JP6352645B2 - レーザ加工装置及びレーザ加工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂接着剤層によって互いに接着された第1部材と第2部材とを分離するためのレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
従来、第1部材、第2部材、及び、第1部材と第2部材とを接着する樹脂接着剤層を有する物品を剥離液に浸漬させることにより、樹脂接着剤層を溶解させて、第1部材と第2部材とを分離する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平10−130309号公報
しかしながら、上述したような技術においては、分離した第1部材及び第2部材を洗浄したり、廃液を処理したりする必要がある。
そこで、本発明は、樹脂接着剤層によって互いに接着された第1部材と第2部材とを効率良く分離することができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
本発明のレーザ加工装置は、ガラス又は半導体からなる第1部材、ガラス又は半導体からなる第2部材、及び、第1部材と第2部材とを接着する樹脂接着剤層を有する物品にレーザ光を照射することにより、第1部材と第2部材とを分離するレーザ加工装置であって、物品を支持する支持部と、物品において照射領域の形状が長尺状となるように物品にレーザ光を照射する光照射部と、物品に対して照射領域が照射領域の長手方向と交差する方向に相対的に移動するように支持部及び光照射部の少なくとも1つを制御する制御部と、を備える。
このレーザ加工装置では、物品において照射領域の形状が長尺状となるように物品にレーザ光が照射され、物品に対して照射領域が照射領域の長手方向と交差する方向に相対的に移動させられる。これにより、例えば、樹脂接着剤層に含まれる樹脂の分解が抑制される条件で照射領域の形状が長尺状を含む大径の円形状とされる場合に比べ、樹脂接着剤層において照射領域に対応する部分に生じる熱勾配が大きくなる。一方、例えば、樹脂接着剤層に含まれる樹脂の分解が抑制される条件で照射領域の形状が長尺状に含まれる小径の円形状とされる場合に比べ、樹脂接着剤層において照射領域に対応する部分に生じる熱勾配の範囲が長尺状の照射領域の長手方向に大きくなる。したがって、樹脂接着剤層においては、照射領域の前側の部分に対し、照射領域に対応する部分が局所的に急激に膨張して、照射領域の通過後に、膨張した部分が急激に収縮することになる。しかも、局所的に急激に膨張して収縮する範囲が長尺状の照射領域の長手方向に大きくなる。そのため、樹脂接着剤層に含まれる樹脂の分解が抑制されつつ、樹脂接着剤層によって互いに接着された第1部材と第2部材とが分離される。よって、このレーザ加工装置によれば、樹脂接着剤層によって互いに接着された第1部材と第2部材とを効率良く分離することができる。
本発明のレーザ加工装置では、光照射部は、樹脂接着剤層において照射領域の形状が長尺状となるように、第1部材又は第2部材を介して樹脂接着剤層にレーザ光を照射してもよい。これによれば、樹脂接着剤層において照射領域に対応する部分を直接的に加熱することができる。
本発明のレーザ加工装置では、光照射部は、第1部材又は第2部材において照射領域の形状が長尺状となるように、第1部材又は第2部材にレーザ光を照射してもよい。これによれば、当該1つの部材からの熱伝導を利用して、樹脂接着剤層において照射領域に対応する部分を間接的に加熱することができる。
本発明のレーザ加工装置では、制御部は、物品に対して照射領域が照射領域の長手方向に垂直な方向に相対的に移動するように支持部及び光照射部の少なくとも1つを制御してもよい。これによれば、樹脂接着剤層によって互いに接着された第1部材と第2部材とをより効率良く分離することができる。
本発明のレーザ加工装置では、制御部は、樹脂接着剤層において照射領域に対応する部分の温度が、樹脂接着剤層に含まれる樹脂のガラス転移点以上且つ樹脂の分解点未満の温度となるように、支持部及び光照射部の少なくとも1つを制御してもよい。これによれば、樹脂接着剤層に含まれる樹脂の分解を確実に抑制することができる。
本発明のレーザ加工装置では、第1部材における樹脂接着剤層の残存量よりも、第2部材における樹脂接着剤層の残存量が少なくなるように(略0にすることを含む)、第1部材と第2部材とを分離する場合には、光照射部は、第2部材側から物品にレーザ光を照射してもよい。第2部材側から物品にレーザ光を照射することで、樹脂接着剤層において照射領域に対応する部分では、第1部材側の部分よりも第2部材側の部分が急激に膨張して収縮するため、分離された第1部材と第2部材とでは、第1部材における樹脂接着剤層の残存量よりも、第2部材における樹脂接着剤層の残存量を少なくすることができる。
本発明のレーザ加工装置は、レーザ光が照射される前に樹脂接着剤層を冷却する冷却部を更に備えてもよい。これによれば、樹脂接着剤層において照射領域に対応する部分に生じる熱勾配をより大きくして、樹脂接着剤層によって互いに接着された第1部材と第2部材とをより確実に分離することができる。特に、常温以下のガラス転移点を有する樹脂が樹脂接着剤層に含まれている場合には、当該ガラス転移点未満の温度に樹脂接着剤層を冷却することが、第1部材と第2部材とをより確実に分離する上で有効である。
本発明のレーザ加工装置では、物品のうち、照射領域の長手方向において隣り合い且つ長手方向と交差する方向に延在する第1部分及び第2部分に順次にレーザ光を照射する場合には、制御部は、物品に対して照射領域が第1部分及び第2部分のそれぞれにおいて同じ向きに相対的に移動するように支持部及び光照射部の少なくとも1つを制御してもよい。物品に対して照射領域が第1部分及び第2部分のそれぞれにおいて異なる向きに相対的に移動させられると、第1部分から第2部分に折り返すようにレーザ光が照射されることになり、第2部分においてレーザ光の照射を開始する端部は予め加熱された状態になり易いため、当該端部に生じる熱勾配が大きくなり難い。それに対し、物品に対して照射領域が第1部分及び第2部分のそれぞれにおいて同じ向きに相対的に移動させられると、第2部分においてレーザ光の照射を開始する端部は冷めた状態になり易いため、当該端部に生じる熱勾配が大きくなり易い。したがって、第1部分及び第2部分のそれぞれにおいて、照射領域に対応する部分に生じる熱勾配をより大きくして、樹脂接着剤層によって互いに接着された第1部材と第2部材とをより確実に分離することができる。
本発明のレーザ加工方法は、ガラス又は半導体からなる第1部材、ガラス又は半導体からなる第2部材、及び、第1部材と第2部材とを接着する樹脂接着剤層を有する物品にレーザ光を照射することにより、第1部材と第2部材とを分離するレーザ加工方法であって、物品において照射領域の形状が長尺状となるように物品にレーザ光を照射し、物品に対して照射領域を照射領域の長手方向と交差する方向に相対的に移動させる。
このレーザ加工方法によれば、上述した本発明のレーザ加工装置と同様の理由により、樹脂接着剤層によって互いに接着された第1部材と第2部材とを効率良く分離することができる。
本発明によれば、樹脂接着剤層によって互いに接着された第1部材と第2部材とを効率良く分離することができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することが可能となる。
本発明の一実施形態のレーザ加工装置の構成図である。 図1のレーザ加工装置のステージに支持された物品の平面図である。 図1のレーザ加工装置のステージに支持された物品の断面図である。 照射領域と樹脂接着剤層の温度との関係を示すグラフである。 実施例2における物品の拡大断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1に示されるように、レーザ加工装置1は、第1部材51、第2部材52、及び、第1部材51と第2部材52とを接着する樹脂接着剤層53を有する物品50にレーザ光Lを照射することにより、第1部材51と第2部材52とを分離する装置である。第1部材51及び第2部材52のそれぞれは、ガラスからなる板状部材であり、レーザ光Lに対して光透過性を有している(例えば、レーザ光Lのエネルギーの20%以上を透過させる)。樹脂接着剤層53は、樹脂接着剤(例えば、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系又はシリコーン系の接着剤)からなる層であり、レーザ光Lに対して光吸収性を有している。
レーザ加工装置1は、ステージ(支持部)2と、レーザヘッド(光照射部)3と、制御部4と、を備えている。ステージ2は、第1部材51に対して第2部材52がレーザヘッド3側に位置した状態で物品50を支持する。レーザヘッド3は、ステージ2に対して移動可能となっており、樹脂接着剤層53において照射領域Rの形状が楕円形状となるように、第2部材52を介して樹脂接着剤層53にレーザ光Lを照射する。制御部4は、樹脂接着剤層53に対して照射領域Rが照射領域Rの長手方向(すなわち、楕円形状の照射領域Rの長軸方向)に垂直な方向(すなわち、楕円形状の照射領域Rの短軸方向)に移動するようにレーザヘッド3を制御する。更に、制御部4は、樹脂接着剤層53において照射領域Rに対応する部分の温度が、樹脂接着剤層53に含まれる樹脂(主成分の樹脂)のガラス転移点以上且つ当該樹脂の分解点未満の温度となるように、レーザヘッド3を制御する。
図2に示されるように、照射領域Rの長手方向に配列され且つ当該長手方向に垂直な方向に延在することとなるように樹脂接着剤層53を複数の部分53aに区画した場合に、制御部4は、照射領域Rの長手方向において端に配置された部分53aの端部(当該長手方向に垂直な方向における端部)からレーザ光Lの照射が開始されるようにレーザヘッド3を制御する。そして、制御部4は、照射領域Rの長手方向において隣り合う一方の部分(第1部分)53a及び他方の部分(第2部分)53aに順次にレーザ光Lが照射されるようにレーザヘッド3を制御する。このとき、制御部4は、樹脂接着剤層53に対して照射領域Rが一方の部分53a及び他方の部分53aのそれぞれにおいて同じ向きに移動するようにレーザヘッド3を制御する。
以上のように構成されたレーザ加工装置1では、樹脂接着剤層53によって互いに接着された第1部材51と第2部材52とを分離するためのレーザ加工方法であって、物品50において照射領域Rの形状が楕円形状となるように物品50にレーザ光Lを照射し、物品50に対して照射領域Rを照射領域Rの長手方向に垂直な方向に移動させるレーザ加工方法が実施される。これにより、図3に示されるように、樹脂接着剤層53においては、樹脂接着剤層53に対して移動させられる照射領域Rの前側の部分(すなわち、レーザ光Lの未照射部分/以下、単に「照射領域Rの前側の部分」という)に対し、照射領域Rに対応する部分が膨張して、照射領域Rの通過後に、膨張した部分が収縮することになる。その結果、第1部材51と第2部材52とを分離する力が樹脂接着剤層53の全体に渡って連続的に生じることになり、樹脂接着剤層53によって互いに接着された第1部材51と第2部材52とが分離される。
ここで、想定される分離の原理について説明する。まず、図4に示されるように、楕円形状(例えば、長径7mm、短径2mm)の照射領域Rを短軸方向(照射領域Rの長手方向に垂直な方向)に移動させると、当該楕円形状を含む(すなわち、当該楕円形状の長径以上の直径を有する)円形状(例えば、直径7mm)の照射領域Rを移動させる場合に比べ、樹脂接着剤層53において照射領域Rに対応する部分に生じる熱勾配が大きくなる。したがって、照射領域Rのうちの前側の部分での樹脂接着剤層53の膨張量は、楕円形状の照射領域Rを短軸方向に移動させる場合のほうが、当該楕円形状を含む円形状の照射領域Rを移動させる場合に比べ、大きくなる。このように、楕円形状の照射領域Rを短軸方向に移動させると、当該楕円形状を含む円形状の照射領域Rを移動させる場合に比べ、樹脂接着剤層53においては、照射領域Rの前側の部分に対し、照射領域Rに対応する部分が局所的に急激に膨張して、照射領域Rの通過後に、膨張した部分が急激に収縮することになる。そのため、樹脂接着剤層53に含まれる樹脂の分解が抑制されつつ、樹脂接着剤層53によって互いに接着された第1部材51と第2部材52とが分離される。
上述した楕円形状を含む円形状の照射領域Rを移動させると、樹脂接着剤層53において照射領域Rに対応する部分での入熱量が大きくなる。そのため、冷却に時間がかかって、分離に必要な温度差が付き難くなり、樹脂接着剤層53によって互いに接着された第1部材51と第2部材52とが分離され難くなる。特に熱伝導率の高い材料が用いられている場合には、熱拡散が大きくなる。そのため、更に熱勾配が小さくなって、温度差が付き難くなり、樹脂接着剤層53によって互いに接着された第1部材51と第2部材52とが分離され難くなる。また、冷却に時間がかかると、樹脂接着剤層53の温度が、樹脂接着剤層53に含まれる樹脂のガラス転移点以上の温度に維持される時間が長くなり、一度分離された第1部材51と第2部材52とが樹脂接着剤層53によって再接着され易くなる。なお、上述した楕円形状を含む円形状の照射領域Rを移動させるに際し、樹脂接着剤層53において照射領域Rに対応する部分に生じる熱勾配が、楕円形状の照射領域Rを短軸方向に移動させる場合と同等となるように、レーザパワー等を調整すると、当該部分での入熱量が非常に大きくなり、当該部分での最高温度が非常に高くなるため、樹脂接着剤層53に含まれる樹脂が分解されてしまう。
一方、楕円形状(例えば、長径7mm、短径2mm)の照射領域Rを短軸方向(照射領域Rの長手方向に垂直な方向)に移動させると、当該楕円形状に含まれる(すなわち、当該楕円形状の短径以下の直径を有する)円形状(例えば、直径2mm)の照射領域Rを移動させる場合に比べ、樹脂接着剤層53において照射領域Rに対応する部分に生じる熱勾配の範囲が楕円形状の照射領域Rの長軸方向(照射領域Rの長手方向)に大きくなる。したがって、樹脂接着剤層53において局所的に急激に膨張して収縮する範囲は、楕円形状の照射領域Rを短軸方向に移動させる場合のほうが、当該楕円形状に含まれる円形状の照射領域Rを移動させる場合に比べ、楕円形状の照射領域Rの長軸方向に大きくなる。このように、楕円形状の照射領域Rを短軸方向に移動させると、照射領域Rの前側の部分に対し、照射領域Rに対応する部分が局所的に急激に膨張して、照射領域Rの通過後に、膨張した部分が急激に収縮することになる。しかも、当該楕円形状に含まれる円形状の照射領域Rを移動させる場合に比べ、局所的に急激に膨張して収縮する範囲が楕円形状の照射領域Rの長手方向に大きくなる。そのため、樹脂接着剤層53に含まれる樹脂の分解が抑制されつつ、樹脂接着剤層53によって互いに接着された第1部材51と第2部材52とが分離される。
以上により、レーザ加工装置1、及び、レーザ加工装置1で実施されるレーザ加工方法によれば、樹脂接着剤層53によって互いに接着された第1部材51と第2部材52とを効率良く分離することができる。
また、レーザ加工装置1では、樹脂接着剤層53において照射領域Rに対応する部分の温度が、樹脂接着剤層53に含まれる樹脂(主成分の樹脂)のガラス転移点以上且つ樹脂の分解点未満の温度となるように、制御部4がレーザヘッド3を制御する。これにより、樹脂接着剤層53に含まれる樹脂の分解を確実に抑制することができ、分解ガスの発生、及び低分子量化した液体による再接着を抑制することが可能となる。また、分解を抑制することで第1部材51又は第2部材52における樹脂接着剤層53の残存量を略0又は少量とすることができ、第1部材51又は第2部材52に残存した樹脂接着剤層53を除去する工程を不要としたり、或いは当該工程に要する時間を短縮化したりすることが可能となる。樹脂接着剤層53に複数種類の樹脂が含まれる場合、そのうちの最低の分解点未満の温度となるようにすれば、樹脂接着剤層53に含まれる樹脂の分解をより確実に抑制することができる。なお、樹脂接着剤層53において照射領域Rに対応する部分の温度を、樹脂接着剤層53に含まれる樹脂の分解点にできるだけ近付けることが、樹脂接着剤層53において照射領域Rに対応する部分の膨張・収縮差が大きくなることから、より好ましい。
ところで、樹脂等の高分子材料においては、ガラス転移点及び分解点は、昇温速度に依存することが知られている。例えば、エポキシ樹脂においては、昇温速度が1500℃/minである場合のガラス転移点は、昇温速度が1℃/minである場合のガラス転移点よりも約50℃上昇する。よって、本実施形態におけるガラス転移点及び分解点は、レーザ加工時における値である。
また、レーザ加工装置1では、第2部材52を介して樹脂接着剤層53にレーザ光Lを照射するため(すなわち、第2部材52側から物品50にレーザ光Lを照射するため)、第1部材51における樹脂接着剤層53の残存量よりも、第2部材52における樹脂接着剤層53の残存量が少なくなるように(略0にすることを含む)、第1部材51と第2部材52とを分離することができる。第2部材52を介して樹脂接着剤層53にレーザ光Lを照射することで、樹脂接着剤層53において照射領域Rに対応する部分では、第1部材51側の部分よりも第2部材52側の部分が急激に膨張して収縮する。そのため、分離された第1部材51と第2部材52とでは、第1部材51における樹脂接着剤層53の残存量よりも、第2部材52における樹脂接着剤層53の残存量が少なくなる。
また、レーザ加工装置1では、樹脂接着剤層53のうち、楕円形状の照射領域Rの長手方向において隣り合い且つ当該長手方向に垂直な方向に延在する一方の部分53a及び他方の部分53aに順次にレーザ光Lを照射する場合には、樹脂接着剤層53に対して照射領域Rが一方の部分53a及び他方の部分53aのそれぞれにおいて同じ向きに移動するように、制御部4がレーザヘッド3を制御する。樹脂接着剤層53に対して照射領域Rが一方の部分53a及び他方の部分53aのそれぞれにおいて異なる向きに相対的に移動させられると、一方の部分53aから他方の部分53aに折り返すようにレーザ光Lが照射されることになり、他方の部分53aにおいてレーザ光Lの照射を開始する端部は予め加熱された状態になり易いため、当該端部に生じる熱勾配が大きくなり難い。それに対し、樹脂接着剤層53に対して照射領域Rが一方の部分53a及び他方の部分53aのそれぞれにおいて同じ向きに相対的に移動させられると、他方の部分53aにおいてレーザ光Lの照射を開始する端部は冷めた状態になり易いため、当該端部に生じる熱勾配が大きくなり易い。したがって、一方の部分53a及び他方の部分53aのそれぞれにおいて、照射領域Rに対応する部分に生じる熱勾配をより大きくして、樹脂接着剤層53によって互いに接着された第1部材51と第2部材52とをより確実に分離することができる。
次に、実験結果について説明する。
[実施例1]
上述したレーザ加工方法を以下の条件で実施した場合、樹脂接着剤層によって互いに接着された第1部材と第2部材とを分離することができた。レーザ光を透過させる第2部材の接着面が鏡面である場合に、硬い樹脂接着剤層が用いられていると、樹脂接着剤層では、照射領域に対応する部分が膨張した際に、照射領域の前側の部分に空隙が生じる。そして、照射領域が通り過ぎた後に、第2部材の接着面の再接着が起こらない。したがって、レーザ光を透過させる第2部材の接着面の面粗さが低い場合ほど、樹脂接着剤層の弾性率を高くすることが好ましい。
第1部材:ソーダライムガラスからなる「縦80mm、横80mm、厚さ0.7mm」の板状部材、表面:鏡面
第2部材:ソーダライムガラスからなる「縦80mm、横80mm、厚さ0.7mm」の板状部材、表面:鏡面
樹脂接着剤層:アクリル系接着剤からなる「縦80mm、横80mm(全面接着)、厚さ0.1mm」の層
照射領域の形状:長径7mm、短径2mmの楕円形状
レーザパワー:70W
走査速度(樹脂接着剤層に対する照射領域の移動速度):50mm/sec
分離に要した時間:約30秒
[実施例2]
上述したレーザ加工方法を以下の条件で実施した場合、樹脂接着剤層によって互いに接着された第1部材と第2部材とを分離することができた。図5に示されるように、レーザ光Lを透過させる第2部材52の接着面が粗面である場合に、軟らかい樹脂接着剤層53が用いられていると、樹脂接着剤層53では、照射領域Rに対応する部分が急激に膨張して収縮した際に、樹脂接着剤層53が第2部材52の接着面の凹凸から抜け、当該凹凸から一旦抜けた樹脂接着剤層53は、当該凹凸に食い込まない。そして、照射領域Rが通り過ぎた後に、樹脂接着剤層53が第2部材52の接着面の凸部に接触したとしても、軟らかい樹脂接着剤層53が用いられているため、第2部材52を容易に分離することができる。したがって、レーザ光を透過させる第2部材の接着面の面粗さが高い場合ほど、樹脂接着剤層の弾性率を低くすることが好ましい。
第1部材:ソーダライムガラスからなる「縦80mm、横80mm、厚さ0.7mm」の板状部材、表面:粗面(すりガラス)
第2部材:ソーダライムガラスからなる「縦80mm、横80mm、厚さ0.7mm」の板状部材、表面:粗面(すりガラス)
樹脂接着剤層:アクリル系接着剤からなる「縦80mm、横80mm(全面接着)、厚さ0.1mm」の層
照射領域の形状:長径7mm、短径2mmの楕円形状
レーザパワー:50W
走査速度:50mm/sec
分離に要した時間:約30秒
[比較例1]
上述したレーザ加工方法を以下の条件で実施した場合、樹脂接着剤層によって互いに接着された第1部材と第2部材とを分離することができなかった。その理由は、次のように想定される。すなわち、樹脂接着剤層に含まれる樹脂の分解を抑制することを前提とするレーザ光の照射条件で、実施例1及び実施例2の楕円形状の照射領域の長径に相当する直径を有する円形状の照射領域を移動させると、樹脂接着剤層において照射領域に対応する部分に生じる熱勾配が小さくなり、照射領域のうちの前側の部分での樹脂接着剤層の膨張量が小さくなるためと想定される。
第1部材:ソーダライムガラスからなる「縦80mm、横80mm、厚さ0.7mm」の板状部材、表面:鏡面
第2部材:ソーダライムガラスからなる「縦80mm、横80mm、厚さ0.7mm」の板状部材、表面:鏡面
樹脂接着剤層:アクリル系接着剤からなる「縦80mm、横80mm(全面接着)、厚さ0.1mm」の層
照射領域の形状:直径6.4mmの円形状
レーザパワー:70W
走査速度:30mm/sec
[比較例2]
上述したレーザ加工方法を以下の条件で実施した場合、樹脂接着剤層によって互いに接着された第1部材と第2部材とを分離することができなかった。その理由は、次のように想定される。すなわち、樹脂接着剤層に含まれる樹脂の分解を抑制することを前提とするレーザ光の照射条件で、実施例1及び実施例2の楕円形状の照射領域の短径に相当する直径を有する円形状の照射領域を移動させると、樹脂接着剤層において照射領域に対応する部分に生じる熱勾配の範囲が小さくなり、樹脂接着剤層において局所的に急激に膨張して収縮する範囲が小さくなるためと想定される。
第1部材:ソーダライムガラスからなる「縦80mm、横80mm、厚さ0.7mm」の板状部材、表面:鏡面
第2部材:ソーダライムガラスからなる「縦80mm、横80mm、厚さ0.7mm」の板状部材、表面:鏡面
樹脂接着剤層:アクリル系接着剤からなる「縦80mm、横80mm(全面接着)、厚さ0.1mm」の層
照射領域の形状:直径1.6mmの円形状
レーザパワー:7W
走査速度:30mm/sec
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1部材51は、ガラスからなる板状の部材であったが、これに限定されず、ガラス又は半導体からなる部材であればよい。同様に、第2部材52は、ガラスからなる板状の部材であったが、これに限定されず、ガラス又は半導体からなる部材であればよい。
また、レーザヘッド3は、樹脂接着剤層53において照射領域Rの形状が楕円形状となるように樹脂接着剤層53にレーザ光Lを照射するものであったが、これに限定されず、樹脂接着剤層53において照射領域Rの形状が長尺状となるように樹脂接着剤層53にレーザ光Lを照射するものであればよい。長尺状とは、所定方向における第1幅よりも、当該所定方向に垂直な方向における第2幅が大きくなっている偏平形状であり、楕円形状の他に、長円形状、長方形状等がある。
また、制御部4は、樹脂接着剤層53に対して照射領域Rが照射領域Rの長手方向に垂直な方向に移動するようにレーザヘッド3を制御するものであったが、これに限定されず、樹脂接着剤層53に対して照射領域Rが照射領域Rの長手方向と交差する方向に相対的に移動するようにステージ2及びレーザヘッド3の少なくとも1つを制御するものであればよい。すなわち、制御部4は、ステージ2を固定してレーザヘッド3を移動させるだけでなく、レーザヘッド3を固定してステージ2を移動させてもよいし、レーザヘッド3及びステージ2を移動させてもよい。また、ガルバノミラーを用いて、樹脂接着剤層53に対して照射領域Rが照射領域Rの長手方向と交差する方向に相対的に移動するようにしてもよい。
また、第1部材51及び第2部材52の少なくとも1つの部材がレーザ光Lに対して光透過性を有し且つ樹脂接着剤層53がレーザ光Lに対して光吸収性を有する場合には、樹脂接着剤層53において照射領域Rの形状が長尺状となるように当該1つの部材(すなわち、レーザ光Lに対して光透過性を有する第1部材51又は第2部材52)を介して樹脂接着剤層53にレーザ光Lを照射すればよい。つまり、レーザヘッド3は、樹脂接着剤層53において照射領域Rの形状が長尺状となるように、第1部材51又は第2部材52を介して樹脂接着剤層53にレーザ光Lを照射してもよい。これによれば、樹脂接着剤層53において照射領域Rに対応する部分を直接的に加熱することができる。
また、第1部材51及び第2部材52の少なくとも1つの部材がレーザ光Lに対して光吸収性を有する場合には、当該1つの部材(すなわち、レーザ光Lに対して光吸収性を有する第1部材51又は第2部材52)において照射領域Rの形状が長尺状となるように当該1つの部材にレーザ光Lを照射すればよい。つまり、レーザヘッド3は、第1部材51又は第2部材52において照射領域Rの形状が長尺状となるように、第1部材51又は第2部材52にレーザ光Lを照射してもよい。これによれば、当該1つの部材からの熱伝導を利用して、樹脂接着剤層53において照射領域Rに対応する部分を間接的に加熱することができる。なお、この場合には、光透過性を有するレーザ光入射側の部材、及び光透過性を有する樹脂接着剤層53を介して、光吸収性を有する他方の部材にレーザ光を吸収させる場合と、光吸収性を有するレーザ光入射側の部材にレーザ光を吸収させる場合と、がある。
また、レーザ加工装置1は、レーザ光Lが照射される前に樹脂接着剤層53を冷却する冷却部を更に備えてもよい。これにより、樹脂接着剤層53において照射領域Rに対応する部分に生じる熱勾配をより大きくして、樹脂接着剤層53によって互いに接着された第1部材51と第2部材52とをより確実に分離することができる。特に、常温以下のガラス転移点を有する樹脂が樹脂接着剤層53に含まれている場合には、当該ガラス転移点未満の温度に樹脂接着剤層53を冷却することが、第1部材51と第2部材52とをより確実に分離する上で有効である。
また、樹脂接着剤層53においてレーザ光Lが照射された部分を急激に収縮させて分離の確実化を図るために、レーザヘッド3に追従する冷却ノズルをレーザ加工装置1に設け、当該冷却ノズルから、樹脂接着剤層53においてレーザ光Lが照射された部分に、冷却風又は冷却水等の冷媒を送るようにしてもよい。また、ステージ2、その他、物品50に接触する治具を冷却しておき、それらをヒートシンクとして機能させてもよい。また、物品50を水中で支持する等、物品50の周囲環境を冷却するようにしてもよい。
また、第1部材51と第2部材52との分離の容易化を図るために、第1部材51と第2部材52とを分離する方向に力を作用させる部材保持部をレーザ加工装置1に設け、当該力を作用させた状態で、樹脂接着剤層53に対するレーザ光Lの照射を実施してもよい。
また、樹脂接着剤層53に含まれる樹脂の分解を抑制するために、樹脂接着剤層53において照射領域Rに対応する部分の温度を計測する温度計測部をレーザ加工装置1に設け、少なくとも条件出しの段階で当該温度を計測するようにしてもよい。第1部材51と第2部材52とを分離した温度ごとに、GPC等の方法を用いて樹脂接着剤層53について分子量を測定すれば、何度で分解しているかを確認することができる。実際の加工時においても、安定的な分離がなされているかを確認することができる。
また、樹脂接着剤層53と第2部材52との剥離がなされているかを確認するために、レーザ光Lの照射後に樹脂接着剤層53と第2部材52との間に生じる隙間を計測する隙間計測部をレーザ加工装置1に設けてもよい。当該隙間計測部としては、光学的な膜厚測定装置を用いることができる。
また、樹脂接着剤層53と第2部材52との剥離がなされているかを確認するために、レーザ光Lの照射後に第2部材52に照射した光の反射光を検出する反射光検出部をレーザ加工装置1に設けてもよい。第2部材52の接着面が鏡面である場合、樹脂接着剤層53と第2部材52との剥離がなされると、当該鏡面での反射が起こる。そのため、第2部材52に照射した光の反射光を検出することで、当該反射光の強度に基づいて、樹脂接着剤層53と第2部材52との剥離がなされているかを確認することができる。
1…レーザ加工装置、2…ステージ(支持部)、3…レーザヘッド(光照射部)、4…制御部、50…物品、51…第1部材、52…第2部材、53…樹脂接着剤層、53a…部分(第1部分、第2部分)、L…レーザ光。

Claims (10)

  1. ガラス又は半導体からなる第1部材、ガラス又は半導体からなる第2部材、及び、前記第1部材と前記第2部材とを接着する樹脂接着剤層を有する物品にレーザ光を照射することにより、前記第1部材と前記第2部材とを分離するレーザ加工装置であって、
    前記物品を支持する支持部と、
    前記物品において照射領域の形状が長尺状となるように前記第1部材又は前記第2部材側から前記物品に前記レーザ光を照射する光照射部と、
    前記物品に対して前記照射領域が前記照射領域の長手方向と交差する方向に相対的に移動するように前記支持部及び前記光照射部の少なくとも1つを制御する制御部と、を備える、レーザ加工装置。
  2. 前記光照射部は、前記樹脂接着剤層において前記照射領域の形状が長尺状となるように、前記第1部材又は前記第2部材を介して前記樹脂接着剤層に前記レーザ光を照射する、請求項1記載のレーザ加工装置。
  3. 前記光照射部は、前記第1部材又は前記第2部材において前記照射領域の形状が長尺状となるように、前記第1部材又は前記第2部材に前記レーザ光を照射する、請求項1記載のレーザ加工装置。
  4. 前記制御部は、前記物品に対して前記照射領域が前記照射領域の前記長手方向に垂直な方向に相対的に移動するように前記支持部及び前記光照射部の少なくとも1つを制御する、請求項1〜3のいずれか一項記載のレーザ加工装置。
  5. 前記制御部は、前記樹脂接着剤層において前記照射領域に対応する部分の温度が、前記樹脂接着剤層に含まれる樹脂のガラス転移点以上且つ前記樹脂の分解点未満の温度となるように、前記支持部及び前記光照射部の少なくとも1つを制御する、請求項1〜4のいずれか一項記載のレーザ加工装置。
  6. 前記第1部材における前記樹脂接着剤層の残存量よりも、前記第2部材における前記樹脂接着剤層の残存量が少なくなるように、前記第1部材と前記第2部材とを分離する場合には、前記光照射部は、前記第2部材側から前記物品に前記レーザ光を照射する、請求項1〜5のいずれか一項記載のレーザ加工装置。
  7. 前記レーザ光が照射される前に前記樹脂接着剤層を冷却する冷却部を更に備える、請求項1〜6のいずれか一項記載のレーザ加工装置。
  8. 前記制御部は、前記物品において前記照射領域の前記長手方向に配列され且つ当該長手方向と交差する方向に延在する複数の部分のそれぞれに順次に前記レーザ光が照射されるように前記支持部及び前記光照射部の少なくとも1つを制御する、請求項1〜7のいずれか一項記載のレーザ加工装置。
  9. 前記物品のうち、前記照射領域の前記長手方向において隣り合い且つ前記長手方向と交差する前記方向に延在する第1部分及び第2部分に順次に前記レーザ光を照射する場合には、前記制御部は、前記物品に対して前記照射領域が前記第1部分及び前記第2部分のそれぞれにおいて同じ向きに相対的に移動するように前記支持部及び前記光照射部の少なくとも1つを制御する、請求項1〜のいずれか一項記載のレーザ加工装置。
  10. ガラス又は半導体からなる第1部材、ガラス又は半導体からなる第2部材、及び、前記第1部材と前記第2部材とを接着する樹脂接着剤層を有する物品にレーザ光を照射することにより、前記第1部材と前記第2部材とを分離するレーザ加工方法であって、
    前記物品において照射領域の形状が長尺状となるように前記第1部材又は前記第2部材側から前記物品に前記レーザ光を照射し、前記物品に対して前記照射領域を前記照射領域の長手方向と交差する方向に相対的に移動させる、レーザ加工方法。
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