JP6348298B2 - 密閉型圧縮機および冷凍装置 - Google Patents

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Description

本発明は、密閉型圧縮機およびこれを用いた家庭用電気冷凍冷蔵庫やショーケース等の冷凍装置に関するものである。
家庭用電気冷凍冷蔵庫やその他の冷凍サイクル装置等に使用される密閉型圧縮機については、消費電力を低減させるための高効率化や低騒音化、高信頼性化が強く要望されている。
従来、この種の密閉型圧縮機としては、ピストンの反圧縮室側にピストンピンを介してコンロッドを摺動自在に設け、クランクシャフトの回転運動による偏心軸の偏心運動をピストンの往復運動へと変換し、圧縮作用を得るものが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
図10は特許文献1に記載された従来の密閉型圧縮機の全体構造を示す縦断面図、図11は同密閉型圧縮機における圧縮要素の要部断面図である。
図10および図11において、潤滑油を貯留する密閉容器11内に、圧縮機本体12がばね等の弾性体13によって弾性的に支持されている。圧縮機本体12は、固定子14と回転子15とを備えた電動要素16と電動要素16によって駆動される圧縮要素17とで構成されている。
圧縮要素17は、クランクシャフト18、シリンダブロック19、ピストン20、コンロッド21等で構成されている。
クランクシャフト18は、回転子15を固定した主軸22と主軸22に対して偏心して形成された偏心軸23を有し、シリンダブロック19は、圧縮室24を形成するシリンダボア25と主軸22を回転自在に軸支する軸受部26を有する。
ピストン20は、シリンダボア25に往復摺動自在に挿入され、図11に示すピストンピン27が固定されている。
コンロッド21は、大孔端部28と小孔端部29とロッド部30とで構成されている。大孔端部28には偏心軸23が挿入され、小孔端部29にはピストンピン27が挿入され、これによって偏心軸23とピストン20が連結される。
そして、上記クランクシャフト18の回転によって、偏芯軸23、コンロッド21を介しピストン20が圧縮室24を往復動し、圧縮動作が行われる。
特開2004−138018号公報
しかしながら、前記従来の構成では、圧縮行程において、ピストン20のトップ面31が圧縮された冷媒ガスの反力を受けることによって、ピストンピン27、コンロッド21、偏心軸23が押圧される。これに伴って、図11に示すように、クランクシャフト18が軸受26とのクリアランス内で傾き、シリンダボア25とクランクシャフト18のなす角が極わずかではあるが鋭角となる。その結果、ピストン20の推進方向がシリンダボア25の軸心に対し傾斜して、ピストン20がシリンダボア25をこじることにより、摺動損失による効率低下や摩耗発生を引き起こす恐れがあった。
本発明は、このような点に鑑みてなしたもので、圧縮行程におけるピストンのこじりを回避し、摺動損失を低減し、かつ摩耗発生を抑制し、効率と信頼性の高い密閉型圧縮機を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の密閉型圧縮機は、コンロッドの大孔端部とクランクシャフトの偏心軸との摺動幅の中心位置が、シリンダボアの軸中心位置よりも反軸受部側となるように配置したものである。
これによって、圧縮行程において、ピストンをクランクシャフトとの直角方向に対して僅かに鋭角方向に傾けた状態で推進することができるので、クランクシャフトが傾いて、シリンダボアとクランクシャフトのなす角が鋭角となっても、ピストンをシリンダボアの軸心方向に円滑に往復運動させることが可能となり、ピストンによるシリンダボアのこじりを防止できる。
本発明の密閉型圧縮機は、圧縮行程におけるピストンのこじりを回避することで、摺動損失を低減して効率を向上させると共に、摩耗の発生を抑制し信頼性を向上させることができる。
本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機の縦断面図 同実施の形態における密閉型圧縮機の圧縮荷重が作用していないときの要部縦断面図 同実施の形態における密閉型圧縮機の圧縮荷重が作用しているときの要部縦断面図 本発明の実施の形態2における密閉型圧縮機の縦断面図 同実施の形態における密閉型圧縮機の圧縮荷重が作用していないときの要部縦断面図 同実施の形態における密閉型圧縮機の圧縮荷重が作用しているときの要部縦断面図 同実施の形態における異なる構成の密閉型圧縮機の要部縦断面図 同実施の形態におけるさらに異なる構成の密閉型圧縮機の要部縦断面図 本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機を搭載した冷凍装置の構成を示す模式図 従来の密閉型圧縮機の縦断面図 従来の密閉型圧縮機の要部縦断面図
第1の発明は、密閉容器内に、電動要素と、電動要素によって駆動される圧縮要素を収容し、前記圧縮要素は主軸および偏心軸から構成されるクランクシャフトと、クランクシャフトの主軸を軸支する軸受部と円筒状に貫設されたシリンダボアとを有するシリンダブロックと、前記シリンダボア内で往復運動するピストンと、前記ピストンに軸心が偏心軸の軸心と平行となるように配設されたピストンピンと、大孔端部が前記偏心軸に嵌挿されるとともに他端の小孔端部が前記ピストンピンに嵌挿されて前記ピストンと偏芯軸部とを連結するコンロッドとを備え、前記コンロッドの大孔端部と前記偏心軸との摺動幅の中心位置が、前記シリンダボアの軸中心位置よりも反軸受部側となるように配置した構成としてある。
これにより、ピストンの受けた圧縮冷媒ガスの反力による荷重の位置と、それに対して偏心軸が大孔端部を押し返す荷重の位置がずれ、ピストンがクランクシャフトに対して僅かに傾いた状態で鋭角方向に進むようにモーメントが働く。すなわち、圧縮行程において、ピストンのトップ面が受けた圧縮冷媒ガスの反力によって、ピストンピン、コンロッド、偏心軸が押圧され、クランクシャフトが軸受部とのクリアランス内で傾き、シリンダボアとクランクシャフトのなす角がわずかに鋭角となっても、ピストンは前記モーメントによってその鋭角に沿う方向に傾いて進むようになる。その結果、ピストンがシリンダボアをこじることなくシリンダボアの軸心方向に円滑に往復運動するようになる。よって、ピストンとシリンダボアの摺動損失の低減を図れ、これによる効率向上と、ピストンの摩耗の発生を抑制することによる信頼性向上が実現できると共に、シリンダボアの位置を軸受部側に近づけることができるため、圧縮機の高さを低くすることができる。
第2の発明は、特に、第1の発明において、大孔端部と偏心軸の摺動幅の中心位置が、前記偏心軸に対する前記大孔端部の押圧の中心位置よりも反軸受部側となるように配置した構成としてある。
これにより、大孔端部が偏心軸を押す荷重の位置と、それに対して偏心軸が大孔端部を押し返す荷重の位置がずれ、コンロッドがクランクシャフトに対して僅かに鋭角方向に押されるようにモーメントが働き、ピストンがクランクシャフトに対して僅かに傾いた状態で鋭角方向に進むため、圧縮行程において、ピストンのトップ面が受けた圧縮冷媒ガスの反力によって、ピストンピン、コンロッド、偏心軸が押圧され、クランクシャフトが軸受部とのクリアランス内で傾き、シリンダボアとクランクシャフトのなす角がわずかに鋭角となっても、ピストンがシリンダボアをこじることなくシリンダボアの軸心方向に円滑に往復運動するようになる。したがって、ピストンとシリンダボアの摺動損失を低減して効率を向上させると共に、ピストンの摩耗の発生を抑制し信頼性を向上させることができる。
第3の発明は、特に、第1の発明において、大孔端部と偏心軸の摺動幅の中心位置と、前記偏心軸に対する前記大孔端部の押圧の中心位置とを一致させた構成としてある。
これにより、大孔端部と偏心軸の摺動部にモーメントが働かないため、大孔端部と偏心軸とのこじりが抑えられ、大孔端部と偏心軸との摺動損失を低減して効率を向上させると共に、大孔端部の摩耗の発生を抑制し信頼性を向上させることができる。
第4の発明は、特に、第1から第3のいずれか1つの発明において、ピストンピンに対する小孔端部の押圧の中心位置と、前記小孔端部と前記ピストンピンの摺動幅の中心位置とを一致させた構成としてある。
これにより、小孔端部とピストンピンの摺動部にモーメントが働かないため、小孔端部とピストンピンとのこじりが抑えられ、小孔端部とピストンピンとの摺動損失を低減して効率を向上させると共に、小孔端部の摩耗の発生を抑制し信頼性を向上させることができる。
第5の発明は、特に、第1から第4のいずれか1つの発明において、偏心軸に対する大孔端部の押圧の中心位置とピストンピンに対する小孔端部の押圧の中心位置とを、軸受部の中心軸に垂直な平面と同一平面上に配置した構成としてある。
これにより、コンロッドの大孔端部および小孔端部とロッド部との連結部に曲げモーメントが働かないため、コンロッドの変形を抑制し信頼性を向上させることができる。
第6の発明は、特に、第1から第4のいずれか1つの発明において、小孔端部とピストンピンの摺動幅の中心位置をシリンダボアの軸中心上に配置した構成としてある。
これにより、ピストンピンとピストンとの連結部にモーメントが働かないため、ピストンピンとピストンのこじりが抑えられ、信頼性を向上させることができる。
第7の発明は、密閉型圧縮機、放熱器、減圧装置及び吸熱器を配管によって環状に連結した冷媒回路を有し、前記密閉型圧縮機を第1から6のいずれかの発明の密閉型圧縮機とした冷凍装置である。
これにより、効率が向上した密閉型圧縮機の搭載によって冷凍装置の消費電力を低減し、省エネルギー化を実現することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における密閉型圧縮機の縦断面図、図2は、同実施の形態における密閉型圧縮機の圧縮荷重が作用していないときの要部の縦断面図、図3は、同実施の形態における密閉型圧縮機の圧縮荷重が作用しているときの要部の縦断面図である。
図1から図3において、本実施の形態1における密閉型圧縮機は、鉄板の絞り成型によって形成された密閉容器101の内部に、電動要素102と、この電動要素102によって駆動される圧縮要素103を主体とする圧縮機本体104を配置している。この圧縮機本体104は、サスペンションスプリング105によって弾性的に支持されている。
さらに、密閉容器101内には、例えば、地球温暖化係数の低い炭化水素系のR600a等の冷媒ガス106が、冷凍装置(図示せず)の低圧側と同等圧力で、比較的低温の状態で封入されるとともに、密閉容器101内の底部には、潤滑用の潤滑油107が封入されている。
また、密閉容器101には、一端が密閉容器101内空間に連通するとともに、他端が冷凍装置(図示せず)に接続される吸入パイプ108と、圧縮要素103で圧縮された冷媒ガス106を冷凍装置(図示せず)へ導く吐出パイプ109とを備えている。
圧縮要素103は、クランクシャフト110、シリンダブロック111、ピストン112、コンロッド113等で構成されている。クランクシャフト110は、偏心軸114と主軸115と、潤滑油107に浸漬された主軸115の下端から偏心軸114の上端までを連通する給油機構116とを備え、給油機構116の途中は、主軸115表面に設けられた螺旋状の溝116a等によって構成されている。
シリンダブロック111には、圧縮室117を形成するシリンダボア118が一体に形成され、また、主軸115を回転自在に軸支する軸受部119を備えている。
ピストン112は、シリンダボア118内を往復運動すると共に、軸心が偏心軸114の軸心と平行となるようにピストンピン120が配設されている。
コンロッド113は、ロッド部121と大孔端部122と小孔端部123を有し、大孔端部122は偏心軸114に嵌挿され、小孔端部123はピストンピン120に嵌挿されている。これにより、偏心軸114とピストンピン120を連結している。
ここで、上記ロッド部121と大孔端部122を連結する端大孔端連結部124は、図2に示すように、大孔端部122と偏心軸114の摺動幅の中心位置Aが、ロッド部121の大孔端連結部124の軸中心位置、すなわち偏心軸114に対する大孔端部122の押圧の中心位置Bより反軸受部119側となるように連結されている。また、ロッド部121と小孔端部123を連結する小孔端連結部125は、小孔端部123とピストンピン120の摺動幅の中心位置Cとロッド部121の小孔端連結部125の軸中心位置、すなわちピストンピン120に対する小孔端連結部125の押圧の中心位置Dとが一致するように連結されている。そして、小孔端部123とピストンピン120の摺動幅の中心位置Cはシリンダボア118の軸中心E上にあり、ロッド部121の大孔端連結部124の軸中心位置Bとロッド部121の小孔端連結部125の軸中心位置Dは軸受部119の中心軸に垂直な平面と同一平面上に配置するように構成されている。
また、シリンダボア118の反クランクシャフト110側の開口部端面118aには、吸入孔126と吐出孔127を備えたバルブプレート128と、吸入孔126を開閉する吸入バルブ129と、バルブプレート128を塞ぐシリンダヘッド130が、ヘッドボルト(図示せず)によって共締めで固定されている。
シリンダヘッド130は、冷媒ガス106が吐出される吐出空間131を有し、吐出空間131は、吐出管132を介して、直接吐出パイプ109と連通している。
電動要素102は、シリンダブロック111の下方に、ボルト(図示せず)によって固定されたステータ133と、ステータ133の内側で、ステータ133と同軸上に配置され、かつ主軸115に焼き嵌め等で固定されたロータ134とで構成されている。
また、上記電動要素102は、外部のインバータ駆動回路(図示しない)に繋がり、複数の運転周波数でインバータ駆動される。
以上のように構成された密閉型圧縮機について、以下その動作、作用を説明する。
密閉型圧縮機は、その吸入パイプ108と吐出パイプ109が、周知の構成からなる冷凍装置(図示せず)に接続され、冷凍サイクルを構成している。
その構成において、電動要素102に通電されると、ステータ133に電流が流れ、磁界が発生し、主軸115に固定されたロータ134が回転する。その回転によりクランクシャフト110が回転し、偏心軸114に回転自在に取り付けられたコンロッド113を介して、ピストン112がシリンダボア118内を往復運動する。
そして、このピストン112の往復運動に伴い、圧縮室117内で冷媒ガス106の吸入、圧縮、吐出が行なわれる。
ここで、圧縮行程では、図3に示すように、ピストン112は圧縮室117内の圧縮された冷媒ガス106の圧縮反力を受ける。この圧縮反力は、コンロッド113を介して偏心軸114を下死点方向に押し付ける。これに伴い、主軸115が軸受部119とのクリアランスの範囲内で僅かに傾斜し、クランクシャフト110とシリンダボア118の成す角度が僅かに鋭角となる。
従来の構成においては、ピストン112はクランクシャフト110に対して、直角に進もうとするためシリンダボア118内で傾いたピストン112のこじりが発生することとなる。
しかしながら、本実施の形態では、ロッド部121と大孔端部122を連結する大孔端連結部124は、大孔端部122と偏心軸114の摺動幅の中心位置Aが、ロッド部121の大孔端連結部124の軸中心位置Bより反軸受部119側となるように連結しているので、圧縮された冷媒ガス106の圧縮反力によって偏心軸114に対し大孔端部122が押圧する位置Bとその反力が作用する位置Aがずれていることによるモーメントが働く。このモーメントの方向はピストン112をクランクシャフト110に対して鋭角に傾けた状態で推進させる方向となるため、シリンダボア118内でピストン112を軸方向に円滑に往復運動させることが可能となり、ピストン112のこじりによる摺動損失を低減でき、摩耗を抑制することができる。従って、密閉型圧縮機の効率向上と信頼性向上を実現することができる。
また、小孔端部123とピストンピン120の摺動幅の中心位置Cとロッド部121の小孔端連結部125の軸中心位置Dが一致し、小孔端部123とピストンピン120の摺動幅の中心位置Cがシリンダボア118の軸中心E上にあり、大孔端連結部124と小孔端連結部125も軸受部119の中心軸に垂直な平面と同一平面上に配置した。これにより、小孔端部123とピストンピン120の摺動部や各連結部124,125ではモーメントが働かない。したがって、小孔端部123とピストンピン120との摺動部においてこじりが抑えられ、摺動損失を低減できると共に、摩耗を抑制することができ、密閉型圧縮機の効率を向上できると共に、信頼性を向上することができる。
また、シリンダボア118の位置を軸受部119側に近づけることができるため、圧縮機の高さを低くすることができる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態における密閉型圧縮機の縦断面図、図5は、同実施の形態における密閉型圧縮機の圧縮荷重が作用していないときの要部の縦断面図、図6は、同実施の形態における密閉型圧縮機の圧縮荷重が作用しているときの要部の縦断面図である。
この実施の形態2は、コンロッド213による偏芯軸214とピストン212との連結構成の他の例を示すもので、その他の構成は、実施の形態1と同様であるが、同一部分には200番台の同一番号を付記して説明していく。
図4および図5において、本実施の形態2における密閉型圧縮機は、鉄板の絞り成型によって形成された密閉容器201の内部に、電動要素202と、この電動要素202によって駆動される圧縮要素203を主体とする圧縮機本体204を配置している。この圧縮機本体204は、サスペンションスプリング205によって弾性的に支持されている。
さらに、密閉容器201内には、例えば、地球温暖化係数の低い炭化水素系のR600a等の冷媒ガス206が、冷凍装置(図示せず)の低圧側と同等圧力で、比較的低温の状態で封入されるとともに、密閉容器201内の底部には、潤滑用の潤滑油207が封入されている。
また、密閉容器201には、一端が密閉容器201内空間に連通するとともに、他端が冷凍装置(図示せず)に接続される吸入パイプ208と、圧縮要素203で圧縮された冷媒ガス206を冷凍装置(図示せず)へ導く吐出パイプ209とを備えている。
圧縮要素203は、クランクシャフト210、シリンダブロック211、ピストン212、コンロッド213等で構成されている。クランクシャフト210は、偏心軸214と主軸215と、潤滑油207に浸漬された主軸215の下端から偏心軸214の上端までを連通する給油機構216とを備え、給油機構216の途中は、主軸215表面に設けられた螺旋状の溝216a等によって構成されている。
シリンダブロック211には、圧縮室217を形成するシリンダボア218が一体に形成され、また、主軸215を回転自在に軸支する軸受部219を備えている。
ピストン212は、シリンダボア218内を往復運動すると共に、軸心が偏心軸214の軸心と平行となるようにピストンピン220が配設されている。
コンロッド213は、ロッド部221と大孔端部222と小孔端部223を有し、大孔端部222は偏心軸214に嵌挿され、小孔端部223はピストンピン220に嵌挿されている。これにより、偏心軸214とピストンピン220を連結している。
ここで、この実施の形態においては、上記ロッド部221と大孔端部222を連結する大孔端連結部224は、大孔端部222と偏心軸214の摺動幅の中心位置Fとロッド部221の大孔端連結部224の軸中心位置、すなわち偏心軸214に対する大孔端部222の押圧の中心位置Gとが一致するように連結されている。また、ロッド部221と小孔端部223を連結する小孔端連結部225は、小孔端部223とピストンピン220の摺動幅の中心位置Hとロッド部221の小孔端連結部225の軸中心位置、すなわちピストンピン220に対する小孔端部223の押圧の中心位置Iとが一致するように連結されている。そして、ロッド部221の大孔端連結部224の軸中心位置Gとロッド部221の小孔端連結部225の軸中心位置Iは軸受部219の中心軸に垂直な平面と同一平面上に配置するように構成されている。さらに、小孔端部223とピストンピン220の摺動幅の中心位置Hはシリンダボア218の軸中心Jより反軸受部219側となるように構成されている。
また、シリンダボア218の反クランクシャフト210側の開口部端面218aには、吸入孔226と吐出孔227を備えたバルブプレート228と、吸入孔226を開閉する吸入バルブ229と、バルブプレート228を塞ぐシリンダヘッド230が、ヘッドボルト(図示せず)によって共締めで固定されている。
シリンダヘッド230は、冷媒ガス206が吐出される吐出空間231を有し、吐出空間231は、吐出管232を介して、直接吐出パイプ209と連通している。
電動要素202は、シリンダブロック211の下方に、ボルト(図示せず)によって固定されたステータ233と、ステータ233の内側で、ステータ233と同軸上に配置され、かつ主軸215に焼き嵌め等で固定されたロータ234とで構成されている。
また、上記電動要素102は、外部のインバータ駆動回路(図示しない)に繋がり、複数の運転周波数でインバータ駆動される。
以上のように構成された密閉型圧縮機について、以下その動作、作用を説明する。
密閉型圧縮機は、その吸入パイプ208と吐出パイプ209が、周知の構成からなる冷凍装置(図示せず)に接続され、冷凍サイクルを構成している。
その構成において、電動要素202に通電されると、ステータ233に電流が流れ、磁界が発生し、主軸215に固定されたロータ234が回転する。その回転によりクランクシャフト210が回転し、偏心軸214に回転自在に取り付けられたコンロッド213を介して、ピストン212がシリンダボア218内を往復運動する。
そして、このピストン212の往復運動に伴い、圧縮室217内で冷媒ガス206の吸入、圧縮、吐出が行なわれる。
ここで、圧縮行程では、図6に示すように、ピストン212は圧縮室217内の圧縮された冷媒ガス206の圧縮反力を受ける。この圧縮反力は、コンロッド213を介して偏心軸214を下死点方向に押し付ける。これに伴い、主軸215が軸受部219とのクリアランスの範囲内で僅かに傾斜し、クランクシャフト210とシリンダボア218の成す角度が僅かに鋭角となる。
従来の構成においては、ピストン212はクランクシャフト210に対して、直角に進もうとするためシリンダボア218内で傾いたピストン212のこじりが発生することとなる。
しかしながら、本実施の形態では、小孔端部223とピストンピン220の摺動幅の中心位置Hがシリンダボア218の軸中心位置Jより反軸受部219側となるように構成したことにより、圧縮された冷媒ガス206の圧縮反力によってピストン212がピストンピン220を押圧する位置Jとその反力が作用する位置Hがずれるためこの部分でモーメントが働く。このモーメントの方向はピストン212をクランクシャフト210に対して鋭角に傾けた状態で推進させる方向となるため、シリンダボア218内でピストン212を軸方向に円滑に往復運動させることが可能となり、ピストン212のこじりによる摺動損失を低減できると共に、摩耗を抑制することができるので密閉型圧縮機の効率向上と、信頼性向上を実現することができる。
また、大孔端部222と偏心軸214の摺動幅の中心位置Fと、ロッド部221の大孔端連結部224の軸中心位置Gとが一致し、小孔端部223とピストンピン220の摺動幅の中心位置Hとロッド部221の小孔端連結部225の軸中心位置Iが一致するように連結されることで、大孔端部222、小孔端部223の各摺動部ではモーメントが働かずこじりが抑えられ、摺動損失を低減できると共に、摩耗を抑制することができる。よって密閉型圧縮機の効率を向上できると共に、信頼性を向上することができる。
また、シリンダボア218の位置を軸受部219側に近づけることができるため、圧縮機の高さを低くすることができる。
なお、図7や図8に示すように、ロッド部221が斜めに傾斜するように形成されたり、段違いに形成されたりして、大孔端連結部224と小孔端連結部225が、軸受部219の中心軸に垂直な平面と同一平面上にない形態であっても、大孔端部222と偏心軸214の摺動幅の中心位置Fがシリンダボア218の軸中心位置Jよりも反軸受部219側となる構成であれば同様の作用効果が得られる。
(実施の形態3)
図9は、実施の形態1または実施の形態2で説明した密閉型圧縮機を搭載した冷凍装置の模式図である。ここでは、冷凍装置として冷蔵庫の場合を例にして、その基本構成の概略について説明する。
図9において、冷凍装置300は、一面が開口した断熱性の箱体とその開口を開閉する扉体構成の本体301と、本体301の内部を、物品の貯蔵空間302と機械室303に区画する区画壁304と、貯蔵空間302内を冷却する冷媒回路305を具備している。
冷媒回路305は、実施の形態1または実施の形態2で説明した密閉型圧縮機306と、放熱器307と、減圧装置308と、吸熱器309を環状に配管接続した構成となっている。
そして、吸熱器309は、送風機(図示せず)を具備した貯蔵空間302内に配置されている。吸熱器309の冷却熱は、破線の矢印で示すように、送風機によって貯蔵空間302内を循環するように撹拌される。
以上説明した冷蔵庫は、本発明の実施の形態1または実施の形態2で説明した密閉型圧縮機306、すなわち、ピストンとシリンダボアとの摺動損失を低減すると共に、ピストンの摩耗を抑制して、効率と信頼性が向上した密閉型圧縮機を搭載したことにより、冷蔵庫の消費電力が低減でき、省エネルギー化を実現することができる。
また、本実施の形態1または実施の形態2における密閉型圧縮機は、高さを低くすることができるので、圧縮機を搭載するスペースを小さくすることができる、冷蔵庫の庫内容積の大容量化が図れる。
以上のように、本発明にかかる密閉型圧縮機および冷凍装置は、ピストンのこじりを抑制することで、摺動損失を低減し、摩耗による信頼性低下を抑えられ、密閉型圧縮機の効率と信頼性を向上することができるので、電気冷蔵庫、あるいはエアーコンディショナー等の家庭用に限らず、業務用ショーケース、自動販売機等の冷凍装置に広く適用することができる。
101、201 密閉容器
102、202 電動要素
103、203 圧縮要素
110、210 クランクシャフト
111、211 シリンダブロック
112、212 ピストン
113、213 コンロッド
114、214 偏心軸
115、215 主軸
117、217 圧縮室
118、218 シリンダボア
119、219 軸受部
120、220 ピストンピン
121、221 ロッド部
122、222 大孔端部
123、223 小孔端部
300 冷凍装置
305 冷媒回路
306 密閉型圧縮機
307 放熱器
308 減圧装置
309 吸熱器

Claims (6)

  1. 密閉容器内に、電動要素と、前記電動要素によって駆動される圧縮要素を収容し、
    前記圧縮要素は、主軸および偏心軸から構成されるクランクシャフトと、前記クランクシャフトの前記主軸を軸支する軸受部と円筒状に貫設されたシリンダボアとを有するシリンダブロックと、前記シリンダボア内で往復運動するピストンと、前記ピストンに軸心が前記偏心軸の軸心と平行となるように配設されたピストンピンと、大孔端部が前記偏心軸に嵌挿されるとともに他端の小孔端部が前記ピストンピンに嵌挿されて前記ピストンと偏芯軸部とを連結するコンロッドとを備え、
    前記コンロッドの大孔端部と前記偏心軸との摺動幅の中心位置(A、F)が、シリンダボアの軸中心位置(E、J)よりも反軸受部側となるように配置し
    ピストンピンに対する小孔端部の押圧の中心位置(D、I)と、前記小孔端部と前記ピストンピンとの摺動幅の中心位置(C、H)が一致する密閉型圧縮機。
  2. 大孔端部と偏心軸の摺動幅の中心位置(A、F)が、前記偏心軸に対する前記大孔端部の押圧の中心位置(B、G)よりも反軸受部側となるように配置した請求項1に記載の密閉型圧縮機。
  3. 大孔端部と偏心軸の摺動幅の中心位置(A、F)と、前記偏心軸に対する前記大孔端部の押圧の中心位置(B、G)が一致する請求項1に記載の密閉型圧縮機。
  4. 偏心軸に対する大孔端部の押圧の中心位置(B、G)とピストンピンに対する小孔端部の押圧の中心位置(D、I)が、軸受部の中心軸に垂直な平面と同一面上にある請求項1からのいずれか1項に記載の密閉型圧縮機。
  5. 小孔端部とピストンピンの摺動幅の中心位置(C、H)がシリンダボアの軸中心(E、J)上にある請求項1からのいずれか1項に記載の密閉型圧縮機。
  6. 密閉型圧縮機、放熱器、減圧装置及び吸熱器を配管によって環状に連結した冷媒回路を有し、前記密閉型圧縮機を、請求項1からのいずれか1項に記載の密閉型圧縮機とした冷凍装置。
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