本発明に係る操作装置は、移動機構を備えた移動体に設けられ、その移動体を移動させるための操作を受け付ける装置である。また、本発明に係る移動体は、この操作装置を備えるものとし、操作装置で受け付けた操作に従って、移動機構により移動することが可能な移動体である。
上記移動体としては、電動車椅子、パーソナルモビリティ、自動車、電動カートなど、様々な車輪付きで電動化された移動体が挙げられ、以下でもそのような例を挙げて説明する。但し、上記移動機構は、車輪とその駆動部とを有するものに限らず、例えば地面又は水面に向けて風圧を送ることで浮いた状態で走行するような移動体、水上バイク等の水面をエンジンで走行する移動体なども、本発明の移動体として適用できる。また、エンジンで例示したように上記移動機構の駆動力は電気に限ったものでもない。また、上記移動機構は、少なくとも前進、右折、及び左折が可能とし、好ましくは後進も可能とする。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る移動体及び操作装置のシステム構成及び処理の例について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る移動体のシステム構成例を示すブロック図である。
図1で例示する移動体1は、移動体1を移動させるための移動機構11と、図示しないハンドルに設けられた検出部12と、操作パネル13と、それらを制御する制御部10とを備えている。ここで、ハンドルは移動体1の操作者が両手で把持可能な領域(長さ)をもつものとする。換言すれば、本発明に係る移動体は、操作者が両手で操作するような移動体(通常、両手によって操作されるべき移動体)である。
操作パネル13は、例えばハンドルの近隣に設けられており、移動機構11に対する速度制限設定、省エネルギー/通常電力モードの設定などを行うことが可能となっている。また、操作パネル13の代わりに単なるスイッチを設け、そのスイッチで操作するように構成してもよい。また、操作パネル13やスイッチなどは、電動車椅子の場合、搭乗者が操作できるような位置にも併設するか、その位置に移動させることができるような機構を設けておくとよい。
但し、本発明に係る操作装置は、操作インターフェースを構成するハンドル及び検出部12と、制御部10とで備えていればよく、操作パネル13や上記スイッチは設けなくてもよい。
検出部12は、移動体1の操作者によってハンドルに加えられた力(操作者の操作により入力された力)、つまり操作者がハンドルを押す力や引く力を検出する。検出部12としては、ハンドルを把持した際の圧力を検出して出力するようなセンサが挙げられる。
このセンサは、取付位置を操作者が微調整することが可能な状態で又は脱着可能な状態で、ハンドルに取り付けられることが好ましい。検出部12の配置例などについては後述するが、検出部12は、ハンドルに加えられた力を検出できればよい。そのため、センサは、その種類によってはハンドルそのものに取り付けなくてもよく、ハンドルの周辺部に取り付けられていればハンドルに加えられた力を検出できる。
本発明の主たる特徴として、検出部12は、操作者によってハンドルに加えられた前後左右それぞれの方向の力を検出することが可能に構成されている。操作者は移動体1のハンドルに対して前後左右のそれぞれの方向のうちいずれか1又は複数の方向に力を加えることになるが、いずれの方向から加えられた力であっても検出部12が検出する。
なお、本実施形態も含め、以下では、検出部12が前、後、左、右それぞれの方向の力を検出するものとして説明するが、後進に対応できない移動体の場合には少なくとも前、左、右それぞれの方向の力を検出できればよい。
制御部10は、移動体1の操作インターフェースへ入力された力の処理を行う。より具体的には、制御部10は、検出部12で検出された力(前後左右それぞれの方向の力)に応じた駆動によって移動体1を移動させるように、移動機構11を制御する。なお、移動体1が後進できないものである場合には、後方向の力を無視するなどして、この制御に後進を除いておけばよいだけである。
例えば移動体1が電動車椅子である場合、移動機構11は移動のために車輪を駆動する駆動部を有することになる。この場合、制御部10は、検出された力に応じた駆動を行うよう駆動部を制御する。また、電動車椅子のような手動での移動可能な移動体の場合、つまり移動機構11に手動によって移動体1を移動させる機構を含む場合には、操作者の手動による移動を、制御部10からの制御により移動機構11(上記駆動部等)がアシストするように構成することもできる。
本実施形態では、制御部10は、検出部12で検出された前方向の力と後方向の力から前後方向の合力を算出し、検出部12で検出された左方向の力と右方向の力から左右方向の合力を算出する。
そして、制御部10は、移動体1の前後方向について、前後方向の合力(後方向の力を無視する場合には前方向の力のみ)に比例した前後方向の駆動力によって移動体1が移動するように、且つ移動体1の左右方向について、左右方向の合力に比例した左右方向の駆動力によって移動体1が移動するように、移動機構11を制御する。なお、検出された力に対する駆動力の関係は比例関係に限らず、増加関数(好ましくは単調増加関数)であればよい。
このような合力の算出や駆動力の算出は、制御部10に、検出される力の組み合わせによって対応する駆動力及び駆動方向を出力するようなテーブルを設けておき、検出結果である出力値からテーブルを参照して駆動力及び駆動方向を出力するようにすればよい。
より好ましい例として、合力や駆動力の算出は、制御部10に設けた次のような演算部により実行すればよい。上記演算部は、検出部12で検出された力に応じた駆動力及び駆動方向を演算により求め、求めた駆動力及び駆動方向を移動機構11に出力する。
以上、本実施形態に係る操作装置によれば、操作者によってハンドルに加えられた前後左右それぞれの方向の力に応じて移動機構11での駆動を制御するため、喩えハンドルのうち片手側のみに対応する領域だけでも、移動体1に対する右左折を含む操作を容易に行うことができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る移動体及び操作装置について、移動体の一例として電動車椅子を挙げ、図2A〜図5を参照しながら説明する。本実施形態における電動車椅子のシステム構成は、第1の実施形態において図1を参照しながら説明したものと基本的に同様であり、その説明を省略する。また、本実施形態でも第1の実施形態と同様の効果を奏する。
図2Aは、本発明に係る移動体の一例としての電動車椅子の外観を示す側面図、図2Bは、その電動車椅子の上面図である。図3Aは、図2A,図2Bの電動車椅子におけるセンサ付きハンドルの一例を示す上面図、図3Bは、そのハンドルを電動車椅子の進行方向に向かって後方から見た図、図3Cは、そのハンドルを右側面から見た側面図である。
図2A,図2Bで例示する電動車椅子1aは、搭乗者以外の操作者が電動車椅子1aを押すための左右のハンドル21L,21Rを備え、右ハンドル21Rには操作パネル13も取り付けられている。操作パネル13は、図1で説明したもので、タッチパネル13aとそれを取り付けるための取付具13bとを有する。
また、電動車椅子1aは、その本体の左右に設けた回転軸25L,25Rと、回転軸25L,25Rを中心にタイヤ付きの車輪22L,22Rと、手動で車輪22L,22Rを進行方向(前向き又は後向き)に回転駆動させるために車輪22L,22Rの外側に付けられたハンドリム23L,23Rと、ハンドリム23L,23Rのカバー24L,24Rと、を備えている。
さらに、電動車椅子1aは、回転軸25L,25Rを中心軸としてそれぞれ車輪22L,22Rを個別に駆動するための駆動部20を備え、これにより電動化されている。駆動部20についてはその詳細は説明しないが、モータ等で例示でき、車輪22L,22Rが個別に進行方向や後進方向に回転するように駆動するものであればよい。その他、電動車椅子1aは、その本体に、搭乗者が搭乗するための椅子、搭乗者の足元の位置に一対のキャスタ(自在輪)なども備えている。
検出部12について説明する。本実施形態における検出部12は、操作者によってハンドルに加えられた力の大きさ(力量)及びモーメントを検出する。本実施形態における検出部12は、この検出のために、図3A〜図3Cで例示する感圧センサ12La〜12Lc,12Ra〜12Rcを有する。
左ハンドル21Lにはその左側面(電動車椅子1aの外側の側面)に2つの感圧センサ12La,12Lcが並べて配設されており、左ハンドル21Lの右側面には感圧センサ12Laに対応する長手方向位置に感圧センサ12Lbが配設されている。感圧センサ12Lbは親指用のセンサであり、感圧センサ12La,12Lcは他の四指用のセンサである。
同様に、右ハンドル21Rにはその右側面(電動車椅子1aの外側の側面)に2つの感圧センサ12Ra,12Rcが並べて配設されており、右ハンドル21Rの左側面には感圧センサ12Raに対応する長手方向位置に感圧センサ12Rbが配設されている。感圧センサ12Rbは親指用のセンサであり、感圧センサ12Ra,12Rcは他の四指用のセンサである。
ここで、力のモーメントの回転軸について説明する。操作インターフェースの一部であるハンドル21Lの長手方向軸とハンドル21Rの長手方向軸とを通る面(図2Aの例では水平面から若干角度がついた面)内における、若しくはハンドル21L,21Rを横切る水平面内における、双方の長手方向軸の中間に位置する中線上の所定の点を原点とし、その原点を通り上記面若しくは上記水平面に垂直な軸を、操作インターフェースの入力軸(回転軸)とすればよい。このような例は、後述の図5で回転軸Axとして挙げる。
そして、検出部12では、感圧センサ12La〜12Lc,12Ra〜12Rcのそれぞれについて検出された力の大きさ(力量)と回転軸からの位置ベクトルとにより、その回転軸周りの力のモーメントを求め、それらの値から力のモーメントの比率(例えば左回りのモーメントに対する右回りのモーメントの比率)を求め、その値を検出結果として出力すればよい。但し、モーメントの回転軸はこれに限ったものではなく、感圧センサ12La〜12Lc,12Ra〜12Rc上を通らないような軸に、任意に決めておけばよい。
このような検出部12を有する電動車椅子1aの制御部10における処理例について、図4及び図5を併せて参照しながら説明する。図4は、図2A,図2Bの電動車椅子における処理の一例を説明するためのフロー図である。また、図5は、図3Aのセンサ付きハンドルに加えられた力のモーメントを説明するための模式図である。
まず、電動車椅子1aの制御部10は、検出部12からの操作入力が受け付けられたか否かを判定する(ステップS1)。検出部12は、押圧が検出された段階で制御部10に出力するように構成されている。
制御部10は、ステップS1でYESとなった場合、検出部12から出力された出力値のうち力の大きさ(力量)を抽出する(ステップS2)。上記力量としては、感圧センサ12La〜12Lc,12Ra〜12Rcから出力された値の合計値(力量の合計)を検出部12から出力してもよいし、その平均値又は代表値などの統計値を検出部12から出力してもよい。
その他、例えば「左側の感圧センサ12La,12Lc,12Rbから出力された値」の合計から「右側の感圧センサ12Lb,12Ra,12Rcから出力された値」の合計を差し引いた値と、「前方側の感圧センサ12La,12Lb,12Ra,12Rbから出力された値」の合計から「後方側の感圧センサ12Lc,12Rcから出力された値」の合計を差し引いた値と、を検出部12から出力してもよい。
その後、制御部10は、検出部12から出力された力量の強弱によって、より好ましくは力量に比例するように、駆動部20への出力値(モータの回転数)を決め、駆動部20にそれを出力する(ステップS3)。この例においてステップS3で出力するモータの回転数とは、左右モータの合計の回転数又は平均の回転数を指す。また、第1の実施形態で例示したように、検出された力量に対する上記回転数(駆動力に対応)の関係は比例関係に限らず、増加関数(好ましくは単調増加関数)であればよい。
また、制御部10は、検出部12からの出力値のうち力のモーメントの比率を抽出する(ステップS4)。その後、制御部10は、検出部12から出力された力のモーメントの比率(例えば左回りのモーメントに対する右回りのモーメントの比率)に反比例するように左モータに対する右モータとの回転数比を求め、その回転数比を駆動部20へ出力する(ステップS5)。左モータに対する右モータの回転数比は、右回りのモーメントに対する左回りのモーメントの比率と比例することになる。
このように、検出部12で操作者により操作入力されたモーメントを検知することで、左右のモーメントの差分によって操作者が電動車椅子1aをどの方向に移動させようとしているかが判定できるため、制御部10では、その計算結果に反比例するような左右モータの回転数比を駆動部20に出力すればよい。これにより、操作者の意図に従った移動を行うことができる。
また、力の大きさと同様に、検出された左回りに対する右回りのモーメントの比率に対する左右モータの回転数比の関係は反比例に限らず、減少関数(好ましくは単調減少関数)であればよい。また、左回りに対する右回りのモーメントの比率が0又は無限大になる場合には、回転数比としてではなく、成分が存在する方のモーメントとは逆のモータのみを駆動させるように指示すればよい。例えば右回りのモーメントのみ存在した場合には左のモータのみを駆動させるように指示する。なお、ステップS2,S3の処理とステップS4,S5の処理の手順を入れ替えてもよい。
一例として、操作者が電動車椅子1aを左折(又は左前方に進行)させたい場合について、図5を参照しながら説明する。電動車椅子1aには、図3A〜図3Cで例示したように縦向きのハンドル21L,21Rに感圧センサが配されている。そして、検出される力のモーメントは回転軸Ax周りのモーメントとする。
左折させたい場合、操作者は、各ハンドル21L,21Rについて左回りに力を入れることになり、結果として図5で例示するように、感圧センサ12La,12Rcでは押圧が検出されず(検出閾値を超えない程度)、他の感圧センサで押圧が検出される。感圧センサ12Ra,12Rb,12Lb,12Lcで検出される力量をそれぞれP1,P2,P3,P4とすると、P1,P3はハンドル上の配置から左向きの力となり、P2,P4はハンドル上の配置から右向きの力となる。また、モーメントの回転軸Axから感圧センサ12Ra,12Rb,12Lb,12Lcへの距離は既存であり、それぞれL1,L2,L3,L4とする。なお、P1〜P4は便宜上、各センサの端付近に力点があるように記載してあるが、実際には各センサは1箇所で検出を行うため、P1〜P4は各センサの中心部分に力点がある。
そして、左折させたい場合の力の大きさは、力の大きさはP1+P3<P2+P4となり、このような結果が得られた場合に、検出部12は、左回りのモーメントがかかっていることを検出する。実際には、検出部12は、(P2×L2+P4×L4)に対する(P1×L1+P3×L3)のモーメント比率を検出し、比率が1より小さい場合に左回りのモーメントがかかっていることを検出する。
なお、この例では(P2×L2+P4×L4)−(P1×L1+P3×L3)が正の場合、左回りのモーメントがかかっているものとして説明している。また、実際、電動車椅子1aには、これらの力の他に車輪22L,22Rと地面との摩擦力がかかっており、駆動部20が駆動しない段階では、力のモーメントの合計が0となり、電動車椅子1aは停止している。
このように、操作者が電動車椅子1aを左折させようとするときには、右回り(時計回り)モーメント<左回り(反時計回り)モーメントとなる。そして、モーメントの比率が例えば左回りモーメント:右回りモーメント=7:3であった場合、制御部10は、それに反比例するように左モータ:右モータ=3:7の比率となるような回転数比を駆動部20に出力する。これにより、左モータの回転数が右モータの回転数より少なくなり、結果として左モータの回転が右モータの回転に比べて遅く、左側へ曲がるように進めることができる。
そして、このような処理例では、喩え、ハンドル21L,21Rの一方のみを操作者が握って操作していたとしても、力量の合計等やモーメント比率を求めることができる。例えば、操作者がハンドル21Lだけを握って左折させようとした場合、検出部12は、(P4×L4)に対する(P3×L3)のモーメント比率を1より小さい値(且つ1からの差が所定値より大きい値)で出力でき、結果として電動車椅子1aを左折させることができる。
ここで、所定値は、直進(前進/後進)と右左折とを区別するための閾値とする。よって、制御部10は、所定値以内であれば、直進であると判定し、左右モータの回転数比を1として出力すればよい。
次に、後進/前進の違いについて説明する。例えば、前進時の方が後進時より後方の感圧センサ12Lb、感圧センサ12Rbからの力量がそれぞれ感圧センサ12La、感圧センサ12Raからの力量より大きいことが想定され、そのような関係になったときに前進と判定し、ならなかった場合に後進と判定すればよい。また、そのような前進/後進の判定に基づき、前進の左折と後進の右折との判定、前進の右折と後進の左折との判定も可能である。また、前進、後進に限らず、真っ直ぐに進む場合については、上述したように、モーメント比率が1からの差が上記所定値内に収まっているか否かを判定し、収まっている場合については真っ直ぐ進むと判定すればよい。
このような判定をより確実に実行するために、図3Aにおいてハンドル21Lとハンドル21Rとの間隔を、進行方向に向かうにつれて狭くなるように電動車椅子1aを構成しておくことが好ましい。
また、図4の処理手順に限らず、制御部10は次のように処理してもよい。つまり、制御部10は、ステップS3ではモータ回転数を駆動部20に出力せず、ステップS5において、検出部12から出力された左右のモーメント比率によって上記モータ回転数を左右の車輪22L,22Rに対して(つまり左右のモータに対して)補正し、左右のモータに対するそれぞれの補正後の値を駆動部20へ出力するようにしてもよい。
また、ここで例示した電動車椅子1aは、車軸(回転軸25L,25R)の方向が車体に対して垂直方向(つまり左右方向)に固定されている移動体である。これに対し、車軸が固定されていない移動体に対しては、次のような制御を行うこともできる。すなわち、制御部10は、検出部12から出力された力の大きさ(強弱)によって駆動部への出力値を指示し、また検出部12から出力された力のモーメントによって操作者の入力方向(操作者が目指す進行方向)を判定し、その入力方向に合うように車軸が向くように車軸の移動を駆動部に指示する。無論、車輪がない移動体に対しては駆動の方向と力を制御部10から駆動部に指示すれば済む。
また、本実施形態でも第1の実施形態と同様に、演算部が、感圧センサ12La〜12Lc,12Ra〜12Rcを有する検出部12で検出された力に応じて、駆動のベクトル(駆動力及び駆動方向)を演算により求め(導出し)、求めた駆動力及び駆動方向を駆動部20等の移動機構11に出力することが好ましい。無論、制御部10が、上記テーブルのようなテーブルを保持しておき、検出部12からの出力値に対してそのテーブルを参照して駆動力及び駆動方向を出力するようにしてもよい。
また、本実施形態では、検出部12が力の大きさ及びモーメントを検出する代わりに、検出部12が前後左右の各方向の力を検出し、制御部10がその結果に基づき、操作者によってハンドルに加えられた力の大きさ及びモーメントを算出してもよい。無論、この算出も、上記演算部が実行するようにしてもよいし、上述のようにテーブルを保持しておき、各感圧センサからの入力値に対してそのテーブルを参照して力の大きさ及びモーメントを出力するようにしてもよい。
また、図3A〜図3Cで例示した感圧センサ群を有する検出部12は、操作者の右手によってハンドルに加えられる力を検出する領域と、操作者の左手によってハンドルに加えられる力を検出する領域と、をもつ一例である。このようにして力の検出を行うことで、右手及び左手のうち一方の手(片手)によってのみハンドルに力が加えられたことを検出した場合(片手で操作した場合)においても、力の大きさとモーメントを算出することができ、それらの値に基づき前進、右左折、及び後進の判定が可能になる。
但し、このように検出部12に右手用検出領域と左手用検出領域をもたせておけば、力のモーメントを算出しなくても、単純に、例えば感圧センサ12La,12Rbで検出された力量の合計と感圧センサ12Ra,12Lbで検出された力量の合計との差により、右折なのか左折なのかを判定することは可能である。また、上述したように前進/後進の判定を行うこともできる。
以上、本実施形態によれば、操作者の操作時における操作インターフェース入力軸を中心としたモーメントの検知によって操作者が入力した力のベクトルを検知することができ、それにより右左折方向の力も検知することができる。そして、本実施形態では、このように操作インターフェースにかかる力をセンシングして右左折を含む操作を可能にすることで、ジョイスティック等の従来の操作インターフェースを超える直感的な操作が可能となり、誰でも自然な操作で移動体を移動させることが可能になる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る移動体及び操作装置について、移動体の一例としてパーソナルモビリティを挙げ、図6A〜図10を参照しながら説明する。本実施形態におけるパーソナルモビリティのシステム構成は、第1の実施形態において図1を参照しながら説明したものと基本的に同様であり、その説明を省略する。
図6Aは、本発明に係る移動体の他の例としてのパーソナルモビリティの外観を示す側面図で、図6Bは、そのパーソナルモビリティを進行方向に向かって後方から見た図である。また、図7Aは、図6A,図6Bにおけるセンサ付きハンドルの一例を示す上面図、図7Bは、そのハンドルをパーソナルモビリティの進行方向に向かって後方から見た図、図7Cは、図7Aのハンドルを右側面から見た側面図である。
本実施形態では、図1の移動体1として図6A,図6Bで例示するようなパーソナルモビリティ1bを挙げて説明する。パーソナルモビリティ1bは、搭乗者ともなる操作者がパーソナルモビリティ1bを押すための横向きのハンドル31を備えている。また、ハンドル31は、分岐部31L,31Rを介して棒状のメインフレーム33に繋がっている。分岐部31L,31Rには、操作パネル13も取り付けられている。操作パネル13は、図1で説明したもので、タッチパネル13aを有する。
また、メインフレーム33の下端には、パーソナルモビリティ1bの本体が接続されている。本体は、メインフレーム33の下端が接続されたモータ等を有する駆動部34と、その左右に車輪36L,36Rが設けられている。車輪36L,36Rはそれぞれ個別に回転可能なように別々のモータの回転軸に取り付けられている。また、本体の上部には左右の足を載置するための足置き台35L,35Rが取り付けられており、これらはそれぞれ車輪36L,36Rのカバーの機能も有している。
その他、搭乗者である操作者は、移動を開始させる前には、足置き台35L,35Rにそれぞれ左足、右足を載置した状態で立つことになるが、この段階で操作者が不安定にならないように、駆動部34の後方に突起部37が設けられている。この段階で、操作者は体重を後側にかけて地面に突起部37をつけるようにすれば、パーソナルモビリティ1bから落ちる心配がなくなる。
本実施形態に係る移動体であるパーソナルモビリティ1bは、第2の実施形態とは異なり、ハンドル31が横向きで、且つ検出部12が有するセンサが感圧導電性エラストマーセンサである。その他の点については第2の実施形態と基本的に同様であり、その応用例も含め、部分的にその説明を省略する。
本実施形態でも、第2の実施形態と同様に、検出部12は操作者によってハンドルに加えられた力の大きさ及びモーメントを検出している。本例の検出部12は、この検出のために、図7A〜図7Cで例示する感圧導電性エラストマーセンサ12Ld,12Le,12Rd,12Re(以下、それぞれセンサ12Ld,12Le,12Rd,12Reと言う)を有する。
センサ12Ld,12Le,12Rd,12Reは、ハンドル31の表面に貼り付けられている。ハンドル31の左側領域にはその進行方向の側面にセンサ12Ldが設けられ、その後進方向の側面にセンサ12Leが設けられている。同様に、ハンドル31の右側領域にはその進行方向の側面にセンサ12Rdが設けられ、その後進方向の側面にセンサ12Reが設けられている。
このような検出部12を有するパーソナルモビリティ1bの制御部10における処理例について、図8〜図10を併せて参照しながら説明する。図8は、図7Aのハンドルに加えられた力のモーメントの一例を説明するための模式図で、図9、図10は、その別例を説明するための模式図である。
処理の流れについては、基本的に図4を参照しながら説明した通りであるが、センサの種類や配置が第2の実施形態と異なるため、右左折等の判定方法が異なる。一例として、操作者がパーソナルモビリティ1bを右折させたい場合について、図8を参照しながら説明する。パーソナルモビリティ1bには図7A〜図7Cで例示したように横向きのハンドル31にセンサ12Ld,12Le,12Rd,12Reが配されている。そして、検出される力のモーメントは回転軸Ax周りのモーメントとする。
右折させたい場合、操作者は、ハンドル31で右回りに力を入れることになり、結果として図8で例示するように、センサ12Ld,12Reでは押圧が検出されず(検出閾値を超えない程度)、センサ12Le,12Rdの各位置において矢印の長さで力量を示したような押圧が検出される。センサ12Le,12Rdでは、いずれもモーメントの回転軸Axに近づくに連れて大きな力による圧力が検出されることになる。
ここで、モーメントの回転軸Axからセンサ12Ld,12Le,12Rd,12Reへの距離は既存である。また、これらのセンサは上述したように感圧導電性エラストマーセンサであり、各センサについて、圧力分布を検出するための座標(検出点)から回転軸Axへの距離も既存である。よって、検出部12は、センサ12Le,12Rdから出力された圧力分布を解析することにより、右回りのモーメントがかかっていることが検出できる。
このように、操作者がパーソナルモビリティ1bを右折させようとするときには、センサ12Le,12Rdにより右回りのモーメントが検出され、左回りのモーメントの成分を検出可能なセンサ12Ld,12Reから出力がない(検出閾値を超えない程度である)。
制御部10は、各センサからこれらの検出結果を受けて、図10を参照して後述する右斜め前への進行とは区別して、単なる右折であると判定し、例えば左モータの回転数:右モータの回転数=9:1などと予め定められた比率の回転数比を駆動部34に出力する。無論、第2の実施形態での例と同様の算出方法により、左モータの回転数:右モータの回転数=1:0と捉え、左モータのみ駆動させるようにしてもよい。
また、力の大きさ(力量)については、検出部12が各センサで検出された力の合計値、平均値、代表値等の統計値などの出力値を制御部10に出力し、制御部10がその出力値に応じた回転数を出力すればよい。これにより右折のスピードを決めることができる。
次に、操作者がパーソナルモビリティ1bを前進させたい場合について、図9を参照しながら説明する。前進させたい場合、操作者は、ハンドル31で後方から力を入れることになり、結果として図9で例示するように、センサ12Ld,12Rdでは押圧が検出されず(検出閾値を超えない程度)、センサ12Le,12Reの各位置において矢印の長さで力量を示したような押圧が検出される。センサ12Le,12Reでは、いずれもモーメントの回転軸Axとは特に関係なく、長手方向の中央部分で大きな力による圧力が検出されることになる。
そして、センサ12Leとセンサ12Reではほぼ同様の圧力分布となり、回転軸Ax周りの力のモーメントは両者で打ち消し合う(検出閾値を下回る程度になる)。よって、検出部12は、このような結果に基づき左回りに対する右回りのモーメントの比率が1である(合計のモーメントが0である)ことを示す情報を制御部10に出力し、制御部10は、左右モータの回転数比が1になるように駆動部34に出力する。
また、力の大きさ(力量)については、検出部12が各センサで検出された力の合計値、平均値、代表値等の統計値などの出力値を制御部10に出力し、制御部10がその出力値に応じた回転数を出力すればよい。これにより前進のスピードを決めることができる。
操作者がパーソナルモビリティ1bを後進させたい場合については、前進させたい場合とモーメントがほぼ正反対になる。つまり、センサ12Le,12Reでは押圧が検出されず(検出閾値を超えない程度)、センサ12Ld,12Rdの各位置において押圧が検出される。センサ12Ld,12Rdでは、いずれもモーメントの回転軸Axとは特に関係なく、長手方向の中央部分で大きな力による圧力が検出されることになる。その他については、前進させる場合と同様である。
次に、操作者がパーソナルモビリティ1bを右斜め前に進行させたい場合について、図10を参照しながら説明する。この場合、操作者は、ハンドル31で後方から力を入れると共に右回りに力を入れることになり、結果として図10で例示するように、センサ12Ldでは押圧が検出されず(検出閾値を超えない程度)、センサ12Le,12Rd,12Reの各位置において矢印の長さで力量を示したような押圧が検出される。
センサ12Le,12Rdでは、いずれもモーメントの回転軸Axから離れるに連れて大きな力による圧力が検出されることになる。センサ12Reでは、回転軸Axとは特に関係なく、長手方向の中央部分で大きな力による圧力が検出されることになる。
このように、操作者がパーソナルモビリティ1bを右斜め前に進行させようとするときには、センサ12Le,12Rdにより右回りのモーメントが検出され、センサ12Reからは前進の成分が検出され、センサ12Ldから出力がない(検出閾値を超えない程度である)。実際には、センサ12Le,12Rd,12Reにより、右回りのモーメントとそれより小さな左回りのモーメントが検出され、その結果が、制御部10に出力される。
このように、操作者がパーソナルモビリティ1bを右斜め前に進行させようとするときには、右回り(時計回り)モーメント>左回り(反時計回り)モーメントとなる。そして、モーメントの比率が例えば左回りモーメント:右回りモーメント=4:6であった場合、制御部10は、それに反比例するように左モータ:右モータ=6:4の比率となるような回転数比を駆動部34に出力する。これにより、右モータの回転数が左モータの回転数より少なくなり、結果として右モータの回転が左モータの回転に比べて遅く、右側へ曲がるように進めることができる。
また、力の大きさ(力量)については、検出部12が各センサで検出された力の合計値、平均値、代表値等の統計値などの出力値を制御部10に出力し、制御部10がその出力値に応じた回転数を駆動部34に出力すればよい。これにより右前への進行スピードを決めることができる。
そして、このような処理例では、喩え、ハンドル31のセンサ12Ld,12Le側(又はセンサ12Rd,12Re側)のみを操作者が握って操作していたとしても、握っているセンサからの出力のみから、力量の合計等やモーメント比率を求めることができる。
また、本実施形態でも、図4の処理手順に限らず、制御部10は次のように処理してもよい。つまり、制御部10は、ステップS3ではモータ回転数を駆動部34に出力せず、ステップS5において、検出部12から出力された左右のモーメント比率によって上記モータ回転数を左右の車輪36L,36Rに対して(つまり左右のモータに対して)補正し、左右のモータに対するそれぞれの補正後の値を駆動部34へ出力するようにしてもよい。
また、ここで例示したパーソナルモビリティ1bも第2の実施形態の電動車椅子1aと同様、車軸の方向が車体に対して垂直方向(つまり左右方向)に固定されている移動体である。よって、本実施形態においても、車軸が固定されていない移動体に対しては、次のような制御を行うこともできる。すなわち、制御部10は、検出部12から出力された力の大きさ(強弱)によって駆動部への出力値を指示し、また検出部12から出力された力のモーメントによって操作者の入力方向(操作者が目指す進行方向)を判定し、その入力方向に合うように車軸が向くように車軸の移動を駆動部に指示する。無論、車輪がない移動体に対しては駆動の方向と力を制御部10から駆動部に指示すれば済む。
また、本実施形態でも第1,第2の実施形態と同様に、演算部が、検出部12で検出された力に応じて、駆動のベクトル(駆動力及び駆動方向)を演算により求め(導出し)、求めた駆動力及び駆動方向を駆動部34等の移動機構11に出力することが好ましい。無論、制御部10が、上記テーブルのようなテーブルを保持しておき、検出部12からの出力値に対してそのテーブルを参照して駆動力及び駆動方向を出力するようにしてもよい。
また、本実施形態においても、検出部12が力の大きさ及びモーメントを検出する代わりに、検出部12が前後左右の各方向の力を検出し、制御部10がその結果に基づき、操作者によってハンドルに加えられた力の大きさ及びモーメントを算出してもよい。無論、この算出も、上記演算部が実行するようにしてもよいし、上述のようにテーブルを保持しておき、各センサからの入力値に対してそのテーブルを参照して力の大きさ及びモーメントを出力するようにしてもよい。
また、図7A〜図7Cで例示したセンサ群を有する検出部12も図3A〜図3Cで例示したセンサ群を有する検出部12と同様に、操作者の右手によってハンドルに加えられる力を検出する領域と、操作者の左手によってハンドルに加えられる力を検出する領域と、をもつ一例である。このようにして力の検出を行うことで、右手及び左手のうち一方の手(片手)によってのみハンドルに力が加えられたことを検出した場合(片手で操作した場合)においても、力の大きさとモーメントを算出することができ、それらの値に基づき前進、右左折、及び後進の判定が可能になる。
但し、このように検出部12に右手用検出領域と左手用検出領域をもたせておけば、力のモーメントを算出しなくても、単純に、例えばセンサ12Ld,12Reで検出された力量の合計とセンサ12Rd,12Leで検出された力量の合計との差により、右折なのか左折なのかを判定することは可能である。また、これらの4つのセンサにより、上述したように前進/後進の判定を行うこともできる。
以上、本実施形態でも、第2の実施形態と同様の効果を奏する。
(第4の実施形態)
また、図3A〜図3Cの例や図7A〜図7Cの例では操作者が把持する位置にセンサを設けたが、例えば歪みを検出するセンサ(以下、歪みセンサ)であればハンドル上の把持位置以外に設けておいてもよい。さらに、歪みセンサはハンドル以外の位置であってもハンドルの周辺部に設けられていればよい。歪みセンサを把持位置以外、さらにはハンドル以外の位置に設けた場合、ハンドルを若干剛性の低い材料で形成し、そのセンサ設置位置でも操作者がハンドルを把持して加えた力の大きさ及びモーメントを検出できるようにしておけばよい。本実施形態でも、第2,第3の実施形態と同様の効果を奏する。