以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る原子力プラントAPの一例を示す概略構成図である。原子力プラントAPは、原子炉1を備えている。原子炉1は、原子炉格納容器2と、原子炉格納容器2に格納される原子炉圧力容器3とを有する。原子炉圧力容器3は、炉心4を収容する。
原子力プラントAPは、原子力を使って発電する原子力発電プラントであり、原子炉1を含む原子炉系CS1と、蒸気タービン5及び発電機6を含むタービン系CS2とを有する。
本実施形態において、原子炉1は、炉心冷却材及び中性子減速材として軽水を使用する軽水炉である。原子炉系CS1は、1次冷却水が循環する1次冷却系を含む。タービン系CS2は、2次冷却水が循環する2次冷却系を含む。原子炉系(1次冷却系)CS1と、タービン系(2次冷却系)CS2とは、蒸気発生器7で分離される。1次冷却水及び2次冷却水のそれぞれは、軽水である。
本実施形態において、原子炉系CS1は、高温高圧な1次冷却水(熱水)を生成し、その熱水を蒸気発生器7に供給して、蒸気発生器7において1次冷却水(熱水)と2次冷却水との熱交換を行うことにより2次冷却水の蒸気を生成する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)を含む。本実施形態において、原子力プラントAPは、加圧水型原子力発電プラントである。
原子炉系CS1は、1次冷却水を加圧してその1次冷却水の沸点を上昇させた状態で、原子核反応により生じた熱エネルギーで1次冷却水を加熱する。原子炉系CS1は、加圧された加圧水を加熱して高温高圧な熱水を生成し、その熱水を蒸気発生器7に供給する。原子炉系CS1において、1次冷却水は沸騰しないように加熱される。タービン系CS2は、1次冷却水(熱水)との熱交換により2次冷却水を高温高圧な蒸気に変換する。その蒸気により、蒸気タービン5が作動する。蒸気タービン5の作動により、発電機6が作動して発電する。
原子炉系CS1は、原子核反応により生じた熱エネルギーで1次冷却水を加熱する炉心4を収容する原子炉圧力容器3と、原子炉圧力容器3及び蒸気発生器7のそれぞれと接続され、原子炉圧力容器3で加熱された高温の1次冷却水が流れる配管8と、配管8に接続され、1次冷却水を加圧する加圧器9と、原子炉圧力容器3及び蒸気発生器7のそれぞれと接続され、蒸気発生器7で熱交換された低温の1次冷却水が流れる配管10と、配管10に配置され、1次冷却水を原子炉圧力容器3に供給する1次冷却水ポンプ11とを備えている。原子炉圧力容器3、配管8、加圧器9、蒸気発生器7、配管10、及び1次冷却水ポンプ11のそれぞれは、原子炉格納容器2に格納される。1次冷却水は、原子炉圧力容器3、配管8、蒸気発生器7、及び配管10を含む1次冷却系(循環系)を循環する。
タービン系CS2は、蒸気発生器7及び蒸気タービン5のそれぞれと接続され、蒸気発生器7で生成された高温高圧な蒸気が流れる配管12と、蒸気発生器7からの蒸気により作動する蒸気タービン5と、蒸気タービン5により作動する発電機6と、蒸気タービン5で仕事をした蒸気を冷却して水に戻す復水器13と、復水器13及び蒸気発生器7のそれぞれと接続され、復水器13からの2次冷却水が流れる配管14と、2次冷却水を蒸気発生器7に送る2次冷却水ポンプ15とを備えている。2次冷却水は、蒸気発生器7、配管12、蒸気タービン5、復水器13、及び配管14を含む2次冷却系(循環系)を循環する。
原子炉圧力容器3は、炉心4及び炉心4を支持する支持構造物を収容する。炉心4は、燃料集合体を含む。燃料集合体は、複数の燃料棒を有する。燃料棒は、被覆管と、その被覆管の内部に積層された複数の燃料ペレットとを含む。燃料ペレットは、低濃縮ウランを含む。燃料集合体(原子燃料)の原子核反応により生じた熱エネルギーにより1次冷却水が加熱される。原子炉圧力容器3において、1次冷却水は、例えば320℃程度に加熱される。
加圧器9は、原子炉系CS1を循環する1次冷却水を加圧する。加圧器9は、1次冷却水の圧力を調整するための電気ヒータ、スプレー弁、及び逃し弁を有し、1次冷却水の圧力が一定の値に維持されるように、1次冷却水の圧力を調整する。本実施形態において、加圧器9は、配管8と接続される。加圧器9は、配管8を介して、原子炉系CS1の1次冷却水の圧力を調整する。
加圧器9により1次冷却水が加圧されることにより、その1次冷却水の沸点が上昇する。加圧器9は、1次冷却水の圧力が150気圧以上160気圧以下となるように、1次冷却水の圧力を調整する。本実施形態において、1次冷却水は、加圧器9により157気圧程度に加圧される。1次冷却水が加圧されることにより、320℃程度に加熱されても、1次冷却水の沸騰が抑制される。
配管8は、原子炉圧力容器3と蒸気発生器7とを接続するように配置される。原子炉圧力容器3で加熱され、加圧器9によって加圧された高温高圧な1次冷却水(熱水)は、配管8を介して、蒸気発生器7に供給される。
蒸気発生器7は、1次冷却水(熱水)と2次冷却水との熱交換を行う。蒸気発生器7は、熱交換器として機能する。1次冷却水と2次冷却水との熱交換により、蒸気発生器7において2次冷却水の蒸気が生成される。
配管10は、蒸気発生器7と原子炉圧力容器3とを接続するように配置される。蒸気発生器7で熱交換されて低温になった1次冷却水は、配管10を介して、原子炉圧力容器3に戻される。
1次冷却水ポンプ11は、1次冷却水が原子炉系CS1を循環するように作動する。本実施形態において、1次冷却ポンプ11は、配管10に配置される。1次冷却ポンプ11は、蒸気発生器7からの1次冷却水が原子炉圧力容器3に供給されるように作動する。
配管12は、蒸気発生器7と蒸気タービン5とを接続するように配置される。蒸気発生器7において、2次冷却水は、例えば60気圧及び270℃程度の飽和蒸気に変換される。蒸気発生器7で生成された2次冷却水の蒸気は、配管12を介して、蒸気タービン5に供給される。
配管12は、原子炉格納容器2を貫通するように配置される。本実施形態において、配管12に隔離弁16が配置される。例えば、異常事象が発生して、放射性物質を含んだ1次冷却水が配管12を介して原子炉格納容器2の外側に流出する可能性がある。隔離弁16は、異常事象の発生時に配管12の流路を閉じて、1次冷却水の流出を防止する。
蒸気タービン5は、蒸気発生器7からの蒸気により駆動する。本実施形態において、蒸気タービン5は、高圧タービン5A及び低圧タービン5Bを含む。
タービン系CS2は、湿分分離加熱器17を備えている。湿分分離加熱器17は、蒸気に含まれる湿分を除去し、その湿分が除去された蒸気を加熱する。湿分分離加熱器17は、再熱管18Aを介して高圧タービン5Aと接続され、再熱管18Bを介して低圧タービン5Bと接続される。また、湿分分離加熱器17は、分岐配管19を介して、配管12と接続される。
本実施形態において、蒸気発生器7からの蒸気の少なくとも一部は、配管12を介して、高圧タービン5Aに供給される。高圧タービン5Aは、蒸気発生器7から配管12を介して供給された蒸気により駆動する。高圧タービン5Aで仕事をした蒸気は、再熱管18Aを介して、湿分分離加熱器17に供給される。また、蒸気発生器7からの蒸気の少なくとも一部も、分岐配管19を介して、湿分分離加熱器17に供給される。湿分分離加熱器17は、蒸気に含まれる湿分を除去し、湿分が除去された蒸気を加熱する。湿分分離加熱器17で加熱された蒸気は、再熱管18Bを介して、低圧タービン5Bに供給される。低圧タービン5Bは、湿分分離加熱器17から再熱管18Bを介して供給された蒸気により作動する。
発電機6は、蒸気タービン5と接続される。発電機6は、蒸気タービン5により駆動されて発電する。
復水器13は、蒸気タービン5で仕事をした蒸気を冷却して水に戻す。本実施形態において、復水器13は、低圧タービン5Bと接続される。復水器13は、蒸気を冷却するための冷却水として海水を使用する。復水器13は、蒸気と海水との熱交換を行って、蒸気を水に戻す。復水器13に、海水を取り入れるための取水管20、及び海水を排出するための排水管21のそれぞれが接続される。取入管20に循環水ポンプ20Pが設けられている。循環水ポンプ20Pの作動により、海水が取水管20を介して復水器13に供給される。復水器13は、取水管20から供給された海水と蒸気との熱交換を行って、蒸気を水に戻す。蒸気と熱交換した後の海水は、排水管21を介して、海に排出される。
本実施形態において、配管12と復水器13とがバイパス配管22を介して接続される。バイパス配管22は、配管12と復水器13とを接続するように配置される。バイパス配管22にバイパス弁22Bが配置されている。バイパス弁22Bによりバイパス配管22の流路が開けられると、配管12の蒸気の少なくとも一部が、蒸気タービン5を迂回して、復水器13に供給される。一方、バイパス弁22Bによりバイパス配管22の流路が閉じられると、配管12の蒸気は、蒸気タービン5を迂回せずに、蒸気タービン5に供給される。
配管14は、復水器13と蒸気発生器7とを接続するように配置される。復水器13で水(液体)に戻された2次冷却水は、配管14を介して、蒸気発生器7に供給される。
2次冷却水ポンプ15は、2次冷却水がタービン系CS2を循環するように作動する。本実施形態において、2次冷却ポンプ15は、配管14に配置される。2次冷却ポンプ15は、復水器13からの2次冷却水が蒸気発生器7に供給されるように作動する。
本実施形態において、配管14には、復水ポンプ23、グランドコンデンサ24、復水脱塩装置25、復水ブースタポンプ26、及び低圧給水加熱器27が配置される。また、配管14には、脱気器28が連結される。また、配管14には、高圧給水加熱器29、及び給水制御弁30が設けられている。
図2は、本実施形態に係る原子炉系CS1を示す模式図である。原子炉格納容器2は、堅固な地盤上に設けられる。図2に示すように、本実施形態において、原子炉系CS1は、原子炉格納容器2内にミストを供給可能なスプレー装置31を備えている。スプレー装置31は、原子炉格納容器2内に配置され、ミストを噴射する噴射口を有するスプレーヘッド32と、スプレーヘッド32に接続された配管33と、配管33に接続され、スプレーヘッド32に水を送るポンプ(スプレーポンプ)34と、スプレーヘッド32に供給される水の温度を調整する冷却器35と、スプレーヘッド32に供給される水を収容する収容部36と、収容部36とポンプ34とを接続する配管37とを備えている。
スプレーヘッド32は、原子炉圧力容器3、加圧器9、蒸気発生器7、及び1次冷却水ポンプ11よりも上方に配置される。異常事象が発生して、原子炉格納容器2内の温度が上昇したり、圧力が上昇したりした場合、スプレー装置31は、スプレーヘッド32から原子炉格納容器2の内部にミストを供給する。これにより、原子炉格納容器2内の温度上昇及び圧力上昇が抑制される。
ポンプ34は、配管37と接続される吸込口34Aと、配管33と接続される吐出口34Bとを有する。配管37は、吸込口34Aと接続される接続部38を有する。配管33は、吐出口34Bと接続される接続部39を有する。
次に、本実施形態に係る搬送装置40について説明する。図3は、本実施形態に係る搬送装置40の一例を示す側面図である。図4は、本実施形態に係る搬送装置40の一例を示す正面図である。図5は、本実施形態に係る搬送装置40の一例を示す上面図である。
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の一方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
搬送装置40は、原子力プラントAPで使用される設備機器41を搬送する。設備機器41は、例えば、ポンプ、コンプレッサ、及び発電機の少なくとも一つを含む。
原子力プラントAPの既設の設備機器に異常が生じた場合、搬送装置40により、代替の設備機器41が搬送され、その既設の設備機器の代わりに作動する。例えば、既設の設備機器に対する電源装置からの電力供給が停止されたり、既設の設備機器が動作不良を生じたり、故障したりした場合、搬送装置40により、代替の設備機器41が搬送される。代替の設備機器41は、所定の保管場所に保管されている。既設の設備機器に異常が生じた場合、その保管場所に保管されている代替の設備機器41が、搬送装置40によって、設置場所(交換場所)まで搬送される。
以下の説明においては、既設のポンプ34に異常が生じ、そのポンプ34の代替のポンプ(設備機器)41が搬送装置40によって搬送される例について説明する。
本実施形態において、搬送装置40は、エンジンのような駆動源を有しない。搬送装置40は、台車を含み、作業者又は駆動源を有する車両(例えば牽引車両)によって移動する。
図3、図4、及び図5に示すように、搬送装置40は、所定面SFを走行可能な走行装置42と、走行装置42の上方(+Z方向)に配置され、走行装置42に支持される本体43と、少なくとも一部が本体43と接続され、本体43を支持可能な支持装置44とを備えている。また、搬送装置40は、少なくとも一部が本体43に接続され、走行装置42を支持する懸架装置(サスペンション)49を備えている。
所定面SFは、原子力プラントAPの地面、及び原子力プラントAPの構造物(例えば建屋)の床面の少なくとも一方を含む。走行装置42が所定面SFを走行することにより、搬送装置40は、その所定面SFを移動する。
走行装置42は、所定面SF上で回転可能な回転体45と、回転体45を回転可能に支持する車軸部材46とを有する。回転体45は、車軸部材46に回転可能に支持される車輪45Aと、車輪45Aに接続され、所定面SFと接触するトレッド部45Tを有するタイヤ45Bとを含む。本実施形態において、回転体45は、4つ設けられる。すなわち、本実施形態において、走行装置42は、4輪車である。車軸部材46は、懸架装置49に支持される。
本体43は、走行装置42に移動可能に支持される。本体43は、ポンプ41を支持する支持面(上面)47を有する。本実施形態において、本体43は、ポンプ41及びそのポンプ41を駆動するモータ48を支持する。
懸架装置49は、所定面SFから本体43に伝わる衝撃を緩和する衝撃緩和機能、及び本体43の振動を減衰する振動減衰機能を有する。懸架装置49は、所定面SFからの衝撃を吸収するスプリングと、スプリングの振動を減衰するショックアブソーバーとを含む。
支持装置44は、本体43に接続される。本実施形態において、支持装置44は、本体43に4つ設けられる。XY平面内において、本体43は、四角形状である。支持装置44は、本体43の4つの角部それぞれの近傍に配置される。本実施形態において、4つの支持装置44のそれぞれは、同等の構造である。
図6は、本実施形態に係る支持装置44の一例を示す側面図である。図7は、図6に示す支持装置44の側断面図である。図6及び図7に示すように、支持装置44は、本体43と接続される接続部50と、接続部50よりも下方(−Z方向)に配置され、所定面SFが対向可能な下端部51と、接続部50と下端部51との距離Hを調整可能な第1調整装置60と、第1調整装置60よりも高い分解能で距離Hを調整可能な第2調整装置70とを備えている。距離Hは、Z軸方向に関する接続部50と下端部51との距離である。距離Hが調整されることによって、Z軸方向に関する接続部50と下端部51との相対位置が調整される。
接続部50において、支持装置44と本体43とが固定される。支持装置44は、距離Hを調整して、下端部51が所定面SFから離れた状態及び所定面SFと接触した状態の一方から他方に変化させることができる。下端部51が所定面SFから離れて本体43が走行装置42を介して所定面SFに支持されている状態で、距離Hが調整されることによって、下端部51がZ軸方向に移動(昇降)する。一方、下端部51が所定面SFと接触している状態で、距離Hが調整されることによって、本体43がZ軸方向に移動(昇降)する。
本実施形態において、第1調整装置60の少なくとも一部が本体43に接続される。接続部50は、第1調整装置60に設けられる。第2調整装置70は、第1調整装置60の下方に配置される。
第1調整装置60は、第1部材61と、第1部材61に対して上下方向(Z軸方向)に移動可能な第2部材62とを有する。本実施形態において、第1部材61は、筒状部材である。第2部材62は、少なくとも一部が第1部材61の内側に配置される棒状部材(軸部材)である。第1部材61の軸及び第2部材62の軸のそれぞれは、実質的にZ軸と平行である。
接続部50は、第1部材61に設けられ、第1部材61が本体43に接続される。本実施形態において、第1部材61の外面にブラケット52が固定される。第1部材61とブラケット52とは、例えば溶接により固定される。ブラケット52は、ボルト部材のような固定部材により本体43の側面に固定される。本実施形態においては、第1部材61は、ブラケット52を介して、本体43の側面に固定される。
第1部材61は、開口(孔)63を有する。開口63は、X軸方向に関して第1部材61を貫通するように、その第1部材61に形成される。
第2部材62は、第1部材61に移動可能に支持される。第2部材62は、上下方向(Z軸方向)に間隔Dをおいて設けられた複数の開口(孔)64を有する。開口64は、X軸方向に関して第2部材62を貫通するように、その第2部材62に形成される。本実施形態において、開口64は、Z軸方向に3つ設けられる。なお、開口64は、Z軸方向に2つ設けられてもよいし、4つ以上の任意の数だけ設けられてもよい。間隔Dは、Z軸方向に関する接続部50と所定面SFとの距離Lよりも小さい。なお、複数の開口64の間隔Dは、等間隔でもよいし、不等間隔でもよい。
第1調整装置60は、第1部材61の開口63と、第2部材62の複数の開口64のうち少なくとも1つの開口64に挿入されるピン部材65を有する。ピン部材65は、開口63と開口64とに同時に挿入可能である。ピン部材65は、開口63及び開口64に対して、第1部材61の軸及び第2部材62の軸(すなわちZ軸)と直交するX軸方向に挿入される。ピン部材65が開口63及び開口64に配置されることによって、第1部材61に対する第2部材62の移動が規制(拘束)され、第1部材61と第2部材62との相対位置が固定される。すなわち、ピン部材65は、第1部材61に対する第2部材62の移動を規制する規制装置として機能する。また、開口63及び開口64からピン部材65が抜かれることにより、第2部材62の移動の規制が解除され、第2部材62は、第1部材61に対してZ軸方向に移動可能となる。
図8は、本実施形態に係る第1調整装置60の動作の一例を示す模式図である。図6及び図8に示すように、開口64は、Z軸方向に複数設けられており、それら複数の開口64のうち1つの開口64が選択され、第1部材61の開口63と選択された第2部材62の開口64とに同時にピン部材65が挿入されることによって、Z軸方向に関する第2部材62の位置(高さ)が段階的に調整される。図6は、Z軸方向に配置された3つの開口64のうち、最も下方の開口64と第1部材61の開口63とが位置合わせされ、それら開口63と開口64とにピン部材65が配置されている例を示す。図8は、Z軸方向に配置された3つの開口64のうち、最も上方の開口64と第1部材61の開口63とが位置合わせされ、それら開口63と開口64とにピン部材65が配置されている例を示す。図8に示す下端部51は、図6に示す下端部51よりも下方に配置される。
このように、ピン部材65が挿入される開口64が選択され、その選択された開口64と開口63とにピン部材65が挿入されることによって、接続部50と下端部51との距離H(Z軸方向に関する相対位置)が大まかに調整される。本実施形態においては、第1調整装置60により、間隔Dと等しい分解能(ピッチ)で距離Hが調整される。
図6及び図7に示すように、第2調整装置70は、第3部材71と、第3部材71に対して上下方向(Z軸方向)に移動可能な第4部材72とを有する。本実施形態において、第3部材71は、筒状部材である。第4部材72は、少なくとも一部が第3部材71の内側に配置される棒状部材(軸部材)である。第3部材71の軸及び第4部材72の軸のそれぞれは、実質的にZ軸と平行である。
本実施形態において、第3部材71は、第2部材62の下端部に接続される。第2部材62と第3部材71とは固定される。
第4部材72は、ラックギア73を有する。第3部材71と第4部材72との間に、ラックギア73に噛み合うピニオンギア74が配置される。ラックギア73とピニオンギア74とが結合された状態で、ピニオンギア74が作動することにより、第4部材72が上下方向に移動する。
図9は、第2調整装置70の一例を模式的に示す斜視図である。図9に示すように、第2調整装置70は、ラックギア73を有する第4部材72と、ラックギア73と噛み合った状態で回転することにより第4部材72を上下方向に移動可能なピニオンギア74とを備えている。ピニオンギア74は、軸部材75を介して、操作ハンドル76と接続されている。軸部材75は、ピニオンギア74の回転中心と接続される。操作ハンドル76が操作されてピニオンギア74が回転することによって、第4部材72が上下方向に移動する。例えば、ピニオンギア74が第1方向に回転することによって、第4部材72が上昇し、ピニオンギア74が第1方向の逆方向に回転することによって、第4部材72が下降する。
図6、図7、及び図8に示すように、第4部材72の下端部に、上面53及び下面54を有するプレート部材55が接続されている。第4部材72の下端部とプレート部材55の上面53とが接続される。下端部51は、プレート部材55の下面54を含む。ピニオンギア74が回転され、第3部材71に対して第4部材72が上下方向に相対移動することによって、接続部50と下端部51との距離H(Z軸方向に関する相対位置)が細密に調整される。本実施形態においては、第2調整装置70により、少なくとも、間隔Dよりも高い分解能(細かいピッチ)で距離Hが調整される。
図7に示すように、支持装置44は、第3部材71に対する第4部材72の移動を規制する規制装置80を備えている。規制装置80は、第3部材71と第4部材72との相対位置を固定する。第2調整装置70により第3部材71に対する第4部材72の位置調整が行われた後、規制装置80は、第3部材71に対して第4部材72が移動しないように、第4部材72を固定する。
規制装置80は、第4部材72の周囲の少なくとも一部に配置され、第4部材72の外周面と対向可能な第1規制部材81と、第4部材72と第1規制部材81とが接触するように第1規制部材81を移動可能な第2規制部材82とを有する。
図10は、本実施形態に係る規制装置80の一例を模式的に示す側断面図である。図11は、本実施形態に係る規制装置80の一例を模式的に示すXY平面と平行な断面図であって、図10を下方から見た図に相当する。
図10及び図11に示すように、規制装置80は、第1規制部材81及び第2規制部材82を有する。第1規制部材81は、第2規制部材82よりも上側(+Z側)に配置される。第1規制部材81は、第4部材72の外周面と対向可能であり、第4部材72の軸AXに対する放射方向に移動可能な内面83を有する。第2規制部材82は、内面83の反対方向を向く第1規制部材81の外面84と対向可能な内面85を有する。第1規制部材81は、第4部材72と接触可能である。第2規制部材82は、第4部材72と接触しない。第2規制部材82は、内面85を外面84に接触させた状態で軸AXに対する放射方向に関して内側に向かって第1規制部材81を移動可能である。
第1規制部材81は、第4部材72の周囲に複数配置される。本実施形態においては、第1規制部材81は、第4部材72の周囲に4つ配置される。第4部材72の外周面と第1規制部材81の内面83とは接触可能である。第1規制部材81の内面83は、第4部材72の外周面に沿う形状である。第4部材72の外周面と第1規制部材81の内面83とが接触したときの接触面積は大きい。
第1規制部材81は、軸AXに対する放射方向に移動可能である。第1規制部材81は、第4部材72と接触する状態、及び第4部材72と接触しない状態の一方から他方に変化するように移動可能である。第1規制部材81は、軸AXに対する放射方向に関して内側に移動することによって、第4部材72と接触し、軸AXに対する放射方向に関して外側に移動することによって、第4部材72から離れる。一方、第1規制部材81は、軸AXと平行な方向には移動しない。本実施形態においては、軸AXと平行な方向に関する第1規制部材81の移動を規制し、軸AXに対する放射方向に関する第1規制部材81の移動を許容するガイド装置86が設けられている。また、本実施形態においては、軸AXに対する放射方向に関して外側に向かう力を第1規制部材81に与える付勢装置87が設けられている。
外面84は、軸AXと平行なZ軸方向に関して下側(−Z側)に向かって軸AXから離れるように傾斜する斜面(テーパ面)である。
第2規制部材82は、軸AXと平行な方向(Z軸方向)に移動可能である。第2規制部材82は、第4部材72と離れた状態で、Z軸方向に移動可能である。第2規制部材82は、第1規制部材81と接触する状態、及び第1規制部材81と接触しない状態の一方から他方に変化するように移動可能である。第2規制部材82は、−Z方向に移動することによって、第2規制部材82と接触し、+Z方向に移動することによって、第1規制部材81から離れる。一方、第2規制部材82は、軸AXに対する放射方向には移動しない。本実施形態においては、軸AXに対する放射方向に関する第2規制部材82の移動を規制し、軸AXと平行な方向に関する第2規制部材82の移動を許容するガイド装置88が設けられている。また、本実施形態においては、軸AXと平行な方向に関して+Z側に向かう力を第2規制部材82に与える付勢装置89が設けられている。
内面85は、軸AXと平行なZ軸方向に関して下側(−Z側)に向かって軸AXから離れるように傾斜する斜面(テーパ面)である。軸AXと内面85との距離(内面85の内径)は、軸AXと外面84との距離(外面84の外径)よりも小さい。
図10に示すように、第2規制部材82は、第1規制部材81よりも上側に配置される。第2規制部材82+Z方向に移動して外面84と内面85とが離れた場合、第1規制部材81は、付勢装置87の作用により、軸AXに対する放射方向に関して外側に移動する。これにより、第1規制部材81の内面83と第4部材72の外周面とは離れる。
一方、第2規制部材82が−Z方向に移動して外面84と内面85とが接触し、第1規制部材81に力を加えた場合、第1規制部材81は、軸AXに対する放射方向に関して内側に移動する。内面85の内径は、外面84の外径よりも小さく、外面84と内面85とが接触した状態で第2規制部材82が−Z方向に移動することにより、第1規制部材81は、軸AXに対する放射方向に関して内側に向かって移動する。これにより、第1規制部材81の内面83と第4部材72の外周面とが接触する。
本実施形態においては、第2規制部材82の上面に接触するようにカム90が設けられている。カム90は、操作レバー91と接続されている。操作レバー91が操作されてカム90が回転することにより、第2規制部材82が−Z方向に移動する。付勢装置89の力(付勢力)よりも大きい力で第2規制部材82が−Z方向に移動することにより、第1規制部材81が軸AXに対する放射方向に関して内側に向かって移動し、その第1規制部材81の内面83と第4部材72の外周面とが接触する。第2規制部材82の可動範囲において第2規制部材82が最も−Z側の位置に配置されると、第1規制部材81が第2規制部材82に嵌まって、第1規制部材81と第2規制部材82とが固定される。第1規制部材81と第2規制部材82とが固定された状態で、第1規制部材81の内面83が第4部材72の外周面に押し付けられる。
第1規制部材81の内面83が第4部材72の外周面に押し付けられることにより、その第1規制部材81の内面83と第4部材72の外周面との間に摩擦力が発生する。その摩擦力により、第3部材71と第4部材72との相対移動が規制される。
また、本実施形態においては、第2規制部材82が第1規制部材81よりも上方に配置されている。下端部51が所定面SFと接触し、第4部材72及びその第4部材72に接触する第1規制部材81に+X方向の力が作用しても、第2規制部材82の内側に第1規制部材81が食い込むように配置されるため、第1規制部材81及び第4部材72の移動は抑制される。
一方、第1規制部材81と第2規制部材82との固定が解除されるように操作レバー91が操作されると、第2規制部材82は、付勢装置89の作用により、+Z方向に移動する。これにより、外面84と内面85とは離れる。外面84と内面85とが離れると、付勢装置87の作用により、第1規制部材81の内面83と第4部材72の外周面とは離れる。これにより、規制装置80による規制が解除され、第4部材72は、第3部材71に対して移動可能となる。規制装置80による規制が解除されることにより、操作ハンドル76を使って、第4部材72を昇降させることができる。
次に、本実施形態に係る搬送装置40の使用方法の一例について説明する。図12は、本実施形態に係る搬送装置40の使用方法の一例を示すフローチャートである。
図12に示すように、搬送装置40の使用方法は、搬送装置40を保管場所に保管するステップS1と、搬送装置40を保管場所から設置場所に移動するステップS2と、搬送装置40を設置場所に設置するステップS3とを含む。
ポンプ41は、搬送装置40の本体43に搭載された状態で、所定の保管場所に保管されている(ステップS1)。その保管場所から、ポンプ34が設置されている場所に、ポンプ41が搬送装置40によって搬送される。なお、保管場所は、例えば地震及び津波などの自然現象による災害が生じても、その災害の影響を受け難い場所に定められる。保管場所は、例えば、原子炉建屋に定められてもよいし、免震棟に定められてもよい。
保管場所に保管されている保管状態において、ポンプ41は作動していない。また、保管状態において、下端部51は所定面SF(保管場所の地面又は床面)から離れており、本体43は、走行装置42を介して、所定面SFに支持される。すなわち、本実施形態において、保管状態は、ポンプ41が作動していない状態、走行装置42が走行されていない状態、及び下端部51が所定面SFから離れている状態を含む。
保管状態において、走行装置42の回転体45は、所定面SFと接触する。保管状態において、回転体45が所定面SFと接触し、下端部51が所定面SFから離れていることによって、その保管状態において地震が発生しても、懸架装置49により、その地震の衝撃が本体43及びその本体43に支持されているポンプ41に作用することが抑制される。すなわち、懸架装置49は、保管状態において免震装置として機能する。保管状態において、懸架装置49の機能が発揮されるように、下端部51を所定面SFから離して走行装置42で本体43を支持することにより、懸架装置49により、地震による大きな振動がポンプ41に作用することが抑制される。
例えば、既設のポンプ(スプレーポンプ)34に異常が生じた場合、原子炉格納容器2の内部にスプレーヘッド32からミストを供給することが困難となる可能性がある。例えば、地震及び津波などの自然現象による災害により、ポンプ34に対する電源装置からの電力供給が停止されたり、ポンプ34が動作不良を生じたり、故障したりした場合、スプレーヘッド32からミストを供給することが困難となる可能性がある。そのため、異常が生じたポンプ34と、代替のポンプ41との交換のために、搬送装置40によってポンプ41が搬送される(ステップS2)。
ポンプ41が搭載された搬送装置40は、保管場所から設置場所(交換場所)まで移動される。搬送装置40の移動において、走行装置42が所定面SF(保管場所と設置場所との間の路面など)を走行する。走行装置42が走行する走行状態において、ポンプ41は作動していない。すなわち、走行状態は、ポンプ41が作動していない状態を含む。また、走行状態において、下端部51は所定面SFから離れている。走行状態において、下端部51が所定面SFから十分に離れるように、接続部50と下端部51との距離Hが調整される。走行状態において、下端部51は、Z軸方向に関する下端部51の可動範囲において最も+Z側に配置される。すなわち、図6に示したように、第1調整装置60においては、Z軸方向に配置された3つの開口64のうち最も−Z側の開口64と開口63とにピン部材65が挿入される。第2調整装置70においては、第3部材71に対して第4部材72が最も+Z側に配置され、その第4部材72の位置が規制装置80により固定される。
走行状態において、下端部51を所定面SFから十分に離しておくことにより、搬送装置40の移動中に下端部51が所定面SFに接触することが抑制される。所定面SFが凹凸を有していたり、斜面を含んでいたりしても、下端部51が所定面SFから十分に離れているので、走行状態において下端部51と所定面SFとの接触が抑制される。
また、本実施形態においては、懸架装置49が設けられている。そのため、走行状態において、所定面SFからの衝撃が本体43に搭載されたポンプ41に作用すること抑制される。
ポンプ34の設置場所(ポンプ34とポンプ41との交換場所)に搬送装置40が到着した後、ポンプ41の設置作業が行われる(ステップS3)。
設置作業において、ポンプ34と配管37の接続部38との接続の解除、及びポンプ34と配管33の接続部39との接続の解除が行われる。その後、ポンプ41と配管37の接続部38との接続、及びポンプ41と配管33の接続部39との接続を含む、ポンプ41の設置作業が行われる。
ポンプ41は、本体43に搭載された状態で設置される。本体43に搭載されたポンプ41と接続部38及び接続部39との接続が行われる。ポンプ41の設置作業において、走行装置42の走行が停止される。
設置作業において、下端部51が下降するように、接続部50と下端部51との距離H(相対位置)が調整される。上述のように、走行状態においては、下端部51は、Z軸方向に関する下端部51の可動範囲において最も+Z側に配置されている。走行状態が終了した後、ポンプ41の設置作業において、下端部51が所定面SF(設置場所の地面又は床面)に接触するように、下端部51が下降される。
本実施形態においては、接続部50と下端部51との距離H(相対位置)を大まかに調整可能な第1調整装置60によって、下端部51と所定面SFとが接近又は接触するように、下端部51が迅速に下降される。接続部50と下端部51との距離H(相対位置)を細密に調整可能な第2調整装置70によって、接続部50と下端部51との距離Hが微調整される。
具体的には、第1調整装置60において、開口63及び開口64からピン部材65が抜かれる。開口63及び開口64からピン部材65が抜かれると、第1部材61と第2部材62との固定が解除され、重力の作用により、第2部材62が一気に下降する。下端部51(第4部材72)は、規制装置80によって第3部材71と固定されており、第3部材71は、第2部材62と固定されている。したがって、第2部材62が一気に下降することにより、下端部51と所定面SFとが接近又は接触するように、下端部51が迅速に下降される。第2部材62が下降した後、開口63と複数の開口64の中から選択された開口64とにピン部材65が挿入されることにより、第1部材61と第2部材62とが固定される。本実施形態においては、例えば図8を参照して説明したように、Z軸方向に配置された3つの開口64のうち最も+Z側の開口64が選択され、その開口64と開口63とにピン部材65が挿入される。
第1調整装置60により、接続部50と下端部51との距離Hの大まかな調整が行われた後、第2調整装置70により、接続部50と下端部51との距離Hの細密な調整が行われる。第2調整装置70による調整のために、規制装置80による第4部材72の固定(規制)が解除される。上述したように、操作レバー91が操作されることによって、規制装置80による規制が解除される。規制装置80による規制が解除された状態で、距離Hが適切な距離になるように、操作ハンドル76が操作される。操作ハンドル76の操作により、ピニオンギア74が回転する。これにより、ラックギア73を介して、第4部材72が第3部材71に対してZ軸方向に移動する。
下端部51が所定面SFから離れている状態で開口63と開口64とにピン部材65が挿入されている場合、第2調整装置70は、距離Hを調整して、下端部51と所定面SFとが接触するように、下端部51を下降させる。下端部51と所定面SFとが接触している状態で、第2調整装置70は、距離Hを調整して、本体43を+Z方向に移動させる。本実施形態においては、第2調整装置70による距離Hの調整により、所定面SFに対する本体43(接続部50)のZ軸方向に関する位置(高さ)が微調整される。
本実施形態においては、支持装置44が複数(4つ)設けられており、それら4つの支持装置44の接続部50のそれぞれの高さが調整されることによって、Z軸方向に関する本体43の位置(高さ)、θX及びθY方向のそれぞれに関する本体43の位置(傾斜)が調整される。このように、本実施形態においては、複数の支持装置44により、Z軸、θX、及びθY方向に関する本体43の位置が調整される。
本実施形態においては、ポンプ41の設置作業において、ポンプ41を支持する本体43の支持面47と水平面(XY平面)とが平行となるように、本体43の位置が調整される。なお、水準器のような計測装置を使って本体43の位置を計測し、その計測結果に基づいて、複数の支持装置44のそれぞれにおける距離Hが調整されてもよい。
また、ポンプ41の設置作業において、ポンプ41の吸込口41Aと配管37の接続部38とを接続する作業、及びポンプ41の吐出口41Bと配管33の接続部39とを接続する作業が行われる。配管37及び配管33は、既設の構造物であり、ポンプ41の吸込口41Aが接続部38に接続され、ポンプ41の吐出口41Bが接続部39に接続されるように、ポンプ41を支持した本体43のZ軸、θX、及びθY方向に関する位置が調整される。
図13は、設置作業後においてポンプ41が設置場所に設定された状態の一例を示す図である。ポンプ41は、搬送装置40(本体43)に搭載された状態で、接続部38及び接続部39と接続される。
ポンプ41が設置場所に設置される設置状態において、走行装置42の走行は停止され、下端部51が所定面SFに接触するように、接続部50と下端部51との距離Hが調整される。設置状態においては、走行装置42が走行しないように(搬送装置40が移動しないように)、接続部50と、所定面SFに接触した下端部51との距離Hが調整される。設置状態において、ポンプ41は作動する。
本体43に搭載されているポンプ41が作動している作動状態において、走行装置42が走行しないように(走行装置42が動き出さないように)、接続部50と下端部51との距離Hが調整される。本実施形態においては、回転体45が所定面SFから離れるように、支持装置44によって本体43及び走行装置42が持ち上げられる。これにより、ポンプ41が作動している状態において、走行装置42の走行が防止される。なお、回転体45と所定面SFとは接触していてもよい。走行装置42が走行しないように、本体43が支持装置44に支持されていれば、回転体45と所定面SFとは接触していてもよい。
ポンプ41の設置状態(作動状態)において、走行装置42が走行しないように、複数の支持装置44のそれぞれにおける距離Hが調整されているため、ポンプ41は、安定して作動することができる。また、ポンプ41の設置状態(作動状態)において、懸架装置49の機能が発揮されないように、支持装置44により本体43が持ち上げられることにより、既設の構造物である接続部38及び接続部39とポンプ41との相対位置の変化が抑制される。
ポンプ41を保管場所に戻すとき、ポンプ41の作動が停止され、ポンプ41と接続部38及び接続部39との接続が解除され、下端部51が所定面SFから離れるように距離Hが調整される。下端部51が上昇し、回転体45と所定面SFとが接触して走行装置42が走行可能状態となった後、搬送装置40が作業者又は車両によって移動される。上述のように、走行装置42の走行状態においては、下端部51が所定面SFから離れる。これにより、走行装置42は円滑に走行可能である。また、懸架装置49により、走行状態において、所定面SFからの衝撃が本体43に搭載されたポンプ41に作用することが抑制される。
以上説明したように、本実施形態によれば、接続部50と下端部51との距離H(相対位置)を大まかに調整可能な第1調整装置60と、第1調整装置60よりも高い分解能で接続部50と下端部51との距離H(相対位置)を微調整可能な第2調整装置70とが設けられているため、本体43に支持されたポンプ41を目標位置(接続部38及び接続部39との取り合い位置)に迅速に設置することができる。本実施形態においては、第1調整装置60によって、下端部51を所定面SFと接近又は接触する位置に迅速に位置決めすることができる。第2調整装置70によって、接続部50と下端部51との距離(相対位置)を微調整して、ポンプ41を接続部38及び接続部39との取り合い位置に精度良く位置決めすることができる。このように、本体43に搭載されたポンプ41を目標位置に迅速に設置することができる。
本実施形態においては、搬送装置40は、保管場所からの移動後、設置場所に設置される。保管場所から設置場所までの走行状態において、下端部51が所定面SFに接触しないように、下端部51を上昇させて所定面SFから十分に離しておくことが望ましい。走行状態の終了後、設置場所において下端部51を所定面SFに接触させる場合、支持装置44が第1調整装置60を有さず、第2調整装置70のみを有していると、下端部51を所定面SFに接触させる作業に時間を要してしまう。一方、支持装置44が第2調整装置70を有さず、第1調整装置60のみを有していると、ポンプ41を目標位置に精度良く配置することが困難となる。本実施形態において、ポンプ41が使用される場面は、原子力プラントAPに非常事態が生じた場面であり、ポンプ41を目標位置に迅速かつ高精度に設置することが要求される。本実施形態においては、支持装置44が、距離Hを大まかに調整可能な第1調整装置60と、距離Hを細密に調整可能な第2調整装置70との両方を有しているため、本体43に搭載されたポンプ41を目標位置に迅速かつ高精度に設置することができる。
本実施形態においては、走行状態において、下端部51が所定面SFから離れることにより、走行装置42は所定面SFを円滑に走行可能である。また、保管状態及び走行状態の両方において、下端部51が所定面SFから離れることにより、懸架装置49の機能を発揮させることができる。これにより、保管状態及び走行状態のそれぞれにおいて、本体43に搭載されているポンプ41に大きな振動及び衝撃が作用することが抑制される。また、本実施形態においては、保管状態及び走行状態は、ポンプ41が作動していない状態を含む。これにより、走行及び保管を円滑に行うことができる。
また、本実施形態においては、設置状態において、下端部51が所定面SFに接触することにより、本体43は下端部51を介して所定面SFに安定して支持される。また、設置状態において、走行装置42が走行せず、懸架装置49の機能が発揮されないように、下端部51が所定面SFに接触することにより、既設構造物である接続部38及び接続部39と本体43に搭載されているポンプ41との相対位置の変化が抑制される。これにより、設置状態において、ポンプ41を安定して作動させることができる。
また、ポンプ41が作動されている状態においては、そのポンプ41の性能の低下を抑制するために、ポンプ41の変位及び振動が抑制されることが好ましい。本実施形態においては、ポンプ41が作動されている状態において、懸架装置49の機能が発揮されないように距離Hが調整され、懸架装置49に起因するポンプ41の変位(振動)が抑制されため、ポンプ41の性能の低下が抑制される。
また、本実施形態においては、第1調整装置60は、第1部材61と第2部材62とピン部材65とを含み、第2調整装置70は、第3部材71とラックギア73を有する第4部材72とピニオンギア74とを含み、例えば、油圧式の昇降装置に比べて、簡易な構成である。
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図14は、本実施形態に係る第1調整装置60Bの一例を示す図である。図14に示すように、第1調整装置60Bは、本体43に固定される第1部材61Bと、第1部材61Bに対してZ軸方向に相対移動可能な第2部材62Bとを備えている。第1部材61Bは、開口63Bを有する。第2部材62Bは、Z軸方向に配置される複数の開口64Bを有する。開口63B及び開口64Bにピン部材65Bが挿入される。
図14に示すように、第1部材61B及び第2部材62Bのそれぞれは、プレート部材である。本実施形態においても、第1調整装置60Bは、距離Hを大まかに調整することができる。
<第3実施形態>
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図15は、本実施形態に係る第2調整装置70Cの一例を示す図である。図15に示すように、第2調整装置70Cは、第3部材71Cと、第3部材71Cに対してZ軸方向に相対移動可能な第4部材72Cとを備えている。
第3部材71Cは、筒状部材である。本実施形態において、第3部材71Cの内周面に雌ねじ部が設けられている。第4部材72Cは、少なくとも一部が第3部材71Cの内側に配置される棒状部材(軸部材)である。本実施形態において、第4部材72Cの外周面に雄ねじ部が設けられている。第3部材71Cの雌ねじ部と第4部材72Cの雄ねじ部とは結合(螺合)可能である。
第4部材72Cの下端部に下端部51が設けられる。本実施形態においては、雌ねじ部と雄ねじ部とを結合した状態で、第3部材71Cに対して第4部材72Cを回転させることによって、距離Hを微調整したり、下端部51を昇降させたりすることができる。
<第4実施形態>
第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図16は、本実施形態に係る支持装置44Dの一例を示す模式図である。支持装置44Dは、第1調整装置60Dと第2調整装置70Dとを備えている。本実施形態においては、第2調整装置70Dの少なくとも一部が本体43に接続され、第1調整装置60Dは、第2調整装置70Dの下方に配置される。下端部51は、第1調整装置60Dに設けられる。
第2調整装置70Dは、ブラケット52を介して本体43に固定される第3部材71Dと、第3部材71Dに対してZ軸方向に移動可能な第4部材72Dとを有する。第3部材71Dは、筒状部材であり、第4部材72Dは、少なくとも一部が第3部材71Dの内側に配置される軸部材である。第4部材72Dの外周面には、上述の実施形態で説明したようなラックギアが設けられる。第3部材71Dと第4部材72Dとの間には、ラックギアと噛み合うピニオンギアが配置される。ピニオンギアが回転することによって、第3部材71Dに対して第4部材72DがZ軸方向に移動する。また、第3部材71Dと第4部材72Dとの間には、上述の実施形態で説明したような規制装置が配置される。
第1調整装置60Dは、第4部材72Dの下端部と接続された第1部材61Dと、第1部材61Dに対してZ軸方向に移動可能な第2部材62Dとを有する。第1部材61Dは、筒状部材である。第2部材62Dの少なくとも一部は、第1部材61Dの内側に配置される。
第1部材61Dは、開口63Dを有する。第2部材62Dは、Z軸方向に配置された複数の開口64Dを有する。複数の開口64Dのうち選択された開口64Dと開口63Dとにピン部材が挿入されることによって、第1部材61Dと第2部材62Dとが固定される。
<第5実施形態>
第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図17は、本実施形態に係る搬送装置40の使用方法の一例を示す模式図である。図17に示すように、走行装置42を使用せずに、搬送装置40が設置場所に移動されてもよい。図17に示す例においては、ポンプ41を搭載した搬送装置40が、クレーンのような建設機械100によって移送される。搬送装置40が建設機械100に支持された状態において、下端部51が走行装置42よりも下方に突出するように、距離Hが調整されている。下端部51が走行装置42よりも下方に突出された状態で、搬送装置40が設置場所に設置されることによって、走行装置42と所定面SFとが離れた状態で、本体43は支持装置44に支持される。
なお、上述の各実施形態においては、ポンプ41が本体43に搭載された状態で、保管場所から設置場所に搬送されることとした。設置場所において下端部51が所定面SFに接触するように搬送装置40を設置した後、その搬送装置40の本体43にポンプ41を搭載してもよい。
なお、上述の各実施形態においては、本体43に対して支持装置44が4つ設けられることとした。これにより、θX方向及びθY方向のそれぞれに関する本体43の位置調整(傾斜調整)を円滑に行うことができる。なお、本体43に対して支持装置44を少なくとも3つ設けることにより、本体43の傾斜調整を円滑に行うことができる。
なお、上述の実施形態においては、既設のポンプ34の異常時に、そのポンプ34の代替としてポンプ41を設置することとした。ポンプ34に異常が生じてなくても、ポンプ41を設置してもよい。例えば、ポンプ34のメンテナンス又は定期点検のときに、ポンプ34をポンプ41と交換してもよい。
なお、上述の各実施形態において、ポンプ41及び搬送装置40は、保管場所に保管されなくてもよく、例えば、ポンプ34の近傍に配置されていてもよい。これにより、ポンプ34とポンプ41との交換を短時間で行うことができる。
なお、上述の各実施形態においては、設備機器(既設の設備機器、及び代替の設備機器)がポンプであることとした。設備機器は、ポンプに限定されない。例えば、コンプレッサでもよいし、発電機でもよい。既設構造物(配管)と取り合うプラント設備機器であれば、上述の各実施形態の構成要素を任意の設備機器に適用可能である。
なお、上述の各実施形態においては、原子力プラントAPが加圧水型原子炉を含むこととした。原子力プラントAPは、沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)を含んでもよい。