以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大、縮小、あるいは誇張して表示している。また、説明に必要な構成要素以外は図示を省略する場合がある。
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
(第1の実施形態)
<電気光学装置>
第1の実施形態では、電気光学装置として、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor:TFT)を画素のスイッチング素子として備えたアクティブマトリックス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば、後述する投写型表示装置(プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
まず、第1の実施形態に係る電気光学装置としての液晶装置について、図1、図2、および図3を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る液晶装置の構成を示す概略平面図である。図2は、第1の実施形態に係る液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。図3は、第1の実施形態に係る液晶装置の構成を示す概略断面図である。詳しくは、図3は、図1のA−A’線に沿った概略断面図である。
図1および図3に示すように、本実施形態に係る液晶装置1は、第1の基板としての素子基板20と、素子基板20に対向配置された第2の基板としての対向基板30と、シール材42と、電気光学層としての液晶層40とを備えている。図1に示すように、素子基板20は対向基板30よりも大きく、両基板は、対向基板30の縁部に沿って額縁状に配置されたシール材42を介して接合されている。
液晶層40は、素子基板20と対向基板30とシール材42とによって囲まれた空間に封入された、正または負の誘電異方性を有する液晶で構成されている。シール材42は、例えば熱硬化性または紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤からなる。シール材42には、素子基板20と対向基板30との間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
額縁状に配置されたシール材42の内側には、素子基板20に設けられた遮光層22,26と、対向基板30に設けられた遮光層32とが配置されている。遮光層22,26,32は、額縁状の周縁部を有し、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などで形成されている。額縁状の遮光層22,26,32の内側は、複数の画素Pが配列された表示領域Eとなっている。画素Pは、略多角形の平面形状を有している。画素Pは、例えば、略矩形状を有し、マトリックス状に配列されている。
表示領域Eは、液晶装置1において、実質的に表示に寄与する領域である。素子基板20に設けられた遮光層22,26は、表示領域Eにおいて、複数の画素Pの開口領域を平面的に区画するように、例えば格子状に設けられている。なお、液晶装置1は、表示領域Eの周囲を囲むように設けられた、実質的に表示に寄与しないダミー領域を備えていてもよい。
素子基板20の第1辺に沿って形成されたシール材42の表示領域Eと反対側には、第1辺に沿ってデータ線駆動回路51および複数の外部接続端子54が設けられている。また、その第1辺に対向する他の第2辺に沿ったシール材42の表示領域E側には、検査回路53が設けられている。さらに、これらの2辺と直交し互いに対向する他の2辺に沿ったシール材42の内側には、走査線駆動回路52が設けられている。
検査回路53が設けられた第2辺のシール材42の表示領域E側には、2つの走査線駆動回路52を繋ぐ複数の配線55が設けられている。これらデータ線駆動回路51、走査線駆動回路52に繋がる配線は、複数の外部接続端子54に接続されている。また、対向基板30の角部には、素子基板20と対向基板30との間で電気的導通をとるための上下導通部56が設けられている。なお、検査回路53の配置はこれに限定されず、データ線駆動回路51と表示領域Eとの間のシール材42の内側に沿った位置に設けてもよい。
以下の説明では、データ線駆動回路51が設けられた第1辺に沿った方向を第1の方向としてのX方向とし、この第1辺と直交し互いに対向する他の2辺に沿った方向を第2の方向としてのY方向とする。X方向は、図1のA−A’線に沿った方向である。遮光層22,26は、X方向とY方向とに沿った格子状に設けられている。画素Pの開口領域は、遮光層22,26によって格子状に区画され、X方向とY方向とに沿ったマトリックス状に配列されている。
また、X方向およびY方向と直交し図1における上方に向かう方向をZ方向とする。なお、本明細書では、液晶装置1の対向基板30側表面の法線方向(Z方向)から見ることを「平面視」という。
図2に示すように、表示領域Eには、走査線2とデータ線3とが互いに交差するように形成され、走査線2とデータ線3との交差に対応して画素Pが設けられている。画素Pのそれぞれには、画素電極28と、スイッチング素子としてのTFT24とが設けられている。
TFT24のソース電極(図示しない)は、データ線駆動回路51から延在するデータ線3に電気的に接続されている。データ線3には、データ線駆動回路51(図1参照)から画像信号(データ信号)S1,S2,…,Snが線順次で供給される。TFT24のゲート電極(図示しない)は、走査線駆動回路52から延在する走査線2の一部である。走査線2には、走査線駆動回路52から走査信号G1,G2,…,Gmが線順次で供給される。TFT24のドレイン電極(図示しない)は、画素電極28に電気的に接続されている。
画像信号S1,S2,…,Snは、TFT24を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線3を介して画素電極28に所定のタイミングで書き込まれる。このようにして画素電極28を介して液晶層40に書き込まれた所定レベルの画像信号は、対向基板30に設けられた共通電極34(図3参照)との間に形成される液晶容量で一定期間保持される。
なお、保持された画像信号S1,S2,…,Snがリークするのを防止するため、走査線2に沿って形成された容量線4と画素電極28との間に蓄積容量5が形成され、液晶容量と並列に配置されている。このように、各画素Pの液晶に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルにより液晶の配向状態が変化する。これにより、液晶層40(図3参照)に入射した光が変調されて階調表示が可能となる。
液晶層40を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。例えば、ノーマリーホワイトモードの場合、各画素Pの単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少する。ノーマリーブラックモードの場合、各画素Pの単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加し、全体として液晶装置1からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が射出される。
図3に示すように、第1の実施形態に係る対向基板30は、マイクロレンズアレイ基板10と、遮光層32と、保護層33と、共通電極34と、配向膜35とを備えている。第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10は、1段目のマイクロレンズML1および2段目のマイクロレンズML2の2段のマイクロレンズを備えている。マイクロレンズML1およびマイクロレンズML2は、ともに正の屈折力を有している。
マイクロレンズアレイ基板10は、基板11と、第1のレンズ層としてのレンズ層13と、中間層14と、第2のレンズ層としてのレンズ層15と、平坦化層17と、を備えている。基板11は、例えば、ガラスや石英などの光透過性を有する無機材料からなる。基板11の液晶層40側の面を、第1の面としての面11aとする。基板11は、面11aに形成された複数の凹部12を有している。
各凹部12は、画素Pに対応して設けられている。凹部12は、その中央部に配置された平坦部12aと、周縁部に配置された傾斜面12cと、平坦部12aと傾斜面12cとの間に配置された曲面部12bとを有している。平坦部12aと曲面部12bと傾斜面12cとは、連続して形成されている。
レンズ層13は、凹部12を埋めて基板11の面11aを覆うように、凹部12の深さよりも厚く形成されている。レンズ層13は、光透過性を有し、基板11とは異なる光屈折率を有する材料からなる。本実施形態では、レンズ層13は、基板11よりも光屈折率の高い無機材料からなる。このような無機材料としては、例えばSiON、Al2O3などが挙げられる。
レンズ層13を形成する材料で凹部12を埋め込むことにより、凸形状のマイクロレンズML1が構成される。したがって、各マイクロレンズML1は、画素Pに対応して設けられている。また、複数のマイクロレンズML1によりマイクロレンズアレイMLA1が構成される。レンズ層13の表面は、基板11の面11aに略平行で平坦な面となっている。
中間層14は、レンズ層13を覆うように形成されている。中間層14は、光透過性を有し、例えば、基板11とほぼ同じ光屈折率を有する無機材料からなる。このような無機材料としては、例えばSiO2などが挙げられる。中間層14は、マイクロレンズML1からマイクロレンズML2までの距離(光路長)を所望の値に合わせる機能を有する。中間層14の層厚は、光の波長に応じたマイクロレンズML1の焦点距離などの光学条件に基づいて適宜設定される。
レンズ層15は、中間層14を覆うように形成されている。レンズ層15は、液晶層40側に形成された複数の凸部16を有している。各凸部16は、画素Pに対応して設けられており、各凹部12と平面視で重なるように配置されている。凸部16の断面形状は、略台形状である。凸部16は、その中央部に平坦部16aを有している。凸部16の略台形状の角部は曲面であってもよい。レンズ層15は、例えば、レンズ層13と同程度の光屈折率を有し、レンズ層13と同様の材料で形成されている。
平坦化層17は、凸部16同士の間を埋めてレンズ層15を覆うように、凸部16の高さよりも厚く形成されている。平坦化層17は、光透過性を有し、例えば、レンズ層15よりも低い光屈折率を有する無機材料からなる。このような無機材料としては、例えばSiO2などが挙げられる。平坦化層17でレンズ層15の凸部16を覆うことにより、凸形状のマイクロレンズML2が構成される。各マイクロレンズML2は、画素Pに対応して設けられている。また、複数のマイクロレンズML2によりマイクロレンズアレイMLA2が構成される。
平坦化層17は、マイクロレンズML2から遮光層26までの距離(光路長)を所望の値に合わせる機能を有する。平坦化層17の層厚は、光の波長に応じたマイクロレンズML2の焦点距離などの光学条件に基づいて適宜設定される。平坦化層17の表面は、略平坦な面となっている。
遮光層32は、マイクロレンズアレイ基板10(平坦化層17)上に設けられている。遮光層32は、マイクロレンズML1およびマイクロレンズML2が配置された表示領域E(図1参照)の周囲を囲むように設けられている。遮光層32は、例えば、金属や金属化合物などで形成される。遮光層32は、表示領域E内に、素子基板20の遮光層22および遮光層26に平面視で重なるように設けられていてもよい。この場合、遮光層32は、格子状、島状、またはストライプ状などに形成されていてもよいが、平面視で遮光層22および遮光層26よりも狭い範囲に配置されていることが好ましい。
マイクロレンズアレイ基板10(平坦化層17)と遮光層32とを覆うように、保護層33が設けられている。共通電極34は、保護層33を覆うように設けられている。共通電極34は、複数の画素Pに跨って形成されている。共通電極34は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電膜からなる。なお、保護層33は共通電極34の液晶層40側の表面が平坦となるように遮光層32を覆うものであるが、保護層33を設けることなく導電性の遮光層32を直接覆うように共通電極34を形成してもよい。配向膜35は、共通電極34を覆うように設けられている。
素子基板20は、基板21と、遮光層22と、絶縁層23と、TFT24と、絶縁層25と、遮光層26と、絶縁層27と、画素電極28と、配向膜29とを備えている。基板21は、例えばガラスや石英などの光透過性を有する材料からなる。
遮光層22は、基板21上に設けられている。遮光層22は、上層の遮光層26に平面視で重なるように格子状に形成されている。遮光層22および遮光層26は、例えば、金属や金属化合物などで形成される。遮光層22および遮光層26は、素子基板20の厚さ方向(Z方向)において、TFT24を間に挟むように配置されている。遮光層22は、TFT24の少なくともチャネル領域と平面視で重なっている。
遮光層22および遮光層26が設けられていることにより、TFT24への光の入射が抑制されるので、TFT24における光リーク電流の増大や光による誤動作を抑えることができる。遮光層22と遮光層26とで遮光部Sが構成される。遮光層22に囲まれた領域(開口部22a内)、および、遮光層26に囲まれた領域(開口部26a内)は、平面視で互いに重なっており、画素Pの領域のうち光が透過する開口部Tとなる。
絶縁層23は、基板21と遮光層22とを覆うように設けられている。絶縁層23は、例えば、SiO2などの無機材料からなる。
TFT24は、絶縁層23上に設けられており、遮光層22および遮光層26と平面視で重なる領域に配置されている。TFT24は、画素電極28を駆動するスイッチング素子である。TFT24は、図示しない半導体層、ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極で構成されている。半導体層には、ソース領域、チャネル領域、およびドレイン領域が形成されている。チャネル領域とソース領域、又は、チャネル領域とドレイン領域との界面にはLDD(Lightly Doped Drain)領域が形成されていてもよい。
ゲート電極は、素子基板20において平面視で半導体層のチャネル領域と重なる領域に絶縁層25の一部(ゲート絶縁膜)を介して形成されている。図示を省略するが、ゲート電極は、下層側に配置された走査線にコンタクトホールを介して電気的に接続されており、走査信号が印加されることによってTFT24をオン/オフ制御している。
絶縁層25は、絶縁層23とTFT24とを覆うように設けられている。絶縁層25は、例えば、SiO2などの無機材料からなる。絶縁層25は、TFT24の半導体層とゲート電極との間を絶縁するゲート絶縁膜を含む。絶縁層25により、TFT24によって生じる表面の凹凸が緩和される。絶縁層25上には、遮光層26が設けられている。そして、絶縁層25と遮光層26とを覆うように、無機材料からなる絶縁層27が設けられている。
画素電極28は、絶縁層27上に、画素Pに対応して設けられている。画素電極28は、遮光層22の開口部22aおよび遮光層26の開口部26aに平面視で重なる領域に配置されている。画素電極28は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電膜からなる。配向膜29は、画素電極28を覆うように設けられている。液晶層40は、素子基板20側の配向膜29と対向基板30側の配向膜35との間に封入されている。
なお、図示を省略するが、平面視で遮光層22および遮光層26に重なる領域には、TFT24に電気信号を供給するための電極、配線、中継電極や、蓄積容量5(図2参照)を構成する容量電極などが設けられている。遮光層22や遮光層26がこれらの電極、配線、中継電極、容量電極などを含む構成であってもよい。
第1の実施形態に係る液晶装置1では、例えば、光源などから発せられた光は、マイクロレンズML1,ML2を備える対向基板30(基板11)側から入射する。入射する光のうち、対向基板30(基板11)の表面の法線方向に沿ってマイクロレンズML1の中央部(平坦部12a)に入射した平行光の光L1は、直進してマイクロレンズML2の中央部(平坦部16a)に入射し、平行光のまま画素Pの開口部T内を透過し素子基板20側に射出される。
特許文献1に記載のマイクロレンズアレイ基板のように、マイクロレンズML1全体が曲面部で構成されている場合は、マイクロレンズML1の中央部に光L1のような平行光が入射しても、マイクロレンズML1の中心に向けて集光(屈折)されて斜め光となり、マイクロレンズML2に入射する。そのため、マイクロレンズアレイ基板に入射する光が平行光であっても、液晶層40に入射する平行光はマイクロレンズアレイ基板10よりも少なくなる。
なお、以下では、対向基板30(基板11)の表面の法線方向を単に「法線方向」という。「法線方向」は、図3のZ方向に沿った方向であり、素子基板20(基板21)の法線方向と略同一の方向である。また、以下では、法線方向に平行な光を「平行光」といい、法線方向に対して傾いた(角度を持った)光を「斜め光」という。
マイクロレンズML1の端部(傾斜面12c)に入射した平行光の光L2は、仮にそのまま直進した場合、破線で示すように遮光層26で遮光されてしまう。しかしながら、光L2は、基板11とレンズ層13との間の光屈折率の差(正の屈折力)により、破線で示す光路よりもマイクロレンズML1の中心側へ屈折してマイクロレンズML2に入射する。そして、マイクロレンズML2に入射した光L2は、レンズ層15と平坦化層17との間の光屈折率の差(正の屈折力)により、マイクロレンズML2の中心側へさらに屈折し、画素Pの開口部T内を透過して素子基板20側に射出される。
なお、マイクロレンズML1の傾斜面12cに入射する光は、入射角度が略同一であれば略同一の角度でマイクロレンズML1の中心側へ屈折される。したがって、マイクロレンズML1全体が曲面部で構成されている場合と比べて、入射する光の過度の屈折が抑えられるとともに、液晶層40に入射する光の角度のばらつきが抑えられる。
マイクロレンズML1の端部(傾斜面12c)に、マイクロレンズML1の中心に対して外側に向かって入射した斜め光の光L3は、仮にそのまま直進した場合、破線で示すように遮光層32で遮光されてしまうが、基板11とレンズ層13との間の光屈折率の差により、マイクロレンズML1の中心側へ屈折してマイクロレンズML2に入射する。
マイクロレンズML2に入射した光L3は、仮にそのまま直進した場合、破線で示すように遮光層26で遮光されてしまうが、レンズ層15と平坦化層17との間の光屈折率の差により、マイクロレンズML2の中心側へさらに屈折し、画素Pの開口部T内を透過して素子基板20側に射出される。なお、マイクロレンズML1の曲面部12bに入射する平行光や斜め光も、光L2,L3と同様にマイクロレンズML1の中心側へ屈折する。
上述したように、液晶装置1では、そのまま直進した場合に遮光層32や遮光層26で遮光されてしまう光L2,L3を、2段のマイクロレンズML1,ML2の作用により、画素Pの開口部Tの中心側へ屈折させて開口部T内を透過させることができる。この結果、素子基板20側から射出される光の量を多くできるので、光の利用効率を高めることができる。
そして、マイクロレンズML1全体が曲面部で構成される場合と比べて、マイクロレンズML1の中央部(平坦部12a)に入射する平行光を、そのまま直進させてマイクロレンズML2の中央部(平坦部16a)を透過させるので、画素Pの開口部T内を透過する平行光を多くすることができる。また、マイクロレンズML1の傾斜面12cでは入射する光の過度の屈折と屈折角度のばらつきが抑えられる。この結果、液晶層40を透過する光の、液晶分子の配向方向に対する角度のばらつきを小さくできるので、液晶装置1に表示される画像のコントラストを向上させることができる。
このように、第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10を備えた液晶装置1では、光の利用効率の向上とコントラストの向上とを両立させることができる。したがって、液晶装置1をプロジェクターの液晶ライトバルブとして用いる場合に、投写レンズに入射する光のケラレを抑制でき、プロジェクターにおける光の利用効率やコントラストの向上を図ることができる。
なお、中間層14がレンズ層13やレンズ層15よりも光屈折率が低い材料で構成されている場合、レンズ層13と中間層14との界面、および、中間層14とレンズ層15との界面においても光の屈折は起きる。しかしながら、これらの界面における光の屈折は、マイクロレンズML1,ML2による光の屈折と比べてわずかであり、無視できるものとする。
<マイクロレンズアレイ基板>
続いて、第1の実施形態に係る液晶装置の遮光部およびマイクロレンズML1,ML2の形状および配置について、図4を参照して説明する。図4は、第1の実施形態に係る液晶装置の遮光部およびマイクロレンズの形状と配置とを示す模式平面図である。
図4に示すように、液晶装置1の表示領域Eには、複数の画素Pが所定の配置ピッチでマトリックス状に配列されている。図4には、互いに隣り合う4つの画素Pが図示されている。画素Pの各々は略矩形の平面形状を有し、X方向およびY方向において隣り合う画素P同士は互いに接するように配列されている。画素Pの対角に位置する頂点同士を結ぶ対角線に沿った方向をW方向とする。W方向は、X方向およびY方向で構成される平面において、X方向およびY方向と交差する方向である。なお、図4のB−B’線は、W方向に沿った線である。
図4に斜線を付して示すように、液晶装置1の表示領域Eには、遮光部Sが格子状に設けられている。遮光部Sは、遮光層22と遮光層26とで構成される。換言すれば、遮光部Sには、遮光層22および遮光層26の少なくとも一つが配置されている。各画素Pの領域のうち、遮光部Sと平面視で重なる領域は光を透過しない非開口領域であり、開口部Tと平面視で重なる領域は光が透過する開口領域である。TFT24は、遮光部Sと平面視で重なる領域に配置されている。
遮光部Sは、X方向に延在する部分とY方向に延在する部分とを有している。遮光部Sは、例えば、4つの角部に開口部T側に張り出した部分を有している。この遮光部Sの張り出した部分には、例えば、TFT24の一部や図示しない中継電極や容量電極などが配置されている。遮光部Sをこのような形状とすることで、遮光部Sの領域を小さくして開口率を高めても、TFT24を確実に遮光することができる。
遮光部Sは、複数の画素Pの各々に対応する開口部Tを有している。開口部Tは、略矩形状の4つの角部が窪んだ輪郭形状を有している。開口部Tは、X方向に沿った直線およびY方向に沿った直線に対して線対称な輪郭形状を有している。なお、開口部Tの輪郭形状(遮光部Sの平面形状)は、このような形態に限定されるものではなく、4つの角部が窪んでいない輪郭形状であってもよいし、X方向またはY方向のいずれか一方に沿った直線に対して非線対称な輪郭形状であってもよい。
開口部Tは、平面視で開口部22aと開口部26aとが重なる領域である。なお、遮光層32が表示領域Eにも設けられている場合、遮光部Sは遮光層22と遮光層26と遮光層32とで構成され、開口部Tは平面視で開口部22aと開口部26aと遮光層32の開口部とが重なる領域となる。
複数のマイクロレンズML1(凹部12)の各々と複数のマイクロレンズML2(凸部16)の各々とは、複数の画素Pの各々に対応して、同じ配置ピッチで配列されている。マイクロレンズML1(凹部12)とマイクロレンズML2(凸部16)とは、平面視で互いに重なるとともに画素Pの開口部Tと重なるように配置されている。マイクロレンズML1(凹部12)およびマイクロレンズML2(凸部16)は、画素Pに内接する大きさである。
X方向およびY方向において隣り合うマイクロレンズML1,ML2同士の境界は、遮光部SのX方向に延在する部分およびY方向に延在する部分と平面視で重なる領域に配置されている。また、マイクロレンズML1(凹部12)およびマイクロレンズML2(凸部16)の4隅の角部は、遮光部SのX方向に延在する部分とY方向に延在する部分とが交差する部分と平面視で重なる領域に、画素Pの角部(頂点)よりも内側(開口部T側)に配置されている。
X方向およびY方向において隣り合うマイクロレンズML1(凹部12)同士およびマイクロレンズML2(凸部16)同士は、互いに接続されている。X方向およびY方向において隣り合うマイクロレンズML1(凹部12)が互いに接続されているため、より多くの光がマイクロレンズML1に入射するので、マイクロレンズML2に入射する光をより多くすることができる。
対角線に沿った方向(W方向)において隣り合うマイクロレンズML(凹部12)同士およびマイクロレンズML2(凸部16)同士は、互いに離間されている。対角線に沿った方向におけるマイクロレンズML1(凹部12)およびマイクロレンズML2(凸部16)の径(長さ)は、同じであってもよいし、いずれか一方が他方より大きくてもよい。
凹部12の仮想的な外形は円形状であり、例えば、画素Pの内接円よりも大きく外接円よりも小さい。凹部12は、中央部に配置された平坦部12aと、平坦部12aの周囲に配置された曲面部12bと、曲面部12bの周囲に配置された傾斜面12cとを有している。凹部12の仮想的な外形の設計上の中心は、画素Pの平面的な中心と一致している。平坦部12aおよび曲面部12bは、凹部12の仮想的な外形(円形)の同心円状に形成されている。凸部16の平面形状は、4隅の角部が丸い略矩形状である。凸部16は、中央部に配置された平坦部16aを有している。平坦部16aの平面形状は、4隅の角部が丸い略矩形状である。
マイクロレンズML1(凹部12)の平坦部12aは、凹部12の底部であり(図7(c)参照)、平面視で画素Pの開口部T内に配置されている。マイクロレンズML2(凸部16)の平坦部16aは、凸部16の上底部であり(図7(c)参照)、平面視で画素Pの開口部T内に配置されている。換言すれば、遮光部Sの内縁は、平坦部12aおよび平坦部16aの外縁よりも外側に配置されている。これにより、マイクロレンズML1,ML2の中央部(平坦部12a,16aに入射する平行光(図3に示す光L1)が、屈折することなくそのまま液晶層40(図3参照)中を直進して射出されても、遮光部Sで遮光されることなく各画素Pの開口部T内を透過することができる。
<マイクロレンズアレイ基板の製造方法>
次に、第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10の製造方法を説明する。図5、図6、および図7は、第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板の製造方法を示す概略断面図である。詳しくは、図5、図6、および図7の各図は、図4のB−B’線に沿った概略断面図に相当し、図3に示す断面図とは上下方向(Z方向)が反転している。
まず、図5(a)に示すように、石英などからなる光透過性を有する基板11の面11aに、例えば、SiO2などの酸化膜からなる制御膜70を形成する。制御膜70は、等方性エッチングにおけるエッチングレートが基板11と異なっており、凹部12を形成する際の深さ方向(Z方向)のエッチングレートに対して幅方向(図4に示すW方向、X方向、およびY方向)のエッチングレートを調整する機能を有する。
制御膜70を形成した後、所定の温度で制御膜70のアニールを行う。制御膜70のエッチングレートは、アニール時の温度により変化する。したがって、アニール時の温度を適宜設定することにより、制御膜70のエッチングレートを調整することができる。
次に、図5(b)に示すように、制御膜70上にマスク層72を形成する。そして、マスク層72をパターニングして、マスク層72に開口部72aを形成する。開口部72aは、形成される凹部12における平坦部12aと同様に平面視で略円形であり、その径は平坦部12aの径と略同一に設定される。換言すれば、マスク層72の開口部72aによって、形成される凹部12における平坦部12aの形状と径とが決まる。
次に、図5(c)に示すように、マスク層72の開口部72aを介して、制御膜70で覆われた基板11に等方性エッチングを施す。等方性エッチングには、制御膜70のエッチングレートの方が基板11のエッチングレートよりも大きくなるようなエッチング液(例えば、フッ酸溶液)を用いる。等方性エッチングにより、開口部72aから制御膜70と基板11とがエッチングされ、制御膜70に開口部70aが形成されるとともに、基板11に凹部12が形成される。
次に、図5(d)に示すように、等方性エッチングの進行に伴って凹部12が拡大され、凹部12のうち平面視でマスク層72の開口部72aに対応する部分が略平坦な面となる。これにより、凹部12の中央部に平坦部12aが形成される。また、平坦部12aの周囲を囲むように曲面部12bと傾斜面12cとが形成される。
ここで、基板11とマスク層72との間に制御膜70が設けられていない場合は、図5(d)に破線で示すように、曲面部12bが基板11の面11aに到達するまで形成されることとなる。本実施形態では、基板11とマスク層72との間に制御膜70が設けられており、等方性エッチングにおける制御膜70の単位時間当たりのエッチング量は基板11の単位時間当たりのエッチング量よりも多い。
したがって、制御膜70の開口部70aの拡大量は凹部12の深さ方向の拡大量よりも多くなるので、開口部70aの拡大に伴って、凹部12の幅方向も拡大することとなる。そのため、基板11の幅方向における単位時間当たりのエッチング量は、深さ方向における単位時間当たりのエッチング量よりも多くなる。これにより、曲面部12bの周囲を囲むようにテーパー状の傾斜面12cが形成される。
上述したように、凹部12における平坦部12aの形状および径は、マスク層72の開口部72aの形状および径により制御することができる。また、凹部12における曲面部12bおよび傾斜面12cのそれぞれの大きさは、基板11の深さ方向のエッチングレートに対する幅方向のエッチングレートにより制御され、このエッチングレートの差は制御膜70のアニール時の温度設定により調整できる。
本工程では、X方向およびY方向において隣り合う凹部12同士が互いに接続されるとともに、W方向において隣り合う凹部12同士が互いに離間されている状態、すなわちW方向において隣り合う凹部12同士の間に基板11の面11aが残された状態で等方性エッチングを終了する(図4参照)。
W方向において隣り合う凹部12同士が互いに接続されるまで等方性エッチングを行うと、マスク層72が基板11から浮いて剥がれてしまうおそれがある。本実施形態では、隣り合う凹部12同士の間に基板11の面11aが残っている状態で等方性エッチングを終了するので、等方性エッチングが終了するまでマスク層72を支持することができる。これにより、凹部12の平面形状は、4隅の角部が丸くなった略矩形状となる(図4参照)。
形成される凹部12の仮想的な平面形状はマスク層72の開口部72aの平面形状が拡大された円形状であるが、X方向およびY方向に隣り合う凹部12同士が接続されるため、凹部12の平面形状は4隅の角部が丸く形成された略矩形状となる。
次に、図6(a)に示すように、基板11からマスク層72を除去した後、基板11の面11a側を覆い凹部12を埋め込むように、光透過性を有し、基板11よりも高い屈折率を有する無機材料を堆積してレンズ材料層13aを形成する。レンズ材料層13aは、例えばCVD法を用いて形成することができる。レンズ材料層13aで凹部12を埋め込むことによりマイクロレンズML1が構成される。レンズ材料層13aは凹部12を埋め込むように形成されるため、レンズ材料層13aの表面は基板11の凹部12に起因する凹凸が反映された凹凸形状となる。
続いて、レンズ材料層13aに対して平坦化処理を施す。平坦化処理では、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)処理などを用いて、レンズ材料層13aの表面の凹凸が形成された部分(図6(a)に示す2点鎖線より上方の部分)を研磨して除去することにより、レンズ材料層13aの表面が平坦化される。平坦化処理の結果、図6(b)に示すように、表面が平坦化されたレンズ層13が得られる。
なお、図示を省略するが、従来のエッチングにより曲面状の凹部が形成されたマイクロレンズでは、マスク層に本実施形態よりも小さな開口部を形成し、その開口部を介して基板に等方性エッチング処理を施すことにより、基板が略球面状にエッチングされて曲面状の凹部が形成される。このとき、形成される凹部の径が本実施形態の凹部12の最大径(W方向における径)と同じである場合、曲面状の凹部の深さは本実施形態の凹部12の深さよりも大きく(深く)なる。特に、画素Pの配置ピッチが大きくなると、凹部の径および深さも画素Pの配置ピッチに対応して大きくなる。そのため、本実施形態と比べて、基板のエッチング量および凹部を埋めるためのレンズ層の材料の堆積量が多くなりレンズ層の表面の段差も大きくなるので、CMP処理工程における研磨量も多くなり、その結果、これらの工程における工数の増大を招くこととなる。
本実施形態に係るマイクロレンズML1の構成によれば、凹部12の中央部に平坦部12aを設けることで、凹部12の深さが浅くなるので、マイクロレンズアレイ基板10の製造工程におけるエッチング、CVD、CMP処理などの工数や、レンズ材料層13aの使用量を低減することができる。また、堆積したレンズ材料層13aの膜厚がより均一になり表面の凹凸形状が小さくなるので、レンズ材料層13aの表面の平坦性を向上させることができる。
次に、図6(c)に示すように、レンズ層13を覆うように、光透過性を有し、基板11と同程度の光屈折率を有する無機材料を堆積して中間層14を形成する。そして、中間層14の表面を覆うように、光透過性を有し、基板11よりも高い光屈折率を有する無機材料を堆積してレンズ材料層15aを形成する。中間層14およびレンズ材料層15aは、例えばCVD法を用いて形成することができる。
次に、図6(d)に示すように、レンズ材料層15a上に、レジスト層74を形成する。レジスト層74は、例えば、露光部分が現像により除去されるポジ型の感光性レジストで形成する。レジスト層74は、例えば、スピンコート法やロールコート法などで形成することができる。そして、凸部16が形成される位置に対応して遮光部が設けられたマスク層76を介して、レジスト層74を露光して現像する。
レジスト層74を露光して現像することにより、図7(a)に示すように、レジスト層74のうち、マスク層76の遮光部と重なる領域以外の領域が露光されて除去され、後の工程で凸部16が形成される位置に対応して凸状部75が残留する。残留した凸状部75同士は、X方向、Y方向、およびW方向において互いに離間される。
本工程では、レジスト層74を露光する際に、例えば下方側ほど露光量が少なくなるような露光条件の設定により、残留する凸状部75の断面形状が略台形状となるようにする。凸状部75の略台形状の上底と斜辺との角部は、丸く形成されていてもよい。凸状部75の平面形状は、例えば、4隅の角部が丸く形成された略矩形状である。凸状部75の4隅の角部を丸く形成する方法は、レジスト層74を露光する際のマスクにおいて4隅の角部を丸くしてもよいし、露光条件の設定で4隅の角部を丸く形成するようにしてもよい。
次に、図7(b)に示すように、凸状部75とレンズ材料層15aとに上方側から、例えば、ドライエッチングなどの異方性エッチングを施す。これにより、レジストからなる凸状部75が徐々に除去され、凸状部75の除去に伴ってレンズ材料層15aの露出する部分がエッチングされる。この結果、レンズ材料層15aに凸状部75の形状が転写されて、凸部16を有するレンズ層15が形成される。凸部16の略台形状の上底部分は平坦な面であり、この上底部分が平坦部16aとなる。
本工程では、異方性エッチングにおける凸状部75のエッチングレートとレンズ材料層15aのエッチングレートとが略同一となるエッチング条件とすることで、凸部16が凸状部75と略同一の形状となる。なお、図7(b)に示すように、基板11の面11aに対して凸部16の略台形状の斜辺の角度が凸状部75の略台形状の斜辺の角度よりも小さくなるようなエッチング条件を設定してもよい。
次に、図7(c)に示すように、レンズ層15を覆うように、光透過性を有し、基板11と同程度の光屈折率を有する無機材料を堆積して平坦化層17を形成する。そして、平坦化層17に対して平坦化処理を施す。凸部16を平坦化層17で覆うことにより、マイクロレンズML2が構成される。以上により、マイクロレンズアレイ基板10が完成する。
マイクロレンズアレイ基板10が完成した後、公知の技術を用いて、マイクロレンズアレイ基板10上に、遮光層32と、保護層33と、共通電極34と、配向膜35とを順に形成して対向基板30を得る。また、基板21上に、遮光層22と、絶縁層23と、TFT24と、絶縁層25と、遮光層26と、絶縁層27と、画素電極28と、配向膜29とを順に公知の方法を用いて形成することにより、素子基板20を得る。
続いて、素子基板20と対向基板30とを位置決めし、素子基板20と対向基板30との間に熱硬化性または光硬化性の接着剤をシール材42(図1参照)として配置して硬化させて貼り合せる。そして、素子基板20と対向基板30とシール材42とで構成される空間に液晶を封入して挟持することにより、液晶装置1が完成する。素子基板20と対向基板30とを貼り合せる前にシール材42で囲まれた領域に液晶を配置することとしてもよい。
(第2の実施形態)
<電気光学装置>
第2の実施形態に係る液晶装置は、第1の実施形態に対して、マイクロレンズアレイ基板が備えるマイクロレンズML2が平坦部を有しておらず曲面で構成されている点が異なる。図8は、第2の実施形態に係る液晶装置の構成を示す概略断面図である。第1の実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
図8に示すように、第2の実施形態に係る液晶装置1Aは、素子基板20と対向基板30Aと液晶層40とを備えている。第2の実施形態に係る対向基板30Aは、マイクロレンズアレイ基板10Aと、遮光層32と、保護層33と、共通電極34と、配向膜35とを備えている。マイクロレンズアレイ基板10Aは、基板11と、レンズ層13と、中間層14と、第2のレンズ層としてのレンズ層18と、平坦化層17と、を備えている。
レンズ層18は、中間層14を覆うように形成されている。レンズ層18は、例えば、レンズ層13と同程度の光屈折率を有し、レンズ層13と同様の材料で形成されている。レンズ層18は、液晶層40側に形成された複数の凸部19を有している。各凸部19は、画素Pに対応して設けられており、各凹部12と平面視で重なるように配置されている。平坦化層17でレンズ層18の凸部19を覆うことにより、凸形状のマイクロレンズML2が構成される。
凸部19は、曲面で構成されている。より具体的には、凸部19の断面形状は略楕円球面状である。そのため、マイクロレンズML2は、中央部においても集光作用を有しているので、光L1のようにマイクロレンズML2の中央部に入射する平行光は、マイクロレンズML2の中心に向けて集光(屈折)される。しかしながら、凸部19の中央部の曲率半径は周縁部の曲率半径よりも大きいので、マイクロレンズML2の中央部に入射する光が屈折する角度は周縁部よりも小さく抑えられる。したがって、凸部19の断面形状が、凸部19全体の曲率半径が同一である球面状である場合と比べて、斜め光を少なく抑えるとともに角度のばらつきを小さく抑えることができる。
マイクロレンズML1の端部(傾斜面12c)に入射する平行光の光L2や斜め光の光L3は、第1の実施形態と同様に、マイクロレンズML1の中心側へ屈折しマイクロレンズML2の中心側へ屈折するので、画素Pの開口部T内を透過させることができる。
第2の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10Aでは、光L4のように外側(マイクロレンズML1の中心から遠ざかる側)に向かってマイクロレンズML1の平坦部12aに入射した斜め光は、マイクロレンズML1の中心側へわずかに屈折する。そして、仮にマイクロレンズML2をそのまま直進した場合、破線で示すように画素Pの外側(隣の画素P側)に向かい遮光層26で遮光されてしまうが、マイクロレンズML2の中心側へ屈折するので、画素Pの開口部T内を透過させることができる。
<マイクロレンズアレイ基板>
第2の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10Aの、光L4のような斜め光に対する作用について、図9を参照し、第1の実施形態と比較して説明する。図9は、第2の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板の構成を第1の実施形態と比較して示す模式断面図である。詳しくは、図9(a)は第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10の模式断面図であり、図3における1つの画素Pの部分拡大図に相当する。図9(b)は第2の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10Aの模式断面図であり、図8における1つの画素Pの部分拡大図に相当する。
図9(a),(b)に示すマイクロレンズML1,ML2の光軸Axは、マイクロレンズML1(凹部12)の平面的な中心とマイクロレンズML2(凸部16,19)の平面的な中心とを結ぶ直線である。マイクロレンズML1,ML2の光軸Axは、法線方向に平行であるものとする。
また、マイクロレンズML1(凹部12)の平坦部12aの法線をV1とする。そして、図9(a)におけるマイクロレンズML2(凸部16)の平坦部16aの法線をV2とし、図9(b)におけるマイクロレンズML2(凸部19)の光が入射する位置における接平面の法線をV3とする。法線V1および法線V2は光軸Axに平行であり、法線V3は光軸Axに対して角度を有している。図9(a),(b)において、光L4のような斜め光が法線V1よりも光軸Ax側から外側(光軸Axから遠ざかる側)に向かってマイクロレンズML1の平坦部12aに入射する場合を考える。
図9(a)に示す第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10では、レンズ層13の光屈折率が基板11の光屈折率よりも大きいため、法線1に対する屈折角が入射角よりも小さくなるので、平坦部12aに入射した光L4は、光軸Ax側へ屈折してマイクロレンズML2(凸部16)の平坦部16aに入射する。そうすると、平坦化層17の光屈折率がレンズ層15の光屈折率よりも小さいため、法線V2に対する屈折角が入射角よりも大きくなるので、光L4は、破線で示すそのまま直進した場合よりも、さらに画素Pの外側(隣の画素P側)に屈折され遮光層26(図8参照)で遮光されてしまう。
図9(b)に示す第2の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10Aでは、光L4はマイクロレンズML1で図9(a)と同様に屈折して、マイクロレンズML2に入射する。第2の実施形態では、マイクロレンズML2(凸部19)が曲面で構成されているため、光L4は入射する位置における接平面の法線V3に対して外側からマイクロレンズML2に入射する。
そうすると、平坦化層17の光屈折率がレンズ層18の光屈折率よりも小さいため、法線V3に対する屈折角が入射角よりも大きくなるので、光L4は、破線で示すそのまま直進した場合よりも、画素Pの内側に屈折される。このように、第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10では、画素Pの外側(隣の画素P側)に向かい遮光層32で遮光されてしまう光L4を、第2の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10Aでは画素Pの開口部T内に導くことができる。
第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10は、入射する光が光L1のような平行光を多く含む場合に適しており、第2の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10Aは、入射する光が光L4のような斜め光を多く含む場合に適している。したがって、光源の構成や特性などに応じて、第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10または第2の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10Aのいずれか好適な方を選択することができる。
<マイクロレンズアレイ基板の製造方法>
次に、第2の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10Aの製造方法を説明する。図10および図11は、第2の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板の製造方法を示す概略断面図である。詳しくは、図10および図11の各図は、図4のB−B’線に沿った概略断面図に相当し、図8に示す断面図とは上下方向(Z方向)が反転している。第1の実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2の実施形態では、図6(a)に示す工程で表面が平坦化されたレンズ層13が得られた後、図10(a)に示すように、レンズ層13上に中間層14、レンズ材料層18a、およびレジスト層74を形成する。そして、凸部19が形成される位置に対応して遮光部が設けられたマスク層76を介して、レジスト層74を露光して現像する。なお、レンズ材料層18aは、レンズ材料層15aと同じ材料を用いることができるが、レンズ材料層18aの層厚とレジスト層74の層厚とが略同一となるようにする。
レジスト層74を露光して現像することにより、図10(b)に示すように、レジスト層74のうち、マスク層76の遮光部と重なる領域以外の領域が露光されて除去され、後の工程で凸部19が形成される位置に対応する凸状部75が残留する。凸状部75の断面形状は、例えば、矩形状である。
次に、レジスト層74のうち残留した凸状部75に、リフロー処理などの加熱処理を施すことにより軟化(溶融)させる。溶融した凸状部75は、流動状態となり、表面張力の作用で表面が曲面状に変形する。これにより、図10(c)に示すように、レンズ材料層18a上に残留した凸状部75から略楕円球面状の凸状部77が形成される。凸状部77の底部側(レンズ材料層18a側)は平面視で4隅の角部が丸い略矩形状であるが、凸状部77の略楕円球面状の先端側(上方)は平面視で略同心円状に形成される。
次に、図11(a)に示すように、凸状部77とレンズ材料層18aとに上方側から、例えば、ドライエッチングなどの異方性エッチングを施す。これにより、凸状部77が徐々に除去され、凸状部77の除去に伴ってレンズ材料層18aの露出する部分がエッチングされる。この結果、レンズ材料層18aに凸状部77の形状が転写されて、凸部18bが形成される。本工程では、異方性エッチングにおける凸状部77の材料(レジスト)のエッチングレートとレンズ材料層18aのエッチングレートとが略同一となるエッチング条件とすることで、凸状部77と凸部18bとを略同一の形状とすることができる。
次に、図11(b)に示すように、凸部18b(レンズ材料層18a)と同じ材料を、例えばCVD法を用いて、中間層14と凸部18bとを覆うように堆積させる。これにより、凸部18bに対応する凸部19を有するレンズ層18が形成される。
次に、図11(c)に示すように、レンズ層18を覆うように、平坦化層17を形成して、平坦化層17に対して平坦化処理を施す。凸部19を平坦化層17で覆うことにより、マイクロレンズML2が構成される。以上により、マイクロレンズアレイ基板10Aが完成する。
(第3の実施形態)
<電子機器>
次に、第3の実施形態に係る電子機器について図12を参照して説明する。図12は、第3の実施形態に係る電子機器としてのプロジェクターの構成を示す概略図である。
図12に示すように、第3の実施形態に係る電子機器としてのプロジェクター(投写型表示装置)100は、偏光照明装置110と、2つのダイクロイックミラー104,105と、3つの反射ミラー106,107,108と、5つのリレーレンズ111,112,113,114,115と、3つの液晶ライトバルブ121,122,123と、クロスダイクロイックプリズム116と、投写レンズ117とを備えている。
偏光照明装置110は、例えば超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット101と、インテグレーターレンズ102と、偏光変換素子103とを備えている。ランプユニット101と、インテグレーターレンズ102と、偏光変換素子103とは、システム光軸Lxに沿って配置されている。
ダイクロイックミラー104は、偏光照明装置110から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー105は、ダイクロイックミラー104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
ダイクロイックミラー104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー106で反射した後にリレーレンズ115を経由して液晶ライトバルブ121に入射する。ダイクロイックミラー105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ114を経由して液晶ライトバルブ122に入射する。ダイクロイックミラー105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ111,112,113と2つの反射ミラー107,108とで構成される導光系を経由して液晶ライトバルブ123に入射する。
光変調素子としての透過型の液晶ライトバルブ121,122,123は、クロスダイクロイックプリズム116の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ121,122,123に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調され、クロスダイクロイックプリズム116に向けて射出される。
クロスダイクロイックプリズム116は、4つの直角プリズムが貼り合わされて構成されており、その内面には赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投写光学系である投写レンズ117によってスクリーン130上に投写され、画像が拡大されて表示される。
液晶ライトバルブ121は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ122,123も同様である。液晶ライトバルブ121,122,123は、上記実施形態に係る液晶装置1または液晶装置1Aが適用されたものである。
第3の実施形態に係るプロジェクター100の構成によれば、複数の画素Pが高精細に配置されていても、明るい表示と優れた表示品質とを得ることができる液晶装置1を備えているので、明るくてコントラストが良好な画像を表示できるプロジェクター100を提供することができる。
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。変形例としては、例えば、以下のようなものが考えられる。
(変形例1)
上記の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10,10Aは、マイクロレンズML1(凹部12)の平坦部12aの平面形状が円形であったが、本発明はこのような形態に限定されない。例えば、凹部12の平坦部12aの平面形状が略矩形状であってもよい。マイクロレンズML1の平坦部12aの平面形状が略矩形状であると、画素Pの開口部Tの輪郭が略矩形である場合に、開口部Tの輪郭に沿って平坦部12aを配置できるので、入射する平行光がマイクロレンズML1をそのまま直進する領域を広くすることができる。また、第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10では、マイクロレンズML2(凸部16)の平坦部16aが略矩形状であるので、入射する平行光がマイクロレンズML1,ML2をそのまま直進する領域を広くすることが可能となる。なお、平坦部12aの平面形状を略矩形状とする場合は、図5(b)に示すマスク層72に開口部72aを形成する工程において、開口部72aの平面形状を矩形にすればよい。
(変形例2)
上記の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10,10Aは、マイクロレンズML1(凹部12)の曲面部12bの周囲にテーパー状の傾斜面12cを備える構成を有していたが、本発明はこのような形態に限定されない。例えば、凹部12が傾斜面12cを備えておらず、曲面部12bが平坦部12aの周囲から周縁部まで形成された構成であってもよい。しかしながら、凹部12の周縁部が曲面であると、入射する光が大きく屈折されたり全反射されたりしてしまう場合があるため、凹部12が傾斜面12cを有する構成の方が好ましい。
(変形例3)
上記の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10,10Aの製造方法は、マイクロレンズML1(凹部12)を形成する工程において、制御膜70を設けることで等方性エッチングにおける幅方向と深さ方向とのエッチングレートの差を制御することにより凹部12を形成する構成であったが、本発明はこのような形態に限定されない。例えば、基板11上にレジスト層を形成し、グレースケールマスクを用いた露光や多段階露光などにより、レジスト層に凹部12の基となる形状を形成し、レジスト層と基板11とに略同一のエッチング選択比で異方性エッチングを施すことにより、基板11に凹部12の形状を転写して形成することができる。なお、この場合、制御膜70は不要となる。
(変形例4)
上述した液晶装置1,1Aでは、マイクロレンズアレイ基板10,10Aを対向基板30,30Aに備えていたが、本発明はこのような形態に限定されない。例えば、マイクロレンズアレイ基板10,10Aを素子基板20に備えた構成としてもよい。
(変形例5)
上述した液晶装置1,1Aを適用可能な電子機器は、プロジェクター100に限定されない。液晶装置1,1Aは、例えば、投写型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、または電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型のビデオカメラ、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどの情報端末機器の表示部として好適に用いることができる。