図1は、本発明が適用されるハイブリッド式ショベルを示す側面図である。
ハイブリッド式ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの1例である掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
図2は、本発明の実施形態によるハイブリッド式ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細実線でそれぞれ示されている。
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
コントロールバルブ17は、ハイブリッド式ショベルにおける油圧系の制御を行う油圧制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。
電動発電機12には、電動発電機制御部としてのインバータ18を介して、蓄電装置としてのキャパシタを含む蓄電系120が接続される。また、蓄電系120には、電動発電機制御部としてのインバータ20を介して電動作業要素としての旋回用電動機21が接続されている。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回変速機24が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。旋回用電動機21と、インバータ20と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回変速機24とで負荷駆動系が構成される。
操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続されている。
コントローラ30は、ハイブリッドショベルの駆動制御を行う制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、Central Processing Unit(CPU)及び内部メモリを含む演算処理装置である。具体的には、コントローラ30は、内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムをCPUに実行させて各種機能を実現する。
図3は、蓄電系120の回路図である。蓄電系120は、蓄電装置としてのキャパシタ19、昇降圧コンバータ100、及びDCバス110とを含む。DCバス110は、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。キャパシタ19には、キャパシタ電圧値を検出するためのキャパシタ電圧検出部112と、キャパシタ電流値を検出するためのキャパシタ電流検出部113が接続されている。キャパシタ電圧検出部112とキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電圧値とキャパシタ電流値はコントローラ30に供給される。
昇降圧コンバータ100は、電動発電機12及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。DCバス110は、インバータ18及び20と昇降圧コンバータ100との間に配設されており、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を行う。
昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、キャパシタ電圧検出部112によって検出されるキャパシタ電圧値、及びキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電流値に基づいて行われる。
以上のような構成において、アシストモータである電動発電機12が発電した電力は、インバータ18を介して蓄電系120のDCバス110に供給された後、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給され、或いは、インバータ20を介して旋回用電動機21に供給される。また、旋回用電動機21が回生運転して生成した回生電力は、インバータ20を介して蓄電系120のDCバス110に供給された後、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給され、或いは、インバータ18を介して電動発電機12に供給される。また、キャパシタ19に蓄積された電力は、昇降圧コンバータ100及びDCバス110を介して電動発電機12及び旋回用電動機21の少なくとも一方に供給される。
昇降圧コンバータ100は、リアクトル101、昇圧用IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)102A、降圧用IGBT102B、キャパシタ19を接続するための電源接続端子104、及び、インバータ18、20を接続するための出力端子106を備える。昇降圧コンバータ100の出力端子106とインバータ18、20との間は、DCバス110によって接続される。
リアクトル101の一端は昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bの中間点に接続され、他端は電源接続端子104に接続される。リアクトル101は、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴って生じる誘導起電力をDCバス110に供給するために設けられている。
昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)をゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタで構成され、大電力の高速スイッチングが可能な半導体素子(スイッチング素子)である。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、コントローラ30により、ゲート端子にPWM電圧が印加されることによって駆動される。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bには、整流素子であるダイオード102a及び102bが並列接続される。
キャパシタ19は、昇降圧コンバータ100を介してDCバス110との間で電力の授受を行う充放電可能な蓄電装置の一例であり、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等を含む。なお、本実施形態では、蓄電装置としてキャパシタ19が用いられるが、キャパシタ19の代わりに、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源が用いられてもよい。
電源接続端子104は、キャパシタ19が接続可能な端子であればよく、出力端子106は、インバータ18、20が接続可能な端子であればよい。一対の電源接続端子104の間には、キャパシタ電圧を検出するキャパシタ電圧検出部112が接続される。一対の出力端子106の間には、DCバス電圧を検出するDCバス電圧検出部111が接続される。
キャパシタ電圧検出部112は、キャパシタ19の電圧値Vcapを検出する。DCバス電圧検出部111は、DCバス110の電圧値Vdcを検出する。平滑用のコンデンサ107は、出力端子106の正極端子と負極端子との間に挿入され、DCバス電圧を平滑化するための蓄電素子である。この平滑用のコンデンサ107によって、DCバス110の電圧は予め定められた電圧に維持されている。
キャパシタ電流検出部113は、キャパシタ19の正極端子(P端子)側においてキャパシタ19に流れる電流の値を検出する検出手段である。すなわち、キャパシタ電流検出部113は、キャパシタ19の正極端子に流れる電流値I1を検出する。
昇降圧コンバータ100において、DCバス110を昇圧する際には、昇圧用IGBT102Aのゲート端子にPWM電圧が印加され、降圧用IGBT102Bに並列に接続されたダイオード102bを介して、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴ってリアクトル101に発生する誘導起電力がDCバス110に供給される。これにより、DCバス110が昇圧される。
DCバス110を降圧する際には、降圧用IGBT102Bのゲート端子にPWM電圧が印加され、インバータ18、20を介して供給される回生電力がDCバス110から降圧用IGBT102Bを通ってキャパシタ19に供給される。これにより、DCバス110に蓄積された電力がキャパシタ19に充電され、DCバス110が降圧される。
本実施形態では、キャパシタ19の正極端子を昇降圧コンバータ100の電源接続端子104に接続する電源ライン114に、当該電源ライン114を遮断することのできる遮断器としてリレー130−1が設けられる。リレー130−1は、電源ライン114へのキャパシタ電圧検出部112の接続点115とキャパシタ19の正極端子との間に配置されている。リレー130−1はコントローラ30からの信号により作動し、キャパシタ19からの電源ライン114を遮断することで、キャパシタ19を昇降圧コンバータ100から切り離すことができる。
また、キャパシタ19の負極端子を昇降圧コンバータ100の電源接続端子104に接続する電源ライン117に、当該電源ライン117を遮断することのできる遮断器としてリレー130−2が設けられる。リレー130−2は、電源ライン117へのキャパシタ電圧検出部112の接続点118とキャパシタ19の負極端子との間に配置されている。リレー130−2はコントローラ30からの信号により作動し、キャパシタ19からの電源ライン117を遮断することで、キャパシタ19を昇降圧コンバータ100から切り離すことができる。なお、リレー130−1とリレー130−2を一つのリレーとして正極端子側の電源ライン114と負極端子側の電源ライン117の両方を同時に遮断してキャパシタ19を切り離すこととしてもよい。
なお、実際には、コントローラ30と昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bとの間には、昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bを駆動するPWM信号を生成する駆動部が存在するが、図3では省略する。このような駆動部は、電子回路又は演算処理装置のいずれでも実現することができる。
図4は、キャパシタ19の構成を示す概略図である。図4に示すように、蓄電装置としてのキャパシタ19は、複数の蓄電部としてのn個のキャパシタセル(以下、「セル」とも称する。)19−1〜19−n(nは2以上の整数)と蓄電管理装置140とを含む。なお、図4では、電気駆動系を実線、電気制御系を破線でそれぞれ示す。
蓄電管理装置140は、キャパシタ19の蓄電を管理する装置であり、主に、均等化回路部141及び均等化制御部142を含む。本実施形態では、蓄電管理装置140は、キャパシタ19から電力の供給を受けて常時動作可能な状態にある。なお、蓄電管理装置140は、24Vバッテリ等の外部バッテリから電力の供給を受けてもよい。また、蓄電管理装置140は、コントローラ30から離間して配置され、CAN等の通信規格に準拠する通信線145を介してコントローラ30に接続される。なお、蓄電管理装置140とコントローラ30とは無線通信を介して接続されてもよい。
また、本実施形態では、n個のキャパシタセル19−1〜19−nの全ては直列に接続され、全てのセルに対して一つの蓄電管理装置140が設けられている。しかしながら、直列に接続されたセルを一つのセルグループとし、複数のセルグループが直列又は並列に接続され、セルグループ毎に一つの蓄電管理装置が設けられてもよい。また、複数の蓄電管理装置を制御する上位の蓄電管理装置が設けられてもよい。
また、本実施形態では、n個のキャパシタセル19−1〜19−nのそれぞれの近傍にセル温度センサ50−1〜50−nが設置される。セル温度センサ50−1〜50−nのそれぞれは、例えばサーミスタで構成され、検出した値をコントローラ30に対して出力する。なお、セル温度センサは、複数のセルにつき1つ(例えば1つのセルグループにつき1つ)設置されてもよい。具体的には、直列に接続された8個のセルにつき1個のセル温度センサが設置されてもよい。この場合、各セル温度センサは、8個のセルを代表する1つのセルの温度を検出するため、例えば、直列に接続された8個のセルのうち端から4番目のセル又は5番目のセルの近傍に設置される。なお、セル温度センサは、端部にあるセルの近傍に設定されてもよい。
均等化回路部141は、均等化機能を実現する電気回路である。本実施形態では、均等化回路部141は、均等化制御部142による制御の下で均等化機能を実行する。均等化機能は、キャパシタセル19−1〜19−nのそれぞれのセル電圧のばらつきを小さくするためにキャパシタセル19−1〜19−nの一部又は全部を放電させる機能である。
具体的には、均等化回路部141−1〜141−nのそれぞれは、対応する1つのセル19−nの両端に接続されている。例えば、図4に示すように、特定のセル19−m(mは1以上n以下の整数)の2つの電極は均等化回路部141−mに接続されている。また、均等化回路部141−mは、バランス用スイッチ146−m及び放電抵抗148−mを有する。また、均等化回路部141−mは、セル19−mの2つの電極の間でバランス用スイッチ146−m及び放電抵抗148−mを直列に、且つ、セル19−mに対して並列に接続する。また、均等化回路部141−mは、セル19−mの電極間電圧を測定する電圧測定部149−mを含む。なお、均等化回路部は、セル温度センサと同様、複数のセルにつき1つ(例えば1つのセルグループにつき1つ)設置されてもよい。具体的には、直列に接続された8個のセルにつき1個の均等化回路部が設置されてもよい。この場合、均等化回路部は、8個のセルにつきバランス用スイッチ、放電抵抗、及び電圧測定部をそれぞれ1つずつ有する。
バランス用スイッチ146−nは、均等化のためのセル19−nの放電を制御する開閉器であり、ON(導通)状態のときにセル19−nを放電させ、OFF(遮断)状態のときにセル19−nの放電を停止させる。本実施形態では、バランス用スイッチ146−nは、FET(電界効果トランジスタ)で構成され、均等化制御部142からの制御信号に応じてON(導通)状態とOFF(遮断)状態とが切り替わる。
均等化制御部142は、均等化機能を制御する装置である。本実施形態では、均等化制御部142は、均等化回路部141−1〜141−nのそれぞれを制御する。具体的には、均等化制御部142は、均等化回路部141−1〜141−nからキャパシタセル19−1〜19−nのセル電圧測定値を個別に取得する。なお、キャパシタセル19−1〜19−nのセル電圧測定値は、電圧測定部149−1〜149−nによって個別に測定される。また、均等化制御部142は、バランス用スイッチ146−1〜146−nに対して制御信号を出力し、バランス用スイッチ146−1〜146−nのON(導通)/OFF(遮断)状態を個別に制御する。
より具体的には、均等化制御部142は、CAN等の通信規格に準拠する通信を介して均等化回路部141−1〜141−nのそれぞれに接続される。そして、均等化制御部142は、所定の周期で均等化回路部141−1〜141−nのそれぞれからセル電圧測定値を取得する。そして、均等化制御部142は、取得した1セットのセル電圧測定値の最大値、最小値、平均値等の統計値を算出し、算出した統計値をコントローラ30に対して出力する。1セットのセル電圧測定値は、キャパシタセル19−1〜19−nのそれぞれの直近のセル電圧測定値で構成される。なお、均等化制御部142は、取得したセル電圧測定値をそのままコントローラ30に対して出力してもよい。
また、均等化制御部142は、コントローラ30からの均等化開始指令(バランス開始指令)に応じて、キャパシタセル19−1〜19−nのうち所定条件を満たすセルに対応するバランス用スイッチ146−nに対して均等化開始信号(バランス開始信号)を出力する。例えば、均等化制御部142は、セル電圧が所定電圧より高いキャパシタセル19−nに対応するバランス用スイッチ146−nに対してバランス開始信号を出力する。所定電圧は、予め設定された電圧値であってもよく、均等化制御部142が算出したセル電圧の統計値(例えば平均値である。)であってもよい。
バランス開始信号を受けたバランス用スイッチ146−nは、キャパシタ19の充放電が行われているか否かにかかわらず、ON(導通)状態に切り替わり、対応するキャパシタセル19−nを放電させる。また、コントローラ30は、キーオン中に電力供給を受けて作動し、キーオフ中に電力供給が遮断されて停止する。そのため、キーオフ中にバランス用スイッチ146−nがバランス開始信号を受けることはない。しかしながら、キーオフ前にバランス開始信号を受けていた場合、バランス用スイッチ146−nは、キーオフ後もON(導通)状態を維持し、対応するキャパシタセル19−nの均等化(放電)を継続する。なお、「キーオン」は、ショベルを作動させた状態を意味し、例えば、エンジン作動中を含む。また、「キーオフ」は、キーオン以外の状態、すなわち、ショベルの作動を停止させた状態を意味する。
また、均等化制御部142は、コントローラ30からの均等化停止指令(バランス停止指令)に応じて、放電を開始させたキャパシタセル19−nに対応するバランス用スイッチ146−nの全てに対して均等化停止信号(バランス停止信号)を出力する。この場合、バランス停止信号を受けたバランス用スイッチ146−nは、対応するキャパシタセル19−nのセル電圧の大きさにかかわらず、OFF(遮断)状態に切り替わり、対応するキャパシタセル19−nの放電を停止させる。
また、均等化制御部142は、放電を開始させたキャパシタセル19−nのセル電圧がキーオン中に所定電圧まで低下すると、コントローラ30からのバランス停止指令の有無にかかわらず、そのキャパシタセル19−nに対応するバランス用スイッチ146−nに対してバランス停止信号を出力する。バランス停止信号を受けたバランス用スイッチ146−nは、OFF(遮断)状態に切り替わり、対応するキャパシタセル19−nの放電を停止させる。
また、均等化制御部142は、キーオフ中においては、キャパシタセル19−1〜19−nのそれぞれのセル電圧のばらつきが所定レベル未満となるまで、放電を開始させたキャパシタセル19−nの放電を継続させてもよい。具体的には、均等化制御部142は、キャパシタセル19−1〜19−nのそれぞれのセル電圧の最大セル電圧と最小セル電圧との差であるばらつき幅が所定電圧幅未満となるまで放電を開始させたキャパシタセル19−nの放電を継続させてもよい。
次に、コントローラ30の主制御部60について説明する。主制御部60は、ショベルの動きを制御する機能要素であり、下位の機能要素として均等化要否判定部600を含む。
均等化要否判定部600は、蓄電装置における複数のセルのセル電圧の均等化の要否を判定する機能要素である。本実施形態では、均等化要否判定部600は、キーオン中にキャパシタセル19−1〜19−nのそれぞれのセル電圧の均等化の要否を判定する。
具体的には、均等化要否判定部600は、同じ条件で測定されたキャパシタセル19−1〜19−nのそれぞれのセル電圧に関する情報に基づいて、セル電圧の均等化の要否を判定する。なお、均等化要否判定部600は、セル電圧に関する情報を蓄電管理装置140の均等化制御部142から取得する。また、セル電圧に関する情報は、キャパシタセル19−1〜19−nのそれぞれのセル電圧測定値、並びに、1セットのセル電圧測定値の最大値、最小値、及び平均値のうちの少なくとも1つを含む。
「同じ条件で測定される」は、セル電圧を大きく変動させる要因が存在しない状態で測定されること、例えば、キャパシタ19の充放電が行われていない状態で測定されることを含む。なお、「同じ条件で測定される」は、キャパシタセル19−1〜19−nのそれぞれのセル電圧が異なるタイミングで測定されることを許容する。本実施形態では、均等化制御部142は、所定の周期で、均等化回路部141−1〜141−nのそれぞれからセル電圧測定値を取得するためである。
本実施形態では、均等化要否判定部600は、キャパシタ19の充放電が行われていない状態のときに測定されたセル電圧に関する情報を用いる。なお、均等化要否判定部600は、「同じ条件で測定される」のであれば、例えば充放電量が小さい状態等、充放電が僅かに行われている状態のときに測定されたセル電圧に関する情報を用いてもよい。また、均等化要否判定部600は、充放電が行われていない状態を判別するために、ショベルの誤動作を防ぐためのゲートレバーの状態を用いてもよい。具体的には、均等化要否判定部600は、ゲートレバーがオフ状態であれば、充放電が行われていない状態であると判断してもよい。なお、ゲートレバーのオフ状態は、ゲートレバーが下げられた状態であり、各種操作レバーの操作が無効とされる状態である。また、ゲートレバーのオフ状態において、均等化要否判定部600は、昇降圧コンバータ100の制御を停止させ、DCバス110における電圧の変動がキャパシタ19の電圧に影響するのを防止してもよい。
そして、均等化要否判定部600は、キャパシタセル19−1〜19−nのそれぞれの直近のセル電圧測定値のばらつきの大きさに基づいてセル電圧の均等化の要否を判定する。具体的には、均等化要否判定部600は、例えば、キャパシタセル19−1〜19−nのそれぞれの直近のセル電圧測定値の最大セル電圧と最小セル電圧との差であるばらつき幅が所定電圧V1以上である場合にセル電圧測定値のばらつきが大きいと判断し、セル電圧の均等化が必要と判定する。
そして、均等化要否判定部600は、セル電圧の均等化が必要と判定した場合、蓄電管理装置140の均等化制御部142に対してバランス開始指令を出力する。一方で、均等化要否判定部600は、セル電圧の均等化が不要と判定した場合、蓄電管理装置140の均等化制御部142に対してバランス停止指令を出力する。なお、均等化要否判定部600は、セル電圧の均等化の要否の判定結果に応じてバランス開始指令又はバランス停止指令を二者択一的に出力するのではなく、別の手順でバランス開始指令又はバランス停止指令を出力するようにしてもよい。例えば、均等化要否判定部600は、既にバランス開始指令を出力している場合には、ばらつき幅が所定電圧V2(<V1)未満となった場合にバランス停止指令を出力するようにしてもよい。
バランス開始指令を受けた均等化制御部142は、上述のように、キャパシタセル19−1〜19−nのうち所定条件を満たすセルに対応するバランス用スイッチ146−nに対してバランス開始信号を出力する。また、バランス停止指令を受けた均等化制御部142は、放電を開始させたキャパシタセル19−nに対応するバランス用スイッチ146−nに対してバランス停止信号を出力する。なお、バランス停止指令を受けた均等化制御部142は、キャパシタセル19−1〜19−nの全てに対してバランス停止信号を出力してもよい。
図5は、コントローラ30が旋回用電動機21の駆動制御を行う際に用いられる機能要素を示す。なお、本実施形態では、コントローラ30は、主に、旋回制御部30A及び旋回制限制御部30Bを有する。
旋回制御部30Aは、速度指令生成部31、減算器32、PI制御部33、トルク制限部34、減算器35、PI制御部36、電流変換部37、旋回動作検出部38、及びPWM信号生成部40を有する。
速度指令生成部31は、圧力センサ29から入力される電気信号に基づいて速度指令値を生成する。また、速度指令生成部31は、旋回制限制御部30Bから入力される速度指令リミット値を用いて速度指令値を速度指令リミット値以下に制限する。具体的には、生成した速度指令値が速度指令リミット値以上であれば速度指令リミット値を速度指令値として採用し、生成した速度指令値が速度指令リミット値未満であればその速度指令値をそのまま採用する。そして、速度指令生成部31は、採用した速度指令値を減算器32に対して出力する。このように、速度指令生成部31は、速度指令値に制限を加えることによってハイブリッドショベルの操作性を維持することができる。
減算器32は、速度指令値と旋回速度の現在値との偏差をPI制御部33に対して出力する。旋回速度の現在値は、例えば旋回動作検出部38が算出する値である。なお、旋回動作検出部38は、旋回用電動機21の回転位置の変化に基づいて旋回速度値を算出し、減算器32に出力する。また、旋回用電動機21の回転位置の変化は、レゾルバ22によって検出される。
PI制御部33は、減算器32から入力される偏差に基づいてPI制御を実行する。具体的には、PI制御部33は、旋回速度の現在値が速度指令値に近づくようにトルク電流指令値を生成する。そして、PI制御部33は、生成したトルク電流指令値をトルク制限部34に対して出力する。
トルク制限部34は、旋回制限制御部30Bから入力されるトルクリミット値を用いて、PI制御部33から入力されるトルク電流指令値をトルクリミット値以下に制限する。具体的には、トルク電流指令値がトルクリミット値以上であればトルクリミット値をトルク電流指令値として採用し、トルク電流指令値がトルクリミット値未満であればそのトルク電流指令値をそのまま採用する。そして、トルク制限部34は、採用したトルク電流指令値を減算器35に対して出力する。
減算器35は、トルク電流指令値とトルク電流の現在値との偏差をPI制御部36に対して出力する。トルク電流の現在値は、例えば電流変換部37が算出する値である。なお、電流変換部37は、旋回用電動機21を流れるモータ駆動電流の値を検出し、検出したモータ駆動電流の値をトルク電流指令値に相当する値に変換して減算器35に出力する。
PI制御部36は、減算器35から入力される偏差に基づいてPI制御を実行する。具体的には、PI制御部36は、トルク電流の現在値がトルク電流指令値に近づくようにインバータ20を駆動するための駆動指令値を生成する。そして、PI制御部36は、生成した駆動指令値をPWM信号生成部40に対して出力する。
PWM信号生成部40は、PI制御部36から入力される駆動指令値に基づいて、インバータ20のトランジスタをスイッチング制御するためのPWM信号を生成し、生成したPWM信号をインバータ20に対して出力する。
旋回制限制御部30Bは、主に、確認部41、判断部42、抑制部43、及び通知部44を有する。
確認部41は、作業要素の動作の内容を確認する確認機能を有する機能要素である。本実施形態では、確認部41は、作業要素としての上部旋回体3の動作の内容を確認するため、インバータ20及び旋回用電動機21の動作の内容を確認する。
具体的には、確認部41は、旋回動作検出部38が出力する旋回速度の現在値に基づいて旋回用電動機21が停止している或いは停止しているも同然の状態か(以下、「非旋回状態」とする。)、旋回用電動機21が旋回している状態か(以下、「旋回状態」とする。)を確認する。より具体的には、確認部41は、例えば、旋回速度の現在値が所定値未満であれば、非旋回状態と判断する。また、確認部41は、旋回速度の現在値に基づく代わりに或いはそれに加えて、操作装置26の操作内容、速度指令値等に基づいて旋回状態か非旋回状態かを判断してもよい。
なお、非旋回状態は、旋回操作が行われていない場合の他、旋回操作が行われている場合にも発生し得る。具体的には、例えば旋回押し付け作業が行われている場合にも発生し得る。旋回押し付け作業は、上部旋回体3を旋回させてアタッチメントの側面を土砂等に接触させる作業であり、例えば、バケット6の外側面で土砂を押しのける際に実行される。
また、確認部41は、蓄電管理装置140の異常の有無を確認する。具体的には、確認部41は、セル温度センサ50−1〜50−nの出力に基づいて蓄電管理装置140の負荷レベルを確認する。より具体的には、確認部41は、例えば、蓄電管理装置140の負荷レベルが「通常レベル」、「制限レベル」、又は「停止レベル」の何れであるかを確認する。
「通常レベル」は、蓄電管理装置140に関連する要素の全てがセル電圧の均等化を継続するのに問題のない状態にあることを意味する。また、「制限レベル」は、セル電圧の均等化を停止させる必要はないがこのまま継続させると、蓄電管理装置140に関連する要素の少なくとも一部が問題を引き起こすおそれがある軽故障状態にあることを意味する。また、「停止レベル」は、セル電圧の均等化を停止させなければ、蓄電管理装置140に関連する要素の少なくとも一部が問題を引き起こすおそれがある重故障状態にあることを意味する。
このようなシステム設計により、確認部41は、「通常レベル」にある蓄電管理装置140の負荷レベルが「停止レベル」になる前の状態を「制限レベル」として確認できる。そのため、確認部41は、蓄電管理装置140の負荷レベルが「制限レベル」になったときに、「停止レベル」になったときとは異なる旋回用電動機21の制御が行われるのを可能にする。これは、旋回用電動機21の制御の自由度を高めることができるという点で有利である。蓄電管理装置140の負荷レベルが「停止レベル」になると旋回作業を停止させなければならず、実行可能な制御の内容が制限されるためである。
本実施形態では、確認部41は、例えば、セル温度センサ50−1〜50−nのそれぞれが出力するキャパシタセル19−1〜19−nのそれぞれの温度に基づいて均等化回路部141−1〜141−nのそれぞれの負荷レベルを「0」〜「5」の6段階で判定する。なお、セルの温度が高い程、対応する均等化回路部の負荷レベルは、最大レベル「5」に向かって増大する。また、本実施形態では、負荷レベル「0」、「1」、「2」が「通常レベル」に相当し、負荷レベル「3」、「4」が「制限レベル」に相当し、負荷レベル「5」が「停止レベル」に相当する。
また、本実施形態では、確認部41は、負荷レベル判定用テーブルを用いて負荷レベルを判定する。負荷レベル判定用テーブルは、例えば、セルの温度と「0」〜「5」の6段階のうちの何れかを対応付ける対応表である。確認部41は、取得したセルの温度を用いて負荷レベル判定用テーブルを参照し、「0」〜「5」の6段階のうちの何れかを負荷レベルとして導き出す。但し、確認部41は、演算式を用いて負荷レベルを導出してもよく、他の公知の手法を用いて負荷レベルを導出してもよい。
その後、確認部41は、均等化回路部141−1〜141−nのそれぞれの負荷レベルに基づいて蓄電管理装置140の負荷レベルを決定する。本実施形態では、確認部41は、均等化回路部141−1〜141−nのそれぞれの負荷レベルの中央値を蓄電管理装置140の負荷レベルとして決定する。これは、キャパシタセル19−1〜19−nのそれぞれの温度の中央値に基づいて蓄電管理装置140の負荷レベルを決定することを意味する。この場合、均等化回路部141−1〜141−nのそれぞれの負荷レベルの最大値が「5」であったとしても、蓄電管理装置140の負荷レベルは、「4」以下となり得る。すなわち、確認部41は、キャパシタセル19−1〜19−nの一部が高温になったとしても、蓄電管理装置140の負荷レベルを直ちに「制限レベル」又は「停止レベル」とすることはなく、旋回用電動機21の駆動が直ちに抑制或いは停止されるのを防止する。
或いは、確認部41は、セル温度センサ50−1〜50−nのうちの2以上の所定数のセル温度センサの出力が「停止レベル」の温度を示す場合、蓄電管理装置140の負荷レベルを「停止レベル」としてもよい。この場合、確認部41は、セル温度センサ50−1〜50−nのうちの所定数未満のセル温度センサのそれぞれの出力が「停止レベル」の温度を示す場合であっても、蓄電管理装置140の負荷レベルを「停止レベル」とすることはない。なお、確認部41は、セル温度センサ50−1〜50−nのうちの何れか1つの出力が「停止レベル」の温度を示す場合、蓄電管理装置140の負荷レベルを「制限レベル」としてもよい。
或いは、確認部41は、キャパシタセル19−1〜19−nのそれぞれの温度に基づくn個の均等化回路部141−1〜141−nのそれぞれの負荷レベルのうちの最大のものを蓄電管理装置140の負荷レベルとしてもよい。
或いは、確認部41は、電圧測定部149−1〜149−nのうちの何れか1つの出力が異常値を示す場合、又は、その出力を取得できない場合に蓄電管理装置140の負荷レベルを「停止レベル」としてもよい。
或いは、確認部41は、コントローラ30と蓄電管理装置140との間の通信異常を検出した場合に蓄電管理装置140の負荷レベルを「停止レベル」としてもよい。
なお、本実施形態では、負荷レベルのそれぞれが「0」〜「5」の6段階で判定されるが、5段階以下又は7段階以上で判定されてもよい。
判断部42は、旋回用電動機21の制御状態の切り替えを判断する判断機能を有する機能要素である。本実施形態では、判断部42は、確認部41が確認した蓄電管理装置140の負荷レベルに基づいて、旋回用電動機21の制御状態の切り替えを判断する。
図6は、旋回用電動機21の制御状態の状態遷移図であり、旋回用電動機21の制御状態の切り替えを図解する。
具体的には、判断部42は、確認部41の確認結果に応じて、旋回用電動機21の制御状態を「通常制御」、「制限制御」、「減速停止制御」、及び「停止制御(ブレーキON)」の4つの制御状態の何れかに設定する。
「通常制御」は、旋回用電動機21の駆動に制限を加えない制御状態を意味する。本実施形態では、速度指令リミット値及びトルクリミット値を最大値とする制御状態を意味する。
「制限制御」は、旋回用電動機21の駆動に制限を加える制御状態を意味する。本実施形態では、速度指令リミット値及びトルクリミット値を低減させた制御状態を意味する。なお、「制限制御」は、速度指令リミット値及びトルクリミット値の何れか一方を低減させた制御状態であってもよい。
「減速停止制御」は、旋回中の旋回用電動機21を停止させる制御状態を意味する。本実施形態では、トルクリミット値を最大値とし、且つ、速度指令リミット値をゼロとする制御状態を意味する。トルクリミット値を最大値とすることは、制動トルクができるだけ大きくなるようにして旋回用電動機21をできるだけ迅速に停止させることを意味する。
「停止制御(ブレーキON)」は、旋回用電動機21を停止させる制御状態を意味する。本実施形態では、メカニカルブレーキ23を作動させ、且つ、旋回用電動機21のサーボ機構をオフする制御状態を意味する。なお、サーボ機構のオフによって、旋回用電動機21に対する電流供給が遮断される。
また、判断部42は、所定の遷移条件が満たされた場合に、旋回用電動機21の制御状態を切り替える。
具体的には、旋回用電動機21の制御状態が「通常制御」の場合、旋回速度がほぼゼロになり、且つ、蓄電管理装置140の負荷レベルが「制限レベル」になると、判断部42は、「通常制御」を「制限制御」に切り替える。また、蓄電管理装置140の負荷レベルが「停止レベル」になると、判断部42は、「通常制御」を「減速停止制御」に切り替える。
また、旋回用電動機21の制御状態が「制限制御」の場合、旋回速度がほぼゼロになり、且つ、蓄電管理装置140の負荷レベルが「通常レベル」になると、判断部42は、「制限制御」を「通常制御」に切り替える。また、蓄電管理装置140の負荷レベルが「停止レベル」になると、判断部42は、「制限制御」を「減速停止制御」に切り替える。また、速度指令値が示す旋回方向とは反対の方向への旋回(以下、「逆旋回」とする。)が確認部41によって確認されたときにも、判断部42は、「制限制御」を「停止制御」に切り替える。
また、旋回用電動機21の制御状態が「減速停止制御」の場合、旋回速度がほぼゼロになるか、或いは、減速停止制御開始後の経過時間が設定時間に達すると、判断部42は、「減速停止制御」を「停止制御(ブレーキON)」に切り替える。
また、旋回用電動機21の制御状態が「停止制御(ブレーキON)」の場合、蓄電管理装置140の負荷レベルが「通常レベル」になると、判断部42は、「停止制御(ブレーキON)」を「通常制御」に切り替える。
図7は、蓄電管理装置140の負荷レベルと旋回用電動機21の制御状態との関係を示す。なお、図7上図は、旋回用電動機21が非旋回状態にある場合の関係を示し、図7下図は、旋回用電動機21が旋回状態にある場合の関係を示す。
非旋回状態(旋回速度≒0の状態)にある旋回用電動機21の制御状態が「通常制御」の場合、確認部41によって蓄電管理装置140の負荷レベルが「制限レベル」である「3」まで上昇したことが確認されると、判断部42は、「通常制御」を「制限制御」に切り替える。なお、図7では、制御状態の切り替えを実線の矢印で示す。
また、非旋回状態(旋回速度≒0の状態)にある旋回用電動機21の制御状態が「制限制御」の場合、確認部41によって蓄電管理装置140の負荷レベルが「停止レベル」である「5」まで上昇したことが確認されると、判断部42は、「減速停止制御」を介して「制限制御」を「停止制御」に切り替える。一方、確認部41によって蓄電管理装置140の負荷レベルが「通常レベル」である「2」まで低下したことが確認されると、判断部42は、「制限制御」を「通常制御」に切り替える。なお、判断部42は、「通常制御」を「制限制御」に切り替えるときの蓄電管理装置140の負荷レベルと、「制限制御」を「通常制御」に切り替えるときの蓄電管理装置140の負荷レベルとを異ならせることで制御状態が頻繁に切り替わるのを防止する。
また、非旋回状態(旋回速度≒0の状態)にある旋回用電動機21の制御状態が「停止制御」の場合に、確認部41によって蓄電管理装置140の負荷レベルが「通常レベル」である「2」まで低下したことが確認されると、判断部42は、「停止制御」を「通常制御」に切り替える。
一方、旋回用電動機21が旋回状態にある場合、すなわち、旋回用電動機21の旋回速度が所定値以上の場合、判断部42は、蓄電管理装置140の負荷レベルに関する条件が満たされたとしても、「通常制御」と「制限制御」との間の切り替えを保留する。なお、図7下図では、制御状態の切り替えが保留されたことを点線の矢印で示す。
具体的には、旋回状態にある旋回用電動機21の制御状態が「通常制御」の場合に、確認部41によって蓄電管理装置140の負荷レベルが「制限レベル」である「3」又は「4」まで上昇したことが確認されたとしても、判断部42は、「制限制御」への切り替えを保留する。旋回速度又は操作性の急変を防止するためである。その後、確認部41は、所定の制御周期毎に旋回用電動機21が非旋回状態にあるか旋回状態にあるかを確認する。そして、旋回用電動機21が旋回状態にある限り、判断部42は、保留状態を維持する。一方、確認部41によって旋回用電動機21が非旋回状態にあることが確認されると、判断部42は、保留状態を解除し、「通常制御」を「制限制御」に切り替える。なお、判断部42は、保留状態を解除した後、蓄電管理装置140の負荷レベルが依然として「制限レベル」である「3」又は「4」にあることが確認された場合に「通常制御」を「制限制御」に切り替えてもよい。また、旋回用電動機21が旋回状態であったとしても、確認部41によって蓄電管理装置140の負荷レベルが「停止レベル」である「5」まで上昇したことが確認された場合には、判断部42は、「減速停止制御」を介して「通常制御」を「停止制御」に切り替える。蓄電管理装置140への過負荷による悪影響を防止するためである。
同様に、旋回状態にある旋回用電動機21の制御状態が「制限制御」の場合に、確認部41によって蓄電管理装置140の負荷レベルが「通常レベル」である「2」、「1」又は「0」まで低下したことが確認されたとしても、判断部42は、「通常制御」への切り替えを保留する。旋回速度又は操作性の急変を防止するためである。その後、確認部41は、所定の制御周期毎に旋回用電動機21が非旋回状態にあるか旋回状態にあるかを確認する。そして、旋回用電動機21が旋回状態にある限り、判断部42は、保留状態を維持する。一方、確認部41によって旋回用電動機21が非旋回状態にあることが確認されると、判断部42は、保留状態を解除し、「制限制御」を「通常制御」に切り替える。なお、判断部42は、保留状態を解除した後、蓄電管理装置140の負荷レベルが依然として「通常レベル」である「2」、「1」、又は「0」にあることが確認された場合に「通常制御」を「制限制御」に切り替えてもよい。また、旋回用電動機21が旋回状態であったとしても、確認部41によって蓄電管理装置140の負荷レベルが「停止レベル」である「5」まで上昇したことが確認された場合には、判断部42は、「減速停止制御」を介して「制限制御」を「停止制御」に切り替える。蓄電管理装置140への過負荷による悪影響を防止するためである。
また、旋回状態にある旋回用電動機21の制御状態が「制限制御」の場合に、逆旋回が確認部41によって確認された場合にも、判断部42は、「減速停止制御」を介して「制限制御」を「停止制御」に切り替える。このような状況は、例えば、ハイブリッドショベルが傾斜地に位置し、その傾斜地を登る方向に上部旋回体3を旋回させ或いはその旋回を停止させる際に「制限制御」の開始によってトルクが制限された場合に生じ得る。このような状況においても、判断部42は、「減速停止制御」を介して「制限制御」を「停止制御」に切り替えることで、上部旋回体3の逆旋回を迅速に停止させることができる。
なお、本実施形態では、判断部42は、「停止制御」を「制限制御」に切り替えることはない。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、判断部42は、確認部41によって蓄電管理装置140の負荷レベルが「制限レベル」である「4」又は「3」まで低下したことが確認された場合に、「停止制御」を「制限制御」に切り替えてもよい。
抑制部43は、作業要素の動作の出力を少なくとも抑制する抑制機能を有する機能要素である。作業要素の動作の出力の抑制は、その出力を増大させないこと、その出力を低減させること、及び、その出力をほぼゼロにすることを含む。また、抑制機能は、作業要素の動作の出力をゼロにしてもよい。本実施形態では、抑制部43は、蓄電管理装置140の負荷レベルに応じて作業要素としての上部旋回体3の旋回動作を抑制し或いは停止させる。具体的には、抑制部43は、蓄電管理装置140の負荷レベルに応じて上部旋回体3の旋回速度を低減させ、或いは、上部旋回体3の旋回速度をほぼゼロにする。また、抑制部43は、蓄電管理装置140の負荷レベルに応じて上部旋回体3の旋回加速度(減速度を含む。)を低減させ、或いは、上部旋回体3の旋回加速度をほぼゼロにしてもよい。
本実施形態では、抑制部43は、判断部42が「通常制御」を「制限制御」に切り替えた場合、速度指令リミット値及びトルクリミット値の少なくとも一方を低減させる。その結果、インバータ20の出力は制限され、旋回用電動機21の旋回動作は「通常制御」のときに比べて抑制される。なお、旋回用電動機21の旋回動作の抑制度合い、すなわち、速度指令リミット値及びトルクリミット値の低減幅は、蓄電管理装置140の異常度合いに応じて、すなわち、蓄電管理装置140の負荷レベル、キャパシタセル19−1〜19−nのそれぞれの温度の中央値等に応じて設定されてもよい。例えば、速度指令リミット値及びトルクリミット値の低減幅は、蓄電管理装置140の負荷レベルが高い程、大きくなるように設定される。反対に、抑制部43は、判断部42が「制限制御」を「通常制御」に切り替えた場合、速度指令リミット値及びトルクリミット値を最大値とする。その結果、インバータ20の出力制限は解除され、旋回用電動機21の旋回動作は「通常制御」のときの状態に復帰する。
また、抑制部43は、判断部42が「通常制御」又は「制限状態」を「減速停止制御」に切り替えた場合、トルクリミット値を最大値とし、且つ、速度指令リミット値をゼロとする。その結果、旋回中の旋回用電動機21は、最大の制動トルクで停止させられる。
また、抑制部43は、判断部42が「減速停止制御」を「停止制御(ブレーキON)」に切り替えた場合、インバータ20に対してオフ指令を出力してインバータ20の出力を停止させ、且つ、メカニカルブレーキ23に対してブレーキ指令を出力してメカニカルブレーキ23による制動力を発生させる。その結果、旋回用電動機21は、旋回中であるか否かにかかわらず、インバータ20からの電流供給が強制的に遮断され、且つ、メカニカルブレーキ23によって強制的に制動させられる。
また、抑制部43は、判断部42が「停止制御(ブレーキON)」を「通常制御」に切り替えた場合、速度指令リミット値及びトルクリミット値を最大値とする。その結果、旋回用電動機21の旋回動作は「通常制御」のときの状態に復帰する。
通知部44は、作業要素の状態を操作者に通知する通知機能を有する機能要素である。本実施形態では、通知部44は、作業要素としての上部旋回体3の状態に応じて各種情報を出力する。
具体的には、通知部44は、蓄電管理装置140の負荷レベルが「制限レベル」に達する直前であると判断した場合に警告を出力する。本実施形態では、通知部44は、蓄電管理装置140の負荷レベルがレベル「2」に達した場合に、音声出力部(図示せず。)から警報を出力させ、且つ、「セル温度上昇」等の警告メッセージを表示部(図示せず。)に表示させる。なお、レベル「2」は、「通常レベル」のうち、「制限レベル」である「3」の直前のレベルである。
これにより、通知部44は、蓄電管理装置140が過負荷状態になるおそれがあることをより早期に操作者に伝えることができる。
また、通知部44は、判断部42が制御状態を「制限制御」に切り替える際に、旋回用電動機21の制御状態が「制限制御」になることを操作者に通知する。本実施形態では、通知部44は、「制限運転中」等のメッセージを表示部に表示させる。なお、通知部44は、制御状態が「制限制御」であることを知らせる特定の警告音を音声出力部から出力させてもよい。
また、通知部44は、判断部42が制御状態を「減速停止制御」に切り替える際に、旋回用電動機21の制御状態が「減速停止制御」になることを操作者に通知する。本実施形態では、通知部44は、「強制減速中」等のメッセージを表示部に表示させる。なお、通知部44は、制御状態が「減速停止制御」であることを知らせる特定の警告音を音声出力部から出力させてもよい。
また、通知部44は、判断部42が制御状態を「停止制御(ブレーキON)」に切り替える際に、旋回用電動機21の制御状態が「停止制御(ブレーキON)」になることを操作者に通知する。本実施形態では、通知部44は、「強制停止中」等のメッセージを表示部に表示させる。なお、通知部44は、制御状態が「停止制御(ブレーキON)」であることを知らせる特定の警告音を音声出力部から出力させてもよい。また、通知部44は、旋回用電動機21の制御状態が「通常状態」に復帰するまでの残り時間を推定し、その残り時間を表示部に表示させてもよい。これにより、操作者は、IGオフする必要なしに旋回動作を再開できることを認識できる。
これにより、通知部44は、旋回用電動機21の制御状態が「制限制御」で且つ逆旋回が発生した場合に旋回用電動機21が強制的に減速或いは停止させられるときにも、その減速又は停止が「減速停止制御」又は「停止制御(ブレーキON)」によるものであることを操作者に伝えることができる。なお、通知部44は、減速又は停止の原因が逆旋回であることを出力してもよい。
図8は、旋回制限制御部30Bによる制御の流れの一例を示す。具体的には、図8は、セル温度(中央値)、蓄電管理装置140の負荷レベル、トルクリミット値、及び速度指令リミット値の時間的推移を示す。なお、セル温度(中央値)は、キャパシタセル19−1〜19−nのそれぞれの温度の中央値を意味する。
時刻t0において、ハイブリッドショベルの操作者は、操作装置26を用いて旋回操作を開始する。このとき、旋回用電動機21の制御状態は「通常制御」にあり、蓄電管理装置140の負荷レベルは「通常レベル」にある。また、トルクリミット値は、最大値であるT1[%]に設定され、且つ、速度指令リミット値は、最大値である100[%]に設定されている。なお、トルクリミット値の最大値T1[%]は、定格トルク値に相当する100[%]より大きい値である。また、確認部41、判断部42、抑制部43、及び通知部44は、それぞれが担当する処理を所定の制御周期で繰り返し実行する。
時刻t1においてセル温度(中央値)が制限レベル移行閾値に達すると、確認部41は、蓄電管理装置140の負荷レベルが「制限レベル」である「3」まで上昇したことを確認する。なお、制限レベル移行閾値は、蓄電管理装置140の負荷レベルを「通常レベル」から「制限レベル」に切り替える際の条件となる境界温度である。また、確認部41は、旋回用電動機21が非旋回状態にあるか旋回状態にあるかを確認する。
判断部42は、蓄電管理装置140の負荷レベルが「制限レベル」にあり、且つ、旋回用電動機21が非旋回状態にあると確認された場合、旋回用電動機21の制御状態を「通常制御」から「制限制御」に切り替える。一方、判断部42は、蓄電管理装置140の負荷レベルが「制限レベル」であっても、旋回用電動機21が旋回状態であれば、「通常制御」から「制限制御」への切り替えを保留する。
旋回用電動機21が時刻t1において旋回状態であったとしても、その後に旋回操作レバーが中立位置に戻され、時刻t2において非旋回状態となった場合、判断部42は、保留状態を解除し、制御状態を「通常制御」から「制限制御」に切り替える。なお、判断部42は、保留状態を解除した後、蓄電管理装置140の負荷レベルが依然として「制限レベル」であると確認された場合に、制御状態を「通常制御」から「制限制御」に切り替えてもよい。
抑制部43は、制御状態が「通常制御」から「制限制御」に切り替えられると、トルクリミット値をT2[%](T1>T2>100)まで低減させ、且つ、速度指令リミット値をV1[%](V1<100)まで低減させる。なお、図8は、時刻t1において「通常制御」から「制限制御」への切り替えが保留され、且つ、時刻t2においてその保留状態が解除されるトルクリミット値及び速度指令リミット値の推移を点線で示す。
通知部44は、判断部42が制御状態を「制限制御」に切り替える際に、「制限運転中」のメッセージを表示部に表示させる。
その後、時刻t3においてセル温度(中央値)が通常レベル復帰閾値に達すると、確認部41は、蓄電管理装置140の負荷レベルが「通常レベル」である「2」まで低下したことを確認する。なお、通常レベル復帰閾値は、蓄電管理装置140の負荷レベルを「制限レベル」から「通常レベル」に切り替える際の条件となる境界温度である。また、確認部41は、旋回用電動機21が非旋回状態にあるか旋回状態にあるかを確認する。
判断部42は、蓄電管理装置140の負荷レベルが「通常レベル」にあり、且つ、旋回用電動機21が非旋回状態にあると確認された場合、旋回用電動機21の制御状態を「制限制御」から「通常制御」に切り替える。一方、判断部42は、蓄電管理装置140の負荷レベルが「通常レベル」であっても、旋回用電動機21が旋回状態であれば、「制限制御」から「通常制御」への切り替えを保留する。
旋回用電動機21が時刻t3において旋回状態であったとしても時刻t4において非旋回状態となった場合、判断部42は、保留状態を解除し、制御状態を「制限制御」から「通常制御」に切り替える。なお、判断部42は、保留状態を解除した後、蓄電管理装置140の負荷レベルが依然として「通常レベル」であると確認された場合に、制御状態を「制限制御」から「通常制御」に切り替えてもよい。
抑制部43は、制御状態が「制限制御」から「通常制御」に切り替えられると、トルクリミット値をT1に復帰させ、且つ、速度指令リミット値を100[%]に復帰させる。なお、図8は、時刻t3において「制限制御」から「通常制御」への切り替えが保留され、且つ、時刻t4においてその保留状態が解除されるトルクリミット値及び速度指令リミット値の推移を点線で示す。
通知部44は、判断部42が制御状態を「通常制御」に切り替える際に、表示部に表示された「制限運転中」のメッセージを消去する。なお、通知部44は、制御状態が「通常制御」に切り替えられたことを音声で操作者に伝えてもよい。
以上の構成により、本発明の一実施形態によるハイブリッドショベルでは、蓄電管理装置140の負荷レベルが「通常レベル」から「制限レベル」になると、コントローラ30は、旋回用電動機21の動きを抑制する。また、蓄電管理装置140の負荷レベルが「制限レベル」になっても、旋回用電動機21が旋回状態であれば、その抑制の実行を保留する。なお、旋回用電動機21が非旋回状態であれば、その抑制の実行を保留しない。これにより、セル電圧の均等化を実行する蓄電管理装置140で異常が発生した場合であっても旋回用電動機21を適切に制御できる。また、旋回速度の急変を防止でき、より適切なタイミングで上部旋回体3の旋回動作を抑制或いは停止できる。また、蓄電管理装置140の負荷レベルが比較的上昇し易い場合であっても、旋回用電動機21の停止を回避しながら旋回用電動機21を連続的に動作させることができ、旋回用電動機21の小型化を促進できる。
また、コントローラ30は、確認機能を有する確認部41、判断機能を有する判断部42、及び抑制機能を有する抑制部43を別個独立の機能要素として有する。そのため、各機能の独立性を高め、各機能の改良等の効率を高めることができる。但し、確認部41、判断部42、及び抑制部43は、物理的に分離されている必要はない。また、CPU、内部メモリ等の処理部が個別に用意される必要もない。個々の機能を実現するために、ソフトウェア的にプログラムされ、或いは、ハードウェア的に構成されていれば十分である。
また、判断部42は、抑制を保留した後に、制御周期毎に得られる確認部41の確認結果に基づいて、その保留状態を維持するか解除するかを判断し、その判断結果に応じて保留状態の維持又は解除を実行してもよい。これにより、コントローラ30は、「通常制御」から「制限制御」への切り替わりを保留した場合であっても、条件が満たされ次第、速やかに「通常制御」を「制限制御」に切り替えることができる。
また、判断部42は、保留状態を解除した後、抑制機能による抑制を実行するか否かを改めて判断してもよい。これにより、判断部42は、例えば、蓄電管理装置140の負荷レベルが「通常レベル」に戻っているにもかかわらず「通常制御」を「制限制御」に切り替えるといった無駄な切り替えを防止できる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述の実施形態において、本発明は、作業要素としての上部旋回体3の旋回動作を適切なタイミングで抑制或いは停止させるために用いられる。しかしながら、本発明は、この構成に限定されるものではない。例えば、本発明は、他の電動作業要素の動作を適切なタイミングで抑制或いは停止させるために用いられてもよい。
また、上述の実施形態において、抑制部43は、判断部42が「通常制御」を「制限制御」に切り替えた場合、旋回用電動機21の駆動に制限を加えるために、速度指令生成部31に対する速度指令リミット値、及び、トルク制限部34に対するトルクリミット値を低減させる。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。抑制部43は、例えば、PI制御部36に対して駆動指令リミット値を出力し、PI制御部36が出力する駆動指令値を低減させることで旋回用電動機21の駆動を制限してもよい。また、抑制部43は、PWM信号生成部40に対して制御信号を出力し、PWM信号生成部40が出力するPWM信号のデューティ比を低減させることで旋回用電動機21の駆動を制限してもよい。また、抑制部43は、インバータ20に対して制御信号を出力し、インバータ20が出力するモータ駆動電流を低減させることで旋回用電動機21の駆動を制限してもよい。
また、上述の実施形態において、抑制部43は、判断部42が「通常制御」又は「制限状態」を「減速停止制御」に切り替えた場合、旋回中の旋回用電動機21を最大の制動トルクで停止させるために、トルクリミット値を最大値とし、且つ、速度指令リミット値をゼロとする。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。抑制部43は、例えば、PWM信号生成部40に対して制御信号を出力し、PWM信号生成部40が出力するPWM信号のデューティ比を増大させることで旋回中の旋回用電動機21を最大の制動トルクで停止させてもよい。また、抑制部43は、インバータ20に対して制御信号を出力し、インバータ20が出力するモータ駆動電流を増大させることで旋回中の旋回用電動機21を最大の制動トルクで停止させてもよい。
また、蓄電管理装置140は、CPU等を備える制御装置として構成されてもよい。この場合、蓄電管理装置140は、コントローラ30を介さずに旋回用電動機21の駆動を抑制し或いは停止させてもよい。
また、蓄電管理装置140の「異常」は、蓄電装置の電力の授受を抑制すべき事象が生じた場合を総じて指してもよい。そして、コントローラ30は、蓄電管理装置140で異常が発生した場合に、旋回用電動機21の駆動を抑制し或いは停止させることで蓄電装置の電力の授受を抑制できる。また、蓄電管理装置140の「異常度合い」は、異常のレベルに程度の違いが存在することを表し、例えば、蓄電装置の電力の授受を完全に停止させるべきレベル、蓄電装置の電力の授受を部分的に抑制させるべきレベル、それらの中間のレベル等を含み得る。