以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1、図2は、本実施形態に係る車両1のエンジンルーム内の概略構成図である。この概略構成図は車両進行方向と直交する方向から見たものである。
エンジンルームの最前部には、後述する廃熱回生装置としてのランキンサイクル31の構成部品である凝縮器(前面熱交換器)38が配置され、その直後には内燃機関1用のラジエータ11が配置される。
そして、車体の前端には、走行中の外気(走行風ともいう)を凝縮器38へ導入するためのグリル101が開口している。また、グリル101には、グリル101を開閉するグリルシャッター100が備えられている。
グリルシャッター100は、水平方向に延びる回転軸を中心として回転可能な複数の板状部材と、板状部材を回転駆動するための図示しない電動モータ等のアクチュエータと、を含んで構成されている。複数の板状部材は所定間隔を持って配置され、開状態では図1に示すように各板状部材間に隙間が生じる回転角度となり、一方、閉状態では図2に示すように各板状部材間に隙間が生じない回転角度となる。
なお、上述したグリルシャッター100の構造はあくまでも一例であり、グリル101を開閉できるものであれば他の構造であってもよい。
凝縮器38は、ラジエータ11と同様に、放熱フィンを備えるチューブからなるコアを備え、コアの隙間を通過する空気と熱交換することで内部を流れる冷媒を冷却するものである。
図1のようにグリルシャッター100が開いた状態では、グリル101から導入された走行風が凝縮器38及びラジエータ11を通過する。エンジンルーム内の空気は、内燃機関1やその他の補機等から発生する熱により温められているので、走行風が導入された方が凝縮器38から外気への放熱量が増大し、廃熱回生効率が向上する。上記のように、外気を導入することでランキンサイクル31による廃熱回生効率が高まり、廃熱回生による燃費性能の向上が見込まれる。ただし、走行風をエンジンルーム内に導入することは、空気抵抗の増大による空力性能の低下を招くので、燃費性能を低下させる要因にもなり得る。
一方、図2のようにグリルシャッター100が閉じた状態では、走行風はエンジンルーム内に導入されずに、車体周りを流れることになる。このため、ランキンサイクル31による廃熱回生効率を上昇させる効果は得られないが、空力性能の向上による燃費性能の向上が見込まれる。なお、グリルシャッター100を閉じてエンジンルームへの外気の導入を制限すると、冷機始動時の暖機時間の短縮や、エンジン及び変速機の過冷却の防止といった効果も得られ、これらの効果も燃費性能の向上に貢献する。
また、上記のように廃熱回生効率は外気への放熱量に依存するので、外気温が高くなるほど、廃熱回生による燃費性能の向上代は小さくなる。
したがって、グリルシャッター100の開度は、廃熱回生による燃費性能の向上代と空力性能の向上による燃費性能の向上代とを考慮して決定する必要がある。グリルシャッター100の開度制御の詳細については、後述する。
次に、本実施形態で廃熱回生装置として用いるランキンサイクル31について説明する。
図3は本発明の前提となるランキンサイクルのシステム全体を表した概略構成図を示している。図3のランキンサイクル31は、冷凍サイクル51と冷媒および凝縮器38を共有する構成になっており、ランキンサイクル31と冷凍サイクル51を統合したサイクルのことを、これ以降統合サイクル30と表現する。尚、統合サイクル30は、ランキンサイクル31と冷凍サイクル51の冷媒が循環する回路(通路)及びその途中に設けられたポンプ、膨張機、凝縮器等の構成要素に加え、冷却水や排気の回路(通路)等を含めたシステム全体を指すものとする。
ランキンサイクル31を運転するのは、車速が後述するランキンサイクル運転域に移行したときである。内燃機関2は排気通路3を備え、排気通路3は、排気マニホールド4と、排気マニホールド4の集合部に接続される排気管5とから構成される。排気管5は途中でバイパス排気管6と分岐しており、バイパス排気管6にバイパスされる区間の排気管5には、排気と冷却水との間で熱交換を行なうための廃熱回収器22を備える。廃熱回収器22とバイパス排気管6は、例えば、これらを一体化した廃熱回収ユニット23として、床下触媒88とその下流のサブマフラー89との間に配置される。
図3に基づき、まず、エンジン冷却水回路について説明する。内燃機関2を出た冷却水(暖機状態で80〜90℃程度)は、ラジエータ11を通る冷却水通路13と、ラジエータ11をバイパスするバイパス冷却水通路14とに別れて流れる。その後、2つの流れは、両通路13、14を流れる冷却水流量の配分を決めるサーモスタットバルブ15で再び合流し、さらに冷却水ポンプ16を経て内燃機関2に戻る。
冷却水ポンプ16は内燃機関2によって駆動され、その回転速度はエンジン回転速度と同調している。サーモスタットバルブ15は、冷却水温度が高い場合に冷却水通路13側のバルブ開度を大きくしてラジエータ11を通過する冷却水量を相対的に増やし、冷却水温度が低い場合に冷却水通路13側のバルブ開度を小さくしてラジエータ11を通過する冷却水量を相対的に減らす。内燃機関2の暖機前など特に冷却水温度が低い場合には、冷却水の全量がバイパス冷却水通路14側を流れる。
一方、バイパス冷却水通路14側のバルブ開度は全閉になることはない。ラジエータ11を流れる冷却水流量が多くなったときに、バイパス冷却水通路14を流れる冷却水の流量は、冷却水の全量がバイパス冷却水通路14側を流れる場合と比べて低下するが、流れが完全に停止することがないようにサーモスタットバルブ15が構成されている。
ラジエータ11をバイパスするバイパス冷却水通路14は、冷却水通路13から分岐して後述の熱交換器36に直接接続する第1バイパス冷却水通路24と、冷却水通路13から分岐して廃熱回収器22を経た後に熱交換器36に接続する第2バイパス冷却水通路25とからなる。
バイパス冷却水通路14には、ランキンサイクル31の冷媒と熱交換を行なう熱交換器36を備える。この熱交換器36は加熱器と過熱器とを統合したものである。すなわち、熱交換器36には2つの冷却水通路36a、36bがほぼ一列に、また、冷媒と冷却水が熱交換可能なようにランキンサイクル31の冷媒が流れる冷媒通路36cは冷却水通路36a、36bと隣接して設けられている。さらに熱交換器36の全体を俯瞰したときにランキンサイクル31の冷媒と冷却水が互いに流れ方向が逆向きとなるように各通路36a、36b、36cが構成されている。
詳細には、ランキンサイクル31の冷媒にとって上流(図3の左)側に位置する一方の冷却水通路36aは、第1バイパス冷却水通路24に介装されている。この冷却水通路36a及びこの冷却水通路36aに隣接する冷媒通路部分からなる熱交換器左側部分は、内燃機関2から出た冷却水を冷却水通路36aに直接導入することで、冷媒通路36cを流れるランキンサイクル31の冷媒を加熱するための加熱器である。
ランキンサイクル31の冷媒にとって下流(図3の右)側に位置する他方の冷却水通路36bには、第2バイパス冷却水通路25を介して廃熱回収器22を経た冷却水が導入される。冷却水通路36b及びこの冷却水通路36bに隣接する冷媒通路部分からなる熱交換器右側部分(ランキンサイクル31の冷媒にとって下流側)は、内燃機関2の出口の冷却水を排気によってさらに加熱した冷却水を冷却水通路36bに導入することで、冷媒通路36cを流れる冷媒を過熱する過熱器である。
廃熱回収器22の冷却水通路22aは排気管5に隣接して設けている。廃熱回収器22の冷却水通路22aに内燃機関2の出口の冷却水を導入することで、冷却水を高温の排気によって例えば110〜115℃程度まで加熱することができる。廃熱回収器22の全体を俯瞰したときに、排気と冷却水とが互いに流れる向きが逆向きとなるように冷却水通路22aが構成されている。
廃熱回収器22を設けた第2バイパス冷却水通路25には制御弁26が介装されている。内燃機関2の内部にある冷却水の温度を指すエンジン水温が、例えば内燃機関の効率悪化やノックを発生させないための許容温度(例えば100℃)を超えないように、内燃機関2の出口の冷却水温度センサ74の検出温度が所定値以上になると、制御弁26の開度は減少する。これにより、エンジン水温が許容温度に近づくと廃熱回収器22を通過する冷却水量が減少するので、エンジン水温が許容温度を超えてしまうことを防ぐことができる。
一方、第2バイパス冷却水通路25の流量が減少したことによって、廃熱回収器22により上昇する冷却水温度が上がりすぎて冷却水が蒸発(沸騰)してしまったのでは、熱交換器36での効率が落ちるだけでなく、冷却水通路内の冷却水の流れが悪くなって温度が過剰に上昇してしまうおそれがある。これを避けるため、廃熱回収器22をバイパスするバイパス排気管6と、廃熱回収器22の排気通過量とバイパス排気管6の排気通過量とをコントロールするサーモスタットバルブ7をバイパス排気管6の分岐部に設けている。すなわち、サーモスタットバルブ7は、そのバルブ開度が廃熱回収器22を出た冷却水温度が所定の温度(例えば沸騰温度120℃)を超えないように、廃熱回収器22を出た冷却水温度に基づいて調節される。
熱交換器36とサーモスタットバルブ7と廃熱回収器22とは、廃熱回収ユニット23として一体化されていて、車幅方向略中央の床下において排気管途中に配設されている。サーモスタットバルブ7は、バイメタル等を用いた比較的簡易な感温弁でも良いし、温度センサ出力が入力されるコントローラによって制御される制御弁であっても良い。サーモスタットバルブ7による排気から冷却水への熱交換量の調節は比較的大きな遅れを伴うため、サーモスタットバルブ7を単独で調節したのではエンジン水温が許容温度を超えないようにするのが難しい。しかしながら、第2バイパス冷却水通路25の制御弁26をエンジン水温(出口温度)に基づき制御するようにしてあるので、熱回収量を速やかに低減し、エンジン水温が許容温度を超えるのを確実に防ぐことができる。また、エンジン水温が許容温度までに余裕がある状態であれば、廃熱回収器22を出る冷却水温度がエンジン水温の許容温度を越えるほどの高温(例えば110〜115℃)になるまで熱交換を行って、廃熱回収量を増加させることができる。冷却水通路36bを出た冷却水は、第2バイパス冷却水通路25を介して第1バイパス冷却水通路24に合流されている。
バイパス冷却水通路14からサーモスタットバルブ15に向かう冷却水の温度が、例えば熱交換器36における熱交換によって十分低下していれば、サーモスタットバルブ15の冷却水通路13側のバルブ開度が小さくなり、ラジエータ11を通過する冷却水量は減少する。逆にバイパス冷却水通路14からサーモスタットバルブ15に向かう冷却水の温度が、ランキンサイクル31が運転されていないこと等によって高くなると、サーモスタットバルブ15の冷却水通路13側のバルブ開度が大きくなり、ラジエータ11を通過する冷却水量は増大する。このようなサーモスタットバルブ15の動作に基づいて、内燃機関2の冷却水温度が適当に保たれ、熱がランキンサイクル31へ適当に供給(回収)されるように構成されている。
次に、ランキンサイクル31について述べる。ここでは、ランキンサイクル31は、単純なランキンサイクルでなく、冷凍サイクル51と統合した統合サイクル30の一部として構成されている。以下では、基本となるランキンサイクル31を先に説明し、その後に冷凍サイクル51に言及する。
ランキンサイクル31は、内燃機関2の冷却水を介して内燃機関2の廃熱を冷媒に回収し、回収した廃熱を動力として回生するシステムである。ランキンサイクル31は、冷媒ポンプ32、過熱器としての熱交換器36、膨張機37及び凝縮器(コンデンサ)38を備え、各構成要素は冷媒(R134a等)が循環する冷媒通路41〜44により接続されている。
冷媒ポンプ32の軸は同一の軸上で膨張機37の出力軸と連結配置され、膨張機37の発生する出力(動力)によって冷媒ポンプ32を駆動すると共に、発生動力を内燃機関2の出力軸(クランク軸)に供給する構成である(図4参照)。すなわち、冷媒ポンプ32軸及び膨張機37の出力軸は、内燃機関2の出力軸と平行に配置され、冷媒ポンプ32軸の先端に設けたポンププーリ33と、クランクプーリ2aとの間にベルト34を掛け回している(図3参照)。なお、本実施形態の冷媒ポンプ32としてはギヤ式のポンプを、膨張機37としてはスクロール式の膨張機を採用している。
また、ポンププーリ33と冷媒ポンプ32との間に電磁式のクラッチ(このクラッチを以下「膨張機クラッチ」という。)35を設けて、冷媒ポンプ32及び膨張機37と内燃機関2とを断接可能にしている(図4参照)。このため、膨張機37の発生する出力が冷媒ポンプ32の駆動力及び回転体のフリクションを上回る場合(予測膨張機トルクが正の場合)に膨張機クラッチ35を接続することで、膨張機37の発生する出力によってエンジン出力軸の回転をアシストすることができる。
このように廃熱回収によって得たエネルギを用いてエンジン出力軸の回転をアシストすることで、燃費性能を向上できる。また、冷媒を循環させる冷媒ポンプ32を駆動するためのエネルギも、回収した廃熱で賄うことができる。
冷媒ポンプ32を出た冷媒は冷媒通路41を介して熱交換器36に供給される。熱交換器36は、内燃機関2の冷却水と冷媒との間で熱交換を行わせ、冷媒を気化し過熱する。
熱交換器36を出た冷媒は冷媒通路42を介して膨張機37に供給される。膨張機37は、気化し過熱された冷媒を膨張させることにより熱を回転エネルギに変換する蒸気タービンである。膨張機37で回収された動力は冷媒ポンプ32を駆動し、ベルト伝動機構を介して内燃機関2に伝達され、内燃機関2の回転をアシストする。
膨張機37を出た冷媒は冷媒通路43を介して凝縮器38に供給される。凝縮器38は、外気と冷媒との間で熱交換を行わせ、冷媒を冷却し液化する。このため、凝縮器38は、ラジエータファン12によって冷却されるように、ラジエータ11と並列に配置されている。
凝縮器38により液化された冷媒は、冷媒通路44を介して冷媒ポンプ32に戻される。冷媒ポンプ32に戻された冷媒は、冷媒ポンプ32により再び熱交換器36に送られ、ランキンサイクル31の各構成要素を循環する。
次に、冷凍サイクル51について述べる。冷凍サイクル51は、ランキンサイクル31を循環する冷媒を共用するため、ランキンサイクル31と統合されている。
冷凍サイクル51は、コンプレッサ(圧縮機)52、凝縮器38、エバポレータ(蒸発器)55を備える。
コンプレッサ52は冷凍サイクル51の冷媒を高温高圧に圧縮する流体機械で、内燃機関2によって駆動される。すなわち、コンプレッサ52の駆動軸にはコンプレッサプーリが固定され、このコンプレッサプーリとクランクプーリ2aとにベルト34が掛け回されている。内燃機関2の駆動力がこのベルト34を介してコンプレッサプーリに伝達され、コンプレッサ52が駆動される。また、コンプレッサプーリとコンプレッサ52との間に電磁式のクラッチ(このクラッチを以下「コンプレッサクラッチ」という。)54を設けて、コンプレッサ52とコンプレッサプーリとを断接可能にしている。
コンプレッサ52を出た冷媒は、冷媒通路56を介して冷媒通路43に合流した後、凝縮器38に供給される。凝縮器38は外気との熱交換によって冷媒を凝縮し液化する。凝縮器38を出た液状の冷媒は、冷媒通路44から分岐する冷媒通路57を介してエバポレータ(蒸発器)55に供給される。エバポレータ55は、図示しないヒータコアと同様にエアコンユニットのケース内に配設されている。エバポレータ55は、凝縮器38を出た液状冷媒を蒸発させ、そのときの蒸発潜熱によってブロアファンを出た空調空気を冷却する。
エバポレータ55によって蒸発した冷媒は、冷媒通路58を介してコンプレッサ52に戻される。なお、エバポレータ55によって冷却された空調空気とヒータコアによって加熱された空調空気は、エアミックスドアの開度に応じて混合比率が変更され、乗員の設定する温度に調節される。
ランキンサイクル31と冷凍サイクル51とからなる統合サイクル30には、サイクル内を流れる冷媒を制御するため、回路途中に各種の弁が適宜設けられている。例えば、ランキンサイクル31を循環する冷媒を制御するため、熱交換器36と膨張機37とを連絡する冷媒通路42に膨張機上流弁62を備える。また、冷媒ポンプ32と熱交換器36とを連絡する冷媒通路41には、熱交換器36から冷媒ポンプ32への冷媒の逆流を防止するため逆止弁63を備えている。膨張機37と冷凍サイクル合流点46とを連絡する冷媒通路43にも、冷凍サイクル合流点46から膨張機37への冷媒の逆流を防止するため逆止弁64を備えている。また、膨張機上流弁62上流から膨張機37をバイパスして逆止弁64上流に合流する膨張機バイパス通路65を設け、この膨張機バイパス通路65にバイパス弁66を設けている。さらに、バイパス弁66をバイパスする通路67に圧力調整弁68を設けている。冷凍サイクル51側についても、冷凍サイクル分岐点45とエバポレータ55とを接続する冷媒通路57にエアコン回路弁69を設けている。
上記の弁62、66、69はいずれも電磁式の開閉弁である。圧力センサ72により検出される膨張機上流圧力の信号、圧力センサ73により検出される凝縮器38の出口の冷媒圧力Pdの信号、膨張機37の回転速度信号等がエンジンコントローラ71に入力されている。エンジンコントローラ71では、所定の運転条件に応じ、これらの各入力信号に基づいて、冷凍サイクル51のコンプレッサ52や、ラジエータファン12の制御を行なうとともに、弁62、66、69の開閉を制御する。例えば、圧力センサ72により検出される膨張機上流側圧力及び膨張機回転速度に基づいて膨張機トルクを予測し、この予測膨張機トルクが正のときに膨張機クラッチ35を締結し、予測膨張機トルクがゼロないし負のときに膨張機クラッチ35を解放する。センサ検出圧力と膨張機回転速度とに基づくことで、排気温度から膨張機トルクを予測する場合とくらべ、高い精度で膨張機トルクを予測することができ、膨張機トルクの発生状況に応じて膨張機クラッチ35の締結・解放を適切に行うことができる(詳細は特開2010−190185号公報参照)。
弁62、66、69及び2つの逆止弁63、64は、冷媒系バルブである。これらの冷媒系バルブの機能を改めて図3に示す。
なお、エンジンコントローラ71は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。エンジンコントローラ71を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
図3において、膨張機上流弁62は、熱交換器36を出た冷媒の圧力が相対的に低い場合に冷媒通路42を遮断し熱交換器36を出た冷媒が高圧になるまで保持することができるようにするものである。これによって、膨張機トルクが十分得られない場合でも冷媒の加熱を促し、例えばランキンサイクル31が再起動する(回生が実際に行なえるようになる)までの時間を短縮させることができる。バイパス弁66は、ランキンサイクル31の始動時等にランキンサイクル31側に存在する冷媒量が十分でないときなどに、膨張機37をバイパスさせた上で冷媒ポンプ32の作動が行えるように開弁し、ランキンサイクル31の起動時間を短縮するためのものである。膨張機37をバイパスさせた上で冷媒ポンプ32を作動させることで、凝縮器38の出口あるいは冷媒ポンプ32の入口の冷媒温度が、その部位の圧力を考慮した沸点から所定温度差(サブクール度SC)以上に低下した状態が実現されれば、ランキンサイクル31には十分な液体冷媒が供給できる状態が整ったことになる。
熱交換器36上流の逆止弁63は、バイパス弁66、圧力調整弁68、膨張機上流弁62と協働して膨張機37に供給される冷媒を高圧に保持するためのものである。ランキンサイクル31の回生効率が低い条件ではランキンサイクル31の運転を停止し、熱交換器36の前後区間に亘って回路を閉塞することで、停止中の冷媒圧力を上昇させておき、高圧冷媒を利用してランキンサイクル31が速やかに再起動できるようにする。圧力調整弁68は膨張機37に供給される冷媒の圧力が高くなり過ぎた場合に開いて、高くなり過ぎた冷媒を逃すリリーフ弁の役割を有している。
膨張機37下流の逆止弁64は、ランキンサイクル31への冷媒の偏りを防止するためのものである。車両1の運転開始直後、内燃機関2が暖まっていないとランキンサイクル31が冷凍サイクル51より低温となり、冷媒がランキンサイクル31側に偏ることがある。ランキンサイクル31側に偏る確率はそれほど高くないものの、例えば夏場の車両運転開始直後には、車内を早く冷やしたい状況にあって冷房能力が最も要求されることから、冷媒の僅かな偏在も解消して冷凍サイクル51の冷媒を確保したいという要求がある。そこで、ランキンサイクル31側への冷媒の偏在を防止するため逆止弁64を設けたものである。
コンプレッサ52は 、駆動停止時に冷媒が自由通過できる構造ではなく、エアコン回路弁69と協働して冷凍サイクル51への冷媒の偏りを防止することができる。これについて説明する。冷凍サイクル51の運転が停止したとき、定常運転中の比較的高い温度のランキンサイクル31側から冷凍サイクル51側へと冷媒が移動して、ランキンサイクル31を循環する冷媒が不足することがある。冷凍サイクル51の中で、冷房停止直後はエバポレータ55の温度が低くなっていて、比較的容積が大きく温度が低くなっているエバポレータ55に冷媒が溜まり易い。この場合に、コンプレッサ52の駆動停止によって凝縮器38からエバポレータ55への冷媒の動きを遮断するとともに、エアコン回路弁69を閉じることで、冷凍サイクル51への冷媒の偏りを防止するのである。
ところで、冷凍サイクル51は、コンプレッサ52をバイパスする冷媒通路91も備える。すなわち、エバポレータ55の出口とコンプレッサ52を連絡する冷媒通路58から分岐して冷凍サイクル合流点46に合流する冷媒通路91を備える。この冷媒通路91にはエジェクタ92が介装されている。冷媒通路91の分岐点とエジェクタ92との間の冷媒通路91には、エジェクタ92から冷媒通路91の分岐点への冷媒の流れを阻止する逆止弁99が介装されている。
上記のエジェクタ92は、ポンプなどの機械的運動によらずに流体から真空に近い状態を作ることができる装置である。エジェクタ92は、図7に示したように、周囲を囲われた室93、この室93に開口する吸込ポート94、室93に臨むノズル95及びディフューザ96からなる。室93内においてノズル95とディフューザ96は適当な距離をおいて向き合っている。
このように構成されるエジェクタ92に対して冷媒通路を次のように接続する。すなわち、図3において、熱交換器36の出口に近い冷媒通路42から冷媒通路97を分岐し、この分岐冷媒通路97をノズル入口95aに接続する。
分岐冷媒通路97の分岐部には、膨張機37に流れる冷媒流量とエジェクタ92に流れる冷媒流量の分配比を調整可能な電磁式の流量制御弁98を設ける。ここで、流量制御弁98の制御量として、「エジェクタ側開度」、「膨張機側開度」を導入する。
例えば、エジェクタ側開度をゼロとしたとき、熱交換器36の出口から出る冷媒の全ては分岐冷媒通路97を流れず、エジェクタ側開度を最大としたとき、熱交換器36の出口から出る冷媒の全てが分岐冷媒通路97を流れる。一方、膨張機側開度をゼロとしたとき、熱交換器出口の冷媒の全ては冷媒通路42を流れず、膨張機側開度を最大としたとき、熱交換器36の出口から出る冷媒の全てが冷媒通路42を流れる。つまり、エジェクタ側開度をゼロとしたとき膨張機側開度は最大となり、エジェクタ側開度をゼロから徐々に大きくしていくと、膨張機側開度は最大から徐々に小さくなっていく。そして、エジェクタ側開度を最大にしたとき、膨張機側開度はゼロとなる。
このように、本実施形態の流量制御弁98における両開度の関係は、いずれか一方の開度を定めれば、残りの開度はそれによって一義的に定まる関係である。したがって、エジェクタ側開度、膨張機側開度のいずれかによって流量制御弁98を制御すればよい。ここでは、エジェクタ側開度を制御することとする。このように、エジェクタ92が膨張機37と並列となるように冷媒回路を構成したので、エジェクタ側と膨張機側とに冷媒を任意に振り向けることができ、冷媒ポンプ32の駆動とコンプレッサ52の駆動とを所望通りに行なえる。
吸込ポート94にエバポレータ55側の冷媒通路91を、エジェクタ出口96aに冷媒通路43との合流部46側の冷媒通路91を、それぞれ接続する。
次に、ランキンサイクル31の基本的な運転方法を図5及び図6を参照して説明する。
図5及び図6はランキンサイクル31の運転領域図である。図5には横軸を外気温、縦軸をエンジン水温(冷却水温度)としたときのランキンサイクル31の運転域を、図6には横軸をエンジン回転速度、縦軸をエンジントルク(エンジン負荷)としたときのランキンサイクル31の運転域を示している。ただし、図5及び図6はグリルシャッター100が開状態で固定されていることを前提とした運転領域図である。
図5及び図6のいずれにおいても所定の条件を満たしたときにランキンサイクル31を運転するもので、これら両方の条件が満たされた場合にランキンサイクル31を運転する。図5においては、内燃機関2の暖機を優先する低水温側の領域と、コンプレッサ52の負荷が増大する高外気温側の領域でランキンサイクル31の運転を停止している。排気温度が低く回収効率が悪い暖機時は、むしろランキンサイクル31を運転しないことで冷却水温度を速やかに上昇させる。高い冷房能力が要求される高外気温時は、ランキンサイクル31を止めて、冷凍サイクル51に十分な冷媒と凝縮器38の冷却能力を提供する。図6においては、膨張機37のフリクションが増大する高回転速度側の領域でランキンサイクル31の運転を停止している。膨張機37は全ての回転速度でフリクションが少ない高効率な構造とすることが難しいことから、図6の場合では、運転頻度の高いエンジン回転速度域でフリクションが小さく高効率となるように、膨張機37が構成(膨張機37各部のディメンジョン等が設定)さている。
次に、エジェクタ92の作動を説明する。
一般的に、内燃機関の廃熱が十分得られるときには、外部からエネルギを与えてポンプを駆動して冷媒を熱交換器に供給し、廃熱による過熱でエジェクタを駆動して冷凍サイクルを運転する。一方、廃熱が不十分であるときには、ポンプを停止しコンプレッサを内燃機関で駆動して冷凍サイクルを運転する。しかしながら、このような一般的な装置では、エジェクタ駆動用の高圧冷媒を得るため外部からエネルギを与えてポンプを駆動する必要があり、ポンプの駆動が燃費を悪化させる。
そこで本実施形態では、エジェクタ駆動用の高圧冷媒を得るためポンプを外部からエネルギを与えて駆動しなくても済むように構成する。以下、この構成について説明する。
ノズル95から室93に向けて高圧のガス冷媒を駆動ガスとして噴射させると、ガス冷媒は、低圧超音速流となってディフューザ96の入口に進む。このガス冷媒の流れによって負の静圧が室93に生じ、室93内は真空に近い状態となる。この静圧とガス冷媒の粘性とによって、ディフューザ96の入口に飛び込むガス冷媒流れにエバポレータ55を出たガス冷媒が吸込ガスとして引き込まれる。ノズル95に供給されたガス冷媒と吸込ポート94から吸い込まれたガス冷媒とはディフューザ96の前半部で混合し、後半部では速度を減じて昇圧しつつディフューザ出口96aに向かい排出される。
複合サイクル30がエジェクタ92を備える場合、ランキンサイクル31の運転中であれば、ランキンサイクル31の冷媒通路を流れる冷媒の一部を駆動ガスとしてエジェクタ92に導くことでエジェクタ92を駆動して冷凍サイクル51を運転することができる。こうした構成であれば、エジェクタ駆動用の高圧冷媒を得るためポンプを外部からエネルギを与えて駆動することは必要でない。ここで、「冷凍サイクル51を運転する」とは、冷凍サイクル51の冷媒通路に冷媒を循環させる(その結果エアコンの冷房が効く)ことをいう。
上記のようにエジェクタ92を備えることで、本実施形態では、〈1〉ランキンサイクル単独運転、〈2〉トルクアシスト付きエジェクタエアコンの運転、〈3〉トルクアシストなしエジェクタエアコンの運転、〈4〉コンプレッサエアコンの運転という4つの運転を使い分け得ることとなった。ここで、「エジェクタエアコンの運転」とは、コンプレッサ52を使わずにエジェクタ92を駆動して冷凍サイクル51を運転することをいう。また、「コンプレッサエアコンの運転」とは、エジェクタ92を使わずにコンプレッサ52を駆動して冷凍サイクル51を運転することをいう。以下、上記の各運転について説明する。
〈1〉ランキンサイクル単独運転
エアコン要求(冷房要求)がないときにランキンサイクル単独運転を行う。図8に示したように、流量制御弁98のエジェクタ側開度をゼロにして(破線参照)、エジェクタ92にはガス冷媒を供給せず、エジェクタ92の駆動を停止する。
熱交換器36により内燃機関2の廃熱で冷媒を蒸発させて過熱し、熱交換器36の出口から出るガス冷媒の全てを、冷媒通路42を介して膨張機37に供給し(太実線参照)、ガス冷媒の圧力エネルギで膨張機37を回転駆動する。その膨張機37の発生するトルク(出力)で冷媒ポンプ32を駆動して冷媒を循環させ、ランキンサイクル31を運転する。ここで、「ランキンサイクル31を運転する」とは、ランキンサイクル31の冷媒通路に冷媒を循環させる(その結果、廃熱からエネルギが回収される)ことをいう。膨張機37の発生するトルクが冷媒ポンプ32の駆動力を上回るときには膨張機クラッチ35を接続し、ランキンサイクル31を運転してエンジン出力軸の回転をアシストさせて燃費を向上させる。
〈2〉トルクアシスト付きエジェクタエアコンの運転
主にエアコン要求がある高速巡航中など、エアコン要求がありかつ膨張機37による発生トルクが十分あるためにトルクアシストを行わせ得るときに、トルクアシスト付きエジェクタエアコンの運転を行う。図9に示したように、流量制御弁98のエジェクタ側開度を制御して、熱交換器36の出口から出るガス冷媒を膨張機37とエジェクタ92とに分割供給して膨張機37を回転駆動すると共にエジェクタ92を駆動する。
膨張機37のトルク(出力)で冷媒ポンプ32を駆動して冷媒を循環させ、ランキンサイクル31を運転する。ランキンサイクル31の冷媒通路を循環する冷媒の一部をエジェクタ92に導いてエジェクタ92を駆動し、冷凍サイクル51の冷媒通路にも冷媒を循環させる。コンプレッサ52を駆動することなく冷凍サイクル51を運転し、車室内の空調を行うのである。コンプレッサ52の駆動は内燃機関2の負荷となり、その分燃費が悪くなるのであるが、ランキンサイクル31の運転中にエジェクタ92を駆動して冷凍サイクル51を運転するのであれば、コンプレッサ52の駆動に伴う燃費の悪化を抑制できる。
冷媒ポンプ32駆動をしても膨張機トルクが余るときには、膨張機クラッチ35を接続し、冷媒ポンプ32を駆動しても余った膨張機トルクでエンジン出力軸の回転をアシストさせて燃費を向上させる。
〈3〉トルクアシストなしエジェクタエアコンの運転
アイドルストップ中や低負荷時など、エアコン要求がありかつ膨張機37による発生トルクが十分でなくトルクアシストを行わせ得ないときに、トルクアシストなしエジェクタエアコンの運転を行う。上記〈2〉のトルクアシスト付きエジェクタエアコンの運転との違いは、トルクアシストを行わない点だけである。すなわち、図10に示したように、膨張機クラッチ35を切断し、流量制御弁98のエジェクタ側開度を制御して、トルクアシストせずに膨張機トルクを冷媒ポンプ32を駆動するためにのみ用いることでランキンサイクル31を運転する。このランキンサイクル31の運転によって得られるガス冷媒でエジェクタ92を駆動して冷凍サイクル51を運転する。アイドルストップに移行してからしばらくの間や低車速時などにおいても、動力(コンプレッサ52)は用いずにエンジン廃熱でのみ冷凍サイクル51を作動させることが可能となる。
〈4〉コンプレッサエアコンの運転
アイドルストップ中や低負荷時などに上記〈3〉のトルクアシストなしエジェクタエアコンの運転を行えなくなった後に、コンプレッサエアコンの運転を行う。図11に示したように、流量制御弁98のエジェクタ側開度をゼロにして、膨張機37及びエジェクタ92への冷媒の供給を停止しランキンサイクル31の運転及びエジェクタ92の駆動を停止する。アイドルストップ中であれば、モータに電流を流してモータによりコンプレッサ52を駆動し、低負荷時であればコンプレッサクラッチ54を接続し、内燃機関2によりコンプレッサ52を駆動することで冷凍サイクル51を運転し、車室内の空調を行わせる。
次に、グリルシャッター100の開閉動作について説明する。
図12は、グリルシャッター100の開閉動作の一例を示す図である。この開閉動作は、内燃機関2が暖機状態(冷却水温80℃)で、車速が100km/hという運転状態におけるものである。縦軸の「燃費向上効果」は、ランキンサイクル31を運転せず、かつグリルシャッターを開いた状態で、上記と同条件にて走行した場合の燃費に対する燃費向上代(%)である。
グリルシャッター100を全開にした状態でランキンサイクル31を運転した場合の燃費向上効果(以下、ランキンサイクル31による燃費向上効果ともいう)は、実線で示したように外気温が高くなるほど小さくなり、外気温が35℃でゼロになる。
一方、グリルシャッター100を全閉にすることによる燃費向上効果(以下、グリルシャッター100による燃費向上効果ともいう)は、破線で示したように外気温によらず一定である。なお、グリルシャッター100を全閉にした状態でランキンサイクル31を運転した場合には、一点鎖線で示したように燃費向上効果はほとんど得られない。すなわち、グリルシャッター100による燃費向上効果は、空力性能の向上によるものである。
図12に示したように、外気温が30℃のとき、ランキンサイクル31による燃費向上効果とグリルシャッター100による燃費向上効果とが等しくなる。そこで本実施形態では、外気温が30℃以下の場合はグリルシャッター100を開いた状態でランキンサイクル31を運転し、外気温が30℃より高い場合はランキンサイクル31を運転せずにグリルシャッター100を閉じる。すなわち、外気温に応じて、ランキンサイクル31による廃熱回生又はグリルシャッター100を閉じることによる空力性能の向上のうち、燃費向上効果の大きい方を選択する。これにより、幅広い外気温範囲で、燃費性能を向上させることができる。
なお、上記説明で用いた30℃、35℃という数字は代表的なものとして用いたものであり、実際には個体差等により前後に多少の幅を有する。
図13は、上記以外の運転条件も含めた、グリルシャッター100の開閉状態マップである。エンジンコントローラ71はこのマップに基づいてグリルシャッター100の開閉制御を実行する。また、図14は、廃熱回生装置(ランキンサイクル31)を備えない場合のグリルシャッターの開閉状態マップである。
エンジン冷却水温が90℃以上の場合は、図13、図14ともに全外気温領域でグリルシャッター100が開になっている。これは、内燃機関2の冷却要求によるものである。すなわち、冷却水温の上昇を抑制するために、外気をラジエータ11に導入するためである。なお、冷却要求の有無は、エンジンコントローラ71が冷却水温センサの検出した冷却水温に基づいて判定するものであり、例えば冷却水温が90℃になったら冷却要求有りと判定する。
内燃機関2の冷却要求のない冷却水温度60℃以下の場合は、図13、図14ともに全外気温領域でグリルシャッター100が閉になっている。これは、内燃機関2を暖機状態(冷却水温80℃以上)にすることを優先するためである。
内燃機関2が暖機状態になった直後の冷却水温80℃では、ランキンサイクル31を備える場合は上述した開閉状態となる。これは、冷却水温が80℃になっていればランキンサイクル31を運転することで出力が得られ、グリルシャッター100を閉じることで得られる燃費向上効果より大きな燃費向上効果が得られるからである。
なお、外気温が−20℃の場合にもグリルシャッター100を開にしても構わないが、図13では、外気温が−20℃のときグリルシャッター100を閉にしている。これは、−20℃のような極低温では、ランキンサイクル31の低圧側圧力が下がり過ぎて回生効率が悪化し、出力できないからである。このように、廃熱回生ができない場合にはグリルシャッター100を閉じることで、グリルシャッター100による燃費向上効果が得られる。
これに対して、廃熱回生装置を備えない場合は、冷却水温が80℃の場合も全外気温領域でグリルシャッター100が閉になっている。これは、冷却水温が80℃であれば内燃機関2の冷却要求はないため、空力性能の向上を優先するためである。
上記のように、ランキンサイクル31を備えない場合は、冷却水温が90℃になるまでグリルシャッター100を閉じているのに対し、ランキンサイクル31を備える場合は、内燃機関2が暖機状態になった直後の冷却水温(80℃)からグリルシャッター100を開く。
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1)本実施形態にかかる車両1は、内燃機関2と、内燃機関2の廃熱を動力又は電力として回生するランキンサイクル(廃熱回生装置)31とを備える。この車両1は、エンジンルームの前方側に配置される凝縮器(前面熱交換器)38と、走行中にエンジンルームの最前部から凝縮器38へ外気を導入するグリル(外気導入口)101と、グリル101を開閉することでグリル101からの外気導入量を調整し得るグリルシャッター(調整手段)100と、を備える。そして、グリルシャッター100は、外気温が所定値より高い場合は、外気温が所定値以下の場合に比べて外気導入量が少なくなるように調整する。これにより、幅広い外気温範囲で燃費向上効果が得られる。
(2)上記の所定温度は、グリルシャッター100が全開の状態でランキンサイクル31を運転することによる燃費向上代と、グリルシャッター100が全閉の状態で走行することによる燃費向上代とが同等になる外気温である。そして、グリルシャッター100は、外気温が所定温度より高温の場合は全閉になり、所定温度以下の場合は全開となる。これにより、幅広い外気温範囲において、より大きな燃費向上効果が得られる。
(3)本実施形態にかかる車両1は、冷却水温度に基づいて内燃機関2の冷却要求の有無を判定するエンジンコントローラ71(機関冷却要求判定手段)を備える。そして、グリルシャッター100は、冷却要求が有る場合には外気温が上記所定値より高くても、外気温が上記所定値以下の場合と同等の外気導入量となるよう調整する。これにより、内燃機関2の冷却要求を満足することができる。
(4)廃熱回生による出力が不可能な程度に排気温度が低い場合には、グリルシャッター100は閉状態となる。これにより、グリルシャッター100による燃費向上効果によって燃費性能を向上させることができる。
なお、廃熱回生装置はランキンサイクル31に限られるものではなく、例えば、スターリングサイクルでもよいし、熱電素子(Thermo-Electric Generator)のように廃熱を回生した電力を生み出すものでもよい。その他に、ランキンサイクル31の冷媒通路を流れる冷媒の一部を用いてエジェクタ92を駆動することで、ポンプを用いずに冷凍サイクル51を運転することができるので、エジェクタ92も廃熱回生装置に含めることができる。
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態と比較するとシステムの構成は同じであるが、グリルシャッター100の動作が異なる。以下、グリルシャッター100の動作を中心に説明する。
図15は、本実施形態でのグリルシャッター100の開閉動作を示す図である。走行条件は第1実施形態と同様である。
外気温が30°以下の場合と、35℃より高い場合については、グリルシャッター100の開度は第1実施形態と同様である。しかし外気温が30℃から35℃の間は、外気温が高いほどグリルシャッター100の開度を小さくする。
上記のような開閉動作による効果について説明する。
グリルシャッター100による燃費向上効果をFE1とし、外気温が30℃から35℃の間の温度T1のときのランキンサイクル31による燃費向上効果をFE2とすると、全体としての燃費向上効果FEtotalは式(1)で表される。
FEtotal=FE1×k1+FE2×k2 ・・・(1)
ただし、k1はグリルシャッター100による燃費向上効果をグリルシャッター100の開度に応じて補正する係数である。グリルシャッター100による燃費向上効果FE1はグリルシャッター100が全閉であることが前提であり、開度が大きくなるほどその効果は小さくなるので、開度に応じた燃費向上効果を算出するために係数k1を用いている。k2はランキンサイクル31による燃費向上効果をグリルシャッター100の開度に応じて補正する係数である。ランキンサイクル31による燃費向上効果FE2はグリルシャッター100が全開であることが前提であり、開度が小さくなるほどその効果は小さくなるので、開度に応じた燃費向上効果を算出するために係数k2を用いる。
すなわち、式(1)は、グリルシャッター100が全開でも全閉でもない開度(中間開度)における、ランキンサイクル31による燃費向上効果とグリルシャッター100による燃費向上効果とを合わせた燃費向上効果を算出するものである。
外気温30℃−35℃の範囲で、外気温が高いほどグリルシャッター100の開度を小さくする場合について、式(1)により燃費向上効果FEtotalを算出すると、図13に太線で示すように燃費向上効果FE1に対して上に凸な特性が得られる。すなわち、外気温が30℃から35℃の間で、グリルシャッター100を全閉にして走行すること又はランキンサイクル31を運転すること、のいずれかを単独で実行するよりも大きな燃費向上効果が得られる。
また、グリルシャッター100が全開となる外気温の上限を30℃以下にしてもよい。
具体的には、式(1)により得られる燃費向上効果FEtotalが、グリルシャッター100が全開状態でのランキンサイクル31による燃費向上効果と等しくなる温度(図16の外気温T0℃)までグリルシャッター100を全開にする。そして、T0℃−35℃の範囲で、外気温が高いほどグリルシャッター100の開度を小さくする。
これにより、図16に太線で示したように、外気温T0℃−35℃の範囲で、グリルシャッター100を全閉にして走行すること又はランキンサイクル31を運転すること、のいずれかを単独で実行するよりも大きな燃費向上効果が得られる。
以上のように本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、さらに次の効果も得られる。
(5)グリルシャッター100を全開にしてランキンサイクル31を運転することによる燃費向上代と、グリルシャッター100を全閉にして走行することによる燃費向上代とが同等になる外気温から、グリルシャッター100を全開にしてランキンサイクル31を運転することによる燃費向上効果がなくなる外気温までは、外気温が高いほどグリルシャッター100の開度が小さくなる。すなわち、上記の例では外気温が30℃から35℃の間では、外気温が高いほどグリルシャッター100の開度が小さくなる。これにより、外気温が30℃から35℃の範囲で、グリルシャッター100を全閉にして走行すること又はランキンサイクル31を運転すること、のいずれかを単独で実行するよりも大きな燃費向上効果が得られる。
(6)グリルシャッター100が中間開度でのランキンサイクル31による燃費向上代とグリルシャッター100が中間開度でのグリルシャッター100による燃費向上代とを合わせた燃費向上代が、グリルシャッター100が全開状態でのランキンサイクル31による燃費向上代と等しくなる外気温以下ではグリルシャッター100を全開にする。そして、当該外気温から、グリルシャッター100を全開にした状態でランキンサイクル31を運転する場合の燃費向上効果がなくなる外気温までは、外気温が高いほどグリルシャッター100の開度が小さくなる。すなわち、上記の例では式(1)により算出される燃費向上効果FEtotalとランキンサイクル31による燃費向上効果FE2とが等しくなる外気温T0℃以下ではグリルシャッター100が全開で、外気温T0から35℃の範囲では、外気温が高いほどグリルシャッター100の開度が小さくなる。これにより、外気温がT0℃から35℃の範囲で、グリルシャッター100を全閉にして走行すること又はランキンサイクル31を運転すること、のいずれかを単独で実行するよりも大きな燃費向上効果が得られる。
(第3実施形態)
本実施形態を適用する車両1は、第1実施形態と同様の構成であり、グリルシャッター100の開閉動作も基本的には同様である。ただし、外気温の変化速度が所定値以上の場合に、グリルシャッター100の開閉動作に遅れ処理を施す点が異なる。以下、この相違点を中心に説明する。
外気温の変化速度が所定値以上の場合とは、外気温が急変した場合を意味する。ここでいう所定値は任意に設定し得るものであるが、例えば1〜2℃/秒程度に設定する。
外気温が急変する場合としては、例えば、トンネルに入った場合のように外気温が急激に上昇する場合と、トンネルから出た場合のように外気温が急激に低下する場合とがある。
まず、グリルシャッター100を開いてランキンサイクル31を運転している状態での走行中に、トンネルに入る等して外気温がグリルシャッター100を閉じる温度まで急激に上昇した場合を考える。例えば、図13のマップでいうと、外気温20℃の環境を、冷却水温80℃で走行しているときに、気温30℃のトンネルに入った場合である。
この場合、例えば図13のマップによれば、トンネルに入ったらグリルシャッター100を閉じることになる。しかし、外気温が急激に上昇してもランキンサイクル31の冷媒の温度は直ちには上昇しないので、トンネルに入ってからランキンサイクル31による廃熱回生ができなくなるまでに遅れが生じる。つまり、トンネルに入った後も廃熱回生可能な時間がある。
そこで本実施形態では、外気温が急激に上昇した場合は、図17に示すようにグリルシャッター100を閉じるまでに遅れ時間(T31−T32間)を設ける。遅れ時間は、冷媒の温度上昇に伴う廃熱回生能力の低下とグリルシャッター100による燃費向上効果とを比較して、燃費性能がより向上するよう設定する。これにより、廃熱回生による燃費向上効果の方がグリルシャッター100による燃費向上効果より大きいにもかかわらずグリルシャッター100を閉じてしまうという事態を回避し、燃費性能を向上させることができる。
次に、上記とは逆に、グリルシャッター100を閉じた状態で走行中に、トンネルから出る等して外気温がグリルシャッター100を開く温度まで急激に低下した場合を考える。
この場合、図13のマップによればトンネルから出たらグリルシャッター100を開くことになる。しかし、外気温が急激に低下してもランキンサイクル31の冷媒の温度は直ちには低下しないので、ランキンサイクル31が廃熱回生可能になるまでに遅れが生じる。つまり、トンネルから出ても直ちには廃熱回生が可能にはならない。
そこで本実施形態では、外気温が急激に低下した場合は、図18に示すようにグリルシャッター100を開くまでに遅れ時間(T31−T32間)を設ける。遅れ時間は、冷媒の温度低下に伴う廃熱回生能力の上昇とグリルシャッター100による燃費向上効果とを比較して、燃費性能がより向上するよう設定する。これにより、廃熱回生ができないにもかかわらずグリルシャッター100を開いて空力性能を低下させ、燃費性能を低下させてしまうという事態を回避できる。
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(7)グリルシャッター100は、外気温の変化速度が所定値を超えた場合、つまり外気温が急変した場合には、外気温の変化に対して遅れをもって外気導入量を調整する。これにより、外気温変化に対するランキンサイクル31の応答遅れに起因する燃費性能の低下を回避することができる。
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。