JP6319304B2 - 培地組成物及び当該培地組成物を用いた赤血球の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多糖類を含有する培地組成物、及び当該培地組成物を用いることを特徴とする生体外での赤血球の製造方法に関する。
赤血球の輸血は、薬剤療法が有効でない貧血、外傷や手術による出血に対する治療法として用いられている。その供給は、主に自発的な献血に依存しているが、その安定的な確保のための収集、検査、保存作業に多大な労力が必要となっている。また、献血由来の赤血球製剤は、HIVや肝炎ウイルスなどのウイルス感染を完全に排除することはできず、未知の感染症については検出できない場合がある。この様な状況の中、安全な赤血球を安定的に供給するため、献血の代替として生体外にて赤血球を製造する必要性が高まっている(非特許文献1)。
生体内における赤血球の分化については、造血幹細胞から始まり赤血球・巨核球系前駆細胞、赤芽球系前駆細胞(BFU−E、CFU−E)、前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染性赤芽球、正染性赤芽球、網状赤血球を経て赤血球が生産されることが知られている。また、赤血球分化を促進する主要な因子としては、エリスロポエチン(EPO)、幹細胞因子(SCF)が報告されている(非特許文献2、3)。これらの知見に基づき生体外において赤血球分化を再現し、赤血球を生産する手法が開発されてきた。
例えば、多能性幹細胞であるES細胞或いはiPS細胞から赤血球を誘導する方法(特許文献1、非特許文献4、5)、或いは末梢血、胎児肝臓、骨髄若しくは臍帯血由来のCD34陽性細胞から赤血球を誘導する方法(非特許文献3、6)が開発されている。また、多能性幹細胞から赤血球前駆細胞株を樹立し、当該細胞から赤血球を大量に調製する技術の検討も行われている(非特許文献7)。しかしながら、これらの培養法は、赤血球を短時間かつ高効率に生産させることが困難であり、特に脱核過程の効率化が課題となっている(特許文献2)。更に、核を有する赤血球前駆細胞を輸血することによる癌化の懸念も赤血球の生体外増幅において問題となっている。
国際公開第2009/137629号 国際公開第2010/098079号
Mountfordら,British Journal of Haematology 2010,149:22−34 Dolznigら、Curr.Biol. 2002,12:1076−1085 Giarratanaら,Blood 2011,118:5071−5079 Maら,Proceedings of the National Academy of Sciences 2008,105:13087−13092 Diasら,Stem Cells and Development 2011,20:1639−1647 Fujimiら,International Journal of Hematology 2008,87:339−350 Hiroyamaら,PLoS ONE 2008,3:e1544
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、生体外において赤血球を短時間かつ高効率に製造するための培地組成物及び該組成物を用いた赤血球の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、各種化合物及びそれらを含有する液体培地の赤血球分化に対する効果について鋭意研究した結果、赤血球の分化を促進する培地組成物の発見に成功した。更に、当該培地組成物を用いると赤血球前駆細胞から赤血球への分化が誘導され、生体外において赤血球を効率的に製造できることを見出した。
すなわち、本発明は下記のとおりである:
(1)造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞を赤血球に分化させる際に用いられる、多糖類を含む培地添加剤。
(2)前記多糖類が、アニオン性官能基を有する、(1)に記載の添加剤。
(3)前記多糖類のアニオン性官能基が、カルボキシル基、スルホ基及びリン酸基からなる群から選択される少なくとも1種である、(2)に記載の添加剤。
(4)前記多糖類が、ヒアルロン酸、ジェランガム、脱アシル化ジェランガム、キサンタンガム、カラギーナン、ダイユータンガム、アルギン酸、フコイダン、ペクチン、ペクチン酸、ペクチニン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ヘパリチン硫酸、ケラト硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ラムナン硫酸またはそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、(3)に記載の添加剤。
(5)前記多糖類が、脱アシル化ジェランガムまたはその塩である、(4)に記載の添加剤。
(6)(1)乃至(5)のいずれかに記載の添加剤を含有してなる赤血球分化用の培地組成物。
(7)SCF、IL−3、IL−6、IL−11、FL、TPO及びEPOからなる群から選択される1又は2以上の因子を更に含む、(6)に記載の培地組成物。
(8)造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞から赤血球を製造する方法であって、(1)乃至(5)のいずれかに記載の添加剤の存在下、或いは(6)又は(7)に記載の培地組成物中で、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞を培養することを特徴とする、方法。
(9)造血幹細胞の赤血球又はその前駆細胞への分化を誘導する方法であって、(1)乃至(5)のいずれかに記載の添加剤の存在下、或いは(6)又は(7)に記載の培地組成物中で、造血幹細胞を培養することを特徴とする、方法。
(10)造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞、並びに(6)又は(7)に記載の培地組成物を含む、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の培養調製物。
本発明は、特定の化合物(以下、特定化合物ともいう)、特にアニオン性官能基を有する高分子化合物(多糖類等)を含む培地組成物を提供する。当該培地組成物を用いると、赤血球への分化が誘導され、或いは赤血球への分化が促進されるために、赤血球を生体外で効率的に製造することができる。すなわち本発明は、赤血球を生体外にて短時間で大量に得るための方法を提供することから、赤血球輸血を必要とする疾患や傷害を治療する際に好適に利用することができる。
以下、更に詳細に本発明を説明する。
本明細書において用いる用語につき、以下の通り定義する。
本発明における造血幹細胞とは、血球の全ての血液細胞分化系列に分化し得る多分化能を有する細胞であり、かつ、その多分化能を維持したまま自己複製することが可能な細胞である。造血前駆細胞とは、複数の血液細胞分化系列に分化できる多能性造血前駆細胞と単一の血液細胞分化系列に分化できる単能性造血前駆細胞の両者を含む細胞群である。赤血球前駆細胞とは、赤血球系の一方向の血液細胞にしか分化し得ない造血前駆細胞であり、赤血球・巨核球系前駆細胞、前期赤芽球系前駆細胞(BFU−E)、後期赤芽球系前駆細胞(CFU−E)、前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染性赤芽球、正染性赤芽球、網状赤血球を含むものである。造血幹細胞、造血前駆細胞及び赤血球前駆細胞は、骨髄、臍帯血、脾臓、胎児肝臓或いは末梢血から採取したものや、iPS細胞(induced pluripotent stem cells)やES細胞(Embryonic stem cells)等の多能性幹細胞から生体外にて分化誘導させたものも使用することができる。また、これらの細胞は、タカラバイオ株式会社、ロンザジャパン株式会社、株式会社ベリタス等の試薬会社から購入したものであってもよい。造血幹細胞、造血前駆細胞及び赤血球前駆細胞の由来は、哺乳類由来であれば特に限定されない。好ましくは、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等が例示されるが、より好ましくはヒトである。
CD34陽性とは、CD(cluster of differentiation)34抗原を細胞表面上に発現していることを意味する。この抗原は造血幹細胞及び造血前駆細胞のマーカーであり、分化するに従って消失する。CD34陽性細胞は造血幹細胞及び造血前駆細胞を多く含む細胞集団であり、本発明における赤血球の製造を実施する際に好適に使用することができる。同様な細胞集団としては、CD133陽性細胞も挙げられる。
多能性幹細胞とは、内胚葉(例えば、内部胃壁、消化管または肺)、中胚葉(例えば、筋肉、骨、血液または泌尿生殖器)または外胚葉(例えば、表皮組織または神経系)系の細胞など、生体を構成する多種類の細胞に分化できる分化多能性(pluripotency)と、分裂増殖を経ても分化多能性を維持できる自己複製能を併せ持つ細胞である。その例としては、ES細胞、iPS細胞、胚性生殖幹細胞(EG細胞)、Muse細胞などが挙げられる。ES細胞とは、動物の発生初期段階である胚盤胞期の胚に由来する多能性幹細胞をいう。iPS細胞とは、人工多能性幹細胞または誘導多能性幹細胞とも称され、線維芽細胞などの体細胞へ数種類の転写因子遺伝子を導入することにより、ES細胞と同等の分化多能性と自己複製能を獲得した細胞である。EG細胞とは、精原細胞に由来する多能性幹細胞である(参考文献:Nature.2008,456,344−349)。
本発明で用いる多能性幹細胞は、分化多能性(pluripotency)と自己複製能を併せ持ち、赤血球に分化できる多能性幹細胞であれば何でもよい。多能性幹細胞の好ましい例としては、ES細胞、iPS細胞、胚性生殖幹細胞(EG細胞)、Muse細胞などが挙げられ、より好ましくはES細胞及びiPS細胞が挙げられる。ここで、iPS細胞を樹立する際、分化多能性の獲得に必要な転写因子遺伝子としては、例えば、Nanog、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、c−Myc、N−Myc、L−Myc、Lin28、ERasなどが知られている。これらの初期化因子は、任意に組み合わせて用いても良い。これらの遺伝子のうち、例えば、Oct3/4、Sox2、Klf4、c−Mycの組合せ、Oct3/4、Sox2、Nanog、Lin28の組合せ、Oct3/4、Sox2、Klf4の組合せで、選択した遺伝子を線維芽細胞などの体細胞に導入することにより、iPS細胞の樹立が可能となる。本発明で使用するiPS細胞は、その樹立の手法は問わず、上記の遺伝子を導入する手法で樹立された細胞以外にも、上記と異なる遺伝子の導入による樹立方法、タンパク質や低分子化合物(ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、MEK阻害剤等)などを用いた樹立方法によるiPS細胞であってもよい。
本発明における多能性幹細胞から誘導した造血前駆細胞としては、例えば、iPS細胞又はES細胞を造血系細胞の分化誘導に適した条件で培養して得られる胚様体(Embryoid body)、又はネット様構造物などに含まれる細胞が挙げられる。ここで「胚様体」とは、iPS細胞又はES細胞の未分化性を維持する因子やフィーダー細胞を除去し、iPS細胞又はES細胞を浮遊培養することで得られる嚢胞性の構造を有する細胞塊である(参考文献:Blood、2003,102,906−915)。また、「ネット様構造物」とは、iPS細胞又はES細胞由来の立体的な嚢状(内部に空間を伴うもの)構造体で、内皮細胞集団などで形成され、内部に血液前駆細胞を含むもののことである。ネット様構造物の詳細については、例えば、TAKAYAMAら,BLOOD 2008,111:5298−5306、を参照することができる。その他、ストローマ細胞と共培養することにより多能性幹細胞からの造血前駆細胞の誘導を促進した報告もある(参考文献:WO2001/34776)。また、多能性幹細胞より調製された造血前駆細胞は、長期間での培養により細胞株を樹立することや、癌遺伝子などを導入することによりその細胞増殖能をより高めることができることが報告されている(参考文献:WO2011/034073、PLoS ONE 2008,3:e1544)。
本発明において造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の分化とは、造血幹細胞が造血前駆細胞へ、多能性造血前駆細胞が単能性造血前駆細胞へ、造血前駆細胞が特有の機能を有する細胞、すなわち赤血球、白血球、巨核球などの成熟血液細胞に変換していくことをいう。本発明の培地組成物は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞に作用し、生体外で造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞を培養したときに赤血球への分化を支持する効果を示すものである。従って、本発明の培地組成物中で、造血幹細胞を培養すると、造血幹細胞から、赤血球又はその前駆細胞への分化が促進される。具体的には、当該培地組成物を用いて造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞を培養することで、赤血球を生体外で大量調製することが可能である。その際に、当該培地組成物中に種々のサイトカインや増殖因子を更に添加したり、ストローマ細胞と共培養したり、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞に作用するその他の低分子化合物を更に添加したりすることによって赤血球への分化をより効率的に促進することも可能である。本発明は、このように本発明の培地組成物中で、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞を培養することにより得られる、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の培養調製物をも提供する。該培養調製物は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞、並びに本発明の培地組成物を含む。
造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の培養に用いられる培養容器は、一般的に動物細胞の培養が可能なものであれば特に限定されないが、例えば、フラスコ、ディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウエルプレート、マルチプレート、マルチウエルプレート、チャンバースライド、シャーレ、チューブ、トレイ、培養バッグ、ローラーボトル等が挙げられる。これらの培養器材の材質は特に制限されないが、例えば、ガラス、ポリ塩化ビニル、セルロース系ポリマー、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン等のプラスチック等が挙げられる。
本発明において用いられる培地は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の培養に用いられる培地であればいずれも用いることができる。このような培地としては、例えばダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagles’s Medium;DMEM)、ハムF12培地(Ham’s Nutrient Mixture F12)、DMEM/F12培地、マッコイ5A培地(McCoy’s 5A medium)、イーグルMEM培地(Eagles’s Minimum Essential Medium;EMEM)、αMEM培地(alpha Modified Eagles’s Minimum Essential Medium;αMEM)、MEM培地(Minimum Essential Medium)、RPMI1640培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium;IMDM)、StemPro34(インビトロジェン社製)、X−VIVO 10(ケンブレックス社製)、X−VIVO 15(ケンブレックス社製)、HPGM(ケンブレックス社製)、StemSpan H3000(ステムセルテクノロジー社製)、StemSpanSFEM(ステムセルテクノロジー社製)、StemlineII(シグマアルドリッチ社製)又はQBSF−60(クオリティバイオロジカル社製)などが挙げられる。また、多能性幹細胞の培養及び継代には、多能性幹細胞を維持するために用いられる通常の培地を用いることができる。例えば、DMEM/F12培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ハムF−12培地、X−VIVO 10(ロンザ社製)、X−VIVO 15(ロンザ社製)、mTeSR(ステムセルテクノロジー社製)、TeSR2(ステムセルテクノロジー社製)、StemProhESC SFM(インビトロジェン社製)などが挙げられる。これらの培地には細胞接着因子を含むことが可能であり、その例としては、マトリゲル、コラーゲンゲル、ゼラチン、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ラミニン、フィブロネクチンが挙げられる。これらの細胞接着因子は、2種類以上を組み合わせて添加することもできる。また更に、上記の培地に対してグァーガム、タマリンドガム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ローカストビーンガム、アラビアガム、タラガム、タマリンドガム、メチルセルロース等の増粘剤を更に混合することができる。
上記の培地には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、各種アミノ酸、各種ビタミン、抗生物質、血清、脂肪酸、糖などを当業者は目的に応じて自由に添加してもよい。造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の培養の際には、当業者は目的に応じてその他の化学成分あるいは生体成分を一種類以上組み合わせて添加することもできる。造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の培地に添加される成分としては、ウシ胎児血清、ヒト血清、ウマ血清、インシュリン、トランスフェリン、ラクトフェリン、コレステロール、エタノールアミン、亜セレン酸ナトリウム、モノチオグリセロール、2−メルカプトエタノール、ウシ血清アルブミン、ピルビン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、各種ビタミン、各種アミノ酸、寒天、アガロース、コラーゲン、メチルセルロース、各種サイトカイン、各種ホルモン、各種増殖因子、各種細胞外マトリックスや各種細胞接着分子などが挙げられる。培地に添加されるサイトカインとしては、例えばインターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−9(IL−9)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−11(IL−11)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−13(IL−13)、インターロイキン−14(IL−14)、インターロイキン−15(IL−15)、インターロイキン−18(IL−18)、インターロイキン−21(IL−21)、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−β(IFN−β)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、単球コロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、幹細胞因子(SCF)、flk2/flt3リガンド(FL)、白血病細胞阻害因子(LIF)、オンコスタチンM(OM)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)などが挙げられるが、これらに限られるわけではない。
培地に添加されるホルモンとしては、メラトニン、セロトニン、チロキシン、トリヨードチロニン、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、抗ミュラー管ホルモン、アディポネクチン、副腎皮質刺激ホルモン、アンギオテンシノゲン及びアンギオテンシン、抗利尿ホルモン、心房ナトリウム利尿性ペプチド、カルシトニン、コレシストキニン、コルチコトロピン放出ホルモン、エリスロポイエチン、卵胞刺激ホルモン、ガストリン、グレリン、グルカゴン、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤性ラクトーゲン、成長ホルモン、インヒビン、インスリン、インスリン様成長因子、レプチン、黄体形成ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、オキシトシン、副甲状腺ホルモン、プロラクチン、セクレチン、ソマトスタチン、トロンボポイエチン、甲状腺刺激ホルモン、チロトロピン放出ホルモン、コルチゾール、アルドステロン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、アンドロステンジオン、ジヒドロテストステロン、エストラジオール、エストロン、エストリオール、プロゲステロン、カルシトリオール、カルシジオール、プロスタグランジン、ロイコトリエン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、プロラクチン放出ホルモン、リポトロピン、脳ナトリウム利尿ペプチド、神経ペプチドY、ヒスタミン、エンドセリン、膵臓ポリペプチド、レニン、及びエンケファリンが挙げられるが、これらに限られるわけではない。
培地に添加される増殖因子としては、トランスフォーミング成長因子−α(TGF−α)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、マクロファージ炎症蛋白質−1α(MIP−1α)、上皮細胞増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子−1、2、3、4、5、6、7、8、又は9(FGF−1、2、3、4、5、6、7、8、9)、神経細胞増殖因子(NGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、白血病阻止因子(LIF)、プロテアーゼネキシンI、プロテアーゼネキシンII、血小板由来成長因子(PDGF)、コリン作動性分化因子(CDF)、各種ケモカイン、Notchリガンド(Delta1など)、Wnt蛋白質、アンジオポエチン様蛋白質2、3、5または7(Angpt2、3、5、7)、インスリン様成長因子(IGF)、インスリン様成長因子結合蛋白質(IGFBP)、プレイオトロフィン(Pleiotrophin)などが挙げられるが、これらに限られるわけではない。
また、遺伝子組替え技術によりこれらのサイトカインや増殖因子のアミノ酸配列を人為的に改変させたものも添加させることもできる。その例としては、IL−6/可溶性IL−6受容体複合体あるいはHyper IL−6(IL−6と可溶性IL−6受容体との融合タンパク質)などが挙げられる。
各種細胞外マトリックスや各種細胞接着分子の例としては、コラーゲンI乃至XIX、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン−1乃至12、ニトジェン、テネイシン、トロンボスポンジン、フォンビルブランド(von Willebrand)因子、オステオポンチン、フィブリノーゲン、各種エラスチン、各種プロテオグリカン、各種カドヘリン、デスモコリン、デスモグレイン、各種インテグリン、E−セレクチン、P−セレクチン、L−セレクチン、免疫グロブリンスーパーファミリー、マトリゲル、ポリ−D−リジン、ポリ−L−リジン、キチン、キトサン、セファロース、ヒアルロン酸、アルギン酸ゲル、各種ハイドロゲル、さらにこれらの切断断片などが挙げられる。
造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の赤血球への分化誘導を達成するため、本発明の培地組成物は、好ましくは、上述のサイトカインや増殖因子の中で赤血球への分化を誘導する因子として知られる、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−11(IL−11)、flk2/flt3リガンド(FL)、トロンボポエチン(TPO)及びエリスロポエチン(EPO)からなる群から選択される1又は2以上の因子を含み、より好ましくは、幹細胞因子(SCF)、flk2/flt3リガンド(FL)、インターロイキン−3(IL−3)、トロンボポエチン(TPO)及びエリスロポエチン(EPO)からなる群から選択される1又は2以上の因子を含み、最も好ましくは、SCF、IL−3及びEPOからなる群から選択される1、2又は3の因子を含む。サイトカインや増殖因子を培養時に添加する際の濃度は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の赤血球への分化誘導を達成し得る範囲で適宜設定可能であり、通常は0.1ng/mL乃至1000ng/mL、好ましくは1ng/mL乃至100ng/mLである。
上述の化学成分あるいは生体成分は、培地中に添加して使用するだけでなく、培養の際の基板や担体表面上に固定化して使用することもできる。具体的には、目的の成分を適切な溶媒にて溶解し、基板や担体表面上にコーティングした後、余分な成分を洗浄することにより達成される。また、基板や担体表面に予め目的の成分と特異的に結合する様な物質をコーティングしておき、その基板上に目的の成分を添加してもよい。
培地に添加される抗生物質の例としては、サルファ製剤、ペニシリン、フェネチシリン、メチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、ナフシリン、アンピシリン、ペニシリン、アモキシシリン、シクラシリン、カルベニシリン、チカルシリン、ピペラシリン、アズロシリン、メクズロシリン、メシリナム、アンジノシリン、セファロスポリン及びその誘導体、オキソリン酸、アミフロキサシン、テマフロキサシン、ナリジクス酸、ピロミド酸、シプロフロキサン、シノキサシン、ノルフロキサシン、パーフロキサシン、ロザキサシン、オフロキサシン、エノキサシン、ピペミド酸、スルバクタム、クラブリン酸、β−ブロモペニシラン酸、β−クロロペニシラン酸、6−アセチルメチレン−ペニシラン酸、セフォキサゾール、スルタンピシリン、アディノシリン及びスルバクタムのホルムアルデヒド・フードラートエステル、タゾバクタム、アズトレオナム、スルファゼチン、イソスルファゼチン、ノカルディシン、m−カルボキシフェニル、フェニルアセトアミドホスホン酸メチル、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、メタサイクリン、並びにミノサイクリンが挙げられる。
造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞を培養する際の温度は、通常25乃至39℃、好ましくは33乃至39℃である。CO濃度は、通常、培養の雰囲気中、4乃至10体積%であり、4乃至6体積%が好ましい。培養期間は通常3乃至120日間であり、好ましくは7乃至35日間、より好ましくは14乃至21日間に設定することができる。
本発明の方法において造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞をストローマ細胞と共培養する際には、骨髄細胞を採取したのち、そのまま培養を行うことでこの共培養を実施することが可能である。また、骨髄を採取した上で、ストローマ細胞、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞、その他の細胞群などを分離し、骨髄を採取した個人以外のストローマ細胞と造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の組み合わせで共培養を実施することも可能である。また、ストローマ細胞のみを培養し増殖させた後に造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞を添加し共培養を実施することも可能である。その際の培養条件や培地組成は上記に記載したものを用いることができる。ストローマ細胞としては、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の増殖、維持に寄与する細胞であればいずれも使用可能であり、例えば、マウス胚線維芽細胞(MEF細胞)、SL10細胞、好ましくは、C3H10T1/2細胞株、OP9細胞、ST2細胞、NIH3T3細胞、PA6細胞、M15細胞、ヒト間葉系幹細胞(MSC)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、ヒト子宮内膜上皮細胞など、より好ましくはC3H10T1/2細胞株、OP9細胞、ヒト間葉系幹細胞(MSC)を用いることができる。ストローマ細胞を用いるときには、例えば、マイトマイシンC処理或いは放射線照射などにより、細胞の増殖を抑止しておくこともできる。
造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の培養は、機械的な制御下閉鎖環境下で細胞播種、培地交換、細胞画像取得、培養細胞回収を自動で実行し、pH、温度、酸素濃度などを制御しながら、高密度での培養が可能なバイオリアクターや自動培養装置によって行うこともできる。これら装置を用いて培養の途中に新しい培地を補給し、要求する物質を過不足なく細胞及び/又は組織に供給する手法として、流加培養、連続培養及び灌流培養があるが、いずれの手法も本発明の培養方法に用いることができる。
本発明に用いられる特定化合物は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の赤血球への分化(好ましくは、上述の赤血球への分化を誘導する因子による、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の赤血球への分化)を促進する。本発明に用いられる特定化合物は、造血幹細胞の赤血球又はその前駆細胞への分化(好ましくは、上述の赤血球への分化を誘導する因子による、造血幹細胞の赤血球又はその前駆細胞への分化)を促進する。
本発明に用いる特定化合物の例としては、特に制限されるものではないが、高分子化合物が挙げられ、好ましくはアニオン性の官能基を有する高分子化合物が挙げられる。
アニオン性の官能基としては、カルボン酸、スルホン酸、リン酸及びそれらの塩が挙げられ、カルボン酸またはその塩が好ましい。
本発明に用いる高分子化合物は、前記アニオン性の官能基の群より1種又は2種以上から構成されるものを使用できる。
本発明に用いる高分子化合物の好ましい具体例としては、特に制限されるものではないが、単糖類(例えば、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース等)が10個以上重合した多糖類が挙げられ、より好ましくは、アニオン性の官能基を有する酸性多糖類が挙げられる。ここにいう酸性多糖類とは、その構造中にアニオン性の官能基を有すれば特に制限されないが、例えば、ウロン酸(例えば、グルクロン酸、イズロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸)を有する多糖類、構造中の一部に硫酸又はリン酸を有する多糖類、或いはその両方の構造を持つ多糖類であって、天然から得られる多糖類のみならず、微生物により産生された多糖類、遺伝子工学的に産生された多糖類、或いは酵素を用いて人工的に合成された多糖類も含まれる。より具体的には、ヒアルロン酸、ジェランガム、脱アシル化ジェランガム、ラムザンガム、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラギーナン、ザンタンガム、ヘキスロン酸、アルギン酸、フコイダン、ペクチン、ペクチン酸、ペクチニン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ヘパリチン硫酸、ケラト硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ラムナン硫酸及びそれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上から構成されるものが例示される。
ここでいう塩とは、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムといったアルカリ金属の塩、カルシウム、バリウム、マグネシウムといったアルカリ土類金属の塩又はアルミニウム、亜鉛、銅、鉄、アンモニウム、有機塩基及びアミノ酸等の塩が挙げられる。
これらの高分子化合物または多糖類の重量平均分子量は、好ましくは10,000乃至50,000,000であり、より好ましくは100,000乃至20,000,000、更に好ましくは1,000,000乃至10,000,000である。例えば、当該分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるプルラン換算で測定できる。
本発明に用いる特定化合物の更に好ましい具体例としては、ヒアルロン酸、脱アシル化ジェランガム、ダイユータンガム、カラギーナン及びキサンタンガム及びそれらの塩が挙げられ、培地組成物の粘度を低くできる点と細胞または組織の回収のしやすさの点を考慮すると、最も好ましい例としては脱アシル化ジェランガムまたはその塩が挙げられる。
本発明における脱アシル化ジェランガムとは、1−3結合したグルコース、1−4結合したグルクロン酸、1−4結合したグルコース及び1―4結合したラムノースの4分子の糖を構成単位とする直鎖状の高分子多糖類であり、以下の一般式(I)において、R1、R2が共に水素原子であり、nは2以上の整数で表わされる多糖類である。ただし、R1がグリセリル基を、R2がアセチル基を含んでいてもよいが、アセチル基及びグリセリル基の含有量は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは1%以下である。
本発明の特定化合物は液体培地への添加により様々な形態となるが、脱アシル化ジェランガムの場合について記載すると、脱アシル化ジェランガムは、液体培地と混合した際に、液体培地中の金属イオン(例えば、カルシウムイオン)を取り込み、当該金属イオンを介した不定形な構造体を形成する。
脱アシル化ジェランガムから調製される本発明の培地組成物の粘度は、8mPa・s以下であり、好ましくは4mPa・s以下であり、細胞または組織の回収のしやすさの点を考慮すると、より好ましくは2mPa・s以下である。
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本発明における特定化合物は、化学合成法でも得ることができるが、当該化合物が天然物である場合は、当該化合物を含有している各種植物、各種動物、各種微生物から慣用技術を用いて抽出及び分離精製することにより得るのが好適である。その抽出においては、水や超臨界ガスを用いると当該化合物を効率よく抽出できる。例えば、ジェランガムの製造方法としては、発酵培地で生産微生物を培養し、菌体外に生産された粘膜物を通常の精製方法にて回収し、乾燥、粉砕等の工程後、粉末状にすればよい。また、脱アシル化ジェランガムの場合は、粘膜物を回収する際にアルカリ処理を施し、1−3結合したグルコース残基に結合したグリセリル基とアセチル基を脱アシル化した後に回収すればよい。精製方法としては、例えば、液−液抽出、分別沈澱、結晶化、各種のイオン交換クロマトグラフィー、セファデックスLH−20等を用いたゲル濾過クロマトグラフィー、活性炭、シリカゲル等による吸着クロマトグラフィーもしくは薄層クロマトグラフィーによる活性物質の吸脱着処理、あるいは逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー等を単独あるいは任意の順序に組み合わせ、また反復して用いることにより、不純物を除き精製することができる。
ジェランガムの生産微生物の例としては、これに限定されるものではないが、スフィンゴモナス・エロディア(Sphingomonas elodea)及び当該微生物の遺伝子を改変した微生物が挙げられる。
そして、脱アシル化ジェランガムの場合、市販のもの、例えば、三晶株式会社製「KELCAOGEL(シーピー・ケルコ社の登録商標)CG−LA」、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製「ケルコゲル(シーピー・ケルコ社の登録商標)」等を使用することができる。
培地中での特定化合物の濃度は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の赤血球への分化を促進する範囲で適宜設定することが可能であるが、通常0.0005%乃至1.0%(重量/容量)、好ましくは0.001%乃至0.4%(重量/容量)、より好ましくは0.005%乃至0.1%(重量/容量)、さらに好ましくは0.005%乃至0.05%(重量/容量)となるようにすれば良い。例えば、脱アシル化ジェランガムの場合、通常0.001乃至1.0、好ましくは0.003乃至0.5、より好ましくは0.005乃至0.1、最も好ましくは、0.015乃至0.03%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。
なお該濃度は、以下の式で算出できる。
濃度(%)=特定化合物の重量(g)/培地組成物の容量(ml)×100
前記化合物は、化学合成法によってさらに別の誘導体に変えることもでき、そのようにして得た当該誘導体も、本発明において有効に使用できる。具体的には、脱アシル化ジェランガムの場合、その一般式(I)で表される化合物のR1及び/又はR2に当たる水酸基を、C1−3アルコキシ基、C1−3アルキルスルホニル基、グルコースあるいはフルクトースなどの単糖残基、スクロース、ラクトースなどのオリゴ糖残基、グリシン、アルギニンなどのアミノ酸残基などに置換した誘導体も本発明に使用できる。また、1−ethyl−3−(3−di−methylaminopropyl)carbodiimide(EDC)等のクロスリンカーを用いて当該化合物を架橋することもできる。
本発明に使用される特定化合物或いはその塩は製造条件により任意の結晶形として存在することができ、任意の水和物として存在することができるが、これら結晶形や水和物及びそれらの混合物も本発明の範囲に含有される。また、アセトン、エタノール、テトラヒドロフランなどの有機溶媒を含む溶媒和物として存在することもあるが、これらの形態はいずれも本発明の範囲に含有される。
本発明に使用される特定化合物は、環内或いは環外異性化により生成する互変異性体、幾何異性体、互変異性体若しくは幾何異性体の混合物、又はそれらの混合物の形で存在してもよい。本発明の化合物は、異性化により生じるか否かに拘わらず、不斉中心を有する場合は、分割された光学異性体或いはそれらを任意の比率で含む混合物の形で存在してよい。
本発明の培地組成物には、金属イオン、例えば2価の金属イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオンおよび銅イオン等)が存在してもよく、好ましくはカルシウムイオンである。
本発明における特定化合物を上記の培地に添加する場合には、まず適切な溶媒にて当該特定化合物を用時溶解または分散させる(これを、培地添加剤とする。)。その後、培地中での特定化合物濃度として造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の赤血球への分化を促進する濃度(通常0.0005%乃至1.0%(重量/容量)、好ましくは0.001%乃至0.4%(重量/容量)、より好ましくは0.005%乃至0.1%(重量/容量)、さらに好ましくは0.005%乃至0.05%(重量/容量))となるように、当該培地添加剤を培地中に添加すれば良い。脱アシル化ジェランガムの場合、通常0.001乃至1.0、好ましくは 0.003乃至0.5、より好ましくは0.005乃至0.1、最も好ましくは、0.015乃至0.03%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。
なお該濃度は、以下の式で算出できる。
濃度(%)=特定化合物の重量(g)/培地組成物の容量(ml)×100
上記培地添加剤は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の赤血球への分化(好ましくは、上述の赤血球への分化を誘導する因子による、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の赤血球への分化)を促進するために用いられる。上記培地添加剤は、造血幹細胞の赤血球又はその前駆細胞への分化(好ましくは、上述の赤血球への分化を誘導する因子による、造血幹細胞の赤血球又はその前駆細胞への分化)を促進するために用いられる。
ここで、培地添加剤に用いる適切な溶媒の例としては、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の各種アルコールなどの水性溶媒が挙げられるが、これらに限られるわけではない。この際、特定化合物濃度は0.001%乃至5.0%(重量/容量)、好ましくは0.01%乃至1.0%(重量/容量)、より好ましくは0.1%乃至0.5%(重量/容量)とすることが望ましい。その際、当該特定化合物の効果を高めたり、使用する際の濃度を下げたりするような添加物を更に添加することもできる。この様な添加剤の例として、グァーガム、タマリンドガム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ローカストビーンガム、アラビアガム、タラガム、タマリンドガム、メチルセルロース等の多糖類を1種以上混合することができる。また、当該特定化合物を培養の際に担体表面上に固定化或いは、担体内部に担持して使用することもできる。当該特定化合物は、提供時あるいは保存時に任意の形状であり得る。当該特定化合物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤のような製剤化された固体、適切な溶媒並びに溶解剤で溶解した溶液あるいは懸濁液のような液体、又は基板や単体に結合させた状態であり得る。製剤化される際の添加物としては、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤;乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニット等の賦形剤;ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤;ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤;脂肪酸エステル等の界面活性剤;グリセリン等の可塑剤等が挙げられる。これらの添加物は上記のものに限定されることはなく、当業者が利用可能であれば自由に選択することができる。また、本発明における特定化合物は、必要に応じて滅菌処理を施してもよい。滅菌方法は特に制限はなく、例えば、放射線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、オートクレーブ滅菌等が挙げられる。これらの滅菌処理は、特定化合物が固形でも溶液の状態でもよい。
本発明の培地組成物の調製方法を例示するが、本発明はこれによって限定されるものではない。特定化合物をイオン交換水あるいは超純水に添加する。そして、当該特定化合物を溶解できる温度(例えば、60℃以上、80℃以上、90℃以上)で加熱しながら撹拌して透明な状態になるまで溶解させる。溶解後、撹拌しながら放冷し、滅菌(例えば、121℃にて20分でのオートクレーブ滅菌)を行う。室温に戻した後、静置培養に使用する任意の培地を撹拌(例えば、ホモミキサー等)しながら、当該培地に前記滅菌後の水溶液を添加し、当該培地と均一になるように混合する。本水溶液と培地の混合方法は特に制限はなく、例えばピペッティング等の手動での混合、マグネチックスターラーやメカニカルスターラー、ホモミキサー、ホモジナイザー等の機器を用いた混合が挙げられる。また、混合後に本発明の培地組成物をフィルターにてろ過してもよい。ろ過処理をする際に用いるフィルターの細孔の大きさは、5μm乃至100μm、好ましくは5μm乃至70μm、より好ましくは10μm乃至70μmである。
例えば、脱アシル化ジェランガムを調製する場合、0.1乃至1%(重量/容量)、好ましくは0.2乃至0.5%(重量/容量)、より好ましくは0.3〜0.4%(重量/容量)となるようにイオン交換水あるいは超純水に脱アシル化ジェランガムを添加する。そして、前記脱アシル化ジェランガムを溶解できる温度であれば何度でもよいが、60℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上に加熱しながら撹拌することにより透明な状態になるまで溶解させる。溶解後、撹拌しながら放冷し、例えば121℃にて20分間オートクレーブ滅菌を行う。室温に戻した後に、例えばIMDM培地をホモミキサー等で攪拌しながら、当該培地に本水溶液を所望の最終濃度となるように添加し(例えば終濃度が0.015%の場合は0.3%水溶液:培地の比率は1:20)、均一に混合させる。本水溶液と培地の混合方法は特に制限はなく、例えばピペッティング等の手動での混合、マグネチックスターラーやメカニカルスターラー、ホモミキサー、ホモジナイザー等の機器を用いた混合が挙げられる。また、混合後に本発明の培地組成物をフィルターにてろ過してもよい。ろ過処理をする際に用いるフィルターの細孔の大きさは、5μm乃至100μm、好ましくは5μm乃至70μm、より好ましくは10μm乃至70μmである。
本発明の方法で培養する造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の形態や状態は、当業者が任意に選択することができる。その好ましい具体例としては、特に制限されるものではないが、細胞が単独で培地組成物中に分散した状態、複数個の細胞が集合し細胞塊(スフェア)を形成した状態、或いは2種以上の細胞が集合して細胞塊(スフェア)を形成した状態等が挙げられる。
本発明の方法で造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞を培養する際には、本発明の培養組成物に対して別途調製した造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞を添加し、均一に分散される様に混合すればよい。その際の混合方法は特に制限はなく、例えばピペッティング等の手動での混合、スターラー、ヴォルテックスミキサー、マイクロプレートミキサー、振とう機等の機器を用いた混合が挙げられる。混合後は培養液を静置状態にしてもよいし、必要に応じて培養液を回転、振とう或いは撹拌してもよい。その回転数と頻度は、当業者の目的に合わせて適宜設定すればよい。また、静置培養の期間において培地組成物の交換が必要となった際には、遠心やろ過処理を行うことにより細胞及び/又は組織と培地組成物を分離した後、新しい培地組成物を細胞及び/又は組織に添加すればよい。或いは、遠心やろ過処理を行うことにより細胞及び/又は組織を適宜濃縮した後、新しい培地組成物をこの濃縮液に添加すればよい。例えば、遠心する際の重力加速度(G)は100乃至400Gであり、ろ過処理をする際に用いるフィルターの細孔の大きさは10μm乃至100μmであるが、これらに制限されることは無い。また、目的とする細胞に特異的に結合する抗体を表面上にコーティングした磁性微粒子を用いて、磁力により培養した細胞及び/又は組織を分離することができる。この様な磁性微粒子の例としては、ダイナビーズ(ヴェリタス社製)、MACSマイクロビーズ(ミルテニー・バイオテク社製)、BioMag(テクノケミカル社製)等が挙げられる。これらの培地組成物の交換は、機械的な制御下のもと閉鎖環境下で実行が可能なバイオリアクターや自動培養装置によって行うこともできる。培地交換の頻度は、特に制限は無く、当業者が適宜選択することができる。
本発明による造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞から赤血球の好ましい製造方法を以下に例示する。
まず、生体由来の造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の調製は、例えば臍帯血、骨髄、末梢血などを採取し、そこから造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞を豊富に含む細胞集団を分離することにより行われる。この様な細胞集団としてはCD34陽性細胞、CD133陽性細胞などが挙げられる。例えばCD34陽性細胞は、比重遠心法及び磁気細胞分離(Magnetic Cell Sorting;MACS)システム又はフローサイトメトリーを組み合わせることにより分離することができる。例えばCPD液(クエン酸−リン酸−デキストラン)添加血液を、比重遠心法などにより分画し、単核球を多く含む画分(以下、有核細胞画分という。)を分離回収する。比重遠心法としては、例えばデキストランやFicoll液を用いた比重遠心法、Ficoll−paque密度勾配法、Percoll不連続密度勾配比重遠心法、Lymphoprepを用いた密度勾配比重遠心法などが挙げられる。ついで、抗ヒトCD34モノクローナル抗体を固定した磁気ビーズ(ミルテニー・バイオテク社製;以下、CD34抗体磁気ビーズという。)と上記分離回収した有核細胞画分を混合し、次いで約2乃至8℃でインキュベーション(約30分)し、有核細胞画分中のCD34陽性細胞をこの抗体磁気ビーズに結合させる。結合した抗体磁気ビーズ/CD34陽性細胞を専用磁気細胞分離装置、例えばオートMACSシステム(ミルテニー・バイオテク社製)などを用い分離回収する。一態様において、分離された造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(例、CD34陽性細胞)の純度(総細胞数に占める目的とする細胞数の百分率)は、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは99%以上、最も好ましくは100%である。このようにして得られたCD34陽性細胞について、本発明の培養組成物中で培養を行うことにより、CD34陽性細胞を赤血球へ分化させる。CD34陽性細胞を培養する際の条件、培養装置、培地の種類、本発明化合物の種類、本発明化合物の含量、添加物の種類、添加物の含量、培養期間、培養温度などは、本明細書に記載した範囲から当事者により適宜選択されるが、これらに限定されるものではない。
培養後、トリパンブルー法などにより全細胞数を測定するとともに、培養された細胞をFITC(フルオロセインイソチオシアネート)、PE(フィコエリスリン)、APC(アロフィコシアニン)などの蛍光色素により標識された抗CD71抗体、抗CD36抗体或いは抗グリコフォリンA抗体により染色し、これらの赤血球特異的マーカーの陽性細胞の割合をフローサイトメトリーにて解析することにより、培養された細胞中に赤血球がどれだけ増幅されたかを判断することができる。この際、抗CD34抗体を用いた染色により、細胞の分化の割合を判断することもできる。また、赤血球への分化は、顕微鏡下での細胞の目視検査によって評価してもよい。典型的な両凹面(biconcave)の細胞の存在によって、赤血球の存在を確認できる。赤血球(網状赤血球を含む)の存在は、Hoechst 33342、TO−PRO(登録商標)−3、DRAG5等の、デオキシリボ核酸(DNA)の染色によっても確認できる。赤血球および網状赤血球は、一般的にこれらの染色において陰性である。さらに、その培養液の一部をコロニーアッセイに供し、形成される赤血球コロニー数を測定することにより、赤血球系の造血前駆細胞の割合を判断することができる。以上の方法によって製造された赤血球は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞から分離することができる。当該分離は、例えば、CD36および/またはグリコフォリンAに対する抗体を用いることで、達成することができる。分離方法としては、例えば、抗体を介した磁気ビーズ分離、セルソーティング、CD36および/またはグリコフォリンAに対する抗体を担持した膜またはカラムに対する細胞の通過等が挙げられる。また、紫外線照射により培養液中の造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞を死滅させることもできる。
以下に本発明の培地組成物を用いた試験例を実施例として具体的に述べることで、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[試験例]
COインキュベーターにおけるCOの濃度(%)は、雰囲気中のCOの体積%で示した。また、PBSはリン酸緩衝生理食塩水(シグマアルドリッチジャパン社製)を意味し、FBSは牛胎児血清(Biological Industries社製)を意味する。また、(w/v)は、1体積あたりの重量を表わす。
(試験例1:ヒト臍帯血CD34陽性細胞を用いた赤血球前駆細胞の増幅試験)
脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)を0.3%(w/v)となるように超純水(Milli−Q水)に懸濁した後、90℃にて加熱しながらの撹拌により溶解し、本水溶液を121℃で20分オートクレーブ滅菌した。本溶液を用いて最終濃度100ng/mLのSCF(和光純薬工業社製)、最終濃度20ng/mLのIL−3(和光純薬工業社製)及び最終濃度1ユニット/mLのEPO(田辺三菱製薬社製)を添加したStemSpanSFEM(ステムセルテクノロジー社製)に終濃度0.015%或いは0.030%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物を調製した。引き続き、Lonza社より購入したヒト臍帯血のCD34陽性細胞を、10000細胞/1mLとなるように上記の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物に播種した後、24ウエルプレート(コーニング社製)のウェルに1ウェル当たり1mLになるように分注した。なお、陰性対照として脱アシル化ジェランガムを含まない同上培地にCD34陽性細胞を懸濁したものを分注した。
引き続き、本プレートをCOインキュベーター(37℃、5%CO)内にて7日間静置状態で培養し、生細胞数をトリパンブルー法にて測定した。グリコフォリンA陽性CD34陰性細胞数は、以下の通りに算出した。まず、液体培養後の細胞を抗グリコフォリンA抗体(APC、ベクトンディッキンソン社製)及び抗CD34抗体(PE、ベクトンディッキンソン社製)にて染色した。染色された細胞を、2%(v/v)FBS含有PBS(−)溶液で洗浄した後、ヨウ化プロピジウム(シグマアルドリッチジャパン社製)を最終濃度1μg/mLになるように加えて染色した。染色された細胞を、BD FACSAriaTM(登録商標)III フローサイトメーター(ベクトンディッキンソン社製)で解析して、グリコフォリンA陽性CD34陰性細胞比率を求め、生細胞数にその比率を乗じることにより、グリコフォリンA陽性CD34陰性細胞数を算出した。
その結果、本発明の培地組成物は優れたグリコフォリンA陽性CD34陰性細胞の増幅活性を示し、赤血球前駆細胞の増幅活性を有することが確認された。脱アシル化ジェランガム無添加時のグリコフォリンA陽性CD34陰性細胞数を1としたときの、0.015%或いは0.030%の脱アシル化ジェランガム添加時の増幅率を表1に示す。
Figure 0006319304
本発明に係る培地組成物は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞から赤血球を生体外にて製造する際等に極めて有用である。本発明の方法により製造される赤血球は、赤血球輸血を要する治療行為等において極めて有用である。
刊行物、特許文献等を含む、本明細書に引用されたすべての参考文献は、引用により、それらが個々に具体的に参考として援用されかつその内容全体が具体的に記載されているのと同程度まで、本明細書に援用される。
本出願は日本で出願された特願2013−086904(出願日:2013年4月17日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (7)

  1. 造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞赤血球への分化を促進するための脱アシル化ジェランガムまたはその塩を含む培地添加剤。
  2. 請求項1に記載の添加剤を含有してなる赤血球分化用の培地組成物。
  3. SCF、IL−3、IL−6、IL−11、FL、TPO及びEPOからなる群から選択される1又は2以上の因子を更に含む、請求項に記載の培地組成物。
  4. SCF、IL−3及びEPOを含む、請求項3に記載の培地組成物。
  5. 造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞から赤血球を製造する方法であって、請求項1に記載の添加剤の存在下、或いは請求項2〜4のいずれか1項に記載の培地組成物中で、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞を培養することを特徴とする、方法。
  6. 造血幹細胞の赤血球又はその前駆細胞への分化を誘導する方法であって、請求項1に記載の添加剤の存在下、或いは請求項2〜4のいずれか1項に記載の培地組成物中で、造血幹細胞を培養することを特徴とする、方法。
  7. 造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞、並びに請求項2〜4のいずれか1項に記載の培地組成物を含む、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の培養調製物。
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