JP6326862B2 - 膜電極接合体、燃料電池、及び膜電極接合体の製造方法 - Google Patents
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Description
また、膜電極接合体では、電解質膜において触媒層が形成された領域と、触媒層が形成されない領域の厚みの差によるガスの漏洩、及び電解質における触媒層が形成されない領域の集中的な劣化を防ぐため、電解質膜上、触媒層の外側にガスケット部材を設けた構成が頻繁に見られる。
本発明は、電解質膜の露出がなく、耐久性に優れ、且つ外観や触媒と電解質膜との密着に問題のない膜電極接合体を提供することを目的とする。
例えば、触媒層は、表面の周縁部に、当該触媒層の中央から離れる方向に向かって高さが下がる階段状の段差を有する。ガスケット部材は、触媒層の階段状の段差のうち少なくとも一段の上に重なる。具体的には、触媒層は、電解質膜の表面上で枠状に配置される第一の触媒層部と、第一の触媒層部の枠内に配置される第二の触媒層部とを備える。第二の触媒層部及びガスケット部材はそれぞれ、第一の触媒層部の上に重なる。別の視点では、触媒層の周縁部には、低位の段となる第一の触媒層部と、高位の段となる第二の触媒層部から成る高さ方向の段差があり、ガスケット部材が第一の触媒層部の上に重なる。
図1に、本実施形態に係る膜電極接合体を用いた高分子形燃料電池の構成の一例を示す。
図1に示されるように、高分子形燃料電池は、膜電極接合体1と、拡散層2、3と、セパレータ4、5とを備える。
図2に示されるように、膜電極接合体1では、電解質膜10の両面に燃料極触媒層6及び空気極触媒層7が形成されている。このとき、燃料極触媒層6及び空気極触媒層7は、第一の触媒層部61、71、及び第二の触媒層部62、72により形成されている。また、燃料極触媒層6及び空気極触媒層7の周縁部を囲むように隙間を空けずにガスケット部材8、9が配置されている。
上記の触媒粒子には、白金やパラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素の他、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属又はこれらの合金、酸化物や複酸化物等が使用できる。触媒粒子は単体で用いても良く、導電性担体に担持させて用いるとなお良い。導電性担体は、微粒子状で導電性及び化学的耐性を有するものであり、一般的にカーボン粒子が用いられる。例えば、カーボンブラックやグラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレン等が挙げられる。カーボン粒子の粒径は10〜1000nm程度が好ましい。10nmより小さいと電子伝導パスが形成されにくくなり、また1000nmより大きいと燃料極触媒層6及び空気極触媒層7の厚みが増して抵抗が増加してしまう。
ガスケット部材8、9には、厚みが均一であること、及び圧力を加えられた際の変形が小さいことが求められ、フィルムから成るものが好適である。フィルムから成るガスケット部材とは、フィルムの少なくとも一方面に粘着層又は接着層を備えるものである。なお、一方面にのみ粘着層又は接着層を備えている場合、他方面に離型層を備えていても良い。粘着層又は接着層は、フィルムと電解質膜10の間に具備され、界面のガスシール性を向上させる。離形層は、例えばガスケット部材を貼り付けた後に、このガスケット部材をマスクとして第二の触媒層部を湿式塗布形成す場合に、ガスケット部材表面に付着した塗布された触媒スラリーの除去を容易にする。ガスケット部材8、9の材料としては、圧力を加えられても変形しにくいものが良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド等の高分子材料が挙げられる。これらを単独で用いても良く、また組み合わせて用いても良い。
図3に示すように、第一の触媒層部61、71は、電解質膜10上の、触媒層が形成されるべき領域Xの輪郭(枠)を描くように、その内側「x」mmから外側「y」mmの領域に形成される。例えば、「x」は、第二の触媒層部62、72が第一の触媒層部61、71の上に乗り上げ可能な幅の長さである。また、「y」は、ガスケット部材8、9が第一の触媒層部61、71の上に乗り上げ可能な幅の長さである。すなわち、「x+y」は、第一の触媒層部61、71により形成された枠の幅の長さである。ここでは、枠の形状を四角形(正方形)としているが、実際には四角形(正方形)に限定されない。「x」及び「y」の範囲はともに0.05〜0.5mmである。0.05mmより小さいと所定の位置にのみ精度良く触媒層スラリーを塗布することが難しい。また、0.5mmより大きいと塗布スラリー量が多く電解質膜の膨潤、乾燥に伴う寸法変化が無視できないほどに大きくなり、膜電極接合体1の歪みを生じる。また、空気極は燃料極より過電圧が大きいため、空気極に燃料極より多量の触媒層を形成する構成も知られる。このとき、「x」及び「y」の範囲はともに、燃料極において0.05〜0.35mm、空気極において0.15〜0.5mmであると、より好ましい。燃料極では、固形分濃度の低いスラリーを用いる必要があり、x+y=0.7mmを超える範囲に塗布すると溶媒による膨潤が起こりやすい。また、空気極では、燃料極と同じ機構を用いて、より固形分濃度の高いスラリーを、x+y=0.3mmを下回る範囲に塗布することは難しいが、x+y=0.3mmであれば特別な工夫を施さずとも、容易に形成することができる。すなわち、「x」及び「y」については、燃料極において0.05〜0.35mm且つx+y≦0.7mm、空気極において0.15〜0.5mm且つ0.3mm≦x+yの条件を満たすようにする。
例えば、図4に示されるように、電解質膜10に、第一の触媒層部61、71を形成した後、第二の触媒層部62、72を形成し、ガスケット部材8、9を貼り合せることで、膜電極接合体1を製造する。若しくは、電解質膜10に第一の触媒層部61、62を形成した後、先にガスケット部材8、9を設け、その後に第二の触媒層部62、72を形成することで、膜電極接合体1を製造しても良い。
第一の触媒層部61、71及び第二の触媒層部62、72を形成するためのスラリーの溶媒又は分散媒は、特に限定されない。好ましくは、電解質を溶解又は分散できるものが良い。一般的には、水、アルコール類、ケトン類、アミン類、エステル類、エーテル類、グリコールエーテル類や、これらを種々の割合で混合したものが良く用いられる。
(変形例)
上記の実施形態では、燃料極触媒層6及び空気極触媒層7は、第一の触媒層部61、71及び第二の触媒層部62、72を用いてそれぞれ2段の段差を形成しているが、実際には第三の触媒層部等を用いて3段以上の段差を形成しても良い。この場合、高位の段となる触媒層部は、直前の低位の段となる触媒層部の上に重なるものとする。すなわち、燃料極触媒層6及び空気極触媒層7はそれぞれ、複数の触媒層部により階段状の段差を形成する。ガスケット部材8、9は、当該階段状の段差のうち、少なくとも一段の上に乗り上げていれば良い。
(中間物A)
電解質膜10の両面の中央部に、サイズ50mm×50mmの正方形の輪郭を描くように、ディスペンサ印刷法により触媒層用スラリーを塗布し、更に80℃の炉内で乾燥させ、第一の触媒層部61、71を形成した。電解質膜10として、デュポン(登録商標)の「Nafion(登録商標)211CS」を用いた。サイズ50mm×50mmの正方形の輪郭は、触媒層が形成されるべき領域Xの輪郭である。塗布の線幅(第一の触媒層部61、71の枠幅)「x+y」は0.5mmであり、50mm×50mmの正方形の外側「y」は0.25mm、内側「x」は0.25mmである。これを中間物Aとする。
中間物Aの中央部50mm×50mmの範囲に、ドクターブレードコート法により触媒層用スラリーを塗布し、更に80℃の炉内で乾燥させ、第二の触媒層部62、72を形成した。その後、ガスケット部材8、9として、50mm×50mmの正方形の開口部を有する粘着層付PETフィルムを、この開口部の中心が中間物Aの両面中央部50mm×50mmの範囲の中心に位置するように貼り付けたものを実施例1とする。実施例1では、第一の触媒層部61、71が中間物Aの中央部50mm×50mmの範囲の外側「y」に0.25mmはみ出しており、第二の触媒層部62、72が中間物Aの中央部50mm×50mmの範囲に収まっているため、触媒層6、7は階段状の段差を形成している。
また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルムに、触媒層スラリーを塗布し乾燥させたものを転写基材として、中間物Aの両面中央部50mm×50mmの範囲に、熱プレスにより第二の触媒層部62、72を形成した。その後、ガスケット部材8、9として、50mm×50mmの正方形の開口部を有する粘着層付PETフィルムを、この開口部の中心が中間物Aの両面中央部50mm×50mmの範囲の中心に位置するように貼り付けたものを実施例2とする。実施例2では、第一の触媒層部61、71が中間物Aの中央部50mm×50mmの範囲の外側「y」に0.25mmはみ出しており、第二の触媒層部62、72が中間物Aの中央部50mm×50mmの範囲に収まっているため、触媒層6、7は階段状の段差を形成している。
上記の電解質膜10の両面に、ガスケット部材8、9として、50mm×50mmの正方形の開口部を有する粘着層付PETフィルムを貼り付けた。このガスケット部材8、9付き電解質膜10に、ドクターブレードコート法により触媒層用スラリーを塗布し、更に80℃の炉内で乾燥して第二の触媒層部62、72を形成し、得られたものを比較例1とする。比較例1は、中間物Aではなく電解質膜10に直接、触媒層用スラリーを塗工・乾燥して第二の触媒層部62、72を形成しているため、第一の触媒層部61、71を有していない。すなわち、比較例1では、触媒層6、7は階段状の段差を形成していない。
エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルムに、触媒層スラリーを塗布し乾燥させたものを転写基材として、上記の電解質膜10の両面中央部50mm×50mmの範囲に、熱プレスにより第二の触媒層部62、72を形成した。その後、ガスケット部材8、9として、50mm×50mmの正方形の開口部を有する粘着層付PETフィルムを、この開口部の中心が電解質膜10の両面中央部50mm×50mmの範囲の中心に位置するように貼り付けたものを比較例2とする。比較例2は、中間物Aではなく電解質膜10に直接、熱プレスにより第二の触媒層部62、72を形成しているため、第一の触媒層部61、71を有していない。すなわち、比較例2では、触媒層6、7は階段状の段差を形成していない。
触媒層6、7の周縁部を光学顕微鏡で確認すると、実施例1及び2では触媒層6、7とガスケット部材8、9との間に、電解質膜10の露出部がなかったが、比較例1及び2では最も幅の狭い部分でも0.08mmの間隙があり、電解質膜10の露出が確認できた。なお、実施例1及び2でも、表面側(電解質膜10と逆側)では触媒層6、7とガスケット部材8、9との間に間隙が見られた。
Claims (10)
- 電解質膜の両面に対向して触媒層が配置され、該触媒層の周囲にガスケット部材が配置された膜電極接合体であって、
前記触媒層の表面の周縁部の形状は、前記触媒層の中央から離れる方向に向かって高さが下がる段差を有する階段状の形状であり、
前記ガスケット部材は、前記触媒層の表面の周縁部の上に重なり、
前記触媒層は、前記電解質膜の表面上で枠状に配置され、前記階段状の段差の低位の段となる第一の触媒層部と、前記第一の触媒層部の枠内に配置され、前記階段状の段差の高位の段となる第二の触媒層部と、を備え、
前記第二の触媒層部と前記第一の触媒層部とが重なる部分の幅、及び前記ガスケット部材と前記第一の触媒層部とが重なる部分の幅は共に、0.05mm以上0.5mm以下の範囲内であり、
前記第一の触媒層部と前記第二の触媒層部は材料組成が同じであることを特徴とする膜電極接合体。 - 前記ガスケット部材は、前記触媒層の階段状の段差のうち少なくとも一段の上に重なることを特徴とする請求項1に記載の膜電極接合体。
- 前記電解質膜の両面に配置された前記第一の触媒層部のうち、燃料極側に配置された前記第一の触媒層部と、空気極側に配置された前記第一の触媒層部とは、それぞれ枠の幅の許容範囲が異なることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の膜電極接合体。
- 前記第一の触媒層部の高さは、前記第二の触媒層部の高さの3分の2以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の膜電極接合体。
- 前記ガスケット部材は、少なくとも一方面に粘着層又は接着層を備えるフィルムから成ることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の膜電極接合体。
- 前記電解質膜の端部は、露出していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の膜電極接合体。
- 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の膜電極接合体を用いた燃料電池。
- 電解質膜の両面に対向して触媒層が配置され、該触媒層の周囲にガスケット部材が配置された膜電極接合体の製造方法であって、
前記触媒層の表面の周縁部の形状が前記触媒層の中央から離れる方向に向かって高さが下がる段差を有する階段状の形状となるように前記触媒層を配置する工程と、
前記触媒層の表面の周縁部の上に重なるように前記ガスケット部材を配置する工程と、を備え、
前記触媒層を配置する工程では、前記電解質膜の表面上で枠状に配置され、前記階段状の段差の低位の段となる第一の触媒層部と、前記第一の触媒層部の枠内に配置され、前記階段状の段差の高位の段となる第二の触媒層部とを備える前記触媒層を配置し、
前記第二の触媒層部及び前記ガスケット部材は共に、前記第一の触媒層部の上に重なり、
前記第二の触媒層部と前記第一の触媒層部とが重なる部分の幅、及び前記ガスケット部材と前記第一の触媒層部とが重なる部分の幅は共に、0.05mm以上0.5mm以下の範囲内であり、
前記第一の触媒層部と前記第二の触媒層部は材料組成が同じであることを特徴とする膜電極接合体の製造方法。 - 前記触媒層の前記階段状の段差のうち少なくとも一段の上に乗り上げるように前記ガスケット部材を配置する工程と、を備えることを特徴とする請求項8に記載の膜電極接合体の製造方法。
- 前記第一の触媒層部は、触媒層インクの塗布及び乾燥により形成されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の膜電極接合体の製造方法。
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