JP2010114158A - 電界吸収型光変調器集積レーザ素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、所定の伝送品質をそれぞれ満たすアンドープ層の層厚値の条件を満たす層厚値を有するアンドープ層を積層させた電界吸収型変調器を作製することで、所定の高速動作時において所定の長距離伝送が可能となる電界吸収型変調器集積レーザ素子の製造方法を提供することにある。
【解決手段】アンドープ層の層厚が異なる複数の電界吸収型変調器を作製し、帯域及びチャープ特性を測定し、これら特性とアンドープ層の層厚の相関図を作成することで、これら特性の層厚依存性が求まり、当該層厚値の条件を得る。
【選択図】図3
【解決手段】アンドープ層の層厚が異なる複数の電界吸収型変調器を作製し、帯域及びチャープ特性を測定し、これら特性とアンドープ層の層厚の相関図を作成することで、これら特性の層厚依存性が求まり、当該層厚値の条件を得る。
【選択図】図3
Description
本発明は、電界吸収型光変調器集積レーザ素子の製造方法に関する。
近年のインターネットの普及に伴い、光通信システム用途のレーザモジュールや送受信モジュールは高速・大容量化、そして中継機が不要で低コスト化につながる長距離伝送が要求されている。レーザモジュールに搭載される光送信素子の中で、電界吸収型光変調器(以下、EA(Electro-Absorption)変調器と略称する)は、変調時のチャープ(波長変動)が非常に小さい、光信号のONレベルとOFFレベルの差である消光比が大きい、広帯域、などの伝送時に必要な諸特性に有利な特性を持つだけでなく、小型で低コストであることより広く使われている。
従来技術について、伝送速度10Gbps、波長1.55μm帯EA変調器集積レーザ120の例を用いて説明する。EA変調器集積レーザ120の平面図を図1(a)に、図中a−aの断面図を図1(b)に、示す。なお、一般的なEA変調器の構造については、非特許文献1にて記載されている。
EA変調器集積レーザ120は、一定の駆動電流を注入することで連続発振する分布帰還型半導体レーザ(以下、DFBレーザ(Disutributed feedback laser)と記す)部141と、EA変調器部101が同一基板上にモノリシックに集積された構造を持つ。EA変調器部101の一般的な構造は、図1(b)に示す通り、歪多重量子井戸層(以下、MQW(Multi Quantum Well)層と記す)103を含むp型及びn型のいずれのドーパントも添加していない真性半導体層(i層)131を、p型InP層105とn型InP層100で挟んだp−i−n構造となっている。
EA変調器部101の多層構造は、厚さ40nm、組成1.15μmのアンドープのInGaAsP下側光ガイド層102の上に、InGaAsPのバリア組成波長λb=1.3μm、バリア層厚5nm、井戸層厚9nmで井戸層の層数8のMQW層103が積層され、さらに厚さ40nm、組成1.15μmのアンドープのInGaAsP上側光ガイド層104で構成されたi層131で構成される構造となっている。EA変調器部101のi層131の層厚は、197nmとなる。
なお、作製の際に、DFBレーザ部141のMQW層のフォトルミネッセンス波長が1555nm付近に、EA変調器部101のMQW層103のフォトルミネッセンス波長が1495nmとなるように、それぞれのMQW層のInGaAsP組成を調整してある。
また、EA変調器部101の全長は200μm、DFBレーザ部141の全長は400μm、パッシブ導波路部142の全長は50μmとした。
本EA変調器集積レーザ120について、近年の低消費電力の要求に対応すべく、駆動温度TLD=50℃において、光伝送試験を実施した。
まず、伝送速度を9.95Gbpsとした場合の、光伝送試験を実施した。40km(総分散800ps/nm)の光ファイバに対しては、EA変調器部101へVOH(Voltage Of High)を−0.2V、駆動振幅Vmodを2Vとして伝送試験を行い、その結果は、伝送ペナルティPdが0.8dBであった。伝送ペナルティPdの0.8dBという値は、伝送品質の基準となる2.0dBを大きく下回っており、40km光伝送用として、本レーザは十分な特性を示している。なお、ファイバ光出力は+2.5dBm、消光比は10.8dBを示しており、伝送品質の基準となる消光比10dB以上を満たしている。また、80km(総分散1600ps/nm)の光ファイバに対しては、駆動振幅は同様にVmod=2Vとして、VOHについては前述の場合より長距離伝送となることを考慮して、VOH=−0.5Vとする駆動条件に変えて、伝送試験を行った。その結果、伝送ペナルティPdは1.8dBとなった。伝送ペナルティは前述の場合よりも劣化しているものの、同様に基準値2.0dB以下であり、80km光伝送用としても、本レーザは十分な特性を示している。なお、ファイバ光出力は+0.5dBm、消光比は10.0dBを示しており、伝送品質の基準となる消光比10dB以上を満たしている。また、光伝送前アイ開口の品質を示すSONET OC−192/SDH STM−64にて規定されるマスクに対するマスクマージンMMについても測定をしたところ、24%という結果が得られ、アイ開口の品質基準値である10%以上を十分に満たしている。
次に、前述の9.95Gbpsに前方誤り訂正符号(以下、FEC(Forward Error Correction)と記す)を付加した場合の伝送速度に相当する10.7Gbpsを伝送速度とした場合の、光伝送試験も実施した。なお、本試験において、実際には、FEC信号は印加していない。40kmの光ファイバに対しては、同様に、VOH=−0.2V、駆動振幅Vmod=2Vとして伝送試験を行った結果、伝送ペナルティPdは1.2dBとなり、9.95Gbps駆動時と比較すると伝送ペナルティPdの値は低下しているが、伝送品質の基準値2.0dB以下を満たし、10.7Gbps駆動時においても、40km伝送用として、本レーザは十分な特性を示している。なお、前述のマスクマージンMMについても20%という結果が得られ、アイ開口の品質基準値である10%以上を十分に満たしている。
ところが、80kmの光ファイバに対して、同様に、VOH=−0.5V、駆動振幅Vmod=2Vとして伝送試験を行った結果、伝送ペナルティPdは2.5dBとなった。これは、伝送品質の基準値2.0dB以下を満たしておらず、10.7Gbps駆動時には、80km光伝送用として、本レーザは十分な特性を示していない。
エレクトロン レターズ 28巻(Electron. Lett.vol.28)、pp.1157-1158(1992)
エレクトロン レターズ 28巻(Electron. Lett.vol.28)、pp.1157-1158(1992)
従来技術に係るEA変調器集積レーザにおいては、40km伝送に対しては伝送速度が9.95Gbpsの場合も、10.7Gbpsの場合も、ともに光伝送が可能であったが、より長距離となる80km伝送において、伝送速度が9.95Gbpsの場合は光伝送可能であったにもかかわらず、10.7Gbpsの場合には、光伝送が実現できなった。その原因は、光ファイバ伝送中の光が受ける波長分散量は駆動信号周波数の2乗に比例しており、9.95Gbpsに対して10.7Gbpsでは、波長分散量が約1.15倍に増加している。よって、この波長分散量の増大に応じて、チャープ特性をさらに小さくする必要が生じてしまう。チャープ特性を小さくするには、EA変調器部への電界強度を強めるとよいことが知られている。同じ駆動振幅Vmod=2Vにおいては、i層の層厚を薄くすることにより、EA変調器部への電界強度を強めることが可能となる。
そこで、i層の層厚を薄くした場合の伝送速度10Gbps、波長1.55μm帯EA変調器集積レーザ220の具体例を以下に説明する。EA変調器集積レーザ220の平面図を図2(a)に、図中a−a断面図を図2(b)に、示す。
EA変調器部201の多層構造は、厚さ25nm、組成1.15μmのアンドープのInGaAsP下側光ガイド層202の上に、InGaAsPのバリア組成波長λb=1.3μm、バリア層厚5nm、井戸層厚9nmで層数6のMQW層203が積層され、さらに厚さ25nm、組成1.15μmのアンドープのInGaAsP上側光ガイド層204で構成されたi層231を含む構造となっている。EA変調器部201のi層231の層厚は139nmとなる。
従来技術に係るEA変調器集積レーザ120と同様に、i層231の層厚を薄くしたEA変調器集積レーザ220について、駆動温度TLD=50℃において、光伝送試験を実施した。
まず、伝送速度を9.95Gbpsとした場合の、光伝送試験を実施した。80kmの光ファイバに対して、EA変調器部201へVOHが−0.1V、駆動振幅Vmod=2Vとして伝送試験を行い、その結果、伝送ペナルティPdは1.0dBと良好な値を示した。さらに、伝送速度10.7dBとした場合にも、同様の試験を実施し、伝送ペナルティPdは1.5dBという結果が得られ、伝送品質の基準値2.0dB以下を満たすことが実現できた。
しかし、消光比については、8.5dBという結果となり、伝送品質の基準値である10dB以上を満たしていない。さらに、前述のマスクマージンMMについて5%という結果となり、アイ開口の品質基準値である10%以上も満たしていない。
MQWでの電子の閉じ込めが弱い場合に、消光比は小さい値を示す。i層を薄くするために、MQWの層数が少なくしなければならず、これにより、本EA変調器部201においてMQWは6層を有するが、この層数では、十分な消光比を得るだけの電子の閉じ込めを得られなかったことが原因といえる。i層を薄くしたことによって、高速動作時の光の応答遅延が発生し、キャリアの蓄積を招き、消光比を低下させたと考えられる。また、この応答遅延により、光波形の立ち上がりの劣化を招き、マスクマージンの劣化を引き起こしたといえる。
上記に示した通り、EA変調器部に含まれるi層の層厚によって、EA変調器レーザの伝送品質は変化する。しかし、i層の層厚が十分に大きい値を有する場合、マスクマージンなどの基準値は満たしていても、伝送ペナルティを満たさない状態になり得る。逆に、伝送ペナルティを向上させるために、i層の層厚の値を十分に小さくすれば、マスクマージンなどの基準値を満たさない状態になってしまう。よって、マスクマージン及び伝送ペナルティなどの基準値をすべて満たすi層の層厚値が得られれば、高速動作時に長距離伝送が可能となるEA変調器集積レーザが実現することとなる。
従来においては、マスクマージンなどの基準値を満たすよう十分に大きい層厚値によってi層を積層させてEA変調器部が作製されることが多く、他の伝送品質である伝送ペナルティについては、MQWの構造などを最適化させることにより、向上が図られ、最適なi層の層厚値により、EA変調器部の性能向上を図ることはなされていなかった。
本発明は、所定の伝送品質をそれぞれ満たすi層の層厚値の条件を求め、その条件を満たす層厚値を有するi層を積層させたEA変調器部を作製することで、所定の高速動作時において所定の長距離伝送が可能となるEA変調器集積レーザ素子の製造方法を提供することにある。
(1)本発明に係るレーザ素子は、半導体レーザ部と、該半導体レーザ部の出力側に配置される電界吸収型変調器部と、が形成され、前記電界吸収型変調器部には、互いに離間して位置する第1電極及び第2電極と、前記第1電極の前記第2電極側に接する第1の不純物添加領域と、前記第2電極の前記第1電極側に接する第2の不純物領域と、該第1と第2の不純物領域の間に位置し、該第1と第2の不純物添加領域より不純物の濃度が低い低濃度領域を含んでおり、本発明に係る当該レーザ素子の製造方法は、所定の変調性能を得られる最高変調周波数に応じた前記低濃度領域の層厚の下限値を求めるステップと、所定のチャープ特性に応じた前記低濃度領域の前記層厚の上限値を求めるステップと、前記上限値及び前記下限値を満たす層厚値を有する、前記低濃度領域を成膜するステップと、を含んでいる。
(2)上記(1)に記載のレーザ素子の製造方法において、前記低濃度領域の層厚が異なる複数の前記変調器を製造し、所定の変調信号を入力したときに、所定の変調性能を満たす最高変調周波数を測定するステップと、前期測定により、前記最高変調周波数の該層厚依存性を求めるステップと、前記依存性により、所定の最高変調周波数に応じた層厚より前記下限値を得るステップと、を含んでいてもよい。
(3)上記(2)に記載のレーザ素子の製造方法において、所定の光伝送前マスクマージンにより、所定の最高変調周波数を得るステップ、を含んでいてもよい。
(4)上記(1)に記載のレーザ素子の製造方法において、前記低濃度領域の層厚が異なる複数の前記変調器を製造し、変調により信号をオンされた場合とオフされた場合との屈折率変化と吸収率変化を測定するステップと、前記測定により、前記屈折率変化と前記吸収率変化の比の層厚依存性を求めるステップと、前記依存性により、所定の前記比の値に応じた層厚より前記上限値を得るステップと、を含んでいてもよい。
(5)上記(4)に記載のレーザ素子の製造方法において、所定の伝送ペナルティにより、所定の前記比の値を得るステップ、を含んでいてもよい。
(6)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の製造方法により製造されたレーザ素子において、前記低濃度不純物領域の両側部に配置される半絶縁半導体からなる埋め込み層を含んでいてもよい。
(7)上記(6)に記載のレーザ素子において、前記埋め込み層には、不純物として、鉄、もしくは、ルテニウムが添加されていてもよい。
(8)上記(6)に記載のレーザ素子において、前記第1の不純物領域の一部が、炭素が不純物として添加された半導体により構成され、前記第1電極に接していてもよい。
(9)上記(6)に記載のレーザ素子において、前記低濃度領域にInGaAlAsを含んでいてもよい。
(10)半導体モジュールが、上記(6)乃至(9)のいずれかに記載のレーザ素子を搭載していてもよい。
本発明により、所定の高速動作時において所定の長距離伝送が可能となるEA変調器集積レーザ素子の製造方法を提供することが出来た。
[実施形態1]
以下、本発明の実施形態1について、伝送速度10Gbps、波長1.55μm帯EA変調器集積レーザ320の例を用いて説明する。EA変調器集積レーザ320の平面図を図3(a)に、図中a−a断面図を図3(b)に、示す。
以下、本発明の実施形態1について、伝送速度10Gbps、波長1.55μm帯EA変調器集積レーザ320の例を用いて説明する。EA変調器集積レーザ320の平面図を図3(a)に、図中a−a断面図を図3(b)に、示す。
EA変調器集積レーザ320は、前述のEA変調器集積レーザ120と同様に、DFBレーザ部341とEA変調器部301が同一基板上にモノリシックに集積された構造を持つ。
EA変調器は半導体レーザと組み合わされたレーザモジュールとして使用され、一般には温度制御機構を用いて温度を一定とさせた状態で使用される。半導体レーザに駆動電流を注入することで出力される連続光を、EA変調器に電気信号を印加することで光変調を行い、信号光を出力する。EA変調器部301の一般的な構造は、図3(b)に示す通り、MQW層303を含むp型及びn型のいずれのドーパントも添加していない真性半導体層(i層)331を、前記第1の不純物領域としたp型InP層105と前記第2の不純物領域としたn型InP層100で挟んだp−i−n構造となっている。また、前記低濃度領域とは、いわゆるアンドープ層と呼ばれるi層331を示しており、第1及び第2の不純物領域より不純物の濃度が低い場合のみならず、不純物が全く含まれない場合も含むものとする。
EA変調器の動作原理を、以下に説明する。バイアス電圧を印加していない状態では半導体レーザの出力光波長よりEA変調器の吸収波長は短波にあるため、半導体レーザ光はEA変調器を通過して出力される。これがONレベル信号となる。そしてEA変調器に逆バイアス電圧を印加した場合はi層に電界がかかり、量子閉じ込めシュタルク効果によりMQWの吸収波長が長波側にシフトすることで半導体レーザ光は吸収され、EA変調器からはほとんど光が出てこない状態となる。これがOFFレベルの信号となる。
また光導波が行われるメサ部分の両脇を半絶縁のInPで埋め込んだBH(Burried Hetero)構造もよく使われている。BH構造はリッジ構造と比較して、放熱性で優れる、横方向に光閉じ込めが強まるためにFFP(Far Field Pattern)が円形となりファイバとの結合効率が向上するなどの利点がある。
EA変調器の主なる特性として、帯域とチャープ特性がある。帯域とは、所定の変調信号を入力したときに、所定の変調性能を満たす最高変調周波数であり、どれだけ高い周波数まで高速変調可能かを示すパラメータであるとともに、変調時の光波形の品質にも影響する特性となっている。また、チャープ特性は、変調時における波長変動を示すパラメータであり、光ファイバ伝送時の光波形がどの程度劣化するかを表している。一般的に、チャープ特性は、αパラメータを用いて表されることが多い。ここで、αパラメータとは、変調により信号をオンされた場合とオフされた場合との屈折率変化と吸収率の変化の比で定義される。
前述のEA変調器部101及び201における帯域及びチャープ特性についての測定結果を記す。帯域については、小信号f3dB帯域を測定し、チャープ特性については、前述のαパラメータを測定した。ここで、小信号f3dB帯域とは、低周波での光応答と基準(0dB)にしたときに、周波数を高くしてその応答が−3dBになる周波数を言う。f3dB帯域とは、一般に、カットオフ周波数や遮断周波数とも呼ばれている。
まず、従来技術にかかるEA変調器部101については、DFBレーザ部141への注入電流Iop=100mA、EA変調器部101への印加電圧VEA=−0.5Vとして測定を行い、小信号f3dB帯域は16GHz、αパラメータ0.2という結果が得られた。
また、i層を薄くしたEA変調器部201については、DFBレーザ部241への注入電流Iop=100mA、EA変調器部201への印加電圧VEA=−0.1Vとして測定を行い、小信号f3dB帯域は12GHz、αパラメータ−0.1であった。
帯域を大きくするためには、素子容量を低減することが知られている。EA変調器は、p−i−n構造をしているために、EA変調器は一般の平面板コンデンサと同様に考えられるので、i層の層厚が厚くなると、EA変調器の素子容量が軽減し、帯域が大きくなる。i層231の層厚が139nmであるEA変調器部201のf3dB帯域が12GHzであるのに対してi層131の層厚値が197nmと大きくなっているEA変調器部101のf3dB帯域は16GHzと大きくなっている。上述の通り、素子容量が低減すると、光の応答遅延が抑制され、光波形の立ち上がりが向上し、マスクマージンMMは向上するので、帯域と、伝送品質の一つであるマスクマージンMMと強い相関がある。
また、チャープ特性は、MQWに印加される電界強度が強まることで、小さくなる。等しい電圧を印加した場合、i層の層厚が薄くなると、それに応じて、電界強度が強くなるので、チャープ特性は小さくなる。EA変調器部101のαパラメータが0.2であるのに対して、i層231の層厚値が小さいEA変調器部201のαパラメータは0.1と小さくなっている。上述の通り、チャープ特性が小さくなると、それに応じて、伝送ペナルティPdが小さくなる。すなわち、チャープ特性と伝送ペナルティPdは強い相関がある。
よって、小信号f3dB帯域など帯域と、αパラメータなどチャープ特性の、i層の層厚依存性が求めることにより、マスクマージンMMや伝送ペナルティPdなどの伝送品質の基準値を満たすi層の層厚値の条件が得られ、その条件を満たすEA変調器を作製することにより、所定の高速変調における所定の長距離光伝送を可能とするレーザ素子を製造することが出来る。
具体的には、i層の層厚が異なる複数のEA変調器を作製し、それらのEA変調器について、小信号f3dB帯域及びαパラーメータを測定する。その後、これら特性とi層の層厚の相関図を作成することで、これら特性のi層の層厚依存性が求まる。さらに、マスクマージンMMの基準値を満たす小信号f3dB帯域より、i層の層厚の下限値が得られる。また、伝送ペナルティPdの基準値を満たすαパラメータより、i層の層厚の上限値が得られる。これにより、当該下限値以上で、当該上限値以下の層厚値を有するi層を積層することで、所定の伝送品質をそれぞれ満たすEA変調器集積レーザの製造が可能となる。
i層の層厚に対する小信号f3dB帯域及びαパラメータの測定結果より得られた特性を、図8に示す。図8は、i層の層厚を横軸に、小信号f3dB帯域を右縦軸に、αパラメータを左縦軸にとり、小信号f3dB帯域を破線により、αパラメータを実線により、これら特性のi層の層厚依存性を図示したものである。
変調周波数10.7Gbpsにおいて駆動する時、マスクマージンMMが10%となるf3dB帯域を14GHzとし、伝送ペナルティPdが2.0dBとなるαパラメータを0.1とし、これらに対応するi層の層厚の値が、図8より得られる。すなわち、当該層厚の下限値として、VEA=−2V印加時の電界強度が129kV/cmに相当する155nmが得られ、当該層厚の上限値として、VEA=−2V印加時の電界強度が118kV/cmに相当する170nmが得られた。以上より、155nm以上170nm以下の層厚値を有するi層を積層させ、EA変調器を作製する。こうして作製されたEA変調器集積レーザは、伝送ペナルティ及びマスクマージンなどの伝送品質の基準を満たしている。
以下、i層の層厚値を164nmとすると、当該層厚値は、当該下限値155nmと上限値170nmの範囲に含まれている。よって、i層の当該層厚値を有するEA変調器部301を含むEA変調器集積レーザ320の作製方法について説明する。
第1の結晶成長として、n型InP層100となるn型InP半導体基板上に、DFBレーザ部341を形成する。有機金属気相法を用いた公知の選択成長法によりアンドープのInGaAsP下側光ガイド層、活性層であるInGaAsP井戸層とバリア層をからなるアンドープ歪多重量子井戸層(MQW層)、アンドープのInGaAsP上側光ガイド層、p型InPキャップ層、および回折格子層の順で積層する。このとき、DFBレーザ部341のMQW層のフォトルミネッセンス波長が1555nm付近になるように、MQWのInGaAsPの組成を調整する。次に、プラズマCVDによるSiN膜を形成したのち、DFBレーザ部341となる領域にSiN膜をパターニングし、このSiN膜をマスクとしてドライエッチングおよびウェットエッチングを用いて、DFBレーザ部341となる領域以外を除去する。
第2の結晶成長として、有機金属気相法を用いて、上記の除去した領域にEA変調器部301を形成する。EA変調器部301の多層構造は、厚さ20nm、組成1.15μmのアンドープのInGaAsP下側光ガイド層302の上に、InGaAsPのバリア組成波長λb=1.2μm、バリア層厚6nm、井戸層8nmで井戸層の層数7のMQW層303が積層され、さらに厚さ40nm、組成1.15μmのアンドープのInGaAsP上側光ガイド層304で構成されたi層331とし、最後にInPスペーサ層を形成する。これにより、i層331の厚さは164nmとなる。このとき、EA変調器部301のMQW層303におけるフォトルミネッセンス波長が1495nmとなるように、MQWのInGaAsPの組成を調整する。
さらに同様の手順にて、DFBレーザ部341とEA変調器部301の間に、パッシブ導波路部342となるInGaAsP層を結晶成長する。このとき、DFBレーザ部341とパッシブ導波路部342の間、およびEA変調器部301とパッシブ導波路部342の間は、公知のバットジョイント技術により光学的に接続されている。
次にDFBレーザ部341となる領域の回折格子層にフォトリソグラフを用いた干渉露光法により、発振波長が1550nmとなるように回折格子を形成する。さらにDFBレーザ部341、パッシブ導波路部342、EA変調器部301上にわたり、クラッド層となる9e17atom/cm3程度のp型InP層105、コンタクト層となる2e18atom/cm3程度のp型InGaAsP層106と2e19atom/cm3程度のp型InGaAs層107、およびp型InPキャップ層を結晶成長する。このときp型のドーパントは亜鉛(Zn)を用いている。コンタクト層のp型InPキャップ層は途中工程で除去されるものであり、最終構造には残らない。
多層成長後、最終的にDFBレーザ部341、パッシブ導波路部342、EA変調器部301を含む最終的に光導波路となるストライプ状の領域にSiO2膜をマスクとして、ドライエッチングを施し、光導波路部分以外は除去して、いわゆるハイメサ構造を形成する。
さらにストライプ状の光導波路の両側を有機金属気相法を用いて、鉄(Fe)がドーピングされたFeドープInP埋め込み層108を成長する。続いて、全面にパッシベーション膜109を形成後、ウェットエッチングを用いてストライプの上にスルーホールを形成し、EB(Electron Beam)蒸着法、およびイオンミリングによりp側電極110を形成する。そして、裏面研磨工程にてn型InP基板を約100μm程度まで研磨し、n側電極111を形成、電極アロイ処理を施して、ウエハ工程は完了する。
続いて、作製したウエハよりチップを切り出し、EA変調器部301側端面に無反射コーティング膜、DFBレーザ部341側端面に高反射率(HR)コーティングを施す。このときEA変調器部301の全長は200μm、DFBレーザ部341の全長は400μm、パッシブ導波路部342の全長は50μmとした。
こうして作製されたEA変調器集積レーザ320を50Ωの終端抵抗がついた窒化アルミニウム(AlN)製のサブマウントにAuSnはんだで搭載する。このサブマウントを温度調整機能がついた冶具を用いて、EA変調器集積レーザ320の特性を評価する。
その際、冶具の温度調整機能を用いて、サブマウントの温度が駆動温度TLD=50℃となるように設定した。この温度はレーザモジュールでの消費電力がもっとも小さくすることが出来る温度である。以下詳細を説明する。EA変調器の特性は温度依存性が強く、一般的にはペルチエ素子などを用いて一定温度で使われる。またレーザモジュールの動作温度は−5℃〜+95℃が要求されている。一般的なEA変調器は駆動温度TLD=25℃程度で動作させるが、例えばレーザモジュール温度が95℃となった場合は、その温度差70℃を冷却する必要があり、非常にペルチエ素子の消費電力が大きくなる。逆に駆動温度TLD=80℃の場合は、モジュール温度が−5℃となった時に、その温度差85℃分を暖める必要がありやはりペルチエ素子の消費電力が非常に大きくなる。そのため、−5℃〜+95℃に対して駆動温度TLDは40℃〜50℃とすることで、高温側・低温側とも温度差を小さくすることでペルチエ素子の消費電力を小さく出来る。
なお、前述の通り、MQW層303に印加される電界強度が強まると、αパラメータは小さくなる。しかし、MQWに電界が印加されたとき光の吸収が起こり、電子とホール(キャリア)が生成されるが、このキャリアはEA変調器に印加されたバイアス電圧を遮蔽し、実効的にEA変調器に印加されるバイアス電圧を低下させる働きをする(スクリーニング効果)。このスクリーニング効果により、MQWには十分な強度の電界が印加されず、αパラメータを小さくするのが抑えられてしまう。よって、本測定が行われた駆動温度TLD=50℃は、一般的に使用される設定温度25℃と比較して高温であり、25℃の場合と比較して、駆動温度TLD=50℃においては、EA変調器で生成されるキャリアがより多くなるため、スクリーニング効果が大きくなる。なお、MQWに強い電界を印加することが出来れば、このキャリアをより除去するが可能となり、スクリーニング効果を抑制することが出来る。
最初に、i層331の層厚が164nmを有しているEA変調器部301の帯域とチャープ特性の測定を行った。駆動温度TLD=50℃において、DFBレーザ部341への注入電流Iop=100mA、EA変調器部301への印加電圧VEA=−0.1Vとして測定を行い、小信号f3dB帯域は15GHz、αパラメータは0.06という所望された条件を満たす結果が得られた。
次に、伝送速度を9.95Gbpsとした場合の、80kmの光ファイバに対して、光伝送試験を実施した。EA変調器部301へVOH=−0.1V、Vmod=2Vとして行った試験により、ファイバ光出力は+1.8dBm、消光比は10.8dB、伝送ペナルティPdは0.9dB、マスクマージンMMは18%という結果が得られた。
さらに、伝送速度を10.7Gbpsとして、同様の条件で80km伝送試験試験を行い、ファイバ光出力は+1.8dBm、消光比は10.7dB、伝送ペナルティPdは1.5dB、マスクマージンMMは15%という結果が得られた。
これらの結果はすべて、それぞれの伝送品質の基準値をすべて満たしており、EA変調器集積レーザ320は、伝送速度を9.95Gbpsとした場合であっても10.7Gbpsとした場合であっても、80km伝送を可能とする伝送品質を有していることを示している。
i層の層厚を164nmとしたことで、通常の温度である25℃と比較して、スクリーニング効果が大きい駆動温度TLD=50℃という温度においても、MQWへ印加される十分な電界強度を得ることが出来、スクリーニング効果を小さくすることが出来た。スクリーニング効果が抑制されたことにより、消光比の劣化を抑えることや、マスクマージンの向上などが実現した。さらに、164nmという層厚においては、多重量子井戸の層数、バリア組成波長、バリア層厚、井戸層厚を最適化することで、より高い消光比となるMQW構造とすることを可能とした。
なお、i層を構成する各層の層厚値は、一定の範囲において取り得ることは言うまでもない。InGaAsP下側光ガイド層302の層厚をa、InGaAsP上側光ガイド層304の層厚をb、MQW層303を構成するバリア層及び井戸層の層厚をそれぞれc及びd、井戸層の層数をnとすると、i層331の層厚Lは、L=a+b+(n+1)・c+n・dによって求まる。この層厚Lの値が155nm以上170nm以下になるように、実際に成膜可能な値となるa乃至d及びnの値を選択すればよい。例えば、前述で説明した、a=20nm、b=40nm、d=8nm、n=7とした場合、バリア層の層厚cは、およそ4.9nm以上6.8nm以下の値を取り得るし、同様に、a=20nm、b=40nm、c=6nm、n=7とした場合、井戸層の層厚dは、およそ7.0nm以上8.9nm以下の値を取り得る。また、層数n=8とした場合についても示す。a=20nm、b=40nm、n=8とした場合において、例えば、d=7nmとすると、cはおよそ4.3nm以上6.0nm以下の値を取り得るし、c=5nmとすると、dはおよそ5.0nm以上8.1nm以下の値を取り得る。なお、バリア組成波長を1.2μm以上1.3μm以下の値とした場合、層数nは7若しくは8、バリア層の層厚cは8nm以上9nm以下、井戸層の層厚dは8nm以上9nm以下が望ましい。
[実施形態2]
以下、本発明の実施形態2について、伝送速度10Gbps、波長1.55μm帯EA変調器集積レーザ420の例を用いて説明する。EA変調器集積レーザ420の平面図を図4(a)に、図中a−a断面図を図4(b)に、示す。
以下、本発明の実施形態2について、伝送速度10Gbps、波長1.55μm帯EA変調器集積レーザ420の例を用いて説明する。EA変調器集積レーザ420の平面図を図4(a)に、図中a−a断面図を図4(b)に、示す。
上記実施形態1で述べた方法により、EA変調器集積レーザ420は作製されるが、実施形態1との違いは、ストライプ上の導波路の両側をルテニウム(Ru)がドーピングされたRuドープInP埋め込み層408で埋め込まれた構造となっている点である。Ruという材料は実施形態1で述べたドーパントであるFeと比べると、Znとの相互拡散が少ないという特徴がある。埋め込み層のドーパントがFeであった場合、クラッド層であるp型InP層105、及び、コンタクト層であるp型InGaAsP層106とp型InGaAs層107に、ドーピングされているZnが、埋め込み界面を飛び越えて、埋め込み層へ拡散が発生するが、埋め込み層のドーパントがRuであった場合は、その拡散が抑制され、埋め込み再成長界面、および光導波路の両側の埋め込み層において、高抵抗な物性を保つことが可能となる(A.Dadgar, et.al., J.Crystal Growth 195 (1998)69-73、及び、特開2003-114407)。
こうして作製したEA変調器集積レーザ420を、実施形態1と同様にサブマウントに搭載し特性評価を行った。冶具の温度調整機能を用いて、サブマウントの温度が駆動温度TLD=50℃となるように設定し、DFBレーザ部441への注入電流Iop=100mAとして、EA変調器部401へVOH=0V、Vmod=2Vにおいて、伝送速度を10.7Gbpsとした場合の、80km光ファイバに対して光伝送試験を実施した。その結果、ファイバ光出力は+2.0dBm、消光比は10.9dB、伝送ペナルティPdは1.0dB、マスクマージンMMは20%と、上記実施形態1を上回る特性が得られた。
本実施形態では、埋め込み層のドーパントをRuとすることで、FeドーパントのInP埋め込み層と比較して、より高抵抗な埋め込み層が形成され、EA変調器部への電界強度が強まっている。そのためスクリーニング効果の抑制が強まり、高速変調時の消光比の向上、伝送ペナルティの低減、マスクマージンの向上が見られた。
[実施形態3]
以下、本発明の実施形態3について、伝送速度10Gbps、波長1.55μm帯EA変調器集積レーザ520の例を用いて説明する。EA変調器集積レーザ520の平面図を図5(a)に、図中a−a断面図を図5(b)に、示す。
以下、本発明の実施形態3について、伝送速度10Gbps、波長1.55μm帯EA変調器集積レーザ520の例を用いて説明する。EA変調器集積レーザ520の平面図を図5(a)に、図中a−a断面図を図5(b)に、示す。
上記実施形態1で述べた方法により、EA変調器集積レーザ520は作製されるが、実施形態1との違いは、p型InGaAs層507において、添加するp型のドーパントが、Znではなく、炭素(C)としている点である。なお、p型InP層105とp型InGaAsP層106に添加されるp型のドーパントは、実施形態1と同じZnである。
ドーパントがCの場合、Znを添加した場合と比較して熱による拡散係数が小さいことが知られている(R.A. Hamm, et.al., Carbon doping of GaInAs using carbontetrabromide by metalorganic molecular beam epitaxy for InP-based heterostructure bipolar transistor devices, Appl. Phys. Lett. Vol. 67, No. 15, 9 October 1995 )。従って、実施形態1で述べたZnをp型ドーパントとして用いる場合と比べると、Cをp型ドーパントとして用いることにより、FeドープInP埋め込み層へのp型ドーパントの拡散が低減され、埋め込み再成長界面、および光導波路の両側の埋め込み層において、高抵抗な物性を保つことが可能となる。
こうして作製されたEA変調器集積レーザ520を、実施形態1と同様にサブマウントに搭載し特性評価を行った。その結果、伝送速度を10.7Gbpsした場合に、80km長距離伝送を満足する特性が得られた。
本実施形態では、p型InGaAs層のドーパントをCにしたことでより高抵抗な埋め込み層が形成され、EA変調器部への電界強度が強まっている。そのため、スクリーニング効果の抑制が強まり、高速変調と長距離伝送、そして高消光比を実現できた。なお、本実施形態で述べたFeドープInP埋め込み層を用いる代わりに、実施形態2で述べたRuをドーパントとしたRuドープInP埋め込み層を用いても同様の効果が得られる。
[実施形態4]
以下、本発明の実施形態4について、伝送速度10Gbps、波長1.55μm帯EA変調器集積レーザ620の例を用いて説明する。EA変調器集積レーザ620の平面図を図6(a)に、図中a−a断面図を図6(b)に、示す。
以下、本発明の実施形態4について、伝送速度10Gbps、波長1.55μm帯EA変調器集積レーザ620の例を用いて説明する。EA変調器集積レーザ620の平面図を図6(a)に、図中a−a断面図を図6(b)に、示す。
上記実施形態1で述べた方法により、EA変調器集積レーザ620は作製されるが、実施形態1との違いは、EA変調器部601の半導体層に、P系ではなくAl系を用いている点である。EA変調器部601の構造は、n型InP層100となるn型InP半導体基板上に、厚さ20nm、組成1.15μmのアンドープのInGaAlAs下側光ガイド層602の上に、InGaAlAsのバリア組成波長λb=1.2μm、バリア層厚6nm、井戸層厚8nmで層数7のMQW層603が積層され、さらに厚さ40nm、組成1.15μmのアンドープのInGaAlAs上側光ガイド層604で構成されたi層631を含む構造となっている。i層631の層厚は164nmとなる。
MQW層にAl系材料を用いた場合は、そのバンドオフセットの特徴から、より低チャープでかつ消光比の大きいEA変調器設計が可能となる。
こうして作製したEA変調器集積レーザ620を、実施形態1と同様にサブマウントに搭載し特性評価を行った。冶具の温度調整機能を用いて、サブマウントの温度が駆動温度TLD=50℃となるように設定し、DFBレーザ部641への注入電流Iop=100mAとして、EA変調器部601へVOH=0V、Vmod=2Vにおいて、伝送速度を10.7Gbpsとした場合の、80km光ファイバに対して光伝送試験を実施した。その結果、ファイバ光出力は+2.2dBm、消光比は11.0dB、伝送ペナルティPdは0.9dB、マスクマージンMMは18%と、実施形態1を上回る特性が得られた。
以下、本発明の実施形態5に係るレーザモジュール701の構成を、図7に示す。
[実施形態5]
レーザモジュール701は、実施形態1で記載のEA変調器集積レーザ320を搭載している。作製方法について述べる。まず、EA変調器集積レーザ320が搭載されたサブマウント702に、光出力の安定のためのモニタ光を受光するフォトダイオード703を搭載する。次に、温度調整を行うために、サブマウント702をペルチエ素子704の上に搭載する。ペルチエ素子704の上には、温度モニタ用のサーミスタ705を搭載しておく。そして出力端側にレンズ706、アイソレータ707、レンズ708、光ファイバ709を同一のパッケージ内に実装する。こうして作製されたレーザモジュール701を、TLD=50℃、Iop=100mA、VOH=−0.1V、Vmod=2Vおいて、伝送速度を10.7Gbpsとした場合の、80km光ファイバに対して光伝送試験を実施した。その結果、ファイバ光出力は+1.8dBm、消光比は10.6dB、伝送ペナルティPdは1.5dB、マスクマージンMMは12%と、実際の80km光伝送用光源としては十分な特性を満足した。
レーザモジュール701は、実施形態1で記載のEA変調器集積レーザ320を搭載している。作製方法について述べる。まず、EA変調器集積レーザ320が搭載されたサブマウント702に、光出力の安定のためのモニタ光を受光するフォトダイオード703を搭載する。次に、温度調整を行うために、サブマウント702をペルチエ素子704の上に搭載する。ペルチエ素子704の上には、温度モニタ用のサーミスタ705を搭載しておく。そして出力端側にレンズ706、アイソレータ707、レンズ708、光ファイバ709を同一のパッケージ内に実装する。こうして作製されたレーザモジュール701を、TLD=50℃、Iop=100mA、VOH=−0.1V、Vmod=2Vおいて、伝送速度を10.7Gbpsとした場合の、80km光ファイバに対して光伝送試験を実施した。その結果、ファイバ光出力は+1.8dBm、消光比は10.6dB、伝送ペナルティPdは1.5dB、マスクマージンMMは12%と、実際の80km光伝送用光源としては十分な特性を満足した。
さらに、駆動温度TLD=50℃というSemi−Cooled動作の実現により、レーザモジュールの動作温度−5℃〜+85℃の動作環下において、ペルチエ素子の消費電力0.7Wという低消費電力のレーザモジュールを実現した。
Semi−Cooled動作を可能とした理由は、電界強度が強く加わるEA変調器構造としたことにより、高温動作時のキャリアの増大に対しても十分にスクリーニング効果の抑制が出来たためである。また電界強度が強く掛かる効果は、より小さなバイアス電圧で低αパラメータ特性を得ることができ、駆動バイアスの低減にも繋がっており、この点においても低消費電力となるレーザモジュールを提供することができる。
本実施形態に記載のレーザモジュール701には、実施形態1に記載のEA変調器集積レーザ320を搭載したが、実施形態2乃至実施形態4のいずれに記載のEA変調器集積レーザを搭載しても、同様の効果は得られる。
上記において、EA変調器を半導体レーザと同一チップに集積したEA変調器集積レーザについて説明したが、半導体レーザと同一の基板上に集積されていないEA変調器においても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
100 n型InP層、101 EA変調器部、102 InGaAsP下側光ガイド層、103 歪量子井戸活性層(MQW層)、104 InGaAsP上側光ガイド層、105 p型InP層、106 p型InGaAsP層、107 p型InGaAs層、108 FeドープInP埋め込み層、109 パッシベーション膜、110 p側電極、111 n側電極、120 EA変調器集積レーザ、131 真性半導体層(i層)、141 DFBレーザ部、142 パッシブ導波路部、201 EA変調器部、202 InGaAsP下側光ガイド層、203 歪量子井戸活性層(MQW層)、204 InGaAsP上側光ガイド層、220 EA変調器集積レーザ、231 真性半導体層(i層)、241 DFBレーザ部、242 パッシブ導波路部、301 EA変調器部、302 InGaAsP下側光ガイド層、303 歪量子井戸活性層(MQW層)、304 InGaAsP上側光ガイド層、320 EA変調器集積レーザ、331 真性半導体層(i層)、341 DFBレーザ部、342 パッシブ導波路部、401 EA変調器部、408 RuドープInP埋め込み層、420 EA変調器集積レーザ、441 DFBレーザ部、442 パッシブ導波路部、501 EA変調器部、507 p型InGaAs層、520 EA変調器集積レーザ、541 DFBレーザ部、542 パッシブ導波路部、601 EA変調器、602 InGaAlAs下側光ガイド層、603 歪量子井戸活性層(MQW層)、604 InGaAlAs上側光ガイド層、620 EA変調器集積レーザ、631 真性半導体層(i層)、641 DFBレーザ部、642 パッシブ導波路部、701 レーザモジュール、702 サブマウント、703 フォトダイオード、704 ペルチエ素子、705 サーミスタ、706 レンズ、707 アイソレータ、708 レンズ、709 光ファイバ。
Claims (10)
- 半導体レーザ部と、該半導体レーザ部の出力側に配置される電界吸収型変調器部と、が形成され、
前記電界吸収型変調器部には、互いに離間して位置する第1電極及び第2電極と、前記第1電極の前記第2電極側に接する第1の不純物添加領域と、前記第2電極の前記第1電極側に接する第2の不純物領域と、該第1と第2の不純物領域の間に位置し、該第1と第2の不純物添加領域より不純物の濃度が低い低濃度領域を含む、レーザ素子の製造方法において、
所定の変調性能を得られる最高変調周波数に応じた前記低濃度領域の層厚の下限値を求めるステップと、
所定のチャープ特性に応じた前記低濃度領域の前記層厚の上限値を求めるステップと、
前記上限値及び前記下限値を満たす層厚値を有する、前記低濃度領域を成膜するステップと、
を含むレーザ素子の製造方法。 - 請求項1に記載のレーザ素子の製造方法において、
前記低濃度領域の層厚が異なる複数の前記変調器を製造し、所定の変調信号を入力したときに、所定の変調性能を満たす最高変調周波数を測定するステップと、
前期測定により、前記最高変調周波数の該層厚依存性を求めるステップと、
前記依存性により、所定の最高変調周波数に応じた層厚より前記下限値を得るステップと、
を含むレーザ素子の製造方法。 - 請求項2に記載のレーザ素子の製造方法において、
所定の光伝送前マスクマージンにより、所定の最高変調周波数を得るステップ、
を含むレーザ素子の製造方法。 - 請求項1に記載のレーザ素子の製造方法において、
前記低濃度領域の層厚が異なる複数の前記変調器を製造し、変調により信号をオンされた場合とオフされた場合との屈折率変化と吸収率変化を測定するステップと、
前記測定により、前記屈折率変化と前記吸収率変化の比の層厚依存性を求めるステップと、
前記依存性により、所定の前記比の値に応じた層厚より前記上限値を得るステップと、
を含むレーザ素子の製造方法。 - 請求項4に記載のレーザ素子の製造方法において、
所定の伝送ペナルティにより、所定の前記比の値を得るステップ、
を含むレーザ素子の製造方法。 - 請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法により製造されたレーザ素子において、
前記低濃度不純物領域の両側部に配置される半絶縁半導体からなる埋め込み層を含む、
ことを特徴としたレーザ素子。 - 請求項6に記載のレーザ素子において、
前記埋め込み層には、不純物として、鉄、もしくは、ルテニウムが添加される、
ことを特徴としたレーザ素子。 - 請求項6に記載のレーザ素子において、
前記第1の不純物領域の一部が、炭素が不純物として添加された半導体により構成され、前記第1電極に接する、
ことを特徴とするレーザ素子。 - 請求項6に記載のレーザ素子において、
前記低濃度領域にInGaAlAsを含む、
ことを特徴とするレーザ素子。 - 請求項6乃至9のいずれかに記載のレーザ素子を搭載した半導体光モジュール。
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