JP6336733B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
しかし、サイドカットは、空気入りタイヤが縁石等の障害物に乗り上げた後、当該障害物からずり落ちる際にも生じ得る。具体的には、サイドカットは、図5に示すように、空気入りタイヤ1”が縁石等の障害物Cに乗り上げた後、当該障害物Cからずり落ちる際に、屈曲したサイドウォール部3”と障害物Cの角部とが接触することによっても生じ得る。しかしながら、上記従来技術では、このような障害物からのずり落ちに起因するサイドカットの発生については着目しておらず、従来技術に係る空気入りタイヤでは、障害物からのずり落ちに起因するサイドカットについて、未だ十分な耐サイドカット性が得られなかった。
前記凹部の開口幅が、5mm以上10mm以下であり、前記凹部の底幅が、前記開口幅の1/2以下であることを特徴とする。サイドウォール部の所定範囲内に凹部を形成すれば、乗り上げた障害物からタイヤがずり落ちる際に、サイドウォール部と障害物の角部との接触が低減されるため、良好な耐サイドカット性を示すタイヤが得られる。
なお、本発明において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会) YEAR BOOK、欧州ではETRTO(European Tyre and Rim Technical Organisation) STANDARD MANUAL、米国ではTRA(THE TIRE and RIM ASSOCIATION INC.) YEAR BOOK等に規定されたリムを指す。また、「所定内圧」とは、適用サイズのタイヤにおけるJATMA等の規格のタイヤ最大負荷能力に対応する内圧(最高空気圧)を指す。更に、「カーカス断面高さ」とは、カーカスのタイヤ径方向最内端からカーカスのタイヤ径方向最外端までのタイヤ径方向に沿う距離を指す。
なお、本発明において、「凹部の開口幅」とは、凹部の開口端縁間の最短距離を指し、「凹部の底幅」とは、凹部の側壁の開口側とは反対側の端縁間の最短距離を指す。
図1は、本発明に従う空気入りタイヤの一例について、適用リム(図示せず)に装着して所定の内圧無負荷条件とした状態のタイヤ幅方向断面をタイヤ半部について示す図である。
更に、空気入りタイヤ1のトレッド部2のラジアルカーカス5のタイヤ径方向外側(クラウン部外周側)には、タイヤ周方向に対して所定の角度で配列されたコードをゴム被覆してなる3層のベルト層70a,70b,70cよりなるベルト7が埋設されている。そして、ベルト7のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム10が配設されており、該トレッドゴムの表面(即ち、トレッド部踏面)には、複数本の溝が形成されている。
なお、図1に示す空気入りタイヤの内部構造は一例であり、本発明の空気入りタイヤの内部構造は上述した構造に限定されるものではない。
具体的には、空気入りタイヤ1では、ラジアルカーカス5のタイヤ径方向最外端Aを通ってタイヤ幅方向に延びる第一仮想線VL1からタイヤ径方向内方にカーカス断面高さCHの0.3倍以下の範囲内に、凹部8を有している。なお、凹部8は、その全体が前記範囲内に位置していれば、タイヤ表面のゴムを切り欠いて形成してもよいし、金型を用いて形成してもよい。
具体的には、空気入りタイヤ1では、上記範囲内に凹部8を形成し、凹部8の近傍の剛性を局所的に低下させ、凹部8の近傍における屈曲変形を容易にすることにより、トレッド部2が殆ど屈曲しないまま障害物Cの角部からずり落ちてサイドウォール部3が障害物Cの角部に接触するのを抑制している。即ち、本発明に従う空気入りタイヤ1によれば、図4に示すように、空気入りタイヤ1が縁石等の障害物Cに乗り上げた後、当該障害物Cからタイヤ幅方向にずり落ちる際に、凹部8の近傍においてトレッド部2をサイドウォール部3側に向かって大きく変形させ、サイドウォール部3と障害物Cの角部との間にトレッド部2を入り込ませることができる。そのため、凹部8を形成していない場合と比較して、トレッド部2をサイドウォール部3側(凹部8が形成されている側)に向かって大きく屈曲させて、サイドウォール部3が障害物Cの角部に接触するのを抑制し、サイドカットの発生を低減できる。よって、本発明に従う空気入りタイヤ1によれば、障害物Cからのずり落ちに起因するサイドカットに対して良好な耐サイドカット性を得ることができる。なお、上記範囲外(即ち、第一仮想線VL1よりもタイヤ径方向外側や、第一仮想線VL1からのタイヤ径方向に沿う距離がカーカス断面高さCHの0.3倍超の範囲)に凹部を設けた場合には、トレッド部2を十分に屈曲させることができず、逆にサイドウォール部3の屈曲が大きくなるので、サイドウォール部3が障害物Cの角部に接触するのを抑制することができない(即ち、良好な耐サイドカット性が得られない)。
なお、図1に示す空気入りタイヤ1では、側壁81と側壁82とが互いに交差しているので、底幅W2はゼロである。
なお、本発明において、凹部の側壁同士が直接交差しない場合には、「交差角」とは、タイヤ幅方向断面視において、側壁の延長線同士が交差する角度(鋭角側)を指すものとする。
なお、耐カット性や耐オゾン性を有するゴムとしては、例えば、JIS K6252に準拠して測定した引張強さEBが21.0MPa以上であり、JIS K6252に準拠して測定した破断伸びTBが655%以上であるゴムが挙げられる。
具体的には、凹部は、タイヤ周方向に断続的に設けてもよい。
また、装着方向が指定されている空気入りタイヤの場合には、凹部は、空気入りタイヤを車両に取り付けた際に車両の外側となる側のみに設けられていてもよい。縁石等の障害物への乗り上げは、通常、車両の外側で生じるからである。
更に、凹部の形状は、図1に示す形状には限定されず、凹部は、例えば図2に示すような形状や、その他の任意の形状であってもよい。ここで、図2に示す空気入りタイヤ1’は、凹部8’が、側壁81’,82’および幅W2の底面83’により区画形成される台形状である以外は、図1に示す空気入りタイヤ1と同様の構成を有している。そして、空気入りタイヤ1’では、先の空気入りタイヤ1と同様にして耐サイドカット性を向上することができる。
表1に示す諸元で、図2に示すような構成を有する、サイドウォール部に凹部を形成した空気入りタイヤを試作した。なお、タイヤサイズは、275/80R22.5とした。
そして、試作したタイヤについて耐サイドカット性および耐クラック性を以下の方法で評価した。
(従来例1)
表1に示す諸元で、サイドウォール部に凹部を形成していない空気入りタイヤを試作した。なお、タイヤサイズは、275/80R22.5とした。
そして、試作したタイヤについて耐サイドカット性および耐クラック性を以下の方法で評価した。
試作したタイヤを適用リム(リム幅:8.25)に装着し、内圧900kPaとして、試験車両(駆動方式:2−D4)の全軸に装着した。そして、高さ170mmの障害物にタイヤを乗り上げさせた後にずり落とす操作を3回繰り返し、発生したサイドカットの深さを測定した。なお、タイヤは、タイヤ幅方向外側から幅40mmの範囲を障害物上に乗り上げさせた。
そして、サイドカットの深さの逆数を取り、従来例1を100として指数評価した。指数は、値が大きいほど耐サイドカット性に優れていることを示す。結果を表1に示す。
<耐クラック性>
試作したタイヤのサイドウォール部を再現したサンプル(擬似サイドウォール部)を、試作タイヤと同じ部材を使用し、試作タイヤのサイドウォール部と同じ寸法で作製した。その後、作製したサンプルに引張(2%の引張歪み、52Hz)を繰り返し与え、クラックが発生するまでの時間を測定した。
そして、比較例1を100として指数評価した。指数は、値が大きいほど耐クラック性に優れていることを示す。結果を表1に示す。
Claims (3)
- トレッド部から一対のサイドウォール部を介して一対のビード部にわたってトロイド状に延在する少なくとも一枚のカーカスプライからなるカーカスを備える空気入りタイヤであって、
前記サイドウォール部には、凹部がタイヤ周方向に連続して1本のみ設けられており、
前記凹部が、タイヤを適用リムに装着し、所定内圧を適用した無負荷状態のタイヤ幅方向断面において、前記カーカスのタイヤ径方向最外端を通ってタイヤ幅方向に延びる第一仮想線からタイヤ径方向内方にカーカス断面高さの0.3倍以下の範囲内に位置し、
前記凹部の開口幅が、5mm以上10mm以下であり、
前記凹部の底幅が、前記開口幅の1/2以下であり、
前記凹部の深さが、5.0mm以上13.0mm以下であることを特徴とする、空気入りタイヤ。 - 前記凹部が、タイヤ幅方向断面において、前記凹部の幅中心線と前記カーカスとの交点Pを通って前記カーカスに直交する仮想垂線と、前記交点Pを通ってタイヤ幅方向に延びる第二仮想線との間に位置することを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記凹部と前記カーカスとの間の最短距離が2.5mm以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
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