以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。
[第1実施形態]
本実施形態は、本発明の電磁弁をハイブリッド車や電気自動車の冷凍サイクルに適用する開閉弁として具体化したものである。この冷凍サイクルは、車室内を空調するための第1冷媒循環回路と、車載バッテリを冷却するための第2冷媒循環回路とを並列に接続して構成される。具体的には、共用の冷媒循環通路に圧縮機、凝縮器、レシーバが設けられ、分岐された個別の冷媒循環通路の一方に第1膨張装置と空調用蒸発器が設けられ、他方に第2膨張装置とバッテリ冷却用蒸発器が設けられている。
圧縮機にて圧縮された高温・高圧の冷媒は、凝縮器に送られて車室外の空気と熱交換され、凝縮される。凝縮された冷媒は、レシーバにて気液分離され、その液冷媒が第1膨張装置および第2膨張装置の少なくとも一方に送られる。第1膨張装置は、導入された液冷媒を絞り膨張させて低温・低圧の気液二相冷媒にし、空調用蒸発器に送出する。空調用蒸発器は、第1膨張装置から送られた冷媒を車室内の空気と熱交換させることにより蒸発させ、蒸発したガス冷媒を圧縮機に戻す。このとき、第1膨張装置は、空調用蒸発器の出口における冷媒温度を検出してその出口における冷媒が所定の過熱度を有するように空調用蒸発器へ送出する冷媒の流量を制御する。
同様に、第2膨張装置は、導入された液冷媒を絞り膨張させて低温・低圧の気液混合冷媒にし、バッテリ冷却用蒸発器に送出する。バッテリ冷却用蒸発器は、第2膨張装置から送られた冷媒をバッテリと熱交換させることにより蒸発させ、蒸発したガス冷媒を圧縮機に戻す。このとき、第2膨張装置は、バッテリ冷却用蒸発器の出口における冷媒温度を検出してその出口における冷媒が所定の過熱度を有するようにバッテリ冷却用蒸発器へ送出する冷媒の流量を制御する。
各膨張装置は、図示略の膨張弁(温度式膨張弁)と、その膨張弁の弁部の下流側で冷媒の流れを許容または遮断するシャットオフバルブとを組み付けた複合弁として構成される。本実施形態の電磁弁は、そのシャットオフバルブとして機能する。すなわち、本実施形態の電磁弁は、第1膨張装置および第2膨張装置のそれぞれに設けられる。空調装置のみを機能させる場合には、第1膨張装置の電磁弁は開弁され、第2膨張装置の電磁弁は閉弁される。逆に、バッテリの冷却装置のみを機能させる場合には、第1膨張装置の電磁弁は閉弁され、第2膨張装置の電磁弁は開弁される。
次に、本実施形態の電磁弁の具体的構成について説明する。この電磁弁は、いわゆるパイロット作動式の常閉型の制御弁(「常閉弁」ともいう)として構成される。図1は、第1実施形態に係る電磁弁の具体的構成を表す断面図である。電磁弁1は、弁本体2とソレノイド4とを組み付けて構成される。電磁弁1は、対応する膨張弁と共用のボディ5を備える。ボディ5の上端開口部を封止するようにソレノイド4が組み付けられている。
ボディ5とソレノイド4との間には弁室10が画成されている。弁室10は、上流側の導入通路12と下流側の導出通路14とを連通させる。なお、導入通路12は、図示の断面の奥方に設けられている(破線参照)。導出通路14は、主弁孔16を介して弁室10と連通する。主弁孔16の上流側開口端部に主弁座18が形成されている。弁室10には、段付円柱状の主弁体20が配設されている。その主弁体20が主弁座18に着脱することにより主弁が開閉される。また、ソレノイド4側から弁室10に向けて段付円筒状のガイド部22が延設され、主弁体20がガイド部22に内挿されている。ガイド部22は、シール用のOリング23を介してボディ5と連結されている。
主弁体20とガイド部22は、主弁孔16と同軸状に(同一軸線上に)配設されている。主弁体20は、ガイド部22との間に背圧室24を区画する。主弁体20は、その外周面がガイド部22の内周面に摺動可能に支持され、軸線方向(主弁の開閉方向)に安定に動作する。また、主弁体20の中央を軸線方向に貫通する小径のパイロット弁孔26が設けられている。ガイド部22の下端部と主弁体20との間には、主弁体20を開弁方向に付勢するスプリング28(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
一方、ソレノイド4は、非磁性のスリーブ30と、スリーブ30の上端開口部を封止するように固定されたコア32と、スリーブ30内でコア32に対向配置されたプランジャ34と、スリーブ30およびコア32に外挿嵌合されたボビン36と、ボビン36に巻回された電磁コイル38とを含む。プランジャ34は、コア32と主弁体20との間に配設されている。そして、電磁コイル38を上下に挟むように一対の端部材40が設けられている。端部材40は、磁気回路を構成するヨークとしても機能する。端部材40からは通電用のハーネス42が引き出されている。ソレノイド4は、シールリング44を介してボディ5と連結されている。
スリーブ30は段付円筒状をなし、その下半部が拡径されてガイド部22と連設されている。コア32は段付円柱状をなし、その下端部がスリーブ30の上端部に嵌合し、スリーブ30の上端開口部を封止する。プランジャ34は有底円筒状をなし、側部に内外を連遊する連通路46が設けられる。プランジャ34とコア32との間の空間は、その連通路46と、プランジャ34の外周面に形成された連通溝(図示せず)を介して背圧室24と連通している。
プランジャ34の下端中央部には細径のパイロット弁体50が支持されている。パイロット弁体50は、その下半部がプランジャ34の底部を貫通して背圧室24に延出する。パイロット弁体50は、下部が先端に向かって小径化するテーパ状(ニードル状)をなす。パイロット弁体50は、パイロット弁孔26に接離してパイロット弁を開閉する。コア32の下面中央部には、弾性体(例えばゴム)からなるばね受け52が設けられている。ばね受け52とパイロット弁体50との間には、パイロット弁体50を閉弁方向に付勢するスプリング54(「付勢部材」として機能する)が介装されている。プランジャ34と主弁体20との間には、主弁体20を閉弁方向に付勢するスプリング56(「付勢部材」として機能する)が介装されている。なお、本実施形態においては、スプリング54の荷重がスプリング28,56の荷重よりも大きくなるように設定されている。
また、スリーブ30の側面を半径方向内向きに押圧するように伝搬規制部材60が設けられている。伝搬規制部材60は、主弁の開閉時に発生した衝突音の大気側への伝搬をスリーブ30の位置にて遮断又は減衰させるための部材であり、弾性体(本実施形態ではゴム)からなる。伝搬規制部材60は、リング状をなし、所定の締め代をもってスリーブ30の外周面に嵌着される。
図2は、図1のA部拡大図である。(A)は主弁の開弁状態を示し、(B)は主弁の閉弁状態を示している。図2(A)に示すように、主弁体20は、円筒状の本体62の内方に円柱状の弾性体(例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やゴム)からなる弁部材64を固定したものであり、その弁部材64が主弁座18に着脱することにより主弁を開閉する。弁部材64の軸線に沿ってパイロット弁孔26が貫通している。パイロット弁孔26の背圧室24側の端部にはパイロット弁座66が形成されている。
本体62の周縁部近傍には、背圧室24の内外を連通する小径のオリフィス68(「リーク通路」として機能する)が形成されている。また、本体62の下端部には、半径方向外向きにフランジ状に延出する遮蔽壁70が設けられている。主弁体20におけるガイド部22との摺動部と遮蔽壁70との間には凹部72が設けられている。凹部72は、図2(A)に示す主弁の全開時にガイド部22の摺動面との間に空隙Sを形成する。遮蔽壁70および凹部72は、冷媒中の異物が主弁体20とガイド部22との摺動部に噛み込むことを防止または抑制する。
すなわち、図2(B)に示す主弁の閉弁時に冷媒に含まれる金属粉等の異物が遮蔽壁70を回り込んで凹部72に付着したとしても、開弁時に主弁体20がガイド部22に対して相対変位する過程で空隙Sに収まるようになり、その異物が両者の摺動部に噛み込むといった事態を防止または抑制することができる。すなわち、可動側である主弁体20に凹部72を設け、開弁作動により主弁体20がガイド部22の内方に引き込まれたとしても、付着した異物が摺動面に接触し難い構成としている。その結果、異物の噛み込みによる弁部の作動不良を防止または抑制することができる。また、主弁の閉弁時には遮蔽壁70がガイド部22の下面に着座するため、主弁体20とガイド部22との隙間への異物の侵入が規制される。
パイロット弁体50は、プランジャ34内に支持される係合部80と、プランジャ34の底部を貫通して背圧室24に延出する弁形成部82とを有する。係合部80は円板状をなし、プランジャ34の底部により下方から支持される。プランジャ34の底部中央には貫通孔84が設けられている。弁形成部82は、係合部80の下面中央から軸線に沿って下方に延設され、貫通孔84を貫通する。弁形成部82の下端部は、その先端に向けて断面が小さくなるニードル形状を有する。弁形成部82の先端部がパイロット弁孔26に挿抜されることにより、パイロット弁体50がパイロット弁座66に着脱する。
一方、伝搬規制部材60は、図示のように、ボビン36と下側の端部材40との間に挟まれるように組み付けられている。伝搬規制部材60は、その内周面に向けて小幅となるテーパ状をなし、スリーブ30の側面に対して局所的な押圧力を付与可能な構成とされている。このような構成により、ガイド部22からスリーブ30へ振動が伝達されたとしても、これを減衰させることができる。
図1に戻り、以上のように構成された電磁弁1は、ソレノイド4がオフの状態(非通電状態)では、コア32とプランジャ34との間に吸引力が作用しない。このため、スプリング54の付勢力によりパイロット弁体50が付勢され、図2(B)に示すように、パイロット弁体50がパイロット弁座66に着座してパイロット弁を閉じる。このとき、導入通路12の冷媒がオリフィス68を介して背圧室24に導入されるため、主弁体20に閉弁方向の差圧が作用する。その結果、主弁は閉弁状態を維持する。
一方、ソレノイド4がオン(通電状態)にされると、コア32とプランジャ34との間に吸引力が作用するため、図2(A)に示すように、パイロット弁体50がプランジャ34により引き上げられてパイロット弁座66から離間し、パイロット弁が開く。この結果、背圧室24内の冷媒がパイロット弁孔26を介して導出通路14に導出され、背圧室24の圧力が低下する。ここで、オリフィス68の通路断面はパイロット弁孔26の通路断面よりも小さいため、主弁体20には一時的に開弁方向の差圧が作用する。この差圧による力とスプリング28の付勢力により主弁体20が押し上げられ、主弁が速やかに開放される。このとき、上流側の図示しない膨張弁から導入通路12を介して導入された気液二相冷媒は、弁室10および主弁孔16を経て導出通路14に導出され、下流側の蒸発器へ供給される。
次に、本実施形態において採用されるパイロット弁体50の着座性能を高めるための構造について説明する。図3は、パイロット弁体およびその周辺構造を模式的に表す図である。(A)はパイロット弁体の理想的な開弁状態を示し、(B)はパイロット弁体が偏心した開弁状態を示している。(C)および(D)はパイロット弁体が偏心した状態から閉弁状態となるまでの過程を示している。図中の一点鎖線はパイロット弁孔26の軸線を示し、破線はパイロット弁体50の軸線を示している。
図3(A)に示すように、本実施形態では、スリーブ30,プランジャ34,パイロット弁体50およびパイロット弁孔26が同一軸線上に存在する状態を想定した場合に各部材間のクリアランスが次の関係を有するように設定している。すなわち、パイロット弁体50(詳細には係合部80)とプランジャ34との径方向のクリアランスCL1が、プランジャ34とスリーブ30との径方向のクリアランスCL2よりも大きくなるように設定されている(CL1>CL2)。さらに、弁形成部82とプランジャ34との径方向のクリアランスCL3が、係合部80とプランジャ34との径方向のクリアランスCL1よりも大きくなるように設定されている(CL3>CL1)。
このような設定により、以下のような作用効果が得られる。例えば図3(B)に示すように、パイロット弁の開弁時にプランジャ34がスリーブ30に対して偏心し、それによりパイロット弁体50がパイロット弁孔26に対して偏心したとしても、閉弁時にはパイロット弁体50による自律調心機能が発揮される。すなわち、図3(C)に示すように、仮にプランジャ34がスリーブ30に対して偏心した状態で閉弁方向に動作したとしても、パイロット弁体50がパイロット弁孔26に挿入されるときに受ける反力により径方向に動作し、図3(D)に示すように、弁孔に対して自律的に調心されるようになる。その際、パイロット弁体50はプランジャ34によって径方向の動きが規制されず、プランジャ34からの荷重を受けることもない。このため、パイロット弁座66の偏摩耗も生じ難く、パイロット弁体50の着座性能を向上させることができる。
図4は、比較例に係るパイロット弁体およびその周辺構造を模式的に表す図である。(A)はパイロット弁体の理想的な開弁状態を示し、(B)はパイロット弁体が偏心した開弁状態を示している。(C)および(D)はパイロット弁体が偏心した状態から閉弁状態となるまでの過程を示している。
図4(A)に示すように、この比較例は、パイロット弁体150とプランジャ134とを同軸状に一体化した構成を有する。このような構成を採用した場合、例えば図4(B)に示すように、パイロット弁の開弁時にプランジャ134がスリーブ30に対して偏心し、それによりパイロット弁体150がパイロット弁孔26に対して偏心すると、閉弁時にパイロット弁座66への片当りの影響が大きくなる。すなわち、図4(C)に示すように、仮にプランジャ134がスリーブ30に対して偏心した状態で閉弁方向に動作すると、パイロット弁体150がプランジャ134と一体となったまま大きな荷重にてパイロット弁座66に衝突する。図4(D)に示すように、パイロット弁は最終的には閉じられるものの、このような衝突が繰り返されると、パイロット弁座66の偏摩耗が生じ、パイロット弁体150の着座性能を確保することができなくなる。
特許文献1に示した構成も、プランジャが偏心した状態ではパイロット弁体と一体動作するため、この比較例と同様の現象を生じさせると考えられる。言い換えれば、本実施形態によれば、このような問題を生じさせることなく、パイロット弁体50の着座性能を良好に維持することができる。なお、本実施形態では、弁形成部82とプランジャ34とのクリアランスCL3を、係合部80とプランジャ34とのクリアランスCL1よりも大きく設定したが、変形例においてはこれらを等しく設定してもよい(CL3=CL1)。
[第2実施形態]
本実施形態の電磁弁は、プランジャの支持構造が第1実施形態と若干相異する。このため、以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。図5は、第2実施形態に係る電磁弁の具体的構成を表す部分拡大断面図である。(A)は主弁の開弁状態を示し、(B)は主弁の閉弁状態を示している。同図において第1実施形態(図2参照)とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
図5(A)に示すように、本実施形態においては、コア32とプランジャ234との間にスプリング256(「付勢部材」として機能する)が介装されている。また、コア32とパイロット弁体50との間にスプリング54(「付勢部材」として機能する)が介装されている。一方、プランジャ234と主弁体20との間にはスプリングが設けられておらず、スリーブ30の下端開口部に環状のストッパ230(「規制部材」として機能する)が圧入されている。プランジャ234の下端部は下方に凸となる形状を有し、ストッパ230と係合可能な相補形状とされている。ストッパ230は、プランジャ234を下方から軸線方向に係止することにより、そのプランジャ234の動作範囲の下死点を規定する。なお、ストッパ230の内径は、プランジャ234の凸部の外径よりも十分に大きくされている。
このような構成により、ソレノイドがオフの状態では、図5(B)に示すように、スプリング54の付勢力によりパイロット弁体50がパイロット弁座66に着座してパイロット弁を閉じる。その結果、主弁は閉弁状態を維持する。このとき、プランジャ234がストッパ230に係止されることにより、背圧室24の形成が確保される。また、パイロット弁の閉弁状態においては図示のように、パイロット弁体50の係合部80が、プランジャ234の底部から所定間隔リフトした状態となる。言い換えれば、そうなるようにストッパ230が位置決めされている。
一方、ソレノイドがオンにされると、図5(A)に示すように、パイロット弁体50がプランジャ234により引き上げられ、パイロット弁が開く。この結果、主弁が速やかに開放される。
次に、本実施形態において採用されるパイロット弁体50の着座性能を高めるための構造について説明する。図6は、パイロット弁体およびその周辺構造を模式的に表す図である。(A)はパイロット弁体の理想的な開弁状態を示し、(B)はパイロット弁体が偏心した開弁状態を示している。(C)および(D)はパイロット弁体が偏心した状態から閉弁状態となるまでの過程を示している。
図6(A)に示すように、本実施形態においても、パイロット弁体50(詳細には係合部80)とプランジャ234とのクリアランスCL1が、プランジャ234とスリーブ30とのクリアランスCL2よりも大きい(CL1>CL2)。また、弁形成部82とプランジャ234との径方向のクリアランスCL3が、係合部80とプランジャ234との径方向のクリアランスCL1よりも大きい(CL3>CL1)。そして、上述したストッパ230が設けられている。
このような構成により、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、図6(B)に示すように、パイロット弁の開弁時にプランジャ234の偏心によりパイロット弁体50が偏心したとしても、図6(C)および(D)に示すように、閉弁時にはパイロット弁体50による自律調心機能が発揮される。その際、パイロット弁体50がプランジャ234からの荷重を受けることもない。また、図6(D)に示すように、パイロット弁体50がプランジャ234から完全に離脱するため、パイロット弁体50の調心がさらに容易となる。このため、パイロット弁座66の偏摩耗も生じ難く、パイロット弁体50の着座性能を向上させることができる。
[第3実施形態]
本実施形態の電磁弁は、パイロット弁体の支持構造が第1実施形態と相異する。このため、以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。図7は、第3実施形態に係る電磁弁の具体的構成を表す部分拡大断面図である。(A)は主弁の開弁状態を示し、(B)は主弁の閉弁状態を示している。同図において第1実施形態(図2参照)とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
図7(A)に示すように、本実施形態においては、プランジャ334にパイロット弁体350を収容する収容部が設けられている。プランジャ334の軸線方向中間部には区画壁352が設けられている。プランジャ334の下端中央部には、有底円筒状のガイド部材354が圧入されている。区画壁352とガイド部材354とにより囲まれる空間に収容部が形成されている。ガイド部材354の底部には貫通孔84が形成されている。
パイロット弁体350は、円柱状の本体の軸線方向中央に半径方向外向きに突出したフランジ状の係合部380を有する。パイロット弁体350における係合部380よりも下部が弁形成部82となっている。係合部380と区画壁352との間には、パイロット弁体350を閉弁方向(下方)に付勢するスプリング356(「第2スプリング」として機能する)が介装されている。ばね受け52と区画壁352との間には、プランジャ334を閉弁方向に付勢するスプリング54(「第1スプリング」として機能する)が介装されている。
このような構成により、ソレノイドがオフの状態では、図7(B)に示すように、スプリング54の付勢力によりパイロット弁体350がパイロット弁座66に着座してパイロット弁を閉じる。その結果、主弁は閉弁状態を維持する。このとき、区画壁352がパイロット弁体350の上端面に当接することによりプランジャ334が係止されるため、背圧室24の形成が確保される。係合部380は、ガイド部材354の底部から離脱した状態となる。言い換えれば、そうなるようにパイロット弁体350における係合部380の位置決めがなされている。
一方、ソレノイドがオンにされると、図7(A)に示すように、パイロット弁体350がプランジャ334(詳細にはガイド部材354)により引き上げられ、パイロット弁が開く。この結果、主弁が速やかに開放される。
次に、本実施形態において採用されるパイロット弁体350の着座性能を高めるための構造について説明する。図8は、パイロット弁体およびその周辺構造を模式的に表す図である。(A)はパイロット弁体の理想的な開弁状態を示し、(B)はパイロット弁体が偏心した開弁状態を示している。(C)はパイロット弁体が偏心した状態から閉弁した状態を示している。
図8(A)に示すように、本実施形態においても、パイロット弁体350(詳細には係合部380)とプランジャ334とのクリアランスCL1が、プランジャ334とスリーブ30とのクリアランスCL2よりも大きい(CL1>CL2)。また、弁形成部82とプランジャ334との径方向のクリアランスCL3が、係合部380とプランジャ334との径方向のクリアランスCL1よりも大きい(CL3>CL1)。そして、上述した区画壁352が設けられている。
このような構成により、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、図8(B)に示すように、パイロット弁の開弁時にプランジャ334の偏心によりパイロット弁体350が偏心したとしても、図8(C)に示すように、閉弁時にはパイロット弁体350による自律調心機能が発揮される。その調心過程においてパイロット弁体350が径方向に変位可能であるため、プランジャ334から荷重を受けることも抑制できる。このため、パイロット弁座66の偏摩耗も生じ難く、パイロット弁体350の着座性能を向上させることができる。
[第4実施形態]
本実施形態の電磁弁は、パイロット弁体の支持構造が第3実施形態と若干相異する。このため、以下では第3実施形態との相異点を中心に説明する。図9は、第4実施形態に係る電磁弁の具体的構成を表す部分拡大断面図である。(A)は主弁の開弁状態を示し、(B)は主弁の閉弁状態を示している。同図において第3実施形態(図7参照)とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
図9(A)に示すように、本実施形態においては、主弁体420の上端開口部に環状のストッパ430(「規制部材」として機能する)が圧入されている。なお、ストッパ430にはその周方向に所定間隔にて凹溝432が設けられている。ストッパ430は、プランジャ334を下方から軸線方向に係止することにより、そのプランジャ334の動作範囲を制限する。なお、ストッパ430の内径は、ガイド部材354の外径よりも十分に大きくされている。パイロット弁体450は、第3実施形態のパイロット弁体350と近似した構造を有するが、係合部380よりも上部の長さが短くされている。
このような構成により、ソレノイドがオフの状態では、図8(B)に示すように、スプリング54の付勢力によりプランジャ334が閉弁方向に動作し、ストッパ430に係止される。ただし、プランジャ334と凹溝432との間に内外を連通する連通路が形成されるため、背圧室24の形成は確保される。一方、スプリング356の付勢力によりパイロット弁体450がパイロット弁座66に着座してパイロット弁を閉じる。その結果、主弁は閉弁状態を維持する。このとき、区画壁352はパイロット弁体350の上端面に当接しない。言い換えれば、パイロット弁の閉弁時にパイロット弁体450と区画壁352との間に空間が形成されるようにストッパ430の高さおよびパイロット弁体450の長さが設定されている。
一方、ソレノイドがオンにされると、図9(A)に示すように、パイロット弁体450がプランジャ334(詳細にはガイド部材354)により引き上げられ、パイロット弁が開く。この結果、主弁が速やかに開放される。
次に、本実施形態において採用されるパイロット弁体450の着座性能を高めるための構造について説明する。図10は、パイロット弁体およびその周辺構造を模式的に表す図である。(A)はパイロット弁体の理想的な開弁状態を示し、(B)はパイロット弁体が偏心した開弁状態を示している。(C)はパイロット弁体が偏心した状態から閉弁した状態を示している。
図10(A)に示すように、本実施形態においても、パイロット弁体450(詳細には係合部380)とプランジャ334とのクリアランスCL1が、プランジャ334とスリーブ30とのクリアランスCL2よりも大きい(CL1>CL2)。また、弁形成部82とプランジャ334との径方向のクリアランスCL3が、係合部380とプランジャ334との径方向のクリアランスCL1よりも大きい(CL3>CL1)。そして、上述したストッパ430が設けられている。
このような構成により、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、図10(B)に示すように、パイロット弁の開弁時にプランジャ334の偏心によりパイロット弁体450が偏心したとしても、図10(C)に示すように、閉弁時にはパイロット弁体450による自律調心機能が発揮される。しかも、第3実施形態とは異なり、パイロット弁体450と区画壁352とが当接しないため、パイロット弁体450がプランジャ334からの荷重を受けることもない。また、パイロット弁体450がプランジャ334から完全に離脱するため、パイロット弁体450の調心がさらに容易となる。このため、パイロット弁座66の偏摩耗も生じ難く、パイロット弁体450の着座性能を向上させることができる。
[第5実施形態]
本実施形態の電磁弁は、パイロット弁体の支持構造が第1,第3実施形態と相異する。このため、以下では第1,第3実施形態との相異点を中心に説明する。図11は、第5実施形態に係る電磁弁の具体的構成を表す部分拡大断面図である。(A)は主弁の開弁状態を示し、(B)は主弁の閉弁状態を示している。同図において第1,第3実施形態(図2,図7参照)とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
図11(A)に示すように、本実施形態では、パイロット弁体550をプランジャ534ではなく、主弁体520により支持している。主弁体520の上端中央部には、有底円筒状のガイド部材554が固定されている。すなわち、ガイド部材554は、下端開口部に半径方向外向きに延出するフランジ部を有し、そのフランジ部が本体62と弁部材64との間に挟持されるようにして主弁体520に固定されている。ガイド部材554と弁部材64とにより囲まれる空間にパイロット弁体550の収容部が形成されている。ガイド部材554の上底部には貫通孔584が形成されている。ガイド部材554の側方には、内外を連通させる連通孔555が設けられている。
パイロット弁体550は、円柱状の本体の上端近傍に半径方向外向きに突出したフランジ状の係合部380を有する。パイロット弁体550における係合部380よりも下部が弁形成部82となっている。パイロット弁体550における係合部380よりも上部は、貫通孔584を貫通して上方に突出する。係合部380と弁部材64との間には、パイロット弁体550を開弁方向(上方)に付勢するスプリング556(「第2付勢部材」として機能する)が介装されている。ばね受け52と区画壁352との間には、プランジャ534を閉弁方向に付勢するスプリング54(「第1付勢部材」として機能する)が介装されている。
一方、プランジャ534の軸線方向中間部には区画壁352が設けられている。プランジャ534における区画壁352の下方には、ガイド部材554の上部を収容可能な凹部560が形成されている。この凹部560により、プランジャ534とガイド部材554とが互いに干渉しないようにされている。
このような構成により、ソレノイドがオフの状態では、図11(B)に示すように、スプリング54の付勢力によりプランジャ534がパイロット弁体550の上端面に当接してこれを閉弁方向に押圧する。その結果、パイロット弁体550がパイロット弁座66に着座してパイロット弁を閉じる。その結果、主弁は閉弁状態を維持する。このとき、区画壁352がパイロット弁体550の上端面に当接することによりプランジャ534が係止されるため、背圧室24の形成が確保される。係合部380は、ガイド部材554の上底部から離脱した状態となる。言い換えれば、そうなるようにパイロット弁体550における係合部380の位置決めがなされている。
一方、ソレノイドがオンにされると、図11(A)に示すように、プランジャ534が開弁方向に動作してパイロット弁体550から離間する。そして、スプリング556の付勢力によりパイロット弁体550が引き上げられ、パイロット弁が開く。この結果、主弁が速やかに開放される。このとき、係合部380がガイド部材554の底部(「係止部」として機能する)に係止されるため、パイロット弁体550はプランジャ534と離間した状態を維持する。
次に、本実施形態において採用されるパイロット弁体550の着座性能を高めるための構造について説明する。図12は、パイロット弁体およびその周辺構造を模式的に表す図である。(A)はパイロット弁体の理想的な開弁状態を示し、(B)はプランジャが偏心したときのパイロット弁体の開弁状態を示している。(C)はプランジャが偏心した状態からパイロット弁体が閉弁動作した状態を示している。
図12(A)に示すように、本実施形態においては、パイロット弁体550(詳細には係合部380)と主弁体520(詳細にはガイド部材554)とのクリアランスCL1が、プランジャ534とスリーブ30とのクリアランスCL2よりも小さい(CL1<CL2)。また、パイロット弁体550(詳細にはガイド部材554よりも上部)とガイド部材554とのクリアランスCL3が、係合部380とガイド部材554とのクリアランスCL1よりも大きい(CL3>CL1)。
以上のように、本実施形態ではガイド部材554がプランジャ534ではなく、主弁体520に対して固定されている。このため、図12(B)に示すように、パイロット弁の開弁時にプランジャ534がスリーブ30に対して偏心したとしても、パイロット弁体550にその影響が及ぶことはない。すなわち、図12(C)に示すように、パイロット弁体550は、閉弁作動時に一時的にプランジャ534からの押圧力を受けて動作するものの、常にはプランジャ534の動作とは関わりなくパイロット弁孔26と同軸状に保持される。このため、パイロット弁座66の偏摩耗も生じ難く、パイロット弁体550の着座性能を向上させることができる。
なお、変形例においては、クリアランスCL1とクリアランスCL2とを等しく設定してもよい(CL1=CL2)。また、クリアランスCL3とクリアランスCL1とを等しく設定してもよい(CL3=CL1)。また、プランジャ534の偏心がパイロット弁体550に影響を与えないため、他の変形例においては、クリアランスCL1がクリアランスCL2より大きくてもよい(CL1>CL2)。また、クリアランスCL3がクリアランスCL1より小さくてもよい(CL3<CL1)。
[第6実施形態]
本実施形態の電磁弁は、パイロット弁体を調心するための構造をプランジャに設けている点で第1実施形態と相異する。このため、以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。図13は、第6実施形態に係る電磁弁の具体的構成を表す部分拡大断面図である。(A)は主弁の開弁状態を示し、(B)は主弁の閉弁状態を示している。同図において第1実施形態(図2参照)とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
図13(A)に示すように、本実施形態では、プランジャ634の下面中央から下方に延出したニードル状の突出部がパイロット弁体650として機能する。プランジャ634の下端周縁部には、下方に向かって大径化するテーパ部636が形成されている。一方、スリーブ630の開口端部、つまりスリーブ630とガイド部22との接続部の内壁にも下方に向けて拡径されるテーパ部638が形成されている。これらのテーパ部636,638は相補形状とされ、パイロット弁体650の軸線をパイロット弁孔26の軸線に近づけるための自律調心構造を構成する。その詳細については後述する。
このような構成により、ソレノイドがオフの状態では、図13(B)に示すように、スプリング54によりプランジャ634が閉弁方向に付勢され、パイロット弁体550がパイロット弁座66に着座してパイロット弁を閉じる。その結果、主弁は閉弁状態を維持する。このとき、プランジャ634の下端面と主弁体20の上端面との間に間隙が形成されるため、背圧室24の形成が確保される。言い換えれば、そうなるようにパイロット弁体650の長さが設定されている。
一方、ソレノイドがオンにされると、図13(A)に示すように、プランジャ634が開弁方向に動作してパイロット弁体650が引き上げられ、パイロット弁が開く。この結果、主弁が速やかに開放される。
次に、本実施形態において採用されるパイロット弁体650の着座性能を高めるための構造について説明する。図14は、パイロット弁体およびその周辺構造を模式的に表す図である。(A)はパイロット弁体の理想的な開弁状態を示し、(B)および(C)はプランジャが開弁作動中に偏心した場合の動作過程を示している。(D)は調心後の閉弁動作を示している。
図14(A)に示すように、本実施形態においては、プランジャ634の軸線に対するテーパ部636の傾斜角θ1と、スリーブ630の軸線に対するテーパ部638の傾斜角θ2とが等しく設定されている(θ1=θ2)。
このような構成により、図14(B)に示すように、ソレノイドがオンにされてパイロット弁が開弁動作を開始した後にプランジャ634がスリーブ30に対して偏心したとしても、テーパ部636とテーパ部638とが係合するにつれてプランジャ634が自律的に調心するようになる。その結果、図14(C)に示すように、パイロット弁が全開状態となるときにはパイロット弁体650がパイロット弁孔26の軸線上に位置するようになる。このような状態でソレノイドがオフにされると、プランジャ634が軸線に沿って開弁方向に動作し易くなり、パイロット弁体650もパイロット弁孔26との同軸性を維持しつつ閉弁動作するようになる。このため、パイロット弁座66の偏摩耗も生じ難く、パイロット弁体650の着座性能を向上させることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
図15は、第6実施形態の変形例に係るパイロット弁体およびその周辺構造を模式的に表す図である。(A)は第1変形例を示し、(B)は第2変形例を示し、(C)は第3変形例を示している。各図において、第6実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
図15(A)に示すように、第1変形例においては、プランジャ634の軸線に対するテーパ部636の傾斜角θ1が、スリーブ730の軸線に対するテーパ部738の傾斜角θ2よりも大きくなるように設定されている(θ1>θ2)。このように構成すれば、テーパ部636がテーパ部738に速やかに当接を開始するため、プランジャ634の自律調心機能を向上させることができる。
図15(B)に示すように、第2変形例においては、プランジャ834の下端周縁部をR部836(曲面形状)とし、スリーブ830の開口端部838をストレートに構成している。このように構成すれば、プランジャ834の位置や姿勢にかかわらず、R部836をスリーブ830の開口端部838に大きな角度で当接させることができる。このため、プランジャ834の自律調心機能を維持しつつ、その下端部がスリーブ830の開口端部838にロックされるといった事態を確実に防止することができる。
図15(C)に示すように、第3変形例においては、プランジャ934の外周面をストレートに構成し、スリーブ930の上端部に内方に膨出する膨出部936を設けている。膨出部936は、例えばスリーブ930の半製品の外周面に環状溝をプレス成形するなどして実現することができる。このように構成すれば、開弁時にプランジャ934の上端部が膨出部936に差し掛かったときに調心が行われるようになり、第6実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
上記実施形態では、電磁弁を膨張弁と一体化したシャットオフバルブとして構成する例を示したが、独立した制御弁として構成してもよい。また、上記実施形態では、電磁弁を冷凍サイクルに適用する開閉弁として例示したが、各電磁弁を冷凍サイクル以外の装置における開閉弁として適用してもよいことは言うまでもない。
上記実施形態では、パイロット弁体としてニードル形状(尖頭形状)のものを示したが、例えば先端部が半球状に曲面をなすなど、その他の形状であってもよい。すなわち、パイロット弁体として、その先端部がパイロット弁孔に挿入されるにつれて自律的に調心されるような構成であればよい。
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。