以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《実施形態1》
図1に、実施形態1に係る車体前部構造の概略的な平面図である。図2は、図1のII−II線における模式的な断面図である。
車体1の前部には、ダッシュパネル11によって車室200と仕切られたエンジンルーム100が形成されている。ダッシュパネル11からは、2本のフロントサイドフレーム12,12が延びている。各フロントサイドフレーム12の前端は、クラッシュカン13を介してバンパレインフォースメント14に接続されている。バンパレインフォースメント14の前方には、車体1の前面を構成するバンパフェイス15が設けられている。バンパフェイス15には、グリル15aが形成されている。このグリル15aを介して、エンジンルーム100内に走行風が導入される。車体1の下部には、エンジンルーム100の下部を区画するアンダーカバー18が設けられている。
バンパレインフォースメント14の後方には、ラジエータ16が設けられている。ラジエータ16とグリル15aとの間には、シャッタ17が設けられている。シャッタ17は、開閉可能に構成されており、開状態のときにはグリル15aから導入された走行風をラジエータ16に導く一方、閉状態のときにはグリル15aから導入された走行風がラジエータ16へ流入するのを遮断する。
エンジンルーム100において、2本のフロントサイドフレーム12,12の間であって、ダッシュパネル11とラジエータ16との間にエンジン2が配置されている。
エンジン2は、エンジン本体20と、吸気系3と、排気系4とを有している。
エンジン本体20は、一列に並ぶ複数の気筒21,21,…を有している。エンジン本体20には、トランスミッションを含む駆動ユニット22が気筒列方向に隣接して設けられている。また、エンジン本体20には、各気筒に燃料を噴射する燃料噴射弁と、燃料噴射弁に燃料を供給する燃料供給装置が設けられている。燃料供給装置は、燃料タンクからの燃料を昇圧させる低圧ポンプと、低圧ポンプにより昇圧された燃料をさらに昇圧させる高圧ポンプ23とを含んでいる。高圧ポンプ23は、エンジン本体20に隣接して配置されている。
吸気系3は、エンジン本体20へ供給される吸気を取り込む吸気装置31と、吸気装置31によって取り込まれた吸気を浄化するエアクリーナ32と、エンジン本体20に取り付けられた吸気マニホールド33とを含んでいる。エアクリーナ32と吸気マニホールド33とは、吸気管34を介して接続されている。
排気系4は、エンジン本体20に取り付けられた排気マニホールド41を含んでいる。
エンジン2は、気筒列方向が前後方向と一致する状態で、即ち、縦置きに配置されている。このとき、駆動ユニット22が後側に、吸気マニホールド33が左側に、排気マニホールド41が右側に位置する。
このように配置されたエンジン2は、暖機運転の促進のために、その周囲が複数のパネルで覆われている。詳しくは、エンジン2の上方には、上方パネル24が設けられている。尚、図1では、上方パネル24の図示を省略している。エンジン2の右側方には、右側方パネル25が設けられ、エンジン2の左側方には左側方パネル26が設けられている。右側方パネル25及び左側方パネル26は、それぞれ対応するフロントサイドフレーム12に取り付けられている。上方パネル24の右端部は、右側方パネル25の上端部に取り付けられ、上方パネル24の左端部は、左側方パネル26の上端部に取り付けられている。上方パネル24、右側方パネル25及び左側方パネル26は、遮熱性の高い材料(例えば、耐熱性があり、熱伝導性が低い材料)で形成された遮熱パネルである。
エンジン2の下方には、アンダーカバー18が設けられ、エンジン2の前方には、ラジエータ16が設けられ、エンジン2の後方には、ダッシュパネル11が設けられている。ラジエータ16は、グリル15aを通過した走行風が通過し得るが、シャッタ17が閉じられている状態においては、そのような走行風の通過はなく、上方パネル24と同様のパネルとして機能する。これらアンダーカバー18、ラジエータ16及びダッシュパネル11が、エンジン2の周囲を覆うパネルの機能も有している。こうして、エンジン2の周囲を複数のパネルで覆ってカプセル化することによって、エンジン2からの放熱が抑制されるので、エンジン2の冷間時等においてはエンジン2の暖機運転が促進される。
続いて、エンジン2の吸気装置の構成について詳細に説明する。
吸気装置31は、外気を導入する外気ダクト35と、外気ダクト35に接続され、外気の少なくとも一部を排気系4の周囲に導く分岐ダクト部36と、外気ダクト35に設けられた切換弁37とを備えている。
外気ダクト35は、車両前後方向に延びる上流部35aと、車幅方向に延びる下流部35bとを有し、全体として屈曲した形状をしている。上流部35aの上流端は、ラジエータ16よりも前方であってグリル15aのすぐ後方に位置し、前方に向かって開口している。下流部35bの下流端は、エアクリーナ32に接続されている。外気ダクト35は、上方パネル24と一体成形されている。ただし、外気ダクト35は、上方パネル24と別々に成形された後で、上方パネル24に一体的に接合される構成であってもよい。
分岐ダクト部36は、外気ダクト35の上流部35aと下流部35bとの接続部、即ち、外気ダクト35の屈曲部に接続されている。この外気ダクト35の屈曲部を、接続部35cと称する。換言すると、接続部35cにおいては、上流部35aと下流部35bと分岐ダクト部36とが互いに接続されている。分岐ダクト部36は、排気系4、より具体的には、排気マニホールド41に向かって車両前後方向に延びている。分岐ダクト部36は、上流部35aと一直線状に延びている。つまり、上流部35a及び分岐ダクト部36は、エンジンルーム100内において車幅方向中央よりも右側(縦置きに配置されたエンジン2の排気マニホールド41が位置する側)にオフセットされた位置に配置されている。分岐ダクト部36は、外気ダクト35よりも耐熱性がある材料で成形されている。分岐ダクト部36は、外気ダクト35に一体的に接合されており、ひいては、上方パネル24と一体的に構成されている。
切換弁37は、外気ダクト35の接続部35cに配置されている。切換弁37は、上下方向に延びる回転軸回りに回転可能な弁体37aと、弁体37aを駆動するアクチュエータ37bとを有している。切換弁37は、弁体37aの状態を切り替えることによって、外気ダクト35及び分岐ダクト部36における空気の流れを切り替える。
切換弁37による流路の切替について、図3〜5を参照しながら詳しく説明する。図3は、切換弁37が第1状態のときの吸気の流れを示す図である。図4は、切換弁37が第2状態のときの吸気の流れを示す図である。図5は、切換弁37が第3状態のときの吸気の流れを示す図である。
まず、切換弁37が第1状態のときには、図3に示すように、弁体37aは、上流部35aを下流部35b及び分岐ダクト部36から遮断し、下流部35bと分岐ダクト部36とを連通させる状態となる。これにより、外気ダクト35のうち接続部35cよりも上流側の部分が閉じられ、排気系4の周囲の空気が分岐ダクト部36から下流部35bに導入される。
例えば、切換弁37の第1状態は、吸気温度を高めたいときに使用される。排気系4の周囲の空気は、外気に比べて高温となる。冷間時であっても、排気系4の周囲の空気の温度は、外気に比べれば高い。例えば、ディーゼルエンジンや圧縮自己着火燃焼を行うガソリンエンジン等の自己着火を利用した内燃機関においては、新気(吸気)又は混合気を自己着火可能な温度まで高める必要がある。冷間時は、外気温度及びエンジン本体20の温度が共に低いため、新気又は混合気の温度を適切な温度まで上昇させることが難しい。それに対し、切換弁37を第1状態とすることによって、排気系4の周囲の比較的高温の空気を吸気としてエンジン本体20に取り込むことができるため、新気又は混合気の温度を適切な温度まで上昇させやすくなる。これにより、冷間時、さらには半暖機時に安定した着火性を確保することができる。
切換弁37が第2状態のときには、図4に示すように、弁体37aは、上流部35aと分岐ダクト部36とを連通させると共に、上流部35aと下流部35bとを連通させる状態となる。これにより、上流部35aから取り込まれた外気の一部が分岐ダクト部36を介して排気系4の周囲に導かれる一方、残りの外気が下流部35bを介してエンジン本体20へ導かれる。
第2状態においては、第1状態と異なり、上流部35aがその下流側の部分(即ち、下流部35b及び分岐ダクト部36)と連通しているので、走行風の動圧を利用して、上流部35aに外気が取り込まれる。上流部35aに取り込まれた外気の一部は、分岐ダクト部36へ流入し、排気系4へ向かって流れる。上流部35aに取り込まれた外気の残りは、下流部35bへ流入し、エアクリーナ32へ向かって流れる。
尚、第2状態においては、下流部35bと分岐ダクト部36とも連通している。しかし、上流部35aに取り込まれた外気の動圧により、分岐ダクト部36では接続部35cから排気系4の方へ向かう向きに外気が流通するので、排気系4の周囲の空気が分岐ダクト部36へ流入することはない。
例えば、切換弁37の第2状態は、エンジン2、特に、排気系4を冷却したいときに使用される。エンジン2においては排気系4が特に高温となりやすい。通常、外気は排気系4の周囲の空気よりも低温なので、外気を排気系4の周囲へ導入することにより、排気系4を冷却することができる。これにより、排気温度が低減されるので、排気系4の部品が高温に晒されることを抑制することができる。特に、前記の構成では、排気系4の上流部分である排気マニホールド41が冷却されるので、排気系4のうち比較的上流側の部分で排気温度を低減することができ、排気系4の部品が高温に晒されることを効果的に抑制することができる。さらに、エンジン2は、燃料供給装置として高圧ポンプ23を有しており、この高圧ポンプ23は、エンジン本体20に近接して配置されている。すなわち、エンジン2においては、高圧ポンプ23に、排気マニホールド41からの熱が伝導しやすい構成となっている。高圧ポンプ23が高温になって燃料中に気泡が発生してしまうと、高圧ポンプ23から燃料を適切に圧送することが難しくなる。前述のように排気マニホールド41を冷却することによって、高圧ポンプ23の燃料中に気泡が発生することも抑制することができる。
切換弁37が第3状態のときには、図5に示すように、弁体37aは、上流部35aと下流部35bとを連通させ、分岐ダクト部36を外気ダクト35から遮断する。これにより、上流部35aから取り込まれた全ての外気が下流部35bを介してエンジン本体20へ導かれる。
例えば、切換弁37の第3状態は、吸気温度を上げたくないとき、密度の大きい吸気を導入したい(即ち、質量流量を高めたいとき)又は走行風の動圧が低いとき等に使用される。例えば、ディーゼルエンジンや圧縮自己着火燃焼を行うガソリンエンジン等の自己着火を利用した内燃機関においては、前述のように新気又は混合気の温度を適切に制御する必要があり、エンジン2の運転状態によっては吸気温度を低下させたい状況もある。そのような場合には、切換弁37は第3状態に切り替えられる。切換弁37を第3状態にすることにより、比較的高温の排気系4の周囲の空気がエンジン本体20に導入されることが停止され、比較的低温の外気がエンジン本体20に導入される。また、加速時等のように吸気の質量流量を増加させたい場合には、切換弁37は第3状態に切り替えられる。外気は、排気系4の周囲の空気に比べて低温なので、密度も排気系4の周囲の空気に比べて大きい。それに加えて、上流部35aから取り込まれた吸気の全てを下流部35bへ流入させることができるので、より多くの外気をエンジン本体20に取り込むことができる。これらの結果、吸気の質量流量を高めることができる。さらに、低車速時のように走行風の動圧が低い場合には、切換弁37は第3状態に切り替えられる。第3状態では、上流部35aから取り込まれた吸気の全てを下流部35bへ流入させるので、走行風の動圧をできる限り活用してエンジン本体20に吸気を取り込むことができる。
以上のように、エンジン2の吸気装置31は、エンジンルーム100内に配置され、外気をエンジン本体20に導入する外気ダクト35を備え、外気ダクト35には、外気の少なくとも一部を排気系4の周囲に導く分岐ダクト部36が接続されている。
この構成によれば、外気ダクト35に分岐ダクト部36を接続するという簡単な構成で、排気系4の冷却を実現することができる。排気系4を冷却することによって排気温度を低減できると共に、エンジン2の各部品(例えば、高圧ポンプ23)の温度上昇を抑制することができる。その結果、簡易な構成でエンジン2の熱害を抑制することができる。
また、吸気装置31は、外気ダクト35に設けられた切換弁37をさらに備え、切換弁37は、外気ダクト35のうち分岐ダクト部36が接続された接続部35cよりも上流側の部分を閉じて、排気系4の周囲の空気を分岐ダクト部36を介してエンジン本体20に導入する第1状態と、外気の少なくとも一部を分岐ダクト部36を介して排気系4の周囲に導く第2状態とに切替可能に構成されている。
この構成によれば、外気ダクト35及び分岐ダクト部36における空気の流れが切換弁37によって切り替えられる。具体的には、切換弁37が第1状態のときには、排気系4の周囲の空気が分岐ダクト部36を介してエンジン本体20に導入される。排気系4の周囲の空気は、外気に比べて高温になる傾向にあるため、比較的温度の高い吸気をエンジン本体20に導入することができる。一方、切換弁37が第2状態のときには、外気の少なくとも一部が排気系4の周囲に導入される。外気は、排気系4の周囲の空気に比べて低温となる傾向にあるため、比較的温度の低い外気により排気系4を冷却することができる。これにより、排気温度が低減され、排気系4の熱害を抑制することができる。
さらに、エンジン2の上方及び側方が遮熱パネルに覆われている。具体的には、エンジン2の上方には上方パネル24が設けられ、エンジン2の左右には右側方パネル25及び左側方パネル26が設けられている。さらに、エンジン2の下方にはアンダーカバー18が設けられ、エンジン2の前方にはラジエータ16が設けられ、エンジン2の後方にはダッシュパネル11が設けられている。つまり、エンジン2は、その周囲がパネル又はパネル状の部材でカプセル状に覆われており、排気熱がエンジン2の周囲にこもりやすい構成をしている。このような構成では、エンジン2の冷間時には暖機運転が促進される点で有利である一方、高負荷高回転の運転領域のようにエンジン2が高温となりやすい状況においては不利である。
それに対し、外気ダクト35に接続された分岐ダクト部36を介して外気の一部を排気系4の周囲に導入することによって、エンジン2の熱害を抑制することができる。つまり、エンジン2のカプセル化による暖機の促進と、エンジン2の熱害の抑制とを両立することができる。
また、外気ダクト35は、上方パネル24と一体的に形成されている。
この構成によれば、上方パネル24及び外気ダクト35の組立性を向上させることができる。
さらに、分岐ダクト部36は、外気ダクト35のうち接続部35cよりも上流側の部分、即ち、上流部35aと直線状に延びている。
この構成によれば、上流部35aに取り込まれた外気が分岐ダクト部36を通過して排気系4の周囲へ流れる際の流路抵抗を低減することができる。これにより、走行風の動圧を効果的に活用して、外気を排気系4の周囲へ導入することができる。
さらに、上流部35aは、車両前後方向に延びている。
この構成によれば、走行風の動圧を効果的に活用して、外気を外気ダクト35へ取り込むことができる。さらに、上流部35aに続く分岐ダクト部36も車両前後方向に延びるので、上流部35aに取り込まれた走行風が分岐ダクト部36へ流入する際の流路抵抗を低減することができる。
《実施形態2》
続いて、実施形態2に係るエンジンの吸気装置について説明する。図6は、実施形態2に係る車体前部構造の概略的な平面図である。
実施形態2は、エンジン2が横置きに配置される点で、実施形態1と異なる。また、エンジン2が横置きに配置されることに伴って、吸気装置の構成が異なっている。ただし、実施形態2の吸気装置の各部の基本的な機能は、実施形態1と同様である。そこで、実施形態2の構成のうち、実施形態1と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成を中心に説明する。
実施形態2においては、図6に示すように、エンジン2は、気筒列方向が車幅方向と一致する状態で、即ち、横置きに配置されている。このとき、駆動ユニット22が左側に、吸気マニホールド33が前側に、排気マニホールド41が後側に位置する。
エンジン本体20、吸気系3及び排気系4の基本的な構成は、実施形態1と同様である。排気系4がエンジン本体20の後側に配置されたことにより、吸気系3の吸気装置231の構成が実施形態1と少し異なっている。
図7は、吸気装置231の部分的な斜視図である。吸気装置231は、外気を導入する外気ダクト235と、外気ダクト235に接続され、外気の少なくとも一部を排気系4の周囲に導く分岐ダクト部236と、外気ダクト235に設けられた切換弁237とを備えている。
外気ダクト235は、車両前後方向に延びる上流部235aと、車幅方向に延びる下流部235bとを有し、全体として屈曲した形状をしている。上流部235aの上流端は、グリル15aのすぐ後方に位置し、前方に向かって開口している。下流部235bの下流端は、エアクリーナ32に接続されている。外気ダクト235は、上方パネル24(図6では、図示省略)と一体成形されている。ただし、外気ダクト235は、上方パネル24と別々に成形された後で、上方パネル24に一体的に接合される構成であってもよい。
分岐ダクト部236は、外気ダクト235の上流部235aと下流部235bとの接続部235cに接続されている。外気ダクト235は、接続部235cにおいて屈曲している。接続部235cにおいては、上流部235aと下流部235bと分岐ダクト部236とが互いに接続されている。分岐ダクト部236は、排気系4、より具体的には、排気マニホールド41に向かって車両前後方向に延びている。分岐ダクト部236は、平面視で上流部235aと一直線状に延びている。分岐ダクト部236は、外気ダクト235よりも耐熱性がある材料で成形されている。分岐ダクト部236は、外気ダクト235に一体的に接合されており、ひいては、上方パネル24と一体的に構成されている。
排気系4は、エンジン本体20の後方に位置するので、分岐ダクト部236は、エンジン本体20と上方パネル24との間の空間を横切って排気系4の近傍まで延びている。エンジン本体20と上方パネル24との間の空間は狭いので、分岐ダクト部236は、上下寸法に比べて車幅方向の寸法が大きい扁平な形状をしている。
また、外気ダクト235の上流部235a及び下流部235bも分岐ダクト部236と同様に扁平な形状をしている。上流部235aの上流端は、グリル15aの後方に開口しているので、分岐ダクト部236よりも低い位置に位置する。そのため、外気ダクト235の接続部235cは、後方ほど上方に位置するように傾斜している。それに伴い、下流部235bのうち接続部235cに近い部分も、後方ほど上方に位置するように傾斜している。下流部235bの下流端は、円筒状となって、エアクリーナ32に接続されている。
切換弁237は、外気ダクト235の接続部235cに配置されている。切換弁237は、水平方向に延びる回転軸回りに回転可能な弁体237aと、弁体237aを駆動するアクチュエータ237bとを有している。切換弁237は、弁体237aの状態を切り替えることによって、外気ダクト235及び分岐ダクト部236における空気の流れを切り替える。詳しくは、弁体237aは、上流部235aの下流端を閉じる位置と、接続部235cと平行に傾斜した位置と、分岐ダクト部236の上流端を閉じる位置とに回転移動可能に構成されている。
切換弁237による流路の切替について、図8〜10を参照しながら詳しく説明する。図8は、第1状態の切換弁237を示す図である。図9は、第2状態の切換弁237を示す図である。図10は、第3状態の切換弁237を示す図である。
切換弁237が第1状態のときには、図8に示すように、弁体237aは、上流部235aの下流端を閉じる位置に位置する。これにより、弁体237aは、上流部235aを下流部235b及び分岐ダクト部236から遮断し、下流部235bと分岐ダクト部236とを連通させる状態となる。これにより、上流部235aを介した外気の取り込みが阻止され、排気系4の周囲の空気が分岐ダクト部236から下流部235bに導入される。
切換弁237が第2状態のときには、図9に示すように、弁体237aは、接続部235cと平行に傾斜した位置に位置する。この状態においては、弁体237aは、上流部235aも分岐ダクト部236も閉じていない。これにより、上流部235aから取り込まれた外気の一部が分岐ダクト部236を介して排気系4の周囲に導かれる一方、残りの外気が下流部235bを介してエンジン本体20へ導かれる。
切換弁237が第3状態のときには、図10に示すように、弁体237aは、分岐ダクト部236の上流端を閉じる位置に位置する。これにより、上流部235aから取り込まれた全ての外気が下流部235bを介してエンジン本体20へ導かれる。
切換弁237の第1状態、第2状態及び第3状態は、実施形態1で説明したのと同様に使い分けられる。
以上のように、エンジン2の吸気装置231は、エンジンルーム100内に配置され、外気をエンジン本体20に導入する外気ダクト235を備え、外気ダクト235には、外気の少なくとも一部を排気系4の周囲に導く分岐ダクト部236が接続されている。
この構成によれば、エンジン2が横置きの場合であっても、外気ダクト235に分岐ダクト部236を接続するという簡単な構成で、排気系4の冷却を実現することができる。排気系4を冷却することによって排気温度を低減できると共に、エンジン2の各部品(例えば、高圧ポンプ23)の温度上昇を抑制することができる。その結果、簡易な構成でエンジン2の熱害を抑制することができる。
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
例えば、上方パネル24、右側方パネル25及び左側方パネル26は、遮熱パネルに限られるものではない。これらのパネルは、エンジン音が外部に漏れることを抑制するための遮音パネルであってもよい。エンジン2が遮音パネルに覆われた構成であっても、排気熱がエンジン2の周囲にこもりやすくなるので、外気ダクト35に接続された分岐ダクト部36を介して外気の一部を排気系4の周囲に導入する構成がエンジン2の熱害の抑制の観点で有効となる。
また、上流部35a及び分岐ダクト部36、並びに、上流部235a及び分岐ダクト部236は、車両前後方向に延びているが、これに限られるものではない。上流部35a,235aは、走行風を取り込むことができる構成であれば、どの方向に延びていてもよい。また、上流部35a,235aは、車両前方に開口する構成に限られず、走行風が流入する限りにおいては車両側方を向いて開口していてもよい。さらに、分岐ダクト部36,236は、流路抵抗を低減する観点からは、上流部35a,235aと直線状に延びていることが好ましいが、上流部35a,235aに取り込まれた走行風がその慣性で分岐ダクト部36,236に流入する限りにおいては、任意の形状でよい。
また、分岐ダクト部36,236は、走行風を排気系4のうち排気マニホールド41に導いているが、これに限られるものではない。分岐ダクト部36,236は、走行風を排気マニホールド41以外の排気系4の部品に導いてもよい。例えば、エンジン2がターボ過給機を有している場合には、分岐ダクト部36,236は、走行風をターボ過給機のタービンの周辺に導くように延びていてもよい。
さらに、実施形態1、2の切替弁37、237は、第1状態、第2状態及び第3状態に流路切替を行うように作動するようにしているが、外気温度、エンジン運転状態及び車両速度などの制御条件により、例えば第1状態と第2状態の間で連続的に開度比率を制御し、高温の空気と低温の空気を混合して適温化するようにしてもよく、また、第2状態から第3状態も連続的に開度比率を制御するようにしてもよい。