JP6319033B2 - 電動式パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

本発明の対象となる電動式パワーステアリング装置は、自動車の操舵装置として利用するもので、電動モータを補助動力源として利用する事により、運転者がステアリングホイールを操作する為に要する力の軽減を図るものである。本発明は、この様な電動式パワーステアリング装置を構成するウォーム式減速機部分で、歯打ち音と呼ばれる不快な異音の発生を抑える技術に関する。
操舵輪(フォークリフト等の特殊車両を除き、通常は前輪)に舵角を付与する際に、運転者がステアリングホイールを操作する為に要する力の軽減を図る為の装置として、パワーステアリング装置が広く使用されている。又、この様なパワーステアリング装置で、補助動力源として電動モータを使用する電動式パワーステアリング装置も、近年普及し始めている。電動式パワーステアリング装置は、油圧式のパワーステアリング装置に比べて、小型・軽量に構成でき、補助動力の大きさ(トルク)の制御が容易で、しかもエンジンの動力損失が少ない等の利点がある。
電動式パワーステアリング装置の構造は、各種知られているが、何れの構造の場合でも、ステアリングホイールの操作によって回転させられ、回転に伴って操舵輪に舵角を付与する操舵用回転軸に、電動モータの補助動力を、減速機を介して付与する。この減速機として一般的には、ウォーム式減速機が使用されている。ウォーム式減速機を使用した電動式パワーステアリング装置の場合、前記電動モータにより回転駆動されるウォームと、前記操舵用回転軸と共に回転するウォームホイールとを噛合させて、前記電動モータの補助動力をこの操舵用回転軸に伝達自在とする。
例えば特許文献1には、図6、7に示す様な、電動式パワーステアリング装置が記載されている。この電動式パワーステアリング装置は、ステアリングホイール1により所定方向に回転させられる、操舵用回転軸であるステアリングシャフト2の前端部を、ハウジング3の内側に回転自在に支持すると共に、このステアリングシャフト2の前端部にウォームホイール4を固定している。又、このウォームホイール4に、電動モータ7により回転駆動されるウォーム軸6の軸方向中間部に設けたウォーム歯5を噛合させた状態で、このウォーム軸6の基端部を基端側軸受8により、同じく先端部を先端側軸受9により、それぞれ前記ハウジング3の内側に回転可能に支持している。
前記ウォームホイール4と前記ウォーム歯5とを噛合させて成るウォーム式減速機には、通常、これらウォームホイール4とウォーム歯5との噛合部に、不可避のバックラッシュが存在する。このバックラッシュは、このウォーム式減速機を構成する各部材の寸法誤差や組み付け誤差によって生じる他、前記ウォームホイール4と前記ウォーム歯5との歯面が摩耗する事によっても生じる。特に、近年は、補助動力を大きくする傾向にある為、この摩耗量が増大して、バックラッシュがより発生し易くなっている。何れにしても、前記噛合部にバックラッシュが存在すると、前記ステアリングシャフト2の回転方向を変える際や、車輪側から前記ステアリングシャフト2に回転振動が加わった際に、前記噛合部で、耳障りな歯打ち音が発生する可能性がある。
そこで、図示の構造の場合には、前記ウォームホイール4と前記ウォーム歯5との噛合部のバックラッシュをなくす為に、前記ウォーム軸6を、前記基端側軸受8を中心に揺動させる事により、前記ウォーム歯5を前記ウォームホイール4に向け付勢する様にしている。
この為に、図示の構造の場合には、前記ハウジング3の内側で前記ウォーム軸6の先端部の周囲部分に、保持凹部10を設け、この保持凹部10の内側にホルダ11を保持固定している。又、このホルダ11に前記先端側軸受9を構成する外輪を内嵌固定すると共に、この先端側軸受9を構成する内輪に、弾性材製で円環状のブッシュ12を内嵌固定している。そして、このブッシュ12の内側に前記ウォーム軸6の先端寄り部分を緩く挿通する事により、このウォーム軸6の先端寄り部分を前記ホルダ11に対し、回転及び前記ウォームホイール4に対する遠近動を可能に支持している。又、前記保持凹部10の内側で、前記ホルダ11の軸方向外側(図7の右側)に隣接する部分に、予圧パッド13を、前記ウォームホイール4と前記ウォーム歯5との噛み合い方向(図7の上下方向)に関する変位を可能に設けている。これと共に、この予圧パッド13の中心部に設けた通孔に、前記ウォーム軸6の先端部を、径方向のがたつきなく、この予圧パッド13に対する相対回転を可能に挿通している。そして、この予圧パッド13と前記ホルダ11との間に掛け渡したコイルばね14の弾力により、この予圧パッド13を介して前記ウォーム軸6の先端部を、前記ウォームホイール4に向け押圧している。これにより、前記ウォーム軸6を、前記基端側軸受8を中心に揺動させる事により、前記ウォーム歯5を前記ウォームホイール4に向け付勢する事で、これらウォーム歯5とウォームホイール4との噛合部のバックラッシュを抑え、この噛合部で歯打ち音が発生する事を抑制している。
上述した様に、図6、7に示した電動式パワーステアリング装置の場合には、前記予圧パッド13を前記保持凹部10の内側に、前記ウォームホイール4と前記ウォーム歯5との噛み合い方向(図7の上下方向)に関する変位を可能に設けているが、この噛み合い方向に関する変位を円滑に行える様にする為に、前記予圧パッド13とその周囲に存在する静止部材との間に、前記噛み合い方向及び前記ウォーム軸6の軸方向に対してそれぞれ直角な方向(図7の表裏方向)に関する、微小な案内隙間を設けている。この為、前記予圧パッド13は、前記保持凹部10の内側で、この案内隙間の分、前記直角な方向(図7の表裏方向)にも変位可能となる。又、これに伴い、前記ウォーム歯5も、前記ウォームホイール4に対して、前記直角な方向に変位可能となる。
一方、前記ウォームホイール4と前記ウォーム歯5との噛合部から前記ウォーム軸6に加わる噛み合い反力には、前記噛み合い方向(図7の上下方向)の成分だけでなく、前記直角な方向(図7の表裏方向)の成分が含まれている。この点に就いて、以下、図8〜10を参照しつつ説明する。
図8、9に示す様に、ウォーム軸6を回転駆動する事により、このウォーム軸6からウォームホイール4に駆動力を伝達すると、このウォームホイール4からこのウォーム軸6に噛み合い反力が加わる。尚、図8に示す場合と図9に示す場合とで、このウォーム軸6に付与する駆動力の大きさは互いに同じになっているが、この駆動力の回転方向は互いに逆になっている。この為、前記ウォームホイール4は、図8に示す場合と図9に示す場合とで、互いに逆方向に回転する。この様な状態では、前記ウォームホイール4と前記ウォーム歯5との噛合部に、このウォームホイール4から前記ウォーム軸6に対して、それぞれが図8、9のx、y、zの3方向の成分である、Fx、Fy、Fzの分力を有する見かけ上の噛み合い反力が加わる。これら分力Fx、Fy、Fzのうち、Fx、Fzは、図8に示す様に前記ウォームホイール4が一方向{図8(A)に矢印イで示す方向}に回転する場合と、図9に示す様に前記ウォームホイール4が他方向{図9(A)に矢印ロで示す方向}に回転する場合とで、互いに逆方向になる。
一方、前記噛合部と前記ウォーム軸6の揺動中心oとの、このウォーム軸6の径方向に関する距離をd6とした場合に、d6・Fxなる大きさのモーメントMが、前記ウォーム軸6に作用する。この為、前記噛合部と前記揺動中心oとの、このウォーム軸6の軸方向に関する距離をL6とした場合に、前記モーメントMに基づくM/L6の大きさの力Frが、このウォーム軸6の径方向(図8の上方向、図9の下方向)に作用する。この力Frは、図8に示す場合と図9に示す場合とで、互いに逆方向になる。この為、前記噛合部で前記ウォームホイール4から前記ウォーム軸6に作用する、モーメントMを考慮したy方向の実際の力Fy´の大きさは、前記ウォームホイール4が、図8に示す、一方向に回転する場合に小さくなり(Fy´=Fy−Frとなり)、図9に示す、他方向に回転する場合に大きくなる(Fy´=Fy+Frとなる)。従って、前記噛合部に作用する、実際のy、z方向の噛み合い分力の合力F´は、前記ウォームホイール4が一方向に回転する場合に、図10に矢印ハで示す様に小さくなり、前記ウォームホイール4が他方向に回転する場合に、同図に矢印ニで示す様に大きくなる。そして、この合力F´の方向を見れば分かる様に、前記ウォームホイール4が何れの方向に回転する場合でも、前記噛合部から前記ウォーム軸6に加わる噛み合い反力には、前記ウォームホイール4と前記ウォーム歯5との噛み合い方向(図8〜10の上下方向)及び前記ウォーム軸6の軸方向に対して直角な方向{図8(A)及び図9(A)の表裏方向、図8(B)及び図9(B)及び図10の左右方向}に関する成分が含まれている事が分かる。
従って、上述した従来の電動式パワーステアリング装置の場合、前記噛合部から前記ウォーム軸6に噛み合い反力が加わると、この噛み合い反力の前記直角な方向(図7の表裏方向)の成分に基づいて、前記ウォーム歯5が前記ウォームホイール4に対してこの直角な方向に変位する。この為、車輪側から前記ステアリングシャフト2に回転振動が加わった際に、前記噛合部で前記ウォーム歯5が前記直角な方向に振動し、耳障りな歯打ち音が発生する可能性がある。
又、上述した従来の電動式パワーステアリング装置の場合、前記ウォーム歯5を前記ウォームホイール4に向け付勢する様にしているが、この付勢の方向に関しては、上述のウォームホイールの回転方向の相違に伴う、前記噛合部から前記ウォーム軸に加わる噛み合い反力の方向及び大きさの相違に就いては、特に考慮していない。
特許第4381024号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑み、ウォームホイールが何れの方向に回転した場合にもウォーム歯とウォームホイールとの噛合部で歯打ち音が発生するのを抑えつつ、このウォーム歯とウォームホイールとの噛み合い方向及びウォーム軸の軸方向に対してそれぞれ直角な方向に関する、このウォーム歯の変位を抑える事により前記噛合部で歯打ち音が発生するのを抑えられる構造を実現すべく発明したものである。
本発明の電動式パワーステアリング装置は、ハウジングと、操舵用回転軸と、ウォームホイールと、ウォーム軸と、基端側軸受と、先端側軸受と、電動モータと、付勢手段とを備える。
このうちの操舵用回転軸は、前記ハウジングに対し回転自在に設けられて、ステアリングホイールの操作により回転させられる。この様な操舵用回転軸としては、例えば前述の図6に示した構造でのステアリングシャフト2や、中間シャフト15や、ステアリングギヤユニット16の入力軸(ピニオン軸)17が採用可能である。
又、前記ウォームホイールは、前記ハウジングの内側で、前記操舵用回転軸に対して同心に支持されており、この操舵用回転軸と共に回転する。
又、前記ウォーム軸は、軸方向中間部にウォーム歯を有し、このウォーム歯を前記ウォームホイールに噛合させている。
又、前記基端側軸受は、前記ウォーム軸の基端部を前記ハウジングに対し回転自在に支持する。
又、前記先端側軸受は、前記ウォーム軸の先端部を前記ハウジングに対し回転自在に支持する。
又、前記電動モータは、前記ウォーム軸の基端部にその出力軸の先端部を回転力の伝達を可能に係合させている。
又、前記付勢手段は、前記ウォーム軸を、このウォーム軸の基端部(例えば、前記基端側軸受)や中間部等を中心に揺動させる事により、前記ウォーム歯を前記ウォームホイールに向けて付勢する。
特に、本発明の電動式パワーステアリング装置の場合、前記先端側軸受は、前記ウォーム軸の外周面のうち、前記ウォーム歯よりも先端側部分に外嵌支持されている。
前記付勢手段は、軸受ホルダと、支持部材と、付勢部材とを備えている。
このうちの軸受ホルダは、その外周面と前記ハウジングの内周面との間に隙間を設けた状態で、前記先端側軸受の外周面に外嵌されている。
前記支持部材は、前記付勢手段を前記ハウジングに対して支持する為のものであり、前記ウォーム軸の長さ方向に関して、前記軸受ホルダよりも前記電動モータと反対側部分に配置された状態で、前記ハウジングに支持されている。
前記付勢部材は、その両端部を前記支持部材と前記軸受ホルダとに結合した状態(一方の端部をこの支持部材に、他方の端部をこの軸受ホルダに、それぞれ結合した状態)で、前記先端側軸受を前記ウォームホイールに向け、自身の弾力に基づいて付勢している。
又、前記先端側軸受の付勢方向に関する前記付勢部材の断面係数が、この先端側軸受の付勢方向及び前記ウォーム軸の軸方向に対してそれぞれ直角な方向に関する断面係数よりも小さくなる状態で設けられている。
上述の様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、前記付勢部材を、前記ウォームホイールと前記ウォーム歯との噛み合い方向よりも、このウォームホイール(前記ステアリングホイール)を両方向に回転した場合にこのウォームホイールと前記ウォーム歯との噛合部から前記ウォーム軸に加わる噛み合い反力の、このウォーム軸と直交する仮想平面内に於ける分力(図10の矢印ハ及び矢印ニで示した分力F´、F´)のベクトルのうち、このベクトルの大きさが小さいベクトル(図10の場合では、矢印ハで示した分力F´のベクトル)側に傾いた方向に関して、前記先端側軸受を前記ウォームホイールに向け、自身の弾力に基づいて付勢するものとする事ができる。
この様な請求項2に記載した発明を実施する場合、更に好ましくは請求項3に記載した発明の様に、前記付勢部材を、前記ウォームホイールが一方に回転した場合にこのウォームホイールと前記ウォーム歯との噛合部から前記ウォーム軸に加わる噛み合い反力のうち、このウォーム軸と直交する仮想平面内に於ける分力(図10の矢印ハと矢印二とのうちの一方の矢印で示した分力F´)のベクトルと、同じく他方に回転した場合に前記噛合部から前記ウォーム軸に加わる噛み合い反力のうち、このウォーム軸と直交する仮想平面内に於ける分力(図10の矢印ハと矢印二とのうちの他方の矢印で示した分力F´)のベクトルとの二等分線の方向に関して、前記先端側軸受を前記ウォームホイールに向け、自身の弾力に基づいて付勢するものとする事ができる。
上述の様な本発明を実施する場合には、付加的に、請求項に記載した発明の様に、前記付勢部材を、前記先端側軸受の付勢方向に関する断面係数が、最も小さくなる状態で配置する事ができる。
又、上述の様な本発明を実施する場合には、付加的に、請求項に記載した発明の様に、前記付勢部材を、前記先端側軸受の付勢方向及び前記ウォーム軸の軸方向に対してそれぞれ直角な方向に関する断面係数が、最も大きくなる状態で配置する事もできる。
又、上述の様な本発明を実施する場合には、付加的に、請求項に記載した発明の様に、前記ウォーム軸に、前記ウォームホイールと前記ウォーム歯との噛合部から噛み合い反力が加わった場合に、前記先端側軸受又は前記軸受ホルダが、前記ハウジングの内周面と当接する事により、それ以上のこの先端側軸受の変位を規制する様に構成する事ができる。
上述の様に構成する本発明の電動式パワーステアリング装置の場合には、付勢手段を構成する弾性部材が、先端側軸受を前記ウォームホイールに向け、自身の弾力に基づいて付勢している。又、前記弾性部材を、この弾性部材による前記先端側軸受の付勢方向に関する断面係数が、この先端側軸受の付勢方向及び前記ウォーム軸の軸方向に対してそれぞれ直角な方向に関する断面係数よりも小さくなる状態で設けている。この為、前記ウォームホイールの回転方向に拘わらず、前記噛合部から前記ウォーム軸に加わる反力に対して、前記弾性部材を前記先端側軸受の付勢方向に弾性変形させ易くできる。この結果、前記噛合部に生じる衝撃力を緩和して、当該部分に於ける異音の発生を、より効果的に抑える事ができる。
又、本発明の場合、前記弾性部材の、前記先端側軸受の付勢方向及び前記ウォーム軸の軸方向に対してそれぞれ直角な方向に関する断面係数を、この先端側軸受の付勢方向に関する断面係数よりも大きくしている。この為、前記弾性部材を、この先端側軸受の付勢方向及び前記ウォーム軸の軸方向に対してそれぞれ直角な方向に対して弾性変形し難くする事ができる。この結果、前記噛合部で、前記ウォーム歯が前記ウォームホイールに対して、前記先端側軸受の付勢方向及び前記ウォーム軸の軸方向に対してそれぞれ直角な方向に変位する事を防止して、前記噛合部での歯打ち音の発生を防止できる。
本発明の実施の形態の第1例を示す、図6のa−a断面に相当する部分断面図。 図1のb部拡大図。 付勢手段のみを取り出して示す斜視図。 付勢手段のみを取り出して示す図3の表側から見た図。 付勢手段を構成する弾性部材の配置態様に就いて説明する為の図。 従来構造の1例を示す部分切断側面図。 図6のa−a拡大断面図。 電動モータの所定方向の回転駆動時にウォームホイールからウォーム軸に加わる噛み合い反力の方向を説明する為の、(A)は略断面図、(B)は(A)のc−c断面図。 電動モータの前記所定方向とは逆方向の回転駆動時にウォームホイールからウォーム軸に加わる噛み合い反力の方向を説明する為の、(A)は略断面図、(B)は(A)のd−d断面図。 電動モータを両方向に回転駆動した際に、ウォームホイールからウォーム軸に加わる2方向の噛み合い反力を示す、図8の(B)と同様の図。
本発明の実施の形態の1例に就いて、図1〜5により説明する。尚、本例の電動式パワーステアリング装置の特徴は、ウォーム軸6aの先端部をウォームホイール4に向けて付勢する付勢手段21の構造を工夫した点にある。その他の部分の構造及び作用に就いては、前述の図6、7に示した従来構造とほぼ同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。尚、前述の図7と、本例の図1とで、ハウジング3aに対する電動モータ7の取付方向が異なっているが、この点は、設置する自動車に応じ適宜設計的に変更するものであって、本発明の特徴部分とは関係がない。
本例の場合も、前記ウォーム軸6aは、軸方向中間部にウォーム歯5を有しており、このウォーム歯5を前記ウォームホイール4に噛合させた状態で、前記ウォーム軸6aの軸方向両端部のうち、電動モータ7から近い側の基端部を、単列深溝型や4点接触型等の玉軸受である基端側軸受8aにより、同じく電動モータ7から遠い側の先端部を、単列深溝型の玉軸受である先端側軸受9aにより、それぞれハウジング3aに対し回転自在に支持している。又、前記基端側軸受8aは、このハウジング3aに対して前記ウォーム軸6aを、若干の揺動変位を可能に支持している。
一方、前記先端側軸受9aは、前記ウォーム軸6aの先端部に設けた小径部18に外嵌支持されている。この為に、本例の場合には、前記先端側軸受9aを構成する内輪19を、前記小径部18に締り嵌めで外嵌固定している。又、前記ハウジング3aの内側で前記先端側軸受9aの周囲部分に、この先端側軸受9aを構成する外輪20の外周面より大径で円筒状の内周面を有する保持凹部10aを設け、この保持凹部10aの軸方向片端部(図1〜2の左端部)を、前記ハウジング3aの外部に開口させている。尚、この保持凹部10aの片端開口は、後述する付勢手段21を構成する支持部材23により塞いでいる。
又、前記保持凹部10aの内側で、前記先端側軸受9aの周囲部分に、付勢手段21を組み付けている。そして、この付勢手段21により、前記先端側軸受9aを介して前記ウォーム軸6aの先端部を、前記ウォームホイール4に向け弾性的に付勢している。これにより、このウォーム軸6aを、前記基端側軸受8aを中心に揺動させる事で、前記ウォーム歯5を前記ウォームホイール4に向け付勢して、これらウォーム歯5とウォームホイール4との噛合部のバックラッシュをなくしている。この様な付勢手段21は、軸受ホルダ22と、支持部材23と、付勢部材24とを備える。尚、図1、2には、前記付勢手段21に関しては、説明の便宜上、前記軸受ホルダ22のみを断面で示している。
このうちの軸受ホルダ22は、金属、合成樹脂、又はゴムの如きエラストマー等により造られたもので、ホルダ円筒部25と、ホルダ底部26とから成る有底円筒状である。このホルダ円筒部25は、内周面の内径及び外周面の外径が、軸方向の全長に亙り変化しない。前記ホルダ底部26は、前記ホルダ円筒部25の軸方向片端側(図1、2の左側)の開口部を塞いでいる。この様な軸受ホルダ22は、その外周面と前記保持凹部10aの内周面との間に全周に亙り隙間を設けた状態で、前記ホルダ円筒部25を、前記先端側軸受9aを構成する外輪20の外周面に外嵌固定した状態で組み付けられている。この様な軸受ホルダ22は、前記ウォームホイール4と前記ウォーム歯5との噛合部から前記ウォーム軸6aに加わる噛み合い反力に基づいて、このウォーム軸6aが、前記ウォームホイール4から離れる方向に変位した場合に、前記ホルダ円筒部25の外周面と、前記保持凹部10aの内周面とが当接する事により、前記ウォーム軸6aのそれ以上の変位を規制する様に構成されている。尚、前記軸受ホルダ22の形状によっては、前記ウォーム軸6aが上述の様に変位した場合に、前記先端側軸受9aを構成する外輪20の外周面を直接、前記保持凹部10aの内周面に当接させて、前記ウォーム軸6aのそれ以上の変位を規制する様に構成する事もできる。
前記支持部材23は、前記付勢手段21を前記ハウジング3aに対して支持する為のものである。この様な支持部材23は、金属又は合成樹脂により造られたもので、嵌合筒部27と、底部28とから成る有底円筒状である。この嵌合筒部27は、内周面の内径及び外周面の外径が、軸方向の全長に亙り変化しない円筒状である。前記底部28は、前記嵌合筒部27の軸方向他端側(図1、2の右側)の開口部を塞いでいる。この様な支持部材23は、前記保持凹部10aの片端部内周面に全周に亙り形成された大径凹溝29に、前記嵌合筒部27の外周面を内嵌固定した状態で組み付けられている。
前記付勢部材24は、ゴムの如きエラストマーにより造られており、長さ寸法aを有する長辺30と、長さ寸法bを有する中辺31と、長さ寸法cを有する短辺32とから成る矩形板状部材である(a>b>c)。この様な付勢部材24は、前記ウォーム軸6aの軸方向に関して片端部(図1〜3の左端部)が前記支持部材23の底部28の他側面(図1〜3の右側面)に、同じく他端部(図1〜3の右端部)が前記軸受ホルダ22のホルダ底部26の片側面(図1〜3の左側面)に、それぞれ結合固定されている。
又、前記付勢部材24は、前記ウォームホイール4{ステアリングホイール1(図6参照)}を一方側に回転させた場合に、このウォームホイール4と前記ウォーム歯5との噛合部から前記ウォーム軸6aに加わる噛み合い反力のうち、このウォーム軸6aと直行する仮想平面内に於ける分力F´のベクトルと、同じく他方に回転させる際に前記噛合部から前記ウォーム軸6aに加わる噛み合い反力のうち、このウォーム軸6aと直行する仮想平面内に於ける分力F´のベクトルとの二等分線L{図5(a)参照}の方向に対する断面係数が最も小さく、且つ、この二等分線合力Lの方向及び前記ウォーム軸6aの軸方向に対してそれぞれ直角な方向{図5(b)にαで示す方向}に対する断面係数が最も大きくなる状態で配置されている。具体的には、前記付勢部材24を、前記二等分線Lと平行な状態で、前記付勢部材24の短辺32が配置される様に設ける{図5(b)参照}と共に、前記二等分線Lの方向及び前記ウォーム軸6aの軸方向に対してそれぞれ直角な方向(α方向)と平行な状態で、前記付勢部材24の長辺30が配置される様に設ける{図5(b)参照}。
上述の様な構成を有する付勢手段21は、前記付勢部材24の弾力に基づいて、前記先端側軸受9aを、前記二等分線L方向に関して前記ウォームホイール4に向け付勢した状態で、前記ハウジング3a及びウォーム軸6a(先端側軸受9a)に組み付けられている。尚、本例の場合、付勢部材をゴムの如きエラストマー製としているが、金属又は合成樹脂等により造る事もできる。又、前記付勢部材の形状も、本例の矩形板状に限定されるものではない。
尚、前記分力F´は、例えば、前記噛み合い方向及び前記ウォーム軸6の軸方向に対してそれぞれ直角な方向{図5(a)のz方向}に対して、図5(a)の反時計方向に90°〜135°の範囲に存在する。一方、前記分力F´は、例えば、前記直角な方向{図5(a)のz方向}に対して、図5(a)の反時計方向に0°〜45°の範囲に存在する。前記各分力F´、F´が上述の範囲に存在する場合には、前記付勢部材24は、前記直角な方向{図5(a)のz方向}に対して、前記長辺30が、時計方向を正とした場合に0°〜45°だけ傾斜した状態で配置される。
上述の様に構成する本例の電動式パワーステアリング装置の場合には、前記付勢手段21を構成する付勢部材24が、前記ウォームホイール4(前記ステアリングホイール1)が一方側に回転した場合にこのウォームホイール4と前記ウォーム歯5との噛合部から前記ウォーム軸6aに加わる噛み合い反力のうち、このウォーム軸6aと直交する仮想平面内に於ける分力F´1のベクトルと、同じく他方に回転した場合に前記噛合部から前記ウォーム軸6aに加わる噛み合い反力のうち、このウォーム軸6aと直交する仮想平面内に於ける分力F´2のベクトルとの二等分線LBの方向に関して、前記先端側軸受9aを前記ウォームホイール4に向け、自身の弾力に基づいて付勢している。又、前記付勢部材24を、前記二等分線Lの方向に関する断面係数が最も小さくなる状態で配置している。この為、前記ウォームホイール4の回転方向に拘わらず、この回転に基づいて前記噛合部から前記ウォーム軸6aに加わる反力に対して、前記付勢部材24を前記二等分線Lの方向に弾性変形させ易くできる。この結果、前記噛合部に生じる衝撃力を緩和して、当該部分に於ける異音の発生を、より効果的に抑える事ができる。
又、本例の場合、前記付勢部材24を、前記二等分線Lの方向及び前記ウォーム軸6aの軸方向に対してそれぞれ直角な方向(α方向)に関する断面係数が最も大きくなる状態で配置している。この為、前記付勢部材24を、このα方向に対して弾性変形し難くする事ができる。この結果、前記ウォーム歯5が、前記ウォームホイール4に対して、このα方向に変位する事を防止して、前記噛合部での歯打ち音が発生を防止できる。
本発明の電動式パワーステアリング装置を実施する場合には、付勢手段を構成する付勢部材の材料、形状は、上述の実施の形態の材質、形状に限らず採用する事ができる。例えば、材料としては、金属又は合成樹脂を採用する事もできる。又、付勢部材を、一体の部材ではなく、複数の板状部材を重ね合わせて構成したり、複数の棒状部材を組み合わせて構成する事もできる。
尚、付勢部材の配置態様に関しては、前述した実施の形態の配置態様に限らず、ウォームホイールを一方側に回転させた場合に、このウォームホイールとウォーム歯との噛合部からウォーム軸に加わる噛み合い反力のうち、このウォーム軸と直行する仮想平面に於ける分力F´のベクトルと、同じく他方に回転させる際に前記噛合部から前記ウォーム軸に加わる噛み合い反力のうち、このウォーム軸と直行する仮想平面に於ける分力F´のベクトルとの二等分線Lの方向に関する断面係数が、この二等分線Lの方向及び前記ウォーム軸の軸方向に対してそれぞれ直角な方向に対する断面係数よりも小さくなる各種態様が、本発明の技術的範囲に含まれる。即ち、本発明を実施する場合には、付勢部材として、少なくとも、前記二等分線Lの方向に関する断面係数と、この二等分線Lの方向及び前記ウォーム軸の軸方向に対してそれぞれ直角な方向に関する断面係数とを異ならせる事ができる形状のものを採用する。
又、本発明は、ウォーム軸が、このウォーム軸の一部を支点としてハウジングに対して揺動可能に支持させている各種構造に適用する事ができる。即ち、前記ウォーム軸をハウジングに対して揺動可能に支持する部分の構造は、前述した実施の形態の構造に限られるものではない。
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
3、3a ハウジング
4 ウォームホイール
5 ウォーム歯
6、6a ウォーム軸
7 電動モータ
8、8a 基端側軸受
9、9a 先端側軸受
10、10a 保持凹部
11 ホルダ
12 ブッシュ
13 予圧パッド
14 コイルばね
15 中間シャフト
16 ステアリングギヤユニット
17 入力軸
18 小径部
19 内輪
20 外輪
21 付勢手段
22 軸受ホルダ
23 支持部材
24 付勢部材
25 ホルダ円筒部
26 ホルダ底部
27 嵌合筒部
28 底部
29 大径凹溝
30 長辺
31 中辺
32 短辺

Claims (6)

  1. ハウジングと、
    このハウジングに対し回転自在に設けられて、ステアリングホイールの操作により回転させられる操舵用回転軸と、
    前記ハウジングの内側で、この操舵用回転軸に対して同心に支持された、この操舵用回転軸と共に回転するウォームホイールと、
    軸方向中間部にウォーム歯を有し、このウォーム歯を前記ウォームホイールに噛合させたウォーム軸と、
    このウォーム軸の基端部を前記ハウジングに対し回転自在に支持する基端側軸受と、
    このウォーム軸の先端部を前記ハウジングに対し回転自在に支持する先端側軸受と、
    このウォーム軸の基端部にその出力軸の先端部を回転力の伝達を可能に係合させた電動モータと、
    前記ウォーム軸を揺動させる事により、前記ウォーム歯を前記ウォームホイールに向けて付勢する付勢手段と、
    を備えた電動式パワーステアリング装置であって、
    前記先端側軸受は、前記ウォーム軸の外周面のうち、前記ウォーム歯よりも先端側部分に外嵌支持されており、
    前記付勢手段は、軸受ホルダと、支持部材と、付勢部材とを備え、
    このうちの軸受ホルダは、その外周面と前記ハウジングの内周面との間に隙間を設けた状態で、前記先端側軸受の外周面に外嵌されており、
    前記支持部材は、前記付勢手段を前記ハウジングに対して支持する為のものであり、前記ウォーム軸の長さ方向に関して、前記軸受ホルダよりも前記電動モータと反対側部分に配置された状態で、前記ハウジングに支持されており、
    前記付勢部材は、その両端部を前記支持部材と前記軸受ホルダとに結合した状態で、前記先端側軸受を前記ウォームホイールに向け、自身の弾力に基づいて付勢しており、
    前記先端側軸受の付勢方向に関する前記付勢部材の断面係数が、この先端側軸受の付勢方向及び前記ウォーム軸の軸方向に対してそれぞれ直角な方向に関する断面係数よりも小さくなる状態で設けられている事を特徴とする電動式パワーステアリング装置。
  2. 前記付勢部材は、前記ウォームホイールと前記ウォーム歯との噛み合い方向よりも、このウォームホイールを両方向に回転した場合にこのウォームホイールと前記ウォーム歯との噛合部から前記ウォーム軸に加わる噛み合い反力の、このウォーム軸と直交する仮想平面内に於ける分力のベクトルのうち、このベクトルの大きさが小さいベクトル側に傾いた方向に関して、前記先端側軸受を前記ウォームホイールに向け、自身の弾力に基づいて付勢する、請求項1に記載した電動式パワーステアリング装置。
  3. 前記付勢部材は、前記ウォームホイールが一方に回転した場合にこのウォームホイールと前記ウォーム歯との噛合部から前記ウォーム軸に加わる噛み合い反力のうち、このウォーム軸と直交する仮想平面内に於ける分力のベクトルと、同じく他方に回転した場合に前記噛合部から前記ウォーム軸に加わる噛み合い反力のうち、このウォーム軸と直交する仮想平面内に於ける分力のベクトルとの二等分線の方向に関して、前記先端側軸受を前記ウォームホイールに向け、自身の弾力に基づいて付勢する、請求項2に記載した電動式パワーステアリング装置。
  4. 前記付勢部材は、前記先端側軸受の付勢方向に関する断面係数が、最も小さくなる状態で配置されている、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した電動式パワーステアリング装置。
  5. 前記付勢部材は、前記先端側軸受の付勢方向及び前記ウォーム軸の軸方向に対してそれぞれ直角な方向に関する断面係数が、最も大きくなる状態で配置されている、請求項1〜のうちの何れか1項に記載した電動式パワーステアリング装置。
  6. 前記ウォーム軸に、前記ウォームホイールと前記ウォーム歯との噛合部から噛み合い反力が加わった場合に、前記先端側軸受又は前記軸受ホルダが、前記ハウジングの内周面と当接する事により、それ以上のこの先端側軸受の変位を規制する請求項1〜のうちの何れか1項に記載した電動式パワーステアリング装置。
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