JP6333204B2 - 熱電変換材料、その製造方法及びそれを用いた熱電変換素子 - Google Patents

熱電変換材料、その製造方法及びそれを用いた熱電変換素子 Download PDF

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本発明は、熱電変換材料、その製造方法及びそれを用いた熱電変換素子に関する。
近年、地球温暖化問題から二酸化炭素排出量を削減するために、化石燃料から得られるエネルギーの割合を低減する技術への関心が益々増大しており、そのような技術の1つとして未利用廃熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換し得る熱電変換材料及びそれを用いた熱電変換素子が挙げられる。熱電変換材料とは、火力発電のように熱を一旦運動エネルギーに変換しそれから電気エネルギーに変換する2段階の工程を必要とせず、熱から直接に電気エネルギーに変換することを可能とする材料である。
熱から電気エネルギーへの変換は熱電変換材料から成形したバルク体の両端の温度差を利用して行われる。この温度差によって電圧が生じる現象はゼーベックにより発見されたのでゼーベック効果と呼ばれている。この熱電変換材料の性能は、次式で求められる性能指数Zで表される。
Z=ασ/κ(=Pf/κ)
ここで、αは熱電変換材料のゼーベック係数、σは熱電変換材料の伝導率、κは熱電変換材料の熱伝導率である。ασの項をまとめて出力因子Pfという。そして、Zは温度の逆数の次元を有し、この性能指数Zに絶対温度Tを乗じて得られるZTは無次元の値となる。そしてこのZTを無次元性能指数と呼び、熱電変換材料の性能を表す指標として用いられている。よって、熱電変換材料の性能向上には上記の式から明らかなように、より低い熱伝導率κが求められる。
よって、熱電変換材料が幅広く使用されるためにはその性能をさらに向上させることが求められる。具体的には、熱電変換材料の性能向上には前記の式から明らかなように、より高いゼーベック係数α、より高い伝導率σ、より低い熱伝導率κが求められる。
例えば特許文献1には、熱電変換材料のマトリクス中にナノサイズのフォノン散乱粒子を分散させたナノコンポジット熱電変換材料の製造方法が記載されており、当該製造方法においては、フォノン散乱粒子が分散した複合体を形成し、焼結して多結晶マトリックス中にフォノン散乱粒子が分散した焼結体を形成した後、熱処理することにより結晶粒界の低融点相のみを溶融させ、溶融相中に近傍のフォノン散乱粒子を取り込ませて粒界層とすることが記載されている。特許文献1によれば、結晶粒内だけでなく結晶粒界層にもフォノン散乱粒子を分散させたことにより、フォノン散乱効果が大幅に高まるので、熱伝導率が大きく低下させることができることが記載されている。
特許文献2には、特定幅の熱電材料の母相の結晶粒が層状に積層されて配向していて、粒界に分散した絶縁ナノ粒子を含んでなるナノコンポジット熱電変換材料が記載されている。また特許文献3には、熱電変換材料の結晶粒界にのみフォノン散乱粒子が存在することを特徴とするナノコンポジット熱電変換材料が記載されている。特許文献3によれば、熱電変換材料マトリクスの結晶粒界にのみフォノン散乱粒子が存在することにより、熱伝導率を低減しつつ、電気伝導率を高く維持できるとされている。
しかしながら、微細化して熱伝導率の低減を図った場合、その方法によっては結晶欠陥等からキャリアが生じやすくなるため、キャリア生成が過剰になりゼーベック係数が低下するという問題があった。依然として、高い電気伝導率及び十分に低減された熱伝導率を有する熱電変換材料が求められている。
特開2012−182476号公報 特開2012−104560号公報 特開2013−219105号公報
本発明は、優れた電気特性を有する熱電変換材料及びその製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、そのような熱電変換材料を用いた熱電変換素子を提供することも目的とする。
本発明者らは、結晶粒のC面粒界に一定以上の長さの絶縁材料からなる粒界層を形成させることにより、キャリア濃度を低減させ、ゼーベック係数の低下を抑制することができることを見出した。また本発明者らは、熱電変換材料の製造において、母相材料及び絶縁材料前駆体の複合粒子を得た後、その複合粒子の母材材料の合金化・結晶化及び絶縁材料の粒界への固定化を同時に行うことにより、一定以上の長さの粒界層を結晶粒のC面粒界に形成させることができることを見出した。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)表面に絶縁材料からなる粒界層が形成された母相材料の結晶粒を含み、
該結晶粒が、該結晶粒のC面に平行な粒界層を有し、
該結晶粒のC面に平行な粒界層の長さが、該結晶粒のC面に平行な結晶粒の粒界の長さに対して30%以上の長さを有する、熱電変換材料。
(2)結晶粒の表面に形成される粒界層のうち、結晶粒のC面に平行でない粒界層の結晶粒のC面に平行な粒界層に対する存在比が20%以下である、(1)に記載の熱電変換材料。
(3)次の工程:
(a)母相材料を構成する元素の前駆体を含有する溶液を還元剤で処理する工程、
(b)工程(a)で得られた溶液と絶縁材料を構成する元素の前駆体とを混合して複合粒子を得る工程、及び
(c)工程(b)で得られた複合粒子を含む溶液を200〜300℃にて熱処理する工程
を含む方法により製造される、(1)又は(2)に記載の熱電変換材料。
(4)次の工程:
(a)母相材料を構成する元素の前駆体を含有する溶液を還元剤で処理する工程、
(b)工程(a)で得られた溶液と絶縁材料を構成する元素の前駆体とを混合して複合粒子を得る工程、及び
(c)工程(b)で得られた複合粒子を含む溶液を200〜300℃にて熱処理する工程
を含む、熱電変換材料の製造方法。
(5)(1)〜(3)のいずれかに記載の熱電変換材料を用いた熱電変換素子。
本発明の熱電変換材料によれば、フォノン散乱効果による熱伝導率の低減だけでなく、キャリア生成の抑制により電気特性が改善され、高い変換効率を達成することができる。本発明の熱電変換材料によれば、C面平行方向に粒界層を十分に析出させることができるため、キャリア生成の抑制によりキャリア濃度を低減させることができ、電気特性が改善された熱電変換材料を製造することが可能となる。
図1は、本発明の熱電変換材料の一実施形態の説明図である。 図2は、本発明の熱電変換材料及び本発明の熱電変換材料の製造方法の一実施形態の説明図である。 図3(a)は実施例1の熱電変換材料(焼結体)のTEM(透過型電子顕微鏡、Transmission Electron Microscope)像である。図3(b)は図3(a)の拡大図である。図3(c)は図3(b)に対応するTEMデフラクション像である。 図4は、比較例1の焼結体のSTEM−HAADF(高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡、Scanning Transmission Electron Microscopy High−angle Annular Dark−field scanning transmission electron microscopy)像である。 図5は、比較例2の焼結体のSTEM−HAADF像である。 図6は、比較例1の焼結体(低温熱処理条件)の模式図である。 図7は、比較例2の焼結体(高温熱処理条件)の模式図である。
本発明の熱電変換材料は、表面に絶縁材料からなる粒界層が形成された母相材料の結晶粒を含み、該結晶粒が、該結晶粒のC面に平行な粒界層を有し、該結晶粒のC面に平行な粒界層の長さが、該結晶粒のC面に平行な結晶粒の粒界の長さに対して30%以上の長さを有することを特徴とする。本発明の熱電変換材料は、キャリア発生源となりやすいC面粒界に絶縁性化合物が多く形成されているため、キャリア濃度が低減され、ゼーベック係数の低下が抑制されている。また粒界層によるフォノン散乱効果によって熱伝導率が低減されている。このように、本発明の熱電変換材料は、従来の熱電変換材料において行われていたフォノン散乱効果による熱伝導率の低減だけでなく、キャリア生成の抑制による電気特性の改善により、高い変換効率を達成するものである。本発明の熱電変換材料の一実施形態を示す図1を参照することにより、本発明の効果について説明する。図1にはBiTe結晶が示されている。C面(001)はTe−Teファンデルワールスによって結合した結晶構造であり、C面の粒界にはTe原子の欠落等により結晶欠陥が生成しやすく、キャリア生成のもととなる。そして特に結晶粒が小さい場合、C面方向の粒界割合が多くなるためキャリア生成過多となりゼーベック係数低下の原因となる。本発明者らは、C面におけるキャリア濃度の制御により、優れた電気特性、特に高いゼーベック係数を得ることに成功した。
本発明の熱電変換材料は、表面に絶縁材料からなる粒界層が形成された母相材料の結晶粒を含む。ここで、「表面に絶縁材料からなる粒界層が形成された」ことは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより確認することができる。例えば図3(a)及び(b)のTEM写真に示すように、母相材料の結晶粒間を隔離するように別材料が存在している場合には、上記粒界層が形成されているといえる。
上記母相材料としては、例えばBi、Sb、Ag、Pb、Cu、Sn、As、Se及びTeから選択される少なくとも2種以上の元素を含む材料、例えばBiTe系が挙げられる。上記熱電材料として、(Bi、Sb)(Te、Se)系、BiTe系、(Bi、Sb)Te系、Bi(Te、Se)系等を挙げることができる。
上記母相材料の結晶粒の粒径は、熱伝導率を十分低減させる観点から、1μm以下であることが好ましく、400nm以下であることがさらに好ましく、50〜200nmであることが特に好ましく、40〜100nmであることが最も好ましい。母相材料の結晶粒の粒径は焼結処理後の値を示す。微細な母材結晶粒に粒界層が形成されることにより、熱伝導率が大きく低減される。母相材料の結晶粒の粒径は、下記「3.TEMによる母相材料結晶の粒径の測定」に記載される方法を用いて測定することができる。
上記絶縁材料は、母相材料に拡散しづらく安定であり、キャリアを生じさせない物質であれば特に制限されないが、具体的には、無機の絶縁材料、例えばSi、Sb、Bi、Ti、Te、Se、Zr、Fe、Al、Cu、Ni、Mg、Mn、Coの酸化物及びこれらを含む複合酸化物、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等を挙げることができる。絶縁材料は1種であってもよくあるいは2種以上を併用してもよい。絶縁材料は、具体的には、SiO、Sb、Bi、BiTeO、BiSbO、TeO、SeO、TiO、Si4、SiC、ZrO、AlTiOを挙げることができる。
上記絶縁材料からなる粒界層の厚みは、電気伝導性を保持する観点から、10nm以下であることが好ましく、0.5〜10nmであることがさらに好ましく、1〜5nmであることが特に好ましい。絶縁材料からなる粒界層の厚みは焼結処理後の値を示す。絶縁材料からなる粒界層の厚みは、下記「2.TEM観察」に記載されるように、TEM像から決定することができる。
本発明の熱電変換材料において、結晶粒は、該結晶粒のC面に平行な粒界層を有する。ここで、「結晶粒のC面に平行な粒界層」とは、図1に示すように、結晶粒のC面方向に平行な粒界に生成した粒界層をいい、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより確認することができる。また、「結晶粒のC面に平行」とは、ある結晶粒のC面に平行な方位から観察した場合、TEM像上でC面のフリンジ(格子縞)が観察され、そのフリンジに沿って(よって平行に)粒界層が形成されていることをいい、フリンジの面方位はフリンジの面間隔やディフラクションから決定することができる。また「結晶粒のC面に平行でない粒界層」とは上記「結晶粒のC面に平行な粒界層」以外の粒界層をいう。本発明の熱電変換材料は、C面粒界に形成された粒界層によりキャリア濃度が低減され、ゼーベック係数の低下が抑制されている。また本発明の熱電変換材料は、C面に平行に形成されている粒界層のフォノン散乱効果により熱伝導率が低減されている。
本発明の熱電変換材料において、結晶粒のC面に平行な粒界層の長さは、結晶粒のC面に平行な結晶粒の粒界の長さに対して30%以上の長さを有する。ここで、「結晶粒のC面に平行な粒界層の長さ」とは、C面に平行な方向から見た、結晶粒のC面方向に平行な粒界に生成した粒界層の長さをいい、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより確認することができる。また「結晶粒のC面に平行な結晶粒の粒界の長さ」とは、C面に平行な方向から見た、結晶粒のC面方向に平行な粒界の長さをいい、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより確認することができる。下記「2.TEM観察」及び表1※1を参照されたい。当該長さの比は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、n=3〜10個のC面に平行な粒界層を有する任意の結晶粒を観察した場合の平均を意味する(下記「2.TEM観察」及び表1※1参照)。十分なキャリア濃度の低減効果を得る観点から、結晶粒のC面に平行な粒界層の長さは、結晶粒のC面に平行な結晶粒の粒界の長さに対して、30%以上、好ましくは38%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上の長さを有し、また同様の観点から、好ましくは30〜95%、さらに好ましくは38〜90%、さらに好ましくは50〜80%、特に好ましくは60〜75%の長さを有する。
本発明の熱電変換材料において、十分な導伝率を得る観点から、結晶粒の表面に形成される粒界層のうち、結晶粒のC面に平行でない粒界層の結晶粒のC面に平行な粒界層に対する存在比は、好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、特に好ましくは6%以下であり、また同様の観点から、好ましくは1〜20%、好ましくは1〜15%、さらに好ましくは2〜10%、特に好ましくは3〜6%である。当該存在比は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、n=3〜10個のC面に平行な粒界層を有する任意の結晶粒を観察した場合の平均を意味する(下記「2.TEM観察」及び表1※2参照)。
本発明の熱電変換材料は、次の工程:(a)母相材料を構成する元素の前駆体を含有する溶液を還元剤で処理する工程、(b)工程(a)で得られた溶液と絶縁材料を構成する元素の前駆体とを混合して複合粒子を得る工程、及び(c)工程(b)で得られた複合粒子を含む溶液を200〜300℃にて熱処理する工程を含む方法により製造されることが好ましい。工程(a)から(c)の好ましい態様及び実施形態等は、後述の本発明の熱電変換材料の製造方法についての対応する記載を引用するものとする。
本発明は、熱電変換材料の製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)にも関する。本発明の製造方法は、本発明の熱電変換材料の製造に適している。
本発明の製造方法は、次の工程:(a)母相材料を構成する元素の前駆体を含有する溶液を還元剤で処理する工程、(b)工程(a)で得られた溶液と絶縁材料を構成する元素の前駆体とを混合して複合粒子を得る工程、及び(c)工程(b)で得られた複合粒子を含む溶液を200〜300℃にて熱処理する工程を含む。本発明の製造方法において、工程(a)及び(b)で得られた母相材料を構成する元素及び絶縁材料を構成する元素の前駆体を含む複合粒子に対し、工程(c)では、母相材料を構成する元素の結晶化(合金化)と絶縁材料を構成する元素の結晶粒界への層状析出(粒界分散相)が同時に進行する。粒界層は結晶成長しにくいC面(001)方向に析出しやすい性質を有する。このように、本発明の製造方法によればC面方向に平行方向に粒界層が十分に析出させることができるため、キャリア濃度が低減しゼーベック係数を向上させることができる。さらにC面方向に平行方向にメインに析出させることができるため、移動度の低下を抑制することもできる。
工程(a)において使用する母相材料を構成する元素の前駆体としては、例えば、Bi、Sb、Ag、Pb、Cu、Sn、As、Se及びTeから選択される少なくとも1種以上の元素の塩、好ましくは上記元素のハロゲン化物(例えば塩化物、フッ化物及び臭素化物)、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられ、特に好ましくは塩化物、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
工程(b)において使用する絶縁材料を構成する元素の前駆体としては、例えば、絶縁材料を構成する元素、具体的には、Si、Sb、Bi、Ti、Te、Se、Zr、Fe、Al、Cu、Ni、Mg、Mn、Coのハロゲン化物(例えば塩化物、フッ化物、臭素化物)が挙げられ、具体例としては、塩化チタン(TiCl)、塩化鉄(FeCl)等が挙げられる。さらに好ましい絶縁材料を構成する元素の前駆体としては、液状で耐熱性があり、母相粒子を均一に複合化することが可能であるという観点から、有機ケイ素化合物が挙げられる。ここでいう有機ケイ素化合物は、シロキサン及びシルメチレン等を主骨格とする有機化合物を指し、具体的には、ジメチルシリコーンオイル等が挙げられる。均一に複合化するために、液体の有機ケイ素化合物を使用することが望ましい。母材原料を構成する元素との複合化を促進させる観点から、母材原料を構成する元素と吸着しやすい官能基(例えばメルカプト基やアミノ基等)を持つ化合物を使用することも好ましい。
工程(a)において使用する母相材料を構成する元素の前駆体と工程(b)において使用する絶縁材料を構成する元素の前駆体とのモル比は、20:1であることが好ましく、10:1であることが特に好ましい。
工程(a)において使用する溶媒としては、例えばエタノール等が挙げられる。
上記工程(a)において使用する還元剤は、母相材料を構成する元素の前駆体を還元し得るものであれば特に制限はなく、例えば第三級ホスフィン、第二級ホスフィン及び第一級ホスフィン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、ヒドロキシフェニル化合物、水素、水素化物、ボラン、アルデヒド、還元性ハロゲン化物、多官能性還元体等が挙げられ、その中でも水素化ホウ素アルカリ、例えば水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム等の物質の1種類以上が挙げられる。
工程(c)において、工程(b)で得られた複合粒子を含む溶液を熱処理する。当該熱処理により、工程(b)で得られた複合粒子の母材材料の合金化・結晶化と絶縁材料の粒界への固定化とが同時に進行し、十分な長さの結晶粒のC面粒界に絶縁材料からなる粒界層が形成される。結晶成長時にC面粒界にCやSiを含む絶縁性の粒界層を形成させることによりキャリア生成が抑制され、ゼーベック係数が向上する。熱処理は、十分な割合の結晶粒のC面に平行な粒界層、及び十分な長さの結晶粒のC面に平行な粒界層を得る観点から、通常200〜300℃、好ましくは230〜300℃、さらに好ましくは250〜295℃で行う。温度が高すぎると絶縁性材料の分解が始まるため望ましくない(図5及び図7:比較例2参照)。また温度が低すぎると合金化が十分に進行せず、目的とするC面粒界に十分な長さの粒界層が生成しないため望ましくない(図4及び図6:比較例1参照)。
工程(c)の熱処理の方法としては、低温で合金化を促進させる観点から、ソルボサーマル反応させる方法が好ましい。本明細書において、「ソルボサーマル反応」は、有機溶媒中において、高温及び高圧下で複数の原料物質を反応させて、反応生成物を得る処理を意味する。ソルボサーマル反応させる温度として好ましい範囲としては、上記の範囲が適用できる。ソルボサーマル反応させる圧力は、0〜20MPaの範囲であることが好ましく、0.5〜15MPaの範囲であることがより好ましい。また、ソルボサーマル反応させる時間は、1〜24時間の範囲であることが好ましく、5〜24時間の範囲であることがより好ましく、8〜12時間の範囲であることがさらに好ましい。ソルボサーマル反応に使用される反応容器及び/又は反応制御装置等の手段は特に限定されない。本工程においては、オートクレーブのような当該技術分野でソルボサーマル反応に通常使用される装置を、反応容器及び反応制御装置として用いることができる。例えば、200〜250℃の範囲の温度でソルボサーマル反応させる場合、フッ素樹脂(例えばテフロン(登録商標))のような比較的安価な樹脂を用いたオートクレーブ装置を使用すればよく、250℃超かつ450℃以下の温度でソルボサーマル反応させる場合、ニッケル合金(例えばハステロイ(登録商標))のような耐熱・耐食合金を用いたオートクレーブ装置を使用すればよい。上記手段を用いることにより、特別な装置を準備することなく本工程のソルボサーマル反応を実施することができる。ソルボサーマル反応に使用される有機溶媒としては、例えば、エタノール若しくはメタノール又はそれらの混合物であることが好ましい。
一般に、約100nm超の平均粒径を有する合金粒子はサブマイクロ粒子と分類され、約100nm以下の平均粒径を有する合金粒子はナノ粒子と分類される。本発明の熱電変換材料は、通常は、微細粒径の粒子の形態であり、典型的には、ナノ粒子の形態である。上記熱電変換材料は、通常は、300nm以下の平均粒径を有し、典型的には、200nm以下の平均粒径を有する。上記熱電変換材料は、通常は、50nm以上の平均粒径を有し、典型的には、70nm以上の平均粒径を有する。本発明の熱電変換材料は、上記平均粒径を有する微細粒径の粒子(以下、「一次粒子」とも記載する)を焼結等することによって得られるバルク体の形態であってもよい。
本発明の製造方法は、場合により、構成元素を含有する熱電変換材料を焼結する、焼結工程を含むことができる。本工程により、上記熱電変換材料の一次粒子が凝集したバルク体の形態の熱電変換材料を形成させることができる。本工程において、上記熱電変換材料を焼結する手段は特に限定されない。例えば、放電プラズマ焼結(SPS焼結)法又はホットプレス法のような当該技術分野で通常使用される焼結手段を適用することができる。本工程は、SPS焼結法を用いて実施することが好ましい。上記手段によって上記熱電変換材料の一次粒子を焼結することにより、該一次粒子が凝集したバルク体の形態の熱電変換材料を形成させることができる。例えば、熱電変換材料を350℃〜400℃、50〜100MPaで10〜30分間SPS焼結(放電プラズマ焼結:Spark Plasma Sintering)することによって、熱電変換材料バルク体を得ることができる。SPS焼結は、パンチ(上部、下部)、電極(上部、下部)、ダイ及び加圧装置を備えたSPS焼結機を用いて行うことができる。また、焼結の際に、焼結機の焼結チャンバのみを外気から隔離して不活性の焼結雰囲気にしてもよくあるいはシステム全体をハウジングで囲んで不活性雰囲気にしてもよい。
本発明は熱電変換素子にも関する。本発明の熱電変換素子は、本発明の熱電変換材料及び本発明の製造方法により得られた熱電変換材料を用いて得られる。本発明の熱電変換素子は、熱電変換材料を用いて、それ自体公知の方法によって、N型ナノコンポジット熱電変換材料、P型ナノコンポジット熱電変換材料、電極及び絶縁性基板を組み立てることによって得ることができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
実施例1−3及び比較例1−2
[I:熱電変換材料の製造]
[実施例1]
(1)熱電変換材料を構成する元素の塩(塩化ビスマス、塩化テルル、塩化セレン)を含む溶液A中に還元剤(NaBH)を含む溶液Bを滴下し、熱電変換材料の原料粒子を還元析出させ、原料ナノ複合粒子を作製した。
(2)作製した原料複合ナノ粒子(Bi,Te,Se)を含む溶液中に粒界層前駆体として有機ケイ素化合物を添加した。
(3)下の表1に示す条件下で熱処理を行った。
(4)上記(3)で得られた粉末を用いて焼結体を作製した。
[実施例2]
工程(3)において、熱処理を下の表1に示す条件下で行った以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
[実施例3]
工程(3)において、熱処理を下の表1に示す条件下で行った以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
[比較例1]
工程(3)において、熱処理を下の表1に示す条件下で行った以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
[比較例2]
工程(3)において、熱処理を下の表1に示す条件下で行った以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
[比較例3]
工程(2)を行わず、工程(3)において、熱処理を下の表1に示す条件下で行った以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
[II:分析及び結果]
上記手順によって得られた実施例1−3及び比較例1−3の焼結体について、C面粒界に存在する粒界層の割合、C面平行以外/C面平行の粒界層比、電気特性評価及び熱伝導率評価を行った。
<1.TEM試料作製>
直径10mm×1〜2mmの焼結体をアイソメリットによる1〜2mm×1〜2mmに切り出した。その後、厚さが100μm以下になるまで機械研磨を行って試料を作製した。その後、TEM用Cuメッシュに接着剤(商品名:アラルダイト)で上記試料を接着させ、乾燥した。次に、それをディンプルグラインダー(GATAN製)により一部分を20μm以下の厚さになるまで機械研削した。その後、Arイオンミリング(GATAN製)を用いて、薄くなった一部分の厚さが10〜100nmになるまで薄片化した。
<2.TEM観察>
上記の試料作製工程にて厚さが100nm以下になった部分についてTEM観察を行った。TEM観察の条件は以下の通りである。
装置の機種:TecnaiG2S−TwinTEM(FEI社)
加速電圧:300kV
<3.TEMによる母相材料結晶の粒径の測定>
TEMにより約500〜700個の結晶の粒径を測定し、その平均値を平均結晶粒子径とする。
<4.格子熱伝導率の測定>
定常法熱伝導率評価法及びフラッシュ法(非定常法)(ネッチ社製フラッシュ法熱伝導率測定装置)による。
格子熱伝導率は、全体の熱伝導率からキャリア熱伝導率(Kel)を差し引いて算出した。Kel=LσT(L:ローレンツ数、σ:電気伝導率(=1/比抵抗)、T:絶対温度)。
分析結果を表1に示す。
Figure 0006333204
本発明の熱電変換材料を用いた熱電変換素子は、自動車の排熱や地熱を用いた発電及び人工衛星用の電源に利用することができる。また、本発明の熱電変換材料を用いた熱電変換素子は、電化製品及び自動車等の温度調節素子に利用することができる。

Claims (3)

  1. 表面に絶縁材料からなる粒界層が形成された母相材料の結晶粒を含み、
    該結晶粒が、該結晶粒のC面に平行な粒界層を有し、
    該結晶粒のC面に平行な粒界層の長さが、該結晶粒のC面に平行な結晶粒の粒界の長さに対して30%以上の長さを有し、
    結晶粒の表面に形成される粒界層のうち、結晶粒のC面に平行でない粒界層の結晶粒のC面に平行な粒界層に対する存在比が20%以下である、熱電変換材料。
  2. 次の工程:
    (a)母相材料を構成する元素の前駆体を含有する溶液を還元剤で処理する工程、
    (b)工程(a)で得られた溶液と絶縁材料を構成する元素の前駆体とを混合して複合粒子を得る工程、及び
    (c)工程(b)で得られた複合粒子を含む溶液を200〜300℃にて熱処理する工程を含む、請求項1に記載の熱電変換材料の製造方法。
  3. 請求項に記載の熱電変換材料を用いた熱電変換素子。
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