JP6343540B2 - 反射防止フィルム、偏光板、カバーガラス、及び画像表示装置、並びに反射防止フィルムの製造方法 - Google Patents

反射防止フィルム、偏光板、カバーガラス、及び画像表示装置、並びに反射防止フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、反射防止フィルム、偏光板、カバーガラス、及び画像表示装置、並びに反射防止フィルムの製造方法に関する。
陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、蛍光表示ディスプレイ(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、及び液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置では、表示面での外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために反射防止フィルムを設けることがある。また、画像表示装置以外でも反射防止フィルムにより反射防止機能を付与する場合がある。
反射防止フィルムとして、基材表面に周期が可視光の波長以下の微細な凹凸形状を有する反射防止フィルム、いわゆるモスアイ(moth eye)構造を有する反射防止フィルムが知られている。モスアイ構造により、擬似的に空気から基材の内部のバルク材料に向かって屈折率が連続的に変化する屈折率傾斜層を作り出し、光の反射を防止することができる。
モスアイ構造を有する反射防止フィルムとして、特許文献1には、透明樹脂モノマーと微粒子を含有する塗布液を透明基材上に塗布し、硬化して微粒子が分散した透明樹脂を形成し、その後、透明樹脂をエッチングすることにより製造された凹凸構造を有する反射防止フィルムが記載されている。
また、特許文献2には、透明フィルム支持体上に、凹凸形状を有する防眩層を設け、防眩層上に更に中空シリカ粒子を含む低屈折率層を設けた防眩性反射防止フィルムが記載されている。このような防眩性反射防止フィルムは、少なくとも最表面に層厚200nm以下の薄膜層である低屈折率層を設け、その低屈折率層の光学干渉によって反射防止を行うものであり、表面膜の強度を向上させることができることが記載されている。
特開2009−139796号公報 特開2006−145736号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたモスアイ構造を有する反射防止フィルムは、十分な硬度を得ることができないという問題点がある。また、エッチング等の処理を施す必要があるため、製造工程が煩雑になるという問題点もある。
一方、特許文献2に記載の反射防止フィルムは、モスアイ構造を有するものではなく、反射防止性能の観点で更なる改良が求められる。
本発明の課題は、表面にモスアイ構造を有する反射防止フィルムにおいて、反射率が低く、硬度が高く、簡便な方法で作成できる反射防止フィルムを提供することにある。また、本発明の別の課題は、この反射防止フィルムを含む偏光板、カバーガラス、及び画像表示装置、並びに反射防止フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、エッチングを行わずに、モスアイ構造を作製すること、及び高い硬度を付与することについて検討した。
そこで、基材上に、ハードコート層を設け、ハードコート層上に、粒子とバインダー樹脂形成用化合物とを含む反射防止層形成用組成物を塗布、硬化させてモスアイ構造を有する反射防止層を設けた。そして、その際に用いる反射防止層のバインダー樹脂形成用化合物が粒子への濡れが良すぎると粒子間をバインダー樹脂が埋めてしまい、モスアイ構造が形成されず、反射率が上昇してしまうことが分かった。また、反射防止層のバインダー樹脂形成用化合物がハードコート層への濡れが悪いと、ハジキが発生し、反射防止層のバインダー樹脂が均一に形成されず、反射率が上昇してしまうことが分かった。
すなわち、モスアイ構造を有する反射防止層において、単にハードコート層上に反射防止層を形成するのみでは、反射率が上昇してしまうことが分かった。
本発明者らは、これらの問題について更に検討し、ハードコート層上にモスアイ構造を有する層を有する反射防止層であって、モスアイ構造を構成する粒子の平均一次粒径及び粒子占有率、並びに凹部と凸部の高低差の平均値及び標準偏差を適切に制御することにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記に示す事項に関するものである。
[1]
基材と、ハードコート層と、平均一次粒径が50nm以上380nm以下の金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む反射防止層と、をこの順に有し、上記ハードコート層と上記反射防止層は接しており、
上記反射防止層は、上記金属酸化物粒子により形成された凹凸形状からなるモスアイ構造を有し、
上記反射防止層の表面における粒子占有率は40%以上85%以下であり、
上記凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bの平均値をK、上記距離Bの分布を表す標準偏差をσ、上記金属酸化物粒子の平均一次粒径をRとしたとき、下記式(1)及び式(2)を満たし、
上記反射防止層のバインダー樹脂に対する水の接触角が95°以上である、反射防止フィルム。
式(1) 5R/9≦K≦9R/10
式(2) σ≦40 nm
[2]
上記金属酸化物粒子を、溶媒全量に対するエタノール質量比を0以上1以下の範囲で0.1ずつ変更した11種のエタノール/アセトン混合溶媒にそれぞれ分散した際に、上記金属酸化物粒子の沈殿が最も遅い混合溶媒のエタノール質量比をMとし、上記ハードコート層に対する水の接触角をLとしたとき、質量比Mと接触角Lとが下記式(3)及び式(4)を満たす、[1]に記載の反射防止フィルム。
式(3) −120M+130≧L
式(4) L≦50°
[3]
上記金属酸化物粒子は、アルキル基、(メタ)アクリロイル基、オルガノシロキサン及びフッ素原子から選択された少なくとも1種を有する化合物で表面修飾されたものである、[1]又は[2]に記載の反射防止フィルム。
[4]
上記金属酸化物粒子がシリカ粒子である[1]〜[3]のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
[5]
上記金属酸化物粒子が焼成シリカ粒子である[1]〜[4]のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
[6]
偏光子と、偏光子を保護する少なくとも1枚の保護フィルムとを有する偏光板であって、保護フィルムの少なくとも1枚が[1]〜[5]のいずれか1項に記載の反射防止フィルムである偏光板。
[7]
[1]〜[5]のいずれか1項に記載の反射防止フィルムを保護フィルムとして有するカバーガラス。
[8]
[1]〜[5]のいずれか1項に記載の反射防止フィルム、又は[6]に記載の偏光板を有する画像表示装置。
[9]
基材と、ハードコート層と、平均一次粒径が50nm以上380nm以下の金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む反射防止層と、をこの順に有し、上記ハードコート層と上記反射防止層は接しており、
上記反射防止層は、上記金属酸化物粒子により形成された凹凸形状からなるモスアイ構造を有し、
上記反射防止層の表面における粒子占有率は40%以上85%以下であり、
上記凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bの平均値をK、上記距離Bの分布を表す標準偏差をσ、上記金属酸化物粒子の平均一次粒径をRとしたとき、下記式(1)及び式(2)を満たす、反射防止フィルムの製造方法であって、
基材上に、ハードコート層を形成する工程、及び、
上記ハードコート層上に、平均一次粒径が50nm以上380nm以下の金属酸化物粒子とバインダー樹脂形成用化合物とを含む反射防止層形成用組成物を塗布し、硬化させて反射防止層を形成する工程を有する、反射防止フィルムの製造方法であって、
上記バインダー樹脂形成用化合物を重合して得られるバインダー樹脂に対する水の接触角が95°以上である、反射防止フィルムの製造方法。
式(1) 5R/9≦K≦9R/10
式(2) σ≦40 nm
本発明は上記[1]〜[9]に関するものであるが、参考のためその他の事項(下記<1>〜<10>など)についても記載した。
<1>
基材と、ハードコート層と、平均一次粒径が50nm以上380nm以下の金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む反射防止層と、をこの順に有し、上記ハードコート層と上記反射防止層は接しており、
上記反射防止層は、上記金属酸化物粒子により形成された凹凸形状からなるモスアイ構造を有し、
上記反射防止層の表面における粒子占有率は40%以上90%以下であり、
上記凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bの平均値をK、上記距離Bの分布を表す標準偏差をσ、上記金属酸化物粒子の平均一次粒径をRとしたとき、下記式(1)及び式(2)を満たす、反射防止フィルム。
式(1) R/2≦K≦9R/10
式(2) σ≦40
<2>
上記金属酸化物粒子を、溶媒全量に対するエタノール質量比を0以上1以下の範囲で0.1ずつ変更した11種のエタノール/アセトン混合溶媒にそれぞれ分散した際に、上記金属酸化物粒子の沈殿が最も遅い混合溶媒のエタノール質量比をMとし、上記ハードコート層に対する水の接触角をLとしたとき、質量比Mと接触角Lとが下記式(3)及び式(4)を満たす、<1>に記載の反射防止フィルム。
式(3) −120M+130≧L
式(4) L≦50°
<3>
上記反射防止層のバインダー樹脂に対する水の接触角が90°以上である、<1>又は<2>に記載の反射防止フィルム。
<4>
上記金属酸化物粒子は、アルキル基、(メタ)アクリロイル基、オルガノシロキサン及びフッ素原子から選択された少なくとも1種を有する化合物で表面修飾されたものである、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
<5>
上記金属酸化物粒子がシリカ粒子である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
<6>
上記金属酸化物粒子が焼成シリカ粒子である<1>〜<5>のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
<7>
偏光子と、偏光子を保護する少なくとも1枚の保護フィルムとを有する偏光板であって、保護フィルムの少なくとも1枚が<1>〜<6>のいずれか1項に記載の反射防止フィルムである偏光板。
<8>
<1>〜<6>のいずれか1項に記載の反射防止フィルムを保護フィルムとして有するカバーガラス。
<9>
<1>〜<6>のいずれか1項に記載の反射防止フィルム、又は<7>に記載の偏光板を有する画像表示装置。
<10>
基材と、ハードコート層と、平均一次粒径が50nm以上380nm以下の金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む反射防止層と、をこの順に有し、上記ハードコート層と上記反射防止層は接しており、
上記反射防止層は、上記金属酸化物粒子により形成された凹凸形状からなるモスアイ構造を有し、
上記反射防止層の表面における粒子占有率は40%以上90%以下であり、
上記凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bの平均値をK、上記距離Bの分布を表す標準偏差をσ、上記金属酸化物粒子の平均一次粒径をRとしたとき、下記式(1)及び式(2)を満たす、反射防止フィルムの製造方法であって、
基材上に、ハードコート層を形成する工程、及び、
上記ハードコート層上に、平均一次粒径が50nm以上380nm以下の金属酸化物粒子とバインダー樹脂形成用化合物とを含む反射防止層形成用組成物を塗布し、硬化させて反射防止層を形成する工程を有する、反射防止フィルムの製造方法。
式(1) R/2≦K≦9R/10
式(2) σ≦40
本発明によれば、表面にモスアイ構造を有する反射防止フィルムであって、反射率が低く、硬度が高く、簡便な方法で作成できる反射防止フィルムを提供することができる。また、この反射防止フィルムを含む偏光板、カバーガラス、及び画像表示装置、並びに反射防止フィルムの製造方法を提供することができる。
本発明の反射防止フィルムの一例を示す断面模式図である。
以下の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本発明および本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
[反射防止フィルム]
本発明の反射防止フィルムは、基材と、ハードコート層と、平均一次粒径が50nm以上380nm以下の金属酸化物粒子とバインダー樹脂とを含む反射防止層と、をこの順に有し、上記ハードコート層と反射防止層は接しており、
上記反射防止層は、上記金属酸化物粒子により形成された凹凸形状からなるモスアイ構造を有し、
上記反射防止層の表面における粒子占有率は40%以上90%以下であり、
上記凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bの平均値をK、上記距離Bの分布を表す標準偏差をσ、上記金属酸化物粒子の平均一次粒径をRとしたとき、下記式(1)及び式(2)を満たす、反射防止フィルムである。
式(1) R/2≦K≦9R/10
式(2) σ≦40
以下、本明細書においては、凹凸形状における隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離を、「凹部の深さ」ともいう。
本発明の反射防止フィルムの好ましい実施形態の一例を図1に示す。
図1の反射防止フィルム10は、基材1と、基材1上に形成されたハードコート層2と、ハードコート層2上に、ハードコート層2と接する反射防止層3とを有する。反射防止層3は、ハードコード層2との界面とは反対側の表面に金属酸化物粒子4により形成された凹凸形状からなるモスアイ構造を有する。
反射防止層3は、金属酸化物粒子4と、バインダー樹脂5とを含んでなる。
(モスアイ構造)
本発明の反射防止フィルムの反射防止層は、金属酸化物粒子によって形成された凹凸形状からなるモスアイ構造を有する。
ここで、モスアイ構造とは、光の反射を抑制するための物質(材料)の加工された表面であって、周期的な微細構造パターンをもった構造のことを指す。特に、可視光の反射を抑制する目的の場合には、780nm未満の周期の微細構造パターンをもった構造のことを指す。微細構造パターンの周期が380nm未満であると、反射光の色味がなくなり好ましい。また、周期が100nm以上であると波長380nmの光が微細構造パターンを認識でき、反射防止性に優れるため好ましい。モスアイ構造の有無は、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)等により表面形状を観察し、上記微細構造パターンが出来ているかどうか調べることによって確認することができる。
本発明において、反射防止層の表面における粒子占有率は40〜90%である。粒子占有率は、SEMなどにより反射防止層の表面に垂直な方向から反射防止層の表面を観察した際に、表面の面積に対する、凸部を形成する金属酸化物粒子の面積の比率を測定することにより、算出することができる。隣り合う凸部間の間隔及び凹部の深さを適切に調整して、反射率を低減させるためには、金属酸化物粒子が高い占有率で敷き詰められていることが好ましい。また、占有率が高すぎないことも重要である。即ち、粒子占有率を40%以上とすると、凸部間の間隔が広くなりすぎず、微細なモスアイ構造パターンを形成することができる。また、粒子占有率を90%以下とすると、隣り合う金属酸化物粒子が接触することなく配置され、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離B(凹部の深さ)を所望の範囲に調整することができる。上記観点から、凸部を形成する金属酸化物粒子の含有量は、反射防止層全体で均一になるように調整されるのが好ましい。反射防止層の表面における粒子占有率は、30%〜95%が好ましく、40〜90%がより好ましく、50〜85%が更に好ましい。
また、本発明の反射防止フィルムの反射防止層の凹凸形状は、凹部の深さ(距離B)の平均値をK、上記距離Bの分布を表す標準偏差をσ、上記金属酸化物粒子の平均一次粒径をRとしたとき、下記式(1)及び式(2)を満たす。
式(1) R/2≦K≦9R/10
式(2) σ≦40
上記式(1)は、距離Bの平均値Kが、金属酸化物粒子の平均一次粒径Rの1/2〜9/10倍であることを示している。即ち、平均値Kが上記範囲内であれば、十分な深さを有する凹部が形成されていることになり、空気から反射防止層内部にかけてより緩やかに屈折率が変化する屈折率傾斜層を作ることができるため、反射率を低減できる。距離Bの平均値Kは、5R/9〜5R/6であることが好ましく、2R/3〜3R/4であることがより好ましい。
また、上記式(2)は、上記距離Bの分布が広すぎないことを示している。即ち、凹部の深さの平均値Kが上記範囲内であると共に、標準偏差σが40以下であれば、いずれの箇所においても十分な深さの凹部が得られ、優れた反射防止性能を得ることができる。上記観点から、標準偏差σは35以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。
隣り合う凸部の頂点間の距離Aと、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離B(凹部の深さ)の測定方法について、以下に、より具体的に説明する。
距離Bは、反射防止フィルムの断面SEM観察により測定することができる。反射防止フィルム試料をミクロトームで切削して断面を出し、適切な倍率(5000倍程度)でSEM観察する。観察し易いように、試料にはカーボン蒸着、エッチング等適切な処理を施してもよい。距離Bは、空気と試料が作る界面において、隣り合う凸部の頂点を含み基材面と垂直な面内にて、隣り合う凸部の頂点を結ぶ直線とその垂直二等分線が粒子またはバインダー樹脂に到達する点である凹部との距離を示し、これを100点測長したときの平均値をKとして算出する。
SEM写真においては、写っているすべての凹凸について、隣り合う凸部の頂点間の距離Aと、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bとを正確に測長できない場合もあるが、その場合はSEM画像で手前側に写っている凸部と凹部に着目して測長すればよい。
なお、凹部は、SEM画像で測長する2つの隣り合う凸部を形成する粒子と同じ深度において測長することが必要である。より手前側に写っている粒子などまでの距離をBとして測長してしまうと、Bを小さく見積もってしまう場合があるからである。
本発明者らは、反射防止層の凹凸形状を上記式(1)及び式(2)を満たすものとするためには、例えば、バインダー樹脂形成用化合物を金属酸化物粒子に対して濡れにいものとすると共に、ハードコート層に対して濡れ広がりやすくするものにする方法が効果的であり、これにより、バインダー樹脂膜の高さが均一になり、ハードコート層上に反射防止層を形成しても反射率を低減させることができることを見出した。
本発明において使用することができる金属酸化物粒子及びハードコート層としては、溶媒全量に対するエタノール質量比を0以上1以下の範囲で0.1ずつ変更した11種のエタノール/アセトン混合溶媒にそれぞれ分散した際に、上記金属酸化物粒子の沈殿が最も遅い混合溶媒のエタノール質量比をMとし、上記ハードコート層に対する水の接触角をLとしたとき、下記式(3)及び式(4)を満たすものであることが好ましい。
式(3) −120M+130≧L
式(4) L≦50°
Mの算出方法について、より具体的に説明する。
(エタノール:アセトン)の質量比を、(0:1.0)、(0.1:0.9)、(0.2:0.8)、(0.3:0.7)、(0.4:0.6)、(0.5:0.5)、(0.6:0.4)、(0.7:0.3)、(0.8:0.2)、(0.9:0.1)、(1.0:0)となるように0.1ずつ変更した混合溶媒11種を作成し、この混合溶媒6.3gと金属酸化物粒子0.7gとを10分間超音波分散により、分散液を作製する。その後、各分散液を静置させ、金属酸化物粒子の沈殿が最も遅い分散液を観察し、その分散液のエタノール比(エタノールの質量/混合溶媒の質量)をMとする。
式(3)について、金属酸化物粒子がエタノール/アセトン混合溶媒に分散した際に、アセトン比が高い程、バインダーが粒子に濡れにくくなることがわかった。また、−120M+130≧L、かつ、L≦50°を満たす時、バインダーはハードコート層に濡れ広がりモスアイ構造を形成しやすく、−120M+130<L、又は、L>50°であるとき、バインダーは粒子に濡れやすく、モスアイ構造を形成しにくいことを見出した。
上記観点から、エタノール質量比Mと接触角Lとの関係は、−120M+130≧Lを満たすことが好ましく、−120M+110≧Lを満たすことがより好ましく、−120M+90≧Lを満たすことが更に好ましい。
(金属酸化物粒子)
反射防止層のモスアイ構造を形成する金属酸化物粒子について説明する。
反射防止層に含有される金属酸化物粒子は、平均一次粒径が50nm以上380nm以下の金属酸化物粒子である。
金属酸化物粒子の平均一次粒径は、100nm以上320nm以下であることが好ましく、120nm以上250nm以下であることがより好ましい。金属酸化物粒子の平均一次粒径が50nm以上であると粒子の凝集を抑えることができるので好ましく、380nm以下であるとヘイズが抑えられて好ましい。
金属酸化物粒子の平均一次粒径は、体積平均粒径の累積の50%粒径を指す。反射防止層中に含まれる金属酸化物粒子の平均一次粒径を測定する場合には、電子顕微鏡写真により測定することが出来る。例えば、反射防止フィルムの切片TEM像を撮影し、一次粒子100個のそれぞれの直径を測長してその体積を算出し、体積平均粒径の累積の50%粒径を平均一次粒径とすることができる。粒子が球径でない場合には、長径と短径の平均値をその一次粒子の直径とみなす。
金属酸化物粒子がバインダーに濡れにくくする観点から、金属酸化物粒子としては、アルキル基、(メタ)アクリロイル基、オルガノシロキサン、及びフッ素原子から選択された少なくとも1種を有する化合物で表面修飾された金属酸化物粒子であることが好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基は、メタクリロイル基とアクリロイル基の両方を含む概念である。
(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。また、表面処理とはシランカップリング処理であることが好ましい。
(メタ)アクリロイル基を有する化合物で表面修飾された金属酸化物粒子を用いることで、バインダー樹脂の成分として好適に用いられる後述の化合物の置換基と架橋し、金属酸化物粒子がバインダー樹脂に強固に固定され、得られるモスアイ構造の硬度がより高くなり、強い応力を付与しても金属酸化物粒子がより脱落しにくくなるため好ましい。
シロキサン結合を有する化合物は、オルガノシロキサンを有する化合物で修飾された粒子を用いることで、反射防止フィルムの摩擦力が低減し、耐擦傷性が高まり好ましい。
フッ素原子を有する化合物は、防汚性を粒子表面全体に付与できることができ、反射防止フィルムの防汚性が向上するという観点で好ましい。
表面処理方法の具体例及びその好ましい例は、特開2007−298974号公報の[0119]〜[0147]の記載を参照できる。
金属酸化物粒子としては、シリカ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、五酸化アンチモン粒子などが挙げられるが、多くのバインダーと屈折率が近いためヘイズを発生しにくく、かつモスアイ構造が形成し易い観点からシリカ粒子が好ましい。
金属酸化物粒子は、焼成シリカ粒子であることが特に好ましい。
焼成シリカ粒子は、加水分解が可能なシリコン化合物を水と触媒とを含む有機溶媒中で加水分解、縮合させることによってシリカ粒子を得た後、シリカ粒子を焼成するという公知の技術により製造することができ、たとえば特開2003−176121号公報、特開2008−137854号公報などを参照することができる。
焼成シリカ粒子を製造する原料のシリコン化合物としては特に限定されないが、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン等のクロロシラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物;テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン等のアシロキシシラン化合物;ジメチルシランジオール、ジフェニルシランジオール、トリメチルシラノール等のシラノール化合物;等が挙げられる。上記例示のシラン化合物のうち、アルコキシシラン化合物が、より入手し易く、かつ、得られる焼成シリカ粒子に不純物としてハロゲン原子が含まれることが無いので特に好ましい。本発明にかかる焼成シリカ粒子の好ましい形態としては、ハロゲン原子の含有量が実質的に0%であり、ハロゲン原子が検出されないことが好ましい。
焼成温度は特に限定されないが、800〜1300℃が好ましく、1000℃〜1200℃がより好ましい。
金属酸化物粒子の形状は、球形が最も好ましいが、不定形等の球形以外であっても問題無い。
また、シリカ粒子については、結晶質でも、アモルファスのいずれでもよい。
金属酸化物粒子は市販されている粒子を焼成して用いてもよい。具体的な例としては、IPA−ST−L(平均一次粒径50nm、日産化学工業(株)製シリカゾル)、IPA−ST−ZL(平均一次粒径80nm、日産化学工業(株)製シリカゾル)、スノーテックスMP−1040(平均一次粒径100nm、日産化学工業(株)製シリカ)、スノーテックスMP−2040(平均一次粒径200nm、日産化学工業(株)製シリカ)、シーホスターKE−P10(平均一次粒径150nm、日本触媒(株)製アモルファスシリカ)、シーホスターKE−P20(平均一次粒径200nm、日本触媒(株)製アモルファスシリカ)、ASFP−20(平均一次粒径200nm、日本電気化学工業(株)製アルミナ)などを好ましく用いることができる。さらに本願要件を満たすものであれば、市販されている粒子をそのまま用いても良い。
反射防止層中の全固形分に対する金属酸化物粒子の含有量は、10質量%以上95質量%以下が好ましく、35質量%以上90質量%以下がより好ましく、65質量%以上85質量%以下が更に好ましい。
(反射防止層のバインダー樹脂)
反射防止層のバインダー樹脂について説明する。
本発明における反射防止層のバインダー樹脂は、水の接触角が90°以上であることが好ましい。バインダー樹脂に対する水の接触角が90°以上であるということは、バインダー樹脂が疎水的であることを示し、これにより、硬化前のバインダーの表面(空気に接する面)の表面張力が低く、ハードコートに対して濡れ広がり易い。
バインダー樹脂に対する水の接触角は、バインダー樹脂のみからなる膜を基材等に設け、測定することができる。
上記観点から、バインダー樹脂に対する水の接触角は90°以上であることが好ましく、95°以上であることがより好ましく、100°以上であることが更に好ましい。
反射防止層のバインダー樹脂は、バインダー樹脂形成用化合物(重合性化合物)を重合して得られることが好ましく、バインダー樹脂形成用化合物と金属酸化物粒子と溶媒を含有する反射防止層形成用組成物を塗布、硬化して得られることがより好ましい。
反射防止層のバインダー樹脂形成用化合物は、電離放射線硬化性化合物であることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む組成物を基材上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
重合性不飽和基を有する化合物の具体例としては、ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;等を挙げることができる。
さらにはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。さらに好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類の具体化合物としては、日本化薬(株)製KAYARAD DPHA、同DPHA−2C、同PET−30、同TMPTA、同TPA−320、同TPA−330、同RP−1040、同T−1420、同D−310、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同GPO−303、大阪有機化学工業(株)製V#3PA、V#400、V#36095D、V#1000、V#1080等のポリオールと(メタ)アクリル酸のエステル化物を挙げることができる。また紫光UV−1400B、同UV−1700B、同UV−6300B、同UV−7550B、同UV−7600B、同UV−7605B、同UV−7610B、同UV−7620EA、同UV−7630B、同UV−7640B、同UV−6630B、同UV−7000B、同UV−7510B、同UV−7461TE、同UV−3000B、同UV−3200B、同UV−3210EA、同UV−3310EA、同UV−3310B、同UV−3500BA、同UV−3520TL、同UV−3700B、同UV−6100B、同UV−6640B、同UV−2000B、同UV−2010B、同UV−2250EA、同UV−2750B(日本合成化学(株)製)、UL−503LN(共栄社化学(株)製)、ユニディック17−806、同17−813、同V−4030、同V−4000BA(大日本インキ化学工業(株)製)、EB−1290K、EB−220、EB−5129、EB−1830,EB−4858(ダイセルUCB(株)製)、ハイコープAU−2010、同AU−2020((株)トクシキ製)、アロニックスM−1960(東亜合成(株)製)、アートレジンUN−3320HA,UN−3320HC,UN−3320HS、UN−904,HDP−4Tなどの3官能以上のウレタンアクリレート化合物、アロニックスM−8100,M−8030,M−9050(東亞合成(株)製、KRM−8307(ダイセルサイテック(株)製)などの3官能以上のポリエステル化合物なども好適に使用することができる。特にDPHAやPET−30が好ましく用いられる。
さらに、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する樹脂、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物などのオリゴマー又はプレポリマー等も挙げられる。
また、特開2005−76005号、同2005−36105号公報に記載されたデンドリマーや、特開2005−60425号公報に記載のようなノルボルネン環含有モノマーを用いることもできる。
多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる
反射防止層中の全固形分に対するバインダー樹脂の含有量は、8.2質量%以上37.4質量%以下が好ましく、18.7質量%以上33.7質量%以下がより好ましく、24.4質量%以上29.4質量%以下が更に好ましい。
(ハードコート層)
上述の通り、本発明において用いるハードコート層は、このハードコート層に対する水の接触角Lが50°以下であることが好ましい。これは、ハードコート層が親水的であることを示しており、これにより、反射防止層のバインダー樹脂をハードコート層上に均一に存在させることができ、その結果、所望の凹凸形状を有する反射防止層を得ることができる。
上記観点から、ハードコート層に対する水の接触角Lが50°以下であることが好ましく、30°以下であることがより好ましく、15°以下であることが更に好ましい。
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む組成物を基材上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、上記反射防止層のバインダー樹脂形成用化合物と同様のものを挙げることができる。
ハードコート層の膜厚は、フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、ハードコート層の厚さは通常0.5μm〜50μm程度であり、好ましくは1μm〜20μmである。
また、ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。さらに、JIS
K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
(その他の成分)
ハードコート層形成用塗布組成物には、上記成分のほかに、更に溶剤、重合開始剤、帯電防止剤、防眩剤等を適宜添加することもできる。更に、反応性又は非反応性レベリング剤、各種増感剤等の各種添加剤が混合されていても良い。
(ハードコート層形成用塗布組成物の溶剤)
溶剤の具体例としては、イソプロパノール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)、及びメチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン等が挙げられる。光学シートの硬度を向上できる点から、MIBK、イソプロパノール等の非浸透性溶剤を併用することが好ましい。非浸透性溶剤を併用することにより、上記第一のバインダー成分がトリアセチルセルロース基材に浸透しすぎなくなるため、硬度を高めることができる。
(重合開始剤)
必要に応じてラジカル及びカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いても良い。これらの重合開始剤は、光照射及び/又は加熱により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
(帯電防止剤)
帯電防止剤の具体例としては、第4級アンモニウム塩、導電性ポリマー、導電性微粒子等の従来公知の帯電防止剤を、反射防止層を積層したときに浸透層を形成することが出来る範囲で用いることができる。
(防眩剤)
防眩剤としてはスチレンビーズ(屈折率1.59)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体等の微粒子の防眩剤など従来公知の防眩剤を反射防止層を積層したときに浸透層を形成することが出来る範囲で用いて良い。微粒子の防眩剤を用いる場合その添加量は、硬化性樹脂組成物100重量部に対し、好ましくは2〜30重量部、より好ましくは10〜25重量部である。
(屈折率調整剤)
ハードコート層のバインダーには、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、屈折率調整剤として高屈折率モノマーまたは無機粒子、或いは両者を反射防止層を積層したときに浸透層を形成することが出来る範囲で加えることができる。無機粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。本発明では、ハードコート層形成後において、上記多官能モノマーおよび/又は高屈折率モノマー等が重合して生成した重合体、その中に分散された無機粒子を含んでバインダーと称する。
ハードコート層に対する水の接触角を50°以下にするためには、例えば、ハードコート層の表面にコロナ放電処理を施す方法、更に、ハードコート層にシリカ微粒子を添加する方法等が挙げられる。
コロナ放電処理は、従来公知のいずれの方法、例えば特公昭48−5043号公報、同47−51905号公報、特開昭47−28067号公報、同49−83767号公報、同51−41770号公報、同51−131576号公報、特開2001−272503号公報等に開示された方法により達成することができる。
コロナ処理の他に、プラズマ処理、グロー放電処理、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、紫外線処理等が行ってもよい。これらの処理は、単独で、または2つ以上を組み合せて用いてもよい。
(基材)
本発明の反射防止フィルムにおける基材は、反射防止フィルムの基材として一般的に使用される透光性を有する基材であれは特に制限はないが、プラスチック基材やガラス基材が好ましい。
プラスチック基材としては、種々用いることができ、例えば、セルロース系樹脂;セルロースアシレート(トリアセテートセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース)等、ポリエステル樹脂;ポリエチレンテレフタレート等、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、オレフィン系樹脂等を含有する基材が挙げられ、セルロースアシレート、ポリエチレンテレフタレート、又は(メタ)アクリル系樹脂を含有する基材が好ましく、セルロースアシレートを含有する基材がより好ましい。セルロースアシレートとしては、特開2012−093723号公報に記載の基材等を好ましく用いることが出来る。
プラスチック基材の厚さは、通常、10μm〜1000μm程度であるが、取り扱い性が良好で、透光性が高く、かつ十分な強度が得られるという観点から20μm〜200μmが好ましく、25μm〜100μmがより好ましい。プラスチック基材の透光性としては、可視光の透過率が90%以上のものが好ましい。
(他の機能層)
本発明の反射防止フィルムは、ハードコート層及び反射防止層以外の機能層を有していてもよい。
たとえば、基材とハードコート層との間に、密着性を付与するための易接着層、帯電防止性を付与するための層等を備えていても良く、これらを複数備えていても良い。
本発明の反射防止フィルムは、波長380〜780nmの全域にわたって積分反射率が3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。
[反射防止フィルムの製造方法]
本発明の反射防止フィルムの製造方法は特に限定されないが、生産効率の観点からは塗布法を用いた製造方法が好ましい。
すなわち、反射防止フィルムの製造方法は、
基材と、ハードコート層と、平均一次粒径が50nm以上380nm以下の金属酸化物粒子とバインダー樹脂とを含む反射防止層と、をこの順に有し、上記ハードコート層と上記反射防止層は接しており、
上記反射防止層は、上記金属酸化物粒子により形成された凹凸形状からなるモスアイ構造を有し、
上記反射防止層の表面における粒子占有率は40%以上90%以下であり、
上記凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bの平均値をK、上記距離Bの分布を表す標準偏差をσ、上記金属酸化物粒子の平均一次粒径をRとしたとき、下記式(1)及び式(2)を満たす、反射防止フィルムの製造方法であって、
基材上に、ハードコート層を形成する工程、及び、
上記ハードコート層上に、平均一次粒径が50nm以上380nm以下の金属酸化物粒子とバインダー樹脂形成用化合物とを含む反射防止層形成用組成物を塗布し、硬化させて反射防止層を形成する工程を有する、反射防止フィルムの製造方法である。
式(1) R/2≦K≦9R/10
式(2) σ≦40
本発明の反射防止フィルムの製造方法において、上記金属酸化物粒子及びハードコート層は、溶媒全量に対するエタノール質量比を0以上1以下の範囲で0.1ずつ変更したエタノール/アセトン混合溶媒に上記金属酸化物粒子を分散した際に、上記金属酸化物粒子の沈殿が最も遅い混合溶媒のエタノール質量比をMとし、上記ハードコート層に対する水の接触角をLとしたとき、下記式(3)及び式(4)を満たすものであることが好ましい。
また、反射防止層のバインダー樹脂に対する水の接触角は90°以上であることが好ましい。
式(3) −120M+130≧L
式(4) L≦50°
本発明の反射防止フィルムの製造方法において、基材、ハードコート層、反射防止層のバインダー樹脂、金属酸化物粒子としては、上述したものを用いることができる
本発明の製造方法によれば、エッチング等の処理を施すことなく、塗布法のみにより製造することができるので、微細なモスアイ構造を有し、硬度が高い反射防止フィルムを低コストで製造することができる。
反射防止層形成用組成物は、金属酸化物粒子とバインダー樹脂形成用化合物以外にも、溶媒、重合開始剤、金属錯体化合物、粒子の分散剤、レベリング剤、防汚剤等を含んでいてもよい。
溶媒としては、金属酸化物粒子と極性が近い溶媒が分散性を向上させる観点で好ましい。具体的には、例えばアルコール系の溶剤が好ましく、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。また、例えば金属酸化物粒子が疎水化表面修飾がされたものである場合には、ケトン系、エステル系、カーボネート系、アルカン、芳香族系等の溶剤が好ましく、メチルエチルケトン(MEK)、炭酸ジメチル、酢酸メチル、アセトン、メチレンクロライド、シクロヘキサノンなどが挙げられる。これらの溶剤は、分散性を著しく悪化させない範囲で複数種混ぜて用いてもかまわない。
粒子の分散剤は、粒子同士の凝集力を低下させることにより、粒子を均一に配置させ易くすることができる。分散剤としては、特に限定されないが、硫酸塩、リン酸塩などのアニオン性化合物、脂肪族アミン塩、四級アンモニウム塩などのカチオン性化合物、非イオン性化合物、高分子化合物が好ましく、吸着基と立体反発基それぞれの選択の自由度が高いため高分子化合物がより好ましい。分散剤としては市販品を用いることもできる。例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製のDISPERBYK160、DISPERBYK161、DISPERBYK162、DISPERBYK163、DISPERBYK164、DISPERBYK166、DISPERBYK167、DISPERBYK171、DISPERBYK180、DISPERBYK182、DISPERBYK2000、DISPERBYK2001、DISPERBYK2164、Bykumen、BYK−P104、BYK−P104S、BYK−220S、Anti−Terra203、Anti−Terra204、Anti−Terra205(以上商品名)などが挙げられる。
レベリング剤は、塗布液の表面張力を低下させることにより、塗布後の液を安定させ粒子やバインダー樹脂を均一に配置させ易くすることができる。例えば、特開2004−331812号公報、特開2004−163610号公報に記載の化合物等を用いることができる。
防汚剤は、モスアイ構造に撥水撥油性を付与することにより、汚れや指紋の付着を抑制することができる。例えば、特開2012−88699号公報に記載の化合物等を用いることができる。
(重合開始剤)
反射防止層形成用組成物は光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。光重合開始剤の具体例、及び好ましい態様、市販品などは、特開2009−098658号公報の段落[0133]〜[0151]に記載されており、本発明においても同様に好適に用いることができる。
「最新UV硬化技術」{(株)技術情報協会}(1991年)、p.159、及び、「紫外線硬化システム」加藤清視著(平成元年、総合技術センター発行)、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
反射防止層形成用組成物の塗布方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
均一に塗布しやすい観点から、反射防止層形成用組成物の固形分濃度は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、20質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
[偏光板]
本発明の偏光板は、偏光子と、偏光子を保護する少なくとも1枚の保護フィルムとを有する偏光板であって、保護フィルムの少なくとも1枚が本発明の反射防止フィルムである。
偏光子には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造することができる。
[カバーガラス]
本発明のカバーガラスは、本発明の反射防止フィルムを保護フィルムとして有する。反射防止フィルムの基材がガラスのものであってもよいし、プラスチックフィルム基材を有する反射防止フィルムをガラス支持体上に貼り付けたものであってもよい。
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の反射防止フィルム又は偏光板を有する。
本発明の反射防止フィルム及び偏光板は液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に好適に用いることができ、特に液晶表示装置が好ましい。
一般的に、液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、液晶セルは、2枚の電極基板の間に液晶を担持している。更に、光学異方性層が、液晶セルと一方の偏光板との間に一枚配置されるか、又は液晶セルと双方の偏光板との間に2枚配置されることもある。液晶セルは、TNモード、VAモード、OCBモード、IPSモード又はECBモードであることが好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
(ハードコート層付き基材の作製)
セルローストリアセテートフィルム(TDH60UF、富士フイルム(株)製)上に、下記組成のハードコート層形成用塗布液を塗布し、窒素パージしながら空冷メタルハライドランプで照射量120mJ/cmの紫外線を照射して硬化し、膜厚8μmのハードコート層を形成した。このようにしてハードコート層付き基材を作製した。
<ハードコート層形成用塗布液の組成>
(1)ハードコート層α
PET−30 21.4質量部
ビスコート360 21.4質量部
イルガキュア127 1.28質量部
MEK−ST 29.3質量部
MiBK−ST 7.3質量部
メチルイソブチルケトン 6.1質量部
メチルエチルケトン 13.2質量部
SP−13 0.03質量部
(2)ハードコート層β
PET−30 26.7質量部
ビスコート360 26.7質量部
イルガキュア127 1.60質量部
メチルイソブチルケトン 11.25質量部
メチルエチルケトン 33.8質量部
なお、ハードコート層α及びβについては、形成後にピラー社製のソリッドステートコロナ処理機を用い、出力1500W、搬送速度3.2m/min、室温においてコロナ処理を施した。
(3)ハードコート層γ
PET−30 21.4質量部
ビスコート360 21.4質量部
イルガキュア127 1.28質量部
MEK−ST 29.3質量部
MiBK−ST 7.3質量部
メチルイソブチルケトン 6.1質量部
メチルエチルケトン 13.2質量部
SP−13 0.06質量部
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
・PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ
アクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
・ビスコート360:トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート
[大阪有機化学(株)製]
・イルガキュア127:重合開始剤[BASF製]
・MEK−ST:オルガノシリカゾル MEK(メチルエチルケトン)溶液、固形分濃度
30質量%、平均粒径15nm[日産化学工業(株)製]
・MiBK−ST:オルガノシリカゾル MiBK(メチルイソブチルケトン)溶液、固
形分濃度30質量%、平均粒径15nm[日産化学工業(株)製]
・SP−13:下記構造のポリマー(質量平均分子量19000)の固形分濃度40質量%のMEK溶液
Figure 0006343540
(反射防止層形成用塗布液の調製)
種々の金属酸化物粒子と、バインダー樹脂、溶媒及びその他の成分とを以下に示す組成となるようにミキシングタンクに投入し、60分間攪拌し、30分間超音波分散機により分散し、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して反射防止層形成用塗布液とした。
<金属酸化物粒子の種類>
S:KE−P20(表面修飾なし) エタノール質量比M 1.0
T:KE−P20(アクリル修飾あり) エタノール質量比M 0.8
U:KE−P20(フッ素修飾あり) エタノール質量比M 0.0
KE−P20(平均一次粒径200nm):日本触媒(株)製 シリカ
なお、金属酸化物粒子Tは、金属酸化物粒子S 2.5kgを、加熱ジャケットを備えた容量20Lのヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製FM20J型)に仕込んだ。KE−P20を撹拌しているところに、信越化学工業製 KBM−5103 45gを、メチルアルコール90gに溶解させた溶液を滴下して混合した。その後、混合撹拌しながら150℃まで約1時間かけて昇温し、150℃で12時間保持して加熱処理を行った。加熱処理では、掻き落とし装置を撹拌羽根とは逆方向に常時回転させながら、壁面付着物の掻き落としを行った。また、適宜、へらを用いて壁面付着物を掻き落とすことも行った。加熱後、冷却し、ジェット粉砕分級機を用いて解砕および分級を行い、アクリル処理された粒子を得た。
また、金属酸化物粒子U は、エタノール75質量部、金属酸化物粒子S 35質量部をミキシングタンクに投入し、10分間攪拌後、攪拌を継続しながら60分間超音波分散した。更にGELEST社製 (HEPTADECAFLUORO−1,1,2,2−TETRAHYDRODECYL)TRIMETHOXYSILANEを5質量部、(株)ワコーケミカル製(エチルアセトアセタト)アルミニウムジイソプロポキシドを0.1質量部加えて、12時間撹拌した。その後ヘキサンを100質量部加えて30分間静置し粒子を沈殿させ、上澄み液を廃却した。このヘキサンによるデカンテーションを更に4回実施した。その後、沈殿物を回収し、エバポレーターにて溶媒を除去し、金属酸化物粒子Uを得た。
[シリカ粒子分散液の調製]
エタノール70質量部、上記シリカ粒子S 30質量部をミキシングタンクに投入し、10分間攪拌後、攪拌を継続しながら30分間超音波分散することにより、固形分濃度30%のシリカ粒子分散液Sを調製した。
エタノール35質量部、アセトン35質量部、シリカ粒子Tをミキシングタンクに投入し、10分間攪拌後、攪拌を継続しながら30分間超音波分散することにより、固形分濃度30%のシリカ粒子分散液Tを調製した。同様にエタノール35質量部、アセトン35質量部、シリカ粒子Uからシリカ粒子分散液Uを調整した。
なお、金属酸化物粒子S、金属酸化物粒子T、金属酸化物粒子Uの平均一次粒径はいずれも200nmであった。
<反射防止層形成用塗布液の組成>
(1)バインダー樹脂a(水の接触角100°)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬製:KAYARAD DPHA)
2.69質量部
イルガキュア127 0.11質量部
メチルエチルケトン 72.95質量部
FP−3 0.10質量部
(2)バインダー樹脂b(水の接触角96°)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬製:KAYARAD DPHA)
2.74質量部
イルガキュア127 0.11質量部
メチルエチルケトン 72.95質量部
FP−3 0.05質量部
(3)バインダー樹脂c(水の接触角76°)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬製:KAYARAD DPHA)
2.78質量部
イルガキュア127 0.12質量部
メチルエチルケトン 72.95質量部
上記バインダー樹脂a〜cにそれぞれ、シリカ粒子分散液S〜Uを24.15質量部添加して反射防止層形成用塗布液を得た。
特開2004−163610号公報に記載の方法を用いて、フッ素化合物FP−3を得た。重量平均分子量は、4万であった。
Figure 0006343540
(反射防止フィルムの作製)
[反射防止フィルム試料No.1〜21の作製]
ハードコート層付き基材のハードコート層上に、反射防止層形成用組成物をグラビアコーターを用いて塗布し、120℃で5分間乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら空冷メタルハライドランプで照射量600mJ/cmの紫外線を照射して硬化し、各実施例及び比較例の反射防止フィルムを作製した。用いたハードコート層、バインダー樹脂、及び金属酸化物粒子の種類を下記表1に示す。
[反射防止フィルム試料No.22〜24の作製]
セルローストリアセテートフィルム(TDH60UF、富士フイルム(株)製)上に、表1に記載の反射防止層形成用組成物をグラビアコーターを用いて塗布し、60℃で30秒乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら空冷メタルハライドランプで照射量600mJ/cmの紫外線を照射して硬化し、比較例の反射防止フィルムを作製した。
(反射防止フィルムの評価)
以下の方法により反射防止フィルムの諸特性の評価を行った。結果を表2に示す。
(積分反射率)
反射防止フィルムの裏面(セルローストリアセテートフィルム側)をサンドペーパーで粗面化した後に黒色インクで処理し、裏面反射をなくした状態で、分光光度計V−550(日本分光(株)製)にアダプターARV−474を装着して、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における積分反射率を測定し、平均反射率を算出して反射防止性を評価した。
(粒子占有率)
凸部の粒子占有率は、SEMにより反射防止層の表面に対して垂直な方向から反射防止層の表面を10000倍で2視野撮影し、凸部を形成する粒子の個数をカウントした。反射防止層に含まれる樹脂が粒子を覆い、粒子の判別が難しい場合は、粒子が露出し観察できるまでエッチング処理を行った。
(占有率)=(π×R)/4×(粒子の個数)/(全体の面積)×100 (%) として算出した。
Rは粒子の平均一次粒径を表す。
(隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bの平均値K)
反射防止フィルム試料をミクロトームで切削して断面を出し、断面にカーボン蒸着した。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて50000倍で撮影した。得られた画像で、空気と試料が作る界面において、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bを100点測長し、距離Bの平均値Kを算出した。また、測長した距離Bのばらつきを示す標準偏差σを算出した。
(鉛筆硬度試験)
JIS K5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。反射防止フィルム試料を温度25℃、湿度60%RHで3時間調湿した後、JIS S6006に規定する試験用鉛筆を用いて反射防止層表面に対して試験を行い、下記の基準で評価した。
A:試験後にあとが見られない
B:試験後に弱いあとが見えるが問題にならない
C:試験後に著しいあとが見えて目立つ
Figure 0006343540
Figure 0006343540
上記表1及び2に示すように、試料No.1〜21は、ハードコート層上にモスアイ構造を有する反射防止層を設けた反射防止フィルムであるので、高い硬度を得ることができた。また、試料No.1、4、7、8、10、11、13、14、16、及び17は、距離B(凹部の深さ)の平均値K及びBの標準偏差σが本発明の範囲内であるので、比較例と比較して反射率が低下した。
1 基材
2 ハードコート層
3 反射防止層
4 金属酸化物粒子
5 バインダー樹脂
10 反射防止フィルム
A 隣り合う凸部の頂点間の距離
B 隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離

Claims (9)

  1. 基材と、ハードコート層と、平均一次粒径が50nm以上380nm以下の金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む反射防止層と、をこの順に有し、前記ハードコート層と前記反射防止層は接しており、
    前記反射防止層は、前記金属酸化物粒子により形成された凹凸形状からなるモスアイ構造を有し、
    前記反射防止層の表面における粒子占有率は40%以上85%以下であり、
    前記凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bの平均値をK、前記距離Bの分布を表す標準偏差をσ、前記金属酸化物粒子の平均一次粒径をRとしたとき、下記式(1)及び式(2)を満たし、
    前記反射防止層のバインダー樹脂に対する水の接触角が95°以上である、反射防止フィルム。
    式(1) 5R/9≦K≦9R/10
    式(2) σ≦40 nm
  2. 前記金属酸化物粒子を、溶媒全量に対するエタノール質量比を0以上1以下の範囲で0.1ずつ変更した11種のエタノール/アセトン混合溶媒にそれぞれ分散した際に、前記金属酸化物粒子の沈殿が最も遅い混合溶媒のエタノール質量比をMとし、前記ハードコート層に対する水の接触角をLとしたとき、質量比Mと接触角Lとが下記式(3)及び式(4)を満たす、請求項1に記載の反射防止フィルム。
    式(3) −120M+130≧L
    式(4) L≦50°
  3. 前記金属酸化物粒子は、アルキル基、(メタ)アクリロイル基、オルガノシロキサン及びフッ素原子から選択された少なくとも1種を有する化合物で表面修飾されたものである、請求項1又は2に記載の反射防止フィルム。
  4. 前記金属酸化物粒子がシリカ粒子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
  5. 前記金属酸化物粒子が焼成シリカ粒子である請求項1〜4のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
  6. 偏光子と、偏光子を保護する少なくとも1枚の保護フィルムとを有する偏光板であって、保護フィルムの少なくとも1枚が請求項1〜5のいずれか1項に記載の反射防止フィルムである偏光板。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の反射防止フィルムを保護フィルムとして有するカバーガラス。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の反射防止フィルム、又は請求項6に記載の偏光板を有する画像表示装置。
  9. 基材と、ハードコート層と、平均一次粒径が50nm以上380nm以下の金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む反射防止層と、をこの順に有し、前記ハードコート層と前記反射防止層は接しており、
    前記反射防止層は、前記金属酸化物粒子により形成された凹凸形状からなるモスアイ構造を有し、
    前記反射防止層の表面における粒子占有率は40%以上85%以下であり、
    前記凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bの平均値をK、前記距離Bの分布を表す標準偏差をσ、前記金属酸化物粒子の平均一次粒径をRとしたとき、下記式(1)及び式(2)を満たす、反射防止フィルムの製造方法であって、
    基材上に、ハードコート層を形成する工程、及び、
    前記ハードコート層上に、平均一次粒径が50nm以上380nm以下の金属酸化物粒子とバインダー樹脂形成用化合物とを含む反射防止層形成用組成物を塗布し、硬化させて反射防止層を形成する工程を有する、反射防止フィルムの製造方法であって、
    上記バインダー樹脂形成用化合物を重合して得られるバインダー樹脂に対する水の接触角が95°以上である、反射防止フィルムの製造方法。
    式(1) 5R/9≦K≦9R/10
    式(2) σ≦40 nm
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