JP6341420B2 - フライホイール - Google Patents
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Description
フライホイールの高速回転時に生じる遠心力に耐用できるように、フライホイールの材質として、比強度(材料強度を密度で割った値)の高い材料が求められる、また、高い重量エネルギー密度を実現するためには、フライホイールのうちエネルギーに対する寄与度の小さい部分を除去することが望ましい。
しかしながら、フライホイールの回転速度を大きくすると、フライホイールの回転による遠心力を受けてフライホイールが外周側に膨張し、これに伴って、フライホイールの内部に大きな歪が発生するおそれがある。その結果、フライホイールの内部に大きな応力が発生するおそれがある。
請求項3に記載の発明は、前記第1のリング部材は、繊維強化プラスチックを用いて形成されており、当該繊維強化プラスチックの強化繊維の配向方向は、当該第1のリング部材の径方向(r)である、請求項1または2に記載のフライホイールである。
なお、以下の説明において、「応力の周方向成分」を「周方向の応力」と言い、「応力の径方向成分」を「径方向の応力」と言う。
フライホイールを構成する第1のリング部材の周方向の剛性が低い。そのため、フライホイールの回転時に内部に発生する周方向の応力の低減を図ることができる。半面、第1のリング部材の周方向の剛性を低下させることにより、第1のリング部材の周方向の剛性が高い場合と比較して、フライホイールの回転時に、フライホイールの回転による遠心力の影響を受け易く、それゆえ、径方向の外方に大きく膨張するおそれがある。フライホイールの膨張量が大きいと、フライホイールの内部の歪が大きくなり、回転状態にあるフライホイールの内部に発生する周方向および径方向の応力が増大するおそれがある。
以上により、フライホイールの回転時に内部に発生する応力の低減を図ることができ、これにより、より高速な回転を実現可能なフライホイールを提供できる。
また、複数の分割体が、第2のリング部材によって束ねられている。そのため、第1のリング部材を構成する複数の分割体が互いに離散するのを防止できる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るフライホイール1の構成を示す分解斜視図である。図2は、フライホイール1の断面図である。図3は、フライホイール1に含まれる分割体7の構成を示す斜視図である。図4は、分割体7に含まれる炭素繊維プリプレグ8の構成を示す図である。
フライホイール1は、1つのホイールリング(第1のリング部材)3と、ホイールリング3とは別体の2つのバンド(第2のリング部材)4との組立品により構成されている。ホイールリング3は、回転軸線2に対し垂直な姿勢(水平姿勢)に保持された円盤状の大径部5と、大径部5の両主面(上下面)のそれぞれに一体に設けられた合計2つの円筒状の小径部6とを含む。大径部5の外径は、たとえば約600(mm)に設定されており、小径部6の外径(たとえば約240(mm))の約2.5倍の大きさに設定されている。大径部5および2つの小径部6は同軸を有し、かつ互いに同一の内径(たとえば約150(mm))を有している。各小径部6には、バンド4が1つずつ外嵌される。
各バンド4は、CFRPを用いて形成されている。バンド4の炭素繊維の配向方向は、主として周方向θである。すなわち、バンド4の炭素繊維は、軸方向zや径方向rにはほとんど配向していない。そのため、バンド4は、周方向θに高剛性および高強度を有し、径方向rに低剛性および低強度を有している。バンド4は、樹脂を含浸させたトウ(多数のフィラメントから構成される長繊維束で撚りのないもの)を、円筒や圧力容器の型に巻きつけた後硬化させる、いわゆるフィラメントワインディング法を用いて形成されている。
フライホイール1を構成するホイールリング3の周方向の剛性が低い。そのため、フライホイール1の回転時に内部に発生する周方向θの応力の低減を図ることができる。半面、ホイールリング3の周方向θの剛性を低下させることにより、ホイールリング3の周方向θの剛性が高い場合と比較して、フライホイール1の回転時に、フライホイール1の回転による遠心力の影響を受け易く、それゆえ、径方向rの外方に大きく膨張するおそれがある。フライホイール1の膨張量が大きいと、フライホイール1の内部の歪が大きくなり、回転状態にあるフライホイール1の内部に発生する周方向θおよび径方向rの応力が増大するおそれがある。
また、ホイールリング3が、周方向θに分割された複数の分割体7によって構成されているので、ホイールリング3全体の周方向θの剛性の低減を図ることができる。これにより、ホイールリング3全体の周方向θの剛性の低減を図ることができる。
また、バンド4の炭素繊維の配向方向が周方向θであるために、バンド4の周方向θの剛性および強度が高いので、フライホイール1の高速回転時におけるホイールリング3の膨張を、バンド4によって効果的に抑制できる。
ホイールリング23は、周方向θに複数等分(たとえば24等分)に分割されている。換言すると、ホイールリング23は、周方向θに垂直な分割面27Aによって周方向θに分割され、その結果、複数(たとえば24つ)の分割体27によって構成されている。
分割体27は、三次元炭素繊維織物より構成されている。具体的には、分割体27は、炭素繊維を収束加工(カバリング加工)し、その糸で製織した炭素繊維織物を複数枚積層し、画像処理縫合方法により面内糸により縫合した後、精練加工することにより得られる。
第2の実施形態によれば、第1の実施形態に関連して記載した作用効果と同等の作用効果を奏する。
図6は、本発明の第3の実施形態に係るフライホイール31の構成を示す分解斜視図である。第3の実施形態において、第1の実施形態と共通する部分には図1の場合と同一の参照符号を付し説明を省略する。
図7は、本発明の第4の実施形態に係るフライホイール41の断面図である。
第4の実施形態に係るフライホイール41が、第1〜第3の実施形態に係るフライホイール1(図1等参照)と相違する点は、複数(この実施形態では、2つ)の大径部を備える点である。
ホイールリング43は、軸方向zに所定間隔を隔てて配置された2つの円盤状の大径部45と、2つの大径部45の間に、当該大径部45と一体に設けられた円筒状の第1の小径部46と、上側の大径部45の上側および下側の大径部45の下側に、当該大径部45と一体に設けられた、円筒状の2つの第2の小径部47とを含む。2つの大径部45は、回転軸線2に対し垂直な姿勢(水平姿勢)に保持されており、同一の諸元を有している。2つの第2の小径部46は、同一の諸元を有している。第1および第2の小径部46,47は、互いに同一の外径を有している。各大径部45の外径は、たとえば約600(mm)に設定されており、小径部46,47の外径(約240(mm))の約2.5倍の大きさに設定されている。大径部45および各小径部46,47は同軸を有し、かつ互いに略同一の内径(約150(mm))を有している。なお、図7では、第1の小径部46の軸方向zの寸法は、第2の小径部47の軸方向zの寸法の約2倍に設定されている。
次に第1および第2の試験について説明する。
<第1の試験>
第1の試験では、第1の実施形態のフライホイール1を、回転軸線2まわりに高速回転させた場合における、内部に発生する応力を、有限要素法(FEM)による解析にて求めた。第1の試験では、「2」、「3」、「4」、「6」、「12」、「24」に等分分割されたホイールリング3を有するフライホイール1を演算対象とした。また、分割されていないホイールリング(すなわち、ホイールリング33)を有するフライホイール31も演算対象とした。また、第1の試験では、各ホイールリング3,33の内径寸法を150(mm)とし、その外径寸法を500(mm)とし、その軸方向zの寸法を200(mm)とした。各フライホイール1,31の回転速度を60000(rpm)(この場合の最外周速度は、1570(m/sec))に設定した。
一方、図9に示す結果からは、ホイールリング3,33の分割数の増加に従って、ホイールリング3,33内に発生する周方向θの応力が低減していることがわかった。これは、分割数の増大に従って、ホイールリング3,33内に発生する周方向θの応力が低減していることが原因であることが考えられる。とくに、分割数が「12」および「24」である場合に、低い周方向θの応力を実現でき、全ての径方向位置において強度上限値を下回っていることがわかった。なお、バンド4に周方向θの応力が発生するために、分割数を「24」より増大させても、更なる周方向θの応力の低減は図れないものと思料する。
<第2の試験>
第2の試験では、第3の実施形態のフライホイール31を、回転軸線2まわりに高速回転させた場合における、フライホイール31内に発生する応力を、有限要素法(FEM)による解析にて求めた。第1の試験では、ホイールリング33の内径寸法を150(mm)とし、その外径寸法を600(mm)とし、その軸方向zの寸法を200(mm)とした。フライホイール31の回転速度を50000(rpm)(この場合の最外周速度は、約1570(m/sec))に設定した。
図11に示す結果からは、ホイールリング33の分割数の如何に拘らず、ホイールリング33内に発生する径方向rの応力が、全ての径方向位置において強度上限値を下回っていることがわかる。
以上、この発明の4つの実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、第4の実施形態において、2つの大径部45を備える構成を例に挙げて説明したが、大径部45を3個以上備える構成であってもよい。
繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂として、エポキシ樹脂を例に挙げたが、その他、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フラン樹脂、マレイミド樹脂、アクリル樹脂等を、マトリックス樹脂として用いることができる。
Claims (4)
- 所定の回転軸線を中心に回転して慣性エネルギーを蓄えるためのフライホイールであって、
大径部と、前記大径部から前記回転軸線の軸方向に突出する、前記大径部よりも小径の小径部とを有する第1のリング部材と、
前記小径部に外嵌された第2のリング部材とを含み、
前記第1のリング部材の周方向の剛性は、前記第2のリング部材の周方向の剛性よりも、低く設定されている、フライホイール。 - 前記第1のリング部材は、周方向に垂直な分割面によって周方向に分割された複数の分割体により構成されており、
少なくともフライホイールの回転時において、前記複数の分割体は、前記第2のリング部材によって束ねられる、請求項1に記載のフライホイール。 - 前記第1のリング部材は、繊維強化プラスチックを用いて形成されており、当該繊維強化プラスチックの強化繊維の配向方向は、当該第1のリング部材の径方向である、請求項1または2に記載のフライホイール。
- 前記第2のリング部材は、繊維強化プラスチックを用いて形成されており、当該繊維強化プラスチックの強化繊維の配向方向は、当該第2のリング部材の周方向である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフライホイール。
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