JP6330255B2 - ゲル状栄養組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、良質な蛋白質を高濃度で含み、適切なゲルの破断強度であり、かつ風味が良好なゲル状栄養組成物に関する。
近年、医療介護業界において「QOLの向上」が重要視されている{QOL:Quality of Life(生活の質)}。QOLの低下として挙げられる最も大きな問題は、寝たきりの患者における褥瘡(床ずれ)である。この症状は、摂取する栄養の不足、特に蛋白質成分の不足により発症しやすいことが知られている。患者や高齢者の栄養不足に対応するため、医療介護施設内に、NST(Nutrition Support Team)と呼ばれる、栄養管理を職種の壁を越えて実践する集団が結成されている。このような背景に基づき、NST活動で適切な栄養を容易に摂取できる食品が求められている。特に、蛋白質成分は栄養成分として重要であるにも関わらず、食の細くなりがちな高齢者は、通常の食品から摂取しづらいので、蛋白質成分を高含有する食品のニーズが高くなってきている。
医療介護業界のみならず、若齢者から高齢者まで健康に人生を送りたいとの願望を持った人たちが増加し、ジョギングやウェイトトレーニング等の運動が行われるようになってきている。これは運動により代謝を促し蓄積脂肪を消費する目的のほか、筋肉の増強による基礎代謝量の向上を目的としている。これらを効率よく実施するためには、運動に併せて効果的な栄養補給が望まれる。特に、筋肉の構成成分である蛋白質を、不足することなく良質なかたちで補給することが効果的である。
良質な蛋白質食品として肉類、魚類、卵類、豆類等が知られている。ところが、種々の疾患により咀嚼や嚥下の能力が低下した患者や高齢者にとって、これらのほとんどの食品は咀嚼するのに硬く、嚥下するのに飲み込みにくい摂食しにくい形態(物性)である。一方、運動に併せて蛋白質を摂取したい人たちにとって、肉類、魚類、卵類、豆類等は調理を必要とするため非常に煩わしい。このため、運動前後に粉末状プロテイン等の摂取が利用されているが、これらは一旦水に溶解させてから飲む必要があり簡易的とはいえない。よって用時調整が不要な吸い口付きのパウチゼリーが販売されているが、これらの容器では吸い込みやすくするためにゲルが柔らかいことが必須である。
良質な蛋白質食品の他の例として乳酸菌飲料やヨーグルト等の乳類が知られている。咀嚼や嚥下の能力が低下した患者や高齢者にとって、これらは比較的摂食しやすい形態であるが、蛋白質含量が低く、例えば、乳酸菌飲料の蛋白質成分含有量は0.5〜2質量%であり、一般的なヨーグルトではその蛋白質成分含有量はせいぜい4質量%である。また吸い口付きパウチゼリー入りのプロテインゼリーの蛋白質成分含有量もせいぜい2〜5質量%である。
医療介護用や運動補給用を問わず、蛋白質を多く含む液状またはゲル状の加工食品が販売されている。しかし、これらの多くは蛋白質含有量が充分でなかったり、蛋白質の質を示すアミノ酸スコアが低かったり、飲食に適さない物性であったり、特有の悪い風味を有したりしていた。
特許文献1には、高水分高蛋白質を含有するゲルが開示されている。しかし、総合乳蛋白質を使用することを開示又は示唆をしていない。さらに、実施例1及び2では、アミノ酸スコアが低く(概算値で22及び30)、栄養価が低い。さらに、実施例3及び4では、高アミノ酸スコア(概算値で72及び78)の例が開示されているが、この技術では、ゲルの破断強度が高すぎて、実用上、前記のような病人や老人のような、咀嚼、嚥下困難者用の食品として充分満足できるものとはいえない。したがって、アミノ酸スコアが高く、ゲルの破断強度が充分低いゲルが達成されておらず、病人や老人のような、咀嚼、嚥下困難者用の食品として充分満足できるものではなく、健常者であっても飲食しやすい形態ではない。
特許文献2には、厚生省高齢者用食品試験法による測定で5×10N/m以下の硬さを有し、デキストリン又は還元デキストリンを用いた高栄養固形状食品が開示されている。しかし、総合乳蛋白質を使用することを開示又は示唆をしていない。さらに、これらの用途はかまぼこやチーズのものであり、実用上、高齢者の咀嚼、嚥下に充分適した物性とはいえない。
特許文献3には、カゼインナトリウム、寒天およびカラギーナンを用いたゲル状油脂配合食品用組成物が開示されている。しかし、この技術では、易嚥下性やゲルの破断強度について言及されておらず、例えば、実施例3に示されているゲル強度255g/cm(約2.5×10N/m)では、高齢者の咀嚼、嚥下に充分適したゲルとは言えない。
特許文献4には、加熱ゲル化性蛋白質(乳ホエイ蛋白質、一部の大豆蛋白質、一部の鶏卵蛋白質等)を必須とするゲル状食品組成物が開示されている。この技術によれば、高蛋白質でアミノ酸スコアが高く、レトルト殺菌処理により常温保存可能である等の特徴を有するゲル状食品組成物が提供される。しかしながら、近年、風味的な要求の高まっている市場において、加熱ゲル化性蛋白質の使用による加熱臭の点から、汎用化の難しい技術であるといえる。
特許文献5には、蛋白質を高含有でき、風味が爽やかであり、ざらつきが少ない飲料、ゼリー等の水性食品が開示されており、これらは乳や大豆や鶏卵等の蛋白質分解物を使用することで、酸性下でも蛋白質の凝集物を微粒子化し、ざらつきなく安定化するものである。しかし、pH3〜5であるため、酸味を嫌う傾向にある高齢者には不向きであり、さらには酸味によるむせかえしにより、誤嚥を誘発し肺炎の原因となる。
特許文献6、特許文献7及び特許文献8には、高カロリーでありながら、粘性が低く、蛋白質の凝集や沈澱がない流動食が開示されており、そのなかで全乳蛋白質が使用されている。しかし、これらの先行特許文献には液状栄養食のみが開示されており、本発明のゲル状栄養組成物とは、組成及び物性が明らかに異なる。
非特許文献1及び非特許文献2には、各種乳タンパク質素材の組成と、その溶液の濃度と粘度の関係が示され、カゼインとホエイの比率が90:10である総合乳タンパク質(MCI)が最も粘度が低いことが記載されている。しかし、これらをゲル化させてゲル状栄養組成物とすることは、開示又は示唆がされていない。
非特許文献3及び非特許文献4には、精密濾過等で得られたカゼインミセルに関する水への溶解性、保水性、起泡性及びレンネットゲルに関する物性が記載されている。しかし、これらをゲル化させてゲル状栄養組成物とすることは、開示又は示唆がされていない。なお、レンネットゲルとは、哺乳動物の胃等から得られた酵素によりカゼインミセルの溶解性を低下させ凝固させたチーズの製造に用いられる方法であり、増粘多糖類でゲル化させた際のいわゆるゼリーのゲル化とは全く異なるメカニズムであり、一般的に硬いゲルとなる。
特開平11−169106号公報 特開2001−275615号公報 特開平10−155433号公報 特開2005−13134号公報 特開2006−271326号公報 特開平08−196236号公報 特開平10−210951号公報 特開2001−61444号公報
「FOOD STYLE21(2012年9月号)『総合乳タンパク質の筋肉と体脂肪に対する作用』」 「食品化学新聞(2011年11月17日)」 「International Journal of Food Science and Technology (2006), 41(6), 609-617」 「Bulletin of the International Dairy Federation (2004), 389, 36-39」
上記のとおり、良質な蛋白質を高濃度で含み、適切なゲルの破断強度であり、かつ風味が良好なゲル状栄養組成物は、これまでになかった。
そこで、本発明は、良質な蛋白質を高濃度で含み、適切なゲルの破断強度であり、かつ風味が良好なゲル状栄養組成物を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討したところ、総合乳蛋白質中のカゼインとホエイ蛋白質を特定の比率にしたゲル状食品組成物が、良質な蛋白質を高濃度で含み、適切なゲルの破断強度であり、かつ風味が良好なゲル状栄養組成物であることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の通りである。
1.ゲル化剤及び総合乳蛋白質を含むゲル状栄養組成物であって、
アミノ酸スコアが80〜100であり、
該組成物中の蛋白質含量が6〜20質量%であり、
ゲルの破断強度が1800〜10000N/mであり、並びに
該総合乳蛋白質中のカゼインとホエイ蛋白質の比率が83:17〜100:0である、
ことを特徴とするゲル状栄養組成物。
2.前記カゼインとホエイ蛋白質の比率が85:15〜100:0であることを特徴とする前項1に記載のゲル状栄養組成物。
3.前記ゲルの破断強度が1900〜6000N/mであることを特徴とする前項1又は2に記載のゲル状栄養組成物。
4.前記総合乳蛋白質は、精密濾過により脱脂乳から得られることを特徴とする前項1〜3のいずれか1に記載のゲル状栄養組成物。
本発明によれば、良質な蛋白質を高濃度で含み、適切なゲルの破断強度であり、かつ風味が良好なゲル状栄養組成物を提供できる。
(ゲル状栄養組成物)
本発明のゲル状栄養組成物とは、ヒトを含む動物が食するためのゲル状の食品である。
該組成物の基本組成は、総合乳蛋白質、ゲル化剤、水から構成され、好ましくは、糖質、食物繊維、ビタミン、ミネラル、風味剤等が含まれている(添加されている)。
加えて、本発明のゲル状栄養組成物は、テトラパック、テーブルカップ、ポーションカップ、アルミパウチ、チアパック糖の容器に充填したゼリー、プリン等の形態である。
(アミノ酸スコア)
本発明のゲル状栄養組成物は、アミノ酸スコアが80以上であることが好ましい。アミノ酸スコアとは、食品中の蛋白質当たりの必須アミノ酸量を、1985年にFAO/WHO/UNUが合同で発表したアミノ酸パターンと比較し、最も不足するアミノ酸に関して、その割合を百分率で示した数値であり、すべてのアミノ酸を充足するものは100とする数値である。なお、本発明ではアミノ酸パターンの年齢区分のうち、一般的に用いられる2〜5歳用を用いて計算している。アミノ酸スコアが低い食品の場合は、高蛋白質であってもその栄養価値は低い。蛋白質栄養補給食品であれば、最低でも80以上、望ましくは90以上、より望ましくは100である。
(蛋白質含量)
本発明のゲル状栄養組成物は、蛋白質含量が6〜20質量%であり、好ましくは7〜20質量%、より好ましくは8〜20質量%、最も好ましくは9〜20質量%である。蛋白質含量が、6質量%より少ない場合には、蛋白質補給食品としての価値が低いが、20質量%より多い場合には、ゲルが固くなり、破断強度も高く、風味も悪く良好な物性を示さない。
(ゲルの破断強度)
本発明のゲル状栄養組成物の適切なゲルの破断強度は1800〜10000N/mである。ゲルの破断強度とは、硬さを示す指標であり、咀嚼しやすさや、吸い口付きパウチ容器からの吸い込みやすさを表す。ゲルの破断強度が、1800N/mより小さいと実質上ゲルとしての保形性を有さない。また、10000N/mより大きいと、咀嚼能力が低下した患者や高齢者にとって咀嚼しにくい硬さであり、また吸い口付きパウチ容器からも容易に吸い出せない。ゲルの破断強度は、好ましくは1900〜6000N/mであり、より好ましくは、2000〜5500N/mであり、最も好ましくは2100〜5300N/mである。
ゲルの破断強度の測定方法は、直径5〜7cm、高さ25mmの容器に充填し、20℃で12時間以上放置したゲルに、直径1.6cmの円筒形プランジャーを、圧縮速度1.0mm/秒でゲル中に進入させ、その破断点の応力を測定する。
(ゲルの破断距離)
本発明のゲルの破断距離とは、破断強度を測定する際にプランジャーがゲルと接しゲルの中に進入し始めた時点を0とし、破断点までの進入した距離を指す。
本発明のゲル状栄養組成物のゲルの破断距離は、3.0〜10.0mmであり、好ましくは3.5〜7.0mmであり、最も好ましくは3.5〜6.0mmである。
(ゲルの破断後の応力低下率)
本発明のゲルの破断後の応力低下率とは、破断強度を測定する際にプランジャーがゲル中に進入し、ゲルが破断したあとに応力の低下が見られ、再び増加する現象が見られるが、応力の破断点に対する低下分を百分率で示したものである。破断後に応力が0N/mまで低下した場合は100%、全く低下しない場合は0%である。破断後の応力の低下率が大きいほどゲル形成が良好で、飲食時の食感が「プルン」として付着性が低く嚥下等に好ましく、食べたときの官能的な印象としても心地よい。低下率が小さいと飲食時の食感が「ベタ」っとして付着性が高く嚥下等に好ましくなく、食べたときの官能的な印象としても心地悪い。
本発明のゲル状栄養組成物のゲルの破断後の応力低下率は、15%以上であり、好ましくは18%以上であり、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは25%以上であり、最も好ましくは30%以上である。
(総合乳蛋白質とは)
総合乳蛋白質とは、TMP(Total Milk Protein)、乳蛋白質濃縮物、MPC(Milk Protein Concentrate)、全乳蛋白質とも呼ばれる。一般に総合乳蛋白質の製造方法は、牛乳から遠心分離等により脱脂された脱脂乳から、濾過により乳糖やミネラル等の低分子成分を除いて得られる。総合乳蛋白質の主成分はカゼインとホエイ蛋白質である。脱脂乳に酸成分等を加えた際に、沈澱物として得られるカゼイン、その上澄みに含まれるホエイ蛋白質は商業的によく利用され栄養学的な価値も高い蛋白質成分であるが、総合乳蛋白質はカゼインとホエイ蛋白質を分ける工程がないため両方の成分を含む。総合乳蛋白質中におけるカゼインとホエイ蛋白質の比率は、脱脂乳中における比率と変わることなく、おおよそ8:2である。
総合乳蛋白質は、酸沈澱により分画されたカゼインとホエイ蛋白質を再び混合した蛋白質の混合物とは全く異なる性質を持つ。なぜなら、総合乳蛋白質は、牛乳中で認められるカゼインのミセル構造が維持されているからである。逆に酸沈澱により分画されたカゼインは、酸変性により既にミセル構造が破壊されており、ランダムな伸びた分子構造になっている。また、カゼインミセルは、その構造中に不溶なカルシウムを保持しているが、酸処理されるとカルシウムは溶出し、ホエイ蛋白質が存在する上澄みへ移行し、ホエイ蛋白質や乳糖等が取り除かれる際に、一緒に取り残されてしまう。よって、カゼインとホエイ蛋白質の混合物は、総合乳蛋白質と比較すると、カルシウム含有量と、その存在形態が全く異なる。
(本発明に用いる総合乳蛋白質)
本発明に用いる総合乳蛋白質は、本発明のゲル状栄養組成物中において、カゼインとホエイ蛋白質の比率が、83:17〜100:0であり、好ましくは85:15〜100:0であり、より好ましくは88:12〜100:0であり、さらに好ましくは90:10〜100:0であり、最も好ましくは92:8〜100:0である。または、83:17〜99.9:0.1であり、好ましくは85:15〜99.9:0.1であり、より好ましくは88:12〜99.9:0.1であり、さらに好ましくは90:10〜99.9:0.1であり、最も好ましくは92:8〜99.9:0.1である。
なお、総合乳蛋白質中のカゼインとホエイ蛋白質の比率において、ホエイ蛋白質の比率が17%以上であると、下記実施例の結果より、風味が悪く、外観の状態も悪く及び破断強度も適切ではない。
本発明に用いる総合乳蛋白質は、一般的な総合乳蛋白質と比較して粘度が低い。また、酸沈澱により分画されたカゼインと比較しても、圧倒的に粘度が低い。これは、本発明の総合乳蛋白質がミセル構造を維持しているためであり、分画されたカゼインがランダムな伸びた分子構造になり絡み合っているのとは大きく異なっている。
(本発明に用いる総合乳蛋白質の製造方法)
本発明に用いる総合乳蛋白質の製造方法は、好ましくは、脱脂乳から、限外濾過ではなく精密濾過により得られる。精密濾過膜の孔径は通常0.05〜10μmであり(限外濾過膜の孔径は0.001〜0.01μm)、限外濾過では除かれない一部のホエイ蛋白質も精密濾過では取り除かれる。このため、精密濾過によって得られる総合乳蛋白質は、ホエイ蛋白質の割合が低減され、カゼインの割合が高められた総合乳蛋白質となる。
(本発明のゲル状栄養組成物に用いる総合乳蛋白質)
一般にゼリーは、飲料等と比較して、流動性が悪く熱伝達性が低いため、熱殺菌を施す時間を長く取らなければならない。熱殺菌の時間が長くなれば、蛋白質の熱変性により分離凝集が進み、ゲル強度は硬くなり、風味も悪化する。
しかし、本発明のゲル状栄養組成物は、上記の長い熱殺菌時間を経ても、蛋白質の熱変性により分離凝集が進みにくく、ゲル強度は硬くならず、風味も悪化しないことを下記実施例で確認している。この理由は、以下のようなメカニズムで説明できると考える。
本発明に用いる総合乳蛋白質は、カゼインが小さくコンパクトにまとまったミセル構造を持つ。これにより、ゲル状栄養組成物に用いた場合、酸沈澱により得られたカゼイン(またはその塩であるカゼイネート)と比較して、ゲル化剤によるゲルネットワークの構造を阻害しにくく、柔らかくともしっかりしたまとまりのあるゲルとなり、このためにゲル強度が硬くならないと考えられる。
また、加熱臭成分の生成は、乳蛋白質のポリペプチド鎖中のジスルフィド結合の開裂に始まるラジカル反応機構によって起こることが知られている(特開平10−295341、特開2004−201601等)。上記の小さくコンパクトにまとまったカゼインのミセル構造が、加熱中のゲル化剤高分子の溶液中において、成分生成の機構を阻害する形で働いており、このために本発明のゲル状栄養組成物は風味が悪化しないと考えられる。
(ゲル化剤)
本発明に用いるゲル化剤とは、水に溶解または分散して粘稠性を生じる高分子物質である増粘安定剤のうち、液体のものをゼリー状に固める作用のあるものをいう。具体的には、カラギーナン、寒天等の硫酸多糖類;キサンタンガム、ジェランガム、ペクチン等のカルボキシル多糖類;デンプン等のリン酸多糖類;ローカストビーンガム、ゼラチン等の種子多糖類が挙げられる。好ましくは硫酸多糖類、カルボキシル多糖類、さらに好ましくは寒天、ジェランガム、カラギーナン、最も好ましくは寒天、脱アシル型ジェランガム、κカラギーナンが挙げられる。
(糖質)
本発明のゲル状栄養組成物で使用できる糖質は、特に限定されないが、例えば、ブドウ糖、果糖等の単糖類、蔗糖(上白糖、グラニュー糖)、乳糖、トレハロース等の二糖類、オリゴ糖、デキストリン、澱粉、異性化糖、還元水飴、還元デキストリン等を例示でき、好ましくは、蔗糖である。また甘味付けのため高甘味度甘味料を使用でき、使用できる高甘味度甘味料は、特に限定されないが、例えば、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロース、ネオテーム、ステビア、サッカリン等やそれらの製剤を例示でき、好ましくは、スクラロースまたはその製剤である。
加えて、ゲル状栄養組成物に含まれる糖質の検出方法は、例えば、原材料表示等の情報と糖以外(水、蛋白質、脂質、食物繊維、ミネラル分)の含量分析を行い、差し引いて算出する「差し引きの糖質法」を利用できる。また、別の検出方法としては、糖質を直接検出する方法として、ガスクロマトグラフ法や高速液体クロマトグラフ法等も利用できる。例えば、ガスクロマトグラフ法では、キャリアーガスを窒素又はヘリウムとしてカラムによる分離を行ったのち、水素炎イオン化検出器で検出し、検出位置により分子種を特定し、ピーク面積から濃度を計算する方法を例示できる。また高速液体クロマトグラフ法では、移動相をアセトニトリル−水などとしてカラムによる分離を行ったのち、屈折率検出器で検出し、検出位置により分子種を特定し、ピーク面積から濃度を計算するなどの方法を例示できる。
(風味剤)
本発明のゲル状栄養組成物で使用できる風味剤は、特に限定されないが、例えば、カスタードフレーバー、バニラフレーバー、ミルクフレーバー、プリンフレーバー、ヨーグルトフレーバー、バターフレーバー、アップルフレーバー、オレンジフレーバー、グレープフレーバー、バナナフレーバー、ピーチフレーバー、マンゴーフレーバー、メロンフレーバー、ストロベリーフレーバー、ブルーベリーフレーバー、パイナップルフレーバー、フルーツミックスフレーバー、コーヒーフレーバー、ココアフレーバー、チョコレートフレーバー、豆乳フレーバー等を例示でき、好ましくは、カスタードフレーバーである。
(カルシウム含有量)
本発明のゲル状栄養組成物は、カルシウムを高含有することが好ましい。なぜなら、高齢者にとっては骨粗鬆症が広く一般的な問題として認識されているためであり、カルシウム摂取量と骨折発生率との関連を検討した疫学研究では有意な関連を認めている。
本発明のゲル状栄養組成物の「蛋白質1g当たりのカルシウム含量(mg)」は、7〜200mg、好ましくは10〜150mg、より好ましくは20〜100mg、最も好ましくは25〜80mgである。
カルシウムを始めとする二価の陽イオンは、蛋白質の凝集を促進する作用があり、蛋白質を高含有するゲルにおいては、凝集がザラツキとして感じられたり、蛋白質変性によりゲルが硬くなりすぎたりして、カルシウムを高濃度で含有させることは困難であった。しかし、本発明のゲル状栄養組成物は、蛋白質を高含有するゲルであるにもかかわらず、下記実施例の結果から明らかなように、優れた外観の状態(食感均一性)を示している。
(他の成分)
本発明のゲル状栄養組成物に使用するその他の原材料は、本発明の目的から逸脱しなければ、特には限定されず一般に食用として利用されているものを使用できる。
脂質としては、例えば、ナタネ油、大豆油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ヒマワリ油、オリーブ油、米油、シソ油等の植物性油脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油等の動物性油脂、中鎖脂肪油が使用できる。
食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、サイクロデキストリン等の水溶性食物繊維や、微結晶セルロース等の不溶性食物繊維等が挙げられる。
ミネラルとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、亜鉛、セレン、ヨウ素、硫黄、塩素等が挙げられ、その原料としては、水酸化物、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、縮合リン酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、カゼイネート等が使用できる。また蛋白質に含まれるミネラル、酵母に含まれるミネラル、その他のミネラル等も使用できる。
ビタミンとしては、例えば、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、パントテン酸、葉酸、ナイアシン、ビオチン等が挙げられる。
乳化剤としては、食用として使用されるものであればいずれでも構わない。例えば、モノグリセライド、ポリグリセライド、レシチン、リゾレシチン、高純度レシチン、有機酸モノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
また、必要により、香料、着色剤、果汁等を加えても良い。
(pH)
本発明のゲル状栄養組成物のpHは5〜9であり、好ましくは5〜8であり、最も好ましくは約6である。pHが5より低い場合は総合乳蛋白質が酸沈澱してしまい本発明の効果を発揮しにくい。またpHが9より高い場合は食品として適さない。
(ゲル状栄養組成物の製造方法)
本発明のゲル状栄養組成物の製造方法は、本発明の目的から逸脱しなければ、特には限定されず一般な方法を使用できる。
例えば、各種原料を水に投入し、プロペラ撹拌しながら加温し充分に溶解させる。ゲル化剤の溶解温度と蛋白質の変性温度を考慮し、ゲル化剤を60℃以上、好ましくは75℃以上、最も好ましくは90℃以上の条件で溶解した後に、70℃以下まで冷却し蛋白質原料を溶解すると良い。最終的に水分調整し、可能であれば均質化を行った方が蛋白質成分の均質性から好ましい。均質化のための機械、条件は特に限定されないが、例えば、高圧ホモジナイザーを用いて、3〜75MPaで均質化する。好ましくは10MPa以上、より好ましくは30MPa以上で、処理回数は2回以上が好ましい。また、菌による腐敗を避けるための加熱滅菌処理を行う必要がある。加熱滅菌の方法は、通常2つの方法が行われる。1つは調合液を短時間で加熱滅菌した後に、無菌的に密封可能容器に充填するUHT・無菌充填法であり、もう1つは、密封可能容器に充填した後に長時間加熱滅菌するレトルト法であり、そのいずれでも構わない。
一般的にはレトルト殺菌で製造されるが、レトルト法は長時間加熱されるため、熱によるゲル状栄養組成物へのダメージが過酷であり、風味の悪化や分離や凝集が起きたりゲルが硬くなったりしやすい。しかし、本発明のゲル状栄養組成物は、レトルト法によっても、良質な蛋白質を高濃度で含み、適切なゲルの破断強度であり、かつ風味が良好なゲル状栄養組成物を得ることができる。
また、レトルト法は、UHT・無菌充填法とは異なり、滅菌後に均質化処理を行うことができないため、凝集物や沈殿物を再分散できず、レトルト法の方が良好な品質を保つために高度な技術が求められる。レトルト滅菌条件は、滅菌されうる条件ならいずれでも構わないが、一般的に110〜130℃で1分〜2時間である。本発明の効果を発揮し易いレトルト滅菌条件は、110〜120℃で15分〜2時間であり、さらに発揮し易い条件は、110〜115℃で30分〜1時間である。また、加熱による局所的な変質や焦げを抑制するため、回転または揺動または摺動させながら滅菌することが望まれる。
以下に具体例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。
本発明を具体例に基づいてさらに詳細に説明する。
(蛋白質含有量の測定)
本発明の蛋白質含有量の測定は、ケルダール法を用いて窒素量を測定し、窒素−蛋白質換算係数を6.25として算出して行った。
(カルシウム含有量の測定)
本発明のカルシウム含有量の測定は、原子吸光光度法もしくは誘導結合プラズマ発光分析法により算出して行った。
(アミノ酸スコアの測定)
本発明でのアミノ酸スコアの測定は、トリプトファンは高速液体クロマトグラフ法を用い、その他のアミノ酸はアミノ酸自動分析法を用いて、すべてのアミノ酸含量を測定し、アミノ酸スコアを算出した。
(風味の評価)
本発明の風味の評価方法は、5名(年齢25〜60才の男性3名、女性2名)のパネルにより試料のゲルの試食を実施し、風味を官能的に評価した。
記号;評価基準
○;蛋白質特有の腐敗臭や苦味がなく良好と5名全員が評価した
△;蛋白質特有の腐敗臭や苦味がなく良好と1〜4名が評価した
×;蛋白質特有の腐敗臭や苦味がなく良好と評価した人がいなかった
(外観の状態及び食感均一性の評価)
外観の状態及び食感均一性の評価は、以下を基準として評価した。
記号;評価基準
○;分離や凝集が無く均一な状態である
△;分離または凝集があるが、その程度はわずかであり飲食可能
×;分離または凝集があり、飲食に適さない
(破断強度)
本発明のゲルの破断強度の測定方法は、直径5〜7cm、高さ25mmの容器に充填し、20℃で12時間以上放置したゲルに、直径1.6cmの円筒形プランジャーを圧縮速度1.0mm/秒でゲル中に進入させ、その破断点の応力を測定した。試験は1試料につき4回行い、その平均値で示した。測定値は荷重応力(g)として得られ、それを単位N/mに換算したものを評価に用いた。測定に使用した機器はYAMADEN RHEONER RE−3305(株式会社山電社製)である。
(ゲルの破断距離)
本発明のゲルの破断強度の測定方法は、直径5〜7cm、高さ25mmの容器に充填し、20℃で12時間以上放置したゲルに、直径1.6cmの円筒形プランジャーを圧縮速度1.0mm/秒でゲル中に進入させ、その破断するまでの進入距離を測定した。試験は1試料につき4回行い、その平均値で示した。測定に使用した機器はYAMADEN RHEONER RE−3305(株式会社山電社製)である。
(破断後の応力低下率)
本発明の破断後の応力低下率の測定方法は、直径5〜7cm、高さ25mmの容器に充填し、20℃で12時間以上放置したゲルに、直径1.6cmの円筒形プランジャーを圧縮速度1.0mm/秒でゲル中に進入させ、その破断点の応力に対する、破断後の応力の低下率(%)を測定した。試験は1試料につき4回行い、その平均値で示した。
(原材料)
実施例及び比較例に用いた原材料の詳細を次に示す。
MCI:総合乳蛋白質(カゼイン:ホエイ=90:10)
「ミルカMCI80」{日本新薬(株)製}
MCI:総合乳蛋白質(カゼイン:ホエイ=92:8)
「PRODIET85B」{サンブライト(株)製}
MPC:総合乳蛋白質(カゼイン:ホエイ=80:20)
「MPC80」{DMVジャパン(株)製}
カゼインNa:「インスタンラックS」{中央商工(株)製、商品名}
分離大豆蛋白質:「SUPRO710」{デュポン株式会社(株)ソレイ事業部製}
乳ホエイ蛋白質:「ラクプロダン80」{アーラ・フーズ・イングレディエンツ・ジャパン(株)製、商品名}
上白糖:「精製上白糖ES」{塩水港精糖(株)製}
スクラロース製剤「サンスイートSU−200」{三栄源エフエフアイ(株)製}
寒天:「伊那寒天M−8」{伊那食品工業(株)製}
脱アシル型ジェランガム:「ケルコゲル」{三栄源エフエフアイ(株)製}
κカラギーナン:「カラギニンCSK−1」{三栄源エフエフアイ(株)製}
香料製剤:「カスタードフレーバー」{小川香料(株)製}
(実施例1)
本発明のゲル状栄養組成物の代表例である実施例1のゲル状栄養組成物の製造方法は以下の通りである。
寒天0.4質量%を、水80質量%に分散させたあと、95℃以上まで加熱することで該寒天を溶解させ、60℃まで降温させた。精密濾過により脱脂乳からホエイ蛋白質の一部が除去されてできる総合乳蛋白質MCI(カゼイン:ホエイ=90:10)9.21質量%及び上白糖6.75質量%を、ゆっくりと、溶解させた寒天液に投入し、充分に攪拌溶解させ、さらに、カスタードフレーバー0.1質量%を加えた。最後に、温水で全量を100質量%に補水し、全量を2000gとした。この液を、直径5〜7cm、高さ25mmの容器に充填密封し、115℃30分間のレトルト殺菌(加熱後15分間冷却)を行った(参照:表1の配合表)。
(実施例1の評価)
実施例1の評価の結果を表1に示す。
蛋白質含量は7質量%であり、アミノ酸スコアは100である。また、風味は5名全員が良好(○)と評価し、状態(外観)も分離や凝集が無く均一な状態(○)であった。ゲルの破断強度は、2151N/mであり、破断後の応力低下率も20%と嚥下性が良好な飲食に適した物性であった。
(実施例2の製造及び評価)
表1に記載の配合量に従い、実施例1と同様の製造方法により、実施例2のゲル状栄養組成物を製造した。
実施例2の評価の結果を表1に示す。
蛋白質含量は9質量%であり、アミノ酸スコアは100である。また、風味は5名全員が良好(○)と評価し、状態(外観)も分離や凝集が無く均一な状態(○)であった。ゲルの破断強度は3450N/mであり、破断後の応力低下率も25%と嚥下性が良好な飲食に適した物性であった。よって、総合乳蛋白質の量を変えても良好な栄養組成物が得られた。
(実施例3の製造及び評価)
表1に記載の配合量に従い、実施例1と同様の製造方法により、実施例3のゲル状栄養組成物を製造した。なお、実施例1とは異なり、上白糖ではなく、スクラロース製剤を使用した。
実施例3の評価の結果を表1に示す。
蛋白質含量は12質量%であり、アミノ酸スコアは100である。また風味は5名中5名が良好(○)と評価し、状態(外観)も分離や凝集が無く均一な状態(○)であった。ゲルの破断強度は5199N/mであり、破断後の応力低下率も20%と嚥下性が良好な飲食に適した物性であった。よって、総合乳蛋白質の量及び糖類の種類を変えても良好な栄養組成物が得られた。
(実施例4の製造及び評価)
表1に記載の配合量に従い、実施例2と同様の製造方法により、実施例4のゲル状栄養組成物を製造した。なお、実施例2とは異なり、寒天ではなく、脱アシル型ジェランガムを使用した。
実施例4の評価の結果を表1に示す。
蛋白質含量は9質量%であり、アミノ酸スコアは100である。また風味は5名全員が良好(○)と評価し、状態(外観)も分離や凝集が無く均一な状態(○)であった。ゲルの破断強度は4047N/mであり、破断後の応力低下率も40%と嚥下性が良好な飲食に適した物性であった。よって、総合乳蛋白質の量及びゲル化剤の種類を変えても良好な栄養組成物が得られた。
(実施例5の製造及び評価)
表1に記載の配合量に従い、実施例1と同様の製造方法により、実施例5のゲル状栄養組成物を製造した。なお、実施例1とは異なり、寒天ではなく、κカラギーナンを使用した。
実施例5の評価の結果を表1に示す。
蛋白質含量は7質量%であり、アミノ酸スコアは100である。また、風味は5名全員が良好(○)と評価し、状態(外観)も分離や凝集が無く均一な状態(○)であった。ゲルの破断強度は3450N/mであり、破断後の応力低下率も30%と嚥下性が良好な飲食に適した物性であった。よって、ゲル化剤の種類を変えても良好な栄養組成物が得られた。
(実施例6の製造及び評価)
表1に記載の配合量に従い、実施例2と同様の製造方法により、実施例6のゲル状栄養組成物を製造した。なお、実施例2とは異なり、総合乳蛋白質中のカゼインとホエイ蛋白質の比率を90:10ではなく、92:8とした。
実施例6の評価の結果を表1に示す。
蛋白質含量は9質量%であり、アミノ酸スコアは100である。また、風味は5名全員が良好(○)と評価し、状態(外観)も分離や凝集が無く均一な状態(○)であった。ゲルの破断強度は3332N/mであり、破断後の応力低下率も29%と嚥下性が良好な飲食に適した物性であった。よって、総合乳蛋白質中のカゼインとホエイ蛋白質の比率を90:10から92:8に変えても良好な栄養組成物が得られた。
(比較例1の製造及び評価)
表1に記載の配合量に従い、実施例1と同様の製造方法により、比較例1のゲル状栄養組成物を製造した。なお、実施例1とは異なり、総合乳蛋白質中のカゼインとホエイ蛋白質の比率を90:10ではなく、80:20(脱脂乳から乳糖やミネラルが限外濾過により除去されるが、ホエイ蛋白質は保持されたままのMPC)とした。
比較例1の評価の結果を表1に示す。
蛋白質特有の腐敗臭や苦味がなく良好と1〜4名が評価(△)し、状態(外観)も分離や凝集があり、飲食に適さない状態(×)であった。さらに、ゲルの破断強度は13341N/mであり、非常に硬く飲食に適さない物性であった。
(比較例2の製造及び評価)
表1に記載の配合量に従い、実施例1と同様の製造方法により、比較例2の栄養組成物を製造した。なお、実施例1とは異なり、総合乳蛋白質ではなく、ガゼインNa(酸沈澱により分画されたカゼインを、炭酸Naや水酸化Naで中和して得られたもの)を使用した。
比較例2の評価の結果を表1に示す。
蛋白質特有の腐敗臭や苦味がなく良好と1〜4名が評価(△)し、ゲル化しなかった。さらに、蛋白質1g当たりのカルシウム含量(mg)は0であった。ゲル化せず、飲食に適さない物性であった。
(比較例3の製造及び評価)
表1に記載の配合量に従い、実施例5と同様の製造方法により、比較例3のゲル状栄養組成物を製造した。なお、実施例5とは異なり、総合乳蛋白質ではなく、分離大豆蛋白質を使用した。
比較例3の評価の結果を表1に示す。
蛋白質特有の腐敗臭や苦味がなく良好と評価した人がいなかった(×)、状態(外観)も分離や凝集があり、飲食に適さない状態(×)であった。さらに、ゲルの破断強度は1299N/mであり、ゲル状としては柔らかく飲食に適さない物性であった。加えて、蛋白質1g当たりのカルシウム含量(mg)が非常に低かった。
(比較例4、5及び6の製造及び評価)
表1に記載の配合量に従い、実施例1と同様の製造方法により、比較例4のゲル状栄養組成物を製造した。なお、実施例1とは異なり、総合乳蛋白質ではなく、乳ホエイ蛋白質を使用した。なお、比較例5は、比較例4とは異なり、寒天ではなく、脱アシル型ジェランガムを使用した。また、比較例6は、比較例4とは異なり、寒天ではなく、κカラギーナンを使用した。
比較例4、5及び6の評価の結果を表1に示す。
比較例4、5及び6のいずれもが、蛋白質特有の腐敗臭や苦味がなく良好と評価した人がいなかった(×)。さらに、ゲルの破断強度が過剰であり硬すぎ、飲食に適さない物性であった。加えて、ゲル化剤は、物性に影響を与えないことを確認した。
(結論)
上記実施例及び比較例により、良質な蛋白質を高濃度で含み、適切なゲルの破断強度であり、かつ風味が良好なゲル状栄養組成物は、実施例1〜6のゲル状栄養組成物であった。
すなわち、ゲル化剤及び総合乳蛋白質を含むゲル状栄養組成物であって、アミノ酸スコアが80〜100であり、組成物中の蛋白質含量が6〜20質量%であり、ゲルの破断強度が1800〜10000N/mであり、並びに該総合乳蛋白質中のカゼインとホエイ蛋白質の比率が83:17〜100:0であることを特徴とするゲル状栄養組成物は、良質な蛋白質を高濃度で含み、ゲルの破断強度が適切で、かつ風味が良好なゲル状栄養組成物である。
良質な蛋白質を高濃度で含み、適切なゲルの破断強度であり、かつ風味が良好なゲル状栄養組成物を提供できる。

Claims (4)

  1. 寒天、ジェランガム、又はカラギーナン並びに総合乳蛋白質を含むゲル状栄養組成物であって、
    アミノ酸スコアが80〜100であり、
    該組成物中の蛋白質含量が6〜20質量%であり、ここで、該蛋白質は総合乳蛋白質であり、
    ゲルの破断強度が1800〜10000N/mであり、並びに
    該総合乳蛋白質中のカゼインとホエイ蛋白質の比率が90:10〜92:8である、
    ことを特徴とするゲル状栄養組成物。
  2. 蛋白質1g当たりのカルシウム含量(mg)は、7〜200mgであることを特徴とする請求項1に記載のゲル状栄養組成物。
  3. 前記ゲルの破断強度が、1900〜6000N/mであることを特徴とする請求項1又は2に記載のゲル状栄養組成物。
  4. 前記総合乳蛋白質は、精密濾過により脱脂乳から得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載のゲル状栄養組成物。
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