JP6344954B2 - 衣類内環境模擬測定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、衣類を着用した際における、その衣類と人体との間の衣類内環境を模擬的に形成して、衣類の生地の種類に応じた衣類内環境の状況把握、及び各種生地の特性の把握を容易に行うことができる衣類内環境模擬測定装置に関するものである。
用途や環境に応じた快適な衣類を開発するため、衣類内環境を模擬した空間を形成して、衣類内での温度や湿度といった基礎的な情報を得るための測定装置は広く知られている。
このような測定装置としては、例えば特許文献1や特許文献2に示すように、衣類内空間を模した模擬空間内に、その模擬空間を人間の体温と同程度に加熱すると共に、皮膚から発汗される汗や蒸散される水分を模した水蒸気を供給して、模擬空間内の温度と湿度とを経時的に測定することが可能となっている。
ところで、前述のような測定装置においては、人間の皮膚から蒸散される蒸散量とほぼ同量の水蒸気量を模擬空間内に供給させる必要があるが、前記特許文献1の場合は、布等により形成された模擬皮膚層に対してポンプによって水の供給を行い、そのポンプの送水量を発汗量としている。
一方で、前記特許文献2の場合は、所定の透湿度を有する多孔質の透湿シートを、水蒸気の発生源となる保水性部材と模擬空間との間に介在させて、その透湿シートを通して水蒸気を模擬空間内に流入させている。
しかしながら、前記特許文献1に記載のものの場合、擬似皮膚層から模擬空間内に供給される水蒸気量は常時一定ではないため、ポンプの送水量と実際に模擬空間内に供給される水蒸気の量は必ずしも一致せず、模擬空間内の経時的な温湿度の変化を安定的に測定することが困難である。
また、特許文献2に記載のものの場合、透湿シートが、その透湿シート上の位置によって透湿度に差が生じ易い構成であり、模擬空間内の水蒸気量を所定の量に制御することが困難であることから、やはり模擬空間内の経時的な温湿度の変化を安定的に測定することが難しいと考えられる。
したがって、実際に人間の皮膚から蒸散される蒸散量に対して、模擬空間内に供給される水蒸気量をうまく適合させることができず、衣類内環境を模擬空間内に再現させることが困難であるため、衣類内環境の温度や湿度等の状況を正確に把握することが難しい。
特開2003−50541号公報 特開2005−97797号公報
本発明の技術的課題は、衣類の着用者の皮膚と衣類との間に形成される衣類内環境を簡単且つ安定的に再現することができ、この衣類内の温湿度を安定的に且つ精度よく測定することができる衣類内環境模擬測定装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の衣類内環境模擬測定装置は、一方向に貫通する内部空間を有し、一端側の開口部に衣類の生地を着脱自在に被覆可能な本体部と、前記本体部の他端側の開口部側に配設され、保水している水を気化させてその水蒸気を前記本体部の内部空間に供給する保水性部材と、前記保水性部材を加熱する加熱部材と、前記本体部の内部空間内の温度及び湿度を測定する測定手段とを備え、前記本体部の内部空間を、模擬的に形成した衣類内の環境としてその内部空間の温度及び湿度を測定する衣類内環境模擬測定装置であって、前記保水性部材と本体部との間に、その本体部における前記他方側の開口部を被覆して、前記保水性部材から前記本体部の内部空間に供給する水蒸気量を調整する水蒸気量調整シートが配設されていて、前記水蒸気量調整シートは、シート面の一方側の面から他方側の面に向けて貫通して、前記内部空間内に侵入させる水蒸気量に応じて前記保水性部材からの水蒸気を前記本体部内に均一に流入させる複数の流入孔を有しているものである。
本発明においては、前記本体部は、その両端側の前記開口部の向きを少なくとも上下方向と水平方向とに変更自在であるものとすることができる。
これにより、衣類の着用者が立っている状態や横になっている状態における衣類内環境を再現することが可能である。
また、本発明においては、前記測定手段は、前記本体部の内部空間に温湿度センサを備えていて、前記温湿度センサは、測定位置を変更自在に前記内部空間に取付けられているものとすることができる。
これにより、例えば、前記本体部の内部空間における保水性部材寄りの位置、即ち衣類の着用者の肌側寄りに相当する位置や、衣類寄りの位置の温度や湿度を測定することができるため、衣類内の模擬的な環境である前記内部空間の様々な位置での温度や湿度を測定して衣類内環境をより詳しく把握することができる。
さらに、本発明においては、前記本体部は、生地を被覆させる開口部側に、対象となる生地を張った枠状の生地用枠部材を着脱自在に取付け可能であるものとすることができ、これにより、衣類を本体部から簡単に着脱することができる。
この場合において、前記本体部は、前記生地用枠部材を、その生地用枠部材に張った生地の面が前記本体部の開口部の方向に向いた状態で、複数取付け可能であるものとすることが好ましい。これにより、複数の生地用枠部材を重ねて使用して、衣類の着用者が重ね着を行った場合の衣類内環境を容易に再現することができる。
また、本発明においては、前記水蒸気量調整シートは、前記複数の流入孔が相互に同径であり、且つ前記本体部の内部空間に供給する水蒸気量に応じて予め定めた開口率に設定されているものとすることができる。
これにより、前記水蒸気量調整シートの開口率と流入孔の孔径とを設定することにより、前記本体部の内部空間に供給する水蒸気量を所望の量に制御しやすいため、衣類内環境を安定的に再現し、制御することが可能となる。
さらに、本発明においては、前記水蒸気量調整シートは、前記複数の流入孔がシート面に相互に等間隔に配設されているものとするのが好ましい。
これにより、水蒸気量調整シートのシート面全体として、前記内部空間に水蒸気を均等に流入させやすくなるため、衣類内環境を安定的に再現し、制御することができる。
また、本発明においては、前記水蒸気量調整シートは、疎水性且つ非透湿性を有する素材により形成されていることが好ましい。これにより、前記保水性部材からの水蒸気を、前記本体部の内部空間に前記流入孔のみから流入させることが可能となるため、その本体部の内部空間に流入させる水蒸気量をより安定的に制御することができる。
本発明によれば、前記保水性部材と本体部との間に、前記本体部の内部空間内に供給させる水蒸気量に応じて前記保水性部材からの水蒸気を前記本体部の内部空間内に均一に流入させる、複数の流入孔を備えた水蒸気量調整シートを配設したため、本体部の内部空間に、人間の皮膚から蒸散される水分とほぼ同量の水蒸気を定常的に且つ安定的に供給することができる。
これにより、人間の皮膚と衣類のとの間に形成される衣類内環境を簡単且つ安定的に再現することができるため、衣類内環境における温湿度を安定的に且つ精度よく測定することが可能となる。
図1は本発明に係る衣類内環境模擬測定装置の一実施の形態を模式的に示す側面図である。ただし、温湿度測定装置(ロガー)は省略している。 図2は同正面図である。ただし、衣類用生地については省略している。 図3は図2のA−A断面図である。ただし、衣類用生地及び温湿度測定装置は省略している。 図4は本発明の衣類内環境模擬測定装置における水蒸気量調整シートを模式的に示す(a)正面図、(b)前記図4(a)におけるB部分の要部拡大正面図である。 図5は本発明の衣類内環境模擬測定装置における加熱部材に設けた突出部材を水蒸気量調整シート及び保水性部材の各貫通孔に挿入した状態を示すよう要部拡大断面図である。ただし、衣類用生地及び生地用枠部材等は省略している。 図6は本発明において水蒸気が移動する状態を模式的に示す要部拡大図である。 図7は本発明の衣類内環境模擬測定装置の水蒸気量調整シートにおいて、保水性部材から本体部の内部空間に供給される水蒸気量と前記水蒸気量調整シートに設けられた流入孔の数との関係を示すグラフである。 図8は本発明の衣類内環境模擬測定装置における生地用枠部材を模式的に示す斜視図である。 図9は本発明の衣類内環境模擬測定装置において、連結部材を用いて本体部と生地用枠部材とを連結した状態を示す要部拡大斜視図である。 図10は本発明の衣類内環境模擬測定装置における本体部を、開口方向が上下方向に向いた状態に変更した状態を模式的に示す、図3と同じ位置での断面図である。 図11は実施例の(1)の実験における、第1の実験の湿度に関する結果を示すグラフである。 図12は実施例の(1)の実験における、温度に関する結果を示すグラフである。 図13は実施例(1)の実験における、第2の実験の湿度に関する結果を示すグラフである。 図14は実施例における(2)の実験の結果を示すグラフである。
図1〜図10は、本発明に係る衣類内環境模擬測定装置の一実施の形態を示すもので、この実施の形態の模擬測定装置1は、一方向に貫通する内部空間5を有し、一端側の開口部側に衣類の生地を着脱自在に被覆可能な本体部2と、前記本体部2の他端側の開口部側に配設された保水性部材3と、その保水性部材3を加熱する加熱部材4と、前記本体部2の内部空間5内の温度及び湿度を測定する測定手段6とを備えている。さらに、前記保水性部材3と本体部2との間に、その本体部2における前記保水性部材3側の開口部を被覆して、前記保水性部材3から前記本体部2の内部空間5内に供給する水蒸気量を調整する水蒸気量調整シート7を備えている。
そして、前記本体部2の内部空間5を、模擬的に形成した衣類内の環境空間として、その内部空間5の温度及び湿度を測定することができるようになっている。
前記本体部2は、この本体部2を一方向に貫通し且つ両端側が略矩形状に開口する一対の開口部8,9をそれぞれ備えた、一方向に直線的に延びる断面略矩形状(即ち直方体状)の前記内部空間5を有するものである。この実施の形態においては、前記本体部2は、前記内部空間5が本体部2の奥行き(厚さ)方向に貫通していて、その本体部2の奥行き方向の両端側に前記開口部8,9が形成された態様となっている。
この本体部2の一端(以下、第1端という)側の開口部8には、その第1端側の開口部8を塞ぐように、所望の衣類内環境を形成するに際して対象となった衣類の生地10を、拡げた状態で着脱自在に被覆可能となっている一方、前記第1端とは反対側の端(以下、第2端という。)側の開口部9側には、前記保水性部材3が配設されている。
さらに、前記本体部2は、前記第1端側及び第2端側の開口部8,9が所定の大きさを有していると共に、第1端から第2端までの長さ(奥行き)についても所定の大きさを有していて、模擬的な衣類内環境の空間として温度及び湿度を安定的に測定することができる程度の大きさの内部空間5を確保することが可能となっている。
なお、前記本体部2における第1端側及び第2端側の開口部8,9の大きさは、例えば長手方向長さが160mm程度、短手方向長さが110mm程度とすることができる。また、前記内部空間の第1端から第2端までの長さは、少なくとも15mm以下であるとすることができ、可及的に小さくすることが好ましい。
なお、この実施の形態においては、前記本体部2は、前記測定手段6の後述する温湿度センサ15〜17が取付けられた基体部材11と、その基体部材11における本体部2の第2端側に相当する部分に配設された補助部材12とで構成されている。
前記基体部材11及び補助部材12は、相互に同形の略矩形状の開口を有する中空部11a,12aをそれぞれ有していて、これらの両中空部11a,12aによって前記本体部2の内部空間5を形成している。したがって、前記本体部2については、第1端側は、前記基体部材11における前記補助部材12とは反対側の端面側となる一方、第2端側は、前記補助部材12における前記基体部材11とは反対側の端面側となると共に、この補助部材12の端面は第2端側の開口部9の開口縁9aを形成することとなる。
また、前記基体部材11の中空部11aにおける本体部2の第1端側にあたる端面側には、前記衣類の生地10が本体部2の内部空間5内に侵入しないようにするため、線状部材13が張られていて、これにより内部空間5がしっかりと確保されるようになっている。なお、この線状部材13としては、熱に強い繊維や樹脂により形成された糸、金属製の針金等を用いることができる。
一方、前記補助部材12は、前記基体部材11と着脱自在となっていると共に、その基体部材11よりも大きな外形を備えていて、前記本体部2に、前記基体部材11の外周面から本体部2の開口方向と直交する方向に外方に向けて突出するフランジ部2aを形成している。
前記保水性部材3は、例えば水を吸収して保持することができるスポンジや、織布、フェルトを含む不織布等の、水を吸収して保持することができる素材により、一定の厚みを有する板体状又はシート状に形成されている。なお、この保水性部材3に吸収、保持される水は、衣類の着用者から発汗される汗に相当するものである。
また、前記保水性部材3は、前記本体部2における第2端側の開口部9よりも大きな板面又はシート面を有していて、前記保水性部材3を前記本体部2の第2端側に取付けた場合には、前記第2端側の開口部9全体を覆って閉塞することができるようになっている。
なお、前記保水性部材3には、この保水性部材3の板面又はシート面を貫通する複数の貫通孔3aが設けられていて、後述する加熱部材4の加熱面4aに設けられた突出部材を挿入することができるようになっている。これにより、この保水性部材3は、前記加熱部材4の加熱面4aに対して位置がずれることなく設置することが可能となっている。
前記加熱部材4は、前記保水性部材3の板面又はシート面の一面側を加熱して、その保水性部材3が保水している水を気化させて水蒸気とするもので、前記本体部2に着脱自在に取付けられる構成となっている。この加熱装置4は、前記保水性部材3が保水している水を気化させて水蒸気とすることにより、衣類の着用者の皮膚から蒸発している水分や発汗された汗が蒸散される状況を模擬的に作り出すものである。
具体的に、前記加熱部材4は、前記保水性部材3の板面又はシート面を加熱する略平坦状に形成された加熱面4aと、この加熱面4aを定温に維持することができるヒーターやペルチェ素子等の各種の加熱手段とを有している。そして、前記加熱面4aを通じて前記保水性部材3を加熱することにより、人間の皮膚の温度(体温)に相当する温度において、前記保水性材料3が保水している水を気化させ、水蒸気とすることができるようになっている。
また、前記加熱部材4は、前記保水性部材3を人間の体温程度の温度に維持することができるように温度調整自在となっていて、特に人間の体温として考えられる範囲については任意に温度設定を行うことができ、また、サーモスタット等の温度調整装置によりその設定した温度を維持することが可能となっている。
なお、図5に示すように、前記加熱部材4は、前記加熱面4a側に、この加熱面4aに対してほぼ垂直な方向に向けて延びる棒状に形成された複数の前記突出部材が固定されていて、これの突出部材を前記保水性部材3に設けた貫通孔3a、及び前記水蒸気量調整シート7に設けた後述する貫通孔23に挿入することが可能となっている。
また、前記突出部材は、前記本体部2を構成する補助部材12と着脱自在に連結することができるようになっていて、前記本体部2と加熱部材4との連結に供されている。
図5に示すものの場合、前記突出部材として、ねじ杆の基端側が前記加熱部材4の加熱面4aに固定され、先端側がその加熱面4aに対してほぼ垂直な方向に向けて延びるボルト4bを用いている。そして、前記本体部2との連結に際しては、前記ボルト4bのねじ杆を、前記本体部2の補助部材12に設けた貫通孔12bに挿通した上で、そのボルト4bのねじ杆にナット4cを取付けることにより行っている。これにより、前記保水性部材3の貫通孔3a、及び前記水蒸気量調整シート7の貫通孔23に挿通した上で、これら保水性部材3と水蒸気量調整シート7とを本体部2と加熱部材4との間に保持することが可能となる。
なお、前記本体部2における基体部材11には、前記ボルト4b及びナット4cが、基体部材11及び補助部材12の連結を阻害しないようにするため、前記基体部材11が前記ボルト4b及びナット4cに接触しないように回避させるための回避用孔11cが設けられている。
前記測定手段6は、前記本体部2の内部空間5の温度及び湿度を同時に測定することが可能なもので、図2及び図3に示すように、前記内部空間5内に設置された温湿度センサ15〜17と、これらの温湿度センサ15〜17が感知したデータに基づいて温度及び湿度を算出して出力する温湿度測定装置(いわゆるデータロガー)18とを備えている。
この実施の形態においては、前記温湿度センサとして、前記本体部2の内部空間5においてその内部空間5の長手方向に等間隔に並べられた第1〜第3温湿度センサ15〜17の3つが設けられている。
これらの第1〜第3温湿度センサ15〜17は、いずれも一定の方向に移動可能となっていて、前記本体部2の内部空間5内における測定位置を変更自在となっている。即ち、この実施の形態においては、前記第1〜第3温湿度センサ15〜17は、前記本体部2の内部空間5において、前記第1端側から第2端側にかけての一方向に移動自在となっている。したがって、前記第1〜第3温湿度センサ15〜17は、第1端と第2端との中間位置だけでなく、第1端寄りの位置や第2端寄りの位置等にそれぞれ独立して位置させることが可能である。
なお、この実施の形態においては、これらの第1〜第3温湿度センサ15〜17は、先端側(感知部分)が前記本体部2の内部空間5における短手方向のほぼ中央部分にまで延出させた状態でその本体部2の内部空間5内に取付けられている。また、これらの第1〜第3温湿度センサ15〜17の各基端側(感知部分とは反対側の端部)は、本体部2の内部空間5の開口方向(厚さ方向)の中央部分の近傍に取付けられている。
前記水蒸気量調整シート7は、上述のように、前記本体部2における第2端側の開口部9の開口縁9a(より具体的には前記本体部2を構成する補助部材12側の端面)と、前記保水性部材3との間に挟んだ状態で、これらの本体部2と保水性部材3との間に保持、装着されている。
この水蒸気量調整シート7は、疎水性且つ非透湿性を有する素材によりシート状に形成された基材部21と、この基材部21のシート面の一方側の面から他方側の面に向けて貫通して、前記保水性部材3から前記本体部2の内部空間5内に水蒸気を流入させる複数の流入孔22とを備えている。
前記基材部21は、前記本体部2の第2端側の開口部9よりも十分大きなシート面を備えたものとなっていて、装着時においては、その第2端側の開口部9を塞ぐようになっている。したがって、前記保水性部材3において気化した水蒸気は、これらの流入孔22を通してのみ前記本体部2の内部空間5内に流入させることが可能となっていて、これにより、前記保水性部材3から内部空間5に流入させる水蒸気の量をより安定的に制御することができるようになっている。
なお、前記水蒸気量調整シート7の基材部21には、前記加熱部材4の加熱面4aから突出する突出部材である前記ボルト4bを挿通させる貫通孔23が複数設けられていて、この水蒸気量調整シート7の本体部2と加熱部材4との間での、さらには本体部2と保水性部材3との間での保持に供されている。
この実施の形態においては、図4(a)に示すように、前記水蒸気量調整シート7は、前記基材部21のシート面が前記本体部2の第2端側の開口部9よりも大きな略矩形状に形成されていて、この基材部21によって前記本体部2の第2端側の開口部9全体を覆うことが可能となっている。
そして、図6に示すように、前記基材部21のうち、前記本体部2の第2端側の開口部9の開口縁9aよりも内周側に位置する流入孔22を通じて、前記保水性部材3からの水蒸気を内部空間5内に流入させることができるようになっている。
また、前記水蒸気量調整シート7(厳密には基材部21)を形成する素材としては、疎水性且つ非透湿性であれば基本的に何でもよいが、例えばポリエステルや、ポリオレフィン(例えばポリプロピレンやポリエチレンなど)等により形成することができる。なお、水蒸気量調整シート7の剛性が低いと、測定装置に装着する際に作業性が低下し、手間や時間を要するため、水蒸気量調整シート7全体としての形を維持することができる程度の剛性を有していることが好ましい。
さらに、前記水蒸気量調整シート7の基材部21の厚さについては、前記保水性部材3からの水蒸気を安定的に本体部2の内部空間5に流入させることができ、且つ前述のような剛性を確保できれば特に制限はないが、前記加熱部材4の加熱手段の温度が本体部2の内部空間5に反映され易いように、できるだけ薄いことが好ましく、例えば200μm以下とすることができる。
ここで、前記水蒸気量調整シート7を、前記本体部2の第2端側の開口部9と前記保水性部材3との間に設けたのは、次の理由からである。
即ち、前記本体部2の内部空間5を、衣類の着用者の皮膚とその衣類との間の衣類内環境を模擬した空間とした場合に、前記保水性部材3からの水蒸気を、衣類の着用者の皮膚から蒸発する水分や発汗による汗等、皮膚から蒸散される水分に相当するものとして扱って、前記保水性部材3から前記本体部2の内部空間5内に供給される水蒸気量を、着用者の皮膚から衣類内空間に蒸散される水分の蒸散量に応じて、調整し制御するためである。
より具体的に説明すると、衣類の着用者は、例えば外気温の高低、湿度の高低、天気、風の影響等による体感温度の高低等、種々の環境下におかれ、その環境下において、激しい運動、軽い運動等の各種運動をしたり、あるいは運動をしなかったりする。
その際に、衣類の着用者の体温や皮膚からの水分の蒸散量は、環境や運動量によって異なるため、用途や環境に応じた快適な衣類を開発するために用いる衣類内環境を模擬した空間は、様々な条件の環境を安定的に形成可能であることが必要である。特に、衣類の着用者の皮膚から蒸散される水分の蒸散量については、衣類内環境を左右するきわめて重要な要素であり、衣類内環境中の温度や湿度に大きな影響を与える。
したがって、各種条件下における前記衣類の着用者の発汗に伴う水分の蒸散量を再現するためには、水分の蒸散に相当する、保水性部材3が保水している水を気化する段階において、その気化された水蒸気が本体部2の内部空間5内に流入する量を適切且つ安定的に制御する必要がある。
そのため、本発明においては、基材部21とその基材部21のシート面の貫通する複数の流入孔22とを備えた前記水蒸気量調整シート7を用いて、前記本体部2の内部空間5内に侵入させるべき水蒸気量に応じて前記保水性部材3からの水蒸気を前記内部空間5内に均一に流入させるようにして、その内部空間5内の水蒸気量を適切且つ安定的に、しかも容易に制御することができるようにしている。
さらに、前記水蒸気量調整シート7は、前記本体部2の内部空間5内に供給する水蒸気量に応じて予め定めた開口率に設定されていて、前記内部空間5内に流入させる水蒸気量を所望の量に制御することができるようになっている。
また、この実施の形態においては、図4(b)に示すように、前記水蒸気量調整シート7の前記複数の流入孔22は、いずれも相互に同径に形成されていると共に、各流入孔22は前記基材部21に相互に等間隔(図4(b)に示すものの場合、前記基材部21のシート面の長手方向及び短手方向共に相互に同じ間隔であり、且つ各流入孔が長手方向及び短手方向のそれぞれにほぼ直線的に並んだ状態)に配設されていて、前記流入孔22が、前記基材部21のシート面全体にほぼ均等に配置された態様となっている。これにより、前記保水性部材3からの水蒸気を、前記本体部2の内部空間5内により均一に流入させ易くすることが可能となるため、前記水蒸気量調整シート7による水蒸気量の制御そのものが行い易く、また、その内部空間5全体の水蒸気量を安定的に所望の量にすることができる。
ところで、前記水蒸気量調整シート7は、前記開口率や各流入孔22の孔径の関係で、前記本体部2の内部空間5に供給する水蒸気量に応じた、前記基材部21のシート面に対して設けるべき流入孔22の数が決定される。この点について具体的に説明する。
図7は、前記水蒸気量調整シートに設けた、100cm2当たりの流入孔の数(ただし、各流入孔はφ140μmで、相互に等間隔に配設されている。)と、前記本体部の内部空間に供給される1時間当たりの水蒸気量(即ち、皮膚から蒸散される水分の蒸散量(g/(m2・h)に相当)との関係を示したグラフである。
ここで、前記本体部の内部空間に供給する水蒸気量については、気温20℃、湿度65%の環境下において経皮水分蒸散量測定装置(Courage+Khazaka electronic Gmbh製、TewameterTM300(型番TM300MP))を用いて測定した。
具体的には、次のような手順で測定を行った。
(1)気度20℃、湿度65%RHの環境下で、ヒーターを33℃に定温制御した。
(2)前記経皮水分蒸散量測定装置を水平設置し、前記ヒーター上に載置した保水性部材の上に測定対象の水蒸気量調整シートを設置する。
(3)前記水蒸気量調整シート設置後、前記経皮水分蒸散量測定装置にて水蒸気量調整シート上の異なる3点の蒸散量を測定し、それらの平均値を測定値とした。
この図7のグラフに示すように、流入孔の数と本体部の内部空間に供給される水蒸気量との間には比例関係にあるため、前記本体部の内部空間を所望の衣類内環境とするために必要な水蒸気量に基づいて、必要な流入孔の数を特定することができる。
したがって、前記必要な流入孔の数と孔径との関係から開口率を算出し、その算出した開口率に基づき、所定の大きさの水蒸気量調整シートの基材部のシート面に設けるべき流入孔の数及び孔径を決定することができる。
これにより、前記保水性部材からの本体部の内部空間に供給される水蒸気量を適切且つ安定的に制御することができることとなる。
前記水蒸気量調整シート7の開口率については、前記流入孔22の孔径にもよるが、再現すべき衣類内環境に応じて、0.01〜20%程度とすることが好ましい。なお、この場合の前記開口率は、前記水蒸気量調整シート7の基材部21における、前記本体部2の内部空間5に臨む位置に設けられた流入孔22が形成する開口に基づいて規定される値である。
また、流入孔22を水蒸気量調整シート7における基材部21のシート面全体にわたってできるだけ数多く設けて、前記保水性部材3からの水蒸気を前記本体部2の内部空間5に可及的に均一に流入させることができるようにするため、流入孔22の孔径は、前記開口率との関係で、できるだけ小さい方が好ましい。ただし、水蒸気の直径が約0.0004μm程度であることを鑑みて、前記各流入孔22の孔径は、0.0004〜500μm程度とすることが好ましい。
また、水蒸気量調整シート7の開口率と流入孔22の孔径については、衣類の着用者の発汗レベルに応じた水分の蒸散量を再現するために、前記保水性部材3から前記本体部2の内部空間5に流入させる水蒸気量を調整する必要がある場合には、次のように設定することができる。
即ち、前記着用者の発汗がほとんどない不感蒸泄の状態(発汗はないが皮膚の表面から水分が蒸発している状態)を再現する場合には、前記流入孔22の孔径を140μm程度とし、水蒸気量調整シート7の開口率を0.06〜0.1%の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは0.06%程度とする。
また、着用者の発汗が少量である場合(軽い運動で汗ばむ程度のレベル)を再現する際には、前記流入孔22の孔径を140μm程度とし、水蒸気量調整シート7の開口率を0.2〜0.4%の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは0.24%程度とする。
さらに、着用者の発汗が中量である場合(肌が汗で明らかに濡れる程度のレベル)を再現する際には、前記流入孔22の孔径を140μm程度とし、水蒸気量調整シート7の開口率を5〜10%の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは6.11%程度とする。
一方、図1及び図3に示すように、前記本体部2の第1端側の開口部8には、拡げた状態の衣類の生地をその第1端側の開口部8に着脱自在に被覆した状態で装着させるための、枠状に形成された生地用枠部材25が着脱自在に取付けられている。
前記生地用枠部材25は、図8に示すように、中央部分に前記本体部2の第1端側の開口部8と同形同大の矩形状に形成された、衣類の生地が張られる中空部26と、その中空部26の周囲を取り囲む、一定の厚みを有する矩形枠状の枠部27と備えたものである。
この生地用枠部材25は、前記中空部26の内周縁と前記第1端側の開口部8の内周縁とが一致した状態で前記本体部2に取付けられるようになっている。
なお、前記生地用枠部材25の前記本体部2への取付けは、その生地用枠部材25を本体部2に着脱自在に取付けられれば任意の手段を用いることができる。
この実施の形態においては、図1及び図3、図9、図10にそれぞれ示すように、棒状に形成された連結部材29を用いて連結し、取付けている。この連結部材29は、先端側に軸線と直交する方向に突出する一対の突起29aが形成されていると共に、連結部材29の基端側からバネ29bによって先端方向に弾性的に付勢されて、この連結部材29の軸線方向に移動自在に取付けられた押圧板29cを備えた構成となっている。
そして、前記生地用枠部材25の枠部27及び本体部2の基体部材11、並びに補助部材12にそれぞれ設けられた、前記連結部材29の先端側の各突起29aを挿入可能な形状に形成された連結用の貫通孔27a,11b,12cに、前記連結部材29の先端側を、各突起29aと共に挿通した上で、その連結部材29を、前記バネ29bの弾発力に抗して押し込みながら周方向に回す。
これにより、前記各突起29aが前記本体部2の補助部材12における本体部2の第2端側の端面に引っ掛かると共に、前記押圧板29cがバネ29bにより生地用枠部材25の枠部27を押圧するため、枠部27と前記本体部2の基体部材11及び補助部材12とが、連結部材29の各突起29aと押圧板29cとの間で押圧された状態で保持されることとなる。また、このとき、本体部2を構成する基体部材11と補助部材12との相互連結も同時に行われる。
なお、図9では、図1における上方側の連結部材29のみを示しているが、下方側の連結部材29についても同様の構成となっていて、同様の連結手法で生地用枠部材25の前記本体部2への取付けを行うことが可能となっている。
この実施の形態においては、同形同大の前記生地用枠部材25を1枚を用い、この生地用枠部材25と前記本体部2における第1端側との間に1枚又は複数枚の衣類の生地10を挟んで、その生地10を、これらの生地用枠部材25の枠部27と前記第1端側の開口部8の開口縁との間で保持させることが可能となっている。
これにより、前記衣類の生地10が前記生地用枠部材25の中空部26を塞ぐように張られた状態とすることができると共に、前記中空部26に張られた生地10の面が前記本体部2における第1端部側の開口部8の方向に向いた状態で、その本体部2の第1の端部側に取付けることができる。
この結果、前記衣類の生地10を、前記本体部2の第1端側の開口部8を被覆した状態でその第1端部の開口部8に装着させることが可能となる。
なお、このとき前記衣類の生地10は、前記生地用枠部材25に粘着テープ等により着脱自在に取り付けることが好ましく、これにより、前記生地用枠部材25を生地10と共に移動させることが可能となり、この生地用枠部材25の本体部2への着脱が行い易い。
ここで、前記本体部2の第1端側に複数の衣類の生地を取付ける場合には、複数枚の生地用枠部材25を用い、前記本体部2と最も本体部2側に位置する生地用枠部材25との間、及び隣り合う生地用枠部材25,25の間に生地を挟んだ上で(例えば、生地用枠部材を2枚用いて、それらの生地用枠部材のそれぞれの間に1枚又は複数枚の生地を挟む等)、それらのすべての生地用枠部材25を、前記本体部2の第1端側に取付けてもよい。
あるいは、衣類の生地10の本体部2に対する着脱を容易に行うことができるように、隣り合う生地用枠部材25,25の間にのみ生地を挟んで、それらのすべての生地用枠部材25を、前記本体部2の第1端側に取付けるようにしてもよい。
これらの場合、前記生地用枠部材25の枠部27が、一定の厚さを有しているため、各生地用枠部材25,25の間に挟まれた生地の間には、ある程度の空間が形成されることとなる。
一方で、前記本体部2の第1端側に複数の衣類の生地を取付ける場合、2枚の前記生地用枠部材25,25の間に複数の生地を重ねた状態で挟み込ませて、それらの2枚の生地用枠部材25,25を前記本体部2の第1端側に取付けてよい。この場合には、前記衣類の生地は相互にほとんど接触した状態となるため、隣り合う生地の間にはほとんど空間ができない、あるいは、生地の撓みによってわずかに空間ができる程度となり、前述のような生地間に隙間が形成される場合とは異なる衣類内空間を形成することが可能となる。
なお、この場合においては、それらの複数の衣類の生地を挟んだ前記2枚の生地用枠部材25,25を、共に本体部に装着あるいは取り外すことにより、それらの衣類の生地の着脱が容易である。
さらに、前記生地用枠部材25には、前記衣類の生地10が弛んでこの生地用枠部材25の前記中空部26の内部に入り込まないように、中空部26の両側の開口部分に、弛み防止用の線状部材30が張られている。これにより、前記本体部2の内部空間5が安定的に確保されるため、衣類内環境をより安定的に再現することができる。
図8に示すものの場合、前記線状部材30は、前記生地用枠部材25の中空部26の長手方向に2本、短手方向に4本それぞれ張られている。また、これらの線状部材30は、前記生地用枠部材25の枠部27の外周面に巻き付けられた状態で、且つ長手方向及び短手方向の各線状部材30が、中空部26の両面の各開口部分において相互に直交するように、その生地用枠部材25に取付けられている。
なお、この線状部材30としては、熱に強い繊維や樹脂により形成された糸、金属製の針金等を用いることができる。
また、この実施の形態においては、前記生地用枠部材25の枠部の外周面に、前記線状部材30を生地用枠部材25の長手方向及び短手方向にガイドするように収容する直線状の溝(図示せず)が設けられている。
ところで、図10に示すように、前記本体部2は、その両端側の前記開口部の向き、つまり第1端側及び第2端側の各開口部8,9の向きを、上下方向と水平方向とに変更可能となっている。
したがって、前記本体部2の第1端側及び第2端側の各開口部8,9の向きが上下方向に向いている場合には、前記本体部2の第1端側に取付けられている前記生地用枠部材25を上方側に、第2端側に取付けられている加熱部材4及び保水性部材3並びに水蒸気量調整シート7を下方側に配置することができる。これにより、前記保水性部材3からの水蒸気が前記本体部2の内部空間5に下方側から流入する態様となるため、例えば衣類の着用者が寝た状態になった状態や、皮膚が上方側を向いた部位における衣類内環境を再現することができる。
一方、前記本体部2の第1端側及び第2端側の各開口部8,9の向きが水平方向を向いている場合には、前記保水性部材3からの水蒸気が前記本体部2の内部空間5に下方側から流入する態様となるため、例えば衣類の着用者が立った状態や、皮膚が水平方向を向いている部位における衣類内環境を再現することができる。
なお、この実施の形態においては、図10に示すように前記本体部2を、前記第1端側及び第2端側の各開口部8,9の向きが上下方向となるように設置する場合には、前記加熱部材4の、前記本体部2とは相反する側に取付けた台部35を、第1端側及び第2端側の各開口部8,9が上下方向に向いた状態で、所定の場所上に載置する。
一方、図1に示すように前記本体部2を、前記第1端側及び第2端側の各開口部8,9の向きが水平方向となるように設置する場合には、前記本体部2の補助部材12が形成するフランジ部2a及び前記台部35における共通する方向を向く各外周面を底面として、第1端側及び第2端側の各開口部8,9が水平方向を向いた状態で、本体部2を立てるようにする。
前記構成を有する衣類内環境模擬測定装置1は、所望する衣類内環境を形成するために必要な衣類の生地10を、前記生地用枠部材25と本体部2の第1端側との間に、前記中空部26に生地10が拡げられて張られた状態で取付けることにより、前記本体部2の第1端側の開口部8を生地10で被覆する。
その一方で、保水している保水性部材3を加熱部材4と本体部2の第2端側との間に取付けると共に、その保水性部材3と本体部2の第2端側との間に水蒸気量調整シート7を取付けて、前記本体部2の第2端側の開口部9を前記保水性部材3と水蒸気量調整シート7とで被覆して閉塞する。
その後、前記加熱部材4を駆動させて保水性部材3を人間の体温程度にまで加熱して、その保水性部材3が保水している水を気化させて水蒸気を作り出し、その水蒸気を、前記水蒸気量調整シート7に形成された複数の流入孔22を通じて、前記本体部2の内部空間5に流入させることにより供給する。これにより、その内部空間5に衣類の生地10による所望の衣類内環境を模擬的に形成して、所望の衣類内環境が模擬的に形成された状態の前記本体部2の内部空間5内の温度及び湿度を、前記測定手段6により測定する。
このとき、前記水蒸気量調整シート7は、前記本体部2の内部空間5内に流入させるべき水蒸気量に応じた開口率や前記流入孔22の孔径等が設定されていて、前記流入孔22を通じて前記保水性部材3からの水蒸気を本体部2の内部空間5内に均一に流入させると共に、その内部空間5に流入させる水蒸気量を適切に制御することができる。
これにより、前記保水性部材3からの水蒸気を、衣類の着用者の皮膚から蒸散される水分に相当するものとして、前記保水性部材3から前記本体部2の内部空間5内に供給される水蒸気量を、着用者の皮膚から衣類内空間に蒸散される水分の蒸散量として、適切に制御することが可能となる。したがって、様々な条件下における衣類の着用者の体温や水分の蒸散量に応じた衣類内環境の模擬空間を、安定的且つ比較的容易に作り出すことができる。
この結果、種々の条件下での衣類内環境の温度及び湿度を安定的に且つ精度よく測定することが可能となるため、衣類の生地10の種類に応じた衣類内環境の状況把握、及び各種生地の特性の把握を容易に行うことができる上、用途や環境に応じた快適な衣類の開発に役立てることができる。
前記実施の形態においては、前記本体部2を、その両端側である第1端側及び第2端側の開口部8,9の向きを上下方向と水平方向とに変更自在としているが、この本体部は、両端側の前記開口部の向きが上下方向のみ、あるいは水平方向のみに固定されていてもよい。
または、前記本体部は、例えば両端側の開口部を上下方向や水平方向だけでなく、斜め方向にも自在に向けることができるようにする等、前記開口部の向きを任意の方向に自在に変更できるようにしてもよい。
前記実施の形態においては、前記本体部2の内部空間5に温湿度センサを3つ設けているが、この温湿度センサは、1つであっても、2つであっても、あるいは4つ以上であってもよい。
また、前記実施の形態では、前記温湿度センサ15〜17が、測定位置を変更自在に前記本体部2の内部空間5に配設されているが、この温湿度センサは、本体部の内部空間内の測定位置を変更できなくてもよい。
なお、前記実施の形態では、前記本体部2の内部空間5内の温度及び湿度の測定を行う測定手段6として、温湿度センサ15〜17とこれらの温湿度センサが測定したデータに基づいて温度及び湿度を算出する温湿度測定装置18とを備えたものを用いているが、測定手段は任意の手段を用いることができ、例えば相互に別体の温度計及び湿度計をそれぞれ用いて本体部の内部空間内の温度及び湿度を測定してもよい。
前記実施の形態においては、前記本体部2の第2端側に、衣類の生地10を張った生地用枠部材25を着脱自在に取付けることにより、前記第2端側の開口部9をその生地10で被覆する構成としているが、生地用枠部材を用いることなく、生地を直接本体部に取付けて開口部を被覆するようにしてもよい。
また、前記実施の形態においては、前記水蒸気量調整シート7は、前記複数の流入孔22が相互に同径であり、且つ前記本体部2の内部空間5内に供給する水蒸気量に応じて予め定めた開口率に設定されている。
しかしながら、前記複数の流入孔については、保水性部材からの水蒸気量を所望の量に適切に制御でき、且つ本体部の内部空間に水蒸気を均一に流入させることができれば、それぞれを任意の孔径とすることができる。
また、前記水蒸気量調整シートの開口率については、保水性部材からの水蒸気量を所望の量に制御でき、且つ本体部の内部空間に水蒸気を均一に流入させることができれば、流入孔の孔径や数の関係で任意に設定することができる。
さらに、前記実施の形態においては、前記水蒸気量調整シート7は、前記複数の流入孔22が基材部21のシート面に相互に等間隔に配設されているが、各流入孔の間隔は必ずしも等間隔である必要はなく、保水性部材からの水蒸気を本体部の内部空間に水蒸気を均一に流入させることができれば、任意の間隔とすることができる。
また、前記実施の形態においては、前記本体部2が、この本体部2を一方向に貫通し、両端側が略矩形状に開口する一対の開口部8,9をそれぞれ備えた、一方向に直線的に延びる断面略矩形状の前記内部空間5を有したものとなっている。
しかしながら、本体部は、その本体部を一方向に貫通する内部空間を有するものであれば、断面略円形状や断面略楕円形状、あるいは断面略三角形状などの角形等、任意の断面形状の内部空間を備えたものとすることができ、開口部の形状も、内部空間の断面形状に合わせた形状とすることができる。
さらに、前記水蒸気量調整シート7は、前記基材部21が、全体として略矩形状のシート面を備えたものとなっているが、前記本体部の第2端側の開口部全体を覆うことができれば、円形状等任意のシート面を有したものとすることができる。
本発明に係る衣類内環境模擬測定装置の機能を確認するため、様々な条件下の衣類内環境を模擬的に再現することができるか否かの実験を行った。
具体的に、前記実施の形態において説明したものとほぼ同形同大の衣類内環境模擬測定装置について、(1)各種衣類用の生地(第1及び第2の生地)を用いた場合に、適切な衣類内環境をそれぞれ模擬的に再現することができるか否か、(2)本体部の姿勢を変えた場合、即ち第1端側及び第2端側の各開口部が上下方向を向いている状態(着用者が寝ている状態)、及び水平方向を向いている状態(着用者が起きている状態)についての衣類内環境をそれぞれ模擬的に再現できるか否かのそれぞれについて、測定した温度や湿度の経時的な変化に基づいて機能を評価した。
前記各実験においては、水蒸気量調整シートとして、すべて同じものを用いた。
即ち、ポリエステルにより形成された厚さ150μm程度の基材部に、孔径が140μm程度の流入孔を図4(a)と同様の配置で相互に等間隔に設けた、開口率が6.11%の中量発汗を想定した水蒸気量調整シートを用いた。
また、前記各実験は、いずれも前記装置を気温20℃、湿度65%の雰囲気下において、加熱部材の加熱面の温度を33℃に設定し、実験開始から一定時間、本体部の内部空間内の温度及び/又は湿度を、(1)の実験では800秒間、(2)の実験では400秒間それぞれ連続的に測定した。
さらに、(1)の実験においては、第1の実験として、本体部を、第1端側及び第2端側の各開口部が水平方向を向いている状態において実験を行い、第1の生地としてポリエステル(ポリエステル100%、厚さ410μm)を1枚使用し、第2の生地としてウール(ウール100%、厚さ580μm)を1枚使用した。
また、第2の実験では、第1の生地として、低透湿性の素材である、無孔質樹脂をコーティングしたポリエステル素材の生地(厚さ310μm、透湿度1770g/(m2・24h))を1枚使用し、第2の生地として、高透湿性の素材である、多孔質フィルムをラミネートしたポリエステル素材の生地(厚さ290μm、透湿度5632g/(m2・24h))を1枚使用した。
一方で、(2)の実験においては、本体部の姿勢を変えた実験の場合には、姿勢に関わらず、いずれの場合も衣類の生地として繊維構成ポリエステル100%、厚さ310μmのものを用いた。
なお、衣類内環境模擬測定装置の測定手段における第1〜第3温湿度センサは、いずれも水蒸気量調整シートからの距離が同じに設定され、本体部を第1端側及び第2端側の各開口部が水平方向を向いている状態としている場合に、最も高い位置に第1温湿度センサ(本体部の内部空間の下方側の面を基準面として、その基準面から約14cmの高さ)、最も低い位置に第3温湿度センサ(基準面から約2cmの高さ)、これらの第1及び第3温湿度センサの中間の高さ(基準面から約8cmの高さ)に第2温湿度センサを設置している。
実験の結果を図11〜図14に示す。
(1)の実験における第1の実験については、図11(a),(b)及び図12(a),(b)に示すように、使用する衣類の生地が異なる場合には、それぞれの生地の特性によって異なる衣類内環境が模擬的に再現されていることがわかった。
即ち、図11(a)に示すように、ポリエステルとウールとのうち、通気性や吸湿性、透湿性に劣るポリエステルを用いた場合には、本体部の内部空間内の高さに関わらず80%以上の高い湿度が維持されていた。なお、基本的に、前記内部空間内での高さ位置が高いほど湿度が高いが、その高さによる湿度の差が小さいことから、本体部の内部空間全体の湿度が高いことがわかる。
また、図12(a)に示すように、温度については、内部空間内の上方側に行くほど高く、また位置の高さによる温度差が顕著にあらわれているが、これは水蒸気が空気よりも軽く上方に移動する傾向にある上、ポリエステル自体は保温性が高くないため、衣類内環境の温度に影響を与えにくいにことに起因していると考えられる。
一方、図11(b)に示すように、ウールを用いた場合には、ポリエステルに比べて通気性や吸湿性、透湿性に優れるため、本体部の内部空間内の高さに関わらず概ね70〜85%程度の湿度が維持されていた。
さらに、ウールの場合は吸湿性が高いことから、本体部の内部空間の水蒸気の一部が吸収され、全体としての湿度が低下したと考えらえる。
また、基本的に、水蒸気は上方に移動する傾向にあることから、内部空間内での高さ位置が高いほど湿度が高いが、本体部の内部空間全体の湿度としては、ポリエステルに比べて低い範囲に抑えられている。
さらに、図12(b)に示すように、温度については、ポリエステルに比べて、内部空間全体としての温度が高い。これは、ウール自体が保温性が高く、さらに水分を吸収することによって熱(水和熱)を発する性質があるためである。また、内部空間の上方側に行くほど温度が高いが、水蒸気の移動に加え、これはウールの発熱に起因するものである。
また、(1)の実験における第2の実験については、図13に示すように、使用する衣類の生地の透湿度が異なる場合であっても、それぞれの生地の特性によって異なる衣類内環境が模擬的に再現されていることがわかった。
即ち、第1の生地である無孔質樹脂をコーティングしたポリエステル素材の生地の場合は、本体部の内部空間内の高さに関わらず80%以上の高い湿度が維持されていた。これは、無孔質樹脂のコーティングによって前記内部空間内の水蒸気が外方に移動することが抑えられたためである。
一方、第2の生地である多孔質フィルムをラミネートしたポリエステル素材の生地の場合は、本体部の内部空間内の高さに関わらず湿度は80%未満に抑えられ、特に第2及び第3の透湿度センサの位置では70%以下に抑えられた。これは、多孔質フィルムが無孔質樹脂のコーティングに比べて透湿度が高いため、内部空間の水蒸気が外方に移動して、湿度が低下した結果である。
このように、(1)の実験の結果によれば、本発明の衣類内環境模擬測定装置は、使用する衣類の生地が異なる場合には、それぞれの生地の特性が反映され、それぞれの生地毎に異なる衣類内環境を模擬的に再現できることが確認された。
(2)の実験については、図14(a),(b)に示すように、本体部の姿勢を変えた場合には、姿勢によって異なる衣類内環境が模擬的に再現されていた。
即ち、図14(a)に示すように、本体部を、第1端側及び第2端側の各開口部が水平方向を向けた状態とした場合においては、水蒸気が上方に移動したことによって温度が高くなる傾向があらわれており、自然現象がそのまま反映された状態となっている。また、第1端側及び第2端側の各開口部が水平方向を向いている状態においては、本体部の内部空間の長手方向が高さ方向となっている関係で、高さ方向の位置による温度差が顕著となっている。
一方、本体部を、第1端側及び第2端側の各開口部が上下方向を向けた状態とした場合においては、第1〜第3温湿度センサがほぼ同じ高さに配置されている関係から、温度差が小さく、時間が経つにつれてあまり温度差がなくなった。これは、水蒸気は本体部の内部空間内に均等に流入し、上方に移動しているためである。
このように、(2)の実験の結果によれば、本発明の衣類内環境模擬測定装置は、本体部の姿勢に応じた衣類内環境を模擬的に再現できることができるため、着用者が寝ている状態や起きている状態等、着用者の姿勢に応じた衣類内環境の模擬的な再現を行うことができることが確認された。
1 衣類内環境模擬測定装置肩
2 本体部
3 保水性部材
4 加熱部材
5 本体部の内部空間
6 測定手段
7 水蒸気量調整シート
8 第1端側の開口部
9 第2端側の開口部
10 衣類の生地
15〜17 温湿度センサ
22 流入孔
25 生地用枠部材

Claims (7)

  1. 一方向に貫通する内部空間を有し、一端側の開口部に衣類の生地を着脱自在に被覆可能な本体部と、前記本体部の他端側の開口部側に配設され、保水している水を気化させてその水蒸気を前記本体部の内部空間に供給する保水性部材と、前記保水性部材を加熱する加熱部材と、前記本体部の内部空間内の温度及び湿度を測定する測定手段とを備え、前記本体部の内部空間を、模擬的に形成した衣類内の環境としてその内部空間の温度及び湿度を測定する衣類内環境模擬測定装置であって、
    前記保水性部材と本体部との間に、その本体部における前記他方側の開口部を被覆して、前記保水性部材から前記本体部の内部空間に供給する水蒸気量を調整する疎水性且つ非透湿性の水蒸気量調整シートが配設されていて、
    前記水蒸気量調整シートは、シート面の一方側の面から他方側の面に向けて貫通して、前記内部空間内に侵入させる水蒸気量に応じて前記保水性部材からの水蒸気を前記本体部内に均一に流入させる複数の、開口率が0.01〜20%であり且つ孔径が0.0004〜500μmである流入孔を有している、衣類内環境模擬測定装置。
  2. 前記本体部は、その両端側の前記開口部の向きを少なくとも上下方向と水平方向とに変更自在である、請求項1に記載の衣類内環境模擬測定装置。
  3. 前記測定手段は、前記本体部の内部空間に温湿度センサを備えていて、前記温湿度センサは、測定位置を変更自在に前記内部空間に取付けられている、請求項1又は請求項2に記載の衣類内環境模擬測定装置。
  4. 前記本体部は、生地を被覆させる開口部側に、対象となる生地を張った枠状の生地用枠部材を着脱自在に取付け可能である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の衣類内環境模擬測定装置。
  5. 前記本体部は、前記生地用枠部材を、その生地用枠部材に張った生地の面が前記本体部の開口部の方向に向いた状態で、複数取付け可能である請求項4に記載の衣類内環境模擬測定装置。
  6. 前記水蒸気量調整シートは、前記複数の流入孔が相互に同径であり、且つ前記本体部の内部空間内に供給する水蒸気量に応じて予め定めた開口率に設定されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の衣類内環境模擬測定装置。
  7. 前記水蒸気量調整シートは、前記複数の流入孔がシート面に相互に等間隔に配設されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の衣類内環境模擬測定装置。
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