以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明が適用されるショベルの一例であるハイブリッド型ショベルの側面図である。
図1に示すハイブリッド型ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端に、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端にバケット6が取り付けられている。ブーム4,アーム5及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。また、ブーム4、アーム5及びバケット6でアタッチメントを構成している。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン11等の動力源が搭載される。
図2は、図1に示すハイブリッド型ショベルの駆動系の通常時における構成を示すブロック図である。図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は実線でそれぞれ示されている。
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。メインポンプ14は可変容量式油圧ポンプであり、斜板の角度(傾転角)を制御することでピストンのストローク長を調整し、吐出流量を制御することができる。
エンジン11には、エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出器11aが備えられている。エンジン回転数検出器11aにより検出されたエンジン回転数は、エンジンコントロールユニット(ECU:Engine Control Unit)11bに入力される。エンジンコントロールユニット11bは、検出されたエンジン回転数に基づいて、エンジン11のフィードバック制御を行なう。また、エンジンコントロールユニット11bは、検出されたエンジン回転数を後述する第2コントローラ30に送信する。
電動発電機12には、インバータ18Aを介して、蓄電器を含む蓄電系120が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。
インバータ18Aは、上述のとおり電動発電機12と蓄電系120との間に設けられ、第2コントローラ30からの指令に基づき、電動発電機12の運転制御を行う。これにより、インバータ18Aは、電動発電機12が力行運転をする際には、必要な電力を蓄電系120から電動発電機12に供給できる。また、電動発電機12が回生運転をする際には、電動発電機12により発電された電力を蓄電系120の蓄電器に蓄電できる。
蓄電系120は、インバータ18Aとインバータ20との間に配設されている。これにより、電動発電機12と旋回用電動機21の少なくともどちらか一方が力行運転を行っている際には、蓄電系120は、力行運転に必要な電力を供給できる。また、蓄電系120は、少なくともどちらか一方が回生運転を行っている際には、回生運転によって発生した回生電力を電気エネルギとして蓄積できる。
操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及びレバー操作検出部としての圧力センサ29にそれぞれ接続される。該圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行う第2コントローラ30及び油圧系の制御を行う第1コントローラ40に接続されている。
コントロールバルブ17は、ハイブリッド型ショベルにおける油圧系の制御を行う油圧制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。コントロールバルブ17は、各油圧アクチュエータ(油圧モータ1A及び1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9)の駆動状態を制御する方向制御弁(不図示)を有する。各方向制御弁は、操作者の操作装置26からの操作入力に応じてパイロット圧の供給を制御する電磁弁を介して供給されるパイロット圧に基づき、スプールが移動し、油路及び開度が変化される。これにより、各油圧アクチュエータが操作者の操作装置26からの操作入力に応じた所望の駆動状態に制御される。コントロールバルブ17は、上位制御部である第1コントローラ40からの制御信号に基づいて、上記電磁弁が開閉駆動されることにより各油圧アクチュエータを制御することができる。
第1コントローラ40は、ハイブリッド型ショベルにおける油圧系の制御を行う電子制御装置である。第1コントローラ40は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納された油圧制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
第1コントローラ40は、上述のとおり、操作者による操作装置26からの操作入力に応じた制御信号をコントロールバルブ17に出力することにより、コントロールバルブ17内の電磁弁の開閉駆動(ON/OFF切替)を制御する。なお、第1コントローラ40は、上述のとおり、圧力センサ29からの信号入力により操作者による操作装置26からの操作入力を検出する。
また、以下に説明する実施形態において、第1コントローラ40は、旋回機構2のメカニカルブレーキ23の作動又は解除の切替制御をすることができる。
図2に示すハイブリッド型ショベルは旋回機構を電動にしたもので、旋回機構2を駆動するために旋回用電動機21が設けられている。電動作業要素としての旋回用電動機21は、インバータ20を介して蓄電系120に接続されている。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回変速機24が接続される。旋回用電動機21と、インバータ20と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回変速機24とで負荷駆動系が構成される。
インバータ20は、上述のとおり旋回用電動機21と蓄電系120との間に設けられ、第2コントローラ30からの指令に基づき、旋回用電動機21の運転制御を行う。これにより、インバータ20は、旋回用電動機21が力行運転をする際には、必要な電力を蓄電系120から旋回用電動機21に供給できる。また、旋回用電動機21が回生運転をする際には、旋回用電動機21により発電された電力を蓄電系120の蓄電器に蓄電できる。
メカニカルブレーキ23は、機械的な制動装置であり、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させる。メカニカルブレーキ23は、第2コントローラ30により作動又は解除の切替制御が行われる。具体的には、旋回用電動機21の旋回駆動時、及びブーム4、アーム5、又はバケット6での作業時には解除され、それ以外のときには、作動される。また、第2コントローラ30、インバータ20、又は旋回用電動機21等に異常が発生した場合には、メカニカルブレーキ23は、作動状態となり、旋回機構2(上部旋回体3)は停止状態に保持される。メカニカルブレーキ23の詳細構成については、後述する。
第2コントローラ30は、ハイブリッド型ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。第2コントローラ30は、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
第2コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御(力行運転又は回生運転の切り替え)を行う。なお、圧力センサ29から供給される信号は、旋回機構2を旋回させるために操作装置26を操作した場合の操作量を表す信号に相当する。
第2コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、昇降圧制御部としての昇降圧コンバータ100(図3参照)を駆動制御することによるキャパシタ19の充放電制御を行う。また、第2コントローラ30は、キャパシタ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりキャパシタ19の充放電制御を行う。また、第2コントローラ30は、蓄電器電圧検出部(キャパシタ電圧検出部112)によって検出される蓄電器電圧値に基づいて、蓄電器(キャパシタ19)の充電率SOCを算出する。
また、第2コントローラ30は、制御信号ライン32によりインバータ20に接続されており、制御信号ライン32を介して制御信号を送信してインバータ20を制御する。
また、第2コントローラ30は、上述のとおり、メカニカルブレーキ23の作動又は解除の切替制御を行う。第2コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号に基づき、旋回用電動機21の旋回駆動時とブーム4、アーム5、又はバケット6での作業時は、メカニカルブレーキ23を解除する。また、それ以外のときは、メカニカルブレーキ23を作動させる。
図3は、蓄電系120の回路図である。蓄電系120は、蓄電器としてのキャパシタ19と、昇降圧コンバータ100とDCバス110とを含む。DCバス110は、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。キャパシタ19には、キャパシタ電圧値を検出するためのキャパシタ電圧検出部112と、キャパシタ電流値を検出するためのキャパシタ電流検出部113が設けられている。キャパシタ電圧検出部112とキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電圧値とキャパシタ電流値は、第2コントローラ30に供給される。
昇降圧コンバータ100は、電動発電機12、及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値を一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。DCバス110は、インバータ18A及び20と昇降圧コンバータ100との間に配設されており、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を行う。
昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、キャパシタ電圧検出部112によって検出されるキャパシタ電圧値、及びキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電流値に基づいて行われる。
以上のような構成において、アシストモータである電動発電機12が発電した電力は、インバータ18Aを介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。旋回用電動機21が回生運転して生成した回生電力は、インバータ20を介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。
昇降圧コンバータ100は、リアクトル101、昇圧用IGBT(Insulate Gate Bipolar Transistor)102A、降圧用IGBT102B、キャパシタ19を接続するための電源接続端子104、インバータ18A、20を接続するための出力端子106、及び、一対の出力端子106に並列に挿入される平滑用のコンデンサ107を備える。昇降圧コンバータ100の出力端子106とインバータ18A,20との間は、DCバス110によって接続される。
リアクトル101の一端は昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bの中間点に接続され、他端は電源接続端子104に接続される。リアクトル101は、昇圧用IGBT102AのON/OFFに伴って生じる誘導起電力をDCバス110に供給するために設けられている。
昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)をゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタで構成され、大電力の高速スイッチングが可能な半導体素子(スイッチング素子)である。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、第2コントローラ30により、ゲート端子にPWM電圧が印加されることによって駆動される。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bには、整流素子であるダイオード102a及び102bが並列接続される。
キャパシタ19は、昇降圧コンバータ100を介してDCバス110との間で電力の授受が行えるように、充放電可能な蓄電器であればよい。なお、図3には、蓄電器としてキャパシタ19を示すが、キャパシタ19の代わりに、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池、リチウムイオンキャパシタ、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源を用いてもよい。
電源接続端子104及び出力端子106は、キャパシタ19及びインバータ18A、20が接続可能な端子であればよい。一対の電源接続端子104の間には、キャパシタ電圧を検出するキャパシタ電圧検出部112が接続される。一対の出力端子106の間には、DCバス電圧を検出するDCバス電圧検出部111が接続される。
キャパシタ電圧検出部112は、キャパシタ19の電圧値Vcapを検出する。DCバス電圧検出部111は、DCバス110の電圧値Vdcを検出する。平滑用のコンデンサ107は、出力端子106の正極端子と負極端子との間に挿入され、DCバス電圧を平滑化するための蓄電素子である。この平滑用のコンデンサ107によって、DCバス110の電圧は予め定められた電圧に維持されている。
キャパシタ電流検出部113は、キャパシタ19の正極端子(P端子)側においてキャパシタ19に流れる電流の値を検出する検出手段であり、電流検出用の抵抗器を含む。すなわち、キャパシタ電流検出部113は、キャパシタ19の正極端子に流れる電流値I1を検出する。一方、キャパシタ電流検出部116は、キャパシタの負極端子(N端子)側においてキャパシタ19に流れる電流の値を検出する検出手段であり、電流検出用の抵抗器を含む。すなわち、キャパシタ電流検出部116は、キャパシタ19の負極端子に流れる電流値I2を検出する。
昇降圧コンバータ100において、DCバス110を昇圧する際には、昇圧用IGBT102Aのゲート端子にPWM電圧が印加され、降圧用IGBT102Bに並列に接続されたダイオード102bを介して、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴ってリアクトル101に発生する誘導起電力がDCバス110に供給される。これにより、DCバス110が昇圧される。
DCバス110を降圧する際には、降圧用IGBT102Bのゲート端子にPWM電圧が印加され、インバータ18A、20を介して供給される回生電力がDCバス110から降圧用IGBT102Bを通ってキャパシタ19に供給される。これにより、DCバス110に蓄積された電力がキャパシタ19に充電され、DCバス110が降圧される。
本実施形態では、キャパシタ19の正極端子を昇降圧コンバータ100の電源接続端子104に接続する電源ライン114に、当該電源ライン114を遮断することのできる遮断器としてリレー130−1が設けられる。リレー130−1は、電源ライン114へのキャパシタ電圧検出部112の接続点115とキャパシタ19の正極端子の間に配置されている。リレー130−1は第2コントローラ30からの信号により作動し、キャパシタ19からの電源ライン114を遮断することで、キャパシタ19を昇降圧コンバータ100から切り離すことができる。
また、キャパシタ19の負極端子を昇降圧コンバータ100の電源接続端子104に接続する電源ライン117に、当該電源ライン117を遮断することのできる遮断器としてリレー130−2が設けられる。リレー130−2は、電源ライン117へのキャパシタ電圧検出部112の接続点118とキャパシタ19の負極端子の間に配置されている。リレー130−2は第2コントローラ30からの信号により作動し、キャパシタ19からの電源ライン117を遮断することで、キャパシタ19を昇降圧コンバータ100から切り離すことができる。なお、リレー130−1とリレー130−2を一つのリレーとして正極端子側の電源ライン114と負極端子側の電源ライン117の両方を同時に遮断してキャパシタ19を切り離すこととしてもよい。
なお、実際には、第2コントローラ30と昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bとの間には、昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bを駆動するPWM信号を生成する駆動部が存在するが、図3では省略する。このような駆動部は、電子回路又は演算処理装置のいずれでも実現することができる。
以上のような構成のショベルにおいて、第2コントローラ30に異常が発生した場合、第2コントローラ30による全ての制御が停止され、電気駆動系の動作が停止することがある。この際、上述のとおり、旋回機構2のメカニカルブレーキ23が作動し、上部旋回体3を旋回させることができなくなる。また、旋回用電動機21の電動駆動部(インバータ20)や旋回用電動機21そのものに異常が発生した場合にも、第2コントローラ30による全ての制御が停止され、電気駆動系の動作が停止することがある。この際も、上述のとおり、旋回機構2のメカニカルブレーキ23が作動し、上部旋回体3を旋回させることができなくなる。
そこで、本発明の一実施形態では、上述のような異常が発生した場合でも、旋回用電動機21の制御部や電動駆動部以外の手段によりメカニカルブレーキ23を解除可能とすることで、上部旋回体3を所望の位置まで旋回させる。これを実現させるために、第2コントローラ30が異常状態である場合等に、ショベルの油圧系を制御する第1コントローラ40によりメカニカルブレーキ23の作動又は解除の切替制御が行えるように構成するとよい。
ここで、図4は、本実施形態に係るメカニカルブレーキ23を示す回路構成図である。なお、図2と同様に、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は実線でそれぞれ示されている。
メカニカルブレーキ23は、ブレーキピストン23a、ブレーキシリンダ23b、ブレーキスプリング23c、ブレーキディスク23d、ブレーキプレート23e、ブレーキケース23f等を含む。これらの部品は、旋回用電動機21と旋回変速機24との間の同一ハウジング(不図示)の内部に組み込まれている。また、これらの部品を旋回変速機24と旋回機構(不図示)との間に配置してもよい。
ブレーキピストン23aは、ブレーキシリンダ23bに内挿され、回転軸21A方向に伸縮可能に設けられている。ブレーキピストン23aは、ブレーキシリンダ23bにパイロットポンプ15によるパイロット圧が供給されることにより、縮小方向に作動する。これにより、後述するブレーキディスク23dとブレーキプレート23eとを回転軸21A方向に離間させ、メカニカルブレーキ23を解除状態にする。
ブレーキスプリング23cは、ブレーキピストン23aに対して伸長方向に付勢力を発生する。これにより、ブレーキシリンダ23bからパイロット圧が抜かれた状態(パイロット圧が供給されない状態)で、後述するブレーキディスク23dとブレーキプレート23eとを面接触させ、摩擦力による制動力を発生させる。すなわち、パイロット圧が供給されない状態では、常にメカニカルブレーキ23は作動状態となる。
ブレーキディスク23dは、旋回用電動機21の回転軸21Aと一体に設けられ、旋回用電動機21の回転に伴い、回転する。ブレーキディスク23dは、回転軸21A方向に移動可能な状態で、例えば、スプライン結合を介して回転軸21Aと結合されている。また、ブレーキプレート23eは、回転軸21A方向に移動可能な状態で、例えば、スプライン結合を介して固定部であるブレーキケース23fの内面に結合されている。上述のとおり、旋回用電動機21と一体で回転するブレーキディスク23dと固定部であるブレーキケース23fに結合されたブレーキプレート23eとがブレーキスプリング23cの付勢力により面接触することで制動力が発生する。
また、メカニカルブレーキ23は、レバーロック切替弁23Va、ブレーキ切替弁23Vb(第2切替弁)等を含む。これらの部品は、メカニカルブレーキ23を構成するブレーキピストン23a、ブレーキシリンダ23b、ブレーキスプリング23c、ブレーキディスク23d、ブレーキプレート23e、ブレーキケース23fとは別の位置に離間して配置されている。
レバーロック切替弁23Vaは、操作者によるゲートロックレバー(不図示)の操作に応じて、電磁ソレノイドのON/OFF切替が行われる電磁切替弁である。パイロットポンプ15からブレーキシリンダ23bにパイロット圧を供給する油圧回路中において、レバーロック切替弁23Vaは、パイロットポンプ15とブレーキ切替弁23Vbとの間に設けられ、該油圧回路の連通/非連通を切り替える。図中では、ゲートロックレバーが下ろされた状態が示されており、パイロットポンプ15からレバーロック切替弁23Vaに供給された圧油は、レバーロック切替弁23Vaにより遮断され、油圧回路は非連通となっている。レバーロック切替弁23Vaは、ゲートロックレバーが引き上げられた場合に油圧回路を連通させ、パイロットポンプ15から供給される圧油は、ブレーキ切替弁23Vbに圧送される。なお、ゲートロックレバーには、リミットスイッチが接続されており、ゲートロックレバーが引き上げられることにより該リミットスイッチから信号が出力され、該信号によりレバーロック切替弁23Vaは、連通状態となる。ゲートロックレバーは、操縦席への乗降部に設けられるゲートの開閉操作を行うための操作部であり、ゲートロックレバーを引き上げることにより該ゲートが閉じられ、ゲートロックレバーが下ろされると該ゲートが開放される。ゲートロックレバーが引き上げられた状態は、操作者が操縦席に着座し、操縦可能な状態にあると判断できる。そのため、ゲートロックレバーが引き上げられた場合にのみパイロット圧がブレーキシリンダ23bに供給されることにより、意図しないメカニカルブレーキ23の解除を防止している。また、レバーロック切替弁23Vaは、パイロットライン25の最上流位置に配置されている。これにより、ゲートロックレバーが引き上げられた場合にのみパイロット圧が操作装置26に供給されることにより、意図しない操作入力による各油圧アクチュエータの作動を防止している。
ブレーキ切替弁23Vbは、第2コントローラ30から入力されるメカニカルブレーキ23の解除指令信号(以下、単に解除指令信号と呼ぶ)に応じて、電磁ソレノイドのON/OFF切替が行われる電磁切替弁である。パイロットポンプ15からブレーキシリンダ23bにパイロット圧を供給する油圧回路中において、ブレーキ切替弁23Vbは、ゲートロック切替弁23Vaとブレーキシリンダ23bとの間に設けられ、該油圧回路の連通/非連通を切り替える。図中では、第2コントローラ30からの解除指令信号が入力されていない状態が示されており、パイロットポンプ15からレバーロック切替弁23Vaを介してブレーキ切替弁23Vbに供給された圧油は、ブレーキ切替弁23Vbにより遮断され、油圧回路は非連通となっている。ブレーキ切替弁23Vbは、第2コントローラ30から制御信号ライン34を通じて入力される解除指令信号により油圧回路を連通させ、レバーロック切替弁23Vaを介してパイロットポンプ15から供給される圧油は、ブレーキシリンダ23bに圧送される。これにより、上述したとおり、供給されたパイロット圧によりブレーキスプリング23cが圧縮され、ブレーキピストン23aが縮小作動し、ブレーキディスク23dとブレーキプレート23eとを離間させ、メカニカルブレーキ23は解除される。上述のとおり、旋回用電動機21の旋回駆動時とブーム4、アーム5、又はバケット6での作業時にメカニカルブレーキ23は解除される。そのため、第2コントローラ30からの上記解除指令信号は、操作者による操作装置26の操作が行われたことを示す圧力センサ29から供給される信号に基づき出力される。
第2コントローラ30が正常に稼動しているときには、上述のとおり、第2コントローラ30によりメカニカルブレーキ23の解除が可能である。しかしながら、第2コントローラ30に異常が発生した場合等には、第2コントローラ30による制御が停止され、メカニカルブレーキ23の解除ができない場合がある。そこで、本実施形態においては、ショベルの油圧系の制御を行う第1コントローラ40によるメカニカルブレーキ23の解除が可能となっている。
第2コントローラ等に異常が発生した場合において、第1コントローラ40は、第2コントローラ30、表示装置50、スイッチ60、ブレーキ切替弁23Vb等と接続されている。
第1コントローラ40には、第2コントローラ30に異常が発生した場合に、第2コントローラ30から制御信号ライン36を通じて異常信号(以下、単に異常信号と呼ぶ)が入力される。また、インバータ20や旋回用電動機21等に異常が発生した場合についても同様の異常信号が入力される。この場合、第2コントローラ30は、上述のとおり、メカニカルブレーキ23等の制御を中止するため、ブレーキ切替弁23Vbへの解除指令信号を出力することができない。よって、ブレーキシリンダ23bにパイロット圧の供給ができないため、メカニカルブレーキ23は作動状態となる。
第1コントローラ40は、第2コントローラ30からの上記異常信号に基づき、所定の画像信号を出力し、表示装置50に第2コントローラ30等に異常が発生している旨の表示(アラーム表示)を表示させる。表示装置50は、ショベルのキャビン10内に設けられた任意の表示手段であり、操作者が第2コントローラ30の異常を認識できる程度のアラーム表示が可能なものであれば、該アラーム表示専用のものか、他の表示との兼用のものかの別を問わない。これにより、操作者は、第2コントローラ30等に異常が発生したことを認識することができる。
スイッチ60は、第1コントローラ40にメカニカルブレーキ23の解除を要求する信号(以下、単に解除要求信号と呼ぶ)を出力する操作部であり、ショベルのキャビン10内等に設けられる。表示装置50に表示されたアラーム表示により第2コントローラ30等の異常発生を確認した操作者等は、該スイッチ60を操作することにより第1コントローラ40に上記解除要求信号を出力させることができる。また、スイッチ60は、第1コントローラ40にメカニカルブレーキ23の作動を要求する信号(以下、作動要求信号と呼ぶ)を出力する操作部でもあり、スイッチ60を操作する度に、上記解除要求信号と上記作動要求信号とを交互に出力する。なお、解除要求信号を出力するスイッチと作動要求信号を出力するスイッチの2つを設けてもよい。ここでは、油圧モータ1A、1Bの駆動モードとしての走行モード(高速低トルクモード又は低速高トルクモード)切替用に設けられる走行モード切替弁23Vc(第1切替弁)へ接続されていた第1コントローラ40からの制御信号ライン42をブレーキ切替弁23Vbへ繋ぎ替えて使用される。このため、スイッチ60は、走行モード切替スイッチを流用することができる。このため、制御信号ライン42の長さは、走行モード切替弁23Vcとブレーキ切替弁23Vbとの両方に接続可能なように、十分な長さである。また、ブレーキ切替弁23Vbのコネクタは、制御信号ライン42と接続可能なように走行モード切替弁23Vcのコネクタと同一形状である。なお、第1コントローラは、通常制御時において、上述の通り、制御信号ライン42によって接続された走行モード切替弁23Vcに対して、走行モード切替スイッチの操作に応じた走行モード切替指令を送信する。また、該切替指令に応じて、走行モード切替弁23Vcは、走行モードの切替信号(パイロット圧の供給/遮断による油圧信号)をコントロールバルブ17に送り、走行モードの切り替えを行う。
第1コントローラ40は、スイッチ60からの解除要求信号に基づき、制御信号ライン42を通じてブレーキ切替弁23Vbに解除指令信号を出力する。これにより、ブレーキ切替弁23Vbは油圧回路を連通させ、レバーロック切替弁23Vaを介してパイロットポンプ15から供給される圧油がブレーキシリンダ23bに圧送されることで、メカニカルブレーキ23を解除することができる。また、第1コントローラ40は、スイッチ60からの作動要求信号に基づき、制御信号ライン42を通じてブレーキ切替弁23Vbへの通電を遮断する。これにより、ブレーキ切替弁23Vbは油圧回路を非連通とし、ブレーキシリンダ23bにパイロット圧が供給されなくなるため、ブレーキスプリング23cの付勢力によりメカニカルブレーキ23を作動させることができる。
次に、第2コントローラ30に異常が発生した場合におけるメカニカルブレーキ23の解除の一例について説明する。図5は、第2コントローラ30に異常が発生した場合におけるメカニカルブレーキ23の解除までのショベルの動作及び操作者等による操作の流れをフローチャートに示したものである。なお、図5の例においては、第2コントローラ30に異常が発生したときに、上部旋回体3の旋回動作、又は、ブーム4、アーム5、もしくはバケット6等による作業が行われており、メカニカルブレーキ23が解除されているものとする。
まず、第2コントローラ30に異常が発生した場合、第2コントローラ30は、上述のとおり、第1コントローラ40に異常信号を出力する(ステップS1)。
第2コントローラ30に異常が発生した場合、第2コントローラ30は、制御動作を停止する。そのため、メカニカルブレーキ23のブレーキ切替弁23Vbへの解除指令信号が送信されず、ブレーキ切替弁23Vbへの通電が遮断される(ステップS2)。
そして、ブレーキ切替弁23Vbへの通電遮断によりブレーキ切替弁23Vbは油圧回路を非連通にする。そのため、パイロットポンプ15からパイロット圧がメカニカルブレーキ23のブレーキシリンダ23bに供給されず、メカニカルブレーキ23が作動する(ステップS3)。
ステップS2、S3と並行して、第2コントローラ30から異常信号を受信した第1コントローラ40は、所定の画像信号を出力し、表示装置50に第2コントローラ30に異常が発生した旨のアラーム表示を表示させる(ステップS4)。
図5の一例において、操作者は、自らメカニカルブレーキの解除は行わず、例えば、ショベルの保守を担当するエンジニア等の到着を待って、メカニカルブレーキ解除が行われる。そのため、まず、操作者は、ショベルのエンジン11を停止する(ステップS5)。
第2コントローラ30の異常が発生したショベルが作業を行う作業現場に到着した上記エンジニアは、再度、該ショベルのエンジン11を始動させる(ステップS6)。エンジン11が始動することにより、パイロットポンプ15が駆動され、パイロットポンプ15によるパイロット圧の供給が可能な状態となる。なお、以下のステップにおいて、ゲートロックレバーは既に引き上げられた状態になっており、ゲートロック切替弁23Vaは油圧回路を連通させているものとする。
図5の一例において、上述した第1コントローラ40にメカニカルブレーキ23の解除指令信号を要求するためのスイッチ60として専用のスイッチは設けられていない。そこで、他のスイッチを代用するため、エンジニアにより配線の繋ぎ替えが行われる(ステップS7)。具体的には、ブレーキ切替弁(ソレノイド)23Vbに入力される解除指令信号と同様に、ソレノイドへの通電を行う信号を第1コントローラ40に要求するスイッチを代用する。例えば、ショベルに設けられた走行モードを切り替えるための走行モード切替弁23Vcへの通電を要求する走行モード切替スイッチ等を代用することができる。第1コントローラ40から走行モード切替弁23Vcに繋がるコネクタに結合されている制御信号ライン42をブレーキ切替弁23Vbに繋がるコネクタに繋ぎ替える。このように、制御信号ライン42を繋ぎ替え可能にするため、走行モード切替弁23Vcはブレーキ切替弁23Vbの近傍に配置されている。具体的には、走行モード切替弁23Vcとブレーキ切替弁23Vbは、カウンタウェイト前側に形成されるエンジンルーム内の油圧ポンプが配置された空間に配置される。また、走行モード切替弁23Vcとブレーキ切替弁23Vbを、エンジンルーム内のラジエタが配置された空間に配置するようにしてもよい。このように、走行モード切替弁23Vcとブレーキ切替弁23Vbは、ショベルのカバー内の同一空間に配置される。これにより、走行モード切替スイッチ(スイッチ60)を操作することで、第1コントローラ40からブレーキ切替弁23Vbへの解除指令信号を出力させることが可能となり、結果として、メカニカルブレーキ23を解除することができる。また、既存のスイッチである走行モード切替スイッチやその配線等を代用することにより異常発生時に対応するためのコスト上昇や制御信号ラインの配線が追加されることによる制御信号ラインの複雑化等を回避することができる。
配線の繋ぎ替えが完了したら、エンジニアは、上記走行モード切替スイッチ(スイッチ60)のON操作を行う(ステップS8)。ここで、上記走行モード切替スイッチ(スイッチ60)のON操作により高速低トルクモードへ切り替るように設定されている場合、エンジニアは、スイッチ60により高速低トルクモードへの切り替え操作を行う。これにより、メカニカルブレーキ23が解除される(ステップS9)。
メカニカルブレーキ23が解除された後は、上部旋回体3を手動等で旋回させて、所望の位置に合わせることができる。例えば、ブーム4、アーム5、又はバケット6の向きを下部走行体1の走行方向に合わせるための調整を行うことができる。この際、エンジンコントロールユニット11bには異常は発生していないため、エンジン11の動力により各油圧アクチュエータを駆動させることは可能である。そのため、操作装置26を操作して、ブーム4、アーム5、又はバケット6を駆動し、ブーム4、アーム5、及びバケット6を水平方向に最も伸長した状態にするとよい。これにより、より小さい力でブーム4、アーム5、又はバケット6を手で押して上部旋回体3を旋回させることができる。
また、上部旋回体3を手動等で所望の位置まで旋回させた後、再度、上記走行モード切替スイッチ(スイッチ60)を操作(OFF操作)する。これにより、第1コントローラ40によりブレーキ切替弁23Vbへの通電が遮断されるため、メカニカルブレーキ23を作動させることができる。本実施形態では、第1コントローラ40から走行モード切替弁23Vcに繋がる制御信号ライン42をブレーキ切替弁23Vbへ繋ぎ替える例を示したが、走行モード切替弁23Vcではなく、他の油圧アクチュエータの駆動モードを切り替える切替弁等に繋がる制御信号ラインを用いてもよい。例えば、アタッチメントの高圧モード切替弁等、他の切替弁に接続された制御信号ラインを用いてもよい。高圧モード切替弁へ接続された制御信号ラインを用いる場合には、レバー26A、若しくは26Bの操作(中立か傾倒か)により、ブレーキ切替弁23Vbの制御を行うことができる。また、第1コントローラ40から上記他の切替弁に接続された制御信号ラインを用いる場合についても、上述したとおり、該制御信号ラインの長さは、他の切替弁とブレーキ切替弁23Vbとに接続可能なように、十分な長さであるとよい。また、他の切替弁とブレーキ切替弁23Vbとは、ショベルのカバー内の同一空間に配置されるとよい。
このように、操作者等は、旋回用電動機21の制御部(第2コントローラ30)や電動駆動部(インバータ20)等に異常が発生し、メカニカルブレーキ23が作動した場合であっても、スイッチ60を操作することで、メカニカルブレーキ23を解除することができる。これにより、上部旋回体3を手動等により所望の位置まで旋回させることができる。また、上部旋回体3を所望の位置まで旋回させた後、操作装置26を操作してショベルを所定の場所まで移動させたり、トラック等に載せて移送したりすることができる。
なお、図5の例において、スイッチ60として他のスイッチを代用する例を示したが、専用のスイッチが設けられてもよい。また、例えば、表示装置50がタッチパネル式のディスプレイである場合に、第2コントローラ30等に異常が発生した場合に操作可能な操作画面を表示装置50に表示させて、該操作画面を操作することにより第1コントローラ40に解除要求信号(及び作動要求信号)を出力することができるようにしてもよい。
また、図5の例において、第2コントローラ30に異常が発生した場合について説明したが、旋回用電動機21やインバータ20等に異常が発生した場合についても同様の操作等によりメカニカルブレーキ23の解除を行うことができる。
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。