JP6320892B2 - バルブ応力検知方法、該方法を利用したバルブ寿命予測方法 - Google Patents
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Description
ピット内に配置されたバルブの両側には、ピットの側壁を貫通したガス導管が接続されるが、ガス導管は地中に埋設されているため、地盤沈下が生じた場合には地盤と共に沈下する。他方、ピットは沈下しないか、したとしてもガス導管よりも沈下の度合いが小さいため、ガス導管およびバルブに曲げ応力が作用する。
他方、バルブについては、複雑な形状をしており、磁歪センサによって直接検知するのは難しい。
しかし、上述したように、バルブにもガス導管を介して応力が作用し、またバルブは複雑な形状をしているため応力集中が生じやすく、またガス導管よりも変形しにくいため、バルブ自体にき裂等が発生する可能性がある。
そのため、バルブ自体に作用する応力を検知することが望まれる。
しかしながら、ピット内は狭く、また磁歪センサを用いた検査の場合、検査に要する時間は数時間に及ぶことがある。
そのため、一度検査した後、それ以降の経年変化については簡易な方法での応力検知が望まれている。
さらに、バルブの寿命を予測して交換時期等を管理したいという要請もある。
前記ピット内でかつ、前記バルブの両側に接続された前記導管における前記バルブとの接続部から所定距離離れた部位について、非破壊試験方法によって当該部位における導管に作用する応力を検知する導管応力検知工程と、
該導管応力検知工程によって検知された応力に基づいてバルブに作用する応力を推定する第1バルブ応力推定工程を有し、
該第1バルブ応力推定工程は、予め求めた導管応力とバルブ応力の関係に基づいて推定することを特徴とするものである。
該初期バルブ応力検知工程時点において前記導管にひずみゲージを設置するひずみゲージ設置工程と、
所定期間経過後において、所定期間中に導管に付加された応力をひずみゲージによって検知する付加応力検知工程と、
前記初期バルブ応力検知工程の前記導管応力検知工程で検知した応力と、付加応力検知工程で検知された応力に基づいて前記導管に作用している応力を求め、該応力に基づいてバルブに作用する応力を推定する第2バルブ応力推定工程を有し、
該第2バルブ応力推定工程は、予め求めた導管応力とバルブ応力の関係に基づいて推定することを特徴とするものである。
前記付加応力検知工程及び第2バルブ応力推定工程を、予め定めた所定の期間ごとに繰り返して実施し、各期間で推定されたバルブ応力に基づいて将来のバルブ応力を推定し、該推定値と前記バルブの許容できる応力値として規定した閾値に基づいて前記バルブの寿命を予測することを特徴とするものである。
本実施の形態に係るバルブ応力検知方法は、図1に示すように、地中に構築されたピット1内に設置され、地中に埋設された導管3がその両側に接続されるバルブ5に作用する応力検知方法である。
まず、応力検知の対象となるバルブ5について説明する。
地中に埋設されたガス導管3が地盤沈下によって沈下すると、ピット1は沈下しないことから、ガス導管3におけるバルブ5との接続部近傍に曲げ応力が作用し、バルブ5にはガス導管3からの応力が作用する。
バルブ5には縦横にリブ5aが形成されており、バルブ5に応力が作用するとリブ5aに応力集中が発生する。導管3からの応力が作用した場合には、バルブ5の上面に形成されたリブ5aに応力集中が発生し、当該部位に最大応力となる。
本実施の形態は、このような設置状態にあるバルブ5に作用する最大応力を検知するものである。
以下、本発明のバルブ応力検知方法の各工程を説明する。
導管応力検知工程は、バルブ5の両側に接続された導管3におけるフランジ部7から所定距離離れた部位について、磁歪センサを用いて当該部位に作用している応力を同定する。
磁歪センサを用いる磁歪応力測定法は、強磁性材料である鋼管などの材料に荷重が作用すると材料の透磁率が応力に比例して変化することを利用するものであり、その原理等については例えば前述した特許文献1にも記載されている。
また、3リング以上計測した場合においても、その最大値を用いたり、平均値を用いたりしてもよい。
第1バルブ応力推定工程は、導管応力検知工程によって検知された応力に基づいてバルブ5に作用する応力(以下、「バルブ応力」という)を推定する工程であり、予めFEM解析によって求めた導管応力とバルブ応力の関係に基づいて推定する。
図2は、FEM解析で求めた導管応力とバルブ応力の関係をグラフ表示したものであり、縦軸がバルブ5に発生する最大応力(MPa)、横軸が磁歪センサによって測定した導管3の応力である。δはフランジ面からの距離を示している。
なお、図2のグラフでは、フランジ面からの距離δが200mm、300mm、400mm、500mmの4箇所の場合が示されているが、例えば磁歪センサによる測定位置がフランジ面から250mmであった場合には、内挿補間等を行うようにすればよい。
もっとも、図2に示すグラフを作成する際に、フランジ面からの距離δをさらに細かく測定するようにしてもよい。
この技術により、例えばガス導管3のガス遮断バルブ5のように長期間に亘って設置されている既設のバルブ5に対して、現状の応力状態を正確に推定することができる。
実施の形態1では、既設のバルブ5に作用している現在の応力を検知する方法について述べた。しかし、ガス導管3が接続されるガス遮断バルブ5のように長期間に亘って地中に埋設されているバルブでは、将来の応力状態を知りたいという要請がある。
この場合、所定の期間毎に実施の形態1で示した方法を用いることが考えられる。しかしながら、実施の形態1の方法は、導管3の所定位置を磁歪センサで測定する必要があり、このため狭いピット1内に作業者が入って、導管3に磁歪センサを手で当てて測定する必要がある。この場合、1リングについて例えば73点測定し、4リング測定するとすれば約5〜6時間を要することになる。
このため、実施の形態1の検査方法を所定の期間ごとに行うとすると、時間と労力を要する。そこで、バルブ5に作用する応力を所定期間ごとに検知する場合において、簡易に測定する方法が望まれており、本実施の形態はこの要請に応えるものである。
各工程を詳細に説明する。
初期バルブ応力検知工程(S1)は、検査開始時にバルブ5に作用している応力を検知する工程であり、具体的には実施の形態1で示したバルブ応力検知方法を用いる。
ひずみゲージ設置工程(S3)は、初期バルブ応力検知工程(S1)を行った時点において導管3にひずみゲージ9を設置する工程である。
ひずみゲージ9を設置する位置は、原則として初期バルブ応力検知工程(S1)において磁歪センサで応力測定した位置である。
(1)磁歪センサによる測定応力の最大値を示した位置にひずみゲージ9を設置し、この最大値を初期値とする。
(2)例えば、2箇所(2リング)で磁歪センサによる応力測定をした場合には、中間位置にひずみゲージ9を設置する。この場合、中間位置を測定位置とし、応力の初期値は平均値を用いる。
図4において、図中右側は最大値を示した位置にひずみゲージ9を設置した場合を示し、図中左側は中間位置にひずみゲージ9を設置した場合を示している。
そこで耐水性と耐久性に優れた「カプセル型ひずみゲージ」を用いるのが望ましく、管軸方向が受感方向となるようにスポット溶接で取り付ける。
また、ひずみゲージ9のリード線11の端部は湿潤環境にさらされないように、防水コネクタ13に格納する。そして、各リード線11は図6に示すように1成分ずつピット1の壁1aに沿わせてマンホール15近傍まで配線する。防水コネクタ13はマンホール15近傍の内側壁に固定しておき、経過観察測定時には、図7に示すように、ピット1内に入らずに、防水コネクタ13から測定端子を取り出し、計測器に結線してひずみを測定する。
付加応力検知工程(S5)は、所定期間経過後において、所定期間中に導管3に付加された応力をひずみゲージ9によって検知する工程である。
この工程でのひずみの計測は、図7に示すように、ピット1のマンホール15脇で実施することとなる。マンホール15内の防水コネクタ13から測定端子を取り出し、携帯型データロガー17に結線して、ひずみゲージ9の1成分ずつひずみの値を計測して記録する。
なお、導管3の同じ位置に設置した3成分のひずみゲージ9間で差異が大きい場合は、突出した値のひずみゲージ9の不調が疑われるため、必要に応じて当日、または後日ゲージの貼り直し(盛り変え)を行うのが望ましい。
第2バルブ応力推定工程(S7)は、付加応力検知工程(S5)で検知された応力に基づいて導管3に作用している応力を求め、該応力に基づいてバルブ5に作用する応力を推定する工程である。
導管3に作用している応力は、初期応力に付加応力を加算して求める。
また、バルブ5に作用する応力の推定は、実施の形態1で説明したのと同様に、図2に示した予め求めた導管応力とバルブ応力の関係に基づいて推定する。
なお、設置したひずみゲージ9は1軸タイプであり、管軸方向のひずみのみを計測するため、応力(の変化)は単純にヤング率をひずみ値に乗ずることによって求めることとする。またひずみゲージ9は導管3の頂部のみに設置しているため、曲げによるひずみと軸力によるひずみの分離はできない。従って、発生したひずみは全て曲げによるひずみであると仮定して扱うこととなる。
以上の前提に基づいて以下説明する。
例えば、σMA(0)=150[MPa]、σMB(0)=130[MPa]とする。
(2)本例では、ひずみゲージ9を磁歪センサで測定したA,Bリングの中間位置(本実施の形態ではδ=400mmとする)に設置したので、当該位置の応力σM(0)を、σM(0)=1/2*(σMA(0)+σMB(0))として求める。
具体的には、σM(0)=1/2*(150+130)=140[MPa]
計測値として、εa(0)=+123[μ]、εb(0)=−77[μ]、εc(0)=+567[μ]を得る。
このとき、導管3の表面温度を接触式温度計で計測し、計測ひずみの温度補正を行うのが望ましい。
計測値として、εa(1)=+196[μ]、εb(1)=+2[μ]、εc(1)=+638[μ]を得る。
(5)1年間での各ゲージ(a,b,c)によるひずみの変化は、
Δεa(1)=εa(1)−εa(0)=+196−123[μ]=+73[μ]
Δεb(1)=εb(1)−εb(0)=+2−(−77)[μ]=+79[μ]
Δεc(1)=εc(1)−εc(0)=+638−567[μ]=+71[μ]
となる。
ここで、3枚のひずみ値を比較し、他の2枚と突出した相違を示すひずみ値があった場合は、当該ひずみ値を表示したひずみゲージ9は不良と判断し評価対象から除外する。また当該ひずみゲージ9については取り付け直しを行い、他の2枚の健全ゲージのひずみの変化量を用いて、ひずみ値の盛り換えを行う。
今回のひずみ値は突出した相違を示すものはないので、全てのひずみゲージ9を健全として取り扱う。
(6)1年間のひずみの変化の平均値は、
Δε(1)=1/3*(Δεa(1)+Δεb(1)+Δεc(1))
=1/3*(+73+79+71)
=+74[μ]
となる。
σ(1)=E*Δε(1)
=207.4[GPa]*74*10−6
=15[MPa]
となる。
(8)'15/07/01の曲げ応力は、
σM(1)=σM(0)+σ(1)
=140[MPa]+15[MPa]
=155[MPa]
となる。
(9) このときバルブ5に作用する最大応力σV(1)は図2より、
σV(1)=197[MPa]
となる。
(10)以降、(4)〜(9)を繰り返すことで、バルブ5に作用する最大応力の経年変化を把握する。
実施の形態2によれば、所定期間毎にバルブ5に作用する応力を検知することができ、計測時点でのバルブ応力状態を把握することができる。
さらに、所定期間毎に計測した結果から、将来に向けてバルブ交換時期などを把握できると、バルブ交換の費用等の計画を立てやすく望ましい。
本実施の形態のバルブ寿命予測方法は、かかる要請に応えるものであり、実施の形態2において説明した付加応力検知工程(S5)及び第2バルブ応力推定工程(S7)を、予め定めた所定の期間ごとに繰り返して実施し、各期間で推定されたバルブ応力に基づいて将来のバルブ応力を推定し、該推定値と前記バルブ5の許容できる応力値として規定した閾値に基づいて前記バルブ5の寿命を予測することを特徴とするものである。
以下、具体例に基づいて説明する。
このときバルブ5に作用する最大応力は図2より、σV(0)=185[MPa]を得る。
(b)実施の形態2の(3)〜(7)と同様の方法により、'15/07/01(ひずみゲージ9取り付けから1年後)にひずみを計測し、
σ(1)=15[MPa]
を得る。
(c)よってこの時の曲げ応力は、
σM(1)=σM(0)+σ(1)
=140+15
=155[MPa]
となる。
(d)このときバルブ5に作用する最大応力は図2より、
σV(1)=197[MPa]
を得る。
σ(2)=30[MPa]
を得る。
よって、この時の曲げ応力は
σM(2)=σM(0)+σ(2)
=140+30
=170[MPa]
となる。
このときバルブ5に作用する最大応力は図2より、
σV(2)=210[MPa]
を得る。
(f)'17/07/01(ひずみゲージ9取り付けから3年後)にひずみを計測し、
σ(3)=45[MPa]
を得る。
よって、この時の曲げ応力は、
σM(3)=σM(0)+σ(3)
=140+45
=185[MPa]
となる。
このときバルブ5に作用する最大応力は図2より、
σV(3)=222[MPa]
を得る。
なお、図8において、導管3の応力推移を線形的に増加すると仮定しているが、非線形な傾向を示す場は、必要に応じて多項次式、指数式などに回帰して推定する。
(h)'15〜'17年(ひずみゲージ9取り付けから1〜3年後)に測定された導管3の応力から得たバルブ5に作用する最大応力をプロットすると、図9の黒塗り三角となり、これをつなぐ実線の傾向が示される。
また、'18年(ひずみゲージ9取り付けから4年後)以降の導管3の推定応力から得たバルブ5に作用する最大応力をプロットすると図9の白抜き三角のプロットとなり、これによって破線の傾向が示される。
仮にバルブ5の応力許容値を250MPaとすると、5.6年後('19年半ば過ぎ)に、この許容応力に達することになる。
このように、バルブ5の寿命予測を行うことができる。
A現場測定値及びC現場測定値から将来の導管応力を予測したものを破線で示している。
また、'18年(ひずみゲージ9取り付けから4年後)以降の導管3の推定応力から得たバルブ5に作用する最大応力をプロットすると図11の白抜き丸プロット、白抜き四角プロットとなり、これによって破線の傾向が示される。
図11から、A現場のバルブ5が許容応力に達する時期は4年後(’18年早々)と推定され、またC現場のバルブ5が許容応力に達する時期は6.5年後('19年半ば)と推定できる。
1a 壁
3 導管
5 バルブ
5a リブ
7 フランジ部
9 ひずみゲージ
11 リード線
13 防水コネクタ
15 マンホール
17 携帯型データロガー
Claims (4)
- 地中に構築されたピット内に設置され、地中に埋設された導管がその両側に接続されるバルブに作用する応力検知方法であって、
前記ピット内でかつ、前記バルブの両側に接続された前記導管における前記バルブとの接続部から所定距離離れた部位について、非破壊試験方法によって当該部位における導管に作用する応力を検知する導管応力検知工程と、
該導管応力検知工程によって検知された応力に基づいてバルブに作用する応力を推定する第1バルブ応力推定工程を有し、
該第1バルブ応力推定工程は、予め求めた導管応力とバルブ応力の関係に基づいて推定することを特徴とするバルブ応力検知方法。 - 請求項1記載の方法によって検査開始時にバルブに作用している応力を検知する初期バルブ応力検知工程と、
該初期バルブ応力検知工程時点において前記導管にひずみゲージを設置するひずみゲージ設置工程と、
所定期間経過後において、所定期間中に導管に付加された応力をひずみゲージによって検知する付加応力検知工程と、
前記初期バルブ応力検知工程の前記導管応力検知工程で検知した応力と、付加応力検知工程で検知された応力に基づいて前記導管に作用している応力を求め、該応力に基づいてバルブに作用する応力を推定する第2バルブ応力推定工程を有し、
該第2バルブ応力推定工程は、予め求めた導管応力とバルブ応力の関係に基づいて推定することを特徴とするバルブ応力検知方法。 - 前記ひずみゲージ設置工程は、3個以上の奇数個のひずみゲージを設置し、前記付加応力検知工程は、奇数個のひずみゲージによって検出されたひずみ値を比較して、他のひずみ値に比較して予め定めた範囲を超えて突出する値を示したひずみゲージを除外して残りのひずみゲージのひずみ値によって行うことを特徴とする請求項2記載のバルブ応力検知方法。
- 請求項2又は3に記載のバルブ応力検知方法を用いたバルブ寿命予測方法であって、
前記付加応力検知工程及び第2バルブ応力推定工程を、予め定めた所定の期間ごとに繰り返して実施し、各期間で推定されたバルブ応力に基づいて将来のバルブ応力を推定し、該推定値と前記バルブの許容できる応力値として規定した閾値に基づいて前記バルブの寿命を予測することを特徴とするバルブ寿命予測方法。
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