JP6323277B2 - 太陽電池パネル - Google Patents

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この発明は、太陽電池パネルに関する。特に、推進装置から発射されるプラズマビームに含まれる正電荷イオンによる衝突を防止する磁界シールド装置を備えた太陽電池パネルに関するものである。
人工衛星に設けられたイオン加速装置を備えた推進装置の腐食を低減するために、該面部分に対して主に平行な磁界を形成するための中間電位面を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特表2010−539375号公報
人工衛星に設けられる駆動装置の1つに静電推進装置がある。静電推進装置は、高電圧を使用してイオン化室内でイオン化された作動ガスの正電荷イオンを高電圧静電界内で加速し、プラズマビームとして同装置のイオン化チャンバの開口から発射する。その反動原理により、人工衛星はプラズマビームの発射の方向と逆の方向に、加速される。
静電推進装置の作動時は、プラズマビームの発射方向に向いている人工衛星の表面が腐食していくことが観測される。例えば、太陽電池セルをパネル上に搭載した太陽電池パネルの表面も、このプラズマビームに含まれる正電荷イオンの衝突によって腐食されることが観測されている。
イオンによる損傷は太陽電池パネルの発電能力に支障をきたす要因であるため、太陽電池パネルに搭載される個々の部品に対して、イオン損傷に対する対策が施されている。
例えば、太陽電池パネルの受光面側に搭載される太陽電池と、太陽電池パネル上に配線された被覆電線とは、電気的に接続するために薄い板状の金属部品を介して接続されている。この金属部品がイオンによって損傷することを防ぐため、金属部品の曝露面に樹脂性のコーティングを施すことが行われる。
金属部品と、金属部品上に施された樹脂性のコーティングは、衛星軌道上の熱環境によって、昇温による熱膨張と、冷温による熱収縮を周期的に繰り返す。
このとき、樹脂性のコーティングの熱膨張率と金属部品の熱膨張率の間に差異があるため、その差異に応じた熱応力が樹脂性のコーティングおよび金属部品に印加される。一般に樹脂製のコーティングおよび金属部品それぞれが持つ熱膨張率の間に大きな差異があるため、熱応力による金属部品の変形よって、金属部品が破損する。
従来、金属部品の破損によって太陽電池パネル上に形成される電気回路の冗長性が喪失し、太陽電池パネルの信頼性が低下するという課題があった。
熱応力による金属部品の破損を回避するためには、樹脂製のコーティングの厚さを厳密に制御する必要があるが、要求精度でコーティングの厚さを制御することは実際状困難であり、実現は難しいという課題があった。
この発明は係る課題を解決するためになされたものであり、静電推進装置の作動によるイオン損傷を抑え、動作の信頼性を維持できる太陽電池パネルを提供することを目的とする。
この発明に係る太陽電池パネルは、衛星に搭載される太陽電池パネルの受光面に対し垂直となる方向に設置された2本で一対をなすロッドと、各々の前記ロッドに沿って張られた導線と、前記ロッドに沿って張られた導線と接続し、前記2本のロッドの上端の間および下端の間をそれぞれ接続する導線とからなる閉回路と、前記閉回路に電流を流す電源とを備える。
この発明に係る太陽電池パネルによれば、推進装置から発射されるプラズマビームに含まれる正電荷イオン衝突によって生じる太陽電池パネルの損傷を低減できる。
この発明の実施の形態1に係る磁界シールド装置を備える太陽電池パネル100の外観(収納状態)を説明する図である。 この発明の実施の形態1に係る磁界シールド装置のロッド(収納状態)の外観を表す図である。 この発明の実施の形態1に係るロッド立上げ機構6の外観を表す図である。 この発明の実施の形態1に係る磁界シールド装置のロッド(展開状態)の外観を表す図である。 この発明の実施の形態1に係る磁界シールド装置を備える太陽電池パネルの外観(展開状態)を説明する図である。 この発明の実施の形態1に係る磁界シールド装置を展開した状態で、正電荷イオンが飛来した場合の正電荷イオンの軌道を説明する図である。 人工衛星における太陽電池パネルの配置を表す図である。 太陽電池パネルの断面図である。
実施の形態1.
以下、本発明に係る太陽電池パネル100について、図を用いて説明する。
図7は一般的な人工衛星の外観図である。図において人工衛星は衛星本体101、衛星本体101と機械的に接続され、衛星本体101に搭載された電子機器に電力を供給する太陽電池パネル1、地上局との間で電波の送受信を行うアンテナリフレクタ102等の構造体から構成される。
本実施の形態に係る磁界シールド装置を備えた太陽電池パネル100は、図7の太陽電池パネル1の位置に、太陽電池パネル1に代わって設置される。
図8は太陽電池パネル1の断面図であり、40はサンドイッチパネル、41はサンドイッチパネル1の表皮材(表面)、42はサンドイッチパネル1の表皮材(裏面)、43はサンドイッチパネル40のコア部、8は太陽電池セル、11は絶縁体フィルム層である。
太陽電池セル8を保持するために通常、平板状のサンドイッチパネル40が使用され、サンドイッチパネル40の表面に太陽電池セル8を配列させている。サンドイッチパネル40の表皮材としては、比弾性率、比強度を高めるために炭素繊維強化複合材料やアルミニウムが多用されている。
絶縁体層11はサンドイッチパネル40の表皮材(表面)41上に取り付けられる。
太陽電池セル8は接着剤等により絶縁体層11上に搭載され、太陽電池セル8の間は接続金具により電気的に接続される。太陽電池パネルに取り付けられた被覆電線(図示せず)とは、電気的に接続するために薄い板状の金属部品を介して接続される。
図1は、本実施の形態に係る磁界シールド装置50を備えた太陽電池パネル100(以下、単に「太陽電池パネル100」ともいう)の構成を説明する図であり、磁界シールド装置50が展開する前の収納された状態を表している。
磁気シールド装置50は、太陽電池パネル1の受光面側に設けられた4本のロッド2a、2b、2c、2dと、ロッド2aとロッド2bの間を接続する被覆導線3abと、ロッド2cとロッド2dの間を接続する被覆導線3cdと、太陽電池パネル1上に配線され、被覆導線3abと接続される被覆導線4a、4bと、同じく太陽電池パネル1上に配線され、被覆導線3cdと接続される被覆導線4c、4dと、被覆導線4a、4b、4c、4dを束ねて接続する電気コネクタ5とからなる。
被覆導線3abは、後述する筒状のロッド本体2a、2bの筒内を通り、被覆導線4a、4bと接続されている。また、被覆導線3cdは、後述する筒状のロッド本体2c、2dの筒内を通り、被覆導線4c、4dと接続されている。
電気コネクタ5は電源(図示せず)と接続され、閉回路をなす被覆電線3ab、4a、4bと、被覆電線3cd、4c、4dの各々の回路に電流を流すことができる。
図2は、ロッド2b、あるいはロッド2dの外観図である。ロッド2a、2cはロッド2b、2dと左右対称の形状を有する。ここではロッド2a、2b、2c、2dを代表してロッド2bについて構造を説明する。
図2において、ロッド2bは、筒状のロッド本体8bと、横置きされたロッド本体8bを立上げることで磁界シールド装置50を展開するロッド立上げ機構6bと、ロッド本体8bの先端に取り付けられたコネクタ7bから構成される。筒状のロッド本体8bは、アルミニウムを加工して作られ、筒の内側には、先述の通り被覆導線3abが通される。コネクタ7bは断面が半円形状をなし、磁界シールド装置50の展開時に被覆導線3abに加わる応力を緩和する。
図3は、ロッド立上げ機構6bの外観を表す図である。ロッド立上げ機構6bの内部でロッド本体8bの下方にはロッド立上げ用ばね62が設置されている。ロッド立上げ用ばね62は、ロッド回転軸61を軸としてロッド本体8bを立ち上げる方向の力を働かせる。押さえ機構63は、当初、ロッド本体8bが立ち上がることを押さえており、磁界シールド装置50を展開する際には、押さえ機構63を破断する。
図4は、ロッド本体8bを立ち上げたときの外観図である。このように、ロッド立上げ機構6b内部の押さえ機構63を破断することで、ロッド本体8bを立ち上げさせることができる。
図5は、図1に示した太陽電池パネル1上に設けたロッド2a、2b、2c、2dの4本のロッドを立上げ、磁界シールド装置50を展開したときの外観図である。
図5のように、ロッド2a、2b、2c、2dは太陽電池パネル1の受光面側の4隅に設置されており、ロッド2aと2b、2cと2dがそれぞれペアのロッドとなる。
ロッド2aの先端部では、被覆導線3abおよび4aが電気的に接続される構造で固定されている。被覆導線3abはロッド2bの先端部に接続されており、4aはロッド2aの内部から太陽電池パネル1の受光面に配線され、さらに太陽電池パネル1の受光面から裏面への貫通穴を通って裏面側に配線され、電気コネクタ5に接続されている。
ロッド2bの先端部で被覆導線3abおよび4bが電気的に接続される構造で固定されており、被覆導線4bは被覆導線4aと同様にロッド2bの内部を通って太陽電池パネル1の受光面から裏面へと配線され、電気コネクタ5に接続されている。
ロッド2aと同様に、ロッド2cの先端部で被覆導線3cdおよび4cが接続されており、被覆導線3cdはロッド2dの先端部に接続され、被覆導線4cはロッド2cの内部を通って太陽電池パネル1の受光面から裏面へと配線され、電気コネクタ5に接続されている。
またロッド2bと同様に、ロッド2dの先端部で被覆導線3bcおよび4dが電気的に接続される構造で固定されており、被覆導線4dはロッド2dの内部を通って太陽電池パネル1の受光面から裏面へと配線され、電気コネクタ5に接続されている。
ロッド2aおよびロッド2b、被覆導線3ab、4aおよび4bならびに電気コネクタ5によって、太陽電池パネルの受光面に対して垂直となる閉回路が形成される。同様に、ロッド2cおよびロッド2d、被覆導線3cd、4cおよび4dならびに電気コネクタ5によって、閉回路abと並行となる閉回路が形成される。
このようにして形成された閉回路の電流経路において、電気コネクタ5→被覆導線4a→ロッド2a→被覆導線3ab→ロッド2b→被覆導線4b→電気コネクタ5の方向に定電流を流すことで、太陽電池パネル1の手前から奥へと向かう方向に閉回路を鎖交する磁界が発生する。
同様に、閉回路の電流経路において、電気コネクタ5→被覆導線4c→ロッド2c→被覆導線3cd→ロッド2d→被覆導線4d→電気コネクタ5の方向に定電流を流すことで、太陽電池パネル1の手前から奥に向かう方向に閉回路を鎖交する磁界が発生する。
このふたつの閉回路を鎖交する磁界によって、太陽電池パネルの受光面と平行な方向の磁界を太陽電池パネル1の受光面上方に形成することができる。
このように、太陽電池パネル1の受光面上方に太陽電池パネルの受光面と平行な方向の磁界を形成した状態で、例えば、図5の太陽電池パネル1の左側から受光面へ向かう方向に正電荷イオンが飛来した場合、図6に示すように、正電荷イオンの軌跡110は、磁界シールド装置50により形成された磁界によって、太陽電池パネル1から離れる方向へローレンツ力が正電荷イオンに働く。
このようにして、本実施の形態に係る磁界シールド装置を備えた太陽電池パネルでは、太陽電池パネル1の方向に飛来した正電荷イオンが、太陽電池パネル1に衝突することを回避することできる。
1、1a、1b、1c、1d 太陽電池パネル、2、2a、2b、2c、2d ロッド、3ab、3cd ロッド先端のコネクタ間に接続される被覆導線、4、4a、4b、4c、4d 太陽電池パネルに取り付けられた被覆導線、5 電気コネクタ、6 ロッド立上げ機構、7 ロッド先端のコネクタ、8 ロッド本体、50 磁気シールド装置、61 ロッド回転軸、62 ロッド立上げ用ばね、63 押さえ機構、100 磁界シールド装置付き太陽電池パネル、101 衛星本体、102 アンテナリフレクタ、110 正電荷イオンの軌跡。

Claims (3)

  1. 衛星に搭載される太陽電池パネルの受光面に対し垂直となる方向に設置された2本で一対をなすロッドと、
    各々の前記ロッドに沿って張られた導線と、
    前記ロッドに沿って張られた導線と接続し、前記2本のロッドの上端の間、および下端の間を接続する導線とからなる閉回路と、
    前記閉回路に電流を流す電源とを備えることを特徴とする太陽電池パネル。
  2. 前記衛星の打ち上げ前には、前記ロッドを、前記太陽電池パネルの受光面と平行なる向きに収納し、前記衛星の打ち上げ後に、前記ロッドを、前記太陽電池パネルの受光面に対し垂直となる方向に立上げる展開機構を備えることを特徴とする請求項1記載の太陽電池パネル。
  3. 前記衛星は、イオン加速装置を備えた推進装置を備え、
    前記推進装置から発射されるプラズマビームに含まれる正電荷イオンの軌跡を、前記閉回路に流れる電流により発生する磁界により変えることを特徴とする請求項1又は2記載の太陽電池パネル。
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