通する接続プログラム番号の接続プログラムに含まれる被覆加熱温度、及び被覆加熱時間が含まれている。なお、第一変形例における融着接続装置3の記憶部33に記憶される接続プログラムは、図5に示す接続プログラムであってもよいし、図5に示す接続プログラムの項目から被覆加熱温度及び被覆加熱時間を除いた接続プログラムであってもよい。
制御部12では、送信された接続プログラム番号から、被覆加熱条件を読み出すことができる。具体的に、接続プログラム番号3が送信された場合には、接続プログラム番号3を被覆加熱プログラムに参照し、接続プログラム番号3に対応する被覆加熱プログラム3に含まれる被覆加熱条件である被覆加熱温度T3及び被覆加熱時間t3を読み出す。そして、読み出した被覆加熱温度T3及び被覆加熱時間t3を設定被覆加熱条件として記憶部13に記憶する。こうして、被覆加熱条件設定処理を終了する。
なお、第一変形例における被覆加熱条件設定処理では、融着接続装置3から被覆除去装置2に対して接続プログラム番号を送信しているが、例えば被覆加熱プログラム番号を送信するようにしてもよい。この場合、上記実施形態における接続プログラム(図5参照)の項目において、「被覆加熱条件」「被覆加熱時間」の項目に代えて、接続プログラム番号の項目を設け、選択して確定した接続プログラムに含まれる加熱プログラム番号を被覆除去装置2に送信するようにしてもよい。
続いて、被覆加熱条件設定処理の第二変形例について説明する。第二変形例の被覆加熱条件設定処理は、第一変形例と同様、被覆除去装置2の記憶部13及び融着接続装置3の記憶部33にそれぞれ記憶される情報並びに被覆除去装置2の制御部12及び融着接続装置3の制御部32の制御が上記の実施形態と異なっている。以下、上記の実施形態との相違点を中心として、第二変形例について説明する。
第二変形例では、融着接続装置3から被覆除去装置2には、光ファイバ種類情報に基づく情報として、被覆情報が送信される。被覆情報は、融着接続装置3における作業者の接続プログラムの選択によって選択される。被覆除去装置2の制御部12は、送信された被覆情報を使用して被覆加熱条件を特定する。記憶部13は、特定された被覆加熱条件の情報を設定被覆加熱条件情報として記憶する。ヒータ14は、接続プログラム番号を使用して特定された被覆加熱条件を読み出し、読み出した被覆加熱条件で光ファイバを被覆加熱する。こうして、ヒータ14は、受信した被覆情報を使用して、光ファイバの被覆加熱を行う。以下、第二変形例における被覆加熱条件設定処理について説明する。
第二変形例における被覆加熱条件設定処理では、図11に示すように、制御部32は、接続プログラムの選択が確定したか否かを判断する(ステップS31)。この判断は、上記実施形態と同様にして行われる。その結果、接続プログラムの選択が確定していない場合(ステップS31;NO)には、制御部32は、そのまま被覆加熱条件設定処理を終了する。
また、接続プログラムの選択が確定している場合(ステップS31;YES)には、制御部32は、選択中の接続プログラムに含まれる被覆情報を読み出す(ステップS32)。第二変形例において、記憶部33に記憶される複数の接続プログラムには、図12に示すように、上記実施形態と同様の接続プログラム番号、接続プログラム名、光ファイバ同士を接続する際の放電加熱電流、放電加熱時間、光ファイバ押込み量といった項目のほか、光ファイバの心数、被覆径、被覆材といった被覆情報となる各項目が含まれている。制御部32は、確定した接続プログラムに対応する被覆情報である光ファイバの心数、被覆径、被覆材を記憶部33から読み出す。
続いて、制御部32は、読み出した被覆情報を被覆除去装置2に対して通信部34を介して送信する(ステップS33)。被覆除去装置2では、被覆加熱条件設定処理を開始すると、融着接続装置3からの被覆情報の送信を待つ処理が行われている。被覆情報が送信された場合、被覆除去装置2における制御部12は、通信部11を介して融着接続装置3から送信された被覆情報を、記憶部13に記憶されている被覆加熱プログラムに参照し、送信された被覆情報を含む被覆加熱プログラムに含まれる被覆加熱条件を設定被覆加熱条件として記憶させる(ステップS34)。
第二変形例における被覆除去装置2の記憶部13には、図13に示す被覆加熱プログラムが記憶されている。被覆加熱プログラムには、融着接続装置3の記憶部33に記憶された接続プログラムのうち、接続プログラム番号が被覆加熱プログラム番号と共通する接続プログラムに含まれる被覆情報が含まれている。具体的に、図12に示す接続プログラム番号1の接続プログラムには、被覆情報として、心数Na、被覆径Ra、被覆材○○が含まれている。また、図13に示す被覆加熱プログラム番号1の被覆加熱プログラムにも、被覆情報として、心数Na、被覆径Ra、被覆材○○が含まれている。
制御部12は、送信された被覆情報から、被覆加熱プログラムを特定し、特定した被覆加熱プログラムに含まれる被覆加熱条件を読み出すことができる。具体的に、制御部12は、接続プログラム番号3の接続プログラムに記憶された被覆情報が送信された場合に、送信された被覆情報を被覆加熱プログラムに参照して、被覆加熱プログラム番号3を特定し、被覆加熱プログラム番号3の被覆加熱プログラムに含まれる被覆加熱条件である被覆加熱温度T3及び被覆加熱時間t3を読み出す。そして、制御部12は、読み出した被覆加熱温度T3及び被覆加熱時間t3を設定被覆加熱条件として記憶部13に記憶させる。こうして、被覆加熱条件設定処理を終了する。
また、光ファイバ被覆除去システム1では、被覆加熱条件設定処理のほか、省電力処理、保守情報取得表示処理、ブザー音量設定処理、ブザー音出力処理等の各種処理を行っている。以下、これらの処理について、それぞれ説明する。
省電力処理は、図14に示すフローチャートに沿って行われる。融着接続装置3が省電力処理を開始すると、制御部32は、省電力動作が行われているか否かを判断する(ステップS41)。省電力動作が行われているか否かは、電源が商用交流電源から内蔵バッテリに切り替わったか否かによって判断される。その結果、省電力動作が行われていない場合(ステップS41;NO)には、通常状態であるので、制御部32は、そのまま省電力開始処理を終了する。
また、省電力動作が行われている場合(ステップS41;YES)には、制御部32は、省電力情報を被覆除去装置2に対して通信部34を介して送信する(ステップS42)。被覆除去装置2では、省電力処理を開始すると、融着接続装置3からの省電力情報の送信を待つ処理が行われている。省電力情報が送信された場合、被覆除去装置2における制御部12は、通信部11を介して融着接続装置3から送信された省電力情報を受信し(ステップS43)、省電力動作として、ヒータ14の予加熱の中止を設定する(ステップS44)。このように、ヒータ14は、省電力情報を使い、ヒータ14の予加熱を制御する。こうして、省電力処理を終了する。
電力動作における省電力情報の設定は、融着接続装置3の表示モニタ42に表示される図15に示す省電力設定画面を表示して行うことができる。図15に示す省電力設定画面は、作業者が融着接続装置3における入力キー43を操作することによって表示することができる。また、融着接続装置3における入力キー43を操作することにより、図15に示す省電力設定画面を表示することができる。図15に示すように、省電力設定画面には、識別情報としての被覆除去装置2のID番号(Ribbon Stripper ID)、省電力情報としての省電力モード(Power Saving Mode)、予加熱温度(Preheat Temp)、シャットダウン時間(Shutdown Time)の情報が表示されている。
このうち、省電力モードは、ONのときに省電力動作が行われる状態である省電力状態(Power Saving)となり、OFFのときにヒータ14の予加熱が行われる通常状態(Preheat)となるものである。予加熱温度は、省電力動作が行われていない通常状態中にヒータ14を予加熱する際の温度である。シャットダウン時間は、省電力動作が開始されてから無操作の状態が続いたときに予加熱を中止するまでの時間である。
図15に示す例では、省電力モードはOFFであり省電力動作は行われていない通常状態であり、予加熱温度は80℃、融着接続装置3のシャットダウン時間は10分に設定されている。省電力設定画面が表示されているときには、入力キー43を操作することによって省電力情報としての省電力モード、予加熱温度、及びシャットダウン時間を設定する被覆除去装置2に対する省電力動作設定指示を行うことができる。なお、識別情報としての被覆除去装置2のID番号は、後述する保守情報取得表示処理において、被覆除去装置2から融着接続装置3に送信された情報が表示される。
融着接続装置3が省電力動作を終了して通常状態になった場合には、融着接続装置3の制御部32は、被覆除去装置2の制御部12に通常情報を送信する。通常情報を受信した被覆除去装置2の制御部12は、省電力動作を終了して通常状態に移行し、ヒータ14の予加熱が中止されているときには、ヒータ14の予加熱を開始する。
通常状態において、ヒータ14の温度変化について説明する。図8(B)には、通常状態でヒータ14が予加熱されているときに被覆加熱処理を行う場合のヒータの温度変化を示している。図8(B)に示すように、通常状態のときには、制御部12は、ヒータ14を予加熱温度に維持する定温制御を行う。時間t21秒で作業者が蓋部材23を閉じると、制御部12は、ヒータ14を制御して被覆加熱処理を開始する。
ヒータ14は、加熱することによって昇温する。それから時間が経過して、時間t22秒でヒータ14の温度が設定被覆加熱温度に到達すると、制御部12は、ヒータ14の定温制御を始めて、ヒータ14の温度を設定被覆加熱温度に維持する。省電力動作が行われていない通常状態では、ヒータ14が予加熱されているので、ヒータ14の温度が設定被覆加熱温度に到達する時間は、省電力動作が行われている場合よりも短くなる。制御部12は、ヒータ14の温度が設定被覆加熱温度に到達した時間t22秒から、設定被覆加熱時間の計測を開始する。
それから、設定被覆加熱時間が経過して時間t23秒となると、被覆除去の最適タイミングとなる。このとき制御部12は、LEDランプを制御して、点灯または点滅させてもよい。これらの知らせに気づいた作業者がクランプ部26をベース21から遠ざける方向に移動させることにより、加熱されて軟化した光ファイバの端末部における被覆が引き抜かれる。このようにして、光ファイバの被覆が除去される。作業者が時間t24秒で被覆の除去された光ファイバを取り出すために蓋部材23を開くと、制御部12は、ヒータ14の加熱を終了させる。制御部12がヒータ14の加熱を終了させることにより、被覆加熱処理が終了する。その後、ヒータ14の温度は徐々に予加熱温度まで低下し、時間t25秒で予加熱温度に到達すると、制御部12は、定温制御を開始してヒータ14を予加熱温度に維持する。こうして、設定被覆加熱条件の被覆加熱温度及び被覆加熱時間での被覆加熱処理が行われる。なお、加熱時間の定義は、省電力モード中と同様、ヒータ14の加熱が開始されてからの一定時間を加熱時間として計測してもよい(加熱時間=t23−t21)。
保守情報取得表示処理は、図16に示すフローチャートに沿って行われる。保守情報取得表示処理として、被覆除去装置2では、保守情報取得処理が行われ、融着接続装置3では、保守情報表示処理が行われる。図16に示すように、被覆除去装置2が保守情報取得処理を開始すると、被覆除去装置2の制御部12は、保守情報取得部15において、被覆除去装置2の保守情報を取得する(ステップS51)。保守情報には、被覆除去刃24の使用回数、被覆除去装置2に内蔵された内蔵バッテリの残量及び充放電回数、さらには、被覆除去装置2における異常発生が含まれる。
保守情報取得部15は、バッテリ充電量センサ、バッテリ充放電回数カウンタ、被覆除去回数カウンタ、異常検出センサ等を備えて構成されている。バッテリ充電量センサでは、被覆除去装置2における内蔵バッテリの充電残量を検出して取得する。バッテリ充放電回数カウンタは、被覆除去装置2における内蔵バッテリの充放電回数を計数する。被覆除去装置2における内蔵バッテリの充放電回数は、充電回数と放電回数とを分けて計数している。ただし、充放電回数をまとめて計数してもよい。ここでは、内蔵バッテリの充電回数を計数している。被覆除去回数カウンタは、光ファイバの被覆に被覆除去刃24を入れた回数、換言すれば、被覆除去刃24の使用回数を計数する。異常検出センサは、被覆除去装置2に発生した異常、例えば、内蔵バッテリやヒータ14の過熱、異物の混入(引き抜き後の被覆屑の残存)、蓋部材23の閉鎖不良などが発生した場合に、これらの異常を検出する。保守情報取得部15は、検出した内蔵バッテリの充電残量及び異常発生、さらには計数した内蔵バッテリの充放電回数及び被覆除去刃24の使用回数を、それぞれ取得した保守情報に基づく情報として制御部12に出力する。
制御部12は、保守情報取得部15が取得した保守情報に基づく情報を融着接続装置3に対して通信部11を介して送信する(ステップS52)。このとき、制御部12は、被覆除去装置2の識別情報に基づく情報を合わせて送信する(ステップS52)。制御部12は、被覆除去装置2と融着接続装置3を繋いだ時からに所定時間おき、例えば5分おきに保守情報取得開始処理を繰り返して行う。また、被覆除去装置2の識別情報に基づく情報の融着接続装置3への送信は、被覆除去装置2と融着接続装置3を繋いだ時の1回だけ行うようにしてもよい。
融着接続装置3では、保守情報表示処理を開始すると、被覆除去装置2からの保守情報に基づく情報及び識別情報に基づく情報の送信を待つ処理が行われている。保守情報に基づく情報及び識別情報に基づく情報が送信された場合、融着接続装置3における制御部32は、通信部34を介して被覆除去装置2から送信された保守情報に基づく情報及び識別情報に基づく情報を受信し(ステップS53)、受信した保守情報に基づく情報及び識別情報に基づく情報を使い、保守情報及び識別情報を表示モニタ42に表示する(ステップS54)。このように、制御部32は、受信した保守情報に基づく情報及び識別情報に基づく情報を使い、表示モニタ42に保守情報及び識別情報を出力する。こうして、保守情報取得表示処理を終了する。
なお、バッテリ充放電回数カウンタや被覆除去カウンタを制御部12に設け、保守情報取得部15にバッテリ充放電センサ、被覆除去センサを設けるようにしてもよい。この場合、保守情報取得部15では、バッテリ充電センサによって内蔵バッテリの充放電を検出するとともに、被覆除去センサで光ファイバの被覆除去を検出し、これらの検出結果に基づく充放電情報及び被覆除去情報を制御部12に出力して、制御部12のバッテリ充放電回数カウンタや被覆除去カウンタによって内蔵バッテリの充放電回数及び被覆除去刃24の使用回数を計数するようにしてもよい。あるいは、バッテリ充放電回数カウンタや被覆除去カウンタを融着接続装置3の制御部32に設け、バッテリ充放電回数カウンタや被覆除去カウンタによって内蔵バッテリの充放電回数及び被覆除去刃24の使用回数を計数するようにしてもよい。この場合、保守情報取得部15は、バッテリ充放電センサ及び被覆除去センサで検出した内蔵バッテリの充放電回数及び被覆除去刃24の使用回数を、制御部12等を介して融着接続装置3の制御部32に送信すればよい。
作業者は、融着接続装置3の表示モニタ42に図17に示す保守情報表示画面を表示させることで、保守情報を見ることができる。図17に示す保守情報表示画面は、例えば作業者が融着接続装置3における入力キー43を操作することによって表示される。保守情報表示画面には、識別情報及び保守情報に含まれる各種の情報が表示されている。このうち、識別情報としては、被覆除去装置2のID番号(Ribbon Stripper ID)が表示され、保守情報としては被覆除去装置2における内蔵バッテリの充電残量(Battery Capacity)及び充電回数(Battery Recharged)、並びに被覆除去刃24の使用回数(Blade Stripped)が表示されている。図17に示す保守情報表示画面では、被覆除去装置2における内蔵バッテリの充電残量が50%、充電回数が110回、被覆除去刃24の使用回数が11052回として表示されている。
ブザー音量設定処理は、図18に示すフローチャートに沿って行われる。図18に示すように、ブザー音量設定処理において、融着接続装置3の制御部32は、ブザー音量が確定したか否かを判断する(ステップS61)。その結果、ブザー音量が確定していない場合(ステップS61;NO)には、そのままブザー音量設定処理を終了する。
作業者は、融着接続装置3の表示モニタ42に図19に示すブザー情報設定画面を表示させて被覆除去装置2のブザー音量の設定を行うことができる。図19に示すブザー情報設定画面は、例えば、作業者が融着接続装置3における入力キー43を操作することによって表示される。ブザー情報設定画面には、識別情報としての被覆除去装置2のID番号(Ribbon Stripper ID)、ブザー音量(Buzzer Volume)、及びブザー音発生条件候補が表示されている。ブザー音発生条件候補には、「加熱完了(Heat Completed)」「電源On(Power On)」「電源Off(Power Off)」「シャットダウン(Shut Down)」「充電開始(Rechage Start)」「充電終了(Rechage End)」が規定されている。作業者が融着接続装置3の入力キー43を操作することにより、ブザー音量設定指示としてブザー音量を設定できるとともに、ブザー音発生条件候補の中から、ブザー音発生条件を選択することができる。図19に示すブザー情報設定画面では、ブザー音量は「4」として表示され、ブザー音発生条件として、「加熱完了」「電源On」「充電終了」が選択されて表示されている。ブザー音量は、本実施形態では「1」〜「5」の5段階に設定されており、数字が大きいほど音量が大きくなる設定である。ただし、ブザー音量については、段階数が5段階よりも多くてもよいし少なくてもよい。また、ブザー音量は、整数で段階を分けたデジタル式ではなくアナログ式であってもよい。
また、ブザー音量が確定している場合(ステップS61;YES)には、制御部32は、ブザー音量情報を被覆除去装置2に対して通信部34を介して送信する(ステップS62)。被覆除去装置2における制御部12は、通信部11を介して融着接続装置3から送信されたブザー音量情報を受信し、設定ブザー音量情報として記憶部13に記憶する(ステップS63)。こうして、ブザー音量設定処理を終了する。
ブザー音量設定処理が終了した後、ブザー音発生条件が成立したときには、被覆除去装置2における制御部12は、ブザー音出力部16からブザー音を出力する。ブザー音発生条件は、融着接続装置3で設定され、被覆除去装置2に送信される。被覆除去装置2では、送信されたブザー音発生条件を記憶部13に記憶しておき、制御部12は、記憶部13に記憶されたブザー音発生条件が成立したときに、ブザー音出力処理を行う。
以下、ブザー音出力処理の手順について、図20を参照して説明する。なお、ブザー音出力処理は、ブザー音量設定処理の実行中にも行われる。ブザー音量設定処理の実行中にブザー音を出力する場合には、現在実行中のブザー音設定処理の前に行われたブザー音設定処理で設定されたブザー音量でブザー音を出力する。
図20に示すように、ブザー音出力処理が開始されると、制御部12は、記憶部13に記憶されている設定ブザー音量情報を読み出し、読み出した設定ブザー音量情報に応じたブザー音量でブザー音出力部16からブザー音を出力する(ステップS71)。こうして、ブザー音出力処理を終了する。
また、ブザー音出力部16からブザー音を発生させるときには、ベース21の表面に設けられた図示しないLEDランプを点灯または点滅させるとき、LEDランプの明るさや点滅速度をブザー音量の大きさに合せるようにしてもよい。例えば、ブザー音量が大きいほど、LEDランプを明るく点灯させたり、点滅速度を早めたりするようにしてもよい。あるいは、LEDの色を変えたりしてもよい。
なお、本実施形態では、融着接続装置3において被覆除去装置2のブザー音量の設定を行うこととしたが、それに限らず、例えば、被覆除去装置2のブザー音量を、融着接続装置3のブザー音量と連動させて設定するといったことも可能である。
このように、本実施形態に係る光ファイバ被覆除去システム1は、被覆加熱する光ファイバの種類を特定する光ファイバ種類情報を入力した融着接続装置3からの被覆加熱条件情報に基づき、ヒータ14によって光ファイバの被覆加熱を行っている。ここで、ヒータ14は、被覆加熱条件情報に応じた複数の被覆加熱条件で光ファイバを被覆加熱可能とされている。
被覆除去装置2は、光ファイバの被覆除去を行うにあっては、光ファイバの種類や被覆材、被覆構造等に応じて適した被覆加熱条件があるため、ヒータ14は、被覆加熱条件情報に応じた複数の被覆加熱条件で光ファイバを被覆加熱可能とされており、被覆除去装置2には、光ファイバの種類等に応じた最適な被覆加熱条件が設定される。ここで、被覆除去装置2は、被覆除去の作業を行う装置であることから、被覆加熱条件の設定や変更に必ずしも適しない状況下で使用されることが少なくなく、被覆加熱条件の変更を忘れて被覆除去作業を行ってしまう懸念がある。
この点、本実施形態に係る光ファイバ被覆除去システム1は、被覆加熱する光ファイバの種類を特定する光ファイバ種類情報を入力した融着接続装置3からの被覆加熱条件情報に基づき、ヒータ14によって光ファイバの被覆加熱を行っている。このため、被覆加熱条件の設定変更作業は、融着接続装置3で行うことができる。したがって、被覆加熱条件の設定変更作業にかかる手間を小さくし、設定変更作業忘れを抑制することができる。
また、被覆除去装置2の記憶部に設定被覆加熱条件が記憶されている場合でも、被覆除去装置2は、さらに取得した被覆加熱条件情報を設定被覆加熱条件としてすでに記憶されている設定被覆加熱条件から変更することができる。したがって、複数の被覆加熱条件が記憶されている状況において、設定被覆加熱条件の変更を容易に行うことができる。
また、被覆除去装置2は、通信部11が受信した省電力情報に基づいて省電力状態に移行し、ヒータ14は予加熱の中止を設定するようにしている。このため、被覆除去装置2を使用する際の省エネルギー化に寄与することができる。また、融着接続装置3が内蔵バッテリに切り替わった場合に、制御部32は、省電力動作を開始するとともに被覆除去装置2に省電力情報を送信する。このため、融着接続装置3が省電力動作を開始した場合に、被覆除去装置2にも自動的に省電力動作を開始させることができる。
さらに、被覆除去装置2は、融着接続装置3から電力の供給を受けているので、融着接続装置3が内蔵バッテリに切り替わった時に被覆除去装置2が省電力動作を開始することにより、融着接続装置3における内蔵バッテリの消耗を抑制することができる。さらに、被覆除去装置2が内蔵バッテリに切り替わった時に省電力動作を開始することにより、被覆除去装置2における内蔵バッテリの消耗を抑制することができる。
なお、本実施形態では、被覆除去装置2が省電力動作を開始することによりヒータ14の予加熱の中止を設定しているが、予加熱の中止に代えて、ヒータ14の予加熱温度を低くしたり、ヒータ14を間欠的に加熱したりするようにしてもよい。例えば、省電力動作が行われるときには、ヒータ14の予加熱温度を融着接続装置3で設定された温度の数%、例えば40%としたり、30秒おきのヒータ14のON−OFFを繰り返すようにしたりしてもよい。
また、被覆除去装置2は、ブザー音発生条件が成立したときにブザー音出力部16からブザー音を発生させるようにしている。このブザー音の音量は任意に設定可能であるが、ブザー音出力部16は、通信部11が受信したブザー音量情報に基づくブザー音量でブザーを出力させることができる。したがって、ブザー音量の設定作業を融着接続装置3で行うことができるので、ブザー音量の設定作業を容易に行うことができる。
このように、通信機能を用いて、融着接続装置3から被覆除去装置2へ省電力動作設定指示に基づく情報やブザー音量設定指示に基づく情報を送信することで、融着接続装置の装置設定に応じて、被覆除去装置の装置設定が自動変更されるようにできる。
また、被覆除去装置2は、内蔵バッテリの残量及び放充電回数、被覆除去刃24の使用回数、及び異常発生などの保守情報を保守情報取得部15で取得している。また、通信部11は、これらの保守情報に基づく情報を融着接続装置3に送信し、制御部32は、受信した保守情報に基づく情報及び識別情報に基づく情報を使い、表示モニタ42に保守情報を出力する。被覆除去装置2は、被覆除去作業を容易に行うために小型化されているものであるため、種々の情報を出力手段が限られている。一方、融着接続装置3には、多種多様の情報を整理して表示可能な表示モニタ42が設けられている。このため、多くの項目を含む保守情報に基づく情報を融着接続装置3に送信することで、表示モニタ42に保守情報を出力することができる。したがって、作業者は、被覆除去装置2の保守情報を容易に確認することができる。これにより、作業者は、表示された被覆除去装置2の保守情報に基づいて、被覆除去装置2の保守管理(例えば、被覆除去刃やバッテリの交換、バッテリの充電など)を簡単に行うことができる。
また、第一変形例及び第二変形例のように、被覆加熱条件が融着接続装置3に記憶されておらず、被覆除去装置2に記憶されている場合には、被覆除去装置2から設定被覆加熱条件情報を融着接続装置3に送信し、融着接続装置3の表示モニタ42によって設定被覆加熱条件情報を出力するようにしてもよい。この場合、作業者は、設定被覆加熱条件を容易に確認することができる。
また、被覆除去装置2は、自身の識別情報等してのID番号を融着接続装置3に送信している。このため、融着接続装置3において、被覆除去装置2を容易に判別することができる。特に、融着接続装置3には、複数の被覆除去装置2が接続されて使用されることがある。このような場合には、融着接続装置3には複数の被覆除去装置2の情報が集約されるが、識別情報を送信することにより、複数の被覆除去装置2を容易に判別することができる。
また、本実施形態において、外部装置は、融着接続装置3とされている。融着接続装置3は、被覆除去装置2で被覆除去された光ファイバの融着接続を行うことができる装置である。さらに、融着接続装置3は、接続プログラムの選択により、選択中の接続プログラムに含まれる被覆加熱条件情報を被覆除去装置2に送信している。このため、外部装置が融着接続装置3であることにより、光ファイバの被覆除去から融着接続までの工程を連続して実行できる。また、融着接続装置3には、光ファイバ同士を接続する際の接続プログラムが複数記憶されている。これらの複数の接続プログラムに被覆加熱条件を含めておくことにより、融着接続装置3において、被覆加熱条件を容易に選択して設定変更することができる。
また、被覆除去装置2の記憶部13には、第一変形例、第二変形例による被覆加熱条件設定処理を行うに際し、融着接続装置3から送信されたプログラム番号や被覆情報などの光ファイバ種類情報に基づく情報を使用して設定変更された被覆加熱条件が設定被覆加熱条件として記憶されている。この被覆除去装置2の通信部11は、記憶部13に記憶されている設定被覆加熱条件情報を融着接続装置3に送信し、融着接続装置3は、受信した設定被覆加熱条件情報を表示モニタ42に表示するようにしてもよい。この場合、被覆除去装置2における設定被覆加熱条件情報を融着接続装置3の表示モニタ42で大きく、あるいは見やすく表示することができる。したがって、作業者は、設定被覆加熱条件情報の確認を容易に行うことができる。
なお、上記本実施形態では、融着接続装置3と被覆除去装置2との情報を電源コード4を介した有線送信で送受信しているが、無線を用いた送受信を行うようにしてもよい。また、被覆加熱条件としては、被覆加熱温度及び被覆加熱時間を用いているが、被覆加熱温度及び被覆加熱時間のいずれか一方であってもよい。
〔第二実施形態〕
次に、図面を参照して、本発明の第一実施形態に係る光ファイバ被覆除去システムについて説明する。第二実施形態に係る光ファイバ被覆除去システムは、第一実施形態に係る光ファイバ被覆除去システムが融着接続装置である点に代えて、携帯端末である点が主に相違している。また、被覆除去装置2は、第一実施形態の被覆除去装置2と比較して、主に、記憶部13にそれぞれ記憶される情報及び制御部12の制御が上記の実施形態と相違している。以下、上記の実施形態との相違点を中心として、第二実施形態について説明する。また、共通する部材、要素については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図21に示すように、光ファイバ被覆除去システム5は、被覆除去装置2及び外部装置である携帯端末50を備えている。被覆除去装置2は、上記第一実施形態と同様、通信部11、制御部12、記憶部13、ヒータ14、保守情報取得部15、及びブザー音出力部16を備えている。なお、通信部11には、電源コード4ではなくアンテナ6が接続されている点で上記第一実施形態とは相違している。また、外部装置は、作業者等が所有する携帯端末50である。携帯端末50は、タッチパネル51、制御部52、記憶部53、及び通信部54を備えている。通信部54には、内部アンテナ55が接続されている。
図22に示すように、携帯端末50は、いわゆるスマートフォンであり、筐体60を備えている。筐体60には、タッチパネル51が取り付けられている。また、筐体60の内部に制御部52、記憶部53、通信部54、及び内部アンテナ55が設けられ、さらに図示しない内蔵電池が収容されている。
携帯端末50におけるタッチパネル51は、制御部52の制御に応じた画像が表示される。タッチパネル51に表示される画像に応じてタップ、フリック、スワイプ、ピンチインなどの操作がタッチパネル51に行われることにより、タッチパネル51は、タップ等の操作に応じた情報を制御部52に出力する。また、タッチパネル51は、制御部52から出力される情報等に基づいて、接続プログラムや保守情報などの各種情報を表示して出力する。
制御部52は、タッチパネル51から出力された各種情報や、内部アンテナ55を介して被覆除去装置2の通信部11から送信され、携帯端末50の通信部54から出力される各種情報に基づいて、種々の設定処理等を行っている。制御部32では、これらの処理結果等に基づいて、タッチパネル51、記憶部53、及び通信部54等に各種の情報を出力する。
記憶部53は、被覆除去装置2の被覆除去に必要な各種情報を記憶している。また、記憶部53は、制御部52によって設定被覆加熱条件などの各種情報が記憶されている。制御部52は、必要に応じて記憶部53に記憶された設定被覆加熱条件などの各種情報を読み出す。
通信部54は、制御部52及び内部アンテナ55に接続されている。通信部54は、内部アンテナ55及び被覆除去装置2に設けられたアンテナ6を介して被覆除去装置2の通信部11から送信される各種情報を制御部52に出力する。また、通信部54は、制御部32から出力された各種情報を、被覆除去装置2の通信部11に対して内部アンテナ55及びアンテナ6を介して送信する。
第二実施形態に係る光ファイバ被覆除去システム5では、携帯端末50の操作等を含んで、被覆除去装置2における被覆除去を行う際の被覆加熱条件設定処理が行われる。以下、第2実施形態に係る光ファイバ被覆除去システム5における被覆加熱条件設定処理の手順について、図23を参照して説明する。
図23に示すように、被覆加熱条件設定処理において、携帯端末50の制御部52は、加熱レシピの選択が確定したか否かを判断する(ステップS81)。その結果、加熱レシピの選択が確定していない場合(ステップS81;NO)には、そのまま被覆加熱条件設定処理を終了する。
携帯端末50には、光ファイバの被覆除去を行う際の被覆加熱条件を定めた加熱レシピが複数記憶されている。これらの複数の加熱レシピには、それぞれ加熱レシピ番号が付されている。加熱レシピの選択を行う際には、図24に示すように、携帯端末50のタッチパネル51には、被覆除去装置2のID番号、複数の加熱レシピごとの加熱レシピ番号、加熱レシピ名、及び被覆加熱条件が表示される。
図24に示す例では、タッチパネル51には、被覆除去装置2のIC番号及び3つの加熱レシピが表示されている。加熱レシピでは、加熱レシピ名、被覆加熱温度、及び被覆加熱時間が表示されている。また、被覆除去装置2のID番号、被覆加熱温度、及び被覆加熱時間は、それぞれ被覆除去装置アイコン51A、温度計アイコン51B、及び時計アイコン51Cとともに表示されている。
加熱レシピ番号1の加熱レシピは、レシピ名として「SM4ribbon Type-C ITUT G652」が表示されている。また、温度計アイコン51Bの右側には、被覆加熱温度として100℃の温度がメータアイコン51Dとともに表示され、時計アイコン51Cの右側には、被覆加熱時間として2秒が表示されている。
加熱レシピ番号2の加熱レシピは、レシピ名として「NZ12ribbon Type-P ITUT G655」が表示されている。また、温度計アイコン51Bの右側には、被覆加熱温度として140℃の温度がメータアイコン51Dとともに表示され、時計アイコン51Cの右側には、被覆加熱時間として6秒が表示されている。
加熱レシピ番号3の加熱レシピは、レシピ名として「SM1single Type-A ITUT G652」が表示されている。温度計アイコン51Bの右側には、被覆加熱温度として120℃の温度がメータアイコン51Dとともに表示され、時計アイコン51Cの右側には、被覆加熱時間として2秒が表示されている。
作業者は、タッチパネル51を操作することにより、加熱レシピを選択して確定することができる。図24に示す例では、加熱レシピ番号2を作業者がタップした状態であり、加熱レシピ番号2の加熱レシピが選択されている。この状態から、加熱レシピ番号2をダブルタップすることにより、加熱レシピ番号2の加熱レシピの選択が確定する。このように、作業者によるタッチパネル51の操作によって加熱レシピを選択して確定する。例えば図24に示す加熱レシピ番号2がダブルタップされたときには加熱レシピ番号2の加熱レシピが確定する。それまでのタッチパネル51への一連の入力情報を複数の光ファイバ種類の中からユーザ(作業者)により選択された光ファイバ種類情報としてタッチパネル51が入力して制御部52に出力する。制御部32では、光ファイバ種類情報に基づいて、選択の確定した光ファイバ種類を特定する。例えば図24に示す状態で加熱レシピ番号2がダブルタップされたときには、制御部32は、接続プログラム「NZ12ribbon Type-P ITUT G655」に含まれる光ファイバ種類を特定する。
ステップS81において、加熱レシピの選択が確定した場合(ステップS81;YES)、制御部52は、選択中の加熱レシピに含まれる被覆加熱条件情報を記憶部53から読み出す(ステップS82)。記憶部53に記憶された加熱レシピには、タッチパネル51に表示される項目が含まれている。具体的には、図25に示す加熱レシピ番号、加熱レシピ名、被覆加熱温度、及び被覆加熱時間の各項目が加熱レシピに含まれている。制御部52は、確定した加熱レシピに対応する被覆加熱条件、ここでは、加熱レシピ番号3の加熱レシピに含まれる被覆加熱条件を記憶部53から読み出す。
続いて、制御部52は、読み出した被覆加熱条件に応じた被覆加熱条件情報を被覆除去装置2に対して通信部54及び内部アンテナ55を介して送信する(ステップS83)。被覆除去装置2では、被覆加熱条件設定処理を開始すると、携帯端末50からの被覆加熱条件情報の送信を待つ処理が行われている。被覆加熱条件情報が送信された場合、被覆除去装置2における制御部12は、アンテナ6及び通信部11を介して携帯端末50から送信された被覆加熱条件情報を受信し、設定被覆加熱条件として、記憶部13に記憶させる(ステップS84)。こうして、被覆加熱条件設定処理を終了する。
被覆加熱条件設定処理が終了した後、被覆除去装置2における光ファイバの被覆除去を行うにあたり、蓋部材23閉じたことを図示せぬ検出部により検出したら、制御部12は、ヒータ14を加熱して光ファイバの被覆加熱処理を行う。被覆加熱処理は、第一実施形態と同様の手順で行われる。
また、図26に示すように、携帯端末50には、情報表示設定画面が表示可能とされている。情報表示設定画面には、第1保守情報表示部61、第2保守情報表示部62、省電力設定表示部63、及びブザー情報設定表示部64が表示されている。第1保守情報表示部61には、保守情報として、被覆除去装置2における内蔵バッテリの充電残量及び充電回数が表示されている。第1保守情報表示部61には、バッテリアイコン61Aが表示されており、被覆除去装置2における内蔵バッテリの充電残量は、バッテリアイコン61Aの右側に50%としてメータアイコン61Bとともに表示されている。また、被覆除去装置2における内蔵バッテリの充電回数は、バッテリアイコン61Aの下側に表示されている。
第2保守情報表示部62には、保守情報として、被覆除去刃24の使用回数が表示されている。第2保守情報表示部62には、被覆除去刃アイコン62Aが表示されており、被覆除去刃アイコン62Aの下側に被覆除去刃24の使用回数が表示されており、被覆除去刃24の使用回数は11052回として表示されている。
省電力設定表示部63には、省電力モード設定部71、予加熱温度設定部72、及びシャットダウン時間設定部73が含まれている。省電力モード設定部71には、移動シンボル71Aが表示されており、移動シンボル71Aの右側に省電力動作が行われていない通常状態を意味する「Preheat」の文字が表示され、左側に省電力動作が行われる省電力状態を意味する「ECO」の文字が表示されている。作業者は、タッチパネル51をスワイプして移動シンボル71Aを右側に移動させることにより、省電力モードをOFFにして省電力動作が行われない通常状態に設定することができる。また、タッチパネル51をスワイプして移動シンボル71Aを左側に移動させることにより、省電力動作が行われる省電力状態に設定することができる。
予加熱温度設定部72には、温度計アイコン72A及びメータアイコン72Bが表示されている。メータアイコン72Bは、温度計アイコン72Aの右側に表示され、メータアイコン72Bの右側にはメータアイコン72Bの位置に応じた温度、ここでは80℃の温度が表示されている。作業者は、タッチパネル51をスワイプしてメータアイコン72Bの右端部を移動させることにより、省電力情報である予加熱温度を設定することができる。メータアイコン72Bの右端部が右側に移動させられることにより予加熱温度が上昇し、メータアイコン72Bの右端部が左側に移動させられることにより予加熱温度が下降する。
シャットダウン時間設定部73には、シャットダウンアイコン73Aが表示されており、シャットダウンアイコン73Aの右側にシャットダウン時間、ここでは10分が表示されている。作業者は、シャットダウンアイコン73Aをフリックすることにより、省電力情報であるシャットダウン時間を設定することができる。シャットダウンアイコン73Aが下側にフリックされることにより、シャットダウン時間が短くなり、シャットダウンアイコン73Aが上側にフリックされることにより、シャットダウン時間が長くなる。
ブザー情報設定表示部64には、ブザー音量設定部74及びブザー情報設定部75が含まれている。ブザー音量設定部74には、スピーカアイコン74Aが表示され、スピーカアイコン74Aの右側には音量メータアイコン74Bが表示されている。音量メータアイコン74Bの右側には、音量メータアイコン74Bの位置に応じたブザー音量、ここではブザー音量の「4」が表示されている。タッチパネル51をスワイプして音量メータアイコン74Bを移動させることにより、ブザー音量を設定することができる。音量メータアイコン74Bが右側に移動させられることによりブザー音量は大きくなり、音量メータアイコン74Bが左側に移動させられることによりブザー音量は小さくなる。
ブザー情報設定部75は、ブザー音発生条件候補に応じたエリアとして、加熱完了エリア75A、電源Onエリア75B、電源Offエリア75C、シャットダウンエリア75D、充電開始エリア75E、充電終了エリア75Fに区画されている。作業者は、ブザー情報設定部75の各区画をタップすることにより、ブザー音発生条件を切り替えることができる。図26に示す例では、「加熱完了」「電源On」「充電終了」がブザー音発生条件として設定されており、加熱完了エリア75A、電源Onエリア75B、充電終了エリア75Fの背景色は、電源Offエリア75C、シャットダウンエリア75D、充電開始エリア75Eの背景色と異なっている。ここで、例えば電源Offエリア75Cをタップすることにより、電源Offがブザー音発生条件として設定される。また、充電終了エリア75Fをタップすることにより、充電終了がブザー音発生条件から外される。
このように、本実施形態に係る光ファイバ被覆除去システム5においては、上記第一実施形態と同様の作用効果を奏する。例えば、ヒータ14は、携帯端末50からの被覆加熱条件情報を使用して、光ファイバの被覆加熱を行っている。このため、被覆加熱条件の設定変更作業は、携帯端末50で行うことができる。したがって、被覆加熱条件の設定変更作業にかかる手間を小さくし、設定変更作業忘れを抑制することができる。
また、本実施形態では、携帯端末50を用いて、無線によって被覆除去装置2における被覆加熱条件を設定できる。このため、被覆除去装置2によって被覆除去作業を行う現場以外の位置からも被覆除去装置2の被覆加熱条件を設定することができる。したがって、被覆除去作業を行う現場において、作業者が被覆除去に関する知識が乏しい場合でも、適切な被覆加熱条件の設定を行うことができる。
また、被覆除去装置2は、保守情報や識別情報を携帯端末50に送信し、携帯端末50は、送信された保守情報及び識別情報を表示している。このため、携帯端末50を所有する例えば作業監督者は、被覆除去作業を行う現場から離れた位置でも保守情報を知ることができる。したがって、被覆除去作業を行う現場において、作業者が被覆除去に関する知識が乏しい場合でも、作業者に適切な保守作業を指示することができる。また、識別情報が送信されることにより、被覆除去装置2と携帯端末50との組が複数ある場合に、所定の組の被覆除去装置2及び携帯端末50から送信された情報が、他の組の被覆除去装置2及び携帯端末50に送信されるような不具合、たとえば混線の発生を防止することもできる。
なお、本実施形態では、外部装置が携帯端末50であり、被覆除去装置2との間で無線通信を行っているが、外部装置は、例えばパーソナルコンピュータであり、パーソナルコンピュータと被覆除去装置2とをケーブル等で接続して有線での通信を行うようにしてもよい。
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。例えば、上記各実施形態では、被覆除去装置2は、設定被覆加熱条件となる被覆加熱条件を記憶部13に記憶しているが、記憶部13に記憶することなく、直接ヒータ14の温度制御に利用するようにしてもよい。また、上記各実施形態では、被覆除去装置2は、記憶部13を備えているが、記憶部13に代えて外部記憶装置を被覆除去装置2に接続して記憶部13の代わりに使用できるようにしてもよい。この場合、例えば、第一変形例及び第二変形例のように、被覆加熱条件が被覆除去装置2の記憶部13に記憶されている例に代える場合には、被覆除去の対象となる光ファイバに応じた被覆加熱条件が記憶された記憶媒体を用いるようにしてもよい。
また、上記各実施形態では被覆加熱条件を設定する際に、被覆除去装置2の記憶部13または融着接続装置3の記憶部33に記憶された被覆加熱情報を用いているが、光ファイバ種類情報や被覆情報等から被覆加熱条件を演算等によって算出するようにしてもよい。例えば、光ファイバ種類情報から演算によって算出する場合、放電加熱電流が大きく放電加熱時間が長いほど被覆加熱温度が高く被覆加熱時間が長い被覆加熱条件となる演算式を用いて演算によって被覆加熱条件を求めてもよい。また、被覆情報を用いる場合、心数が多く被覆径が大きいほど被覆加熱温度が高く被覆加熱時間が長い被覆加熱条件となる演算式を用いて演算によって被覆加熱条件を求めてもよい。