JP6340575B2 - コイル部品とその製造方法並びにコイル電子部品 - Google Patents

コイル部品とその製造方法並びにコイル電子部品 Download PDF

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Description

本発明は、熱伝導率に異方性を有する外装体を用いたコイル部品とその製造方法並びにコイル電子部品に関する。
従来のコイル部品は図9に記載のように、巻線を巻回してなる巻回コイルと、巻回コイル102の内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コアとを有するコイル磁性体103を有し、このコイル磁性体103におけるコイル部品108の設置対象側に接合される金属製の実装基板と、コイル磁性体103の外周の少なくとも一部を覆う絶縁性材料からなる外側樹脂部とを備える。
特許文献1には上述したコイル部品が開示されている。
特開2012−238659号公報
しかしながら、特許文献1に記載のコイル部品は、コイルと磁性コアからなるコイル磁性体を、単に外側樹脂部で覆う構成でこの外側樹脂部における熱伝導率は当然均一になるものである。コイル部品が動作する事によって生じる熱は、外側樹脂部を伝わって外気に放出されてしまい、その結果、他の実装部品の温度が上昇することで、誤作動等が発生してしまう。
上記課題を解決するために、本発明は巻回コイルと、この巻回コイルの巻回内に磁心とを有したコイル磁性体と、このコイル磁性体の表面を覆う外装体とを備え、この外装体の熱伝導率は異方性を有し、この熱伝導率のうち、この外装体の外表面における面方向の熱
伝導率が、この外表面の面方向に対して垂直方向の熱伝導率よりも高く、このコイル磁性体における前記表面は上面と、側面と、底面とを有し、この上面とこの側面の少なくとも一方にこの外装体が設けられ、この側面に設けられ、このコイル磁性体の側面に対して垂直方向のこの外装体の厚みは、この底面に近づくに従って厚くなるコイル部品とするものである。
上記構成により本発明のコイル部品は、コイル磁性体から生じた熱を外装体を通して、優先的に実装基板に熱を伝導させることができるので外気への熱の放出を抑制することができ、他実装部品への影響を低減させることができる。
本発明におけるコイル部品(a)の斜視図および(b)横断面図 本発明の一実施例におけるコイル部品の断面図 本発明の一実施例におけるコイル部品の断面図 本発明の一実施例におけるコイル部品の断面図 本発明の一実施例におけるコイル部品の(a)断面図および(b)上面における断面図 本発明の一実施例におけるコイル部品の断面図 本発明の一実施例におけるコイル部品の製造工程フロー図 本発明の一実施例におけるコイル磁性体の斜視図 従来のコイル部品における断面図
以下、本発明のコイル部品13について説明する。
図1(a)は本発明のコイル部品13を示す斜視図であり、図1(b)はこのコイル部品13を示す断面図である。図1(a)および図1(b)に示すように本発明のコイル部品13は巻回コイル2と、この巻回コイル2の巻回内に磁心を有したコイル磁性体3と、このコイル磁性体3の表面を覆う外装体4とを備え、この外装体4の熱伝導率は異方性を有し、この熱伝導率のうち、外装体4の外表面における面方向の熱伝導率A5が、外装体4外表面の面方向に対して垂直方向の熱伝導率B6よりも高いものである。
すなわち、外装体4の熱伝導率が異方性を有し、外装体外表面の面方向の熱伝導率A5が、この外表面の面方向に対して垂直方向の熱伝導率B6よりも高いことでコイル磁性体で発生した熱を優先的に実装基板10の方向へ熱を伝達させるため外気への放熱を抑制することができる。外気よりも実装基板10へ優先的に熱を伝達させることで、他の実装部品への熱による影響を低減することができる。また、他の実装部品への熱の影響を考慮して各部品を配置することもできるが、その制約により実装基板の面積増加を引き起こし、製品寸法を増大させてしまう。
次に本発明のコイル部品13に用いる磁性体1について説明する。この磁性体1の主材料としてはNi−Zn系やMn−Zn系をはじめとする各種フェライト焼結体、またはFe粉やFe−Ni合金粉、Fe−Si合金粉、Fe−Al−Si合金粉、アモルファス合金粉や金属ガラス合金粉等の軟磁性金属磁性粉末を高圧で成形してなる圧粉磁心、薄板や薄帯を積層した積層体等があげられる。
次に本発明のコイル部品13に用いる巻回コイル2について説明する。巻回コイル2の原材料としては、電気抵抗率の小さいAu、AgまたはCuを主成分とする金属またはこれらの合金等があげられる。また、コイル部品13の軽量化を鑑みてAl等の軽金属を主成分とすることもできる。この巻回コイル2の表面に絶縁被膜が形成されていることで、巻回コイル2のコイル線同士の接触を抑制することができる。また隣接するコイル線同士が電気的に絶縁されていれば絶縁被膜を設ける必要はない。また1つのコイル部品13に使用される巻回コイル2は1つに限定されるものではなく複数であっても構わない。また、巻回コイル2の断面形状としては例えば、丸線、角線および平角線等があげられ、これらが変形した楕円形状や、多角形状の断面を有するものも使用することができる。また耐電圧や絶縁抵抗を向上させるために、磁性体1と巻回コイル2の間にボビンを設けてもよい。巻回コイル2として平角線を用いる場合は巻回方法に特に制限はなく、エッジワイズ巻きやフラットワイズ巻き等が可能である。
次にこの巻回コイル2とこの巻回内に配置される磁性体1とを備えるコイル磁性体3について説明する。本発明のコイル磁性体3としては様々な形状があり、特に磁性体1の形状としてトロイダル形状、U形状、E形状、I形状、また、ポッド型や球形等の各種異形状およびこれらを組み合わせて用いることができる。またこの磁性体1は巻回コイル2への電流通電時にインダクタンス値の低下を抑制する目的から一部に非磁性体または空隙をギャップ部として設けることができる。
次に本発明のコイル部品13を実装する実装基板10について説明する。この実装基板10の材質は特に限定されず、金属、セラミック、樹脂の他、これらの複合体を用いることも可能であるが熱伝導率の高いものが好ましい。さらにはこの実装基板10は何らかの手段で冷却されていることが好ましい。冷却の手段としては、水や不凍液等の液体冷媒を利用した水冷や、強制空冷、自然空冷等による空冷等の手法を用いることができる。
次に本発明のコイル部品13に用いる外装体4について説明する。図1に示すように本発明の外装体4はコイル磁性体3の外表面を覆う構成とすることでコイル磁性体3で発生した熱を効率的に実装基板10へと放出することができるため好ましい。外装体4には一部コイル磁性体3の外表面が露出している個所が存在しても本発明の効果を得ることは可能である。外装体4としては、熱伝導率に異方性を有し、外装体4における外表面の面方向の熱伝導率A5が、外表面の面方向に垂直方向の熱伝導率B6よりも高いものであればよい。外装体4の原材料としては樹脂材料、金属材料またはセラミック材料、またはこれらの材料を複合して形成することもできる。また、コイル磁性体3の表面に外装体4を設ける方法としては、外装体4とコイル磁性体3とを別に作製し、コイル磁性体3と組み合わせる方法、または後述するように外装体4をコイル磁性体3と一体的に形成することもできる。コイル磁性体3から生じる熱をより効率的に放熱する観点から、外装体4とコイル磁性体3との間には隙間なく一体的に形成することが好ましい。
本発明のコイル部品13の形状は特に限定されるものではないが、図1(a)、(b)に示すようにコイル磁性体3が外装体4に覆われ、実装基板10に実装される底面9、前記底面9と対向する上面7および、前記底面と前記上面のいずれにも属さない側面8を有していてもよい。本発明のコイル部品13の特徴はコイル磁性体3から生じる熱を優先的に実装基板10へ伝達させることで外気への放熱を低減するものである。すなわち、上面7に配置される外装体4は、熱伝導率に異方性を有し外装体4外表面の面方向の熱伝導率A5が、この外表面の面方向に対して垂直方向の熱伝導率B6よりも高いとともに、外装体4の上面7における任意の点を中心に放射状に熱が伝達し、外装体4の側面8を介して実装基板10へ放熱する構成が好ましい。この任意の点としては上面7の中心に近い点とすることで、外装体4の上面7に熱の偏りが少なく、より均一に外装体4側面に伝達させることができる。前記任意の点は均一に熱を拡散させる目的から1つであることが好ましいが複数存在していても良い。
また、側面8に配置される外装体4は熱伝導率に異方性を有し、外装体4外表面の面方向の熱伝導率A5が、この外表面の面方向に対して垂直方向の熱伝導率B6よりも高いとともに、実装基板10に向かう方向の熱伝導率を最も大きくすることで、効率的にコイル磁性体で発生した熱を実装基板10に伝達することができるためコイル部品13全体の放熱効果が高まる。
また、図1には底面9に外装体4を配したが、底面9における外装体4は外気と接しないことから外気への放熱を低減させる効果を奏する構成とはならず、底面9に配置される外装体4の役割としては、その接するコイル磁性体3もしくは、側面8に配置される外装体4から伝達された熱を実装基板10へ伝えるものであり好ましくはコイル磁性体3と実装基板10とに垂直方向の熱伝導率を最も大きくするほうが好ましい。他の構成の一例としては、図2の断面図に示すように底面に外装体を設けずコイル磁性体の外表面が直接実装基板に当接する構成とすることも好ましい。しかしながら底面に外装体が配置され、前記外装体は実装基板に平行な方向の熱伝導率が異方的に高い構成となっている場合でも、本発明の効果を得ることは十分可能である。
また、図3に示すように磁性体側面8における外装体の厚み12は、磁性体上面7における外装体の厚み11よりも厚い方が好ましく、側面8における発熱を選択的に低減することが出来る。これにより、外装体4における上面7と側面8の温度差が大きくなり、外装体4の上面7から外装体4の側面8への放熱をより有効に促進することができる。また、図4に示すように、外装体4の側面8の厚みを実装基板10に近づくに従って厚くすることで、この効果が更に顕著になり好ましい。外装体4の厚みを全域に渡って厚くすることでも、実装基板10への放熱を促進することは可能である。しかしながらこのような構成ではコイル部品13の体積が大きくなってしまい好ましくない。
コイル部品13の小形化と放熱性の両立という観点から、このような構成は特に有用である。
ここで、図1に示すコイル部品13における外装体4の熱伝導率に、異方性を付与させる具体的な構成の一例を説明する。
図5(a)に示すコイル部品13は外装体4を液晶ポリマーとし、この液晶ポリマー分子14を外装体4外表面方向に沿って配向させるものである。具体的には、溶融状態の液晶ポリマーは流動方向に液晶ポリマー分子14が配向する性質を有することからコイル磁性体3の表面に液晶ポリマーを射出成形して得ることができる。この液晶ポリマー分子14の配向により外装体4の熱伝導率に異方性を付与させることができ、外装体4外表面における面方向の熱伝導率A5をこの外表面の面方向に対して垂直方向の熱伝導率B6よりも高くすることができる。例えば、金型にコイル磁性体3を配置し、その隙間に溶融状態の液晶ポリマーを流し込む方法があげられ金型の構造、液晶ポリマーの注入口の位置や角度、圧力、注入量等を適宜調整することで液晶ポリマー分子14の配向を制御することが可能である。コイル磁性体3と金型との間隔は0.2mm以上30mm以下とすることが好ましい。コイル磁性体3と金型との間隔が0.2mm以上とすることで溶融状態の液晶ポリマーを流動性よく、この隙間に射出することができ、30mm以下とすることにより液晶ポリマー分子14を外装体4の外表面方向に有効的に配向させ熱伝導率に異方性を付与させることができる。
一般に液晶ポリマーは、その構造から、主鎖型液晶ポリマー、側鎖型液晶ポリマー、複合型液晶ポリマー等が挙げられるが、本発明における液晶ポリマーは特に限定されるものではなくいずれを用いることも可能である。
また、図5(b)に示すように、外装体4の上面7における熱伝導率を任意の点から放射状に熱を伝達させる手法としては、この任意の点から溶融状態の液晶ポリマーを流動させることで得ることができる。
また、コイル磁性体3と金型との間隔を0.5mm以上かつ20mm以下、更に0.8mm以上かつ15mm以下とすることで、更に溶融状態の液晶ポリマーを流動性よく、かつ熱伝導率に異方性を有した外装体4を形成することができる。なお、分子等に配向性を有する樹脂であれば、同様に熱伝導率に異方性を付与させることが可能であるが特に熱伝導率の異方性に優れる液晶ポリマーを用いることでより効果的に本発明の効果を得ることが出来る。
次に外装体4の熱伝導率に異方性を付与させる他手法について説明する。
図6に示すコイル部品13は外装体4に樹脂16と無機フィラー15とを含み、この無機フィラー15の長軸と短軸におけるアスペクト比が1よりも大きく、無機フィラー15の長軸方向と外装体4の外表面に沿う方向とのなす角度が0°以上かつ45°未満となる無機フィラー15の単位体積あたりの量が、45°以上かつ90°以下となる角度における無機フィラー15の単位体積あたりの量よりも多くするものである。この構成により外装体4における外表面方向の熱伝導率A5を、この外表面の面方向に対して垂直方向の熱伝導率B6よりも高くすることができる。
この構成を実現する手法の一例としては上述した液晶ポリマーの例と同様に、溶融状態の樹脂16と無機フィラー15の混合体を射出成形する方法が挙げられる。また、コイル磁性体3と金型との間隔は0.3mm以上25mm以下とすることが好ましい。コイル磁性体3と金型との間隔が0.3mm以上とすることで溶融状態の樹脂と無機フィラー15との混合体を流動性よくこの隙間に射出することができ、25mm以下とすることにより無機フィラー15の長軸方向を外装体4の外表面方向に有効的に配向させ外装体4に熱伝導率に異方性を付与させることができる。
すなわち、上述した構成により外装体4の外表面における面方向の熱伝導率A5を、この外表面の面方向に対して垂直方向の熱伝導率B6よりも高くすることができるとともに、無機フィラー15の長軸方向と外装体4の外表面に沿う方向とのなす角度が0°以上かつ45°未満となる無機フィラー15の単位体積あたりの量を、45°以上かつ90°以下となる無機フィラー15の単位体積あたりの量よりも可能な限り多くすることで外装体4外表面における面方向の熱伝導率A5を、この外表面の面方向に対して垂直方向の熱伝導率B6よりもより高くすることができる。また、コイル磁性体3と金型との間隔を0.5mm以上かつ20mm以下、更に1mm以上かつ15mm以下とすることで、更に溶融状態の樹脂を流動性よく、かつアスペクト比1より大きい無機フィラー15における長軸方向と、外装体4の外表面に沿う方向とのなす角度が0°以上かつ45°未満となる無機フィラー15の単位体積あたりの量を、45°以上かつ90°以下となる角度における無機フィラー15の単位体積あたりの量より更に多くすることができるため、外装体4外表面方向に更に熱伝導率の異方性を有した外装体4を形成することができる。
この樹脂材料としては、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂等があげられる。また、無機フィラー15としてはアルミナ、マイカ、タルク、カオリンおよびシリカ等の各種酸化物、窒化ホウ素、窒化珪素などの各種窒化物の他、ガラスやグラファイト等があげられる。また、無機フィラー15の形状としては、この無機フィラー15における長軸と短軸のアスペクト比が1よりも大きいものであればよく、具体的には鱗片形状、繊維形状、回転楕円体形状があげられる。
また、本発明のコイル部品13を構成する外装体4は熱伝導率に異方性を有し、この熱伝導率のうち、外装体4の外表面における面方向の熱伝導率A5が、外表面の面方向に対して垂直方向の熱伝導率B6よりも高いものであれば材料等に限定されるものではないが、最も好適な例としては、液晶ポリマーのように樹脂そのものが熱伝導率に異方性を有し、さらに前記樹脂にアスペクト比が1よりも大きい無機フィラー15を配向させて外装体4とし、この外装体4の熱伝導率は異方性を有し、この熱伝導率のうち、外装体4の外表面における面方向の熱伝導率A5が、外表面の面方向に対して垂直方向の熱伝導率B6よりも高い構成である。
尚、液晶ポリマー分子や無機フィラー15の長軸方向は、外装体4外表面および断面の組織観察や、X線回折、ラマン分光等の各種方法で測定することができる。
以下、実施例で本発明のコイル部品の製造方法を詳細に説明する。
(実施例)
本実施例におけるコイル部品13としては、まずFe−Si合金粉末とシリコーン樹脂とを混合してなる混合粉末を成形圧力10ton/cm2で加圧成形してE型成形体を作製した。その後このE型成形体を500℃で熱処理を施しE型磁性体17を得た。このE型磁性体17の模式図を図8に示す。
なお、このE型磁性体17における真中の脚を中磁脚18、この中磁脚18の両側にある2つの脚を外磁脚19とし、これら中磁脚と2つの外磁脚を接続する背磁体20とする。
このE型磁性体17を2つ用意し、互いに3つの磁脚同士が向かい合うように突き合せて形成し、中磁脚18に直径1mmの丸線を30ターン巻回した巻回コイル2を1つ挿入してコイル磁性体3を作製した。コイル磁性体3の外寸法は、背磁体の長さを40mm、2つのE型磁性体の中磁脚に平行な方向の長さが40mm、前記背磁体の長さ方向および中磁脚に平行な方向のいずれとも垂直な方向が20mmである(40mm×40mm×20mm)。
なお、図1〜8は本発明を説明する模式図および工程図であり本発明はこれに限定されるものではない。
次いで、このコイル磁性体3を金型内に静置した。この金型内の形状(42mm×42mm×22mm)は一辺42mmの略正方形を底面とするものであり、コイル磁性体3における前記40mm×40mmがその底面に配置され、この底面に対する高さが22mmとなる。すなわち、コイル磁性体3の上面7、側面8および底面9と金型内面との間に1mmの隙間を設けてコイル磁性体3を静置し、厚みが1mmの外装体4を形成するものである。また、コイル磁性体3はピン等で位置決めすることで、より正確に金型内に静置することができる。
巻回コイル2の端子の先端は、金型に設けられた穴から空間の外に引き出すものであり、これは外部回路との接続電極となる。
以上のように作製した本発明のコイル磁性体3について詳細に説明する。
本実施例におけるコイル磁性体3の外装体4の材料および外装体4の成形方法による発熱特性を検討した結果を(表1)に示す。
Figure 0006340575
(表1)に示すように試料No1、2、5、6、9は外装体4として液晶ポリマー(熱可塑性)である芳香族ポリエステル樹脂とし、試料No3、4、7、8、10はエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)を用いた。
次いで試料No3、4、5、6および10は無機フィラー15として平均アスペクトが20で鱗片形状の窒化硼素粉末を、エポキシ樹脂もしくは芳香族ポリエステル樹脂に対して5wt%を混合して外装体4材料とした。試料No8は平均アスペクト比が1であり、球形状の窒化珪素粉末をエポキシ樹脂に対して5wt%混合して外装体4材料とした。
これら試料No1〜8は外装体4材料を射出成形で形成し、その射出条件は芳香族ポリエステル樹脂の場合はシリンダー温度が300℃で成形時の金型温度が130℃で射出圧力が40MPa、エポキシ樹脂の場合はシリンダー温度が175℃で成形時の金型温度が170℃で射出圧力が10MPaとした。
なお、本発明における射出成形とは、流動性を有する材料を加圧して金型内に供給し、成形を行う成形方法全般のことを指しており、これにはトランスファー成形等の各種成形方法が含まれる。
いずれの試料も外装体4材料を金型内に注入する注入口は外装体4の上面7における1箇所から注入するものとし試料No1、試料No3、試料No5は金型側面、試料No2、試料4、試料No6、試料No7、試料No8は金型上面に注入口を設けた。
試料No9および試料No10は、樹脂ポッティングにて外装体4を形成した。すなわち、金型内に設けられた略直方体空間の天井面を取り外し、金型内に、加熱して流動状態となった材料を注入して外装体4を形成した。
試料No1〜試料No10のいずれも、射出成形もしくはポッティング後、外装体4を形成する材料が硬化するまでコイル磁性体3を金型内に放置し、外装体4が十分に硬化した後、金型から外装体4と一体となったコイル磁性体3を取り出した。尚、試料10については熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を硬化させるためにポッティング後に金型を175℃に加熱し硬化処理を行った。
次に試料No1〜試料No10の発熱特性を評価した結果を説明する。
以下のような条件で空間発熱量の測定を行った。即ち、コイル部品13の底面を実装する実装基板10を150mm×150mm×5mmのアルミニウム基板とし、外装体4の底面9をこの実装基板10の上面に当接するように設置した。また、この実装基板10を20℃の冷却水により水冷した。
次いで、実装基板10上に実装された試料を150mm×150mm×150mmの立体空間で囲った。この囲いは十分な断熱性を有する木製の囲いとし空間内外における気体の出入りを遮断した。立方体空間内の温度を測定するため立方体空間内の角部8点には、空間内の温度を測定する熱電対を設置した。なお、外気温度は20℃に制御した。
次いで、コイル部品13の巻回コイル2に接続した電源から、巻回コイル2に100Aの直流電流を流した。巻回コイル2に電流を通電することでコイル磁性体3は損失によって発熱し、空間および実装基板10に熱が放熱される。この際、空間内の温度は時間と共に上昇するが、一定時間が経過すると各部位が熱平衡に達し各部の温度は略一定値を示す。この時の立方体空間内の角部8点で測定した空中の温度の平均値を空間温度として記録した。
(表1)に示す通り試料No1〜試料No6は、いずれの外装体4もこの外装体4表面に沿う方向に芳香族ポリエステル樹脂の分子、窒化ホウ素粉末もしくはその両方が配向していることが観察され、その空間温度は22℃〜35℃と上昇温度は低いことが分かる。
一方、試料No7、8、9および10は外装体の配向は観察できず空間温度は57℃〜62℃と温度上昇が著しい。
試料No1、試料No3、試料No5は外装体4材料を側面から射出するものであり、当該側面8における芳香族ポリエステル樹脂の分子もしくは窒化硼素粉末は射出した点から放射状に配向するとともに、他面(上面7、底面9と残り2つの側面8)は前記側面8に対向する側面8に向かって配向しているのが観察された。
試料No2、4、6は外装体4材料を上面から射出するものであり、この当該上面の芳香族ポリエステル樹脂の分子もしくは窒化硼素粉末は射出した点から放射状に配向するとともに、4つの側面8は底面9に向かう方向に配向しているのが観察された。
すなわち、コイル磁性体3で生じた熱が優先的に外装体側面を通って実装基板10に伝達するため試料No1、3、5と比較して空間温度の温度上昇が低い。
試料No2は外装体の芳香族ポリエステル分子の配向と、試料No4は外装体4としてアスペクト比20程度の窒化硼素による配向により温度上昇が低く、コイル磁性体3で生じた熱の多くが空間に放熱されず優先的に実装基板10に伝達されているのがわかる。
特に上面7および全側面8の外装体が芳香族ポリエステル樹脂とアスペクト比20程度の窒化硼素からなりこの外装体4がすべて底面9に向かう方向に配向している試料No6は特に温度上昇が低く、コイル磁性体3で生じた熱の多くが空間に放熱されず優先的に実装基板に伝達されているのがわかる。
また、試料No3、4、5、6の形状配向性を有する無機フィラー15に対して試料No8はそのアスペクト比が1の無機フィラー15として球形状シリカ粉末を用いた。(表1)に記載のように試料No8の空間温度は試料No3、4、5、6と比較して非常に高い。
すなわち、外装体4に無機フィラー15を入れることによって、コイル磁性体3から生じた熱の放熱には寄与するが、熱を優先的に実装基板10に伝達させて空間への放熱を抑制する効果は奏さないことがわかる。
なお、一般的に無機フィラー15は樹脂よりも熱伝導率が高く、より好ましい形態としてはアスペクト比が1よりも大きい無機フィラー15を、より多く混合し、かつ配向させることでコイル磁性体で生じた熱を効果的に実装基板10へ放熱することができるため好ましい。
本発明のコイル部品とその製造方法並びにコイル電子部品によれば、生産性に優れ、発熱が顕著なコイル部品に有用であり、高い信頼性を有するインダクタンス部品を提供できる。
1 磁性体
2 巻回コイル
3 コイル磁性体
4 外装体
5 熱伝導率A
6 熱伝導率B
7 上面
8 側面
9 底面
10 実装基板
11 磁性体上面における外装体の厚み
12 磁性体側面における外装体の厚み
13 コイル部品
14 液晶ポリマー分子
15 無機フィラー
16 樹脂
17 E型磁性体
18 中磁脚
19 外磁脚
20 背磁体
101 磁性体
102 巻回コイル
103 コイル磁性体
104 外装体
105 実装基板
106 熱伝導率A
107 熱伝導率B
108 コイル部品

Claims (12)

  1. 巻回コイルと、
    前記巻回コイルの巻回内に磁心とを有したコイル磁性体と、
    前記コイル磁性体の表面を覆う外装体とを備え、
    前記外装体の熱伝導率は異方性を有し、
    前記外装体の外表面における面方向の熱伝導率が、
    前記外表面の面方向に対して垂直方向における前記外装体の熱伝導率よりも高く、
    前記コイル磁性体における前記表面は上面と、側面と、底面とを有し、
    前記上面と前記側面の少なくとも一方に前記外装体が設けられ、
    前記側面に設けられ、前記コイル磁性体の側面に対して垂直方向の前記外装体の厚みは、前記底面に近づくに従って厚くなるコイル部品。
  2. 巻回コイルと、
    前記巻回コイルの巻回内に磁心とを有したコイル磁性体と、
    前記コイル磁性体の表面を覆い、液晶ポリマーを含む外装体とからなるコイル部品と、
    前記コイル部品を実装する実装基板とを備え、
    前記液晶ポリマーの分子は前記外装体の外表面に沿って配向されたコイル電子部品。
  3. 前記コイル磁性体における前記表面は上面と、側面と、底面とを有し、
    前記上面と前記側面の少なくとも一方に前記外装体が設けられる請求項に記載のコイル電子部品。
  4. 前記上面に設けられた前記外装体の前記液晶ポリマーの分子が配向する向きは、
    前記上面の任意の点から放射状に設けられた請求項に記載のコイル電子部品。
  5. 請求項に記載のコイル電子部品において、
    前記側面に設けられた前記外装体の前記液晶ポリマー分子は、
    前記上面および前記底面が対抗した方向にもっとも配向して設けられたコイル電子部品。
  6. 前記側面に設けられた前記外装体の前記液晶ポリマー分子は、
    前記実装基板に向かう方向にもっとも配向して設けられた請求項に記載のコイル電子部品。
  7. 巻回コイルと、
    前記巻回コイルの巻回内に磁心とを有したコイル磁性体と、
    前記コイル磁性体の表面を覆う外装体を備え、
    前記外装体は樹脂と無機フィラーとを含む混合体であり、
    前記無機フィラーの長軸と短軸におけるアスペクト比は1よりも大きく、
    前記無機フィラーの長軸方向と前記外装体の外表面に沿う方向とのなす角度が0°以上かつ45°未満となる前記無機フィラーの単位体積あたりの量は、前記角度が45°以上かつ90°以下となる前記無機フィラーの単位体積あたりの量よりも多いコイル部品。
  8. 前記コイル磁性体における前記表面は上面と、側面と、底面とを有し、
    前記上面と前記側面の少なくとも一方に前記外装体が設けられる請求項に記載のコイル部品。
  9. 前記側面に設けられた前記外装体に含まれる前記無機フィラーにおいて、
    前記側面に設けられた前記外装体に含まれる前記無機フィラーの長軸方向と、
    前記上面と前記底面とが対抗する方向とのなす角度が0°以上かつ45°未満となる前記無機フィラーの単位体積あたりの量は、前記角度が45°以上かつ90°以下となる前記無機フィラーの単位体積あたりの量よりも多い請求項に記載のコイル部品。
  10. 前記上面に設けられる前記外装体の前記無機フィラーにおいて、
    前記無機フィラーの長軸方向は前記上面の任意の点から放射状に設けられる請求項に記載のコイル部品。
  11. 請求項に記載のコイル部品と、
    実装基板とを有し、
    前記側面に設けられる前記外装体の前記無機フィラーにおいて、
    前記無機フィラーの長軸方向と前記実装基板に対して垂直方向とのなす角度が0°以上かつ45°未満となる前記無機フィラーの単位体積あたりの量は、前記角度が45°以上かつ90°以下となる前記無機フィラーの単位体積あたりの量よりも多いコイル電子部品。
  12. 巻回コイルと、
    前記巻回コイルの巻回内に磁心を有したコイル磁性体の表面に外装体を設けるモールド成形工程において、
    前記モールド成形工程は、
    壁面を有するモールド型に前記コイル磁性体を設置する工程と、
    前記コイル磁性体と前記壁面との隙間に、前記外装体の外表面に沿う方向に溶融状態の液晶ポリマーを充填する工程と、前記液晶ポリマーを硬化して前記外装体を形成する工程とを、有するコイル部品の製造方法。
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