JP2017022148A - 軟磁性複合材料を使用したリアクトル、リアクトルの製造方法 - Google Patents

軟磁性複合材料を使用したリアクトル、リアクトルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】透磁率が高く直流重畳特性に優れた軟磁性複合材料を使用したリアクトル、そのリアクトルの製造方法を提供する。【解決手段】上方に開口を有する容器内に収容したコイルを軟磁性粉末と樹脂とを含む軟磁性複合材料で埋設するリアクトルであって、軟磁性粉末が第1の軟磁性粉末と第1の軟磁性粉末よりも平均粒子径が小さい第2の軟磁性粉末とを含み、少なくとも第1の軟磁性粉末がコイルから発生する磁束の向きに配向している。【選択図】図7

Description

本発明は、一般にメタルコンポジットタイプと呼ばれるリアクトルに適した軟磁性複合材料を使用したリアクトル、リアクトルの製造方法に関する。
メタルコンポジットタイプと呼ばれるリアクトルは、金属磁性粉末と樹脂を混ぜた材料を用いた磁性コアとコイルを一体成型して製造するリアクトルのことである。磁性コアにコイルを巻き付けるトロイダルタイプのリアクトルよりも小型であることや、磁性コアにフェライトを用いた積層タイプのリアクトルと比べて高温域で磁気飽和しにくいことなどを特徴とする。
この種のリアクトルに使用される磁性コアは、メタルコンポジットコア(以下、MCコアという)と呼ばれ、金属磁性粉末と樹脂を混合して固化させることにより製造される。このMCコアとして使用される軟磁性複合材料やその製造方法としては、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。
特開2012−033727号公報
前記のような従来技術の軟磁性複合材料は、磁気特性を向上させるために、軟磁性粉末を配向させる技術が知られている。コイル開口内やケースに電流経路を設け、投入された樹脂と磁性粉末の混合粉に対し、磁界を掛けることで磁性粉末を配向させることが知られている。しかし、コイルの開口内やケースに別途電流経路を設ける場合、導電性部材を別途設けなければならず、製造コストが上がったり、生産工程が増えたり、更にはリアクトルが大型になるなどの問題がある。さらに電流経路を磁性粉末と樹脂との混合粉の外側に設けると、磁束が混合粉の外部を通過する経路が多くなるため、配向させるために高い磁界を掛ける必要がある。
また、従来技術の軟磁性複合材料を使用したリアクトルは、密度とそれに伴う透磁率が低いことから、得られたリアクトルの小型化が困難で、直流重畳特性が劣る欠点もあった。
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、密度および透磁率が高く、軟磁性粉末と樹脂との軟磁性複合材料内に埋設したコイルに電流を流した時に発生する磁束の向きに軟磁性粉末を配向させて、渦電流損失を低減させ、直流重畳特性を向上させることを目的とする。また本発明の他の目的は、前記のような高密度、高透磁率の軟磁性複合材料を使用することで、製造コストを抑え、小型化並びに直流重畳特性に優れたリアクトル、リアクトルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、上方に開口を有する容器内に収容したコイルを軟磁性粉末と樹脂とを含む軟磁性複合材料で埋設するリアクトルであって、前記軟磁性粉末が第1の軟磁性粉末と前記第1の軟磁性粉末よりも平均粒子径が小さい第2の軟磁性粉末とを含み、少なくとも前記第1の軟磁性粉末が前記コイルから発生する磁束の向きに配向しているリアクトルとすることができる。
また本発明によれば、前記コイルが前記容器の開口に対して前記コイルの軸方向を略垂直な方向に配置されていることが好ましい。
また本発明によれば、前記第1の軟磁性粉末が非晶質で構成され、少なくとも一つの主な面を有し、前記主な面の端部が丸みを帯びた形状であって、前記主な面の円形度が0.7776以上0.980以下であることが好ましい。
また本発明によれば、前記第1の軟磁性粉末がFe基アモルファスの粉砕粉であることが好ましい。
また本発明によれば、前記第2の軟磁性粉末の円形度が0.962以上であることが好ましい。
また本発明によれば、前記第1の軟磁性粉末の平均粒子径が30μ〜100μmであり、前記第2の軟磁性粉末の平均粒子径が5μ〜30μmであることが好ましい。
また本発明によれば、前記軟磁性複合材料における前記第1の軟磁性粉末の添加量が60〜80wt%、前記第2の軟磁性粉末の添加量が20〜40wt%であることが好ましい。
また本発明によれば、前記樹脂の前記軟磁性複合材料への添加量を5〜10wt%としても良い。
また本発明によれば、樹脂をエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂のいずれか1つとしても良い。
また本発明の製造方法によれば、上方に開口を有する容器内にコイルを配置し、前記容器に軟磁性粉末と樹脂とを投入して前記コイルを前記軟磁性粉末と前記樹脂とを含む軟磁性複合材料で埋設し、前記軟磁性粉末が第1の軟磁性粉末と前記第1の軟磁性粉末よりも平均粒子径が小さい第2の軟磁性粉末とを含み、前記樹脂が硬化する前に前記コイルに電流を流して磁束を発生させ、少なくとも前記第1の軟磁性粉末を前記磁束と同じ向きに配向させ、前記軟磁性粉末が前記磁束と同じ向きに配向した後に前記樹脂を硬化させることが好ましい。
また本発明の製造方法によれば、前記第1の軟磁性粉末が非晶質で構成され、少なくとも一つの主な面を有し、前記主な面の端部が丸みを帯びた形状であって、前記主な面の円形度が0.7776以上0.980以下であることが好ましい。
また本発明の製造方法によれば、前記第1の軟磁性粉末がFe基アモルファスの粉砕粉であることが好ましい。
また本発明の製造方法によれば、前記第2の軟磁性粉末の円形度が0.962以上であることが好ましい。
また本発明の製造方法によれば、前記第1の軟磁性粉末の平均粒子径が30μ〜100μmであり、前記第2の軟磁性粉末の平均粒子径が5μ〜30μmであることが好ましい。
また本発明の製造方法によれば、前記軟磁性複合材料における前記第1の軟磁性粉末の添加量が60〜80wt%、前記第2の軟磁性粉末の添加量が20〜40wt%であることが好ましい。
また本発明の製造方法によれば、前記樹脂の前記軟磁性複合材料への添加量を5〜10wt%、樹脂の粘度を3350mPa・s以下とするとよい。
また本発明の製造方法によれば、前記磁束の強さを5kA/m以上とするとよい。
また本発明の製造方法によれば、前記軟磁性粉末に前記樹脂を含浸させる前に、前記軟磁性粉末に振動を加えてもよい。
本発明によれば、軟磁性粉末を軟磁性複合材料に埋設したコイルから発生する磁束の向き配向させることで、直流重畳特性を向上させることができる。
また本発明によれば、軟磁性複合材料に埋設したコイルから発生する磁束の向きに配向させた第1の軟磁性粉末に、それよりも平均粒子径が小さい第2の軟磁性粉末を加えることで、粒子間の隙間を埋め、得られた混合粉末の密度を上げることができる。その結果、本発明の軟磁性複合材料によって形成された磁性コアを高透磁率とすることができ、その磁性コアを用いたリアクトルのインダクタンスを向上させることが可能になる。
さらに、第1の軟磁性粉末が非晶質で構成され、少なくとも一つの主な面を有し、主な面の端部が丸みを帯びた形状であり、主な面の円形度が0.7776以上0.98以下であり、第1の軟磁性粉末と第2の軟磁性粉末の混合比率を、80:20から60:40の間とすることで密度を上げることができ、直流重畳特性を向上させ、低損失特性とすることが可能となる。
本発明のリアクトルの製造方法は、第1の軟磁性粉末及び第2の軟磁性粉末とから成る混合粉末を作製し、この混合粉末を容器内に充填して振動させるものであるから、振動によって第1の軟磁性粉末と第2の軟磁性粉末とが容器内で隙間なく充填され密度が向上する。しかも、粘度の低い樹脂を含浸させることで、密接に充填された第1の軟磁性粉末と第2の軟磁性粉末の狭い隙間でも樹脂が確実に浸透していくため、少ない樹脂量で軟磁性粉末を固着させることができ、軟磁性粉末と樹脂とが均質に混合され、高密度で透磁率の高い軟磁性複合材料とそれを使用したリアクトルを得ることができる。
また、予め第1の軟磁性粉末及び第2の軟磁性粉末と樹脂を混合して軟磁性複合材料を作成し、この軟磁性複合材料をコイルを配置した容器内に注入・固化した場合では、コイルを容器内に配置してから軟磁性複合材料の注入完了までの時間が短くて済む利点がある。第1の軟磁性粉末及び第2の軟磁性粉末と樹脂を予め混合しておくことで、軟磁性複合材料の各部で軟磁性粉末や樹脂が均質に混合される利点もある。
また粘度が低い樹脂を使用すると、磁界をかけた時に軟磁性粉末を配向しやすくできる。
本実施形態におけるコイルの斜視図。 本実施形態における外装ケースの斜視図。 本実施形態において、外装ケース内にコイルを配置した状態の斜視図。 本実施形態において、外装ケース内に混合粉末を充填した状態の斜視図。 本実施形態において、保護層を形成した状態の斜視図。 (a)は本発明の実施形態におけるリアクトルを上方から見た場合の上面図であり、(b)はコイルに電流を流した場合に発生する磁束の流れる向きを示す図である。 本発明の実施形態における励磁した軟磁性複合材料と励磁していない軟磁性複合材料からなるリアクトルの直流重畳特性を示すグラフである。 励磁して軟磁性粉末を磁束の方向に配向させた軟磁性複合材料からなる実施形態のリアクトルと圧粉磁心にコイルを巻き回したリアクトルとの直流重畳特性を示すグラフである。 第1の軟磁性粉末のSEM像であり、主な面を有する軟磁性粉末を示す。 第2の軟磁性粉末のSEM像であり、(a)は円形度0.962の水アトマイズ粉、(b)は円形度0.965の水アトマイズ粉を示す。
[1.混合粉末]
本発明の軟磁性複合材料の構成要素について説明する。本実施形態の軟磁性複合材料は、非晶質の第1の軟磁性粉末と、第1の軟磁性粉末より平均粒子径が小さい第2の軟磁性粉末を混合して得られる混合粉末に、樹脂を混合してなるものである。
第1の軟磁性粉末は、粉砕粉を用いることが好ましい。第2の軟磁性粉末は、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、水・ガスアトマイズ法により製造されるものを使用できるが、特に、水アトマイズ法によるものが好ましい。理由は、水アトマイズ法はアトマイズ時に急冷するため、粉末が結晶化しにくいからである。
本実施形態の軟磁性複合材料は、第1の軟磁性粉末と第2の軟磁性粉末とが、80:20から60:40の混合比率で混合されているものである。例えば、軟磁性粉末のうち、80wt%を第1の軟磁性粉末とした場合、残りの20wt%を第2の軟磁性粉末とする。この範囲で混合することで、磁性コアの密度が向上するとともに、透磁率を増加させることができる。
[1−1.第1の軟磁性粉末]
第1の軟磁性粉末としては、Fe基アモルファスの粉砕粉を用いることができる。この粉砕粉は、例えば、厚み25μmの薄帯を粉砕したものである。第1の軟磁性粉末の成分としては、例えば、Si成分が6.7%、B成分が2.5%、Cr成分が2.5%、C成分が0.75%、残り成分がFeのものを使用することができる。他にも、軟磁性粉末としては、FeBPN(NはCu,Ag,Au,Pt,Pdから選ばれる1種以上の元素)が使用できる。このような第1の軟磁性粉末の結晶化開始温度は、通常、470℃前後である。
第1の軟磁性粉末は、平均粒子径(D50)が30μ〜100μmの範囲のものを用いることが好ましい。この範囲より平均粒子径が大きいと渦電流損失が増大し、この範囲より平均粒子径が小さいと、密度低下によるヒステリシス損失が増加する。
図9のSEM像に示すように、粉砕粉は少なくとも1つの主な面を有している。すなわち、粉砕粉は球形のように連続する面を有する形状ではなく、例えば半球や板状のような複数の異なる面で構成される形状を有する。主な面には、比較的面積が大きく、また平坦に近い面が該当する。例えば粉砕粉が半球であると考えた場合には、その半球を構成する面の、球面ではなく円状の面である。また、例えば粉砕粉が高さの低い長方体であると考えた場合に、この長方体を形成する面の中で、最も大きくかつ対向する2つの長方形状の面のことである。主な面を有していない粉砕粉を使用すると、直流重畳特性が劣ると考えられる。
主な面の形状は長方形に限定されるものではなく、方形や円形など種々の形状があり、また均一である必要はない。粉砕粉が複数の主な面を有する場合には、各主な面の面積は異なっていてもよく、粉砕粉を構成する面のうち、面積の大きい順に2つ以上の面を主な面とする。また、主な面は必ずしも平行に対向している必要はなく、隣接する3面でもよく、角度をもって向かいあっていても良い。
主な面の端部は、丸みを帯びた形状をしている。丸みを帯びた形状とは、端部が曲面形状を有しており、頂点を有する角がないことを意味する。曲面形状は真円の弧の形状に限定されるものではなく、角が無ければ曲面形状と解して良い。
粉砕粉の主な面の円形度は0.98以下であることが好ましい。参考までに、正多角形を用いて円形度を説明すると、正12角形の円形度は0.9885、正8角形の円形度は0.9737である。従って、本実施形態の粉砕粉の主な面における円形度が0.980の場合、正12角形と正8角形の中間程度ということになる。ただし、主な面の形状は正多角形に限定されるものではない。
また、例えば正三角形の円形度は、0.7776であり、主な面は少なくとも正三角形程度の円形度を有していることが好ましい。円形度がそれ以下になると、主な面の端部にエッジが生じやすくなるからである。以上のような粉砕粉としては、アモルファスリボン材を粉砕した粉砕粉が使用できる。
[1−2.第2の軟磁性粉末]
第2の軟磁性粉末は、第1の軟磁性粉末より平均粒子径が小さい軟磁性粉末を用いる。この第2の軟磁性粉末としては、Fe系(Fe―Si−Bなど)の軟磁性アトマイズ粉を用いることができる。このような第2の軟磁性粉末の結晶化開始温度は、通常、450℃前後である。
図10(a)(b)に示す通り、粉末の形状は球形であり、その平均粒子径(D50)が5μ〜30μmの範囲のもの、好ましくは5μ〜20μmの範囲のもの、更に好ましくは8μ〜15μmの範囲のものを用いることができる。この範囲より平均粒子径が大きいとアトマイズ時に冷却速度が追いつかなくなり結晶化する。また、円形度が低くなり球形が崩れるといった問題が生じる可能性がある。
第2の軟磁性粉末の円形度は0.962以上であることが好ましい。参考までに、正多角形を用いて円形度を説明すると、正6角形の円形度は0.9523、正8角形の円形度は0.9737である。従って、本実施形態の第2の軟磁性粉末の円形度が0.962の場合、正6角形と正8角形の中間程度、円に近い形状をしているということになる。ただし、第2の軟磁性粉末は、円や楕円などの複合形状であり、大きくは球形に属する形状である。以上のような第2の軟磁性粉末としては、図10(a)および図10(b)の粉末を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
軟磁性粉末としては、Fe−Si−B軟磁性の他、これにNb、Cu、C等の元素を追加したFe−Si−B系軟磁性、Fe−Cr−P系軟磁性、Fe−Zr−B系軟磁性、センダスト系軟磁性、Co−Fe−Si−B系軟磁性等の各種公知の軟磁性軟磁性のアモルファス粉末を単独又は混合して使用することができる。
軟磁性複合材料を構成する粉末は、第1の軟磁性粉末と第2の軟磁性粉末とを含んでいれば3種類以上でも良い。その場合、3つ以上の粉末の平均粒子径をそれぞれ変えたものを使用する。これにより、粉末間の隙間をなくし密度を上げることができる。3種類以上の粉末を使用する場合、第2の軟磁性粉末と第3の軟磁性粉末とは同じ種類の軟磁性粉末を使用しても良いし、別の種類の軟磁性粉末を使用しても良い。言い換えると、軟磁性粉末の粒度分布のピークが2つあると良く、3つ以上あっても良い。この場合、第1の軟磁性粉末と第2の軟磁性粉末の平均粒子径は、前記平均粒子径の範囲に限定されないもので、3つ以上の粉末を混合させた場合に、最も密度が高くなる平均粒子径を選択することが望ましい。
[1−3.樹脂]
樹脂は、第1の軟磁性粉末と第2の軟磁性粉末を均質に混合した状態で保持するものである。この樹脂としては、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が使用できる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂などが使用できる。紫外線硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系の樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリイミドやフッ素樹脂などの耐熱性に優れた樹脂を使用することが好ましい。硬化剤を添加することにより硬化するエポキシ樹脂は、硬化剤の添加量などによってその粘度を調整できることから、本発明に適している。熱可塑性のアクリル樹脂やシリコーン樹脂も使用可能である。
樹脂には、Al、BN、AlNなどの高熱伝導率材料を添加することができる。また、粘度調整材料として、SiO、Al、Fe、BN、AlN、ZnO、TiOなどを使用することができる。粘度調整材料としてのフィラーの平均粒子径は、第2の軟磁性粉末の平均粒子径以下、好ましくは第2の軟磁性粉末の平均粒子径の1/3以下が良い。フィラーの平均粒子径が大きいと、得られたリアクトルの密度が低下するからである。
コイルを容器内にセットし、そこに混合粉末を投入し、その後樹脂を含浸させる場合(以下、含浸とも言う)は、樹脂の種類にもよるが、混合粉末への含浸時における樹脂の粘度が、3350mPa・s(測定条件25℃)以下が好ましく、100mPa・s以下が更に良く、20m〜100mPa・sがそれよりも良い。粘度が3350mPa・sを超えると、粘度が高くなりすぎ、樹脂が混合粉末の隙間に円滑に含浸されなくなり、得られた軟磁性複合材料の密度が低下する。また、樹脂の粘度が高すぎるとコイルから発生した磁束に対して配向しづらくなる。混合粉末に対する浸透時間を考えると、樹脂がアクリル樹脂またはシリコーン樹脂の場合は、混合粉末への含浸時における粘度が100mPa・s以下が好ましく、樹脂がエポキシ樹脂の場合は、混合粉末への含浸時における粘度が3350mPa・s以下が好ましいが、浸透時間に制限がない場合には、アクリル樹脂またはシリコーン樹脂でも3350mPa・s以下であれば良い。
含浸の場合は、含浸した樹脂が容器内に充填した混合粉末の表面まで行き渡るような量が必要である。混合粉末と樹脂量が容器の同一レベルにまで充填された状態において、その樹脂量は、樹脂の種類にもよるが、混合粉末の重量(第1の軟磁性粉末と第2の軟磁性粉末との合計重量)の5wt%以上が好ましい。5wt%未満であると、軟磁性粉末の接合力が不足し、得られたコアの強度が低下する。樹脂の添加量を多くすることで、容器内における混合粉末が充填された高さよりも高い位置まで樹脂を充填することにより、軟磁性複合材料からなるコアの表面に樹脂の保護層を形成することができる。ただ、混合粉末に対して必要以上の樹脂を添加すると混合粉末に浸透しきれなかった樹脂が上澄みとなって現れ、保護層が厚くなり過ぎる。また、10wt%を超えると得られるコアの密度が低下することが考えられる。これらを考慮すると樹脂の添加量は混合粉末に対し、5〜10wt%が好ましい。
含浸以外の方法でも本実施形態の軟磁性複合材料からなるリアクトルを作製することができる。混合粉末と樹脂とを混成したものを作製し、コイルを容器内にセットした状態でその混合物を容器に流し込む場合(以下、樹脂混成とも言う)は、樹脂は、混合粉末との混合時における粘度が50〜5000mPa・sであることが好ましい。粘度が50mPa・s未満であると、混合時において樹脂が軟磁性粉末に絡みつくことがなく、容器内に注入した軟磁性複合材料の低層部分に片寄ってしまい、軟磁性複合材料の密度や強度にバラツキが生じる。粘度が5000mPa・sを超えると、粘度が高くなりすぎ、平均粒子径が小さい第2の軟磁性粉末が平均粒子径の大きな第1の軟磁性粉末の隙間に円滑に入り込むことができなくなり、得られたコアの密度が低下する。
樹脂混成の場合、樹脂の添加量は、第1の軟磁性粉末と第2の軟磁性粉末からなる混合粉末に対して5〜7wt%であることが好ましい。5wt%未満であると、軟磁性粉末の接合力が不足し、得られた軟磁性複合材料の強度が低下する。7wt%を超えると、第1の軟磁性粉末間に形成された隙間に樹脂が入り込み、その隙間を第2の軟磁性粉末が埋めることができなくなり、コアの密度が低下する。
この樹脂と第1の軟磁性粉末及び第2の軟磁性粉末とは、全体が均質に混合されていることが好ましく、そのようにすると、できあがったコアの密度が均質になり、透磁率などの性能のばらつきが生じない利点がある。
[1−4.容器]
容器としては、その内部にコイルを収容できる形状のものを使用する。一般的には、上方からコイルを挿入でき、また樹脂を注入できるように、上面開口型の箱形や皿形の容器を使用する。容器は、その全部または一部を樹脂成型品によって構成することが好ましい。樹脂成型品の主材料としては、例えば、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、BMC(バルクモールディングコンパウンド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等を用いることができる。容器の全部または一部に、アルミニウムやマグネシウムなどの熱伝導性の高い金属を使用することもできる。これらの金属と容器内の軟磁性複合材料とを直接接触させることで、放熱性の向上を図ることができる。
容器の形状は、製造するリアクトルの形状に合わせて各種の形状の容器を使用することができる。容器をそのままリアクトルの外装ケースとして使用することも可能である。容器を外装ケースとして使用すれば、軟磁性複合材料の硬化後に容器を取り外す必要がない利点がある。容器を外装ケースとして使用しない場合には、板状あるいはコンベア状の部材に複数の凹部を形成し、その内部にコイルを配置して軟磁性複合材料を注入することにより、複数のリアクトルを同時に製造するような容器も使用できる。
[1−5.コイル]
コイルは、銅線などの導体に絶縁被覆を形成したものを使用する。アルミニウム線を使用することもできる。導体としては、丸線や平角線などの表面にポリイミド樹脂などの絶縁ワニスを形成したものを使用することが好ましい。コイルは、シリコーン樹脂などの絶縁樹脂で予め埋設した(覆った)ものを使用しても良いし、外装ケース内部にコイルケースを収納し、このコイルケース内にコイルを配置した状態で、コイルの周囲に絶縁樹脂を注入・固化したものでも良い。コイルを絶縁樹脂で被覆する場合には、導体の表面に絶縁ワニスなどをコーティングしなくても良い。
[2.リアクトルの製造方法]
本発明のリアクトルの製造方法の実施形態を、図面に従って説明する。本実施形態の容器は、リアクトルの外装ケース3としてそのまま使用可能なものである。
(1)絶縁樹脂の成型品にコイルを埋設
図1に示すように、本実施形態のコイル1は、導体である銅線の表面に絶縁ワニスをコーティングした平角線を、4回×2層分巻回したもので、中心にリアクトルのリム部となる開口部11が形成されている。コイル1の両端部12,13は、コイル1の一方の短辺側に、コイル1の最外周部分を延長する方向に引き出されている。コイル1の両端部12,13は、リアクトルに設ける端子2と接続するものであり、そのため、コイル1の巻回部分との間に段部14が設けられている。
図示のコイルの巻き数は一例であって、本発明はコイルの巻き数や層数や断面形状には限定されない。コイルとしては、丸線、エッジワイズ巻きしたα巻きのコイルや、フラットワイズ巻きしたα巻きのコイルを使用できる。
コイル1は、シリコーン樹脂などの絶縁樹脂の成型品15内に埋設されている。この絶縁樹脂の成型品15には、コイル1を外装ケース3内に配置する際の位置決め用の突起151が複数設けられている。本実施形態では、この位置決め用の突起151は、コイル1の各長辺に2箇所ずつ設けられているが、他の箇所でも良い。
位置決め用の突起151は、成型品15の底部に対してL字形に設けられ、L字形の垂直部分により、コイル1と外装ケース3の底面との間にコアを構成する軟磁性複合材料4が充填される空間部が形成され、L字形の水平部分により、コイル1と外装ケース3の内面との間にコアを構成する軟磁性複合材料4が充填される空間部が形成される。これにより、コイル1の周囲に適切な断面積を有するコアを、簡単且つ確実に形成することが可能になる。絶縁樹脂の成型品15には、コイル1の中央に設けられた開口部11に合わせて、開口部152が形成されている。絶縁樹脂の成型品15には、両端部12,13の被覆部153が一体に設けられている。
コイル1の両端部12,13には、端子2がそれぞれ溶接や半田付け、ねじ止めなどの手段により固定されている。これら一対の端子2は、コイル1の巻回部分から突出した両端部12,13の間に挟まれるように固定されている。各端子2は、四角形をしたねじ止め部21と、その一辺にコイル1の平角線の幅に合わせた細幅の溶接部22が設けられている。ねじ止め部21の中心には貫通穴が設けられ、この貫通穴に外部接続端子を固定するためのねじ24が挿入される。
(2)外装ケース
図2に示すように、本発明の容器に相当する外装ケース3は、その内部にコイル1を配置することができる大きさと形状を有する直方体の部材で、上面と下面が開口した枠状の樹脂部31と、その下面の開口部を塞ぐ放熱板32とから構成されている。放熱板32は、枠状の樹脂部31の下縁部に固定されている。この場合、樹脂部31と放熱板32との接合部分を一体成型することにより、外装ケース3内に充填した混合粉末や含浸する樹脂が接合部分から洩れ出ないようになっている。なお、樹脂部31と放熱板32の接着は一体成型に限らず、接着剤を塗布するなどして行っても良い。樹脂部31と放熱板32とは全てを樹脂で一体に成型しても良い。また、容器は蓋を有していても良い。その場合、容器の蓋や容器の樹脂部に設けた注入口から軟磁性複合材料を容器内に注入し、硬化させることで、コアを作製する。容器の蓋に、軟磁性複合材料の注入時における空気抜きのために、開口部を設けても良い。
樹脂部31の一方の短辺部分には、一対の端子2の位置に合わせて、一対の端子台311が設けられている。これらの端子台311にはナット312が、埋設などの手法により一体に固定され、このナット312に端子2の貫通穴内に挿入したねじ24を締結することにより、端子2とリアクトル外部の外部接続端子(図示せず)とが接続される。樹脂部31には、端子台311に近接して、両端部12,13の被覆部を保持するための一対の凹部313が形成されている。
外装ケース3内に配置されたコイル1は、その絶縁樹脂の成型品15に設けた位置決め用の突起151の水平部分の先端を樹脂部31の長辺の内面に当接させると共に、凹部313内に被覆部を嵌め込むことで、外装ケース3内の適正な位置に保持される。また、前記の様にL字形をした位置決め用の突起151の垂直部分を外装ケース3の底面に当接させることで、成型品15と外装ケース3との間には、決められた量の軟磁性複合材料4を流し込む空間が正確に形成される。樹脂部31に、位置決め用の突起151が容易に移動することを抑制する外れ止め機構を設けても良い。これにより外装ケース3と成型品15との空間をより正確に保つことができる。
(3)混合粉末の充填
{3−1.第1の充填方法(含浸)}
本実施形態のリアクトルを製造するには、含浸の場合、まず、第1の軟磁性粉末と第2の軟磁性粉末を混合して、混合粉末を作製しておく。そして、図3に示すように、外装ケース3内に、絶縁樹脂の成型品15内に埋設したコイル1を配置する。その後、図4に示すように、外装ケース3の上面開口部から、外装ケース3と絶縁樹脂の成型品15との隙間に、予め用意した混合粉末を充填する。この場合、混合粉末は、外装ケース3の上縁部から、外装ケース3の樹脂部31の表面高さよりもやや高い程度の位置まで充填する。容器内に混合粉末を充填した後は、容器全体を振動させることで、容器内の混合粉末の密度を高める。振動の方法としては、容器全体をモータやカムなどを利用して上下または/及び前後左右に振動させたり、タッピングしたり、容器をハンマー状の部材で細かく叩く方法でも良い。容器全体を超音波振動子で振動させても良い。
外装ケース3内に充填した混合粉末に振動を与えた後は、外装ケース3と絶縁樹脂の成型品15との隙間に充填されている混合粉末部分に樹脂8を注入して含浸させる。樹脂8を混合粉末に円滑に流入させたり、ボイドの発生を防止するため、含浸時に真空引きをすることも可能である。
{3−2.第2の充填方法(樹脂混成)}
樹脂混成の場合、まず、第1の軟磁性粉末と第2の軟磁性粉末とをエポキシなどの熱硬化性樹脂と共に混練して、軟磁性複合材料4を作製しておく。そして、図3に示すように、外装ケース3内に、絶縁樹脂の成型品15内に埋設したコイル1を配置する。その後、図4に示すように、外装ケース3の上面開口部から、外装ケース3と絶縁樹脂の成型品15との隙間に、予め用意した軟磁性複合材料4を注入する。この場合、軟磁性複合材料4は、外装ケース3の上縁部から、外装ケース3の樹脂部31の表面高さよりもやや高い程度の位置まで注入する。
樹脂混成においても、外装ケース3内に注入した軟磁性複合材料4が、外装ケース3と絶縁樹脂の成型品15との隙間に円滑に流入したり、ボイドの発生を防止するため、注入時に真空引きをすることも可能である。
(4)コイルによる励磁
その後、軟磁性複合材料4が硬化する前に、ねじ止め部21からコイル1に電流を流して、図6(b)の矢印が示す方向(コイルの軸方向を周回するような方向)に磁界を発生させる。この磁界により第1の軟磁性粉末を磁束が流れる方向を向くように配向させる。上記のように配向することで、リアクトルのインダクタンスを向上させることができる。磁界は5kA/m程度でも軟磁性粉末を配向させることができる。磁界の強さはこれよりも低いと軟磁性粉末が磁化しやすい方向に配向されず、直流重畳特性を向上させることが難しくなる。
(5)軟磁性複合材料の硬化
上記の工程を経て作製した軟磁性複合材料4を、常温で放置することにより硬化させる。軟磁性複合材料を硬化させる温度は常温に限らず、材料の硬化特性に見合った温度で硬化させても良い。また、軟磁性粉末に混合する樹脂として、熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂などを使用した場合には、注入後に所定の温度に加熱したり、紫外線照射を行うことで、樹脂を硬化する。
軟磁性複合材料4が硬化した後は、図5に示すように、軟磁性複合材料4の上部に保護層5となる樹脂を、外装ケース3の上縁部一杯にまで充填しても良い。この保護層5の厚さは、0.5〜2.0mmとすると良い。この保護層5により、硬化した軟磁性複合材料4の表面が被覆され、耐衝撃性能や絶縁性能が向上すると共に、防滴、防錆の効果もある。
実施形態の作用効果
(1)本実施形態では、軟磁性複合材料に埋設したコイルに電流を流して、発生する磁束の流れと同じ向きに軟磁性粉末を配向して磁化しやすい方向にすることで、直流重畳特性を向上させることが出来る。
(2)また、本実施形態では、第1の軟磁性粉末に、少なくとも1つの主な面を有する軟磁性粉末を用いることで、隣り合う粉末が面接触となる。面接触の場合には、点接触よりも抵抗を少なくすることができるので、直流重畳特性を向上させることができる。
(3)第2の軟磁性粉末として、第1の軟磁性粉末よりも平均粒子径の小さい粉末を用いているため、上記隙間に第2の軟磁性粉末が入りこみ、コアの密度を向上させることができ、コアの透磁率を高めることができる。
(4)また本実施形態では、第1の充填方法によれば、外装ケース3内に充填した混合粉末を振動させることで、平均粒子径の大きな第1の軟磁性粉末の隙間に、平均粒子径の小さな第2の軟磁性粉末を確実に送り込むことができ、軟磁性粉末を容器内に高密度で充填することができる。また、粘度の小さな樹脂8を使用することで、密度が高い混合粉末の狭い隙間にも樹脂8を円滑に浸透させることができ、使用する樹脂量を削減することができ、その点でも軟磁性粉末の密度の向上に繋がる。混合粉末を外装ケース3内に充填して振動した後、樹脂を含浸・硬化させるだけの工程で、外装ケース3、磁性コア及びコイル1が一体になったリアクトルを製造することができるので、リアクトルの製造が極めて容易になる。第1の軟磁性粉末や第2の軟磁性粉末の平均粒子径及び平均円形度を適切に選択し、これらに含浸する樹脂の粘度を適切に選択したので、高密度及び高透磁率を達成することができる。
(5)また本実施形態では、第2の充填方法によれば、軟磁性複合材料4を外装ケース3内に注入・硬化するだけの工程で、外装ケース3、磁性コア及びコイル1が一体になったリアクトルを製造することができるので、リアクトルの製造が極めて容易になる。第1の軟磁性粉末や第2の軟磁性粉末の平均粒子径及び平均円形度を適切に選択し、これらに混合する樹脂の粘度、添加量を適切に選択したので、高密度及び高透磁率を達成することができる。
第1の軟磁性粉末として平均粒子径66μm、円形度0.972のFe基アモルファスの粉砕粉を70wt%と、第2の軟磁性粉末として平均粒子径13μm、円形度0.965のFe―Si−B合金を30wt%使用して混合粉末を作製した。次に、図6(a)に示すように、内径18mm、外径35mmの円形ボビン9に直径1.3mmの銅線を50回巻き回してコイルを作製し絶縁樹脂91でコイル外周面を覆った。その後、容器(図示しない)にコイルの軸方向が容器開口を向くようにコイルを配置した。その後、混合粉末を容器に投入し、これに30回の振動を加えた。その後、これに粘度が50mPa・sのアクリル系樹脂を混合粉末に対して6wt%混合して、樹脂を含浸させた。
樹脂をある程度浸透させてから、軟磁性複合材料が硬化する前に、コイルに25Aの直流電流を流し、コイルから10kA/mの磁束を発生させて、図6(b)の矢印が示す方向に磁路に磁束Fを発生させて軟磁性粉末を励磁して配向させ、その後硬化した実施形態のポット形状のリアクトルを作製した。なお、このリアクトルの磁路長(片側)は11.39cm、断面A−A‘におけるコイル内およびその上下部分を足したコアの断面積は2.54cmである。なおコイルの直流抵抗は90mΩ、周波数は10kHzとした。同様の軟磁性粉末と樹脂とを用い、樹脂の含浸後に軟磁性粉末を励磁しないリアクトルも作製した。
なお特性や平均粒子径および平均円形度の測定は以下の内容で実施した。
(a)直流重畳特性:LCRメーターを用いて測定した。周波数20kHz、電圧1.0Vでのインダクタンスを測定し、透磁率を計算により求めた。
(b)円形度および粒子径:粒子画像分析装置(Malvern社:morphologi G3s)を用いて測定した。円形度および粒子径は、それぞれ粒子5000個について測定した。
実施形態のリアクトルと励磁をしなかったリアクトルとについて、インダクタンスを測定した。表1および図7から明らかなように、コイルに電流を流して励磁した第1の軟磁性粉末を磁束と同じ向きに配向させた方が、直流重畳特性が向上していることが分かる。なお電流値が低い方がインダクタンスに差が大きいのは、低磁界側の磁化がしやすいためであると考えられる。
なお、軟磁性複合材料を励磁して配向させる場合において、磁束の流れである磁力線に対して第1の軟磁性粉末は平行、言い換えると磁力線に対する傾きは0度である必要は無く、磁力線に対して0度〜約45度傾いていると効果がある。軟磁性粉末の磁化容易軸が磁力線に対して0度〜約45度傾いていると良く、例えば長手方向と短手方向を有する軟磁性粉末であれば磁化容易軸である長手方向が磁力線に対して傾いているとよい。また、第2の軟磁性粉末が励磁すると、磁性粉末の中の結晶粒の磁化方向が揃う効果があり、第2の軟磁性粉末を励磁することでも直流重畳特性などが向上する。
また、励磁して配向された軟磁性複合材料からなるリアクトルは、渦電流損失が低下し、コアから発生する熱が低くなる効果があると考えられる。なお、励磁する時間に特に限定は無く、瞬時であっても効果がある。
次に、第1の軟磁性粉末と第2の軟磁性粉末と混合割合を変化させた場合の特性、および、混合粉末に振動を加えた場合と振動を加えない場合において作製したリアクトルの密度や透磁率の検証を行った。なお、測定条件としては、周波数は20kHz、最大磁束密度は20mTとした。
表2から明らかなように、混合粉末に振動を加えずに作製したリアクトルの比較例1〜6に対して、振動を加えた後に作製したリアクトルの実施例1〜6の方が、密度ならびに透磁率が向上していることが分かる。特に実施例3〜5の第1の軟磁性粉末の添加量が60〜80wt%、第2の軟磁性粉末の添加量が20〜40wt%の時に、密度および透磁率が向上していることが分かる。
本検証から、添加量が60〜80wt%の第1の軟磁性粉末と、添加量が20〜40wt%の第2の軟磁性粉末とを混合して作製した混合粉末を使用し、その混合粉末に振動を加えてから樹脂を含浸させて作製した軟磁性複合材料を使用した方が、密度および透磁率とも好特性のリアクトルを得ることが出来る。
なお軟磁性複合材料に加える振動は、多ければ多いほど良いが、180回以上振動を加えてもリアクトルの密度および透磁率はさほど向上しないと考えられる。また、振動回数が少ない場合でも、多少の振動を加えただけでもリアクトルの密度および透磁率は向上する傾向がある。表3は第1の軟磁性粉末を70wt%、第2の軟磁性粉末を30wt%の割合の混合粉末に振動を加えた場合の密度を測定した結果であるが、この結果から多少でも振動を加えた方が特性が向上することが分かる。
次に、本実施形態のリアクトルと、実施形態と同じ軟磁性粉末を圧縮成型して作製した圧粉磁心との比較を行った。混合割合は、第1の軟磁性粉末の添加量を70wt%、第2の軟磁性粉末の添加量を30wt%とし、これにシリコンレジンを混合した軟磁性複合材料を圧縮成型してトロイダルコアを作製し、これにコイルを巻き回してリアクトルを作製した。本実施形態のコイルの直流抵抗と合わせるために、直径1.3mmの銅線をトロイダルコアに60回巻き回してリアクトルを作製した。この圧粉磁心の磁路長は9.77cm、トロイダルコアをコアの開口と直交する方向(図6(a)A−A‘断面に相当)に切断したコアの断面積(片方)は1.57cmである。なおインダクタンスはインピーダンスアナライザを用いて測定した。圧粉磁心に1次巻線(20ターン)を施し、周波数100kHz、電圧0.5Vでのインダクタンスを測定した。
表4は、このリアクトルのコイルに電流を流してインダクタンスを測定した結果である。表4および図8から明らかなように、リアクトルのコイルに電流を20A流した場合に、本実施形態のリアクトルとインダクタンスがほぼ同じとなり、それより大きい電流値においては、軟磁性複合材料を励磁して軟磁性粉末を配向させて作製したリアクトルの方が直流重畳特性が良くなることが分かる。なお電流を20A流した時の磁界は8kA/mである。
このことから電流値が20Aを超えた場合、言い換えると磁界が8kA/m以上の時に、本実施形態のリアクトルの方が直流重畳特性が良くなることが分かる。また、8kA/mの磁界をかけた時の本実施形態のリアクトルと、圧粉磁心からなるリアクトルでは、リアクトルの体積を比較すると、コイルがコア内に埋設されていることもあり、本実施形態のリアクトルの体積の方が約15%小さくすることでき、リアクトルを小型にすることができる効果があると言える。
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではない。以上の実施形態は例として提示したものであって、その他の様々な形態で実施されることが可能である。発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲、要旨、その均等の範囲に含まれる。
[他の実施形態]
容器として、蓋を有するものを使用しても良い。その場合、容器の蓋や容器の樹脂部に設けた注入口から軟磁性複合材料を容器内に注入し、硬化させることで、コアを作製する。容器の蓋に、軟磁性複合材料の注入時における空気抜きのために、開口部を設けても良い。
図示の実施形態では、コアに埋設しているコイルは1つであるが、複数のコイルを、左右に並べたり、上下に重ねたりして埋設可能である。
コイルの巻数は特に限定されない。巻数が2ターンや1ターンであっても励磁による軟磁性粉末の配向の効果がある。
コア形状およびコイル形状は特に限定されない。扁平な形状であったり、正円や楕円、三角形、四角形、多角形、であっても良い。
実施形態では、コイルを予めシリコーン樹脂などの絶縁樹脂に埋設したものを使用したが、コイル専用のコイルケースを使用することもできる。樹脂などで作製したコイルケースにコイルを収納し、それを外装ケース内に配置してから軟磁性複合材料を投入することもできる。
1…コイル、 11…開口部、 12,13…端部、 14…段部、 15…絶縁樹脂の成型品、 151…位置決め用の突起、 152…開口部、 153…端部の被覆部、2…端子、 21…ねじ止め部、 22…溶接部、 24…ねじ、 3…外装ケース、 31…樹脂部、 311…端子台、 312…ナット、 313…凹部、 32…放熱板、 4…軟磁性複合材料、 5…保護層

Claims (18)

  1. 上方に開口を有する容器内に収容したコイルを軟磁性粉末と樹脂とを含む軟磁性複合材料で埋設するリアクトルであって、
    前記軟磁性粉末が、第1の軟磁性粉末と前記第1の軟磁性粉末よりも平均粒子径が小さい第2の軟磁性粉末とを含み、
    少なくとも前記第1の軟磁性粉末が、前記コイルから発生する磁束の向きに配向しているリアクトル。
  2. 前記コイルが前記容器の開口に対して前記コイルの軸方向を略垂直な方向に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
  3. 前記第1の軟磁性粉末が非晶質で構成され、少なくとも一つの主な面を有し、前記主な面の端部が丸みを帯びた形状であって、前記主な面の円形度が0.7776以上0.980以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
  4. 前記第1の軟磁性粉末がFe基アモルファスの粉砕粉であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
  5. 前記第2の軟磁性粉末の円形度が0.962以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリアクトル。
  6. 前記第1の軟磁性粉末の平均粒子径が30μ〜100μmであり、前記第2の軟磁性粉末の平均粒子径が5μ〜30μmであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
  7. 前記軟磁性複合材料における前記第1の軟磁性粉末の添加量が60〜80wt%、前記第2の軟磁性粉末の添加量が20〜40wt%であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のリアクトル。
  8. 前記樹脂の前記軟磁性複合材料への添加量が5〜10wt%であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のリアクトル。
  9. 前記樹脂がエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂のいずれか1つであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のリアクトル。
  10. 上方に開口を有する容器内にコイルを配置し、
    前記容器に軟磁性粉末と樹脂とを投入して前記コイルを前記軟磁性粉末と前記樹脂とを含む軟磁性複合材料で埋設し、
    前記軟磁性粉末が、第1の軟磁性粉末と前記第1の軟磁性粉末よりも平均粒子径が小さい第2の軟磁性粉末とを含み、
    前記樹脂が硬化する前に前記コイルに電流を流して磁束を発生させ、少なくとも前記第1の軟磁性粉末を前記磁束と同じ向きに配向させ、
    前記第1の軟磁性粉末が前記磁束と同じ向きに配向した後に前記樹脂を硬化させることを特徴とするリアクトルの製造方法。
  11. 前記第1の軟磁性粉末が非晶質で構成され、少なくとも一つの主な面を有し、前記主な面の端部が丸みを帯びた形状であって、前記主な面の円形度が0.7776以上0.980以下であることを特徴とする請求項10に記載のリアクトルの製造方法。
  12. 前記第1の軟磁性粉末がFe基アモルファスの粉砕粉であることを特徴とする請求項10又は11に記載のリアクトルの製造方法。
  13. 前記第2の軟磁性粉末の円形度が0.962以上であることを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか1項に記載のリアクトルの製造方法。
  14. 前記第1の軟磁性粉末の平均粒子径が30μ〜100μmであり、前記第2の軟磁性粉末の平均粒子径が5μ〜30μmであることを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか1項に記載のリアクトルの製造方法。
  15. 前記軟磁性複合材料における前記第1の軟磁性粉末の添加量が60〜80wt%、前記第2の軟磁性粉末の添加量が20〜40wt%であることを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか1項に記載のリアクトルの製造方法。
  16. 前記樹脂の前記軟磁性複合材料への添加量が5〜10wt%であり、前記樹脂の粘度が3350mPa・s以下であることを特徴とする請求項10から請求項15のいずれか1項に記載のリアクトルの製造方法。
  17. 前記磁束の強さが5kA/m以上であることを特徴とする請求項10から請求項16のいずれか1項に記載のリアクトルの製造方法。
  18. 前記軟磁性粉末に前記樹脂を含浸させる前に、前記軟磁性粉末に振動を加えることを特徴とする請求項10から請求項17のいずれか1項に記載のリアクトルの製造方法。
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