以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
まず、本発明の一実施形態に係るハイブリッドショベルの全体構成及び駆動系の構成について説明する。図1は、一実施形態に係るショベルを示す側面図である。
図1に示すハイブリッドショベルにおける下部走行体1には、旋回機構2を介して作業要素としての上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端には、バケット6が取り付けられている。アタッチメントとしてのブーム4、アーム5、及び、バケット6は、アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及び、バケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。また、上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
図2は、図1に示すハイブリッドショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細い実線でそれぞれ示されている。
エンジン11と、アシストモータとしての電動発電機12は、減速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。減速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてのメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続されている。なお、電動発電機12には、インバータ18を介して、蓄電装置を含む蓄電系120が接続される。
メインポンプ14は、高圧油圧ライン16を介して作動油をコントロールバルブ17に供給する油圧ポンプであり、例えば、斜板式可変容量型油圧ポンプである。メインポンプ14は、斜板の角度(傾転角)を変更することでピストンのストローク長を調整し、吐出流量、すなわち、ポンプ出力を変化させることができる。メインポンプ14の斜板は、レギュレータ(不図示)により制御される。レギュレータは、電磁比例弁(不図示)に対する制御電流の変化に対応して、斜板の傾転角を変化させる。例えば、制御電流を増加させることにより、レギュレータは、斜板の傾転角を大きくして、メインポンプ14の吐出流量を多くする。また、制御電流を減少させることにより、レギュレータは、斜板の傾転角を小さくして、メインポンプ14の吐出流量を少なくする。
パイロットポンプ15は、パイロットライン25を介して各種油圧制御機器に作動油を供給するための油圧ポンプであり、例えば、固定容量型油圧ポンプである。
コントロールバルブ17は、ハイブリッドショベルにおける油圧系の制御を行う油圧制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)、油圧モータ1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及び、バケットシリンダ9等の各種アクチュエータは、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。なお、以下の説明では、油圧モータ1A(右用)、油圧モータ1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及び、バケットシリンダ9を集合的に「油圧アクチュエータ」と呼ぶ場合がある。
操作装置26は、各種アクチュエータ(油圧アクチュエータ、及び、後述する電動アクチュエータとしての旋回用電動機21)を操作するための操作手段であり、操作量、操作方向等の操作内容に応じたパイロット圧を発生させる。また、操作装置26は、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、操作装置26が発生させたパイロット圧を電気信号に変換し、変換した電気信号を後述するコントローラ30に対して出力する。操作装置26は、例えば、各油圧アクチュエータを操作するための油圧系操作部(油圧系操作レバー、油圧系操作ペダル等)、及び、後述する旋回用電動機21を操作するための旋回操作レバーとを含み、操作方向を異にする形で、油圧系操作レバーと旋回操作レバーとは、兼用されてもよい。コントロールバルブ17は、操作装置26が発生させたパイロット圧に応じて各種アクチュエータ(各油圧アクチュエータ)に対応するスプール弁を動かし、メインポンプ14が吐出する作動油を各種アクチュエータに供給する。
図2に示すハイブリッドショベルは、旋回機構を電動化したものであり、旋回機構2を駆動するために旋回モータとしての旋回用電動機21を有する。電動アクチュエータとしての旋回用電動機21は、インバータ20を介して蓄電系120に接続されている。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び、旋回減速機24が接続される。
図3は、図2に示す蓄電系120の構成の一例を示すブロック図である。蓄電系120は、蓄電部としての蓄電装置19、昇降圧コンバータ100、及び、別の蓄電部としてのDCバス110を含む。本実施形態では、蓄電装置19は、例えばキャパシタである。また、DCバス110は、電動発電機12、蓄電装置19、及び、旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。また、蓄電装置としてのキャパシタ19には、キャパシタ電圧値を検出するためのキャパシタ電圧検出部112と、キャパシタ電流値を検出するためのキャパシタ電流検出部113が設けられている。キャパシタ電圧検出部112とキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電圧値とキャパシタ電流値は、後述するコントローラ30に供給される。
昇降圧コンバータ100は、電動発電機12及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える。本実施形態では、昇降圧コンバータ100は、キャパシタ19とDCバス110との間に配置される。また、DCバス110は、インバータ18、20と昇降圧コンバータ100との間に配置され、電動発電機12、キャパシタ19、及び、旋回用電動機21の間で電力の授受が行われるようにする。
図2に戻り、本実施形態に係るハイブリッドショベルは、当該ショベルの駆動制御を行うためのコントローラ30を有する。コントローラ30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置であってよい。具体的には、コントローラ30は、内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムをCPUに実行させて各種機能を実現する。
例えば、コントローラ30は、電動発電機12の駆動制御を通じて、電動アシスト運転と発電運転の切り替えを行う。また、コントローラ30は、昇降圧制御部としての昇降圧コンバータ100を駆動制御する。より具体的には、蓄電装置としてのキャパシタ19の充電状態及び電動発電機12の運転状態等に基づく昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切り替え制御を通じて、キャパシタ19の充放電制御を行う。なお、昇圧動作は、キャパシタ19の電気エネルギをDCバス110に移動させてDCバス110の電圧を上昇させる動作であり、降圧動作は、DCバス110の電気エネルギをキャパシタ19に移動させてDCバス110の電圧を降下させる動作である。また、電動発電機12の運転状態は、電動アシスト運転状態及び発電運転状態を含み、旋回用電動機21の運転状態は、力行運転状態及び回生運転状態を含む。
昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切り替え制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、キャパシタ電圧検出部112によって検出されるキャパシタ電圧値、及びキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ 電流値に基づいて行われる。
また、コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。なお、圧力センサ29から供給される信号は、旋回機構2を旋回させるために操作装置26を操作した場合の操作内容を表す信号に相当する。例えば、当該速度指令に対して、レゾルバ22から入力された旋回用電動機21の回転速度の検出値をフィードバックするフィードバック制御を実行してよい。そして、コントローラ30は、フィードバック制御により旋回用電動機21に発生させるトルクの指令(トルク指令)を生成し、当該トルク指令に応じてインバータ20を駆動することで、旋回用電動機21の駆動制御(速度制御)を実行してよい。
以上のような構成において、電動発電機12が発電した電力は、インバータ18を介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。また、旋回用電動機21が回生運転で生成した回生電力は、インバータ20を介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。
図4は、蓄電系120の回路図である。昇降圧コンバータ100は、リアクトル101、昇圧用IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)102A、降圧用IGBT102B、キャパシタ19を接続するための一対の電源接続端子104、インバータ18、20を接続するための一対の出力端子106、及び、一対の出力端子106に並列に挿入される平滑用コンデンサ107を含む。昇降圧コンバータ100の一対の出力端子106とインバータ18、20との間は、DCバス110によって接続される。
リアクトル101の一端は昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bの中間点に接続され、他端は正極側電源接続端子104Pに接続される。リアクトル101は、昇圧用IGBT102AのON/OFFに伴って生じる誘導起電力をDCバス110に供給するために設けられている。
昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、大電力の高速スイッチングが可能な半導体素子(スイッチング素子)である。本実施形態では、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)をゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタで構成される。そして、昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、コントローラ30により、ゲート端子にPWM電圧が印加されることによって駆動される。また、昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bには、整流素子であるダイオード102a及び102bが並列接続される。
キャパシタ19は、昇降圧コンバータ100を介してDCバス110との間で電力の授受を行う充放電可能な蓄電装置である。本実施形態では、キャパシタ19としてリチウムイオンキャパシタ(Lithium−Ion Capacitor(LIC))が採用される。なお、リチウムイオンキャパシタの代わりに、電気二重層キャパシタ(電気二重層コンデンサ、Electric Double Layer Capacitor(EDLC))、リチウムイオン電池(Lithium−Ion Battery(LIB))等の二次電池、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源が採用されてもよい。
一対の電源接続端子104及び一対の出力端子106は、キャパシタ19及びインバータ18、20が接続可能な端子であればよい。なお、一対の電源接続端子104の間にはキャパシタ電圧検出部112が接続される。また、一対の出力端子106の間にはDCバス電圧検出部111が接続される。
キャパシタ電圧検出部112は、キャパシタ19の端子間電圧であるキャパシタ電圧値Vcapを検出する。また、DCバス電圧検出部111は、DCバス110の電圧であるDCバス電圧値Vdcを検出する。平滑用コンデンサ107は、正極側出力端子106Pと負極側出力端子106Nとの間に挿入され、DCバス電圧値Vdcを平滑化する。
キャパシタ電流検出部113は、キャパシタ19の正極端子(P端子)側においてキャパシタ19に流れる電流の値を検出する検出手段であり、電流検出用の抵抗器を含む。
昇降圧コンバータ100によりDCバス110をキャパシタ電圧値以上に昇圧する際には、昇圧用IGBT102Aのゲート端子にPWM電圧が印加される。その結果、昇圧用IGBT102AのON/OFFに伴ってリアクトル101に発生する誘導起電力が降圧用IGBT102Bに並列に接続されたダイオード102bを介してDCバス110に供給される。これにより、DCバス110が昇圧される。なお、DCバス110をキャパシタ電圧値未満の電圧値に昇圧する際には、昇降圧コンバータ100は、ダイオード102bを介してキャパシタ19の電気エネルギをDCバス110に移動させることができる。
昇降圧コンバータ100によりDCバス110を降圧する際には、降圧用IGBT102Bのゲート端子にPWM電圧が印加される。その結果、インバータ18、20からの回生電力が降圧用IGBT102Bを介してDCバス110からキャパシタ19に供給される。これにより、DCバス110に蓄積された電力がキャパシタ19に充電され、DCバス110が降圧される。
なお、コントローラ30と昇圧用IGBT102Aとの間には、昇圧用IGBT102Aを駆動するPWM信号を生成する駆動部(不図示)が存在する。この駆動部は、電子回路又は演算処理装置の何れで実現されてもよい。降圧用IGBT102Bについても同様である。
また、本実施形態では、キャパシタ19の正極端子と昇降圧コンバータ100の正極側電源接続端子104Pとを接続する正極側電源ラインLPに継電器としての正極側リレー91Pが設けられる。正極側リレー91Pは、コントローラ30からの導通信号によりON(導通)状態となり、遮断信号によりOFF(遮断)状態となる。コントローラ30は、正極側リレー91Pを遮断状態とすることで、キャパシタ19を昇降圧コンバータ100から切り離すことができる。
また、キャパシタ19の負極端子と昇降圧コンバータ100の負極側電源接続端子104Nとを接続する負極側電源ラインLNには負極側リレー91Nが設けられる。負極側リレー91Nは、正極側リレー91Pと同様、コントローラ30からの導通信号によりON(導通)状態となり、遮断信号によりOFF(遮断)状態となる。コントローラ30は、負極側リレー91Nを遮断状態とすることで、キャパシタ19を昇降圧コンバータ100から切り離すことができる。
なお、コントローラ30は、正極側リレー91Pと負極側リレー91Nを一組のリレーとして制御し、両方を同時に遮断状態としてキャパシタ19を昇降圧コンバータ100から切り離してもよい。
次に、後述する本実施形態に係るハイブリッドショベル(コントローラ30)による特徴的な制御処理の前提となる旋回用電動機21の制限運転について説明をする。
本実施形態に係るハイブリッドショベルでは、旋回用電動機21を含む電気駆動系(蓄電系120、インバータ18、20、電動発電機12等)が通常の運転状態にない場合がある。例えば、ハイブリッドショベルの起動時における電気駆動系の立ち上げシーケンス(立ち上げ処理)の実行中や電気駆動系に含まれる各電気装置の少なくとも一つが故障状態(異常状態)にある場合等である。
電気駆動系が通常の運転状態にない場合、操作者の旋回操作レバーからの操作入力に基づく旋回用電動機21の駆動を通常の出力で行わせることは好ましくないため、コントローラ30は、旋回用電動機21の出力を制限する。即ち、コントローラ30は、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の反応を通常運転時より弱い状態に設定する。例えば、コントローラ30は、操作装置26に含まれる旋回操作レバーによる操作が行われた場合であっても、旋回用電動機21により出力可能な旋回速度を制限したり、旋回停止状態を維持させたりする。より具体的には、コントローラ30は、速度指令の最大値を制限することにより、旋回速度の制限を行ってよい。また、コントローラ30は、速度指令を常に0に保持すること(0速制御)により、旋回停止状態を維持してよい。また、コントローラ30は、レゾルバ22から受信した旋回用電動機21の回転位置情報に基づいて、サーボロック(位置保持)制御を行ってよい。以下の説明では、旋回駆動の制限が行われている旋回用電動機21の運転状態を「制限運転モード」と呼び、通常運転時における旋回操作レバーからの操作入力(操作量)に応じて動作する旋回用電動機21の運転状態を「通常運転モード」と呼ぶ場合がある。
換言すれば、本実施形態におけるハイブリッドショベルは、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の反応が通常運転時よりも弱い(反応がない状態を含む)期間を有する。
なお、コントローラ30は、同様に、立ち上げシーケンスの実行中や電気駆動系に含まれる電気装置の少なくとも一つが故障状態(異常状態)にある場合等において、電動発電機12の駆動(アシスト運転)の制限を行ってよい。
ここで、コントローラ30によりハイブリッドショベルの起動時に実行される立ち上げシーケンス(立ち上げ処理)について説明をする。
上述したとおり、本実施形態に係るハイブリッドショベルは、旋回機構を電動化したものであり、旋回機構2を駆動する旋回用電動機21は、蓄電系120からの電力供給により駆動される。また、ハイブリッドショベルは、エンジン11のアシストモータとしての電動発電機12を備え、電動発電機12は、蓄電系120からの電力供給により駆動される。そのため、ハイブリッドショベルの起動時において、蓄電系120、旋回用電動機21、電動発電機12、インバータ18、20を含む電気駆動系を適切かつ安全に動作させるための制御処理を行う必要があり、コントローラ30により実行される当該制御処理を立ち上げシーケンスと呼ぶ。
立ち上げシーケンスは、イグニッションスイッチ(不図示)がONされると開始され、例えば、以下(1)〜(4)のような処理を含んでよい。
(1)キャパシタ19と昇降圧コンバータ100との接続処理
キャパシタ19の電圧をある一定以上に維持するため、イグニッションスイッチがOFFの状態において、正極側リレー91P及び負極側リレー91Nは遮断されている。そのため、コントローラ30は、正極側リレー91P及び負極側リレー91Nに対して導通信号を出力し、キャパシタ19と昇降圧コンバータ100とを電気的に接続する。
(2)昇降圧コンバータ制御系の起動処理
コントローラ30は、昇降圧コンバータ100に対して起動指令を出力し、昇降圧コンバータ100を起動させる。
起動された昇降圧コンバータ100は、DCバス電圧検出部111により検出されるDCバス電圧値Vdcが所定電圧値(例えば、360[V])に達するまで昇圧動作を継続する。そして、昇降圧コンバータ100は、DCバス電圧値Vdcが所定電圧値に達したことを検知すると、その旨を表す昇圧済み信号をコントローラ30に対して出力する。なお、コントローラ30は、DCバス電圧検出部111の出力を自ら監視し、DCバス電圧値Vdcが所定電圧値に達したことを判断してもよい。
(3)電動モータ制御系の起動処理
コントローラ30は、インバータ18及びインバータ20に対して起動指令を出力する。
インバータ18は、起動指令を受信すると、自身が正常に起動されたことを表す起動済み信号をコントローラ30に対して出力する。そして、インバータ18は、電動発電機12との間での電力の授受が可能な状態となり、電動発電機12は、電動アシスト運転及び発電運転が可能な状態となる。
同様に、インバータ20は、起動指令を受信すると、自身が正常に起動されたことを表す起動済み信号をコントローラ30に対して出力する。そして、インバータ20は、旋回用電動機21との間での電力の授受が可能な状態となり、旋回用電動機21は、力行運転及び回生運転が可能な状態となる。
(4)キャパシタ19の異常を検出するための異常検出処理
コントローラ30は、例えば、キャパシタ電圧検出部112から入力されたキャパシタ電圧値Vcapに基づいて、キャパシタ19の異常を検出してよい。即ち、キャパシタ19は、ハイブリッドショベルのイグニッションスイッチがOFFの状態において、その電圧がある一定の以上に維持されるように、イグニッションスイッチがOFFにされる際、終了制御(充電制御)が実行される。そのため、キャパシタ電圧値Vcapがある一定の電圧値より十分に小さくなっている場合は、短絡等による異常放電が発生している可能性が高く、キャパシタ電圧値Vcapによる異常検出を行うことができる。なお、キャパシタ19(を含む回路)の異常を検出するため処理は、当該処理に限られず、異常を検出するための任意の処理が実行されてよい。
次に、本実施形態に係るハイブリッドショベル(コントローラ30)による特徴的な制御処理、即ち、旋回用電動機21の制限運転モード及び通常運転モードの切替処理について説明をする。
まず、立ち上げシーケンス完了時における旋回用電動機21の制限運転モードから通常運転モードへの切替処理について説明をする。
操作者が操作入力に対する旋回用電動機21の旋回駆動が制限されていることを知らない場合、立ち上げシーケンス実行中に、旋回用電動機21に対する操作が行われる可能性がある。この場合、立ち上げシーケンスが完了し、旋回用電動機21を通常運転に切り替える際に、旋回操作レバーが操作された状態にあると、突然、旋回用電動機21が旋回操作レバーの操作量に応じて大きく駆動され、操作者に違和感を与えてしまうおそれがある。
そこで、本実施形態では、立ち上げシーケンス実行中に、旋回操作レバーに操作入力があった場合、旋回操作レバーが中立状態に戻ることをフラグとして、旋回用電動機21の運転状態を制限運転モードから通常運転モードに切り替える。
図5は、コントローラ30による立ち上げシーケンス完了時における旋回用電動機21の運転状態の切替処理(制限運転モードから通常運転モードへの切替処理)を含むハイブリッドショベルの起動時における制御(起動制御)処理の一例を示すフローチャートである。当該フローチャートは、ハイブリッドショベルが起動(イグニッションスイッチがON)される毎に実行される。
図5を参照するに、ステップS101では、上述した立ち上げシーケンスが開始される。
また、ステップS102では、立ち上げシーケンスの開始と同時に、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の駆動を制限する。即ち、旋回用電動機21の運転状態を制限運転モードに移行させる。なお、上述したとおり、旋回駆動の制限には、旋回速度の最大値を制限することや旋回自体を停止させることが含まれてよい。
ステップS103では、立ち上げシーケンスが完了したか否かが判定される。立ち上げシーケンスが完了していない場合(当該判定条件を満足しない場合)、立ち上げシーケンスが完了するまで、当該判定処理を繰り返し実行し、立ち上げシーケンスが完了した場合、ステップS104に進む。
ステップS104では、立ち上げシーケンス完了時において、旋回操作レバーが中立状態であるか否かが判定される。立ち上げシーケンス完了時において、旋回操作レバーが中立状態でない場合(旋回操作レバーに対する操作入力がある場合)、当該判定処理(旋回操作レバーが中立状態であるか否か)を繰り返し実行し、旋回操作レバーが中立状態に戻った場合、ステップS105に進む。
ステップS105では、旋回用電動機21の制限運転モードを解除し、通常運転モードに移行させる。即ち、旋回用電動機21は、操作者による旋回操作レバーからの操作入力(操作量)に応じて、駆動されるようになる。
このように、本例における起動制御では、立ち上げシーケンス完了前に、旋回操作レバーに対する操作入力があった場合、立ち上げシーケンス完了後、旋回操作レバーが中立状態に戻るまで旋回用電動機21の制限運転モードが継続される。即ち、コントローラ30は、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の反応が通常運転時より弱い状態を継続させる。これにより、立ち上げシーケンス完了時に旋回操作レバーが中立状態に戻っていない場合であっても、立ち上げシーケンス完了後、突然、旋回用電動機21が、旋回操作レバーの操作量に応じて、大きく駆動されることを防止することができる。そのため、操作者に与える違和感を抑制することができる。
特に、操作者が立ち上げシーケンス実行中に旋回用電動機21の駆動が制限されることを知らない場合、旋回用電動機21が意図通りに動作しないために、旋回操作レバーに対して、大きな操作量の操作入力がなされる可能性がある。このように、旋回操作レバーに対して、大きな操作量の操作入力がなされた状態で、立ち上げシーケンスが完了し、旋回用電動機21の動作状態が通常運転モードに移行されると、旋回用電動機21が比較的高い速度で大きく駆動され、操作者に違和感を与えるおそれがある。しかしながら、本例の起動制御のように、立ち上げシーケンス完了後に、旋回操作レバーが中立状態に戻るまで、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の反応が通常運転時より弱い状態を継続させることで、当該問題を解消することができる。
続いて、コントローラ30によるハイブリッドショベルの起動時における制御(起動制御)処理の他の例について説明をする。
図6は、コントローラ30による立ち上げシーケンス完了時における旋回用電動機21の運転状態の切替処理(制限運転モードから通常運転モードへの切替処理)を含むハイブリッドショベルの起動時における制御(起動制御)処理の一例を示すフローチャートである。当該フローチャートは、ハイブリッドショベルが起動(イグニッションスイッチがON)される毎に実行される。
図6を参照するに、ステップS201では、ステップS101と同様、上述した立ち上げシーケンスが開始される。
また、ステップS202では、ステップS102と同様、立ち上げシーケンスの開始と同時に、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の駆動を制限する。即ち、旋回用電動機21の運転状態を制限運転モードに移行させる。なお、上述したとおり、旋回駆動の制限には、旋回速度の最大値を制限することや旋回自体を停止させることが含まれてよい。
ステップS203では、ステップS103と同様、立ち上げシーケンスが完了したか否かが判定される。立ち上げシーケンスが完了していない場合(当該判定条件を満足しない場合)、立ち上げシーケンスが完了するまで、当該判定処理を繰り返し実行し、立ち上げシーケンスが完了した場合、ステップS204に進む。
ステップS204では、立ち上げシーケンス完了時において、旋回操作レバーが中立状態であるか否かが判定される。立ち上げシーケンス完了時において、旋回操作レバーが中立状態でない場合(旋回操作レバーに対する操作入力がある場合)、当該判定処理(旋回操作レバーが中立状態であるか否か)を繰り返し実行し、旋回操作レバーが中立状態に戻った場合、ステップS205に進む。
ステップS205では、ステップS204にて、旋回操作レバーが中立状態であると判定されてから所定時間Tが経過したか否かを判定する。なお、コントローラ30は、旋回操作レバーの中立状態が検出された時点から内部タイマをカウントすることにより所定時間Tが経過したか否かを判定してよい。所定時間Tが経過していない場合、ステップS206に進み、ステップS206では、継続して、旋回操作レバーが中立状態であるか否かを判定し、継続して、旋回操作レバーが中立状態にある場合、ステップS205に戻る。即ち、旋回操作レバーが中立状態に維持されていることを監視しつつ、所定時間Tが経過するのを待つ。
ステップS205にて、旋回操作レバーが中立状態であると判定されてから所定時間T経過したと判定された場合、ステップS207に進む。
一方、ステップS206にて、旋回操作レバーが中立状態でない、即ち、旋回操作レバーに操作入力があった場合、再度、ステップS204に戻る。
まとめると、ステップS204〜S206では、立ち上げシーケンス完了後、旋回操作レバーが、所定時間T以上の間、中立状態に維持されたかを判定している。そして、所定時間T以上の間、中立状態に維持された場合、ステップS207に進む。一方、所定時間T以上の間、中立状態に維持されなかった場合、コントローラ30は、再度、旋回操作レバーが中立状態に戻るのを監視し、中立状態に戻ったのを検出すると、同様に、所定時間T以上の間、中立状態に維持されたかの判定を繰り返す。
なお、所定時間T以上の間、旋回操作レバーが中立状態に維持されているか否かは、立ち上げシーケンス実行中において中立状態が維持されていた時間を含むようにしてもよい。即ち、立ち上げシーケンス完了直前から旋回操作レバーの中立状態が維持されている場合、既に、旋回操作レバーの中立状態は、ある程度維持された状態が継続しているので、その時間を含めて、所定時間T以上の間、中立状態が維持されているか否かを判定してもよい。この場合、コントローラ30は、立ち上げシーケンス実行中においても、圧力センサ29からの電気信号に基づき旋回操作レバーの中立状態を検出した場合、内部タイマのカウントを開始させるとよい。これにより、立ち上げシーケンス実行中において、旋回操作レバーが中立状態に維持されていた時間を検出することができる。
ステップS207では、ステップS105と同様、旋回用電動機21の制限運転モードを解除し、通常運転モードに移行させる。即ち、旋回用電動機21は、操作者による旋回操作レバーからの操作入力(操作量)に応じて、駆動されるようになる。
このように、本例における起動制御では、立ち上げシーケンス完了前に、旋回操作レバーに対する操作入力があった場合、立ち上げシーケンス完了後、旋回操作レバーが中立状態に戻り、かつ、該中立状態が所定時間T以上維持されるまで、旋回用電動機21の制限運転モードが継続される。即ち、コントローラ30は、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の反応が通常運転時より弱い状態を継続させる。これにより、図5の例と同様、立ち上げシーケンス完了時に旋回操作レバーが中立状態に戻っていない場合であっても、立ち上げシーケンス完了後、突然、旋回用電動機21が、旋回操作レバーの操作量に応じて、大きく駆動されることを防止することができる。
また、本例では、中立状態が所定時間T以上維持されるまで、旋回用電動機21の反応が通常運転時より弱い状態を継続させるので、立ち上げシーケンス完了後、突然、旋回用電動機21が大きく駆動されることをより良く防止することができる。即ち、立ち上げシーケンス実行中に、比較的高い操作速度で旋回操作レバーに対する操作入力なされた場合、立ち上げシーケンス完了後、旋回操作レバーが中立状態に戻っても、比較的高い操作速度のまま、逆方向への旋回を指示する操作入力に移行する可能性がある。しかしながら、中立状態が所定時間T以上維持されるまで旋回用電動機21の反応が通常運転時より弱い状態が継続されるので、このような場合に、突然、旋回用電動機21が大きく駆動されることを防止することができる。そのため、操作者に与える違和感をより良く抑制することができる。
続いて、コントローラ30によるハイブリッドショベルの起動時における制御(起動制御)処理の更に他の例について説明をする。
図7は、コントローラ30による立ち上げシーケンス完了時における旋回用電動機21の運転状態の切替処理(制限運転モードから通常運転モードへの切替処理)を含むハイブリッドショベルの起動時における制御(起動制御)処理の更に他の例を示すフローチャートである。当該フローチャートは、ハイブリッドショベルが起動(イグニッションスイッチがON)される毎に実行される。
図7を参照するに、ステップS301では、ステップS101、S201と同様、上述した立ち上げシーケンスが開始される。
また、ステップS302では、立ち上げシーケンスの開始と同時に、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の駆動を制限する。また、併せて、油圧系操作部からの操作入力に対する油圧アクチュエータの駆動を制限する。即ち、旋回用電動機21、油圧アクチュエータの運転状態を制限運転モードに移行させる。例えば、コントローラ30は、立ち上げシーケンスの実行中において、操作装置26に含まれる油圧系操作部による操作が行われた場合であっても、油圧アクチュエータによる出力を制限したり、油圧アクチュエータの停止状態を維持させたりする。より具体的には、コントローラ30は、メインポンプ14の斜板の傾転角を制御するレギュレータ(不図示)の制御電流を比較的小さい値に制限することにより、油圧アクチュエータの出力を制限してよい。また、コントローラ30は、パイロットライン25に配置されるゲートロック切替弁(不図示)をOFF(非連通)にし、パイロットポンプ15から操作装置26へのパイロット圧の供給を遮断することにより、油圧アクチュエータの停止状態を維持させてよい。なお、ゲートロック切替弁は、ハイブリッドショベルのキャビン10内のゲートロックレバー(不図示)と連動してON(連通)/OFF(非連通)の切り替えがなされる電磁切替弁である。なお、上述したとおり、旋回駆動の制限には、旋回速度の最大値を制限することや旋回自体を停止させることが含まれてよい。
ステップS303では、ステップS103、203と同様、立ち上げシーケンスが完了したか否かが判定される。立ち上げシーケンスが完了していない場合(当該判定条件を満足しない場合)、立ち上げシーケンスが完了するまで、当該判定処理を繰り返し実行し、立ち上げシーケンスが完了した場合、ステップS304に進む。
ステップS304では、立ち上げシーケンス完了時において、旋回操作レバー、及び、油圧系操作部が中立状態であるか否かが判定される。立ち上げシーケンス完了時において、旋回操作レバー、及び、油圧系操作部が中立状態でない場合(旋回操作レバー、又は、油圧系操作部の少なくとも一方に対する操作入力がある場合)、当該判定処理(旋回操作レバー、及び、油圧系操作部が中立状態であるか否か)を繰り返し実行する。そして、旋回操作レバー、及び、油圧系操作部が中立状態に戻った場合、ステップS305に進む。
ステップS305では、旋回用電動機21(電動アクチュエータ)、油圧アクチュエータの制限運転モードを解除し、通常運転モードに移行させる。即ち、旋回用電動機21は、操作者による旋回操作レバーからの操作入力(操作量)に応じて、駆動されるようになり、油圧アクチュエータは、油圧系操作部からの操作入力(操作量)に応じて、駆動されるようになる。
このように、本例における起動制御では、立ち上げシーケンス実行中、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の駆動に加えて、油圧系操作部からの操作入力に対する油圧アクチュエータの駆動が制限される。即ち、コントローラ30は、油圧系操作部からの操作入力に対する油圧アクチュエータの反応が通常運転時より弱い状態にする。これにより、旋回用電動機21(電動アクチュエータ)、油圧アクチュエータ、双方の操作入力に対する駆動が制限されるので、操作者は、制限運転モードであることを気づきやすくなり、立ち上げシーケンス実行中における旋回操作レバー、油圧系操作部による操作が抑制される。そのため、立ち上げシーケンス終了後、突然、旋回用電動機21、油圧アクチュエータが、旋回操作レバー、油圧系操作部の操作量に応じて、大きく駆動されることを防止することができる。
また、本例における起動制御では、立ち上げシーケンス完了前に、旋回操作レバー、又は、油圧系操作部の少なくとも一方に対する操作入力があった場合、立ち上げシーケンス完了後、旋回操作レバー、及び、油圧系操作部が中立状態に戻るまで旋回用電動機21、油圧アクチュエータの制限運転モードが継続される。これにより、立ち上げシーケンス完了時に旋回操作レバー、油圧系操作部が中立状態に戻っていない場合であっても、立ち上げシーケンス完了後、突然、旋回用電動機21、油圧アクチュエータが、旋回操作レバー、油圧系操作部の操作量に応じて、大きく駆動されることを防止することができる。そのため、操作者に与える違和感をより良く抑制することができる。
なお、図7のステップS304の処理フローに代えて、図6のステップS204〜S206と同様の処理フローを適用してもよい。即ち、コントローラ30は、立ち上げシーケンス完了前に、旋回操作レバー、及び、油圧系操作部の少なくとも一方に対する操作入力があった場合、立ち上げシーケンス完了後、旋回操作レバー、及び、油圧系操作部が中立状態に戻り、かつ、該中立状態が所定時間T以上の間、維持されるまで旋回用電動機21、及び、油圧アクチュエータの制限運転モードが継続されるようにしてよい。これにより、図6に示した起動制御の例と同様の作用、効果を奏する。
また、図5〜7に示した起動制御の例において、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の駆動が制限されている場合に、旋回用電動機21の駆動が制限されている旨を操作者に報知する手段(インジケータランプ、画像、音声等)を設けてもよい。同様に、図7に示した起動制御の例において、油圧系操作部からの操作入力に対する油圧アクチュエータの駆動が制限されている場合に、油圧アクチュエータの駆動が制限されている旨を操作者に報知する手段を設けてもよい。これにより、操作者は、制限運転モードであることにより気づきやすくなり、立ち上げシーケンス実行中における旋回操作レバー、油圧系操作部による操作が更に抑制される。そのため、立ち上げシーケンス終了後、突然、旋回用電動機21、及び、油圧アクチュエータの少なくとも一方が、旋回操作レバー、油圧系操作部の操作量に応じて、大きく駆動されることをより良く防止することができる。
次いで、電気駆動系に含まれる構成要素(電動発電機12、インバータ18、蓄電系120等)の少なくとも一部に異常が発生した場合(電気駆動系の異常発生時)における旋回用電動機21の制限運転モードから通常運転モードへの切替処理について説明をする。なお、「電気駆動系の異常」の中には、旋回駆動に関する異常、即ち、旋回用電動機21、インバータ20の異常は含まれない。
電気駆動系における異常はいつ発生するかわからないため、電気駆動系における異常発生時に、旋回用電動機21に対する操作が行われている場合がある。そのため、電気駆動系における異常発生に対応して、旋回用電動機21を制限運転に切り替えると、突然、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の反応が弱くなり、操作者に違和感を与えてしまうおそれがある。
そこで、電気駆動系における異常発生時に、旋回操作レバーに操作入力があった場合、旋回操作レバーが中立状態に戻ることをフラグとして、旋回用電動機21の運転状態を通常運転モードから制限運転モードに切り替える。
図8は、コントローラ30による電気駆動系の異常発生時における旋回用電動機21の運転状態の切替処理(通常運転モードから制限運転モードへの切替処理)の一例を示すフローチャートである。当該フローチャートは、ハイブリッドショベルの起動中において、電気駆動系(電動発電機12、インバータ18、及び、蓄電系120の少なくとも一つ)に異常が検出された場合に実行される。
図8を参照するに、ステップS401では、電気駆動系の異常発生時に、旋回操作レバーが中立状態であるか否かが判定される。旋回操作レバーが中立状態でない場合(旋回操作レバーに対する操作入力がある場合)、当該判定処理(旋回操作レバーが中立状態であるか否か)を繰り返し実行し、旋回操作レバーが中立状態に戻った場合、ステップS402に進む。
ステップS402では、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の駆動を制限する。即ち、旋回用電動機21の運転状態を通常運転モードから制限運転モードに移行させる。なお、上述したとおり、旋回駆動の制限には、旋回速度の最大値を制限することや旋回自体を停止させることが含まれてよい。
このように、本例における切替制御では、電気駆動系の異常発生時に、旋回操作レバーからの操作入力があった場合、旋回操作レバーが中立状態に戻るまで、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の反応を、通常運転時と同様に維持させる。そして、旋回操作レバーが中立状態に戻った場合、旋回用電動機21の反応を通常運転時より弱い状態に移行させる。これにより、電気駆動系に異常が発生し、旋回用電動機21を通常運転モードから制限運転モードに移行させる際に、旋回操作レバーの操作が行われていても、急に、操作入力に対する旋回用電動機21の反応が弱くなることがないため、操作者に与える違和感を抑制することができる。
続いて、コントローラ30による電気駆動系の異常発生時における旋回用電動機21の運転状態の切替処理(通常運転モードから制限運転モードへの切替処理)の他の例について説明をする。
図9は、コントローラ30による電気駆動系の異常発生時における旋回用電動機21の運転状態の切替処理(通常運転モードから制限運転モードへの切替処理)の他の例を示すフローチャートである。当該フローチャートは、ハイブリッドショベルの起動中において、電気駆動系(電動発電機12、インバータ18、及び、蓄電系120の少なくとも一つ)に異常が検出された場合に実行される。
図9を参照するに、ステップS501では、ステップS502と同様、電気駆動系の異常発生時に、旋回操作レバーが中立状態であるか否かが判定される。旋回操作レバーが中立状態でない場合(旋回操作レバーに対する操作入力がある場合)、当該判定処理(旋回操作レバーが中立状態であるか否か)を繰り返し実行し、旋回操作レバーが中立状態に戻った場合、ステップS502に進む。
ステップS502では、ステップS501にて、旋回操作レバーが中立状態であると判定されてから所定時間Tが経過したか否かを判定する。なお、コントローラ30は、旋回操作レバーの中立状態が検出された時点から内部タイマをカウントすることにより所定時間Tが経過したか否かを判定してよい。所定時間Tが経過していない場合、ステップS503に進み、ステップS503では、継続して、旋回操作レバーが中立状態であるか否かを判定し、継続して、旋回操作レバーが中立状態にある場合、ステップS502に戻る。即ち、旋回操作レバーが中立状態に維持されていることを監視しつつ、所定時間Tが経過するのを待つ。
ステップS502にて、旋回操作レバーが中立状態であると判定されてから所定時間T経過したと判定された場合、ステップS504に進む。
一方、ステップS503にて、旋回操作レバーが中立状態でない、即ち、旋回操作レバーに操作入力があった場合、再度、ステップS501に戻る。
まとめると、ステップS501〜S503では、電気駆動系の異常発生時において、旋回操作レバーが、所定時間T以上の間、中立状態に維持されたかを判定している。そして、所定時間T以上の間、中立状態に維持された場合、ステップS504に進む。一方、所定時間T以上の間、中立状態に維持されなかった場合、コントローラ30は、再度、旋回操作レバーが中立状態に戻るのを監視し、中立状態に戻ったのを検出すると、同様に、所定時間T以上の間、中立状態に維持されたかの判定を繰り返す。
なお、所定時間T以上の間、旋回操作レバーが中立状態に維持されているか否かは、電気駆動系の異常が発生する前から中立状態が維持されていた時間を含むようにしてもよい。即ち、電気駆動系の異常が発生する直前から旋回操作レバーの中立状態が維持されている場合、既に、旋回操作レバーの中立状態は、ある程度維持された状態が継続しているので、その時間を含めて、所定時間T以上の間、中立状態が維持されているか否かを判定してもよい。この場合、コントローラ30は、旋回用電動機21の通常運転時においても、圧力センサ29からの電気信号に基づき旋回操作レバーの中立状態を検出した場合、内部タイマのカウントを開始させるとよい。これにより、旋回用電動機21の通常運転時において、旋回操作レバーが中立状態に維持されていた時間を検出することができる。
ステップS504では、ステップS402と同様、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の駆動を制限する。即ち、旋回用電動機21の運転状態を通常運転モードから制限運転モードに移行させる。なお、上述したとおり、旋回駆動の制限には、旋回速度の最大値を制限することや旋回自体を停止させることが含まれてよい。
このように、本例における切替制御では、電気駆動系の異常発生時に、旋回操作レバーからの操作入力があった場合、旋回操作レバーが中立状態に戻り、かつ、該中立状態が所定時間T以上維持されるまで、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の反応を、通常運転時と同様に維持させる。そして、旋回操作レバーが中立状態に戻り、かつ、該中立状態が所定時間T以上維持された場合、旋回用電動機21の反応を通常運転時より弱い状態に移行させる。これにより、電気駆動系に異常が発生し、旋回用電動機21を通常運転モードから制限運転モードに移行させる際に、旋回操作レバーの操作が行われていても、急に、操作入力に対する旋回用電動機21の反応が弱くなることがないため、操作者に与える違和感をより良く抑制することができる。即ち、電気駆動系の異常発生直前に比較的高い操作速度で旋回操作レバーに対する操作入力なされた場合、電気駆動系の異常発生時に旋回操作レバーが中立状態に戻っても、比較的高い操作速度のまま、逆方向への旋回を指示する操作入力に移行する可能性がある。しかしながら、中立状態が所定時間T以上維持されるまで旋回用電動機21の反応が通常運転時と同様に維持されるので、このような場合に、突然、旋回用電動機21の反応が弱くなることを防止することができる。
なお、図8、9の切替制御例において、コントローラ30は、旋回用電動機21を制限運転モードに切り替える際、油圧系操作部からの操作入力に対する油圧アクチュエータの駆動を制限してもよい。即ち、油圧アクチュエータについても、油圧系操作部からの操作入力に対する駆動を制限させる制限運転モードに移行させてよい。これにより、ハイブリッドショベルに異常が発生していることを操作者により明確に認知させることができる。また、旋回用電動機21のみが制限運転モードに移行されることにより、操作者に与える違和感を抑制することができる。
そして、コントローラ30は、電気駆動系の異常発生時に、旋回操作レバー及び油圧系操作部の少なくとも一方から操作入力があった場合、旋回操作レバー及び油圧系操作部が中立状態に戻るまで、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の反応、及び、油圧系操作部からの操作入力に対する油圧アクチュエータの反応を通常運転時と同様に維持させるとよい。これにより、電気駆動系に異常が発生し、旋回用電動機21及び油圧アクチュエータを通常運転モードから制限運転モードに移行させる際に、油圧系操作部の操作が行われていても、急に、操作入力に対する油圧アクチュエータの反応が弱くなることがないため、操作者に与える違和感を抑制することができる。
また、コントローラ30は、電気駆動系の異常発生時に、旋回操作レバー及び油圧系操作部の少なくとも一方から操作入力があった場合、旋回操作レバー及び油圧系操作部が中立状態に戻り、かつ、該中立状態が所定時間T以上維持されるまで、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の反応、及び、油圧系操作部からの操作入力に対する油圧アクチュエータの反応を通常運転時と同様に維持させてもよい。これにより、電気駆動系に異常が発生し、旋回用電動機21及び油圧アクチュエータを通常運転モードから制限運転モードに移行させる際に、比較的高い操作速度で油圧系操作部の操作が行われていても、急に、操作入力に対する油圧アクチュエータの反応が弱くなることがないため、操作者に与える違和感をより良く抑制することができる。即ち、電気駆動系の異常発生直前に比較的高い操作速度で油圧系操作部に対する操作入力なされた場合、電気駆動系の異常発生時に油圧系操作部が中立状態に戻っても、比較的高い操作速度のまま、逆方向への駆動を指示する操作入力に移行する可能性がある。しかしながら、中立状態が所定時間T以上維持されるまで油圧アクチュエータの反応が通常運転時と同様に維持されるので、このような場合に、突然、油圧アクチュエータの反応が弱くなることを防止することができる。
以上のとおり、本実施形態に係るハイブリッドショベルでは、例えば、立ち上げシーケンス完了時や電気駆動系の異常発生時において、旋回用電動機21の運転状態の切替処理(制限運転モードと通常運転モードとの切替処理)が実行される。その際、ハイブリッドショベル(コントローラ30)は、旋回操作レバーが中立状態に戻ることをフラグとして、旋回用電動機21の制限運転モードと通常運転モードとを切り替える。これにより、制限運転モードと通常運転モードとの間での運転状態の切替に際して、操作入力に対する旋回用電動機21の反応が変動することにより操作者に与える違和感を抑制することができる。
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、旋回用電動機21の制限運転モードと通常運転モードとの切替制御を行う状況は、立ち上げシーケンス完了時や電気駆動系の異常発生時には限らず、制限運転モードと通常運転モードとの切替が実行される任意の状況で、上述した制御が適用されてよい。
また、上述した実施形態では、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の反応が通常運転時より弱い期間として、立ち上げシーケンスが実行される期間を例示して説明を行ったが、当該期間には限定されない。即ち、本実施形態のように、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の反応が通常運転時より弱い状態にする制御が人為的に実行される任意の期間に対して、上述した制御処理が実行されてよい。
また、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の反応が通常運転時より弱い期間は、人為的に設定された期間のみならず、物理的に旋回用電動機21の反応が通常運転時より弱くなる期間であってよい。例えば、キャパシタ19、昇降圧コンバータ100に異常が生じた際のフェールセーフ機能として、エンジン11の動力により電動発電機12で発電された電力を、DCバス110を介して、直接、旋回用電動機21に供給する場合がある。この場合、DCバス電圧値Vdcが所定電圧値まで上昇していないと、旋回操作レバーからの操作入力に対する旋回用電動機21の反応は通常運転時より弱くなる。そのため、DCバス電圧値Vdcが所定電圧値に上昇するまでの期間に対して、上述した制御処理が実行されてよい。