JP6320138B2 - 電界吸収型半導体光変調器 - Google Patents

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Description

この発明は、半導体光変調器、特に電界吸収型光変調器(以下、「EA光変調器」とも称する)に関する。当該半導体光変調器は、例えば光ファイバー通信で用いられる。
光ファイバー通信システムでは、様々な光半導体素子が研究、開発され、利用されている。光変調可能で簡単な構造の光素子として、例えば単一波長発振が可能なDFB−LD(Distributed Feed Back Laser Diode)やDBR−LD(Distributed Bragg Reflector Laser Diode)と称される半導体レーザーがある。
半導体レーザーの駆動電流によって光変調する直接変調方式では、注入キャリアの変動に伴った屈折率変化により、発振波長の変動、いわゆる動的チャープが発生する。動的チャープは、高速変調時あるいは長距離ファイバーにおいて、伝送後の信号光波形を著しく劣化させてしまう。
かかる事情に鑑みて、半導体レーザーとシリアルにEA光変調器を集積することで、チャープを低減したEA光変調器付き半導体レーザーが広く用いられている。
EA光変調器では、多重量子井戸を吸収層として利用する。多重量子井戸は、例えば下記の特許文献1〜3において、P-I-N構造のEA光変調器に用いられた場合が開示されている。
特開平11−212036号公報 特開2003−255286号公報 特開2001−13472号公報
P-I-N構造のEA光変調器に用いられる多重量子井戸では、吸収層で光が吸収されることで、吸収層のうち井戸層(ウェル層)に電子と正孔が発生する。発生した電子と正孔が井戸層に蓄積されると、吸収層の吸収係数が大きいほど消光比が小さくなる。あるいは当該蓄積はパターン効果を招来し、マスクマージンが劣化する。
よって、EA光変調器を高速で動作させるためには、電子と正孔が井戸層に留まらせない必要がある。そこで電子と正孔とを、吸収層を挟むP型クラッド層あるいはN型クラッド層へ拡散させる必要があった。
特許文献1では、電子と比べても特に井戸層に留まりやすい正孔の蓄積を防ぐため、価電子帯の井戸層と障壁層のポテンシャル高さを80meV以下の量子井戸を利用することを提案している。低電圧で高い消光比を得るには井戸層を厚くすることが考えられる。しかしながら、このようなポテンシャルの低い量子井戸において井戸層を厚くすると、印加する電圧の増加とともに電子と正孔が空間的に乖離してしまう。このような状況は、吸収係数が減少して逆に消光比を低下させてしまう問題があった。
特許文献2では、井戸層と障壁層(バリア層)の間に、それらに対し中間のエネルギーギャップを有する中間層を挿入することを提案している。中間層はチャープを低減する。このような構造では、電圧印加時の電子と正孔の空間的な乖離を抑制することができる。しかし電子、正孔の閉じ込めが強いため、電圧印加による吸収スペクトルの変化量が小さくなる。これでは消光比が大きくならないという問題があった。
この発明は、現在光通信デバイスの材料として産業用、研究用に広く利用されており、量産技術が確立され、信頼性のあるInGaAsPとInGaAlAsとを組み合わせた量子井戸において、その積層構造を工夫することにより、上記の問題点を解決することを目的とする。
この発明にかかる電界吸収型半導体光変調器の第1の態様は、P型不純物でドーピングされたPクラッド層と、N型不純物でドーピングされたNクラッド層と、前記Pクラッド層と前記Nクラッド層との間に設けられる多重量子井戸とを備える電界吸収型半導体光変調器である。
前記多重量子井戸では複数の量子井戸が周期的に積層され、前記量子井戸の各々が、前記Pクラッド層から前記Nクラッド層へ向かって順に、井戸層、中間層、障壁層を有する。
前記井戸層のバンドギャップよりも前記中間層のバンドギャップが大きく、前記中間層のバンドギャップよりも前記障壁層のバンドギャップが大きい。
前記障壁層と前記中間層の材料はいずれもAlGaInAsであり、前記井戸層の材料はInGaAsPである。
この発明にかかる電界吸収型半導体光変調器の第2の態様は、その第1の態様であって、前記井戸層の価電子帯のエネルギー端と、前記中間層の価電子帯のエネルギー端とは一致する。
この発明にかかる電界吸収型半導体光変調器の第3の態様は、その第1の態様であって、前記井戸層と前記中間層との層厚の和が10nm以上15nm以下である。
この発明にかかる電界吸収型半導体光変調器の第4の態様は、その第1の態様であって、前記障壁層には引張ひずみが、前記井戸層には圧縮ひずみが、それぞれ生じている。
この発明にかかる電界吸収型半導体光変調器の第5の態様は、その第1の態様であって、前記中間層には引張ひずみが、前記井戸層には圧縮ひずみが、それぞれ生じている。
この発明にかかる電界吸収型半導体光変調器の第1の態様によれば、価電子帯のエネルギー端を小さく維持しても、電界印加時の電子と正孔の波動関数の重なりを大きくできるので、低電圧かつ高速で駆動されることができる。
この発明にかかる電界吸収型半導体光変調器の第2の態様によれば、正孔の蓄積を抑制して消光比を大きくし、かつ、離調量を小さくして必要な駆動電圧が小さくなる。
この発明にかかる電界吸収型半導体光変調器の第3の態様によれば、正孔の蓄積が低減されるので、大きな消光比が得られる。
この発明にかかる電界吸収型半導体光変調器の第4の態様は、1.3μmの波長通信帯で用いる場合に好適である。
この発明にかかる電界吸収型半導体光変調器の第5の態様は、1.55μmの波長通信帯で用いる場合に好適である。
EA光変調器付半導体レーザーの構成を示す斜視図である。 EA光変調器の構造を示す断面図である。 多重量子井戸の吸収スペクトルを示すグラフである。 EA光変調器の光消光量と逆バイアスとの関係を示すグラフである。 実施の形態1における吸収層の近傍の構成を示すバンドダイアグラムである。 実施の形態1における量子井戸の構成を示すバンドダイアグラムである。 実施の形態1の比較となる量子井戸の構成を示すバンドダイアグラムである。 実施の形態1における量子井戸の電子の第1準位と正孔の第1準位の波動関数を示す図である。 実施の形態1の比較となる量子井戸の電子の第1準位と正孔の第1準位の波動関数を示す図である。 実施の形態1における量子井戸の電子の第1準位と正孔の第1準位の波動関数を示す図である。 実施の形態1の比較となる量子井戸の電子の第1準位と正孔の第1準位の波動関数を示す図である。 実施の形態1における量子井戸と、比較となる量子井戸の電子の、第1準位と正孔の第1準位の波動関数の重なり積分と電界の関係を示す図である。 実施の形態1の比較となる量子井戸を用いたEA光変調器の、印加電圧と消光比の関係を示す図である。 実施の形態1における量子井戸を用いたEA光変調器の、印加電圧と消光比の関係を示す図である。 EA光変調器の、実施の形態1における量子井戸、その比較となる量子井戸をそれぞれ用いた場合の、光出力と消光比の関係を示す図である。 実施の形態2における量子井戸の構成を示すバンドダイアグラムである。
基本的構成.
実施の形態の詳細な説明に先立ち、下記実施の形態が適用されるEA光変調器付半導体レーザーについて説明する。
図1はEA光変調器付半導体レーザーの構造を示す斜視図である。N−InP基板1上に半導体レーザーとしてのDFBレーザー20とEA光変調器10とが、電気的に分離されつつシリアルに配置されている。DFBレーザー20は連続駆動されて発振し、単一波長の光がEA光変調器10に導波される。EA光変調器10には、その駆動電圧として変調信号Vmが印加される。これらにより、変調された光(ON/OFF信号)LmがEA光変調器10から出力される。
図2はEA光変調器10の典型的な構造を示す断面図である。EA光変調器10はハイメサ構造であり、N−InP基板1上にN−InP(即ちN型不純物でドーピングされたInP)からなるNクラッド層2、多重量子井戸構造からなる吸収層3、P−InP(即ちP型不純物でドーピングされたInP)からなるPクラッド層4、P側電極5の順に積層されている。吸収層3は、Nクラッド層2とPクラッド層4によって挟まれた絶縁体であり、井戸層と障壁層が交互に積層された多重量子井戸から構成される。なお、導波路の構造は、ハイメサ構造以外に、埋込構造、リッジ構造でもよい。N−InP基板1上にはN側電極6も設けられる。
EA光変調器10の動作原理を述べる。図3はEA光変調器10の吸収層3における多重量子井戸の吸収スペクトルを示すグラフである。DFBレーザー20の発振光の波長λ2は、吸収層3のフォトルミネッセンス波長λ1から離調量Δλで離調する。
変調信号Vmが“ON状態”では吸収層3に逆バイアスは印加されず、電界は大きくない(曲線E2)。よってDFBレーザー20からの発振光は、吸収層3で吸収されにくく、EA光変調器10から出力される。
変調信号Vmが“OFF状態”では、吸収層3に逆バイアスが印加され、ここでの電界が大きくなる(曲線E1)。これにより、波長λ2における吸収量が増え、EA光変調器10からは発振光が出力されない。EA光変調器10の性能として、ON状態の光出力がなるべく大きく、OFF状態の光出力がなるべく小さくなるような特性が望まれている。
なお、データセンタで利用されるEA光変調器付半導体レーザーは、小さな電流で半導体レーザーを駆動し、小さな電圧でEA光変調器を駆動し、しかも高温で動作することが望まれる。
図4はEA光変調器の光消光量と逆バイアスとの関係を示すグラフである。変調信号Vmを吸収層3に対する逆バイアス(Nクラッド層2がPクラッド層4よりも高電位である)として把握している。曲線は離調量Δλが異なる値をとる場合に対応している。図4からは、離調量Δλが小さいほど、ある消光比を得るための逆バイアスが小さくて足りることが判る。
実施の形態1.
図5は実施の形態1によるEA光変調器の吸収層3近傍の構成を、逆バイアス電圧を印加した状態での伝導帯および価電子帯のバンドダイアグラムで表した図である。価電子帯については重い正孔のエネルギー端Evを記している。
吸収層3は、複数の量子井戸30(例えば10層)が周期的に積層された多重量子井戸として把握することができる。吸収層3はNクラッド層2とPクラッド層4との間に設けられる。
量子井戸30は、その各々が、Pクラッド層4からNクラッド層2へ向かって順に、井戸層31、中間層32、障壁層33を有している。いずれの量子井戸30についても、電界を印加しない状態での吸収端は一致する。
以下に、本発明の実施の形態として1.3μmの波長帯で動作するEA光変調器付半導体レーザーに関して説明する。
図6は量子井戸30の構成を例示するバンドダイアグラムである。ここでは井戸層31、中間層32、障壁層33の一組についてのみ示し、Nクラッド層2のフェルミ準位とPクラッド層4のフェルミ準位(図5においていずれも鎖線で描画)の相違によるバンドの傾斜は無視して描いた。
井戸層31は、厚みが5.5nm、バンドギャップに相当する波長が1340nm、圧縮ひずみが0.5%のInGaAsPで構成される。中間層32は、厚みが5nm、バンドギャップに相当する波長が1170nm、ひずみが無いInGaAlAsで構成される。障壁層33は、厚みが6nm、バンドギャップに相当する波長が1120nm、引張ひずみが0.55%のInGaAlAsで構成される。
図5では吸収層3とNクラッド層2との間に光閉じ込め層7を、吸収層3とPクラッド層4との間に光閉じ込め層8を、それぞれ設けた構成を例示した。光閉じ込め層7,8は井戸層31よりもバンドギャップが大きく、例えばInGaAlAsおよびInGaAsPを用いて実現できる。但し、本実施の形態の効果を得る観点では、光閉じ込め層7,8が省略できる。
光閉じ込め層7が採用される場合、光閉じ込め層7に隣接する量子井戸30では障壁層33が省略される。
量子井戸30では、電子のエネルギー端Ecは、井戸層31から中間層32へ向かって段差を以て高まり、更に中間層32から障壁層33へ向かって段差を以て高まる。また、井戸層31と中間層32の、それぞれのエネルギー端Evは一致する。このようなバンド構造は、井戸層31を構成するInGaAsPと、中間層32を構成するInGaAlAsと、障壁層33を構成するInGaAlAsとの組成比を調整することによって実現できる。
量子井戸30を用いたEA光変調器において消光比が低下するのを避けるためには、井戸層31に電子と正孔が蓄積されないよう、重い正孔のポテンシャル高さ(井戸層31、中間層32と障壁層33との間のエネルギー端Evの段差)を小さな値にすることが望まれる。例えば、EA光変調器を25ギガビット毎秒で動作させるときには、以下の理由により、重い正孔のポテンシャル高さは50meV程度にすることが望ましい。
正孔が井戸層31および中間層32から障壁層33へ熱放出される時定数τは、正孔の質量をm、ポテンシャル高さと準位エネルギー差をまとめてΔEvとし、井戸層31と中間層32の層厚の和をL、ボルツマン定数をk、温度をTとして次式で求められる:τ=[(k・T/(2π・m・L))1/2・exp(−ΔEv/(k・T))]−1
よって重い正孔のポテンシャル高さが50meV程度であれば、時定数τは2ps程度になり、25ギガビット毎秒で動作させても、正孔が蓄積することはない。
同様に、電子についても井戸層31および中間層32から障壁層33へ熱放出される時定数τは2ps程度となり、25ギガビット毎秒で動作させても電子が蓄積されることはない。
このような量子井戸30を積層して吸収層3を成膜するとき、井戸層31を構成するInGaAsP、中間層32を構成するInGaAlAsについての組成比が、成膜プロセス中にばらつくことがありえる。この組成比のばらつきは、各層のバンドエネルギー端の揺らぎを招く可能性もある。しかし本実施の形態では、井戸層31と中間層32のエネルギー端Evは、±5meVの範囲内で一致すれば効果を発揮する。
比較のため、特許文献1で例示されるような量子井戸構造のバンドダイアグラムを図7に示した。井戸層34は厚さ10.5nmのInGaAlAsで構成されており、図6で示された構成の井戸層31、中間層32の合計と同じ厚さを有している。よって井戸層34は、図6の構成の井戸層31、中間層32に代替すると把握できる。井戸層34のバンドギャップは井戸層31のそれと等しく(波長に換算して1340nm)、図7の障壁層33は図6の障壁層33と同一の構成を有している。
以下、図6及び図7の構成において障壁層33を9層設ける場合について説明する。図6の構成(以下、そのバンドダイアグラムの形状に鑑みて、これを「片階段ポテンシャル量子井戸」と称する)を用いて吸収層3を構成する場合には井戸層31と中間層32との対を、図7の構成(以下、そのバンドダイアグラムの形状に鑑みて、これを「方形ポテンシャル量子井戸」と称する)を用いて吸収層3を構成する場合には井戸層34を、いずれも10層設ける。光閉じ込め層7,8が吸収層3を挟むので、障壁層33を10層設ける必要はない。
いずれの構成においても、25ギガビット毎秒で動作させることを想定して、重い正孔のポテンシャル高さを、同じ50meV程度とする。
図8〜11は片階段ポテンシャル量子井戸と方形ポテンシャル量子井戸に電界を印加したときの電子の第1準位の存在確率を表す波動関数(|Ψ(x)|)の振る舞い(実線)と、正孔の第1準位の存在確率を表す波動関数(|Ψ(x)|)の振る舞い(破線)を示す。これらの図において横軸xは、量子井戸の積層方向の位置を表し、横軸において右に向かう方向はNクラッド層2へ向かう方向である。縦の細線は井戸層34(あるいは井戸層31と中間層32との対)と障壁層33との境界の位置を表す。これらの図において電子、正孔のそれぞれ第1準位の波動関数の振る舞いを示すのは、これら準位間の状態遷移にともなう光吸収がEA光変調器の消光比を決めるからである。
図8及び図10は片階段ポテンシャル量子井戸について示し、図9及び図11は方形ポテンシャル量子井戸について示す。図8及び図9は変調信号Vmによって印加される電界強度が10kV/cmの場合を、図10及び図11は当該電界強度が70kV/cmの場合を、それぞれ示す。
電界強度が10kV/cmと小さいときには、片階段ポテンシャル量子井戸、方形ポテンシャル量子井戸ともに電子の波動関数と正孔の波動関数の空間的な空間分布が同等で、それらの重なり積分が大きく、その結果吸収係数が大きくなる(図8及び図9参照)。
これに対して電界強度が70kV/cmと大きくなると、方形ポテンシャル量子井戸の電子の波動関数が大きくNクラッド層2の方向(横軸右側)に分布するようになり、Pクラッド層4の方向に分布している正孔との波動関数との重なり積分が急激に小さくなる(図11)。これにより吸収係数は急激に減少する。
一方、片階段ポテンシャル量子井戸の場合は、電界強度が70kV/cmと大きくなっても、伝導帯のポテンシャルがNクラッド層2側で階段状に高くなっているため、電子の波動関数がNクラッド層2の方向に分布することはない。よって電子の波動関数と正孔との波動関数の重なり積分は大きく(図10)、吸収係数も大きな値を維持する。
図12は、印加する電界と電子の波動関数と正孔の波動関数との重なり積分(|<Ψ|Ψ>|)の関係を、片階段ポテンシャル量子井戸(実線)、方形ポテンシャル量子井戸(破線)の両方について示す。上述したように、方形ポテンシャル量子井戸の場合は重なり積分は印加する電界とともに急激に小さくなるが、片階段ポテンシャルの場合は減少量が小さい。このことから、吸収係数の減少量は、片階段ポテンシャルの場合は抑制される。これは消光比を大きくする観点で望ましい。
図13に、方形ポテンシャル量子井戸を用いたEA光変調器付半導体レーザーについて、EA光変調器に印加する電圧と光出力の関係(以下、DC消光カーブと呼ぶ)を示す。図14に、片階段ポテンシャル量子井戸を用いたEA光変調器付半導体レーザーについて、DC消光カーブを示す。いずれの図についても、DC消光カーブは、0Vでの光出力で規格化しており対数スケールで表示している。これらのEA光変調器付半導体レーザーは、方形ポテンシャル量子井戸を用いるか、片階段ポテンシャル量子井戸を用いるかのみ相違し、他の構成は共通とした。
方形ポテンシャル量子井戸を用いたEA光変調器付半導体レーザーでは、光出力を大きくしつつ消光比(オン信号とオフ信号の光強度比)10dBを得るためには、例えば0V〜1.3Vの範囲で電圧を掃引する必要がある。
一方、片階段ポテンシャル量子井戸を用いたEA光変調器付半導体レーザーでは、光出力は電圧とともに急激に減少し、消光比は増加する。このデバイスで消光比10dBを得るためには0V〜1.0Vの範囲で電圧を掃引すれば足りる。
図15に、図13でDC消光カーブを示した方形ポテンシャル量子井戸を用いたEA光変調器付半導体レーザーについて(実線及び黒四角)と、図14でDC消光カーブを示した片階段ポテンシャル量子井戸を用いたEA光変調器付半導体レーザーについて(破線及び白四角)、それぞれを変調速度25ギガビット毎秒、変調電圧振幅1.5V、レーザー駆動電流60mA、素子温度60℃で動作させた時の結果を示す。
グラフは変調電圧の中心値を変えたときの光出力と消光比の関係を表している。同じ光出力で比較した場合、片階段ポテンシャル量子井戸を用いた方が、消光比が4dB程度大きくなっている。以上のように、InGaAlAsを用いた従来型の量子井戸に比べ、InGaAsPとInGaAlAsを用い伝導帯のみ階段状の量子井戸を用いた方が変調電圧振幅と光出力の関係を向上できる。
このようにして中間層32によって、電界印加時においても電子の波動関数の分布はNクラッド層2側にずれずにPクラッド層2側に局在させることができる。よって正孔のポテンシャル高さを小さくしても、電子と正孔の波動関数の重なりを大きくできるので、消光比、光出力が大きくなる。これにより、吸収層3を用いたEA光変調器付半導体レーザーを、低電圧かつ高速で駆動することができる。
なお、井戸層31のエネルギー端Evが中間層32の価電子帯のエネルギー端Evよりも低いと、中間層32が正孔のポテンシャル高さを高めてしまい、正孔が蓄積されやすくなってしまう。これは消光比の低下を招いてしまう。他方、井戸層31のエネルギー端Evは高い方が、バンドギャップを小さくし、吸収層3のフォトルミネッセンス波長λ1を長波長側にシフトさせる点で望ましい。これは発振光の波長λ2の離調量Δλを小さくし、ある消光比を得るために必要な駆動電圧が小さくて済むからである(図3及び図4参照)。
別の観点では、エネルギー端Evが一致するバンド構造を有する空間的な領域が広がるので、価電子帯の正孔の、電界変化にともなう空間分布の変化量が大きい。これにより、電圧印加/非印加による吸収スペクトルの相違を大きくすることができる。これは、大きな消光比と、ON状態での小さな吸収損失(図4参照)とが両立できる、という観点でも望ましい。
よって井戸層31のエネルギー端Evが中間層32の価電子帯のエネルギー端Evと一致することは、正孔の蓄積を抑制して消光比を大きくし、かつ、離調量Δλを小さくして必要な駆動電圧を小さくするという利点がある。
なお、時定数τ求める既出の式に鑑みれば、井戸層31と中間層32の層厚の和Lは小さい方が時定数τを小さくできるので正孔の蓄積を低減でき、以て消光比を大きくできる。よって本実施の形態のように、井戸層31と中間層32の層厚の和は10nm程度、厚くとも15nm程度であることが望ましい。
また、障壁層33に引張ひずみが、井戸層31に圧縮ひずみが、それぞれ生じていることも、吸収層3を用いたEA光変調器付半導体レーザーを1.3μmの波長通信帯で用いる場合に好適である。
実施の形態2.
以下に、本発明の実施の形態として1.55μmの波長帯で動作するEA光変調器付半導体レーザーに関して説明する。
図16に本発明の実施の形態2による片階段ポテンシャルの量子井戸30の構造を示し、図6と同様に、井戸層31、中間層32、障壁層33の一組についてのみ示し、Nクラッド層2のフェルミ準位とPクラッド層4のフェルミ準位(いずれも鎖線で描画)の相違によるバンドの傾斜は無視して描いた。
井戸層31は、厚みが5nm、バンドギャップに相当する波長が1660nm、圧縮ひずみが0.5%のInGaAsPで構成される。中間層32は、厚みが5nm、バンドギャップに相当する波長が1540nm、引張ひずみが−0.55%のInGaAlAsで構成される。障壁層33は、厚みが5nm、バンドギャップに相当する波長が1330nm、ひずみがないInGaAlAsで構成される。
吸収層3は、井戸層31及び中間層32が7層ずつ、障壁層33が6層、積層されている(図5も参照)。
量子井戸30は井戸層31と中間層32の重い正孔のバンドエネルギー端が一致するようにInGaAsPとInGaAlAsとの組成比が調整されている。実施の形態1と同様に製造プロセスで発生する井戸層31のInGaAsPと中間層32のInGaAlAsの組成比がばらついたときに、重い正孔のバンドエネルギー端が±5meVの範囲内で一致すればよい。この量子井戸30でも、重い正孔のポテンシャル高さが実施の形態1と同様に、50meV程度になっている。
よって本実施の形態でも実施の形態1と同様にして、吸収層3を用いたEA光変調器付半導体レーザーを、低電圧かつ高速で駆動することができる。
なお、時定数τを求める既出の式に鑑みて、本実施の形態でも実施の形態1と同様に、井戸層31と中間層32の層厚の和は10nm程度、厚くとも15nm程度であることが望ましい。
一般に、1.55μm波長帯ではファイバーの波長分散が大きいので、ファイバー伝送に伴って光信号に歪みが発生する。そこでファイバー伝送特性を良好に維持するためには、EA光変調器付半導体レーザーの信号光のチャープ量を特に小さくすることが望まれる。よって本実施の形態のように、正孔の蓄積を低減する構成は、チャープ量を低減する観点で望ましい。10ギガビット毎秒のEA光変調器付半導体レーザーの伝送特性を、良好に維持しつつ、その駆動電圧を低減できる。
また、中間層32に引張ひずみが、井戸層31に圧縮ひずみが、それぞれ生じていることも、吸収層3を用いたEA光変調器付半導体レーザーを1.55μmの波長通信帯で用いる場合に好適である。
変形.
上述の量子井戸構造によりEA光変調器付半導体レーザーの駆動電圧を低減できる。更に、井戸層31、中間層32、障壁層33の層数を増加させ、さらにEA変調器の長さを減らすことにより、静電容量を小さくすることができる。例えば吸収層3において、それぞれ7層、7層、8層であって井戸層31、中間層32、障壁層33を、それぞれ14層、14層、13層に増やし、EA変調器の長さを100μmにすることによって、40ギガビット毎秒の伝送速度で動作することが可能となる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態や変形を自由に組み合わせたり、各実施の形態や変形を適宜、更に変形したり、省略したりすることが可能である。
2 Nクラッド層、3 吸収層(多重量子井戸)、30 量子井戸、31 井戸層、32 中間層、33 障壁層、4 Pクラッド層、Ev (重い正孔の)エネルギー端、L 井戸層と中間層の層厚の和。

Claims (5)

  1. P型不純物でドーピングされたPクラッド層と、N型不純物でドーピングされたNクラッド層と、前記Pクラッド層と前記Nクラッド層との間に設けられる多重量子井戸とを備える電界吸収型半導体光変調器であって、
    前記多重量子井戸では複数の量子井戸が周期的に積層され、
    前記量子井戸の各々が、前記Pクラッド層から前記Nクラッド層へ向かって順に、井戸層、中間層、障壁層を有し、
    前記井戸層のバンドギャップよりも前記中間層のバンドギャップが大きく、前記中間層のバンドギャップよりも前記障壁層のバンドギャップが大きく、
    前記障壁層と前記中間層の材料はいずれもAlGaInAsであり、
    前記井戸層の材料はInGaAsPであることを特徴とする、電界吸収型半導体光変調器。
  2. 前記井戸層の価電子帯のエネルギー端と、前記中間層の価電子帯のエネルギー端とは一致する、請求項1記載の電界吸収型半導体光変調器。
  3. 前記井戸層と前記中間層との層厚の和が10nm以上15nm以下である、請求項1記載の電界吸収型半導体光変調器。
  4. 前記障壁層には引張ひずみが、前記井戸層には圧縮ひずみが、それぞれ生じている、請求項1記載の電界吸収型半導体光変調器。
  5. 前記中間層には引張ひずみが、前記井戸層には圧縮ひずみが、それぞれ生じている、請求項1記載の電界吸収型半導体光変調器。
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