JP6340672B2 - 摩耗インジケータを備えるピストンリング - Google Patents

摩耗インジケータを備えるピストンリング Download PDF

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Description

本発明は、外側摺動面に摩耗インジケータを備えるピストンリングに関する。
ピストンリングは、内燃機関が製造されて以来、従来技術において熟知されている。
大型の内燃機関において、ピストンリングの摩耗は、視覚的にのみならず場合によっては摺動面コーティングの層厚測定により、定期的に点検される。しかしながら、信頼性の高い評価は、限られたスペースが原因で困難なことが多い。これに加えて、エンジンメーカでは、標準的な点検間隔の代わりに、状態に応じた保守管理が普及してきている。これにより、ピストンリングを含むエンジン部品における摩耗代が、より効果的に消尽される。
これまで、ピストンリングは、視覚的又は層厚測定によって評価されてきた。しかしながら、視覚的な評価では摺動面コーティングの残留層厚を正確には判定できないし、また、層厚測定による評価でもピストンリングの装着状態では大きな測定誤差につながることが極めて多いのが現状である。
ピストンリングは、他の機械的部品と同様に摩耗を生じる。しかしながら、従来技術において、ピストンリングをピストン溝から取り外さない限り、摩耗を容易に判定する手段は存在していなかった。
また、従来技術では、特殊な摩耗保護層によりピストンリングの摩耗対策を講じることも既知である。
摩耗保護層を備えるピストンリングは、例えば特許文献1(欧州特許第1409896号明細書)や特許文献2(米国特許第5901963号明細書)に開示されている。これら特許文献に係る摩耗保護層は、ピストンリングの寿命に亘って十分な摩耗性を発揮するよう設けられている。従って、上記特許文献には、ピストンリングの摩耗を示唆するインジケータに関する記載はない。ただし、この場合のピストンリングは、所定の保守間隔で点検をすることはできる。
欧州特許第1409896号明細書 米国特許第5901963号明細書
ピストンをシリンダから取り出すことなくピストンの摩耗度を判定することは、従来は不可能であった。このような背景事情に鑑み、本発明の課題は、ピストンリングをピストン溝から取り外したりピストン自体をシリンダ又はエンジンから取り外したりすることなく、その摩耗度を判定可能とするピストンリングを提供することである。
上述した課題は、請求項1に記載の特徴を有するピストンリングと、請求項16に記載の特徴を有する方法により解決される。好適な実施形態については、従属請求項に記載したとおりである。
本発明の第1態様によれば、摩耗インジケータを備えるピストンリングが提供される。このピストンリングが更に備える外周面には、所定の高さhをもって外方に突出させた突出構造部が設けられる。外周面には更に、突出構造部を被覆する摩耗保護層が設けられる。この場合に摩耗保護層は、突出構造部領域において、この突出構造部の高さだけ減少している。摩耗保護層の厚さは、突出構造部の高さよりも大きいか、又は少なくとも同一である。更に、本発明のピストンリングは、内周面及び標準的な合口を備えることができる。摩耗保護層下における突出構造が視認可能になるまで、保護層の摩耗に伴って保護層の厚さが減少していく。
本発明は、コーティングが施されたピストンリング、特にコーティングが施された摺動面に関して後処理を行ったピストンリングに関する。ピストンリングの製造に際しては、コーティングが施される前に、摺動面プロファイルの頂点に摩耗インジケータとして例えばウェッジが形成される。エンジン稼働時には、ウェッジ状の摩耗インジケータが露出するまで摺動面コーティングが摩耗する。点検に際して、作業者により、ウェッジ状の摩耗インジケータが容易に確認可能であり、従ってリングにおける残留層厚を容易に判定することができる。エンジン動作にとって、ウェッジ状の摩耗インジケータが露出することによる問題は、摺動面コーティングが完全に摩耗することによる問題に比べて遥かに小さい。本発明は、ピストンリングの摩耗を定期的に点検する必要のある任意の箇所に適用可能である。本発明は、特に2ストロークエンジンに好適である。2ストロークエンジンの場合、ピストンを取り外すことなくピストンリングの外側が確認できるからである。ただし、本発明は、4ストロークエンジン又はコンプレッサにも適用可能である。
本発明に係るピストンリングの例示的な実施形態において、所定の高さだけ外方に突出させた突出構造部は、ピストンリングとは異なる材料で構成されている。この実施形態であれば、コーティング加工により、突出構造部を簡単に形成することが可能であり、突出構造部をピストンリング本体から加工するよりも容易である。
ピストンリングの他の例示的な実施形態において、所定の高さだけ外方に突出させた突出構造部は、機械的特性において摩耗保護層の機械的特性に対応する材料で構成されている。これにより、摩耗インジケータが、悪影響を生じることなく摩耗保護層に統合可能である。突出構造部の材料が摩耗保護層の材料と同様の機械的特性を有すると共に、摩耗保護層と良好に統合されれば、突出構造部又は摩耗インジケータによる悪影響は小さい。
ピストンリングの他の例示的な実施形態において、突出構造部の材料は、摩耗保護層の材料とは異なる色調を有する。色調のコントラストにより、ピストンリングの摩耗した表面において、突出構造部又は摩耗保護層が特に容易に確認可能である。従って、構造上の変化だけに着目する必要がない。この点は、突出構造部がピストンリング本体と同一材料で構成されているか、又は異なる材料で構成されているかを問わない。
ピストンリングの他の例示的な実施形態において、摩耗保護層が設けられる摺動面は、突出構造部の高さよりも実質的に平坦に形成される。この場合、摺道面及び摩耗した摺動面における表面粗さは、突出構造部の高さよりも小さくするのが望ましい。さもなければ、摩耗が明確に確認できないからである。
ピストンリングの他の例示的な実施形態において、突出構造部の高さhは、厚さDの1/5、好適には1/8、更に好適には1/10以下である。突出構造部の高さが厚さの約1/2であれば、摩耗インジケータは、保護層における摩耗の進行を確認するために機能する。突出構造部の高さが厚さの約1/5であれば、摩耗インジケータは、摩耗を早期に示すために機能する。この段階において、ピストンリングは引き続き使用可能である。従って、代替的なリングを早期に用意しておき、次回の保守管理時にピストンリングを取り付けることができる。突出構造部の高さが厚さの約1/8であれば、摩耗インジケータは、摩耗をより早期に示すために使用できる。この場合の摩耗では、ピストンリングはスペアが用意されるまで引き続き使用可能である。これらの点は、特に2ストロークエンジンにおいて有利である。なぜなら、2ストロークエンジンの場合、ピストンを取り外すことなくシリンダの制御溝によりピストンリングが確認できるからである。突出構造部の高さが厚さの約1/10であれば、摩耗インジケータは、継続使用が望ましくない故に、ピストンリングを速やかに交換するための警告手段としてのみ機能する。
ピストンリングの他の例示的な実施形態において、突出構造部の幅は、突出構造部の高さの10倍、好適には50倍、更に好適には70倍以上である。突出構造部又は摩耗インジケータは、容易に視認可能である。従って突出構造部の幅は、少なくとも0.1 mmとする必要がある。即ち、突出構造を標準的な高さである0.03 mmとした場合、上記の寸法比が実現される。
ピストンリングの他の例示的な実施形態において、突出構造部は、外周面から外方に向けてテーパ付けされる。これにより、摩耗インジケータは、摩耗度に関する情報も示すことが可能である。即ち、保護層が摩耗した表面における突出構造部の幅が大きいほど、摩耗保護層の残留層厚が小さい。
ピストンリングの他の例示的な実施形態において、突出構造部の高さは0.01 mm〜0.1 mmである。突出構造部の高さは、好適には0.02 mm〜0.06 mm、更に好適には0.03 mm〜0.04 mmである。これら寸法は用途に応じるものであり、より大きな寸法は大型エンジンに適するのに対して、より小さな寸法は小型エンジンに適する。
ピストンリングの他の例示的な実施形態において、突出構造部の幅は0.1 mm〜5 mmである。突出構造部の幅は、好適には0.5 mm〜3 mm、更に好適には、1 mm〜2 mmである。ピストンリングの他の例示的な実施形態において、突出構造部の幅は0.04 mm〜0.08 mmである。このような小寸法の突出構造部は、適切な光学機器、例えばルーペ又は顕微鏡によってのみ確認することができる。小寸法の突出構造部の利点は、摩耗保護層に及ぼす影響が僅かだということである。このような薄い突出構造部又は摩耗インジケータは、摩耗インジケータをより良好に識別するために、大きな長さ又は規定されたパターンで形成されるのが好適である。
ピストンリングの他の例示的な実施形態において、非摩耗状態における保護層の厚さは0.1 mm〜1 mmである。摩耗保護層の厚さは、好適には0.2 mm〜0.6 mm、更に好適には0.3 mm〜0.4 mmである。摩耗保護層の他の厚さは、特殊な用途において想定することができる。
ピストンリングの他の例示的な実施形態において、突出構造部はステップを有する。ステップを有することにより、例えば視認可能な構造部に基づいて、保護層の摩耗度を判定することが可能である。
ピストンリングの他の例示的な実施形態において、突出構造部は、モールス符号又は文字として形成される。インジケータは、摩耗保護層の残留層厚の大きさを表す数字や単位として形成することもできる。この場合に各数字は、異なる大きさの構造部として形成され、露出した数字のうち、最小の数字により残留層厚を示すことができる。モールス符号には、極めて小さな寸法を有するという利点もある。小寸法の突出構造部は、摩耗保護層の表面において露出した場合でも摩耗保護層に大きな悪影響を及ぼすことがない。摩耗保護層は、点状に小さく途切れている場合、例えば周方向における連続的な線として途切れている場合に比べて悪影響が小さい。
ピストンリングの他の例示的な実施形態において、摩耗保護層の片側又は両側は区画され、突出構造部が区画部に隣接して配置されるのが好適である。この場合、摩耗保護層は、ピストンリングのエッジまで延びていない。摩耗保護層の片側が区画されていれば、摩耗保護層は、ピストンリングの一方のエッジからピストンリング本体と同一材料で構成された他方のエッジの直前まで延びている。摩耗保護層の両側が区画されていれば、摩耗保護層は、ピストンリング本体の周方向に延びる溝に設けられる。この場合、摺動面の平滑化後に、摩耗保護層は摺動面の上側又は下側のエッジの直前で終端している。区画部が設けられたエッジにステップが設けられれば、区画部の幅に基づいて保護層の摩耗度を判定することができる。
ピストンリングの他の例示的な実施形態において、突出構造部は、摩耗保護層とは異なる色調を有する材料で構成される。これにより、摩耗度の判定が大幅に容易になる。特殊な実施形態において、突出構造部が第1材料で構成され、第2材料で構成された異なる色調の摩耗保護層が突出構造部上に設けられる。
本発明の他の態様によれば、摩耗インジケータを備えるピストンリングの製造方法が提供される。この方法においては、外周面を備えるピストンリング本体(又はピストンリング中間加工品)を用意する。次いで、所定の高さだけ外方に突出させた突出構造部を、ピストンリング本体の外周面に設ける。この場合の高さとは、外周面から突出構造部における最大隆起部まで測定される。続くステップでは、突出構造部が被覆されるように、摩耗保護層を外周面上に設ける。その後のステップでは、少なくとも摩耗保護層が突出構造部を被覆する領域において、摩耗保護層を平滑化する。完成したピストンリングにおける摩耗保護層の厚さは、突出構造部領域において、所定の高さだけ減少している。
ピストンリング本体(又はピストンリング中間加工品)は通常、上側面、下側面、内周面及び合口も備える。
ピストンリング本体の外周面には、エッチング又はフォトエッチングにより、所定の高さだけ外方に突出させた突出構造部を設けることができる。また、ピストンリング本体の外周面には、フライス加工、旋盤加工又は研磨加工により、所定の高さだけ外方に突出させた突出構造部を設けることもできる。更に、ピストンリング本体の外周面には、コーティングにより、所定の高さだけ外方に突出させた突出構造部を設けることもできる。これに加えて、ピストンリング本体の外周面には、半導体技術において既知であるワイヤボンディングにより、突出構造部を設けることもできる。
以下、本発明の理解を一層容易とするために添付図面に基づいて説明する。
本発明に係るピストンリングの基本的な実施形態を示す断面図である。 本発明に係るピストンリングの部分断面図である。 図2Aの部分断面図の拡大詳細図である。 本発明に係るピストンリングの摩耗状態を示す部分断面図である。 図3Aの部分断面図の拡大詳細図である。 突出構造部の構成を示す略図である。 摩耗インジケータの配置を示す詳細図である。
図面及び明細書本文において、同一又は類似の要素には、同一参照符号が使用される。実施形態によっては実寸で表すこともできるが、各実施形態は図面において概略的にのみ示す。また明瞭性を高める見地から、図面の一部は誇張されていることに留意されたい。
図1は、本発明に係るピストンリングの基本的な実施形態の断面図を示す。このピストンリング2には、摩耗インジケータ42が設けられている。ピストンリング2は、外周面6、上側面8、下側面10を含むピストンリング本体(又はピストンリング一次加工品)4を備える。ピストンリング本体4の外周面6には、高さhだけ外方に突出させた突出構造部14が設けられている。突出構造部は、図面においてほぼ実寸で表示されているため、例えば0.03 mmである高さhは図1ではほぼ確認できない。摩耗インジケータ42の幅はBで表してあり、図示の実施形態では0.1〜0.3 mmである。外周面6上には、摩耗インジケータ42としての突出構造部14を被覆する摩耗保護層12が設けられている。この摩耗保護層12は、厚さDが約0.3 mmであるが、突出構造部14領域においては、高さhだけ減少している。摺動面16の摩耗、従って保護層12の摩耗が進行した場合、突出構造部14が次第に露出していく。突出構造部14が摺動面16上で視認可能になれば、摩耗保護層の残留層厚が最大でも高さhと同様であることが示唆され、従ってピストンエンジンの安全な動作を保証するのに層厚が既に十分でないか、又は十分でない状態に近づいていることが判定できる。
図2Aは、図1のピストンリングの部分断面図であり、摺動面16及びその下方部分のみを示す。即ち、ピストンリング本体4は、摺動面16が上側を指向するように配向されている。ピストンリング本体4の外周面6上には、摩耗保護層12が設けられている。図2Aにおいて、上側面8は右側に、下側面10は左側に示してある。ピストンリング2の外周面には、図2Aの左半部の中央に位置する突出構造部14が設けられている。この場合、摩耗保護層12は、突出構造部14の形状に影響されずに突出構造部14上に平滑に設けられている。これにより、突出構造部14領域における摩耗保護層12は、厚さが減少している。
図2Bは、図2Aの部分断面図の拡大詳細図を示す。この場合、特に寸法h,D及びBが表されている。図2Bにおいては、実際の高さ寸法を明確にするために、突出構造部14の高さhは0.03 mmで、摩耗保護層12の厚さDは0.30 mmでそれぞれ示してある。更に、構造部14の幅は0.1〜0.60 mmとすることができる。この幅は0.01〜0.06 mmとすることもできるが、その場合の摩耗の診断は、顕微鏡下でしか行うことができない。構造部14の幅をより小さくすれば、摩耗保護層12の安定性に及ぼす影響が低減される。図2Bに明らかなように、摩耗保護層12は突出構造部14上に平滑に設けられている。この突出構造部14領域における摩耗保護層12は、厚さが減少している。各寸法に明らかなように、これらは概略的なものであり実寸を反映しているわけではない。
図3Aは、図2Aのピストンリングの摩耗状態における部分断面図を示す。この場合に摺動面16は、突出構造部14の先端が摺動面16に接する程度に摩耗している。また、摺動面16の厚さDは、突出構造部14の高さhに対応している。
図3Bは、図3Aの部分断面図の拡大詳細図を示す。この場合、特に高さh及び幅Bの寸法が表されている。図3Bにおいては、実際の高さ寸法を明確にするために、突出構造部14の高さhは0.03 mmで示してある。また摩耗保護層12の厚さは、高さhに対応しているため、やはり0.03 mmである。更に図3Bに明らかなように、摩耗保護層12は突出構造部14まで平滑に摩耗している。この場合の突出構造部14は、ピストンリング本体4に周方向に設けられた環として構成されている。従って突出構造部14は、摩耗状態の摺動面16上において連続的な線を呈している。図3Bにおける寸法も、やはり概略的なものであり実寸を反映しているわけではない。
図4A及び図4Bは、突出構造部の構成に関する略図と、摩耗インジケータの配置に関する詳細図を示す。
図4Aは、複数の摩耗インジケータ42を備える本発明に係るピストンリング2に関して、摩耗状態の摺動面の部分平面図を示す。この場合、摩耗保護層12は、上側面へのエッジ領域において区画されている。この区画部46は、ピストンリング材料で構成された環状部として形成され、摩耗保護層がこの環状部に隣接するように設けられている。図示の区画部46にはステップ又は段部が設けられ、非摩耗状態であれば摩耗保護層12で被覆されている。しかしながら、図示の実施形態における摩耗保護層12は摩耗しているため、摩耗インジケータ42としてのステップが視認可能である。
上側の区画部46の下方には、保護層12の摩耗により、モールス符号として形成された突出構造部14が視認できる。モールス符号を使用すれば、残留層厚又は高さhを比較的簡単に符号化できるため、作業者により残留層厚が容易に確認可能である。モールス符号の更なる利点は、摩耗保護層12が連続的に途切れることがなく、小面積に亘ってのみ途切れることである。これにより、摩耗後も保護層の機能が大幅に損なわれることがない。モールス符号を使用すれば、「要交換」又は「要取り換え」又は「摩耗限界到達」などの言葉を符号化することができる。
図4Aの突出構造部44は、4段のステップを有する突出構造部14として形成されている。この突出構造部ついては、図4Bにおいてより詳細に説明する。参照符号14/4が付された摩耗インジケータ42は、摩耗保護層12の残留層厚をグラフ状に表すために梁状に形成されている。この構造部についても、図4Bにおいてより詳細に説明する。図4Bにおける突出構造部44,14/4に関しては、図4Bに描かれた点線まで保護層12が摩耗した状態で表す。
図4Bは、突出構造部の構成を、図4Aの切断線S‐Sに沿う詳細断面図として概略的に示す。ピストンリング2、外周面6を含むピストンリング本体4、及び摺動面16上に設けられた摩耗保護層12については、他の図面に既に記載したとおりである。
図4Bにおける突出構造部44は、ステップを有する突出構造部14として形成され、ピストンリング本体4や摩耗保護層12とは異なる材料で構成されている。材料44で構成された突出構造部14は、様々な方法により形成することができる。この本例における突出構造部14は、断面が長方形又は正方形のカラムで構成され、高さが変化するものである。従って,当業者であれば、摺動面16上に露出した構造部の個数及び配置により、摩耗保護層12の残留層厚を判定することができる。摩耗保護層12の厚さDの半分であれば、まず2つの正方形が露出する。摩耗が引き続き進行すると、更に2つの正方形が摺動面上に露出する。保護層12が更に摩耗した場合、上記正方形の間におけるギャップが順次に露出する。このステップを有する構造部は、僅かな間隔を置きつつピストンリングの全周に亘って配置することができ、2ストロークエンジンで有利である。4ストロークエンジンであれば、最大摩耗が生じる箇所に応じて、ピストンリング合口及び/又は合口から180°の箇所に位置するピストンリング後部にだけ配置すれば十分である。
図4Bの突出構造部14/4は、傾斜付き構造部として形成され、ピストンリング本体4の材料で構成されている。突出構造部14/4は、傾斜付きの2つの要素を有するため、直線的な高さ/幅又は高さ/間隔比が得られている。従って、当業者であれば、摺動面16上に露出した突出構造部の全幅及び間隔により、摩耗保護層12の残留層厚を判定することができる。摩耗保護層12の厚さDの半分であれば、幅Bを有する2つの細長の矩形がまず露出する。摩耗が引き続き進行すると、2つの矩形が延びると共にこれら矩形の間隔は狭まっていく。保護層12がその後も摩耗した場合、間隔は更に狭まっていき、最終的には2つの矩形が1つに統合される。専門家であれば、矩形間の間隔に対する構造部の全長L比により、摩耗保護層12の残留層厚を判定することができる。この傾斜付き突出構造部14/4も、僅かな間隔を置きつつピストンリングの全周に亘って配置することができ、2ストロークエンジンで有利である。4ストロークエンジンであれば、ピストンリング合口及び/又は合口から180°の箇所に位置するピストンリング後部にだけ配置すれば十分である。なぜならこの形式のエンジンにおいては、ピストンリングを評価するために、ピストンをシリンダから取り外す必要があるからである。
上記突出構造部44/14又は14/4は、ピストンリング本体の外周面において、周方向にも形成可能であることはいうまでもない。
本発明は、コーティングが施されたピストンリング、特にコーティングが施された摺動面に関して後処理が行われるピストンリングに関する。ピストンリングの製造に際しては、コーティングが施される前に、摺動面プロファイルの頂点に例えば摩耗インジケータとしてウェッジ又は他の突出構造部が形成される。エンジン稼働時には、ウェッジ状の摩耗インジケータ又は他の構造部が露出するまで、摺動面コーティングが摩耗する。点検に際しては、作業者により、ウェッジ状の摩耗インジケータ又は他の突出構造部が容易に確認可能であり、従ってピストンリングにおける残留層厚を判定することができる。エンジン動作にとって、ウェッジ状の摩耗インジケータが露出することによる問題は、摺動面コーティングが完全に摩耗することよる問題に比べて遥かに小さい。本発明は、ピストンリングの摩耗を定期的に点検する必要のある任意の箇所に適用可能である。本発明は、特に2ストロークエンジンに適しているが、4ストロークエンジン又はコンプレッサにも適用可能である。
本発明により、作業者は、摺動面コーティングが完全に摩耗する前に、ピストンリングの残留使用期間を判定し、これにより危険なエンジン状態を完全に回避することができる。
実際の摩耗度との関連において、エンジン(ピストンリング)の保守管理に必要な前提条件は、摩耗インジケータが形成されることにより、完全に満足されるものであるか又は少なくとも大幅に緩和されるものである。
添付図面は、例示的な実施形態を示すにすぎない。本明細書を簡潔に記載するため、他の様々な実施形態については説明を省略してあるが、図面に示した特徴を組み合わせることにより実現される実施形態についても本明細書で開示したものと見なされることはいうまでもない。従って、本明細書の範囲には、例えば異なる材料で構成された異なる突出構造部を組み合わせることも包含される。更に、異なる突出構造部を異なる方向に配置することも包含される。
2 ピストンリング
4 ピストンリング本体
6 外周面
8 上側面
10 下側面
12 摩耗保護層
14 突出構造部
16 摺動面
42 摩耗インジケータ
44 突出構造部14の材料
46 摩耗インジケータ42を含む区画部
h 突出構造部14の高さ
D 摩耗保護層12の厚さ
B 突出構造部14の幅
L 突出構造部14の長さ
S‐S 切断線

Claims (15)

  1. 摩耗インジケータ(42)を備えるピストンリング(2)であって、外周面(6)を含むピストンリング本体(4)を更に備え、該ピストンリング本体(4)の外周面(6)に、高さ(h)だけ外方に突出させた突出構造部(14)が設けられ、前記外周面(6)上には、前記突出構造部(14)を被覆する摩耗保護層(12)が設けられ、該摩耗保護層(12)は、前記突出構造部(14)領域において、前記高さ(h)だけ減少させた厚さ(D)を有し、前記突出構造部(14)は、前記外周面(6)から外方に向けてテーパ付けされているピストンリング。
  2. 請求項1に記載のピストンリング(2)であって、前記突出構造部(14)は、前記ピストンリング本体(4)とは異なる材料(44)で構成されているピストンリング。
  3. 請求項1又は2に記載のピストンリング(2)であって、前記構造部(14)は、機械的特性において前記摩耗保護層(12)に対応する材料で構成されているピストンリング。
  4. 請求項3に記載のピストンリング(2)であって、前記突出構造部(14)は、前記摩耗保護層(12)とは異なる色調の材料で構成されているピストンリング。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載のピストンリング(2)であって、前記摩耗保護層(12)の摺動面(16)は、前記突出構造部(14)の高さ(h)よりも平坦に形成されているピストンリング。
  6. 請求項1〜5の何れか一項に記載のピストンリング(2)であって、前記高さ(h)は、前記厚さ(D)の1/5、好適には1/8、更に好適には1/101以下であるピストンリング。
  7. 請求項1〜6の何れか一項に記載のピストンリング(2)であって、前記突出構造部(14)の幅(B)は、前記高さ(h)の10倍、好適には50倍、更に好適には70倍以上であるピストンリング。
  8. 請求項1〜7の何れか一項に記載のピストンリング(2)であって、前記突出構造部は、前記ピストンリング本体(4)と同一材料で構成されているピストンリング。
  9. 請求項1〜8の何れか一項に記載のピストンリング(2)であって、前記高さ(h)は、0.01 mm〜0.1 mm、好適には0.02 mm〜0.06 mm、更に好適には0.03 mm〜0.04 mmであるピストンリング。
  10. 請求項1〜9の何れか一項に記載のピストンリング(2)であって、前記幅(B)は、0.1 mm〜5 mm、好適には0.5 mm〜3 mm、更に好適には1 mm〜2 mmであるピストンリング。
  11. 請求項1〜10の何れか一項に記載のピストンリング(2)であって、前記厚さ(D)は、0.1 mm〜1 mm、好適には0.2 mm〜0.6 mm、更に好適には0.3 mm〜0.4 mmであるピストンリング。
  12. 請求項1〜11の何れか一項に記載のピストンリング(2)であって、前記突出構造部(14)は、ステップを有するピストンリング。
  13. 請求項1〜12の何れか一項に記載のピストンリング(2)であって、前記突出構造部(14)は、モールス符号又は文字として形成されているピストンリング。
  14. 請求項1〜13の何れか一項に記載のピストンリング(2)であって、前記摩耗保護層(12)の片側又は両側に区画部(46)が設けられ、該区画部(46)に隣接して前記突出構造部(14)が配置されているピストンリング。
  15. 摩耗インジケータ(42)を備えるピストンリング(2)の製造方法であって、
    高さ(h)だけ外方に突出させた構造部(14)を、ピストンリング本体(4)の外周面(6)に形成するステップと、
    前記外周面(6)に摩耗保護層(12)を施して前記突出構造部(14)を被覆するステップと、
    前記摩耗保護層(12)が前記突出構造部(14)を被覆する領域において、前記摩耗保護層(12)を平滑化し、これにより前記摩耗保護層(12)の厚さ(D)を、前記突出構造部(14)領域において、該突出部構造(14)の高さ(h)だけ減少させるステップと,
    を含む製造方法。
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