JP6319078B2 - シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子に関する。
自動車等の内燃機関から排出される排気ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれており、これらの有害成分は排気ガス浄化用触媒によって浄化されてから大気中に放出されている。
これらの有害成分を浄化する排気ガス浄化用触媒には、三元触媒、NOx吸蔵還元型触媒(以下、NSR触媒という)、選択還元型NOx触媒(以下、SCR触媒という)がある。これらの触媒は、内燃機関からの排気通路に、上流から三元触媒、NSR触媒、SCR触媒の順に備えられている。
三元触媒は触媒雰囲気が理論空燃比の時にNOx、HC及びCOを最大効率で浄化する。また、三元触媒は酸素ストレージ能を有しており、この酸素ストレージ能の作用によって、理論空燃比以外であってもNOx、HC及びCOを浄化することができる。すなわち、三元触媒は、流入する排気の空燃比がリーン(空気過剰雰囲気)空燃比であるときは過剰分の酸素を吸蔵することにより、流入する排気の空燃比がリッチ(燃料過剰雰囲気)空燃比であるときは不足分の酸素を放出することにより、排気を浄化する。
NSR触媒は流入する排気の酸素濃度が高いときは排気中のNOxを吸蔵し、流入する排気の酸素濃度が低下しかつ還元剤が存在するときは吸蔵していたNOxを還元する。NSR触媒に供給する還元剤には、内燃機関から排出される未燃燃料であるHC又はCOを利用することができる。さらに、NSR触媒も、酸素ストレージ能を有している。
なお、排気が三元触媒又はNSR触媒を通過するときに、排気中のNOxがHC又はH2と反応してNH3が生成されることがある。例えば、水性ガスシフト反応又は水蒸気改質反応によって排気中のCOやH2OからH2が発生すれば、そのH2が三元触媒又はNSR触媒においてNOと反応してNH3が生成される。NH3は、三元触媒又はNSR触媒を通過する排気の空燃比が理論空燃比以下の時に生成される。
SCR触媒はあらかじめ還元剤を吸着しておき、NOxが通過するときに吸着していた還元剤によってNOxを選択還元する。SCR触媒へ供給する還元剤には、三元触媒又はNSR触媒において生成されるNH3を利用することができる。
NOx、HC及びCOの有害成分の中でも特に、NOxは、酸化触媒やガソリン自動車で実用化されている三元触媒での浄化が難しく、NOxを浄化することができる有望な触媒としてSCR触媒やNSR触媒の開発が行われている。
例えば、特許文献1は、ディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンの排気流の排出処理システムであって、NSR触媒等の現場アンモニア生成成分と、前記アンモニア生成成分の下流に配置されたSCR触媒であってCHA結晶構造を有する分子篩を含むSCR触媒とを備える排出処理システムを記載する。
特許文献2は、SCR触媒において用いられる0.3ミクロンを超える結晶寸法を有するSAPO-34を含んでなる水熱的に安定なマイクロポーラス結晶性物質であって、前記結晶性物質は10体積%までの水蒸気の存在下に700〜900℃の範囲の温度に16時間の暴露の後にその表面積及びマイクロ細孔体積の少なくとも80%並びに少なくとも0.40mmol/gの酸性度を保持し、前記SAPO-34は1〜20%の量のSiO2並びに1.0重量%以上の銅及び/又は0.20重量%以上の鉄を含むマイクロポーラス結晶性物質を記載する。
特許文献3は、ガス中の窒素酸化物を窒素に転化する方法であって、少なくとも一種の鉄や銅から選択される遷移金属を含むゼオライト触媒の存在下で、前記窒素酸化物を窒素系還元剤と接触させることを含んでなるものであり、前記ゼオライトが8個の四面体原子による最大環サイズを含む小細孔ゼオライトであるSAPO-34であり、前記遷移金属量が前記ゼオライトの総重量に対して0.01〜20重量%である方法を記載する。
特許文献4は、SCR触媒において用いられる20μm未満の銅担持SAPO-34を合成するための方法であって、中性の窒素含有の有機鋳型と、アルミナ源と、シリカ源と、リン源とをゲル混合物中で混合するステップと、前記ゲルを約200℃未満に少なくとも約12時間加熱して結晶性SAPO-34を生成するステップと、前記結晶性SAPO-34を濾過及び洗浄するステップと、前記結晶性SAPO-34を焼成するステップと、前記結晶性SAPO-34を銅塩とイオン交換して銅担持SAPO-34を得るステップとを含む方法を記載する。
特許文献5は、SCR触媒において用いられる酸化リンを含有する金属担持結晶性シリカアルミノフォスフェート粒子とアルミナ結合材とからなる低温水熱安定性に優れる成型体触媒であって、前記酸化リン含有金属担持結晶性シリカアルミノフォスフェート粒子中の酸化リンがオルトリン酸塩及び/又はピロリン酸塩に由来する酸化リンであり、前記酸化リンがオルトリン酸塩に由来する場合の含有量はP2O5として2〜20重量%の範囲にあり、ピロリン酸塩に由来する場合の含有量はP2O7として2.5〜25重量の範囲にあることを特徴とする成型体触媒を記載する。
特許文献6は、金属担持結晶性シリカアルミノフォスフェート粒子の表面がリン酸アルミニウムで修飾されてなり、触媒中のリン酸アルミニウムの含有量が金属担持結晶性シリカアルミノフォスフェート粒子に対してリン酸アルミニウムをAl2O3+P2O5として0.1〜40重量%の範囲にあることを特徴とするSCR触媒において用いられるリン酸アルミニウム修飾金属担持結晶性シリカアルミノフォスフェート触媒を記載する。
特表2012-522636号公報 特許第4889807号公報 特表2010-524677号公報 特表2011-510899号公報 特開2012-250149号公報 特開2011-177676号公報
しかしながら、特許文献1〜6に記載されている触媒においては、エンジンの運転・停止を繰り返すことによって触媒性能が低下するといった問題が存在する。例えば図1に示すように、銅担持SAPO-34をSCR触媒に用いた場合では、エンジンの運転・停止の繰り返し回数を増やすことによってNOx浄化率が低下することがわかる。
エンジンの運転・停止を繰り返すことによって触媒の結晶構造が部分的に壊れ、これが触媒性能の低下につながっていると考えられる。
したがって、本発明はエンジンの運転・停止を繰り返し行うことによるNOx浄化率の低下を抑制することができる、排気ガス浄化用触媒に用いるためのシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、
銅及び/又は鉄を担持したシリカアルミノフォスフェート粒子において、前記シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を、下記式
X={P/(Si+Al+P)}/{P/(Si+Al+P)}
(式中、{P/(Si+Al+P)}は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子表面(Surface)におけるSi、Al及びP中のPのモル比を示し、{P/(Si+Al+P)}は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子全体(Bulk)におけるSi、Al及びP中のPのモル比を示すものであって、Si、Al及びPは、JIS K 0167:2011規格に基づいてX線光電子分光法(XPS)により測定される値より算出される、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子表面におけるSi、Al及びPの合計を100%とした時のSi、Al及びPそれぞれの原子(モル)分率であり、Si、Al及びPは、JIS K 0116:2014規格に基づいて誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により測定される値より算出される、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子全体におけるSi、Al及びPの合計を100%とした時のSi、Al及びPそれぞれの原子分率である)
において、Xが0〜0.24の範囲となるような構成のシリカにより被覆し、得られたシリカ被覆シリカアルミノフォスフェートを排気ガス浄化用触媒に用いること、
又は、
銅及び/又は鉄を担持したシリカアルミノフォスフェート粒子において、前記シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を、下記式
Y=S2/(S1+S2)
{式中、S1は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)によって得られたスペクトルのフォークト関数(ここで、フォークト関数は、化学シフト−14〜−16ppmに極大値を有するピークをガウス分布により近似した関数と化学シフト−24〜−26ppmに極大値を有するピークをローレンツ分布により近似した関数とを足し合わせた関数である)によるフィッティングにおいて、前記スペクトルと前記フォークト関数との差分の二乗和が最小となるようにフィッティングした場合の、化学シフト−24〜−26ppmに極大値を有するピークをローレンツ分布により近似した関数の0.0ppm〜−50ppmにおける積分値(ピーク面積)であり、S2は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)によって得られたスペクトルのフォークト関数によるフィッティングにおいて、前記スペクトルと前記フォークト関数との差分の二乗和が最小となるようにフィッティングした場合の、化学シフト−14〜−16ppmに極大値を有するピークをガウス分布により近似した関数の0.0ppm〜−50ppmにおける積分値(ピーク面積)である}
において、Yが0.0〜0.19の範囲となるような構成のシリカにより被覆し、得られたシリカ被覆シリカアルミノフォスフェートを排気ガス浄化用触媒に用いること
によって、エンジンの運転・停止を繰り返し行うことによるNOx浄化率の低下が抑制されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)銅及び/又は鉄を担持したシリカアルミノフォスフェート粒子と、前記シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカとを含む、排気ガス浄化用触媒に用いるためのシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子であって、前記シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカの構成が、下記式
X={P/(Si+Al+P)}/{P/(Si+Al+P)}
(式中、{P/(Si+Al+P)}は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子表面(Surface)におけるSi、Al及びP中のPのモル比を示し、{P/(Si+Al+P)}は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子全体(Bulk)におけるSi、Al及びP中のPのモル比を示すものであって、Si、Al及びPは、JIS K 0167:2011規格に基づいてX線光電子分光法(XPS)により測定される値より算出される、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子表面におけるSi、Al及びPの合計を100%とした時のSi、Al及びPそれぞれの原子(モル)分率であり、Si、Al及びPは、JIS K 0116:2014規格に基づいて誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により測定される値より算出される、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子全体におけるSi、Al及びPの合計を100%とした時のSi、Al及びPそれぞれの原子分率である)
において、Xが0〜0.24の範囲となる、前記シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子。
(2)銅及び/又は鉄を担持したシリカアルミノフォスフェート粒子と、前記シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカとを含む、排気ガス浄化用触媒に用いるためのシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子であって、前記シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカの構成が、下記式
Y=S2/(S1+S2)
{式中、S1は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)によって得られたスペクトルのフォークト関数(ここで、フォークト関数は、化学シフト−14〜−16ppmに極大値を有するピークをガウス分布により近似した関数と化学シフト−24〜−26ppmに極大値を有するピークをローレンツ分布により近似した関数とを足し合わせた関数である)によるフィッティングにおいて、前記スペクトルと前記フォークト関数との差分の二乗和が最小となるようにフィッティングした場合の、化学シフト−24〜−26ppmに極大値を有するピークをローレンツ分布により近似した関数の0.0ppm〜−50ppmにおける積分値(ピーク面積)であり、S2は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)によって得られたスペクトルのフォークト関数によるフィッティングにおいて、前記スペクトルと前記フォークト関数との差分の二乗和が最小となるようにフィッティングした場合の、化学シフト−14〜−16ppmに極大値を有するピークをガウス分布により近似した関数の0.0ppm〜−50ppmにおける積分値(ピーク面積)である}
において、Yが0〜0.19の範囲となる、前記シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子。
本発明により、エンジンの運転・停止を繰り返し行うことによるNOx浄化率の低下が抑制されたシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子を提供することが可能となる。
銅担持SAPO-34をSCR触媒に用いた場合の、エンジンの運転・停止の繰り返し回数に対する、評価温度380℃におけるNOx浄化率の関係を示した図である。 シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)によって得られたスペクトルの一例を示した図である。 シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)によって得られたスペクトルのフィッティングの一例を示した図である。 排気ガス浄化用触媒における、排気ガスの浄化の模式図を示す。 実施例I−7のNOx浄化率測定における、Xの値に対する耐久後NOx浄化率の関係を示した図である。 実施例II−9のNOx浄化率測定における、Yの値に対する耐久後NOx浄化率の関係を示した図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本発明のシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子は、下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
本発明のシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子は、銅及び/又は鉄を担持したシリカアルミノフォスフェート粒子と、前記シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカとを含む、排気ガス浄化用触媒に用いるためのシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子であって、前記シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカの構成が特定の構成になることを特徴とする。
ここで、シリカアルミノフォスフェート(SAPO)粒子は、結晶性シリカアルミノフォスフェート粒子(リン酸塩系ゼオライト粒子)であることが好ましい。結晶性シリカアルミノフォスフェート粒子としては、例えば、SAPO-5、SAPO-11、SAPO-14、SAPO-17、SAPO-18、SAPO-34、SAPO-39、SAPO-42などを挙げることができる。本発明における好ましいシリカアルミノフォスフェート粒子は、酸素8員環で規定される細孔入口を有する結晶性シリカアルミノフォスフェート粒子であり、より好ましくはチャバサイト型の結晶性シリカアルミノフォスフェート粒子であり、特に好ましくはSAPO-34である。
シリカアルミノフォスフェート粒子には、銅及び/又は鉄が担持されている。また、シリカアルミノフォスフェート粒子には、銅(Cu)、鉄(Fe)、ケイ素(Si)及びアルミニウム(Al)以外に任意の金属原子を含んでいてもよい。例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、鉛(Pb)などを含んでいてもよい。
シリカアルミノフォスフェート粒子に銅及び/又は鉄が担持されていることによって、効率よくNOxを還元することができる。
一つの実施形態において、シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカの構成は、下記式
X={P/(Si+Al+P)}/{P/(Si+Al+P)}
(式中、{P/(Si+Al+P)}は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子表面(Surface)におけるSi、Al及びP中のPのモル比を示し、{P/(Si+Al+P)}は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子全体(Bulk)におけるSi、Al及びP中のPのモル比を示すものであって、Si、Al及びPは、JIS K 0167:2011規格に基づいてX線光電子分光法(XPS)により測定される値より算出される、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子表面におけるSi、Al及びPの合計を100%とした時のSi、Al及びPそれぞれの原子(モル)分率であり、Si、Al及びPは、JIS K 0116:2014規格に基づいて誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により測定される値より算出される、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子全体におけるSi、Al及びPの合計を100%とした時のSi、Al及びPそれぞれの原子分率である)
において、Xが0〜0.24、好ましくは0〜0.12の範囲である。
ここで、X線光電子分光法(XPS)は、材料の表面、典型的には深さ数nmの領域の組成に敏感な表面分析方法である。XPSは、JIS K 0167:2011規格に準ずる方法により行う。
誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法は、試料に含まれる測定対象元素をラジオ波領域の高周波電力を誘導結合させて発生させるプラズマ(誘導結合プラズマ:ICP)によって気化励起し、得られる原子スペクトル線の発光強度を測定することによって定量分析を行う方法である。ICP発光分光分析法は、JIS K 0116:2014規格に準ずる方法により行う。
シリカの構成を前記範囲とすることで、シリカアルミノフォスフェート粒子の最表面の原子とシリカが化学結合を形成し、それによって、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子の最表面構造が安定化し、触媒性能の低下を抑制すると推定される。
一つの実施形態において、シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカの構成は、下記式
Y=S2/(S1+S2)
{式中、S1は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)によって得られたスペクトルのフォークト関数(ここで、フォークト関数は、化学シフト−14〜−16ppmに極大値を有するピークをガウス分布により近似した関数と化学シフト−24〜−26ppmに極大値を有するピークをローレンツ分布により近似した関数とを足し合わせた関数である)によるフィッティングにおいて、前記スペクトルと前記フォークト関数との差分の二乗和が最小となるようにフィッティングした場合の、化学シフト−24〜−26ppmに極大値を有するピークをローレンツ分布により近似した関数の0.0ppm〜−50ppmにおける積分値(ピーク面積)であり、S2は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)によって得られたスペクトルのフォークト関数によるフィッティングにおいて、前記スペクトルと前記フォークト関数との差分の二乗和が最小となるようにフィッティングした場合の、化学シフト−14〜−16ppmに極大値を有するピークをガウス分布により近似した関数の0.0ppm〜−50ppmにおける積分値(ピーク面積)である}
において、Yが0.0〜0.19の範囲である。
ここで、固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)とは、固体試料における31Pについて核磁気共鳴を測定し、固体試料の構造や動力学等を分析する方法である。
図2には、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)によって得られたスペクトルの一例を示す。
図3には、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)によって得られたスペクトルのフォークト関数によるフィッティングにおいて、前記スペクトルと前記フォークト関数との差分の二乗和が最小となるようにフィッティングした場合の、化学シフト−24〜−26ppmに極大値を有するピークをローレンツ分布により近似した関数(0.0ppm〜−50ppmにおける積分値(面積)がS1となる)、化学シフト−14〜−16ppmに極大値を有するピークをガウス分布により近似した関数(0.0ppm〜−50ppmにおける積分値(面積)がS2となる)及びそれらを足し合わせたフォークト関数の一例を示す。
シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)によって得られたスペクトル中の化学シフト−24〜−26ppmに極大値を有するピークは、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート中に存在するP−(OAl)由来のピークであると考えられる。
シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)によって得られたスペクトル中の化学シフト−14〜−16ppmに極大値を有するピークは、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート中に存在するP−(OAl)(OH)(ここで、xは0<x<2である)又はP−(OAl)4―x(OH)(ここで、xは0<x<4である)由来のピークであると考えられる。
シリカの構成を前記範囲とすることで、シリカアルミノフォスフェート粒子の最表面の原子とシリカが化学結合を形成し、それによって、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子の最表面構造が安定化し、触媒性能の低下を抑制すると推定される。
シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカは、従来用いられる種々の被覆方法を用いてシリカアルミノフォスフェート粒子に被覆される。例えば、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシランなどのアルコキシシランやシリコーンなどの有機ケイ素化合物を乾式又は湿式の方法によってシリカアルミノフォスフェート粒子に被覆後、熱処理を行ってシリカへと変換して被覆する方法、シリカゾルを乾式又は水やアルコールなどの溶媒を用いる湿式の方法によってシリカアルミノフォスフェート粒子と混合して被覆する方法、シリコン又はシリカターゲット材をスパッタリングすることによって物理的にシリカアルミノフォスフェート粒子に被覆する方法などがあるが、これらに限定されない。より容易な方法で、より均一に被覆するためには、シリカゾルを湿式方法によってシリカアルミノフォスフェート粒子に被覆する方法や、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどのアルコキシシランを湿式の方法によってシリカアルミノフォスフェート粒子に被覆後、熱処理を行ってシリカへと変換して被覆する方法が好ましい。
前記のようにして製造されたシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子を、例えば三元触媒、NSR触媒、SCR触媒又はこれらを組み合わせた触媒などの排気ガス浄化用触媒に用いることによって、排気ガス浄化用触媒のエンジンの運転・停止を繰り返し行うことによるNOx浄化率の低下を抑制することができる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例につき説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
I.シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカの構成をXにより規定した場合における実施例及び比較例
実施例I−1 シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(X=0.07)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
(1)銅担持SAPO-34(銅担持量:3.2重量%、Si/Al/Pのモル比:17/50/33、200g)と、平均粒径5nmのシリカゾル(Si含有量がSiO2換算で20重量%、389g)と、水を混合・撹拌することによって、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子のスラリーを製造した。水分量は、コーディエライトハニカムへ塗布可能なスラリー粘度になるよう調整した。
(2)(1)で製造したスラリーを、触媒サイズ1リットル当りの銅担持SAPO-34の量が167gとなるようコーディエライトハニカムにコーティングした。
(3)(2)で製造された排気ガス浄化用触媒を120℃で乾燥した。
(4)(3)で乾燥した排気ガス浄化用触媒を、空気中、550℃において2時間焼成した。
実施例I−2 シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(X=0.10)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
シリカゾルの添加量を(Si含有量がSiO2換算で20重量%、389g)から(Si含有量がSiO2換算で20重量%、234g)に変更した以外は、実施例I−1と同様にした。
実施例I−3 シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(X=0.12)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
シリカゾルの添加量を(Si含有量がSiO2換算で20重量%、389g)から(Si含有量がSiO2換算で20重量%、156g)に変更した以外は、実施例I−1と同様にした。
実施例I−4 シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(X=0.21)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
シリカゾルの添加量を(Si含有量がSiO2換算で20重量%、389g)から(Si含有量がSiO2換算で20重量%、78g)に変更した以外は、実施例I−1と同様にした。
実施例I−5 シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(X=0.24)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
シリカゾルの平均粒径を5nmから12.5nmに変更した以外は、実施例I−1と同様にした。
比較例I−1 シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(X=0.30)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
シリカゾルの添加量を(Si含有量がSiO2換算で20重量%、389g)から(Si含有量がSiO2換算で20重量%、30g)に変更した以外は、実施例I−1と同様にした。
比較例I−2 アルミナ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(X=0.38)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
シリカゾル(Si含有量がSiO2換算で20重量%、389g)をアルミナゾル(Al含有量がAl2O3換算で10重量%、78g)に変更した以外は、実施例I−1と同様にした。
比較例I−3 アルミナ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(X=0.28)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
シリカゾル(Si含有量がSiO2換算で20重量%、389g)をアルミナゾル(Al含有量がAl2O3換算で10重量%、156g)に変更した以外は、実施例I−1と同様にした。
比較例I−4 アルミナ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(X=0.23)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
シリカゾル(Si含有量がSiO2換算で20重量%、389g)をアルミナゾル(Al含有量がAl2O3換算で10重量%、234g)に変更した以外は、実施例I−1と同様にした。
実施例I−6 XPS及びICP発光分光分析法
実施例I−1〜I−5及び比較例I−1〜I−4で製造した排気ガス浄化用触媒におけるシリカ又はアルミナ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子について、XPS及びICP発光分光分析法によって組成の測定を行った。各分析法の詳細は以下に示すとおりである。
XPS条件:JIS K 0167:2011規格準拠
装置名:Ulvac製 PHI-5700
X線源:Al Kα線
X線径:φ800μm
ICP発光分光分析法条件:JIS K 0116:2014規格準拠
装置名:株式会社島津製作所製 ICPE-9000
XPSより測定した値より、シリカ又はアルミナ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子表面におけるSi、Al及びPの合計を100%とした時のSi、Al及びPそれぞれの原子分率(Si、Al及びP)を算出した。
ICP発光分光分析法により測定した値より、シリカ又はアルミナ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子全体におけるSi、Al及びPの合計を100%とした時のSi、Al及びPそれぞれの原子分率(Si、Al及びP)を算出した。
得られたSi、Al及びP並びにSi、Al及びPを用いて、Xの値を算出した。
それぞれの結果を表1に示す。
Figure 0006319078
実施例I−7 排気ガス浄化用触媒の耐久性試験
実施例I−1〜I−5及び比較例I−1〜I−4により得られた排気ガス浄化用触媒の触媒性能(耐久性)について試験した。耐久性は、排気ガス浄化用触媒を下記の耐久条件にさらし、その後NOx浄化率を測定することによって試験した。下記の耐久条件は、エンジンの運転・停止を繰り返して使用することを模擬し、下記のNOx浄化率測定条件は、SCR反応を模擬した。
耐久条件
(1)排気ガス浄化用触媒を水に30分間浸漬する。
(2)排気ガス浄化用触媒を取り出し、エアガンにより残余水を取り除く。
(3)排気ガス浄化用触媒を電気炉で200℃、30分間熱処理する。
(4)(1)〜(3)を10回繰り返す。
NO x 浄化率測定条件
リッチ(燃料過剰雰囲気)及びリーン(空気過剰雰囲気)ガス組成:
Figure 0006319078
リッチ/リーン切り替え時間:リッチ10秒/リーン60秒(計10回(サイクル))
評価温度:410℃
SV(空間速度):85700h-1
触媒サイズ:10cc(テストピース)
測定:触媒へ流入するガス及び流出するガスのNOx濃度を堀場製作所製MEXA-7100により測定した。
NOx浄化率:下記式により算出
NOx浄化率(%)={(8〜10サイクルの間に触媒へ流入する総NOx量)−(8〜10サイクルの間に触媒から流出した総NOx量)}/(8〜10サイクルの間に触媒へ流入する総NOx量)×100
図4には、排気ガス浄化用触媒における、排気ガスの浄化の模式図を示す。
排気ガス浄化用触媒の初期の状態(耐久条件にさらしていない状態)及び耐久条件にさらした後の状態について、NOx浄化率を測定した結果を表3に示す。
Figure 0006319078
Xの値に対するNOx浄化率の関係について図5に示す。
図5に示すように、実施例I−1〜I−5と比較例I−1を比較すると、比較例I−1(X=0.30)の排気ガス浄化用触媒では、耐久条件にさらした後に十分にNOx浄化率の低下を抑制することができなかった。これより、Xの値は0〜0.24であることが好ましい。
図5に示すように、実施例I−1〜I−3の排気ガス浄化用触媒では、耐久条件にさらした後でもNOx浄化率の低下がみられなかった。これより、Xの値は0〜0.12であることがより好ましい。
図5に示すように、実施例I−1〜I−5と比較例I−2〜I−4を比較すると、シリカアルミノフォスフェート粒子を被覆するためにアルミナゾルを使用した比較例I−2〜I−4の排気ガス浄化用触媒では、耐久条件にさらした後に十分にNOx浄化率の低下を抑制することができなかった。これより、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子を用いた排気ガス浄化用触媒では、耐久条件にさらした後でもNOx浄化率の低下を抑制することができることが分かった。
II.シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカの構成をYにより規定した場合における実施例及び比較例
比較例II−1 アルミナゾルを使用して製造したアルミナ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(Y=0.25)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
(1)特開2012-148272号、実施例5に準拠して作製した銅担持SAPO-34(銅担持量:3.2重量%、Si/Al/Pのモル比:17/50/33、200g)と、平均粒径5nmのアルミナゾル(Al含有量がAl2O3換算で7.0重量%、234g、日産化学工業株式会社製「アルミナゾル(標準タイプ)」)と、水とを混合・撹拌することによって、シリカアルミノフォスフェート粒子のスラリーを製造した。水分量は、コーディエライトハニカムへ塗布可能なスラリー粘度になるよう調整した。
(2)(1)で製造したスラリーを、触媒サイズ1リットル当りの銅担持SAPO-34の量が167gとなるようコーディエライトハニカムにコーティングした。
(3)(2)で製造された排気ガス浄化用触媒を120℃で乾燥した。
(4)(3)で乾燥した排気ガス浄化用触媒を、空気中、550℃において2時間焼成した。
比較例II−2 シリカゾルを使用して製造したシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(Y=0.20)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
(1)銅担持SAPO-34(銅担持量:3.2重量%、Si/Al/Pのモル比:17/50/33、200g)と、平均粒径5nmのシリカゾル(Si含有量がSiO2換算で20重量%、30g、日産化学工業株式会社製「オルガノシリカゾル(標準タイプ)」)と、水を混合・撹拌することによって、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子のスラリーを製造した。水分量は、コーディエライトハニカムへ塗布可能なスラリー粘度になるよう調整した。
(2)(1)で製造したスラリーを、触媒サイズ1リットル当りの銅担持SAPO-34の量が167gとなるようコーディエライトハニカムにコーティングした。
(3)(2)で製造された排気ガス浄化用触媒を120℃で乾燥した。
(4)(3)で乾燥した排気ガス浄化用触媒を、空気中、550℃において2時間焼成した。
実施例II−1 シリカゾルを使用して製造したシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(Y=0.19)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
シリカゾルの添加量を(Si含有量がSiO2換算で20重量%、30g)から(Si含有量がSiO2換算で20重量%、78g)に変更した以外は、比較例II−2と同様にした。
実施例II−2 シリカゾルを使用して製造したシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(Y=0.09)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
シリカゾルの添加量を(Si含有量がSiO2換算で20重量%、30g)から(Si含有量がSiO2換算で20重量%、234g)に変更した以外は、比較例II−2と同様にした。
実施例II−3 シリカゾルを使用して製造したシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(Y=0.0)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
シリカゾルの添加量を(Si含有量がSiO2換算で20重量%、30g)から(Si含有量がSiO2換算で20重量%、389g)に変更した以外は、比較例II−2と同様にした。
実施例II−4 シランカップリング剤を使用して製造したシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(Y=0.14)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
(1)銅担持SAPO-34(銅担持量:3.2重量%、Si/Al/Pのモル比:17/50/33、200g)と、pH=4に調整した酢酸水溶液(400g)とを混合した。pH調整は、シランカップリング剤の加水分解を促進させるために行った。
(2)(1)で製造したスラリーに、シランカップリング剤(1.0g、信越化学工業株式会社製「ジメチルジエトキシシラン(KBE-22(LS-1370))」)を添加し、3時間撹拌した。
(3)(2)のスラリーをろ過して水分を除去した。
(4)(3)でろ過した残渣を乾燥、粉砕後、550℃で2時間焼成した。
(5)(4)で焼成して得られたシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子と水とを混合・撹拌することによって、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子のスラリーを製造した。水分量は、コーディエライトハニカムへ塗布可能なスラリー粘度になるよう調整した。
(6)(5)で製造したスラリーを、触媒サイズ1リットル当りの銅担持SAPO-34の量が167gとなるようコーディエライトハニカムにコーティングした。
(7)(6)で製造された排気ガス浄化用触媒を120℃で乾燥した。
(8)(7)で乾燥した排気ガス浄化用触媒を、空気中、550℃において2時間焼成した。
実施例II−5 シランカップリング剤を使用して製造したシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(Y=0.14)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
シランカップリング剤の添加量を(1.0g)から(4.0g)に変更した以外は、実施例II−4と同様にした。
実施例II−6 シランカップリング剤を使用して製造したシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(Y=0.10)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
シランカップリング剤の添加量を(1.0g)から(20g)に変更した以外は、実施例II−4と同様にした。
実施例II−7 シランカップリング剤を使用して製造したシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子(Y=0.10)を用いた排気ガス浄化用触媒の製造
シランカップリング剤(1.0g、信越化学工業株式会社製「ジメチルジエトキシシラン(KBE-22)」)を、シランカップリング剤(4.0g、信越化学工業株式会社製「メチルトリエトキシシラン(KBE-13(LS-1890))」)に変更した以外は、実施例II−4と同様にした。
実施例II−8 固体燐核−核磁気共鳴法( 31 P−NMR)
比較例II−1及びII−2並びに実施例II−1〜II−7で製造した排気ガス浄化用触媒におけるシリカアルミノフォスフェート粒子又はシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子について、固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)によって測定を行った。分析法の詳細は以下に示すとおりである。
固体燐核−核磁気共鳴法( 31 P−NMR)条件
装置名:日本電子株式会社製 ECA600
共鳴周波数:1H 600 MHz(31P 161.7 MHz)
温度:室温
外部標準:85%リン酸水溶液
サンプル回転数:18 kHz
繰り返し時間:1 秒
シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)によって得られたスペクトルについてフォークト関数(ここで、フォークト関数は、化学シフト−14〜−16ppmに極大値を有するピークをガウス分布により近似した関数と化学シフト−24〜−26ppmに極大値を有するピークをローレンツ分布により近似した関数とを足し合わせた関数である)によるフィッティングを前記スペクトルと前記フォークト関数との差分の二乗和が最小となるように行い、化学シフト−24〜−26ppmに極大値を有するピークをローレンツ分布により近似した関数から0.0ppm〜−50ppmにおける積分値としてS1値を算出し、化学シフト−14〜−16ppmに極大値を有するピークをガウス分布により近似した関数から0.0ppm〜−50ppmにおける積分値としてS2値を算出し、下記式
Y=S2/(S1+S2)
によりYを算出した。
それぞれの結果を表4に示す。
Figure 0006319078
表4中、触媒の構成における濃度(重量%)は、
被覆したSiO2(シランカップリング剤を用いた場合は、シランカップリング中のSiが全量SiO2になると仮定したときのSiO2の重量)又はAl2O3の重量 ÷ シリカ又はアルミナ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子全体の重量 ×100
である。
実施例II−9 排気ガス浄化用触媒の耐久性試験
比較例II−1及びII−2並びに実施例II−1〜II−7で製造した排気ガス浄化用触媒の触媒性能(耐久性)について試験した。
耐久性は、実施例I−7と同様にして行った。
排気ガス浄化用触媒の耐久条件にさらした後の状態について、NOx浄化率を測定した結果を表5に示す。
Figure 0006319078
Yの値に対するNOx浄化率の関係について図6に示す。
図6に示すように、比較例II−1及びII−2と実施例II−1〜II−7とを比較すると、比較例II−1(Y=0.25)及び比較例II−2(Y=0.20)の排気ガス浄化用触媒では、耐久条件にさらした後に十分にNOx浄化率の低下を抑制することができなかった。これより、Yの値は0.0〜0.19であることが好ましい。
以上の結果から、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子を用いた排気ガス浄化用触媒では、耐久条件にさらした後でもNOx浄化率の低下を抑制することができることが分かった。

Claims (2)

  1. 銅及び/又は鉄を担持したシリカアルミノフォスフェート粒子と、
    前記シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカとを含む、排気ガス浄化用触媒に用いるためのシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子であって、
    前記シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカの構成が、下記式
    X={P/(Si+Al+P)}/{P/(Si+Al+P)}
    (式中、
    {P/(Si+Al+P)}は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子表面(Surface)におけるSi、Al及びP中のPのモル比を示し、
    {P/(Si+Al+P)}は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子全体(Bulk)におけるSi、Al及びP中のPのモル比を示すものであって、
    Si、Al及びPは、JIS K 0167:2011規格に基づいてX線光電子分光法(XPS)により測定される値より算出される、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子表面におけるSi、Al及びPの合計を100%とした時のSi、Al及びPそれぞれの原子(モル)分率であり、
    Si、Al及びPは、JIS K 0116:2014規格に基づいて誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により測定される値より算出される、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子全体におけるSi、Al及びPの合計を100%とした時のSi、Al及びPそれぞれの原子分率である)
    において、Xが0〜0.12の範囲となることを特徴とするか、
    又は、
    前記シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカの構成が、下記式
    Y=S2/(S1+S2)
    {式中、
    S1は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)によって得られたスペクトルのフォークト関数(ここで、フォークト関数は、化学シフト−14〜−16ppmに極大値を有するピークをガウス分布により近似した関数と化学シフト−24〜−26ppmに極大値を有するピークをローレンツ分布により近似した関数とを足し合わせた関数である)によるフィッティングにおいて、前記スペクトルと前記フォークト関数との差分の二乗和が最小となるようにフィッティングした場合の、化学シフト−24〜−26ppmに極大値を有するピークをローレンツ分布により近似した関数の0.0ppm〜−50ppmにおける積分値(ピーク面積)であり、
    S2は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法(31P−NMR)によって得られたスペクトルのフォークト関数によるフィッティングにおいて、前記スペクトルと前記フォークト関数との差分の二乗和が最小となるようにフィッティングした場合の、化学シフト−14〜−16ppmに極大値を有するピークをガウス分布により近似した関数の0.0ppm〜−50ppmにおける積分値(ピーク面積)である}
    において、Yが0.0〜0.14の範囲となることを特徴とする、
    前記シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子。
  2. 銅及び/又は鉄を担持したシリカアルミノフォスフェート粒子と、
    前記シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカとを含む、排気ガス浄化用触媒に用いるためのシリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子であって、
    前記シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカの構成が、下記式
    Y=S2/(S1+S2)
    {式中、
    S1は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法( 31 P−NMR)によって得られたスペクトルのフォークト関数(ここで、フォークト関数は、化学シフト−14〜−16ppmに極大値を有するピークをガウス分布により近似した関数と化学シフト−24〜−26ppmに極大値を有するピークをローレンツ分布により近似した関数とを足し合わせた関数である)によるフィッティングにおいて、前記スペクトルと前記フォークト関数との差分の二乗和が最小となるようにフィッティングした場合の、化学シフト−24〜−26ppmに極大値を有するピークをローレンツ分布により近似した関数の0.0ppm〜−50ppmにおける積分値(ピーク面積)であり、
    S2は、シリカ被覆シリカアルミノフォスフェートの固体燐核−核磁気共鳴法( 31 P−NMR)によって得られたスペクトルのフォークト関数によるフィッティングにおいて、前記スペクトルと前記フォークト関数との差分の二乗和が最小となるようにフィッティングした場合の、化学シフト−14〜−16ppmに極大値を有するピークをガウス分布により近似した関数の0.0ppm〜−50ppmにおける積分値(ピーク面積)である}
    において、Yが0.0〜0.14の範囲となり、
    前記シリカアルミノフォスフェート粒子の表面を被覆するシリカが、アルコキシシラン及びシリコーンからなる群から選択される有機ケイ素化合物により形成されていることを特徴とする、
    前記シリカ被覆シリカアルミノフォスフェート粒子。
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