以下、本発明を詳細に説明する。一般に、乗用車や建設機械等のディーゼルエンジンに代表される内燃機関及びボイラやガスタービンなどの外燃機関から排出される排ガスは、化学量論量よりも過剰な酸素雰囲気であることが多い。また、これら内燃機関及び外燃機関からの排ガスには、CO,HCが一般に含まれている。本発明において、化学量論量とは、排ガス中に含まれるO2及びCO,HCが互いに過不足無く反応する場合の、O2,CO,HCの量を意味する。以下に詳細に説明する。
排ガス中にO2,CO及びHCが含有されている場合に、これら3種のガスにおける反応として下記化学式(1)、(2)が考えられる。
2CO + O2 →2CO2 …化学式(1)
CnHm + (n + m/4)O2 → nCO2 + (m/2)H2O …化学式(2)
例えば、排ガス中にCO及びC3H6がそれぞれ300ppm存在する場合、化学式(1)及び(2)の反応が進行する為にはO2がそれぞれ150ppm、1350ppm必要である。化学量論量よりも過剰な酸素雰囲気とは、CO,HCが全て酸化されうる酸素量であることを意味する。即ち排ガス中にCO及びC3H6がそれぞれ300ppm存在する場合、O2が1500ppm(=150ppm+1350ppm)よりも多い場合を意味する。
本発明者らは、鋭意検討した結果、排ガスがCO,HC浄化触媒に接触する前に、当該排ガス中のNOx又はHCの濃度を低減させると、当該CO,HC浄化触媒によって排ガス中のCO,HCが効果的に浄化されることを明らかにした。
排ガス中にNOxが共存すると、CO,HC浄化触媒のCO,HC浄化活性が低下する。これは、NOxが共存することでCO,HC浄化触媒によるCO,HC酸化反応が阻害されると考えられる。同様に、排ガス中にHCが共存すると、CO,HC浄化触媒のCO浄化活性が低下する。すなわち、HCが共存することでCO,HC浄化触媒によるCO酸化反応が阻害されると考えられる。
CO,HC浄化活性が低下する温度域は、CO,HC浄化触媒の種類によって異なるが、例えばCO,HC浄化触媒として白金(Pt)成分を使用した場合、当該温度域はおよそ300℃以下である。300℃以上ではNOx,HCが共存しても、CO,HC浄化活性が高い。従って、CO,HC浄化活性が低下する温度域では、排ガス中のNOx又はHCの濃度を一旦低減させた後に排ガスをCO,HC浄化触媒へ導入することで、CO,HC浄化活性の低下を抑制できる。排ガス温度が高まり、CO,HC浄化触媒のCO,HC浄化活性が向上すると、排ガス中のNOx又はHCの濃度を一旦低減させる必要は無くなる。即ち、CO,HC浄化活性が低下する温度域でのみ、排ガス中のNOx又はHCの濃度を低減させれば良い。
本発明の具体的な適用法としては、ディーゼルエンジン等の熱機関の始動時における排ガスのCO,HC浄化が考えられる。即ち、熱機関の始動時は、排ガス温度が低く、排ガス中にNOx,HCが共存することでCO,HC浄化触媒のCO,HC浄化活性が低下しやすい。従って、排ガス温度が低い場合には、排ガス中のNOx,HCの濃度を一旦低減させた後にCO,HC浄化触媒へ排ガスを導入することでCO,HC浄化が向上する。
低減対象となるNOxとしては、窒素と酸素からなるものであれば特に拘らない。例としては、NO,NO2,N2O及びN2O3等が挙げられる。低減対象となるHCとしては、水素と炭素からなるものであれば特に拘らない。例としては、CH4、C3H6、C2H4、C2H2及びC3H8等が挙げられる。
本発明に適用するCO,HC浄化触媒としては、CO,HC浄化性能を有する触媒であれば特に拘らない。しかし、CO,HC浄化触媒として、Al,Ce,Si,Ti及びZrから選ばれた少なくとも1種を含む無機化合物の多孔質担体にCO,HC浄化触媒成分を担持させ、さらに当該多孔質担体上にPt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru及びOsから選ばれた少なくとも1種を含む触媒活性成分を担持させると、排ガス中のCO,HCが効果的に浄化される。
ここで触媒活性成分として使用するPt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru及びOsはCO,HC酸化能力が高く、十分高い温度ではCO,HC浄化性能が高い。Pt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru及びOsの中から二元素以上組み合わせても良い。二元素以上組合せることで得られる合金が高い性能を有すると考えられる。
担体成分として使用するAl,Ce,Si,Ti及びZrの酸化物は高い比表面積が得られるため、触媒活性成分の分散度を向上させてCO、HC浄化性能を高める効果がある。特にAlの酸化物は耐熱性も高く、高いCO,HC浄化性能を維持できると考えられる。またCeを含む無機酸化物は高いOSC能(酸素吸蔵放出能(Oxygen Storage Capacity)を有しており、触媒表面上への酸素の蓄積量が増加することでCO,HCの酸化反応を促進する効果があると考えられる。
排ガス中のNOx濃度を低減させる手法として、排ガスがCO,HC浄化触媒に接触する前に、排ガスをNOx吸着層へ接触させる方法が考えられる。この方法を実現するためには、CO,HC浄化触媒の前段にNOx吸着層を配置すれば良い。その具体例としては、例えば、CO,HC浄化触媒成分を担持する担体から排ガス流通方向における上流側にNOx吸着材を設置するものや、CO,HC浄化触媒成分を担体に担持させ当該CO,HC浄化触媒成分の上層にNOx吸着層を積層させるもの等が考えられる。すなわち、まずNOx吸着層に排ガスを接触させ、その後にCO,HC浄化触媒成分に排ガスを接触させることが可能な構成であれば良い。なお、上記したCO,HC浄化触媒成分にNOx吸着層を積層させる手法を適用すれば、CO,HC浄化触媒とNOx吸着層を一体化でき、コンパクト化できるといったメリットがある。
また、排ガスがCO,HC浄化触媒に接触する前に、排ガスをNOx吸着層へ接触させることで、排ガス中にすす等の粒子状物質が存在した場合、粒子状物質の一部がNOx吸着層で一旦捕捉される。その場合、CO,HC浄化触媒への粒子状物質の付着が抑制される為、CO,HC浄化触媒の活性を高度に維持することができる点もメリットとなる。
本発明においては、排ガスがCO,HC浄化触媒に接触する前に、触媒等を利用して排ガス中のNOxを分解除去しても良いが、分解しなくても吸着等によりNOx濃度を低減すれば良い。従って、NOxの吸着材又は吸着層を利用する場合には、NOxを分解する為の装置が不要となり、排ガス浄化システムの簡便化及びコスト低減につながる。
ところで、上記のようにNOx吸着層を設けた場合、エンジン始動時において排ガス温度が低い場合はNOx吸着層へNOxが吸着するが、排ガス温度が高まるとNOx吸着層に吸着していたNOxが放出される。従って、NOx吸着層からのNOx放出温度が、CO,HC酸化触媒がNOx共存下でも十分高い性能を示す温度よりも高いことが好ましい。NOxを吸着する成分を選定することでNOx放出温度を制御することができる(例えば、CO,HC浄化触媒としてPt成分を使用した場合には、成分選定によりNOx放出温度が300℃を超えるように制御することが好ましい)。
また、CO,HC酸化触媒の後段(排ガス流通方向の下流側又はCO,HC酸化触媒成分の下層)に、NOx浄化触媒を設けると、排ガス中のNOxの浄化が可能となる為、好適である。NOxを浄化する手段については拘らない。排ガス中に残留するCO又はHCを還元剤としてNOxを浄化することが考えられる。更には、CO,HC酸化触媒と接触した排ガスがNOx浄化触媒に接触するまでの間にNH3又は尿素と接触させることで、当該NH3又は尿素を還元剤としてNOxを浄化することも考えられる。この場合の具体的な構成としては、NOx浄化触媒の前段にNH3又は尿素の噴出孔を設け、当該噴出孔からNH3又は尿素を吹き込むものがある。
NOx吸着層として使用する成分は、NOxを吸着できるものであれば特に拘らないが、Pt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru及びOsを実質的に含まず、Ce,Zr,La,Al,Si及びTiから選ばれた少なくとも1種を含むことでNOx吸着性能を高めることができる。Pt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru及びOsを実質的に含めないことでNOx吸着層に費やすコストを大幅に低減できるといったメリットがある。ここで実質的というのは、NOx吸着層におけるNOx吸着作用に影響を及ぼさない程度の添加量であることを意味しており、具体的には100ppm以下の含有量である。本発明では、排ガスがCO,HC浄化触媒に接触する前に、排ガス中のNOxを分解除去する必要が必ずしも無いので、NOx吸着層にPt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru及びOsが実質的に含有されていなくても十分高いCO,HC浄化性能が発揮できる。
上記とは逆に、Pt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru又はOsをNOx吸着層へ含有させた場合、Pt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru又はOsはNOを酸化する能力を有する為、NOx吸着層に接触したガスはNO2を多く含有すると予想される。その場合、後段のCO,HC酸化触媒へNO2が接触しやすくなり、CO,HC酸化能力が低下する可能性がある。すなわち、Pt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru又はOsを実質的に含まないNOx吸着層を利用すれば、NO2に起因したCO,HC酸化能力の低下を抑制できる。
更に、Pt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru又はOsをNOx吸着層へ含有した場合、排ガス中の水分量が多いと、NOx吸着層で硝酸分が生成し、NOxとして脱離し難くなる可能性も考えられる。
Ce,Zr又はLaを含む酸化物は一般に塩基性を有していると考えられるため、酸性分子であるNOxを吸着しやすいと考えられる。また、Al,Si又はTiの酸化物は高い比表面積が得られる為、NOxを吸着する点が多く得られると考えられる。Ce,Zr,Laから選ばれた少なくとも1種とAl,Si,Tiから選ばれた少なくとも1種を組み合わせることで更にNOx吸着性能が高まる。比表面積としては50m2/g以上が好ましい。
NOxを吸着する材料として、ゼオライト材も考えられる。ゼオライト材種には特に拘らないが、βゼオライト、Y型ゼオライト、ZSM-5、モルデナイト、フェリエライト等が挙げられる。吸着を狙うNOx種によって分子径が異なり、NOxが脱離する温度も異なる為、それに合わせて使用するゼオライト種を選定することが好ましい。ゼオライト材を使用する場合も、Pt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru及びOsを実質的に含まないことが望ましい。
排ガス中のHC濃度を低減させる手法として、CO,HC浄化触媒が排ガスに接触する前に、排ガス中のHCの一部又は全てをCOに転換させる手段を設けることが考えられる。HCをCOに転換したことで、CO,HC浄化触媒に流入するCO濃度は高まるが、HC濃度が低い為、結果としてCO浄化活性が高まる。
排ガス中のHCの一部又は全てをCOに転換させる手段としては、例えば、CO,HC浄化触媒の前段にHCからCOへ転換する触媒(転換触媒)を設置するものや、CO,HC浄化触媒の上層にHCからCOへ転換する触媒層(転換触媒層)を設けるもの等が考えられる。なお、後者の手法を適用すれば、CO,HC浄化触媒とHCからCOへ転換する触媒層を一体化でき、コンパクト化できるといったメリットがある。CO,HC浄化触媒が排ガスに接触する前に、排ガス中のHCを予め吸着するのみでは排ガス中のHCが浄化されない。従って後者の手法のようにHCからCOへ転換する触媒層を設けることが必要となる。
また、排ガスがCO,HC浄化触媒に接触する前に、排ガス中のHCの一部又は全てをCOに転換させる触媒へ接触させることで、排ガス中にすす等の粒子状物質が存在した場合、粒子状物質の一部がHCの一部又は全てをCOに転換させる触媒上で一旦捕捉される。これにより、CO,HC浄化触媒への粒子状物質の付着が抑制される為、CO,HC浄化触媒の活性を高度に維持することができる。
CO,HC浄化触媒の活性が低い温度領域(例えば、CO,HC浄化触媒としてPt成分を使用した場合には300℃以下)で、HCからCOへ転換できる触媒成分を使用することが望ましい。HCからCOへ転換する触媒成分を選定することで好適な転換温度領域を設定することができる。
CO,HC浄化触媒へ排ガス中の硫黄分(S分)が蓄積し、CO,HC浄化活性が低下することがある。この場合、S分をCO,HC浄化触媒から脱離させることでCO,HC浄化活性が回復することがある。S分をCO,HC浄化触媒から脱離させる際に排ガス中にHCよりもCOが多く存在すると、S分脱離が促進されることがある。従ってCO,HC浄化触媒が排ガスに接触する前に、排ガス中のHCの一部又は全てをCOに転換させておくとCO,HC浄化触媒からのS分脱離が促進される。
CO,HC浄化触媒と、NOx吸着層と、HCをCOへ転換する触媒層を組み合わせても良い。例えば、担体に担持されたCO,HC浄化触媒成分上へNOx吸着層をコートし、更にその上にHCをCOへ転換する触媒層をコートする手法が考えられる。NOx吸着層と、HCをCOへ転換する触媒層をコートする順序は特に拘らない。
HCをCOに転換する手段として、Pt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru及びOsを実質的に含まず、Mn,Fe,Co,Ni,Cu及びAgから選ばれた少なくとも1種を含む触媒を使用することが考えられる。Pt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru及びOsを実質的に含めないことでHCをCOへ転換する触媒層に費やすコストを大幅に低減できるといったメリットがある。また、Pt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru及びOsを、HCをCOへ転換する触媒層に含有した場合、排ガス中の水分量が多いと、HCをCOへ転換する触媒層で硝酸分が生成し、HCをCOへ転換する反応が進み難くなる可能性が考えられる。Mn,Fe,Co,Ni,Cu又はAgは排ガス中のHCと酸素からCOを得る反応に対して高い活性を有しているため、触媒成分として好適である。
熱機関のCO,HC浄化触媒成分としてPtを使用した場合、300℃以下の温度域でのCO,HC浄化活性が低く、従って熱機関の始動時において排ガスのCO,HC浄化が十分に行われない場合がある。その場合、上記NOx,HC低減手段に加えて、熱機関の始動時の燃焼制御により排ガスの温度を早く高めることで、更に高い効率でCO,HCを浄化できる。排ガスの温度を早く高める手段(温度上昇手段)については特に拘らない。例えば電気ヒーターを用いることができる。更に、熱機関の燃焼制御装置によってリタード燃焼又はポスト墳射させることにより、排ガス中の未燃分を増加させることで触媒反応による発熱を促進させ、CO,HC浄化触媒が活性化するまでの時間を短縮することができる。
CO,HC浄化触媒の多孔質担体として比表面積が高い酸化物を用いることでPt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru,Osが高分散化し、CO,HC浄化性能が高まる。特に、多孔質担体としてAlを含む酸化物を使用すると、安定して高いCO,HC浄化性能が得られる。本発明において用いる多孔質担体の比表面積は、30〜800m2/gの範囲が好ましく、特に50〜400m2/gの範囲が好ましい。
CO,HC浄化触媒の多孔質担体に担持させる触媒活性成分として、Pt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru及びOsから選ばれた2種以上を含有させると、特に熱劣化後のCO,HC浄化性能が高まる。理由は定かでないが、活性成分同士が合金化することで貴金属の凝集が抑制される為と考えられる。特に、PtとPdとの組合せ又はPtとRhとの組合せは耐熱性能が高まる。
多孔質担体における触媒活性成分のPt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru及びOsの合計担持量は、好ましくは、多孔質担体2mol部に対して元素換算で0.00005mol部〜1.0mol部であり、より好ましくは、0.0003mol部〜0.3mol部である。Pt,Pd,Rh,Au及びIrの合計担持量が0.00005mol部未満であると担持効果は不十分となり、一方、1.0mol部を越えると活性成分自体の比表面積が低下し、さらに触媒コストが高くなる。ここで、「mol部」とは、各成分のmol数換算での含有比率を意味する。例えば、A成分2mol部に対してB成分の担持量が1mol部とは、A成分の絶対量の多少に関わらず、mol数換算でA成分が2に対し、B成分が1の割合で担持されていることを意味する。
CO,HC浄化触媒成分を担持させるための多孔質担体、またはNOx,HC吸着成分は、基材上に担持させてもよい。基材としては従来から使用されてきたコージェライト、Si-Al-Oからなるセラミックス又はステンレススチールなどの耐熱性金属基板などが適している。基材を用いる場合には、CO,HC浄化性能を向上させる観点から、多孔質担体の担持量は、基材1Lに対して50g以上300g以下であることが好ましい。50g以下であると貴金属の分散が低下し触媒活性が低下する。一方300g以上であると、基材がハニカム形状の場合にガス流路への目詰まりが発生し易くなる等の不具合が生じるようになる。
基材を用いたCO,HC浄化触媒の上層へ、NOx吸着層又はHCをCOへ転換する触媒層をコートする場合の上層コート量は、それぞれ基材1Lに対して5g以上150g以下であることが好ましい。5g以下であると、上層コートの効果が現れず、150g以上であると、反応ガスが下層のCO,HC浄化触媒へ到達しづらくなり、活性が低下する等の不具合が生じるようになる。
CO,HC浄化触媒、NOx吸着層、HCをCOへ転換する触媒層の調製方法としては、例えば、含浸法、混練法、共沈法、ゾルゲル法、イオン交換法、蒸着法等の物理的調製方法や化学反応を利用した調製方法等などを用いることができる。なかでも、化学反応を利用した調製方法を用いることで、触媒活性成分の原料と多孔質担体との接触が強固になり、触媒活性成分のシンタリング等を防止できる。
CO,HC浄化触媒、NOx吸着層、HCをCOへ転換する触媒層の出発原料としては、硝酸化合物、塩化物、酢酸化合物、錯体化合物、水酸化物、炭酸化合物、有機化合物などの種々の化合物、金属、金属酸化物を用いることができる。例えばCO,HC浄化触媒の触媒活性成分としてPt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru及びOsから選ばれた2種以上を組み合わせる場合には、活性成分が同一の溶液中に存在するような含浸液を用いて共含浸法にて調製することで触媒成分を均一に担持することができる。
CO,HC浄化触媒の形状は、用途に応じて適宜調整できる。例えば、コージェライト、Si-Al-O、SiC、ステンレス等の各種基体材料からなるハニカム構造体に、本発明のCO,HC浄化触媒をコーティングして得られるハニカム形状をはじめ、ペレット状、板状、粒状、粉末状などが挙げられる。ハニカム形状の場合、その基材はコ−ジェライトまたはSi-Al-Oからなる構造体を用いることが好適であるが、触媒温度が高まる虞がある場合には、触媒活性成分と反応しにくい基材(例えばFeを主成分とするメタルハニカム等の基材)を用いることが好ましい。また、多孔質担体と触媒活性成分のみでハニカムを形成してもよい。また、フィルター機能を有する基材を使用すれば、排ガス中のすす等を浄化でき、好ましい場合がある。
本発明はCO及びHCの酸化反応における化学量論量よりも過剰な酸素雰囲気の排ガスの浄化に対して特に有効であり、常に排ガス中の酸素が化学量論量よりも過剰である方が好適である。
以下、次に本発明の実施の形態及び実施例について説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る排ガス浄化装置の概略構成図である。この図に示す排ガス浄化装置は、ディーゼルエンジン1の排ガスを浄化するものであり、排気管3中に設置された上流側浄化部5及び下流側浄化部6と、主にエンジン1の制御を行うためのコントローラ(制御装置)9を備えている。
ディーゼルエンジン1は、燃焼室(シリンダ)1a内の空気をピストン1bで圧縮して高温にし、その圧縮空気に燃料噴射装置2を介して燃料を供給して自然着火させることで動力を得ている。エンジン1が排出する排ガスは、CO及びHCの酸化反応における化学量論量よりも過剰な酸素雰囲気となる。また、ディーゼルエンジン1は、吸気管4と燃焼室1aの間に吸気バルブ1cを備えており、燃焼室1aと排気管3の間に排気バルブ1dを備えている。なお、図1には吸排気バルブ1c,1dを1個ずつ示したが、各バルブの数はこれだけに限定されない。なお、浄化触媒5,6の下流側にはフィルタ(図示せず)を設置し、排ガス中の微粒物質(particulate matter:PM)を当該フィルタで捕集しても良い。
図2は、本発明の第1の実施の形態におけるエンジン、上流側浄化部5及び下流側浄化部6の模式構成図である。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する(後の各図も同様とする)。この図に示すように上流側浄化部5は、排気管3内の排ガスの流通方向において、下流側浄化部6よりも上流に配置されている。この図の例では、上流側浄化部5として、排ガス中のNOx吸着成分を含む吸着材(NOx吸着材)が利用されており、下流側浄化部6として、排ガス中のCO又はHCを酸化して浄化する浄化触媒成分が担持された担体(CO,HC酸化触媒)が利用されている。
NOx吸着材5の成分としては、既述のように、Ce,Zr,La,Al,Si及びTiから選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましく、さらにPt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru及びOsを実質的に含まないことが好ましい。また、NOx吸着材5としては、ゼオライトを含有したゼオライト構造体を利用しても良い。ゼオライト材種には特に拘らないが、βゼオライト、Y型ゼオライト、ZSM-5、モルデナイト、フェリエライト等が挙げられる。
CO,HC酸化触媒6における触媒成分は、既述のように、Al,Ce,Si,Ti及びZrから選ばれた少なくとも1種を含む無機化合物の多孔質担体で担持することが好ましい。また、当該多孔質担体は、Pt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru及びOsから選ばれた少なくとも1種の触媒活性成分をさらに担持することが好ましい。
また、CO,HC酸化触媒6の形状は、用途に応じて適宜調整できる。例えば、コージェライト、Si-Al-O、SiC、ステンレス等の各種基体材料からなるハニカム構造体に、CO,HC酸化触媒成分をコーティングして得られるハニカム形状をはじめ、ペレット状、板状、粒状、粉末状などが挙げられる。ハニカム形状の場合、その基材はコ−ジェライトまたはSi-Al-Oからなる構造体を用いることが好適であるが、触媒温度が高まる虞がある場合には、触媒活性成分と反応しにくい基材(例えばFeを主成分とするメタルハニカム等の基材)を用いることが好ましい。また、多孔質担体と触媒活性成分のみでハニカムを形成してもよい。また、フィルター機能を有する基材を使用すれば、排ガス中のすす等を浄化でき、好ましい場合がある。
上記のように構成される本実施の形態の排ガス浄化装置において、エンジン始動時において排ガス温度が低いとき(例えば300℃以下)には、NOx吸着材5によって排ガス中のNOxを吸着できるので、CO,HC酸化触媒6へのNOxの流入を抑制できる。従って、CO,HC酸化触媒6が排ガスに接触する前に排ガス中のNOxの濃度を低減させることができるので、NOx共存によるCO,HC酸化反応の阻害を防ぐことができる。すなわち、本実施の形態によれば、過剰な酸素雰囲気で運転される熱機関からの排ガスに含まれるCO,HCを効率よく浄化することができ、熱機関からのCO,HC排出量を高度に抑制することができる。なお、大気に放出されるNOxを抑制する観点からは、CO,HC酸化触媒6の活性が十分高まる排ガス温度(例えば300℃を上回る温度)までNOx吸着材5からのNOx脱離を防ぐことが好ましい。
なお、図1に示した排ガス浄化装置において、ディーゼルエンジン1の運転始動時は排ガスの温度が低い。そこで、短期間で排ガス温度を上昇させる観点からは、コントローラ9によって燃料噴射装置2の燃料噴射を制御することで、主要な燃料噴射の後に追加燃料を噴射する「ポスト燃料墳射」を実施することが好ましい。ポスト燃料墳射により燃料濃度が高まった排ガスが浄化触媒5に導入され、浄化触媒5上にて燃料中のHC等が燃焼し燃焼熱が発生する為、浄化触媒6に導入される排ガス温度が高まる。以上の燃焼制御により、エンジン始動時の排ガス温度の昇温速度を高めることができ、CO,HC浄化触媒を早く活性化できる。なお、コントローラ9によりポスト燃料噴射に代えてリタード燃料を実施しても良いし、両者を併用しても良い。
図3は、本発明の第2の実施の形態におけるエンジン、上流側浄化部5A及び下流側浄化部6の模式構成図である。この図の例では、上流側浄化部5Aとして、排ガス中のHCの少なくとも一部又は全部をCOに転換する転換触媒成分(HC→CO転換触媒)が利用されている。
転換触媒成分5Aの成分としては、Mn,Fe,Co,Ni,Cu及びAgから選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましく、さらにPt,Pd,Rh,Au,Ir,Ru及びOsを実質的に含まないことが好ましい。
上記のように構成される本実施の形態の排ガス浄化装置において、エンジン始動時において排ガス温度が低いとき(例えば300℃以下)には、転換触媒5AによってHCに由来するCOが生成されるため、CO,HC酸化触媒成分に接触する排ガス中のHC濃度が低下し、CO濃度が高まる。このときCO濃度は高いものの、HC濃度が低い為、HCガスによるCO浄化反応の阻害が生じずCO浄化率を高めることができる。これにより、過剰な酸素雰囲気で運転される熱機関からの排ガスに含まれるCO,HCを効率よく浄化することができ、熱機関からのCO,HC排出量を高度に抑制することができる。
なお、本実施の形態では、排ガス中のHCをCOに転換する転換触媒5Aを利用することでHC濃度の低減を図ったが、転換触媒5Aに代替して、排ガス中のHC吸着成分を含む吸着材(HC吸着材)を上流側浄化部として利用しても良い。
また、CO,HC酸化触媒6の上流側にNOx吸着材5及びHC→CO転換触媒5A(又はHC吸着材)を直列に配置しても良い。このとき、NOx吸着材5及び転換触媒5A(HC吸着材)の配置順序は特に限定しない。このように排ガス浄化装置を構成すると、排ガス中のNOx濃度及びHC濃度を低減することができるので、上記2つの実施の形態よりも排ガスに含まれるCO,HCを効率よく浄化することができる。
上記の各実施の形態では、上流側浄化部5,5Aと下流側浄化部6を異なる担体(基材)で形成し、当該2つの担体を排気管3中に直列的に配置した例について説明したが、上流側浄化部5,5Aの内部又は表面を通過した排ガスを第2浄化部6に導入すれば他の構成でも良い。この場合の排ガス浄化装置の例としては、排気管3中に配置した同一の多孔質状の基材上に上流側浄化部5,5A及び下流側浄化部6の双方を形成するものがある。具体的には、まず当該多孔質基材を形成する構造体の表面(具体的には、当該構造体が形成する複数の孔が排ガスの流路となるが、当該構造体が排ガス流路に臨む面)に下流側浄化部6を層状に担持させ、当該下流側浄化部6の表面(すなわち、下流側浄化部6が排ガス流路に臨む面)に第1浄化部5,5Aをさらに積層させて上流側浄化部5,5Aを構成するものがある。すなわち、多孔質基材の構造体の表面には下流側浄化部6及び上流側浄化部5,5Aによって2つの層が形成される。次にこの場合について図4〜6を用いて説明する。
図4は、本発明の第3の実施の形態における上流側浄化部5及び下流側浄化部6の模式構成図である。この図に示す例では、ハニカム状の多孔質担体を利用しており、当該基材(ハニカム基材41)の表面には、まず、下流側浄化部6であるCO,HC酸化触媒層が形成されている。そして、基材上のCO,HC酸化触媒層6の上には、上流側浄化部5であるNOx吸着層が形成されている。
このように排ガス浄化装置を構成すると、多孔質担体中を排ガスが通過する際に、当該排ガスがNOx吸着層5の内部を通過してCO,HC酸化触媒層6に向かって拡散するので、CO,HC酸化触媒層6に接触する前にNOx吸着層5でNOxの濃度が低減される。したがって、第1の実施の形態(図1参照)と同様の効果が期待できる。特に、本実施の形態では、2つの多孔質担体(上流側浄化部5及び下流側浄化部6)を直列配置する必要が無いので、排ガス浄化装置をコンパクト化でき、省スペース化を図ることができるという点がメリットとなる。 図5は、本発明の第4の実施の形態における上流側浄化部5A及び下流側浄化部6の模式構成図であり、図6は、本発明の第5の実施の形態における上流側浄化部5B及び下流側浄化部6の模式構成図である。
図5に示した実施の形態では、ハニカム基材41上にコーティングしたCO,HC酸化触媒層(下流側浄化部)6の上層に、HCをCOへ転換する触媒層(上流側浄化部)5Aが形成されている。図6に示した実施の形態では、ハニカム基材41上にコーティングしたCO,HC酸化触媒層(下流側浄化部)6の上層に、HC吸着成分を含む吸着層(上流側浄化部)5Bが形成されている。これらのように排ガス浄化装置を構成することで、第2の実施の形態(図2参照)と同様の効果が期待でき、更に排ガス浄化装置のコンパクト化及び省スペース化を図ることができる。
なお、図5,6の実施の形態における転換触媒層5A又は吸着層5Bの上層にNOx吸着層を形成すると、CO,HC酸化触媒層6におけるNOxによるCO,HC酸化反応の阻害を防ぐことができるので、CO,HC浄化活性をさらに高めることができる。なお、図6のようにHC吸着層5Bを設けた場合には、一旦吸着したHCが排ガス温度の上昇によりHC吸着成分から脱離し始める点に留意すべきである。
図7は、本発明の第6の実施の形態に係る排ガス浄化装置の模式構成図である。この図に示す排ガス浄化装置は、エンジン1と、エンジン1の下流側に設置された浄化部50と、浄化部50の下流側に設けられた尿素吹き込み口51と、尿素吹き込み口51の下流側に設置されたNOx浄化触媒52を備えている。
浄化部50としては、図4に示した第3の実施の形態に係る多孔質担体が設置されている。すなわち、浄化部50である多孔質担体には、ハニカム基材の表面にCO,HC酸化触媒層6が形成されており、当該CO,HC酸化触媒層6の上にはNOx吸着層5が形成されている。
NOx浄化触媒52は、浄化部50におけるNOx吸着層5から脱離したNOxを還元浄化するためのものである。還元剤としては、排ガス中に残留したCO又はHCが利用可能である。NOx浄化触媒52としては、例えば、TiO2担体にV2O5を担持した触媒が利用可能である。なお、浄化部50にNOx吸着層5やNOx吸着材を配置しない場合であっても、浄化部50を通過した後の排ガス中にNOxが含まれる場合には、NOx浄化触媒52を設置することで排ガス中のNOxの浄化が可能であることはいうまでもない。
尿素吹き込み口51は、排ガス流通方向における浄化部50とNOx浄化触媒52の間の位置で排気管3に開口しており、尿素供給源(図示せず)からNOx浄化触媒52に対して尿素を導入可能に構成されている。ところで、NOx浄化触媒52に係る還元剤としては、既述のように排ガス中に残留したCO又はHCが利用可能であるが、排ガス中にCO又はHCが残留していない場合又は不十分な場合がある。その場合には、尿素吹き込み口51からNOx浄化触媒52に対して尿素を導入することが好ましい。なお、尿素の代わりにアンモニア(NH3)を還元剤として導入しても良い。
上記のように構成される排ガス浄化装置において、エンジン始動時のように排ガス温度が低い場合(例えば、300℃以下)、浄化部50に流入する排ガス中のNOxは、浄化部50中のNOx吸着層5にて吸着され、NOx濃度が低下した排ガス中のCO,HCは浄化部50のCO,HC酸化触媒層6で浄化される。その後、排ガス温度が高まると、NOx吸着層5のNOx吸着作用は低下するが、CO,HC浄化活性は向上する為、CO,HCは高度に浄化できる。一方で、浄化部50にて吸着されていたNOxが脱離を始める。しかし、脱離したNOxは、NOx浄化触媒52で還元浄化されるため、NOxが系外へ放出することを防ぐことができる。なお、還元剤であるCO,HCが不足する場合には、尿素吹き込み口51を介して排気管3内に尿素を吹き込み、NOx浄化触媒にてNOxを還元浄化することが好ましい。
なお、上記の各実施の形態では、NOx及びHCの濃度を低減する方法として、吸着材や転換触媒を利用する場合について説明したが、この方法に限らず、他の手段でNOx及びHCの濃度を低減しても良い。
次に本発明に係る実施例について説明する。
<CO,HC浄化触媒調製法>
本実施例で用いる触媒(基準触媒)は次のように調製した。まず、ベーマイト粉末を電気炉にて大気下にて600℃で5時間の焼成を行うことで得たAl2O3粉末及びアルミナゾルを水へ添加して調製したスラリーをコージェライト製ハニカム(300セル/inc2)にコーティングした後、150℃の熱風を15分間流通させることで乾燥した。更に得られたサンプルを電気炉にて大気下にて600℃で1時間の焼成を行うことでハニカムの見かけの容積1リットルあたり50gのAl2O3をコーティングしたAl2O3コートハニカムを得た。該Al2O3コートハニカムへ、ジニトロジアンミンPt硝酸溶液を含浸し、150℃の熱風を15分間流通させ乾燥後、電気炉にて600℃で1時間焼成した。
以上により、ハニカム1リットルに対してAl2O3が50g、及び元素換算でPtがAl2O3に対して1wt%含有する基準触媒を得た。
<触媒性能評価方法>
触媒の性能を評価する為、次の条件でCO,HC浄化性能試験を行った。容量6c.c.のハニカム触媒を石英ガラス製反応管中に固定した。この反応管を電気炉中に設置した。
ハニカム触媒の前処理として、4.5L/minの10%O2-N2ガスを流通させながら500℃まで昇温させた。その後、触媒温度を50℃付近にまで下げた後、下記の性能評価試験を実施した。反応管に導入される反応ガスは、酸素過剰雰囲気の排ガスを模擬した組成、NOx:300ppm, C3H6:300ppm, CO:300ppm, CO2:6%, O2:10%, H2O:6%, N2:残差とした。このガスを基準ガスとする。
下記2式で示すCO浄化率(%)及びHC浄化率(%)によって、触媒のCO,HC浄化性能を見積もった。なお、体積空間速度は45,000/hとした。反応ガスを流通させながら、ガス温度を150℃から500℃にまで加熱制御し、CO,HC浄化性能を測定した。
CO浄化率(%)=((触媒に流入したCO濃度)-(触媒から流出したCO濃度))÷(触媒に流入したCO濃度)×100
HC浄化率(%)=((触媒に流入したC3H6濃度)-(触媒から流出したC3H6濃度))÷(触媒に流入したC3H6濃度)×100
<検討結果:CO浄化活性>
CO浄化性能の比較データとして、基準ガスからHC(ここでは、C3H6)を除いたガス(HC無しガス)と、基準ガスからNOを除いたガス(NO無しガス)を用いた場合について、基準触媒のCO浄化性能をそれぞれ同様に評価した。図8に基準ガス、HC無しガス、NO無しガスを使用した場合の、基準触媒のCO浄化率を示す。図8において、200℃でのCO浄化率に着目すると、基準ガスでは33%、HC無しガスでは90%、NO無しガスでは99%となった。この結果から排ガス中のNO又はHCの濃度を低減させるとCO,HC浄化触媒のCO浄化率が高まるのは明らかである。
<検討結果:HC浄化活性>
HC浄化性能の比較データとして、基準ガスからCOを除いたガス(CO無しガス)と、基準ガスからNOを除いたガス(NO無しガス)を用いた場合について、基準触媒のHC浄化性能を同様に評価した。図9に基準ガス、CO無しガス、NO無しガスを使用した場合の、基準触媒のHC浄化率を示す。図9において200℃でのHC浄化率に着目すると、基準ガスでは0%、CO無しガスでは6%、NO無しガスでは57%となった。この結果から、排ガス中のCO又はNOの濃度を低減させるとCO,HC浄化触媒のHC浄化率が高まるのは明らかである。
<比較例触媒1の調製法>
本実施例において比較例となる触媒(比較例触媒1)の調整法について説明する。まず、ベーマイト粉末を電気炉にて大気下にて600℃で5時間の焼成を行うことで得たAl2O3粉末へジニトロジアンミンPt硝酸溶液を含浸し、150℃の熱風を15分間流通させ乾燥後、電気炉にて600℃で1時間焼成した。本手法により、元素換算でPtがAl2O3に対して1wt%含有するPt/Al2O3触媒粉末を得た。得られたPt/Al2O3触媒粉末へアルミナゾルと水へ添加して調製したスラリーをコージェライト製ハニカム(300セル/inc2)にコーティングした後、150℃の熱風を15分間流通させることで乾燥した。更に得られたサンプルを電気炉にて大気下にて600℃で1時間の焼成を行うことでハニカムの見かけの容積1リットルあたり53gのPt/Al2O3触媒粉末をコーティングした比較例触媒1を得た。
<実施例触媒1の調製法>
本実施例に係る触媒(実施例触媒1)の調整法について説明する。まず、Ce-Zr-O(Ce:Zr=1:1 mol比、第一稀元素製)粉末及びアルミナゾルを水へ添加して調製したスラリーを、比較例触媒1にコーティングした後、150℃の熱風を15分間流通させることで乾燥した。更に得られたサンプルを電気炉にて大気下にて600℃で1時間の焼成を行うことでハニカムの見かけの容積1リットルあたり22gのCe-Zr-O粉末を比較例触媒1へコーティングした実施例触媒1を得た。
<コート層の効果1>
比較例触媒1及び実施例触媒1を、実施例1に示した触媒性能評価方法と同じ手法で活性評価を行った。270℃でのCO,HC浄化率の結果を図10に示す。この図に示すように、比較例触媒1と比較して、Ce-Zr-Oをコートした実施例触媒1はCO,HC浄化率ともに向上した。以上の結果から、CO,HC酸化触触媒へCe-Zr-OをコートするとCO,HC浄化率が高まるのは明らかである。
<比較例触媒2の調製法>
本実施例で比較例として用いる触媒(比較例触媒2)は、実施例1の基準触媒と同様の手順により調製した。ただし、比較例触媒2では、Al2O3コート量が基準触媒と異なっており、ハニカム1リットルに対してAl2O3を70g、及び元素換算でPtをAl2O3に対して1wt%含有した。
<実施例触媒2の調製法>
実施例2では、Ce-Zr-O粉末を比較例触媒1にコーティングして実施例触媒1を得たが、本実施例では、Ce-Zr-O粉末の代わりにモルデナイト粉末(東ソー製)を比較例触媒2にコーティングして触媒(実施例触媒2)を得た。実施例触媒2は、モルデナイト粉末を用いたこと以外は比較例触媒2と同様の手順にて調製されており、ハニカムの見かけの容積1リットルあたり21gのモルデナイト粉末をコーティングした。
<コート層の効果2>
比較例触媒2及び実施例触媒2を、実施例1に示した触媒性能評価方法と同じ手法で活性評価を行った。270℃でのCO,HC浄化率の結果を図11に示す。この図に示すように、本温度では比較例触媒2のCO浄化率が高かったため、実施例触媒2のCO浄化率は比較例触媒2とほぼ同じであったが、HC浄化率は実施例触媒2の方が高かった。以上の結果から、CO,HC酸化触触媒へモルデナイトをコートするとHC浄化率が高まるのは明らかである。
<CO増加の影響>
図3に示した第2の実施の形態に示したように、HCをCOへ転換する触媒成分(転換触媒成分5A)を使用すると、HCに由来するCOが生成される為、CO,HC酸化触媒成分(CO,HC酸化触媒6)に接触するCO濃度が高まる。本実施例では当該CO濃度増加の影響について調べた。
基準触媒を用いて、実施例1に示したCO浄化率評価法にてCO浄化率を評価した。基準ガス中のHCが全てCOに転換された場合を模擬した排ガス組成、NOx:300ppm, CO:1200ppm, CO2:6%, O2:10%, H2O:6%, N2:残差、を有するガスを用いてCO浄化率を評価した。このガスを、HC無し-1200ppmCOガスと称する。
図12に、HC無し-1200ppmCOガスと基準ガスについてCO浄化率を比較したものを示す。HC無し-1200ppmCOガスの場合は、基準ガスと比較して、300℃以下でのCO浄化率が高い。HC無し-1200ppmCOガスの場合、CO濃度は基準ガスよりも高いものの、HCが無い為、HCガスによるCO浄化反応の阻害が生じずCO浄化率が高まったものと考えられる。以上の結果から、排ガス中のHCをCOに転換した後にCO,HC酸化触媒層へ導入するとCO浄化活性が高まるのは明らかである。
<担体量>
実施例触媒1において、Al2O3担体量を変化させた場合のHC浄化活性を評価した。図13に、Al2O3担体量を変化させた場合の、270℃における実施例触媒1のHC浄化活性を示した。図13が示すように、Al2O3担体量はハニカム1Lに対し50g以上300g以下の場合にHC浄化率は50%を超え、高いHC浄化活性を示すことが分かる。
なお、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の各実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施の形態に係る構成の一部を、他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。