JP6334881B2 - 床制振システム - Google Patents

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Description

本発明は、建物の床部に生じる上下振動を低減する床制振システムに関する。
近年、建物の床部に生じる上下振動をTMD(Tuned Mass Damper)によって低減する技術が用いられている。TMDは、弾性体と、この弾性体を介して振動低減対象物に支持された付加質量体と、この付加質量体に減衰を付与する減衰手段とを有して振動系を構成し、振動低減対象物の上下方向の固有振動数にTMDの振動系を同調させることによって、振動低減対象物に入力された上下振動エネルギーを付加質量体の運動エネルギーに変換して吸収し、振動低減対象物の振動を低減する。例えば、特許文献1には、圧縮コイルバネ、付加質量体、及び減衰手段を備えたTMDを構造床上に設置した床制振システムが開示されている。
建物を構成する大梁や小梁は、接合部やスラブを介して繋がっており(以下、基礎、柱、梁、床等の建物を構成する複数の構造部材群の総称を「架構」とする)、梁が単体で揺れることはなく、架構として複数の部材が連成して振動する。連成の及ぶ範囲は、振動源の特性によって異なり、歩行振動の場合は4本の柱に囲まれたスラブ1層程度に留まるが、入力振動を地震動とした場合、この地震動は、建物の基礎、柱、梁、床の順に伝搬され、柱の軸伸縮モードや各階の床の固有振動数が連成したモードなど、上下方向に複数の卓越ピークが発生することが考えられ、振動低減対象となる床部には、さまざまな振動数に卓越ピークを有する振動が発生することになる。したがって、振動数帯域に渡って振動加速度のピーク値を複数有する地震動等による上下振動が床部に生じている場合、このような床部に特許文献1のTMDを設置しても十分な振動低減効果を得ることができない。
特開平10−252253号公報
本発明は係る事実を考慮し、床部に生じる振動数帯域の上下振動に対して振動低減効果を発揮することを課題とする。
第1態様の発明は、建物の床部へ振動を伝達する振動伝達経路を構成する複数の構造部材に取り付けられ、前記建物の有する架構内でそれぞれの前記構造部材が卓越する上下方向の固有振動数に同調するTMDを有する床制振システムである。
第1態様の発明では、複数の構造部材に、取り付けられる構造部材の上下方向の固有振動数に同調するTMDをそれぞれ取り付けることにより、床部に生じる上下振動の加速度ピーク値の平滑化を図り、床部に生じる振動数帯域の上下振動に対して振動低減効果を発揮することができる。
これにより、1つの構造部材にのみ、この構造部材の上下方向の固有振動数に同調するTMDを取り付けた場合に比べて、床部に生じる上下振動に対して大きな振動低減効果を発揮することができる。
また、建物の床部に生じる上下振動の増幅要因が複数の構造部材(例えば、床部を支持する複数の梁)にある場合、これらの構造部材の上下振動が合わさった、複数の振動数(増幅要因となる構造部材の各固有振動数)に加速度ピーク値を持つ上下振動が床部に生じるが、第1態様の床制振システムでは、床部に生じる上下振動の加速度ピーク値の平滑化を図ることにより、この床部に生じる振動数帯域の上下振動に対して振動低減効果を発揮することができる。
さらに、上下動加速度入力が問題となる直下型の地震動では、2.5〜12.5Hz程度の短周期領域が卓越することが多いが、卓越振動数は地震動によって変動する。このような地震動により入力振動の卓越振動数がTMDの共振振動数とずれた場合においても、第1態様の床制振システムでは、床部に生じる上下振動の加速度ピーク値の平滑化を図ることにより入力振動の卓越振動数のずれに対するロバスト性を発揮し、この床部に生じる上下振動に対して振動低減効果を発揮することができる。
第2態様の発明は、第1態様の床制振システムにおいて、1つの前記構造部材に、共振振動数の異なる複数の前記TMDが取り付けられている。
第2態様の発明では、1つの構造部材に共振振動数の異なる複数のTMDを取り付けることにより、構造部材の剛性などの値の設計誤差、床部の積載荷重変動、設計時の解析誤差等の要因により、構造部材の上下方向の固有振動数とTMDの共振振動数がずれた場合においても、構造部材の上下方向の固有振動数のずれに対するロバスト性を向上させることができ、また、床部に生じる上下振動の加速度ピーク値の平滑化をより図ることができる。これにより、床部に生じる上下振動に対して、より大きな振動低減効果を発揮することができる。
なお、第2態様の発明において、1つの構造部材に取り付けるTMDは複数であれば幾つでもよい。また、1つの構造部材に複数のTMDを取り付ける場合、TMDの共振振動数は、全て同じにしてもよいし、全て異ならせてもよいし、幾つかを同じにして残りを異ならせてもよい。1つの構造部材に、共振振動数の異なる複数のTMDを取り付け、各TMDが、取り付けられた構造部材の上下方向の固有振動数に同調するようにすれば、TMDが取り付けられた構造部材の上下方向の固有振動数のずれに対するロバスト性を向上させることができ、また、床部に生じる上下振動の加速度ピーク値の平滑化をより図ることができる。これにより、床部に生じる上下振動に対して、より大きな振動低減効果を発揮することができる。
第3態様の発明は、第1又は第2態様の床制振システムにおいて、TMDを配置していない状態の前記建物に対して振動解析を行い、前記振動伝達経路への入力振動に対する上下方向加速度の増幅率が最大の前記構造部材から順に前記TMDの取り付け対象部材にする。
第3態様の発明では、固有値解析によって選定された、TMDの取り付け対象部材(構造部材)にTMDを取り付けることにより、少ない数のTMDで第1及び第2態様の効果を効果的に得ることができる。
本発明は上記構成としたので、床部に生じる振動数帯域の上下振動に対して振動低減効果を発揮することができる。
本発明の実施形態に係る床制振システムを示す平面図である。 本発明の実施形態に係るTMDの取り付け方法を示す側面図である。 本発明の実施形態に係るTMDの取り付け方法を示す平面図である。 本発明の実施形態に係る床制振システムの効果を示す線図である。 本発明の実施形態に係る床制振システムの効果を示す線図である。
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る床制振システムについて説明する。
図1の平面図には、建物12の有する、鋼製の柱14A、14B、14C、14D、鋼製の大梁16A、16B、16C、16D、及び鉄筋コンクリート製の床部18が示されている。本実施形態では、平面視にて、4つの柱14A、14B、14C、14Dと、4つの大梁16A、16B、16C、16Dによって囲まれた床部18を振動評価対象とし、建物12に地震力が作用した際に床部18の略中央に位置する振動評価点Pの振動を低減する床制振システム10について説明する。
大梁16A、16B、16C、16Dは、隣り合って配置された柱14Aと柱14B、柱14Bと柱14C、柱14Cと柱14D、柱14Dと柱14Aの間に架設されており、床部18は、大梁16A、16B、16C、16Dと、大梁16Aと大梁16Cの間に架設された3つの鋼製の小梁20A、20B、20Cの上に設けられて、これらの大梁16A、16B、16C、16Dと、小梁20A、20B、20Cに支持されている。
床制振システム10は、建物12の床部18へ上下方向の振動を伝達する振動伝達経路を構成する複数の構造部材としての大梁16Cと小梁20Bに取り付けられたTMD(Tuned Mass Damper)22、24を有して構成されている。すなわち、振動伝達経路を構成する構造部材のうちの2つ以上の構造部材のそれぞれにTMDが取り付けられている。
本実施形態は、床制振システム10の低減対象の振動を地震動としているので、振動伝達経路への入力振動は、建物12を支持する地盤の地震時の地盤振動となり、振動伝達経路は、建物12の基礎から床部18へ入力振動が伝搬する経路中に存在する、建物12の基礎、柱、梁、床等によって構成される。
TMDは、弾性体と、この弾性体を介して振動低減対象部材(本実施形態では、構造部材)に支持された付加質量体と、この付加質量体に減衰を付与する減衰手段とを有して振動系を構成し、この振動系を振動低減対象部材の上下方向の固有振動数に同調させることによって、振動低減対象部材に入力された上下振動エネルギーを付加質量体の運動エネルギーに変換して吸収する動吸振器である。
TMDの振動数fTMDは、振動低減対象モードの振動数fに対して、fTMD=f/(1+μ)とした場合が最適同調となる(μは、振動低減対象モードの有効質量Mに対するTMDの質量MTMDの割合(μ=MTMD/M)を示している)。また、最適減衰は、3μ/8(1+μ)の平方根の値となる。これらの最適同調式及び最適減衰式に基づいて、TMDの重量、最適同調及び最適減衰を定めている。
図1に示すように、TMD22は、大梁16Cに2つ取り付けられている。TMD22は、大梁16Cの梁長方向中央部付近における大梁16Cの側方に、大梁16Cの下面から下方へはみ出さずに天井懐に収容されるようにして配置されている。また、TMD22の付加質量体の重さを1tonとし、上記の最適同調式及び最適減衰式に基づいて、この付加質量体に付与する減衰の減衰定数を0.05としている。さらに、TMD22の共振振動数を、大梁16Cが卓越する(大梁の振動が主体の架構振動)上下方向の1次固有振動数と同じ3.9Hzとしている。すなわち、大梁16Cには、1tonの付加質量体を備え、減衰定数が0.05、共振振動数が3.9HzのTMD22が2つ取り付けられている。なお、TMD22の共振振動数は、大梁16Cが卓越する上下方向の1次固有振動数に同調する振動数であればよい。
TMD24は、小梁20Bに2つ取り付けられている。TMD24は、小梁20Bの梁長方向中央部付近における小梁20Bの側方に、小梁20Bの下面から下方へはみ出さずに天井懐に収容されるようにして配置されている。TMD24の付加質量体の重さを1tonとし、上記の最適同調式及び最適減衰式に基づいて、この付加質量体に付与する減衰の減衰定数を0.05としている。さらに、TMD24の共振振動数を、小梁20Bが卓越する(小梁の振動が主体の架構振動)上下方向の1次固有振動数と同じ8.5Hzとしている。すなわち、小梁20Bには、1tonの付加質量体を備え、減衰定数が0.05、共振振動数が8.5HzのTMD24が2つ取り付けられている。なお、TMD24の共振振動数は、小梁20Bが卓越する上下方向の1次固有振動数に同調する振動数であればよい。
すなわち、床制振システム10では、複数の構造部材に、複数のTMDが取り付けられており、各TMDが、建物12の有する架構内でそれぞれの構造部材が卓越する上下方向の固有振動数に同調する。なお、本実施形態の説明において、「架構」とは、基礎、柱、梁、床等の建物12を構成する複数の構造部材群の総称を意味する。
TMD22、24は、取り付けられる構造部材(大梁16C、小梁20B)に発生する振動をTMD22、24に確実に伝達される方法によって、この構造部材に取り付けられていればよい。例えば、図2の側面図、及び図3の平面図に示すようにして、TMDを構造部材に取り付けてもよい。図2及び図3には、TMD設置用支持梁26A、26Bを小梁20Aと小梁20Bとの間、及び小梁20Bと小梁20Cとの間に架設し、TMD24が備えられた架台28をTMD設置用支持梁26AとTMD設置用支持梁26Bの間に架設することによって、小梁20Bに2つのTMD24がそれぞれ取り付けられている様子が描かれている。
TMD24は、架台28上に設置された弾性体としてのバネ30と、バネ30を介して架台28上に弾性支持された付加質量体としての錘32と、架台28上に設置され錘32に減衰を付与するオイルダンパー34と、架台28上に設置され錘32の上下移動高さを規定するストッパー部材36とを有して構成されている。なお、TMD22も、TMD24と同じ構成になっている。
TMD22、24は、どのような大きさのものを用いてもよいが、TMD24のように、天井懐に収容できる大きさのTMDを、必要とする付加質量体の重さをトータルで確保できる数だけ構造部材に取り付けるのが好ましい。TMDをコンパクトにすれば、振動低減に対する要求性能に応じて適切な位置に複数のTMDを配置することができ、室内プランに大きな制約を与えずにTMDを配置することができる。
図1に示す床制振システム10は、例えば、次に示す方法によって構築する。
まず、TMDを配置していない状態の建物12に対して検討対象入力振動に対する振動解析を行い、床部18へ上下方向の振動を伝達する振動伝達経路を構成する構造部材のそれぞれ(以下、「応答評価点」とする)に対して、入力振動(地盤振動)に対する上下方向加速度応答値を求める。この上下方向加速度応答値が応答加速度許容値(目標値)を上回る場合は、TMDの取り付け対象部材選定の検討を行う。
TMDを配置していない状態の建物12に対して振動解析を行い、入力振動(地盤振動)に対する振動評価点Pの上下方向加速度の振動数ごとの増幅率(以下、「加速度増幅率」とする)を求める。そして、加速度増幅率が1番目に大きい振動数と、加速度増幅率が2番目に大きい振動数をTMDの対象振動数とする。次に、TMDを配置していない状態の建物12に対して固有値解析を行い、TMDの対象振動数ごとに、建物12の構成部材を立体的に評価した連成モード形状において最もよく揺れる構造部材をTMDの取り付け対象部材(以下、「取り付け対象部材」とする)とする。
なお、TMDの取り付け対象部材選定方法として、各応答評価点における加速度増幅率を求め、床部18へ上下方向の振動を伝達する振動伝達経路を構成する構造部材のうち、加速度増幅率が1番目に大きい構造部材と、加速度増幅率が2番目に大きい構造部材をTMDの取り付け対象部材としてもよい。
次に、各取り付け対象部材に生じる上下方向加速度を低減するようにTMDのパラメータ(TMDの共振振動数、付加質量体の重さ、TMDの減衰定数、TMD(付加質量体)の数、TMD(付加質量体)の配置)を設定し、パラメータを設定したTMDを取り付け対象部材に取り付けた状態の建物12に対して振動解析を行い、床部18の振動評価点Pにおける上下方向加速度の低減効果を確認する。
次に、床部18の振動評価点Pにおける上下方向加速度の低減効果が目標をクリアしていれば、このときのTMDのパラメータを床制振システム10のTMDのパラメータとする。床部18の振動評価点Pにおける上下方向加速度の低減効果が目標をクリアしていなければ、加速度増幅率が3番目に大きい構造部材を取り付け対象部材に加え、この取り付け対象部材に生じる上下方向加速度を低減するようにTMDのパラメータを設定し、パラメータを設定したTMDを取り付け対象部材に取り付けた状態(加速度増幅率が1番目、2番目、3番目の構造部材にTMDを取り付けた状態)の建物12に対して振動解析を行い、床部18の振動評価点Pにおける上下方向加速度の低減効果を確認する。
次に、床部18の振動評価点Pにおける上下方向加速度の低減効果が目標をクリアしていれば、このときのTMDのパラメータを床制振システム10のTMDのパラメータとする。床部18の振動評価点Pにおける上下方向加速度の低減効果が目標をクリアしていなければ、目標をクリアするまで、これまで説明した工程(取り付け対象部材の追加、追加した取り付け対象部材に取り付けられるTMDのパラメータの設定、及び振動評価点Pにおける上下方向加速度の低減効果の確認)を繰り返す。
すなわち、床制振システム10の構築は、建物12に対して固有値解析を行い、入力振動に対する加速度増幅率が最大の構造部材から順にTMDの取り付け対象部材にすることによって行う。なお、取り付け対象部材に取り付けるTMDは、取り付け対象部材の振動モードのピーク点に配置するように取り付けるのが好ましいが、この位置に配置できない場合には、取り付け対象部材の振動モードのピーク点付近に配置するように取り付けてもよい。また、取り付け対象部材へのTMDの設置が困難な場合には、その取り付け対象部材にTMDを設置せずに、次に加速度増幅率が大きい構造部材を取り付け対象部材としてもよい。
本実施形態の例では、床部18へ上下方向の振動を伝達する振動伝達経路を構成する構造部材に対して求めた上下方向加速度応答値のうち、柱14Aの脚部が最も小さい値である227.1galとなり、小梁20Bの中央部が1番目に大きい値である1298.3galとなり(柱14Aの脚部の上下方向加速度応答値の約5.7倍)、大梁16Cの中央部が2番目に大きい値である483.7galとなった(柱14Aの脚部の上下方向加速度応答値の約2.1倍)ので、床部18へ上下方向の振動を伝達する振動伝達経路を構成する構造部材のうち、加速度増幅率が1番目に大きい構造部材を小梁20Bとし、2番目に大きい構造部材を大梁16Cとして、この2つの構造部材(小梁20B、大梁16C)を取り付け対象部材とした。
次に、小梁20Bと大梁16Cの上下方向加速度を低減するようにTMD24のパラメータ(付加質量体重量1ton、減衰定数0.05、共振振動数8.5Hz)と、TMD22のパラメータ(付加質量体重量1ton、減衰定数0.05、共振振動数3.9Hz)を設定し、図1に示すように配置した。
そして、床部18の振動評価点Pにおける上下方向加速度の低減効果を確認した結果、図4のグラフに示すように、床部18の振動評価点Pにおける上下方向加速度の低減効果が目標を達成したので、TMD22、24のパラメータに決定し、床制振システム10を構築している。
図4は、振動解析によって求めた、測定時間(横軸)に対する床部18の振動評価点Pにおける上下動加速度応答(縦軸)の値38、40を示したものであり、値40は、TMDを建物12の構造部材に取り付けていない状態での上下動加速度応答の値を示し、値38は、TMD22を大梁16Cに取り付け、TMD24を小梁20Bに取り付けた状態での上下動加速度応答の値を示している。図4から、TMD22、24を取り付けることにより上下動加速度応答を最大で30%程度低減できていることがわかる。
次に、本発明の実施形態に係る床制振システムの作用と効果について説明する。
本実施形態の床制振システム10では、図1に示すように、複数の構造部材(大梁16C、小梁20B)に、取り付けられる構造部材の上下方向の固有振動数に同調するTMD22、24をそれぞれ取り付けることにより、床部18に生じる上下振動の加速度ピーク値の平滑化を図り、床部18に生じる振動数帯域の上下振動に対して振動低減効果を発揮することができ、地震時に発生する振動を低減することで床部18上に設置された機器等の故障・損傷を回避できる。
入力振動が地震動である場合、卓越振動数は地震動によって変動するが、検討対象地震動以外の地震動に対しても、1つの構造部材にのみ、この構造部材の上下方向の固有振動数に同調するTMDを取り付けた場合に比べて、複数の構造部材に振動数の異なるTMDを設置して架構の振動ピーク値を平準化する事で、床部18に生じる上下振動に対して大きな振動低減効果を発揮することができる。
また、建物12の床部18に生じる上下振動の増幅要因が複数の構造部材(例えば、床部18を支持する複数の梁)にある場合、これらの構造部材の上下振動が合わさった、複数の振動数(増幅要因となる構造部材の各固有振動数)に加速度ピーク値を持つ上下振動が床部18に生じるが、本実施形態の床制振システム10では、床部18に生じる上下振動の加速度ピーク値の平滑化を図ることにより、この床部18に生じる振動数帯域の上下振動に対して振動低減効果を発揮することができる。
特に、大スパン梁によって支持された床面積の大きい床部の場合、この床部を支持する複数の構造部材が、床部に生じる上下振動の増幅要因となり、複数の振動数に加速度ピーク値を持つ上下振動がこの床部に生じるので、有効である。
さらに、構造部材の剛性などの値の設計誤差、床部18の積載荷重変動、設計時の解析誤差等の要因により、構造部材の上下方向の固有振動数と、この構造部材に取り付けられたTMDの共振振動数がずれた場合においても、本実施形態の床制振システム10では、床部18に生じる上下振動の加速度ピーク値の平滑化を図ることにより、構造部材の上下方向の固有振動数のずれに対するロバスト性を発揮し、この床部18に生じる上下振動に対して振動低減効果を発揮することができる。例えば、図5のグラフに示すように、構造部材にTMDが取り付けられていない状態で、床部18に値42の振動が発生する場合、床部18へ上下方向の振動を伝達する振動伝達経路を構成する構造部材のうちの1つの構造部材に1つのTMDを取り付けると、同床部18における振動評価曲線は、値42のときと同じ入力振動において値44のような振動低減効果が得られる。これに対して、床部18へ上下方向の振動を伝達する振動伝達経路を構成する構造部材のそれぞれに、共振振動数の異なる複数のTMDを取り付けると、値42のときと同じ入力振動において値46のような高い振動低減効果が得られる。
また、本実施形態の床制振システム10では、固有値解析によって選定された複数の取り付け対象部材(構造部材)にTMDを取り付けることにより、一か所あたりに設置するTMD質量を低減でき、集中配置されたTMDよりも少ないトータルTMD質量で、床部18に生じる振動数帯域の上下振動に対する振動低減効果を発揮することができる。すなわち、TMDを分散配置する事でプランに制約を与えずコンパクトにTMDを配置することができる。
さらに、本実施形態では、床部18の振動評価点Pにおいて必要とする振動低減効果が得られるように、TMDのパラメータ(TMDの共振振動数、付加質量体の重さ、TMD(付加質量体)の数、TMD(付加質量体)の配置)を設定することにより、振動低減が求められる床部の場所をピンポイントで振動制御することができる。また、振動低減が求められる床部の場所を振動低減するだけの数のTMDを構造部材に取り付ければよいので、TMDの数を少なくすることができる。
このように、本実施形態の床制振システム10は、建物の有する床部に対して高い制振効果を発揮するものなので、データセンターや先端生産施設等の高度な上下方向の振動加速度制御が求められる建物等に対して特に有効に用いることができる。
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、本実施形態では、図1に示すように、1つの構造部材(大梁16C、小梁20B)に2つのTMD22、24を取り付けた例を示したが、1つの構造部材に取り付けるTMDは幾つでもよい。また、1つの構造部材に複数のTMDを取り付ける場合、TMDの共振振動数は、全て同じにしてもよいし、全て異ならせてもよいし、幾つかを同じにして残りを異ならせてもよい。
TMDの共振振動数の設定例としては、例えば、上下方向の固有振動数の変動幅がAHz〜AHzに想定される1つの構造部材に複数のTMDを取り付ける場合には、1つのTMDの共振振動数をAHzとし、1つのTMDの共振振動数をAHzとしたり、または、上下方向の固有振動数の変動幅を等比数列で分割した振動数をTMDの共振振動数にしたりする。例えば、上下方向の固有振動数の変動幅が8Hz〜12.5Hzに想定される場合には、TMDの共振振動数を8Hz、10Hz、12.5Hzに設定してもよい。
また、本実施形態では、TMD22、24の共振振動数を、構造部材(大梁16C、小梁20B)の上下方向の1次固有振動数に同調する振動数としているが、「構造部材の上下方向の固有振動数に同調する」とは、構造部材に上下振動が発生したときに、TMDを構成する付加質量体が上下振動して、構造部材に入力された上下振動エネルギーを付加質量体の運動エネルギーに変換して吸収することを意味する。
すなわち、このような効果が得られれば、構造部材に取り付けるTMDの共振振動数は、構造部材の上下方向の固有振動数と同じ値にしてもよいし、構造部材の上下方向の固有振動数からずらした値にしてもよい。また、TMDの減衰定数は、最適同調式及び最適減衰式に基づいて設定してもよいし、最適同調式及び最適減衰式からずらした値にしてもよい。
例えば、設計時に求めた構造部材の上下方向の固有振動数が共振振動数となるようにチューニングしたTMDを構造部材に取り付けてもよい。また、例えば、建物運用時における床部の積載荷重の変動による、構造部材の上下方向の固有振動数の変動幅を想定しておき、この変動幅に対応可能となるように共振振動数を各々チューニングした複数のTMD(各TMDの共振振動数を、設計時に求めた構造部材の固有振動数からずらした値にする)を構造部材に取り付けてもよい。また、TMDの減衰定数についても、床部18の積載荷重変動などを予め見込んだ上で、最適同調,最適減衰からずらした値を採用してもよい。さらに、例えば、設計時に求めた構造部材の上下方向の固有振動数が共振振動数となるようにチューニングしたTMDを構造部材に取り付けた後に、評価試験によって振動評価点の振動低減効果を確認しながらTMDの共振振動数を調整してもよい(TMDの共振振動数を、設計時に求めた構造部材の固有振動数からずらしてもよい)。
さらに、本実施形態では、図2及び図3に示すように、TMD設置用支持梁26A、26B、及び架台28を用いて、TMD24を小梁20Bに取り付けた例を示したが、部材を介して構造部材にTMDが取り付けられる構成は、この構造部材にTMDが取り付けられていることを意味する。例えば、図2及び図3のように、TMD設置用支持梁26A、26B、及び架台28を介してTMDが構造部材に取り付けられている構成や、床スラブを介して構造部材にTMDが取り付けられている(構造部材付近の床スラブ上面にTMDが設置されている)構成も、構造部材にTMDが取り付けられていることになる。
また、本実施形態では、建物12に対して固有値解析を行い、入力振動に対する加速度増幅率が最大の構造部材から順にTMDの取り付け対象部材にする例を示したが、他の方法によってTMDの取り付け対象部材を選定してもよい。例えば、床部18へ上下方向の振動を伝達する振動伝達経路を構成する構造部材のうち、加速度増幅率が所定値(例えば、振動伝達経路を構成する構造部材の加速度増幅率のうち、最も小さい加速度増幅率の1.5〜2倍の値)よりも大きい複数の構造部材を取り付け対象部材とし、これらの部材にTMDを取り付けるようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、TMDの共振振動数を、構造部材の1次固有振動数に同調する振動数にした例を示したが、高度な上下方向加速度の制御が求められる箇所には、構造部材の2次固有振動数も考慮に入れてTMDの共振振動数を設定すれば、振動低減効果をさらに高めることができる。
また、本実施形態の床制振システム10は、地震動以外(卓越振動数が地震動と異なる)の振動を低減対象の振動とすることができる。例えば、床上を人が歩く歩行振動や、床上に設置されたモーターやコンプレッサーのような機械の振動等に起因して発生する機械振動等に対しても、振動低減対象となる床部に発生する振動を低減し、居住性を向上させることができる。歩行振動を床制振システムの低減対象の振動とする場合、人の歩行による床部への歩行振動が入力振動となり、この床部から振動低減対象となる床部までの入力振動の伝搬経路が振動伝達経路になる。
さらに、本実施形態では、鋼製の梁(大梁16C、小梁20B)にTMD22、24を取り付けて、鉄筋コンクリート製の床部18に発生する上下方向の振動を低減する例を示したが、TMDの取り付け対象部材は、振動低減対象となる床部へ上下方向の振動を伝達する振動伝達経路を構成する構造部材であればよく、構造部材や床部は、さまざまな構造の部材であってもよい。すなわち、本実施形態の床制振システム10は、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、CFT造(Concrete-Filled Steel Tube:充填形鋼管コンクリート構造)、それらの混合構造など、さまざまな構造や規模の建物に対して適用することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
10 床制振システム
12 建物
16C 大梁(構造部材)
18 床部
20B 小梁(構造部材)
22、24 TMD

Claims (2)

  1. 建物の床部へ振動を伝達する振動伝達経路を構成する複数の構造部材に取り付けられ、前記建物の有する架構内でそれぞれの前記構造部材が卓越する上下方向の固有振動数に同調するTMDを有する床制振システムを構築する床制振システムの構築方法において、
    前記TMDを配置していない状態の前記建物に対して振動解析を行い、前記振動伝達経路への入力振動に対する上下方向加速度の増幅率が最大の前記構造部材から順に前記TMDの取り付け対象部材にする床制振システムの構築方法。
  2. 1つの前記構造部材に、共振振動数の異なる複数の前記TMDが取り付けられている請求項1に記載の床制振システムの構築方法。
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