以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大、縮小、あるいは誇張して表示している。また、説明に必要な構成要素以外は図示を省略する場合がある。
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
本実施形態では、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor:TFT)を画素のスイッチング素子として備えたアクティブマトリックス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば、後述するプロジェクターの液晶ライトバルブとして好適に用いることができるものである。
次に、本実施形態の液晶装置について、図1~図3を参照しながら説明する。図1は、液晶装置の構成を示す模式平面図である。図2は、液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。図3は、図1に示す液晶装置のA-A’線に沿った模式断面図である。
まず、図1に示すように、本実施形態に係る液晶装置1は、第2基板としての素子基板10と、素子基板10に対向配置された第1基板としての対向基板30と、シール材42と、液晶層40と、を備えている。素子基板10は対向基板30よりも大きく、両基板は、対向基板30の縁部に沿って枠状に配置されたシール材42を介して接合されている。
液晶層40は、素子基板10と対向基板30とシール材42とによって囲まれた空間に封入された、正または負の誘電異方性を有する液晶で構成されている。シール材42は、例えば熱硬化性または紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤からなる。シール材42には、素子基板10と対向基板30との間隔を一定に保持するための図示しないスペーサーが混入されている。
枠状に配置されたシール材42の内側には、素子基板10に設けられた遮光層22,26(図3参照)と、対向基板30に設けられた遮光層38,39とが配置されている。遮光層22,26,38,39は、枠状の周縁部を有し、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などで形成されている。枠状の遮光層22,26,38,39の内側は、複数の画素Pが配列された表示領域Eとなっている。画素Pは、例えば、略矩形状を有し、マトリックス状に配列されている。
表示領域Eは、液晶装置1において、実質的に表示に寄与する領域である。素子基板10に設けられた遮光層22,26は、表示領域Eにおいて、複数の画素Pの開口領域を平面的に区画するように、例えば格子状に設けられている。なお、液晶装置1は、表示領域Eの周囲を囲むように設けられた、実質的に表示に寄与しないダミー領域を備えていてもよい。
素子基板10におけるシール材42の表示領域Eと反対側の第1辺に沿って、データ線駆動回路51および複数の外部接続端子54が設けられている。また、その第1辺に対向する第2辺に沿ったシール材42の表示領域E側には、検査回路53が設けられている。
さらに、これらの2辺と直交し互いに対向する他の2辺に沿ったシール材42の内側には、走査線駆動回路52が設けられている。
検査回路53が設けられた第2辺のシール材42の表示領域E側には、2つの走査線駆動回路52を繋ぐ複数の配線55が設けられている。これらデータ線駆動回路51、走査線駆動回路52に繋がる配線は、複数の外部接続端子54に接続されている。また、対向基板30の角部には、素子基板10と対向基板30との間で電気的導通をとるための上下導通部56が設けられている。なお、検査回路53の配置はこれに限定されず、データ線駆動回路51と表示領域Eとの間のシール材42の内側に沿った位置に設けてもよい。
以下の説明では、データ線駆動回路51が設けられた第1辺に沿った方向をX軸とし、この第1辺と直交し互いに対向する他の2辺に沿った方向をY軸とする。X軸は、図1のA-A’線に沿った方向である。遮光層22,26は、X軸とY軸とに沿った格子状に設けられている。画素Pの開口領域は、遮光層22,26によって格子状に区画され、X軸とY軸とに沿ったマトリックス状に配列されている。
また、X軸およびY軸と直交し図1における手前に向かう方向をZ軸とする。なお、本明細書では、液晶装置1の対向基板30側表面の法線方向(Z軸)から見ることを「平面視」という。
図2に示すように、素子基板10の表示領域Eには、走査線2とデータ線3とが互いに交差するように形成され、走査線2とデータ線3との交差に対応して画素Pが設けられている。画素Pのそれぞれには、画素電極28と、スイッチング素子としてのTFT24とが設けられている。
TFT24のソース電極は、データ線駆動回路51から延在するデータ線3に電気的に接続されている。データ線3には、データ線駆動回路51から画像信号、言い換えればデータ信号S1,S2,…,Snが線順次で供給される。TFT24のゲート電極は、走査線駆動回路52から延在する走査線2の一部である。走査線2には、走査線駆動回路52から走査信号G1,G2,…,Gmが線順次で供給される。TFT24のドレイン電極は、画素電極28に電気的に接続されている。
画像信号S1,S2,…,Snは、TFT24を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線3を介して画素電極28に所定のタイミングで書き込まれる。このようにして画素電極28を介して液晶層40に書き込まれた所定レベルの画像信号は、対向基板30に設けられた図3に示す共通電極44との間に形成される液晶容量で一定期間保持される。
なお、保持された画像信号S1,S2,…,Snがリークするのを防止するため、走査線2に沿って形成された容量線4と画素電極28との間に蓄積容量5が形成され、液晶容量と並列に配置されている。このように、各画素Pの液晶に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルにより液晶の配向状態が変化する。これにより、図3に示す液晶層40に入射した光が変調されて階調表示が可能となる。
液晶層40を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。例えば、ノーマリーホワイトモードの場合、各画素Pの単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少する。ノーマリーブラックモードの場合、各画素Pの単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加し、全体として液晶装置1からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が射出される。
図3に示すように、液晶装置1は、素子基板10と、対向基板30と、素子基板10と対向基板30との間に挟持された液晶層40と、を有している。液晶装置1では、光は、対向基板30側から入射し、液晶層40を透過して、素子基板10側から射出される。
対向基板30は、第1基材31と、レンズ層33と、遮光層38と、中間層34と、遮光層39と、レンズ層35と、透光層37と、保護層43と、共通電極44と、配向膜45とを備えている。レンズ層33は、第1マイクロレンズML1を有している。レンズ層35は、第3マイクロレンズML3を有している。したがって、対向基板30は、第1マイクロレンズML1と第3マイクロレンズML3との2段のマイクロレンズを備えている。
第1基材31は、例えば、ガラスや石英などの光透過性を有する無機材料からなる。第1基材31の液晶層40側の一方面を、面31aとする。第1基材31は、面31aに形成された複数の凹部32を有している。各凹部32は、画素P毎に設けられている。凹部32の断面形状は、例えば、半円や半楕円などの曲面となっている。凹部32は、第1マイクロレンズML1のレンズ面を構成する。
レンズ層33は、凹部32を埋めて第1基材31の面31aを覆うように、凹部32の深さよりも厚く形成されている。レンズ層33は、光透過性を有し、第1基材31とは異なる屈折率を有する材料からなる。本実施形態では、レンズ層33は、第1基材31よりも屈折率が大きい無機材料からなる。このような無機材料としては、例えばSiONなどが挙げられる。
レンズ層33を形成する材料で凹部32を埋め込むことにより、第1マイクロレンズML1が構成される。すなわち、レンズ層33のうち凹部32を埋めて、光が入射する側である第1基材31側に突出する凸状の部分が第1マイクロレンズML1である。各第1マイクロレンズML1は、画素P毎に配置されている。レンズ層33の表面は、第1基材31の面31aに略平行で平坦な面となっている。なお、第1マイクロレンズML1に入射する入射光は、第1マイクロレンズML1の中心、即ち、曲面の焦点へ向けて集光される。
遮光層38は、レンズ層33における液晶層40側に設けられている。遮光層38は、第1マイクロレンズML1および第3マイクロレンズML3が配置された、図1に示す表示領域Eの周囲を囲むように設けられている。遮光層38は、例えば、金属や金属化合物などで形成される。遮光層38は、表示領域E内に、素子基板10の遮光層22および遮光層26に平面視で重なるように設けられていてもよい。この場合、遮光層38は、格子状、島状、またはストライプ状などに形成されていてもよいが、平面視で遮光層22および遮光層26よりも狭い範囲に配置されていることが好ましい。
中間層34は、レンズ層33と遮光層38とを覆うように形成されている。中間層34は、光透過性を有し、例えば、レンズ層35とほぼ同じ屈折率を有する無機材料からなる。このような無機材料としては、例えばSiONなどが挙げられる。中間層34は、第1マイクロレンズML1から第3マイクロレンズML3までの距離を所望の値に合わせる機能を有する。中間層34の層厚は、光の波長に応じたマイクロレンズML1の焦点距離などの光学条件に基づいて適宜設定される。
遮光層39は、中間層34上に、遮光層38と平面視で重なるように設けられている。遮光層39は、遮光層38と同じ材料で形成されている。
レンズ層35は、中間層34と遮光層39との上に形成されている。レンズ層35は、例えば、レンズ層33と同様の材料で形成されている。また、レンズ層35の屈折率は、レンズ層33の屈折率よりも大きいことが好ましい。
レンズ層35は、液晶層40側、言い換えれば、第1マイクロレンズML1とは反対側に突出する複数の凸部36を有している。凸部36は、第3マイクロレンズML3のレンズ面を構成する。すなわち、レンズ層35のうち凸部36が第3マイクロレンズML3である。各凸部36は、画素P毎に設けられ、各凹部32と平面視で重なるように配置されている。したがって、第3マイクロレンズML3は第1マイクロレンズML1と平面視で重なるように配置されている。凸部36の断面形状は、半円や半楕円などの曲面となっている。
透光層37は、凸部36同士の間や凸部36の周囲を埋めてレンズ層35を覆うように、凸部36の高さよりも厚く形成されている。透光層37は、光透過性を有し、例えば、レンズ層35よりも小さい屈折率を有する無機材料からなる。このような無機材料としては、例えばSiO2などが挙げられる。透光層37で凸部36を覆うことにより、液晶層40側に突出する凸形状の第3マイクロレンズML3が構成される。各第3マイクロレンズML3は、画素P毎に配置されている。
透光層37は、レンズ層35の表面の凹凸を平坦化するとともに、第3マイクロレンズML3から遮光層26までの距離を所望の値に合わせる機能を有する。透光層37の層厚は、光の波長に応じた第3マイクロレンズML3の焦点距離などの光学条件に基づいて適宜設定される。
透光層37を覆うように、保護層43が設けられている。共通電極44は、保護層43を覆うように設けられている。共通電極44は、複数の画素Pに跨って形成されている。共通電極44は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電膜からなる。配向膜45は、共通電極44を覆うように設けられている。
素子基板10は、第2基材11と、レンズ層14と、透光層21と、遮光層22と、絶縁層23と、TFT24と、絶縁層25と、遮光層26と、絶縁層27と、画素電極28と、配向膜29とを備えている。レンズ層14は、第2マイクロレンズML2を有している。すなわち、素子基板10は、第2マイクロレンズML2を備えている。したがって、本実施形態の液晶装置1は、第1マイクロレンズML1と第2マイクロレンズML2と第3マイクロレンズML3との3段のマイクロレンズを備えている。
素子基板10は、X-Y平面領域として、例えば、第1領域10aと第2領域10bとを有している。第1領域10aは、画素Pが配置された、図1に示す表示領域Eを含む領域である。第2領域10bは、第1領域10aの外側の領域である。
第2基材11は、例えば、ガラスや石英などの光透過性を有する材料からなる。第2基材11の液晶層40側の一方面を、面11aとする。第2基材11は、面11aにおける第1領域10aに形成された凹部12を有している。凹部12の底部12aには、複数の凹部13が設けられている。各凹部13は、画素P毎に設けられている。凹部13の断面形状は、中央に平坦部50を有する、例えば半円や半楕円などの曲面となっている。凹部13は、第2マイクロレンズML2のレンズ面を構成する。
レンズ層14は、第2基材11上の第1領域10aに、凹部12と凹部13とを埋めるように形成されている。レンズ層14は、光透過性を有し、第2基材11とは異なる屈折率を有する無機材料からなる。本実施形態では、レンズ層14の屈折率は、第2基材11の屈折率よりも大きく、かつ、レンズ層33およびレンズ層35の屈折率よりも小さい。このような無機材料としては、例えばSiONなどが挙げられる。
レンズ層14を形成する材料で凹部13を埋め込むことにより、第2マイクロレンズML2が構成される。すなわち、レンズ層14のうち凹部13を埋めて、光が出射される側である第2基材11側に突出する凸状の部分が第2マイクロレンズML2である。各第2マイクロレンズML2は、画素P毎に配置されている。第2マイクロレンズML2は、第1マイクロレンズML1および第3マイクロレンズML3と平面視で重なるように配置されている。
レンズ層14の表面14aは、第2領域10bにおける第2基材11の面11aと連続した平面を構成している。すなわち、レンズ層14は、第1領域10aに配置されており、第2領域10bには配置されていない。
透光層21は、第2基材11の面11aとレンズ層14の表面14aとを覆うように形成されている。透光層21は、光透過性を有し、例えば、第2基材11とほぼ同じ屈折率を有する、例えばSiO2などの無機材料からなる。透光層21は、レンズ層14を保護するとともに、第2マイクロレンズML2から第3マイクロレンズML3までの距離を所望の値に合わせる機能を有する。透光層21の層厚は、光の波長に応じた第2マイクロレンズML2の焦点距離などの光学条件に基づいて適宜設定される。
遮光層22は、透光層21上に設けられている。遮光層22は、上層の遮光層26に平面視で重なるように格子状に形成されている。遮光層22および遮光層26は、例えば、金属や金属化合物などで形成される。遮光層22および遮光層26は、素子基板10の厚さ方向(Z軸)において、TFT24を間に挟むように配置されている。遮光層22は、TFT24の少なくともチャネル領域と平面視で重なっている。
遮光層22により第2基材11側からのTFT24への光の入射が抑制され、遮光層26により液晶層40側からのTFT24への光の入射が抑制されるので、TFT24における光リーク電流の増大や光による誤動作を抑えることができる。遮光層22と遮光層26とで遮光領域Sが構成される。遮光層22に囲まれた開口部22a内の領域、および、遮光層26に囲まれた開口部26a内の領域は、平面視で互いに重なっており、画素Pの領域のうち光が透過する開口領域Tとなる。
絶縁層23は、透光層21と遮光層22とを覆うように設けられている。絶縁層23は、例えば、SiO2などの無機材料からなる。
TFT24は、絶縁層23上に設けられており、遮光層22および遮光層26と平面視で重なる領域に配置されている。TFT24は、画素電極28を駆動するスイッチング素子である。TFT24は、図示しない半導体層、ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極で構成されている。半導体層には、ソース領域、チャネル領域、およびドレイン領域が形成されている。チャネル領域とソース領域、又は、チャネル領域とドレイン領域との界面にはLDD(Lightly Doped Drain)領域が形成されていてもよい。
ゲート電極は、素子基板10において平面視で半導体層のチャネル領域と重なる領域に絶縁層25の一部、即ち、ゲート絶縁膜を介して形成されている。図示を省略するが、ゲート電極は、下層側に配置された走査線にコンタクトホールを介して電気的に接続されており、走査信号が印加されることによってTFT24をオン/オフ制御している。
絶縁層25は、絶縁層23とTFT24とを覆うように設けられている。絶縁層25は、例えば、SiO2などの無機材料からなる。絶縁層25は、TFT24の半導体層とゲート電極との間を絶縁するゲート絶縁膜を含む。絶縁層25により、TFT24によって生じる表面の凹凸が緩和される。絶縁層25上には、遮光層22と同様な遮光層26が設けられている。そして、絶縁層25と遮光層26とを覆うように、無機材料からなる絶縁層27が設けられている。
画素電極28は、絶縁層27上に、画素P毎に設けられている。画素電極28は、遮光層22の開口部22aおよび遮光層26の開口部26aに平面視で重なる領域に配置されている。画素電極28は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電膜からなる。配向膜29は、画素電極28を覆うように設けられている。液晶層40は、素子基板10側の配向膜29と対向基板30側の配向膜45との間に封入されている。
なお、図示を省略するが、平面視で遮光層22および遮光層26に重なる領域には、TFT24に電気信号を供給するための電極、配線、中継電極や、図2に示す蓄積容量5を構成する容量電極などが設けられている。
本実施形態に係る液晶装置1では、光源などから発せられた光は、第1マイクロレンズML1及び第3マイクロレンズML3を備える対向基板30側から入射し、第2マイクロレンズML2を備える素子基板10側から射出される。
なお、以下では、対向基板30を構成する第1基材31の表面の法線方向を単に「法線方向」という。「法線方向」は、図3のZ軸に沿った方向であり、素子基板10を構成する第2基材11の法線方向と略同一の方向である。
液晶装置1に入射する光のうち、法線方向に沿って1段目の第1マイクロレンズML1の中心に入射した光L1は、直進して2段目の第3マイクロレンズML3の中心に入射し、そのまま直進して液晶層40を透過する。そして、光L1は、画素Pの開口領域T内を透過して3段目の第2マイクロレンズML2の中心に入射し、平坦部50を直進して素子基板10側から射出される。
第1マイクロレンズML1の端部付近に法線方向に沿って入射した光L2は、仮にそのまま直進した場合、破線で示すように遮光層26で遮光されてしまうが、第1マイクロレンズML1の屈折力、即ち、第1基材31とレンズ層33との間の屈折率の差により、第1マイクロレンズML1の中心側へ屈折して第3マイクロレンズML3に入射する。そして、第3マイクロレンズML3に入射した光L2は、第3マイクロレンズML3の屈折力、即ち、レンズ層35と透光層37との間の屈折率の差により、第3マイクロレンズML3の中心側へさらに屈折し、法線方向に対して斜めに進んで開口領域T内を透過する。
第3マイクロレンズML3で屈折し法線方向に対して斜めに第2マイクロレンズML2に入射する光L2は、仮にそのまま直進した場合、破線で示すように第2マイクロレンズML2の中心に対して外側に向かい、画素Pの領域の外側へ広がる光となってしまう。しかしながら、第2マイクロレンズML2の屈折力(第2基材11とレンズ層14との間の屈折率の差)により、第2マイクロレンズML2に入射した光L2は、第2マイクロレンズML2の中心側へ曲げ戻されて、素子基板10側から射出される。
液晶装置1に入射する光の中には、光L3のように、法線方向に対して斜めに入射する光も存在する。第1マイクロレンズML1の端部付近に法線方向に対して斜めに、かつ、第1マイクロレンズML1の中心に対して外側に向かって入射した光L3は、仮にそのまま直進した場合、破線で示すように隣の画素P側に向かってしまうが、第1マイクロレンズML1の屈折力により第1マイクロレンズML1の中心側へ屈折して第3マイクロレンズML3に入射する。
第3マイクロレンズML3に入射した光L3は、仮にそのまま直進した場合、破線で示すように遮光層26で遮光される。しかしながら、第3マイクロレンズML3の屈折力により、第3マイクロレンズML3の中心側へ屈折して開口領域T内を透過して第2マイクロレンズML2に入射する。第2マイクロレンズML2に入射した光L3は、レンズの中央の平坦部50に入射する場合、開口領域T内の中心方向に曲げ戻され、素子基板10側から射出される。
仮に、第2マイクロレンズML2に平坦部50がなく半球状である場合、第2マイクロレンズML2によって光を曲げ過ぎてしまうことが考えられ、これにより、かえって斜め光が増えてしまう恐れがある。よって、液晶装置1から射出される光の広がりが大きいと、プロジェクターの投写レンズの有効投写領域以外の領域に照射される光が多くなるので、プロジェクターにおける光の利用効率やコントラスト比の低下を招いてしまう。
しかしながら、本実施形態では、第2マイクロレンズML2の中央に平坦部50を有することにより、画素Pの領域の外側に向かう光を曲げ戻す役割を有する。その結果、第2マイクロレンズML2で光の広がりを抑えて素子基板10側から射出するので、プロジェクターにおける光の利用効率とコントラスト比とを向上できる。
<第2マイクロレンズの構成>
次に、第2マイクロレンズML2の構成について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、第2マイクロレンズの概略平面図である。図5は、図4に示す第2マイクロレンズの概略断面図である。なお、図5には、第2マイクロレンズML2のX-Z断面を示すが、第2マイクロレンズML2のY-Z断面も同様の断面となる。
図4は、4つの画素Pを示している。図4に示すように、画素Pは、略矩形の平面形状を有している。このような形状を有する複数の画素Pは、X軸およびY軸において隣り合う画素P同士が互いに接するように配列されている。画素Pの周縁部には、遮光層22が配置されている。遮光層22は、X軸およびY軸において隣り合う画素P同士の境界に沿うように配置されている。画素Pにおいて、遮光領域Sの内側が、光が透過する開口領域Tとなっている。
画素Pの対角線の長さをDとし、画素PのX軸の1辺の長さをGとする。X軸における画素Pの配置ピッチはGとなる。画素Pの平面形状が正方形であるとすると、画素PのY軸の1辺の配置ピッチもGであり、画素Pの対角線の長さDは、配置ピッチGの√2倍である。
素子基板10が備える第2マイクロレンズML2のレンズ形状を構成する凹部13は、仮想的には2点鎖線で示す略円形の平面形状を有している。この第2マイクロレンズML2の凹部13の仮想的な外形は、画素Pの内接円よりも大きい。すなわち、第2マイクロレンズML2のレンズ径、言い換えれば、凹部13の直径Φは、画素Pの配置ピッチGよりも大きい。換言すれば、第2マイクロレンズML2のレンズ径Φは、例えば、画素Pの配置ピッチG×√2×95%である。また、第2マイクロレンズML2のX軸方向の長さ13aは、画素の配置ピッチGと同じである。
第2マイクロレンズML2、即ち凹部13の外周端部13bは、画素Pの対角線の方向においては画素P内に配置されているが、X軸およびY軸においては画素P内に配置されていない。すなわち、画素Pの対角線の方向において隣り合う第2マイクロレンズML2、即ち凹部13同士は互いに離間されているが、X軸およびY軸において隣り合う第2マイクロレンズML2、即ち凹部13同士は互いに接続されている。換言すれば、第2マイクロレンズML2の少なくとも一部は、隣り合う第2マイクロレンズML2と接している。
画素Pの対角線の方向において隣り合う第2マイクロレンズML2同士が互いに離間されているので、画素Pの4隅に、第2マイクロレンズML2と平面視で重ならない領域Paが存在する。この領域Paには、レンズ層14は配置されているが、レンズ面となる凹部13は配置されていない。
第2マイクロレンズML2は、レンズの中央に平坦部50を有する。平坦部50の大きさは、例えば、画素Pの対角線の長さの70%以下であり、かつ平坦部の最大長さが1μm以上である。この平坦部50の形状は、図4に示すように、例えば、Φ1μm以上の丸形状である。なお、平坦部50の形状は、丸形状に限定されるものではなく、多角形であってもよく、平坦な面積Lを一定以上有する形状である。
上記のような平坦部50を有することにより、光が曲がりすぎることが抑えられるので、第2マイクロレンズを透過する平行光を多くすることができる。具体的には、第2マイクロレンズの全体が曲面状である場合、第2マイクロレンズの中央に平行光が入射しても、光が屈折して射出し、投写レンズに入射する斜め光が多くなる。
しかしながら、本実施形態では、第2マイクロレンズの中央に平坦部50を有することにより、第2マイクロレンズの中央に入射した平行光はそのまま通過するため、投写レンズに入射する斜め光を抑えることができる。その結果、素子基板を通過した光のうち、投写レンズのケラレの量を抑えることができる。
更に、第2マイクロレンズML2が曲面状である場合と比べて、回折により生じる、例えば、1次回折光や2次回折光を少なくすることが可能となり、回折しない光である0次光を多くすることができる。その結果、素子基板10を通過した光のうち、平坦部50を通る屈折しない0次光の強度を高めることができ、投写レンズに入射する光の角度のばらつきを小さくできるので、コントラスト比を向上させることができる。
このように、本実施形態の液晶装置によれば、光の利用効率の向上とコントラスト比の向上とを両立させることができる。また、液晶装置1をプロジェクターの液晶ライトバルブとして用いる場合には、斜め光が抑えられることにより投写レンズに入射する光のケラレを抑制でき、プロジェクターにおける光の利用効率やコントラスト比の向上を図ることができる。
平坦部50では入射する平行光が屈折せずにそのまま透過するため、平坦部50の領域をできるだけ大きくすることが好ましい。しかしながら、上述したように第2マイクロレンズML2の径Φを対角線の長さDの95%以下とする場合、平坦部50の領域が大き過ぎると、第2マイクロレンズML2の曲面部の領域が相対的に小さくなる。そうすると、第2マイクロレンズML2の周縁部に入射して開口領域Tの中心側へ屈折される光が少なくなる。
そこで、平坦部50の距離を、画素Pの対角線の長さDの70%以下、かつ平坦部の最大長さを1μm以上とすることで、平行光がそのまま透過する領域を大きくしつつ、周縁部における光が屈折される領域を確保することができる。
また、図5に示すように、第2マイクロレンズML2の断面形状は、一部が半円や半楕円などの曲面を有すると共に、角部が丸く形成された略台形状である。なお、第2マイクロレンズML2の中心に平坦部50を有しない曲面状のレンズを通る光は、曲面で屈折されて斜め光となって射出する。
しかしながら、本実施形態のように、第2マイクロレンズML2の中心に平坦部50を有するので、屈折により生じる斜め光と、回折により生じる斜め光と、が少なくなり、光の利用効率を向上させることができる。言い換えれば、必要な光だけを曲げて射出させることができる。更に、平坦部50に入射する平行光をそのまま透過させる、即ち0次光の比率を多くすることができると共に、光の角度のばらつきが抑えられるので、液晶装置1のコントラスト比を向上させることができる。
このように、第2マイクロレンズML2の中央に平坦部50を有することにより、過剰に光を曲げることを抑えることができる。よって、回折光を少なくして回折成分の0次光の比率が多くなるようにしている。その結果、コントラスト比を向上させることができる。加えて、対向基板30側に配置された第1マイクロレンズML1や第3マイクロレンズML3よりも、素子基板10に配置された第2マイクロレンズML2のパワーを低くすることにより、コントラスト比を向上させることができる。
<電子機器>
次に、本実施形態に係る電子機器としてのプロジェクターの構成を説明する。図6は、プロジェクターの構成を示す模式図である。以下、プロジェクターの構成を、図6を参照しながら説明する。
図6に示すように、プロジェクター100は、偏光照明装置110と、2つのダイクロイックミラー104,105と、3つの反射ミラー106,107,108と、5つのリレーレンズ111,112,113,114,115と、3つの液晶ライトバルブ121,122,123と、クロスダイクロイックプリズム116と、投写レンズ117とを備えている。
偏光照明装置110は、例えば超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット101と、インテグレーターレンズ102と、偏光変換素子103とを備えている。ランプユニット101と、インテグレーターレンズ102と、偏光変換素子103とは、システム光軸Lxに沿って配置されている。
ダイクロイックミラー104は、偏光照明装置110から射出された偏光光束のうち、赤色光を反射させ、緑色光と青色光とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー105は、ダイクロイックミラー104を透過した緑色光を反射させ、青色光を透過させる。
ダイクロイックミラー104で反射した赤色光は、反射ミラー106で反射した後にリレーレンズ115を経由して液晶ライトバルブ121に入射する。ダイクロイックミラー105で反射した緑色光は、リレーレンズ114を経由して液晶ライトバルブ122に入射する。ダイクロイックミラー105を透過した青色光は、3つのリレーレンズ111,112,113と2つの反射ミラー107,108とで構成される導光系を経由して液晶ライトバルブ123に入射する。
光変調素子としての透過型の液晶ライトバルブ121,122,123は、クロスダイクロイックプリズム116の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ121,122,123に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調され、クロスダイクロイックプリズム116に向けて射出される。
クロスダイクロイックプリズム116は、4つの直角プリズムが貼り合わされて構成されており、その内面には赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投写光学系である投写レンズ117によってスクリーン130上に投写され、画像が拡大されて表示される。
液晶ライトバルブ121は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ122,123も同様である。液晶ライトバルブ121,122,123は、本実施形態に係る液晶装置1が適用されたものである。
本実施形態に係るプロジェクター100の構成によれば、複数の画素Pが高精細に配置されていても、光源からの入射光の利用効率が高く射出される光の広がりが抑えられる液晶装置1を液晶ライトバルブ121,122,123に備えているので、明るい表示と高いコントラストとを有するプロジェクター100を提供することができる。
以上説明したように、本実施形態の液晶装置1、及びプロジェクター100によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態によれば、液晶装置1は、第2マイクロレンズML2の中央に平坦部50を有するので、第1マイクロレンズML1及び第3マイクロレンズML3を通った光を過剰に曲げることを抑えることが可能となり、投写レンズによる光のケラレを少なくすることができる。よって、光の利用効率を向上させることができる。また、回折する光を少なくすることが可能となるので、コントラストを向上させることができる。
(2)本実施形態によれば、コントラストなど表示品質を向上させることが可能なプロジェクター100を提供することができる。
(変形例)
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
上記した実施形態では、対向基板30側に第1マイクロレンズML1と第3マイクロレンズML3とを備え、素子基板10側に第2マイクロレンズML2を備えているが、この形態に限定されず、対向基板30側に1枚のマイクロレンズを備え、素子基板10側にも1枚のマイクロレンズを備えるようにしてもよい。
上記した実施形態では、第2マイクロレンズML2の平面形状を仮想的に円形状にしたが、これに限定されず、例えば、画素Pに対応して4隅が丸い略矩形形状であってもよい。
上記した実施形態では、マイクロレンズの中心と画素の中心と、を同じにしているが、これに限定されず、マイクロレンズの中心と画素の中心とを異ならすように配置してもよいし、表示領域Eの中央から表示領域Eの外側に向かって徐々に第2マイクロレンズML2の中心位置がずれるように配置してもよい。また、RGBごとに異なるずれ量を変えるようにしてもよい。
以下に、実施形態から導き出される内容を記載する。
液晶装置は、第1基板と、前記第1基板と液晶層を介して対向して配置された第2基板と、画素が配置された表示領域を有し、前記第1基板から前記液晶層に光が入射する液晶装置であって、前記第1基板は、前記画素に対応して配置された第1マイクロレンズを有し、前記第2基板は、前記画素に対応して配置されたスイッチング素子と第2マイクロレンズと、を有し、前記第2マイクロレンズは、中央に平坦部を有することを特徴とする。
この構成によれば、第2マイクロレンズの中央に平坦部を有するので、第1マイクロレンズを通った光を過剰に曲げることを抑えることが可能となり、投写レンズに蹴られる光を少なくすることができる。よって、光の利用効率を向上させることができる。また、回折する光を少なくすることが可能となるので、コントラストを向上させることができる。
上記の液晶装置において、平面視における前記平坦部の最大長さは、1μm以上であることが望ましい。
この構成によれば、平坦部が上記のような長さを有するので、第1マイクロレンズを通った光を過剰に曲げることを抑えることが可能となり、投写レンズに蹴られる光を少なくすることができる。
上記の液晶装置において、平面視における前記平坦部の最大長さは、前記画素における対角線の長さの70%以下であることが望ましい。
この構成によれば、平坦部が上記のような長さを有するので、第1マイクロレンズを通った光を過剰に曲げることを抑えることが可能となり、投写レンズに蹴られる光を少なくすることができる。
上記の液晶装置において、前記第1基板は、前記第1マイクロレンズに対応して第3マイクロレンズが配置されていることが望ましい。
この構成によれば、第1基板に第1マイクロレンズ及び第3マイクロレンズを有する、即ち、対向するダブルレンズを有するので、入射した光を略平行光にすることができる。
電子機器は、上記に記載の液晶装置を備えることを特徴とする。
この構成によれば、コントラストなど表示品質を向上させることが可能な電子機器を提供することができる。