以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態のナビゲーション装置の構成例および動作例を示す図である。ナビゲーション装置1は、ナビゲーション装置1とともに移動するユーザに対して音声などにより進路を案内する装置である。ナビゲーション装置1は、スマートフォン、タブレット端末などの情報処理端末でもよいし、車載用の専用のナビゲーション装置でもよい。
ナビゲーション装置1は、記憶部2および演算部3を有する。記憶部2は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性記憶装置でもよいし、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置でもよい。演算部3は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを含み得る。
記憶部2は、地図情報2aを記憶する。地図情報2aには、道路や、案内に使用するランドマークなどの情報が含まれる。また、記憶部2は、目的地の位置情報を記憶する。目的地の位置情報は、ユーザの操作により、記憶部2に登録される。
演算部3は、ユーザに進路を案内する情報として、第1の案内情報と第2の案内情報という2種類の案内情報を選択的に生成し、出力可能である。第1の案内情報は、現在位置を検出して得られた検出位置からの進行方向を、この検出位置からのランドマークの見え方を用いて案内する情報である。例えば、図1に示す案内情報11のように「ランドマークを右手に見ながら進んで下さい。」という案内文が用いられる。
第1の案内情報は、ユーザにとってわかりやすい反面、測位精度の低下により検出位置と実際の現在位置との間に大きな誤差が発生した場合に、ユーザが正しい方向を理解できず、本来の進行方向とは異なる方向へ進んでしまう可能性があるという問題がある。すなわち、第1の案内情報は、検出位置とランドマークとの位置関係に基づいて案内を行う情報である。このため、検出誤差により、検出位置とランドマークとの位置関係と、実際の現在位置とランドマークとの位置関係との差異が大きくなると、進行方向を正しく案内できない可能性が高くなってしまう。
これに対して、第2の案内情報は、ランドマークの位置からの進行方向を、この位置から出発したときのランドマークの見え方を用いて案内する情報である。例えば、図1に示す案内情報12のように「ランドマークから出発し、ランドマークを右後方に見ながら進んで下さい。」という案内文が用いられる。第2の案内情報によれば、検出位置が実際の現在位置からずれていたとしても、ユーザが現在位置からランドマークを視認できれば、そのランドマークの位置を起点としてどの方向へ進行すればよいかを、第1の案内情報より高い確率でユーザに正しく案内できる。
そこで、演算部3は、第1の案内情報を用いた場合に正しく案内できない可能性が高いかを判定し、その可能性が高いと判定した場合に、第1の案内情報の代わりに第2の案内情報を生成する。これにより、案内の間違いが発生する確率を低減する。
演算部3は、次のような手順で、第1の案内情報を用いた場合に正しく案内できない可能性が高いかを判定する。ここでは、判定方法について、図1の左側に示した地図の例を用いて説明する。
演算部3は、現在位置を検出した検出位置21を取得する。次に、演算部3は、地図情報2aに基づいて、検出位置21の周囲の道路上に複数の位置候補を設定する。位置候補は、検出位置21が間違っている場合に、正しい位置と推定される位置の候補を示す。図1の例では、道路41上に位置候補31,32が設定されている。
なお、位置候補の設定方法としては、例えば、検出位置21を含むように設定された所定の範囲の境界と道路とが交差する地点を位置候補に設定する方法がある。また、検出位置21の近傍に交差点が存在する場合には、その交差点を中心として等距離の道路上の地点を位置候補に設定する方法もある。
次に、演算部3は、地図情報2aに基づいて、位置候補31,32のそれぞれから目的地42までの経路を算出する。図1の例では、位置候補31から目的地42までの経路31aと、位置候補32から目的地42までの経路32aとが算出される。また、演算部3は、地図情報2aから、案内に使用するランドマーク43を抽出する。
演算部3は、位置候補31から経路31aの進行方向を向いたときのランドマーク43の方向と、位置候補32から経路32aの進行方向を向いたときのランドマーク43の方向を、それぞれ判定する。そして、演算部3は、それぞれの方向の判定結果を比較した比較結果に基づいて、第1の案内情報と第2の案内情報のどちらを選択するかを判定する。演算部3は、各位置候補について判定されたランドマーク43の方向に矛盾がない、すなわち、各方向が概ね一致すると判定される場合、第1の案内情報を選択する。
一方、演算部3は、各位置候補について判定されたランドマーク43の方向に矛盾がある、すなわち、判定された方向の中に他と異なる方向が含まれる場合には、第2の案内情報を選択する。ランドマーク43の方向に矛盾がある場合には、実際の現在位置が位置候補31の位置の場合と位置候補32の位置の場合とで、道路41に対してランドマーク43が見える方向が異なる可能性がある。このため、第1の案内情報を用いると案内の間違いが発生する確率が高いと推定される。そこで、第1の案内情報の代わりに第2の案内情報を用いた案内が行われることで、案内の間違いが発生する可能性を低減できる。
ここで、位置候補から対応する経路の進行方向を向いたときのランドマークの方向を、左前方、左後方、右後方、右前方の4つの方向区分で表すものとして、図1の例での判定処理について説明する。演算部3は、位置候補31から経路31aの方向を向いたときのランドマーク43の方向が“右前方”であると判定する。また、演算部3は、位置候補32から経路32aの方向を向いたときのランドマーク43の方向が“右後方”であると判定する。この場合、位置候補31,32からのランドマーク43の方向を示す方向区分が不一致であることから、演算部3は、案内情報11,12のうち案内情報12を選択する。
仮に、実際の現在の位置22が位置候補32の近傍であった場合、位置22からランドマーク43が見える方向は、道路41に対して左前方となる。この場合に案内情報11を用いた案内が行われると、位置22に存在するユーザは、どちらの方向に進行してよいか判断できなくなり、目的地42とは反対の方向に進行してしまう可能性がある。これに対し、案内情報12を用いた案内が行われることで、ユーザは位置22に存在したとしても、正しい方向に進むことができる。
[第2の実施の形態]
図2は、第2の実施の形態の移動端末のハードウェア例を示す図である。移動端末100は、移動端末100を有するユーザに対して音声案内する装置である。移動端末100は、スマートフォン、タブレット端末などの情報処理装置でもよいし、ナビゲーション機能を有する携帯電話機であってもよい。また、移動端末100は、車載用のナビゲーション専用の装置でもよい。
移動端末100は、プロセッサ101、RAM102、フラッシュメモリ103、通信部104、ディスプレイ105、入力デバイス106、GPS受信部107、スピーカ108および媒体読取部109を有する。各ユニットは移動端末100のバスに接続されている。
プロセッサ101は、移動端末100の情報処理を制御する。プロセッサ101は、例えばCPU、DSP、ASICまたはFPGAなどである。プロセッサ101は、マルチプロセッサであってもよい。プロセッサ101は、CPU、DSP、ASIC、FPGAなどの2以上の要素の組合せであってもよい。
RAM102は、移動端末100の主記憶装置である。RAM102は、プロセッサ101に実行させるOS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部を一時的に記憶する。また、RAM102は、プロセッサ101による処理に用いる各種データを記憶する。
フラッシュメモリ103は、移動端末100の補助記憶装置である。フラッシュメモリ103には、OSのプログラム、アプリケーションプログラムおよび各種データが格納される。
通信部104は、無線通信を行えるインタフェースである。通信部104は、アクセスポイントと通信することで、アクセスポイントが接続されたネットワークにアクセスできる。
ディスプレイ105は、プロセッサ101からの命令に従って、画像を出力する。例えば、ディスプレイ105は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどである。
入力デバイス106は、入力された信号をプロセッサ101に出力する。例えば、入力デバイス106は、ボタンおよびタッチパネルなどである。
GPS受信部107は、アンテナ107aによって受信されたGPS衛星からの信号(以下、“GPS信号”と記載する場合がある)に基づく情報をプロセッサ101に出力する。プロセッサ101は、GPS受信部107からの情報に基づいて、自装置の位置を検出することができる。例えば、自装置の現在位置は、緯度・経度などで表される。
スピーカ108は、プロセッサ101からの命令に従って、音声データを音声出力するデバイスである。
媒体読取部109は、プロセッサ101からの命令に従って、可搬型の記録媒体109aからプログラムやデータを読み取ったり、記録媒体109aに対してプログラムやデータを書き込んだりする。例えば、記録媒体109aは媒体読取部109に対して着脱可能なカード型の記録媒体(メモリカード)である。媒体読取部109は、記録媒体109aから読み取ったプログラムやデータをRAM102またはフラッシュメモリ103に格納する。媒体読取部109は、レーザ光などを利用して、光ディスクに記録されたプログラムやデータを読み取る駆動装置でもよい。この場合、記録媒体109aとして光ディスクを利用できる。光ディスクとしては、例えば、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などを使用できる。例えば、媒体読取部109は、例えば、プロセッサ101からの命令に従って、光ディスクから読み取ったプログラムやデータをRAM102またはフラッシュメモリ103(あるいは、HDDなどの他の記憶装置)に格納する。
ところで、一般に、GPS信号に基づいて検出された位置については数十メートル程度の検出誤差が発生し得ることが知られている。このため、GPS信号に基づいて位置を検出する場合には、例えば、現在受信したGPS信号に基づいて検出された位置を、過去に複数回受信したGPS信号に基づいて補正するといった、検出誤差を低減するための処理が行われることが多い。
しかしながら、このような処理を行ったとしても、例えば、地下や建物の中、トンネルなどのGPS信号を受信できない場所から、GPS信号を受信できる場所に移動した直後では、その時点で受信したGPS信号だけを用いて位置を検出せざるを得ない。このため、このような状況では位置の検出誤差をうまく低減できない。また、例えば、ビルの谷間などのGPS信号の受信強度が弱い場所から、受信強度が強い場所に移動した直後や、地下駐車場から出発した直後でも、同様の理由で位置の検出誤差を低減できない。すなわち、GPS信号を十分な回数だけ連続して受信できる状況以外の状況では、測位精度が低下する可能性がある。
ここで、上記のような測位精度が低下した状況での音声案内についての比較例を図3,4に示す。
図3は、ランドマークを用いた音声案内の比較例(その1)を示す図である。図4は、ランドマークを用いた音声案内の比較例(その2)を示す図である。図3,4では、移動端末が検出したユーザの位置とランドマークとの関係に基づいて音声案内をする場合について説明する。図3,4では、ユーザが地下鉄の出口から地上に出てきた直後に移動端末から音声案内を受ける場合を想定している。また、目的地は、ユーザの操作により、移動端末に登録されているものとする。
図3は、地下鉄の出口付近に交差点がある場合を示している。地図500には、道路、ランドマーク504、地下鉄出口505、目的地506が示されている。また、GPS信号に基づいてユーザの検出位置502が検出されたが、実際にはユーザは位置501にいるものとする。
この状況では、移動端末は、検出位置502から目的地506への経路503を算出し、算出した経路503に沿って進むようにユーザに案内する。検出位置502からの経路503に沿ってランドマーク504が存在することから、移動端末は、検出位置502から経路503の方向を向いたときのランドマーク504の見え方を用いて、音声案内を行う。例えば、移動端末は、「ランドマーク504を左手に見ながら直進してください。」と案内する。しかし、実際には、位置501にいるユーザは、ランドマーク504が道路の右側に見えているため、どちらの方向に進めばよいのか判断できなくなる。
図4は、地下鉄の出口付近に交差点がない場合を示している。地図510には、道路、ランドマーク513、地下鉄出口514、目的地515が示されている。また、GPS信号に基づいてユーザの検出位置512が検出されたが、実際にはユーザは位置511にいるものとする。
この状況では、移動端末は、検出位置512から目的地515への経路516を算出し、算出した経路516に沿って進むようにユーザに案内する。検出位置512からの経路516に沿ってランドマーク513が存在することから、移動端末は、検出位置512から経路516の方向を向いたときのランドマーク513の見え方を用いて、音声案内を行う。例えば、移動端末は、「ランドマーク513を左手に見ながら進んでください。」と案内する。しかし、実際には位置511にいるユーザは、ランドマーク513が道路の右側に見えるため、どちらの方向に進めばよいのか判断できなくなる。
そこで、第2の実施の形態では、移動端末100が、複数の位置候補を地図情報に設定し、各位置候補からのランドマークの見え方が矛盾するか否かを判定する。そして、移動端末100は、矛盾すると判定した場合に、現在位置ではなくランドマークを起点としたランドマークの見え方を用いて音声案内を行う。これにより、測位誤差により誤った案内が行われる確率を低減する。さらに、移動端末100は、案内に使用するランドマークを、各位置候補から目的地への経路が重複する重複経路から抽出する。これにより、正しい案内が行われるようにランドマークの選択を適正化する。
図5は、移動端末の機能例を示す図である。移動端末100は、記憶部110、位置検出部120、位置候補設定部130、経路算出部140、ランドマーク抽出部150、見え方特定部160、矛盾判定部170および案内情報生成部180を有する。位置検出部120、位置候補設定部130、経路算出部140、ランドマーク抽出部150、見え方特定部160、矛盾判定部170および案内情報生成部180は、互いに通信可能である。
記憶部110は、例えば、RAM102またはフラッシュメモリ103に確保した記憶領域として実装される。位置検出部120、位置候補設定部130、経路算出部140、ランドマーク抽出部150、見え方特定部160、矛盾判定部170および案内情報生成部180は、例えば、プロセッサ101が実行するプログラムのモジュールとして実装される。
記憶部110は、地図データベース111およびガイダンステーブル112を記憶する。地図データベース111には、道路、交差点、ランドマークなどの情報が含まれている。ガイダンステーブル112には、音声案内のテンプレートが登録されている。
位置検出部120は、受信されたGPS信号に基づいてユーザの位置を検出する。なお、移動端末100は、例えば、加速度センサを備えていてもよい。この場合、位置検出部120は、GPS信号と、加速度センサによる検出結果とに基づいて、ユーザの位置を検出してもよい。
位置候補設定部130は、地図データベース111を参照し、位置検出部120によるユーザの検出位置の周囲の道路上に複数の位置候補を設定する。位置候補の設定方法については、後述する。
経路算出部140は、地図データベース111を参照し、各位置候補から目的地までの経路を算出する。具体的には、経路算出部140は、1つの位置候補を選択し、選択した位置候補と目的地との両地点を結ぶ経路を算出する。この際、経路算出部140は、経路上の道路の接続状況や位置候補から目的地までの距離などを考慮して最適な経路を算出する。
ランドマーク抽出部150は、経路算出部140によって算出された複数の経路が重複する重複経路を特定し、重複経路に沿って存在するランドマークを地図データベース111から抽出する。
見え方特定部160は、各位置候補から進行方向に向かってランドマークがどの方向に見えるかを特定する。見え方特定部160は、進行方向を基準とした方向を右前方、左前方、右後方、左後方の4つの方向区分に区分し、位置候補それぞれについて、ランドマークの方向がどの方向区分に属するかを判定する。方向の特定方法については、後述する。
矛盾判定部170は、各位置候補からのランドマークの見え方が異なっているか否かを判定する。具体的には、矛盾判定部170は、各位置候補について判定された方向区分が1つでもその他と異なる場合、ランドマークの見え方が異なっていると判定する。
案内情報生成部180は、ガイダンステーブル112を参照して、矛盾判定部170の判定結果に基づいて、2種類の案内方法のどちらを用いるかを選択する。案内情報生成部180は、ランドマークと上記の重複経路との位置関係に基づいて、選択した案内方法を用いた案内情報を生成する。また、移動端末100は、生成した案内情報を音声再生用のアプリケーションを用いて再生して、スピーカ108から音声出力する。
図6は、ランドマークデータベースの例を示す図である。ランドマークデータベース111aは、音声案内に利用するランドマークに関する情報が登録されたデータベースであり、地図データベース111に含まれている。ランドマークデータベース111aは、ランドマーク名、リンク方向、見え方の項目を含む。
ランドマーク名の項目には、ランドマークの名称が登録される。リンク方向の項目には、ランドマークが沿っている道路区間についての始点と終点の各位置を示す位置情報が登録される。見え方の項目には、道路区間において始点から終点の方向を基準としたときのランドマークの方向を示す情報が登録される。見え方の項目には、“右”または“左”が登録される。
例えば、ランドマークデータベース111aには、図6に示すように、ランドマーク名“LM1”、リンク方向“YS1→YE1”、見え方“左”という情報が登録される。これは、地点YS1から地点YE1までの道路区間に沿って、道路の左側にランドマーク“LM1”が存在することを示している。
ランドマークデータベース111aは、ランドマーク抽出部150により、目的地までの経路に沿って存在するランドマークを抽出するために参照される。また、ランドマークデータベース111aは、案内情報生成部180が案内情報を生成する際に、進行方向に対してランドマークが見える方向を判定するために参照される。
なお、ランドマーク抽出部150は、経路の方向がランドマークデータベース111aに登録されたリンク方向とは逆向きの場合であっても、ランドマークデータベース111aからその経路に沿ったランドマークを抽出することができる。また、案内情報生成部180は、進行方向がランドマークデータベース111aに登録されたリンク方向とは逆向きの場合であっても、ランドマークデータベース111aからランドマークが見える方向を判定することができる。例えば、図6の例において、経路上の地点“YE1”から“YS1”までの道路区間が含まれる場合、その道路区間に存在するランドマーク“LM1”が進行方向に向かって右側に見えると判断することができる。
ところで、地図データベース111においては、音声案内を出力する案内地点が道路上にあらかじめ設定されている。ランドマークデータベース111aのリンク方向の項目に登録された始点および終点は、案内地点の一つである。例えば、図6の例において、地点“YS1”は案内地点の一つであり、現在位置が地点“YS1”に達したとき、移動端末100は、「“LM1”を左手に見ながら直進です。」といった案内情報を出力することができる。
また、案内地点としては、他に例えば、道路上の交差点が地図データベース111に登録される。例えば、移動端末100は、案内地点として登録された交差点に近づいたとき、「次の交差点を左折してください。」といった案内情報を出力することができる。
図7は、ガイダンステーブルの例を示す図である。ガイダンステーブル112は、記憶部110に格納される。ガイダンステーブル112は、種別、テンプレートの項目を含む。種別の項目には、案内方法の種別が登録される。案内方法の種別には、“第1の案内方法”と“第2の案内方法”の2種類がある。テンプレートの項目には、対応する案内方法による案内文のテンプレートを示す情報が登録される。
例えば、第1の案内方法に対応するテンプレートには、“X1をX2手に見ながらX3です。”という案内文が登録される。また、第2の案内方法に対応するテンプレートには、“X1から出発し、X1をX4に見ながら進んで下さい。”という情報が登録される。各テンプレートにおいて、X1には、ランドマークの名称が設定される。X2には、ランドマークの見え方が設定される。例えば、X2には、左または右が設定される。X3には、直進、左折、右折の何れかが設定される。X4には、ランドマークの見え方に“後方”という文字を付加した内容が設定される。例えば、X4には、左後方または右後方が設定される。
次に、位置候補設定部130による位置候補の設定方法の例について、図8〜10で説明する。なお、図8〜10のYは、位置検出部120が検出したユーザの位置(以下、検出位置Y)である。また、Zは、目的地を示している。位置候補設定部130は、例えば、図8〜10の何れかの方法により位置候補を地図上に設定する。
図8は、位置候補の第1の設定方法を示す図である。位置候補設定部130は、検出位置Yを中心とした半径dの円内に存在する交差点の中から、検出位置Yから最も近い交差点201を特定する。半径dの値は、例えば、GPS信号に基づく一般的な測位誤差の値であり、例えば、十〜数十メートルに設定される。この場合、検出位置Yを中心とした半径dの円を、GPSの検出誤差範囲と考えることができる。位置候補設定部130は、交差点201で交差する道路202,203上に、交差点201から距離F(Fは正の数、単位はメートルである。)離れた点211,212,213,214を位置候補とする。また、例えば、Fの長さは、d≦Fとなるようにしてもよい。
図9は、位置候補の第2の設定方法を示す図である。位置候補設定部130は、検出位置Yを中心とした半径dの円と、この円に含まれる道路221,222とが交差する点231,232,233,234を位置候補とする。
図10は、位置候補の第3の設定方法を示す図である。位置候補設定部130は、検出位置Yと目的地Zとの距離Rを算出する。位置候補設定部130は、目的地Zを中心とした半径(R+d)の円と、この円に含まれる道路241,242とが交差する点251,252,253,254を位置候補とする。次に、位置候補設定部130は、目的地Zを中心とした半径(R−d)の円と道路241,242とが交差する点255,256,257,258を位置候補とする。
位置候補設定部130は、以上の第1〜第3の設定方法の何れかを用いることで、検出位置Yが間違っていた場合にユーザが実際に位置すると推定される複数の位置候補を高精度に設定することができる。
なお、位置候補についての上記の第1〜第3の設定方法については、優先順位を設けてもよい。例えば、位置候補設定部130は、検出位置Yを中心とした半径dの円内に交差点が存在する場合には第1の設定方法を優先的に行い、検出位置Yを中心とした半径dの円内に交差点が存在しない場合には第2の設定方法を行うようにしてもよい。また、第2の設定方法と第3の設定方法の場合、位置候補設定部130は、第2の設定方法を優先的に行うようにしてもよい。優先順位を設けるのは、位置候補の設定方法によって、位置候補設定部130が行う処理量が異なるからである。そのため、位置候補の設定方法に優先順位を設けることで、位置候補設定部130が行う処理量を少なくすることができる。また、ユーザがどの設定方法で位置候補を設定するかを予め移動端末100に設定できるようにしてもよい。
また、位置候補設定部130は、上記の方法で特定された位置候補の中から、実際のユーザの位置の候補として適格性を欠くものを除外してもよい。一例として、経路算出部140により各位置候補の経路が算出された後に、位置候補として適格性を欠く位置候補が除外されてもよい。例えば、第3の設定方法の場合、まず、経路算出部140は、検出位置Yから目的地Zまでの経路と重複しない経路が算出された位置候補を特定する。具体的には、点251,255以外の経路は検出位置Yから目的地Zまでの経路と重複する箇所があるのに対し、点251,255の経路は検出位置Yから目的地Zまでの経路と重複する箇所がない。そのため、経路算出部140は、点251,255を特定する。そして、経路算出部140は、点251,255を位置候補から除外する。
また、目的地Zから見て検出位置Yの方向とは逆方向に存在する位置候補は、位置候補として適切ではないと考えられるので、そのような位置候補を次のような方法によって選択して除外してもよい。例えば、図10の場合、道路242上の点251,255は、目的地Zから見て、道路242が検出位置Yと最も近接する位置の方向とは逆方向の位置にある。このため、位置候補設定部130は、点251,255を位置候補から除外する。
第1,2の設定方法でも同様の方法で適格性を欠く位置候補を除外することができる。また、除外される位置候補は、位置候補としての適格性を欠くため、位置候補から除外しても後の処理に影響を与えない。そして、適格性を欠く位置候補を除外することで、位置候補の数が減るため、案内情報を生成するまでの処理量を軽減することができる。
次に、ランドマーク抽出部150によるランドマークの抽出方法の例について説明する。
図11は、ランドマークの抽出方法の例を示す図である。図11では、位置候補設定部130により、地図上に位置候補271〜274が設定されたとする。また、経路算出部140により、位置候補271〜274のそれぞれから目的地261までの経路281〜284が算出されたとする。
ランドマーク抽出部150は、算出された経路281〜284のすべてが重複する重複経路に沿った位置のランドマーク262を、案内に利用するランドマークとして特定する。具体的には、ランドマーク抽出部150は、ランドマークデータベース111aを参照し、重複経路上の案内地点で、かつランドマークが対応付けられた案内地点のうち、重複経路の始点から最初に現れる案内地点を特定する。ランドマーク抽出部150は、特定した案内地点に対応付けられたランドマーク262を、案内に使用するランドマークとして抽出する。以下、抽出されたランドマークを“案内用ランドマーク”と記載する場合がある。
前述の第2の案内方法では、案内用ランドマークの位置を起点としてどの方向に進むのかがユーザに案内される。案内用ランドマークの“位置”とは、案内用ランドマークが接している道路上の地点を意味する。第2の案内方法は、ユーザがその地点まで来たと仮定したときに、道路に対する案内用ランドマークの方向を示すことでユーザの進行方向を案内するものである。
図11に示した方法によれば、案内用ランドマークとして抽出されたランドマーク262から目的地261への経路はどの位置候補271〜274についても共通する。このため、ランドマーク262を起点としたときの道路に対するランドマーク262の方向が一意に決定される。図11の例の場合、ランドマーク262を起点としたとき、目的地261への方向に対してランドマーク262は道路の左側に位置する。この場合、「“ランドマーク262”から出発し、“ランドマーク262”を左後方に見ながら進んで下さい。」と案内することで、ユーザがどの位置候補271〜274にいたとしても間違いのない案内を行うことができる。
さらに、図11に示した方法によれば、どの位置候補271〜274から見ても目的地261に向かう方向に案内用ランドマークが設定される。このため、ユーザが案内用ランドマークの位置まで移動した場合に、ユーザは目的地261に近づくことになる。したがって、自然で無理のない案内を行うことができる。
次に、見え方特定部160によってランドマークの見え方を算出する方法の例について説明する。見え方特定部160は、各位置候補から対応する経路の方向を見たときにランドマークが見える方向を、次のような計算方法によって算出する。
図12は、ランドマークに対する見え方を算出する方法を示す図である。図12の例では、経路算出部140により、位置候補P41から目的地への経路291が算出されたとする。見え方特定部160は、位置候補P41を起点として経路291に沿って所定の微少距離だけ進んだ位置に位置P42を設定する。位置候補P41の座標をYS、位置P42の座標をYE、ランドマークの位置P43の座標をLMとすると、見え方特定部160は、ランドマークが見える方向を示す角度θを次の式(1)を用いて算出する。
見え方特定部160は、算出された角度θが示すランドマークの方向が4つの方向区分のどれに該当するかを判定する。方向区分は、左前方、左後方、右後方、右前方に区分される。例えば、角度θが0°以上90°未満の場合、左前方に該当すると判定される。角度θが90°以上180°未満の場合、左後方に該当すると判定される。角度θが180°以上270°未満の場合、右後方に該当すると判定される。角度θが270°以上360°未満の場合、右前方に該当すると判定される。
矛盾判定部170は、すべての位置候補について上記の方法で角度θを求め、ランドマークの方向がどの方向区分に該当するかを判定する。案内情報生成部180は、すべての位置候補についてランドマークの方向が同じ方向区分に該当する場合には、各位置候補からのランドマークの見え方に矛盾がないと判定して、第1の案内方法を用いて案内を行う。また、案内情報生成部180は、少なくとも、位置候補の1つについてのランドマークの方向と、他の位置候補についてのランドマークの方向とが異なる方向区分に該当する場合には、各位置候補からのランドマークの見え方に矛盾があると判定して、第2の案内方法を用いて案内を行う。
次に、移動端末100による案内情報生成処理の手順について、フローチャートを用いて説明する。
図13は、案内情報生成処理の例を示すフローチャートである。以下、図13に示す処理をステップ番号に沿って説明する。また、目的地の情報は、ユーザの操作により記憶部110に登録されているものとする。
(S11)位置検出部120は、移動端末100の現在位置を検出する。
(S12)位置検出部120は、記憶部110から目的地の情報を取得する。位置検出部120は、位置候補設定部130に位置候補を設定するように指示をする。
(S13)位置候補設定部130は、図8〜10の位置候補の第1,2,3の設定方法の何れかを用いて、位置候補を地図上に設定する。位置候補設定部130は、経路算出部140に各位置候補から目的地までの経路を算出するように指示をする。
(S14)経路算出部140は、地図データベース111に基づいて、設定された各位置候補から目的地までの経路を算出する。経路算出部140は、ランドマーク抽出部150にランドマークを特定するように指示をする。
(S15)ランドマーク抽出部150は、算出された各経路が重複する重複経路上に設定された、ランドマークが対応付けられた案内地点のうち、重複経路の始点から最初に現れる案内地点を特定する。ランドマーク抽出部150は、特定した案内地点に対応付けられたランドマークを、案内用ランドマークとして抽出する。
次に、矛盾判定部170による案内用ランドマークの見え方の矛盾判定処理が開始される。矛盾判定処理では、ステップS16〜S19の判定処理が行われる。
(S16)矛盾判定部170は、地図データベース111を参照して、位置候補ごとに、位置候補と対応する経路上に最初に現れる案内地点を特定する。特定の対象となる案内地点には、交差点と、ランドマークが対応付けられた案内地点とが含まれる。
(S17)矛盾判定部170は、位置候補ごとにステップS16で特定された案内地点が全て同じかを判定する。案内地点が全て同じ場合、処理をステップS18に進める。案内地点が1つでもその他と異なる場合、処理をステップS20に進める。
(S18)矛盾判定部170は、各位置候補からの経路において、ステップS16で特定された案内地点での進行方向が同じかを判定する。すべての進行方向が同じである場合、処理をステップS19に進める。進行方向が1つでもその他と異なる場合、処理をステップS20に進める。
なお、ステップS16で案内地点として交差点が特定された場合、ステップS18では“Yes”と判定される場合と“No”と判定される場合とがある。例えば、案内地点が交差点である場合に案内地点での進行方向が同じであることは、その交差点に対する進入経路が同じであることを意味する。
(S19)矛盾判定部170は、見え方特定部160に各位置候補からの案内用ランドマークの見え方を特定するように指示する。見え方特定部160は、図12で示した方法により、位置候補ごとに案内用ランドマークの見え方、すなわち、ランドマークの方向がどの方向区分に該当するかを特定する。
矛盾判定部170は、案内用ランドマークの各位置候補からの見え方が同じであるか否かを判定する。矛盾判定部170は、特定されたランドマークの方向が全て同じ方向区分に該当する場合、見え方が同じと判定し、処理をステップS21に進める。矛盾判定部170は、少なくとも、特定されたランドマークの方向のうち、1つの方向と他の1つの方向とが異なる方向区分に該当する場合、見え方が異なると判定し、処理をステップS20に進める。
(S20)案内情報生成部180は、ガイダンステーブル112に登録された第2の案内方法に対応するテンプレートを用いて、案内情報を生成する。案内情報生成部180は、案内用ランドマークの名称をテンプレートのX1に代入する。また、案内情報生成部180は、ランドマークデータベース111aから案内用ランドマークに対応するリンク方向と見え方の各情報を取得する。ランドマーク抽出部150による上記の案内用ランドマークの抽出方法により、案内用ランドマーク付近での各位置候補からの経路はすべて同じ方向を向いている。このため、案内情報生成部180は、案内用ランドマーク付近での経路の方向と、ランドマークデータベース111aから取得した上記情報とに基づいて、案内用ランドマーク付近の経路から案内用ランドマークが右側と左側のどちらに位置するかを判定する。案内情報生成部180は、判定結果が右側の場合、テンプレートのX4に“右後方”を代入し、判定結果が左側の場合、テンプレートのX4に“左後方”を代入する。
(S21)案内情報生成部180は、ガイダンステーブル112に登録された第1の案内方法に対応するテンプレートを用いて、案内情報を生成する。案内情報生成部180は、案内用ランドマークの名称をテンプレートのX1に代入し、ステップS19で特定した各位置候補からの案内用ランドマークの見え方をX2に代入する。X2には、案内用ランドマークの見え方を示す方向区分が右前方または右後方の場合、“右”が代入され、方向区分が左前方または左後方の場合、“左”が代入される。
(S22)移動端末100は、ステップS20またはステップS21で生成された案内情報を音声再生用のアプリケーションを用いて再生して、スピーカ108から音声出力する。
以上の処理によれば、各位置候補から対応する経路の方向を向いたときの案内用ランドマークの見え方が同じである場合には、第1の案内方法による音声案内、すなわち、現在位置からの案内用ランドマークの見え方を用いた音声案内が行われる。一方、各位置候補から対応する経路の方向を向いたときの案内用ランドマークの見え方が異なる場合には、第1の案内方法を用いると間違った案内が行われる可能性が高いと判断される。このため、この場合には第2の案内方法による音声案内、すなわち、案内用ランドマークを起点とした案内用ランドマークの見え方を用いた音声案内が行われる。これにより、間違った案内が行われる確率を低減することができる。
なお、図13の処理では、ステップS17,S18の処理が行われずにステップS19の処理が行われてもよい。ただし、ステップS19の処理の前にステップS17,S18の少なくとも一方の判定処理が行われることで、移動端末100の処理負荷を低減し、音声案内が行われるまでの処理を高速化できる。すなわち、ステップS17,S18の処理は、各位置候補からの案内用ランドマークの見え方が矛盾するか否かを、ステップS19より簡単な処理によって推定するものである。ステップS17,S18の何れかで“No”と判定された場合、移動端末100はステップS19の処理を行わずに第2の案内方法で案内情報を作成する。これにより、移動端末100の処理負荷が低減される。
また、ステップS17,S18の少なくとも一方に代えて、矛盾判定部170は、検出誤差範囲内に交差点が存在するか否かを判定してもよい。検出誤差範囲とは、例えば、図9に示した円、または、図10に示した外円と内円との間の領域である。検出誤差範囲に交差点が存在する場合、この交差点から異なる方向に延びる道路上に位置候補が設定される可能性が高い。このような位置候補から当該交差点に向かう方向は異なる方向となるため、各位置候補からの案内用ランドマークの見え方が異なる可能性が高いと推定される。したがって、検出誤差範囲内に交差点が存在しない場合には、処理をステップS19に進める。
次に、図14,15を用いて、案内情報生成処理の具体例について説明する。図14,15では、ユーザが地下鉄の出口(図示を省略)から地上に出てきた直後に移動端末100から音声案内を受ける場合を想定する。また、目的地は、ユーザの操作により、移動端末100に登録されているものとする。
図14は、案内情報生成処理の第1の具体例を示す図である。図14は、交差点付近に位置検出部120がユーザの位置を検出した場合を示している。位置301は、実際にユーザが存在する位置であり、検出位置302は、位置検出部120が検出した位置である。
位置候補設定部130は、例えば、図9の位置候補の第2の設定方法を用いて、地図上に位置候補311〜314を設定する。位置候補311〜314は、検出位置302を中心とした半径dの円と道路が交差した点である。
経路算出部140は、位置候補311から目的地303までの経路311aを算出する。経路算出部140は、位置候補312から目的地303までの経路312aを算出する。経路算出部140は、位置候補313から目的地303までの経路313aを算出する。経路算出部140は、位置候補314から目的地303までの経路314aを算出する。
ランドマーク抽出部150は、経路311a〜314aが重複する重複経路上に存在する、ランドマークが対応付けられた案内地点の中から、重複経路の始点に最も近い案内地点をランドマークデータベース111aから抽出する。ランドマーク抽出部150は、抽出した案内地点に対応付けられたランドマーク304を案内用ランドマークとする。
見え方特定部160は、位置候補311〜314のそれぞれから対応する経路311a〜314aの進路方向を向いたときのランドマーク304の方向を、計算により算出する。この算出処理は、図13のステップS19に対応する。図14の例では、位置候補311,313,314のそれぞれから見たランドマーク304の方向は左前方であるが、位置候補312から見たランドマーク304の方向は右前方となり、ステップS19では“No”と判定される。したがって、第1の案内方法を用いると誤った案内が行われる可能性があり、第2の案内方法を用いて案内情報を生成するべきと判定される。
なお、例えば、位置候補312〜314の経路312a〜314aが交差する交差点が、経路312a〜314aのそれぞれにおいて最初に現れる案内地点である場合には、図13のステップS19の実行前にステップS18で“No”と判定される。したがって、ステップS19の計算処理が行われず、低い処理負荷により、第2の案内方法を用いて案内情報を生成するべきと判定される。
案内情報生成部180は、ガイダンステーブル112に登録された第2の案内方法に対応するテンプレートを用いて、案内情報を生成する。ここで、ランドマークデータベース111aにおけるランドマーク304が登録されたレコードと、ランドマーク304の近傍における経路311a〜314aの向きとから、案内情報生成部180は、ランドマーク304が経路の左側に位置すると判定する。ランドマーク304の名称を“店LM11”とすると、案内情報生成部180は、テンプレートのX1に“店LM11”、X4に“左後方”と代入する。これにより、移動端末100は、スピーカ108から「店LM11から出発し、店LM11を左後方に見ながら進んで下さい。」という案内を音声出力する。
図15は、案内情報生成処理の第2の具体例を示す図である。図15は、地下鉄の出口付近に交差点がない場合を示している。位置321は、実際にユーザが存在する位置であり、検出位置322は、位置検出部120が検出した位置である。
位置候補設定部130は、例えば、図9の位置候補の第2の設定方法を用いて、地図上に位置候補331,332を設定する。位置候補331,332は、検出位置322を中心とした半径dの円と道路が交差した点である。経路算出部140は、位置候補331から目的地323までの経路331aを算出する。また、経路算出部140は、位置候補332から目的地323までの経路332aを算出する。
ランドマーク抽出部150は、経路331a,332aが重複する重複経路上に存在する、ランドマークが対応付けられた案内地点の中から、重複経路の始点に最も近い案内地点をランドマークデータベース111aから抽出する。ランドマーク抽出部150は、抽出した案内地点に対応付けられたランドマーク324を案内用ランドマークとする。
見え方特定部160は、位置候補331,332のそれぞれから対応する経路331a,332aの進路方向を向いたときのランドマーク324の方向を、計算により算出する。この算出処理は、図13のステップS19に対応する。図15の例では、位置候補331,332のそれぞれから見たランドマーク324の方向はいずれも左前方となり、ステップS19では“Yes”と判定される。したがって、第1の案内方法を用いることが可能と判定される。
案内情報生成部180は、ガイダンステーブル112に登録された第1の案内方法に対応するテンプレートを用いて、案内情報を生成する。位置候補331,332のそれぞれから見たランドマーク324の方向はいずれも左前方となっていることから、案内情報生成部180は、ランドマーク324が経路の左側に位置すると判定する。ランドマーク324の名称を“店LM12”とすると、案内情報生成部180は、テンプレートのX1に“店LM12”、X2に“左”、X3に“直進”と代入する。これにより、移動端末100は、スピーカ108から「店LM12を左手に見ながら直進です。」という案内を音声出力する。
図15のように直線の道路上に位置候補が設定されたケースでは、案内用ランドマークは位置候補の間ではなく、各位置候補からの経路が重複する重複経路に沿ったものの中から抽出される。これにより、どの位置候補から目的地方向を見ても道路に対して同じ方向にあるランドマークが案内に使用されるようになり、第1の案内方法を用いても正しい案内をすることが可能になる。第2の案内方法と比較して第1の案内方法の方がユーザにわかりやすいため、上記のように案内用ランドマークが抽出されることで、ユーザにわかりやすく、かつ正しい案内を行うことが可能になる。
以上の第2の実施の形態によれば、図3,4の例のように、どちらの方向に進んでよいのか判断できなくなるケースや、その結果、ユーザが間違った方向に移動してしまうケースが発生する可能性を低減できる。
なお、上記の第2の実施の形態において、ランドマーク抽出部150は、各位置候補からの経路が重複する重複経路に沿った位置にあるランドマークを案内用ランドマークとして抽出した。しかし、案内用ランドマークの抽出方法は上記方法に限らない。
例えば、ランドマーク抽出部150は、各位置候補から目的地までの経路のうちの少なくとも1つに沿った位置にあるランドマークを、案内用ランドマークとして抽出してもよい。この場合の処理手順の一例としては、ランドマーク抽出部150は、各位置候補からの経路における、ランドマークが対応付けられた案内地点のうち、最初に現れる案内地点を特定する。ランドマーク抽出部150は、特定された案内地点から、位置検出部120による検出位置に最も近い案内地点を選択し、選択した案内地点に対応するランドマークを案内用ランドマークとして抽出する。
この場合、ガイダンステーブル112のテンプレートにおけるX3またはX4に代入される文言は、例えば次のように決定される。案内情報生成部180は、各位置候補からの経路のうち、案内用ランドマークの抽出に用いられた経路を選択し、選択した経路における案内用ランドマークに近接する区間の進行方向に対する案内用ランドマークの方向が右か左かを判定する。案内情報生成部180は、この判定結果に基づいてX3またはX4に代入する文言を決定する。
また、ランドマーク抽出部150は、各位置候補からの経路に関係なく案内用ランドマークを抽出してもよい。この場合の処理手順の一例としては、ランドマーク抽出部150は、ランドマークが対応付けられた案内地点のうち、位置検出部120による検出位置に最も近いランドマークを案内用ランドマークとして抽出する。
この場合、ガイダンステーブル112のテンプレートにおけるX3またはX4に代入される文言は、例えば次のように決定される。経路算出部140は、抽出された案内用ランドマークに対応する案内地点から目的地までの経路を算出する。案内情報生成部180は、当該案内地点から、算出された経路の方向を向いたときに、案内用ランドマークの方向が右か左かを判定する。案内情報生成部180は、この判定結果に基づいてX3またはX4に代入する文言を決定する。
さらに、ランドマーク抽出部150は、位置候補からの経路ではなく、位置検出部120による検出位置から目的地までの経路に基づいて、案内用ランドマークを抽出してもよい。以下、この場合の処理例を、第2の実施の形態についての第1の変形例として説明する。
[第1の変形例]
図16は、第1の変形例における案内情報生成処理の例を示すフローチャートである。以下、図16に示す処理をステップ番号に沿って説明する。なお、図16では、図13と同じ処理が行われる処理ステップには同じステップ番号を付して示し、それらの説明を省略する。
図9のステップS11〜S13の処理が実行された後、次のステップS14aが実行される。
(S14a)経路算出部140は、ステップS14と同様の手順により、設定された各位置候補から目的地までの経路を算出する。これに加え、経路算出部140は、地図データベース111に基づいて、ステップS11で位置検出部120によって検出されたユーザの検出位置から目的地までの経路を算出する。
(S15a)ランドマーク抽出部150は、ランドマークデータベース111aを参照し、検出位置からの経路上に設定された、ランドマークが対応付けられた案内地点のうち、最初に現れる案内地点を特定する。ランドマーク抽出部150は、特定した案内地点に対応付けられたランドマークを、案内用ランドマークとして抽出する。
上記のステップS15aの実行後、ステップS16以降の処理が実行される。また、ステップS19では、ステップS15aで特定された案内用ランドマークを用いて処理が行われる。
また、ステップS17,S18の何れかで“No”と判定された場合、図13のステップS20の代わりにステップS20aが実行される。
(S20a)案内情報生成部180は、ランドマーク抽出部150に対して案内用ランドマークを抽出し直すように依頼する。ランドマーク抽出部150は、依頼に応じて、図13のステップS15と同様の手順で、各位置候補からの経路が重複する重複経路に沿って位置する案内用ランドマークを抽出する。案内情報生成部180は、再抽出された案内用ランドマークに対応するランドマークデータベース111aのレコードを参照して、図13のステップS20と同様の手順で第2の案内方法を用いて案内情報を生成する。
ここで、ステップS20aでは、ステップS15aで抽出された案内用ランドマークをそのまま用いて案内情報が生成されてもよい。この場合、ステップS20aでは、ステップS15aで抽出された案内用ランドマークに対応するランドマークデータベース111aのレコードの情報と、ステップS14aで算出された検出位置からの経路における、当該案内用ランドマーク付近での進行方向とに基づいて、ガイダンステーブル112のテンプレートのX4に“右後方”と“左後方”のどちらを代入するかが決定される。
ただし、ステップS20aで、案内情報を生成するための案内用ランドマークが各位置候補からの経路に基づいて再抽出されることで、第2の案内情報の生成に適した案内用ランドマークが抽出される。例えば、ステップS15aで抽出された案内用ランドマークは、ユーザの実際の現在位置から見て目的地とは逆方向に存在する可能性がある。これに対して、再抽出された案内用ランドマークは、ユーザの実際の現在位置から見て目的地に近い方向に位置する。このため、案内用ランドマークと道路とが近接する位置を確認するためにユーザが目的地から遠い方向へ移動しなければならないケースが発生しにくくなり、ユーザに対して自然な案内を行うことが可能になる。
なお、上記の第1の変形例では、第2の実施の形態と比較して、ステップS19で“Yes”と判定されたときに、案内用ランドマークの方向が“左後方”または“右後方”と判定される可能性は高くなる。ステップS19で案内用ランドマークの方向が“左後方”または“右後方”と判定された場合、「・・・左手に見ながら」または「・・・右手に見ながら」ではなく、「・・・左後方に見ながら」または「・・・右後方に見ながら」という案内情報が生成されることが望ましい。これにより、案内ミスが発生する可能性を低減できる。
[第2の変形例]
第2の実施の形態の移動端末100は、次のように変形することもできる。移動端末100の記憶部110には、さらに、履歴テーブルが記憶される。履歴テーブルには、GPS衛星からの信号を受信した時刻などの情報が登録される。また、位置候補設定部130は、履歴テーブルを参照し、所定の条件の場合に複数の位置候補を地図上に設定する。
図17は、履歴テーブルの例を示す図である。履歴テーブル113は、記憶部110に格納される。履歴テーブル113は、受信時刻、検出位置の項目を含む。受信時刻の項目には、GPS受信部107がGPS衛星からの信号を受信した時刻が登録される。検出位置には、GPS信号の受信を契機として位置検出部120が検出したユーザの位置を示す情報が登録される。また、検出位置の項目に登録されるユーザの位置は、例えば、緯度・経度により表される。
例えば、履歴テーブル113には、受信時刻“T”、検出位置“PX”という情報が登録される。これは、GPS受信部107がGPS衛星からの信号を受信した時刻が“T”であり、位置検出部120が検出したユーザの位置が“PX”であったことを示している。
図18は、第2の変形例における案内情報生成処理の変形例を示すフローチャートである。以下、図18に示す処理をステップ番号に沿って説明する。ここで、図18の処理は図13の処理の代わりに実行される。図18の処理では、図13のステップS11に代えて、ステップS11bを実行する点が異なる。また、図13のステップS12の次に、ステップS12bが新たに追加される。さらに、ステップS12bのNoの場合に、ステップS21bが新たに追加される。そこで、これらのステップについて説明し、他のステップの説明を省略する。
(S11b)位置検出部120は、移動端末100の現在位置を検出する。また、位置検出部120は、検出した時刻と検出位置とを記憶部110に格納する。
(S12b)位置候補設定部130は、履歴テーブル113を参照し、所定の条件に適合するか否かにより位置候補を設定するかを判定する。具体的には、位置候補設定部130は、ステップS11bで現在位置を検出した時刻が履歴テーブル113の最終受信時刻から所定時間を経過しているか否かを判定する。例えば、所定時間とは、数十分である。現在位置の検出時刻が最終受信時刻から所定時間経過しているケースとしては、例えば、地下街に移動したユーザが数十分後に地上へ移動した場合などが相当する。
または、位置候補設定部130は、履歴テーブル113の最終検出位置とステップS11bで検出した位置との距離が所定の距離だけ離れているか否かにより、位置候補を設定するかを判定してもよい。例えば、所定の距離とは、数十メートルである。検出位置と最終検出位置との距離が所定の距離だけ離れているケースとしては、例えば、GPSの電波を受信できないトンネル内に移動した移動端末100を備えた自動車がトンネルの出口から出てきた場合などが相当する。
さらに、以下の場合も所定の条件に含めてもよい。(1)ユーザがGPS電波受信強度の弱い場所に継続して存在する場合。例えば、高層ビル街や深い谷にユーザが継続して存在する場合などが相当する。(2)類似する形状の道路が複数存在しており、計測位置を誤る可能性が高い地形にユーザが存在する場合。例えば、高層ビル街の周辺に類似する形状の道路が複数存在しており、計測位置を誤る可能性が高い地形にユーザが存在する場合などが相当する。(3)短時間に方向転換を繰り返し、進行方向に誤差が出やすい場合。例えば、駐車場などで進行方向を頻繁に変更した場合などが相当する。
位置候補設定部130は、所定の条件に適合する場合、処理をステップS13に進める。所定の条件に適合しない場合、処理をステップS21bに進める。
(S21b)経路算出部140は、地図データベース111に基づいて、ステップS11で位置検出部120によって検出されたユーザの検出位置から目的地までの経路を算出する。ランドマーク抽出部150は、ランドマークデータベース111aを参照し、検出位置からの経路上に設定されたランドマークが対応付けられた案内地点のうち、最初に現れる案内地点を特定する。ランドマーク抽出部150は、特定した案内地点に対応付けられたランドマークを、案内用ランドマークとして抽出する。
案内情報生成部180は、抽出された案内用ランドマークに対応するランドマークデータベース111aのレコードの情報と、検出位置から目的地への経路における、当該案内用ランドマーク付近での進行方向とに基づいて、ガイダンステーブル112に登録された第1の案内方法に対応するテンプレートのX2に“右”と“左”のどちらを代入するかを決定する。案内情報生成部180は、テンプレートのX1に案内用ランドマークの名称を、X2に決定された“右”または“左”を、X3に“直進”、“左折”、“右折”の何れかをそれぞれ代入することで、案内情報を生成する。そして、案内情報生成部180は、処理をステップS22に進める。
このように、第2の変形例では、所定の条件に適合する場合だけ、ステップS13以降の処理を行うようにし、所定の条件に適合しない場合には、ステップS17〜S19の判定処理を行わずに第1の案内方法を用いて音声案内を行うようにした。これにより、ユーザが地下鉄の出口から地上に出てきた直後などの移動端末100の測位精度が低下する可能性が高い状況の場合にだけ、ステップS13以降の処理が行われる。そのため、移動端末100の測位精度が十分高いと推定される場合には、ステップS13以降の処理を行わなくてもよいので、移動端末100の処理付加を軽減できる。
なお、図18のステップS14,S15,S20の代わりに、図17のステップS14a,S15a,S20aが実行されてもよい。
なお、上記の移動端末100の処理の一部を図示しないサーバが実行してもよい。例えば、移動端末100とサーバがネットワークを介して通信可能なものとする。サーバは、記憶部110、位置候補設定部130、経路算出部140、ランドマーク抽出部150、見え方特定部160、矛盾判定部170および案内情報生成部180の機能を有する。記憶部110には、地図データベース111およびガイダンステーブル112が記憶されている。移動端末100は、位置検出部120の機能を有し、GPS信号に基づく検出位置と目的地の情報をサーバに通知する。サーバは、通知された検出位置および目的地の情報と、地図データベース111と、ガイダンステーブル112とに基づいて案内情報を生成する。サーバは、案内情報を移動端末100に送信する。移動端末100は、受信した案内情報を、音声再生アプリケーションを用いて再生し、スピーカ108から音声出力する。
なお、第1の実施の形態の情報処理は、ナビゲーション装置1が備えるプロセッサに、プログラムを実行させることで実現できる。第2の実施の形態およびこれに基づく第1,第2の変形例の情報処理は、プロセッサ101にプログラムを実行させることで実現できる。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録できる。
例えば、プログラムを記録した記録媒体を配布することで、プログラムを流通させることができる。また、例えば、位置検出部120、位置候補設定部130、経路算出部140、ランドマーク抽出部150、見え方特定部160、矛盾判定部170および案内情報生成部180の処理を複数のプログラムによって実現し、各プログラムを別個に配布してもよい。また、位置検出部120、位置候補設定部130、経路算出部140、ランドマーク抽出部150、見え方特定部160、矛盾判定部170および案内情報生成部180の処理が分割されて複数のコンピュータにより実現されてもよい。コンピュータは、例えば、記録媒体に記録されたプログラムを、RAM102やフラッシュメモリ103などの記憶装置に格納し(インストールし)、当該記憶装置からプログラムを読み込んで実行してもよい。
なお、各実施の形態は、矛盾のない範囲で複数の実施の形態を組み合わせて実施することができる。