JP3958731B2 - 衣服内環境模擬測定装置および評価方法 - Google Patents
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本発明は第2に、該容器を複数個積載してなる上記の衣服内環境模擬測定装置である。
本発明は第3に、マイクロヒータをエアブリッジ形成したセンサチップを温度と湿度の測定器として用いてなる上記の衣服内環境模擬測定装置である。
本発明は第4に、該容器の衣服内環境模擬室を仕切る試料の上側に、蓋を有する開口型の外部環境温度湿度調整室を設けてなる上記の衣服内環境模擬測定装置である。
本発明は第5に、該試験試料用の表面温度測定用の温度計を配してなる上記の衣服内環境模擬測定装置である。
本発明は第6に、該保水性部材に給水するための給水装置を配し該容器の外部の位置で該保水性部材に給水するようにした上記の衣服内環境模擬測定装置である。
本発明は第7に、上記の衣服内環境模擬測定装置を用いて、衣服内環境模擬室内および少なくとも外部環境の温度と湿度とを同時かつ経時的に測定する衣服内環境模擬評価方法において、それぞれの温度測定値の差または湿度測定値の差を使って非平衡状態を含む試験試料の熱および水蒸気の移動特性を解析することを特徴とする衣服内環境模擬評価方法である。
本発明は第8に、上記の衣服内環境模擬測定装置を用いて、衣服内環境模擬室内および少なくとも外部環境の温度と湿度とを同時かつ経時的に測定する衣服内環境模擬評価方法において、湿度の指標として絶対湿度または空気中水分量を用いて試験試料の水蒸気の移動特性を解析することを特徴とする衣服内環境模擬評価方法である。
以下に図面を用いて本発明の好ましい態様について説明する。
図1は本発明の実施に適する衣服内環境模擬測定装置の一例の概念図である。
この装置の主要部分は、平面状発熱性部材8と、その上に積層した保水性部材7と、その上面に着脱自在に積載しかつ透湿防水性シート状部材2と試料3とで仕切った衣服内環境模擬室4を有する容器1と、衣服内環境模擬室内等の雰囲気の温度と湿度とを同時かつ経時的に測定する温度湿度測定器とで構成する。
ここに衣服内環境模擬室内等とは、衣服内環境模擬室内と、外部環境または外部環境温度湿度調整室内を含み、このほか必要に応じて模擬皮膚環境温度湿度調整室内をも含む。外部環境温度湿度調整室および模擬皮膚環境温度湿度調整室については後述する。
平面状発熱性部材8は電熱ヒータ等(図示せず)で加熱される部材で、その材質はアルミニウム等の熱伝導性が良好な材質であることが好ましい。必要に応じて模擬汗腺を設けたり、多孔質体としても良い。また平面状発熱性部材8の上面内の温度分布は±2℃以内、好ましくは±1℃以内、より好ましくは±0.5℃以内であることが望ましい。しかしながら驚くべきことに、後述する本発明方法の一つである差分法を用いることにより、これら範囲外の温度分布であっても精度の良い試験結果が得られ、装置の簡便化を達成することができる。
保水性部材7は、保水性がある平面状の材料、すなわち織物、編物、シート、不織布、ろ紙等を用いることができるが、平面状発熱性部材8からの伝熱が均一かつ速やかで耐久性がある薄い緻密な織物が望ましい。材質は天然繊維、再生繊維、合成繊維を用いることができるが、綿等のセルロース系繊維や吸水性合成繊維を用いることが望ましい。繊維は直径が小で、異形断面であることが望ましい。
このように形成した衣服内環境模擬室4のみをそのまま使用しても良いが、後述の差分法により試料の熱および水蒸気の移動特性を解析するためには、容器の衣服内環境模擬室4を仕切る透湿防水性シート状部材2の下側に続けて、開口型の模擬皮膚環境温度湿度調整室5を設けることが望ましい。この場合、開口型の模擬皮膚環境温度湿度調整室5の側壁に相当する例えば円筒体17には、図3に示すように開口21を設け、保水性部材7より発生した水蒸気がその蒸気圧により強制的に衣服内環境模擬室4に送り込まれないようにすることが望ましい。驚くべきことに、このように構成することにより、再現性ある模擬皮膚環境温度湿度調整室5内の環境温度湿度が得られることが判明した。
温度と湿度の測定は、一般には熱電対やポリーマーセンサが用いられることが殆どであるが、本発明者の研究によるとこれら従来型のセンサを用いると結露を生じることが多く、このことが衣服内環境模擬室4内の温度湿度の測定値の変動を引き起こす大きな要因であることが判明した。本発明ではマイクロヒータをエアブリッジ形成したセンサチップを用いることで、この問題を解決することができることも見出した。
次に、容器について、より詳細に説明する。
衣服内環境模擬室4、模擬皮膚環境温度湿度調整室5、外部環境温度湿度調整室6の主要部分は、円筒体17とフランジ16とで構成する。これらの材質は任意に選ぶことができるが、測定環境温度および湿度の変動の影響を抑制し、供給雰囲気中の水分の容器系外への逃散を抑制し、吸湿等に伴う反応熱の容器系外への逃散を抑制し、かつ容器内の観察を容易にするために、透明な合成樹脂製、例えばアクリル樹脂や塩化ビニル樹脂製等であることが好ましい。特に5〜15mm程度の比較的肉厚の合成樹脂を用いることは、その重量が上述した固定手段なしの積載を一層効果的にする点で望ましい。
円筒体17とフランジ16とは接着するか、旋盤加工等により一体ものとすることが望ましい。
図3には衣服内環境模擬室4が一つの場合を例示したが、重ね着の模擬試験を行う場合には、試料を複数枚重ねて試験してもよいし、衣服内環境模擬室4を複数個使用して試験してもよい。
試料3の表面には必要に応じて温度センサ15、好ましくはフィルム形状の温度センサを設置して、吸湿に伴う発熱による試料表面温度の変化を測定できるようにしてもよい。
これら湿度または温度の測定値は連続的に測定し記録できることが望ましく、記録のための記憶装置を設けることが望ましい。また測定値の解析等のために、データ処理装置を設けることが望ましい。
以上に本発明の装置について説明したが、次に本発明の評価方法の特徴について説明する。測定方法については、実施例で詳細に説明することにする。
図2に示した概念図に準じた装置を用いた。
容器は図3および図4に準じた構造のアクリル樹脂製で、その主要部は中空円筒形(外径75mm、内径55mm)のものを用いた。模擬皮膚環境温度湿度調整室5と衣服内環境模擬室4と外部環境温度湿度調整室6下部と蓋14それぞれを構成する円筒体17の外形および内径は同一とした。また衣服内環境模擬室4の円筒体17の長さは53mm、模擬皮膚環境温度湿度調整室5の円筒体17および外部環境温度湿度調整室6下部の円筒体17の長さはそれぞれ35mm、外部環境温度湿度調整室6上部の蓋14の円筒体17の長さは30mmとした。模擬皮膚環境温度湿度調整室5の側壁には直径14mmの開口を設け、蓋14の円筒部側壁には調湿空気導入路20を設け、蓋14の円筒体と外部環境温度湿度調整室6の下部円筒体との間隙は10mmとした。組み立てた容器全体の重さはgであった。
このようにして組み立てた容器には次いで、外部環境温度湿度調整室6上部の蓋14から調湿空気を300cc/分の割合で導入した。導入する調湿空気は、空気中の水分をシリカゲル充填管で除去して調整した相対湿度10%の除湿空気を用いた。この調湿空気は、温度および湿度の測定開始以前から供給を開始し、測定中は連続的に供給した。
また温度湿度測定装置も起動し、各測定値はインターフェース(リコーエレメックス株式会社製RS485型)を介してパソコンに連続的に収集、記録した。
このホットプレートの上面に、水中に漬けて含水させた上記綿の添付白布を気泡が含まれないように平面状に積層し、ホットプレートの表面温度が所定温度(本実施例の場合は36℃)になるように調節した。
そののち、実施例1で説明したようにして組み立てた容器の模擬皮膚環境温度湿度調整室5下側の開口端を下にして、ホットプレート上の含水綿添付白布面の上に積載した。この含水綿添付白布には、水を満たしたビーカーから綿布の毛細管現象を利用して水を供給した。
実施例1〜2で容器を組み立て、装置の測定準備を行ったのち、標準状態(20℃、65%RH)の恒温恒湿湿内で、試験容器内各室の温度および相対湿度の測定を60分間連続して行った。なお試料としては、JIS L 0803(染色堅牢度試験用添付白布)に規定されたナイロン、絹、ウール、レーヨン、キュプラ、綿、エステル各添付白布を用いた。それら試料の60分間の測定値の全平均値を用い、最小有意差法により試料間の有意差検定を行った。
相対湿度の差について、代表的な結果を表1から表3に示す。表中の**印および*印はそれぞれ危険率1%および5%で有意であることを表す。添付白布のナイロンとキュプラ・綿、絹とレーヨン・キュプラ・綿、ウールとレーヨン・綿との差は1%の危険率で有意であった。またウールとキュプラとの差は5%の危険率で有意であった。
実施例3の表2では添付白布の絹とウール・エステルとの相対湿度差は有意でなかった。そこで絶対湿度を求めて再検討してみた。最小有意差法で解析した例を表6に示す。その結果、衣服内気候模擬室内の絶対湿度は、絹とウール・エステルとの差が1%の危険率で有意となり、検出力が高まったことが判る。絶対湿度が異なるということは、温度が同一の場合には水蒸気圧が異なることになり、水蒸気の透過性に差異をもたらすと考えられる。
実施例3で得られた温度と相対湿度の測定時間に対する挙動は、測定初期と後期とでは挙動が大きく異なる。すなわち温度、相対湿度とも測定初期(特に0〜10分)では変化が急な非平衡状態であり、測定後期(特に50〜60分)では変化が緩慢で平衡状態に近い。
そこでJIS L 1096(一般織物試験方法)とJIS L 1099(繊維製品の透湿度測定方法)とに規定されている方法に従い添付白布各試料の通気量と透湿度とを測定し、測定初期および後期の衣服内環境模擬室内の温度と湿度指標との相関性を検討してみた。
まず水分移動に関係する因子の相関係数は表7に示すとおりで、湿度の指標としての絶対湿度は測定初期では通気量と最も相関性が高く、測定後期では透湿度と最も相関性が高いことが判った。これに対し、湿度の指標として相対湿度を用いた場合は、湿度の指標として絶対湿度を用いた場合よりも相関性が低く、傾向が把握しにくいことも判った。
図1に示した概念図に準じた装置で、上部解放開放型容器を用い、温度のみを調節した事務所内で行った以外は実施例1〜実施例3と同様にして試験を行った。
模擬皮膚環境温度湿度調整室内の相対湿度は驚くべきことに試験開始後1分程度で100%に到達した。しかしながら模擬皮膚環境温度湿度調整室内の温度は、試料にもよるが試験開始後20〜30分は急速に上昇し、その後も徐々に上昇する場合があることが判明した。また衣服内環境模擬室内の温度もその影響を受け、同様な傾向を示した。しかしながら各室の温度の差分を求めると、実際には10〜20分程度で平衡状態になることがわかり、より現実に近い解析をすることができる。表9にウール添付白布の場合の例を示す。
2 透湿防水性シート状部材
3 試料
4 衣服内環境模擬室
5 模擬皮膚環境温度湿度調整室
6 外部環境温度湿度調整室
7 保水性部材
8 発熱性部材
9 温度湿度センサ
10 温度湿度測定器
11 空気供給器
12 温度測定器
13 温度測定器
14 蓋
15 温度センサ
16 フランジ
17 円筒体
18 ボルト穴
19 ボルト
20 空気導入路
21 開口
Claims (8)
- 衣服内環境模擬室内の温度と湿度とを同時かつ経時的に測定する衣服内環境模擬測定装置において、発熱性部材の上に配した保水性部材の上に、透湿防水性シート状部材と試料とで仕切った衣服内環境模擬室を有する容器を該保水性部材に対して着脱自在に積載し、且つ該容器の衣服内環境模擬室を仕切る透湿防水性シート状部材の下側に、側壁に開口をもつ模擬皮膚環境温度湿度調整室を設けたことを特徴とする衣服内環境模擬測定装置。
- 該容器を複数個積載してなる請求項1記載の衣服内環境模擬測定装置。
- マイクロヒータをエアブリッジ形成したセンサチップを温度と湿度の測定器として用いてなる請求項1または2記載の衣服内環境模擬測定装置。
- 該容器の衣服内環境模擬室を仕切る試料の上側に、蓋を有する開口型の外部環境温度湿度調整室を設けてなる請求項1〜3のいずれか1項記載の衣服内環境模擬測定装置。
- 該試験試料の表面温度測定用の温度計を配してなる請求項1〜4のいずれか1項記載の衣服内環境模擬測定装置。
- 該保水性部材に給水するための給水装置を配し該容器の外部の位置で該保水性部材に給水するようにした請求項1〜5のいずれか1項記載の衣服内環境模擬測定装置。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の衣服内環境模擬測定装置を用いて、衣服内環境模擬室内および少なくとも外部環境の温度と湿度とを同時かつ経時的に測定する衣服内環境模擬評価方法において、それぞれの温度測定値の差または湿度測定値の差を使って非平衡状態を含む試験試料の熱および水蒸気の移動特性を解析することを特徴とする衣服内環境模擬評価方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の衣服内環境模擬測定装置を用いて、衣服内環境模擬室内および少なくとも外部環境の温度と湿度とを同時かつ経時的に測定する衣服内環境模擬評価方法において、湿度の指標として絶対湿度または空気中の水蒸気量を用いて試験試料の水蒸気の移動特性を解析することを特徴とする衣服内環境模擬評価方法。
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