以下、図面を参照して本発明に係る無線通信方法、無線通信システムおよび無線通信装置の実施例について説明する。なお、本実施例で説明する無線通信システムは、無線LAN規格に準拠する無線LANシステムであり、無線通信装置は、無線LANシステムで用いられるアクセスポイント装置である。
図1は、本実施例に係る無線LANシステム100の一例を示す。図1において、無線LANシステム100は、システムサーバSV1、アクセスポイント装置AP1、アクセスポイント装置AP2、アクセスポイント装置APx、無線端末STA1、無線端末STA2および無線端末STA3を有する。ここで、本実施例に係る無線LANシステム100は、IEEE802.11a、IEEE802.11b、IEEE802.11g、IEEE802.11nおよびIEEE802.11acなどの規格に基づく無線LANシステムである。そして、アクセスポイント装置AP1、アクセスポイント装置AP2およびアクセスポイント装置APxは無線LAN規格に基づくアクセスポイント装置であり、無線端末STA1、無線端末STA2および無線端末STA3は無線LAN規格に基づく無線端末である。これらのアクセスポイント装置および無線端末は、2.4GHz帯、5GHz帯などの無線周波数を用いて通信を行う。
ここで、以降の説明において、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2に共通の事項を説明する場合は、符号末尾の番号を省略してアクセスポイント装置APと表記する。なお、アクセスポイント装置APと表記した場合、連携外のアクセスポイント装置APxは含まず、連携して動作するアクセスポイント装置APを示す。また、無線端末STA1、無線端末STA2および無線端末STA3についても同様に、無線端末STA1、無線端末STA2および無線端末STA3に共通の事項を説明する場合は、符号末尾の番号を省略して無線端末STAと表記する。
アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、互いに連携して動作することができる。ここで、本実施形態で説明する連携動作は、複数のアクセスポイント装置が無線環境情報や制御情報を共有し、相互の装置が無線フレームを同時に送受信できるように制御することである。
また、図1に示した無線LANシステム100には、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2と連携を行わない(本実施例では連携外と称する)アクセスポイント装置APxが存在するものとする。図1に示した無線LANシステム100では、アクセスポイント装置APxと無線端末STA3との通信がアクセスポイント装置AP1の通信先の無線端末STA1およびアクセスポイント装置AP2の通信先の無線端末STA2の通信に干渉を与える場合の一例を示している。
システムサーバSV1は、ネットワークNW1上に配置され、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2に有線または無線により接続される。システムサーバSV1は、例えばインターネットなどの上位網に接続され、無線端末STA1は、アクセスポイント装置AP1およびシステムサーバSV1を介してインターネットなどの上位網にアクセスすることができる。また、システムサーバSV1は、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2が連携して動作するための無線環境情報や制御情報などを送受信する。なお、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、システムサーバSV1を経由せずに無線環境情報や制御情報などを直接送受信してもよい。
アクセスポイント装置AP1は、無線端末STA1との間で無線フレームを送受信する。無線フレームは、例えば上位網などにアクセスするときのデータフレームやアクセスポイント装置AP1が無線端末STA1との間で制御情報を送受信するときの制御フレームなどである。例えば、無線端末STA1は、アクセスポイント装置AP1およびシステムサーバSV1を介して上位網にアクセスする。逆に、上位網から無線端末STA1へのフレームは、システムサーバSV1およびアクセスポイント装置AP1を介して無線端末STA1に送信される。
アクセスポイント装置AP2は、アクセスポイント装置AP1と同様に、無線端末STA2との間で無線フレームを送受信する。例えば、無線端末STA2は、アクセスポイント装置AP2およびシステムサーバSV1を介して上位網にアクセスする。逆に、上位網から無線端末STA2へのフレームは、システムサーバSV1およびアクセスポイント装置AP2を介して無線端末STA2に送信される。
ここで、無線LANの規格では、連携するアクセスポイント装置APおよび連携外のアクセスポイント装置APxは、自装置の識別情報などを含み、装置の存在を周辺の無線LAN装置に知らせるためのビーコンフレームを定期的に送信している。一方、無線LANのIEEE802.11kの規格に基づいて、アクセスポイント装置AP1は、無線端末STA1が各アクセスポイント装置APから受信するビーコンフレームの受信電力値と送信元の識別情報とを無線端末STA1に報告させることができる。この機能を利用して、アクセスポイント装置AP1は、無線端末STA1におけるアクセスポイント装置AP2の送信フレームの受信電力値を無線端末STA1から取得できる。同様に、アクセスポイント装置AP2は、無線端末STA2におけるアクセスポイント装置AP1の送信フレームの受信電力値を無線端末STA2から取得できる。そして、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、互いに連携して無線環境情報を交換することができるので、アクセスポイント装置AP1は、無線端末STA2が受信するアクセスポイント装置AP1のビーコンフレームの受信電力値をアクセスポイント装置AP2から取得できる。同様に、アクセスポイント装置AP2は、無線端末STA1が受信するアクセスポイント装置AP2のビーコンフレームの受信電力値をアクセスポイント装置AP1から取得できる。このように取得した情報を用いて、アクセスポイント装置AP1は、無線端末STA2がアクセスポイント装置AP2から受信するフレームの復調を開始しないように、自装置が無線端末STA1にフレームを送信するときの送信電力値を制御することができる。同様に、アクセスポイント装置AP2は、無線端末STA1がアクセスポイント装置AP1から受信するフレームの復調を開始しないように、自装置が無線端末STA2にフレームを送信するときの送信電力値を制御することができる。
無線端末STA1は、アクセスポイント装置AP1との間で無線フレームを送受信する。また、無線端末STA1は、受信するビーコンフレームの送信元情報や当該フレームの受信電力値などをアクセスポイント装置AP1に報告する。
無線端末STA2は、無線端末STA1と同様に、アクセスポイント装置AP2との間で無線フレームを送受信する。また、無線端末STA2は、受信するビーコンフレームの送信元情報や当該フレームの受信電力値などをアクセスポイント装置AP2に報告する。
アクセスポイント装置APxは、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2と連携して動作できないアクセスポイント装置である。従って、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、アクセスポイント装置APxと連携して送信電力を制御したり、アクセスポイント装置APxから無線環境情報を得ることは難しい。但し、アクセスポイント装置APxは、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2と同様の無線LAN規格に基づく通信方法を用いて、無線端末STA3と通信を行う。従って、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2と同様に、アクセスポイント装置APxは、チャネルをキャリアセンスして受信電力値が閾値以上の場合、送信を待機する機能を有する。また、アクセスポイント装置APxは、他装置が送信するRTS(Request To Send:送信要求)フレームやCTS(Clear to send:送信準備完了)フレームのduration値によって待機時間が指定された場合、送信を待機する機能を有する。
無線端末STA3は、アクセスポイント装置APxとの間で無線フレームを送受信する。なお、図1において、アクセスポイント装置APxから上位網に接続する経路は省略されているが、システムサーバSV1とは別のサーバを介して上位網にアクセスすることができる。
このように、図1に示した無線LANシステム100は、連携可能なアクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2と、アクセスポイント装置AP1,AP2とは連携できないアクセスポイント装置APxとを有する。そのため、無線端末STA1および無線端末STA2は、アクセスポイント装置APxが無線端末STA3に送信するフレームの干渉を受ける場合がある。
[キャリアセンス範囲]
図2は、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2のキャリアセンス範囲の一例を示す。なお、図2において、アクセスポイント装置AP1、アクセスポイント装置AP2、無線端末STA1および無線端末STA2は、図1に示した同符号のブロックと同様の機能を有する。
ここで、キャリアセンス範囲は、アクセスポイント装置APがCCA制御により待機状態になる範囲を示し、アクセスポイント装置APは、自装置のキャリアセンス範囲内に他のアクセスポイント装置APが存在して送信中である場合、送信を待機する。なお、キャリアセンス範囲は、自装置の受信感度と他局の送信電力とに依存し、自装置の受信感度が低くても他局の送信電力が高い場合は範囲内となり、他局の送信電力が低くても自装置の受信感度が高い場合は範囲内となる。なお、受信感度は、送信フレームを検出できる受信電力値であり、アクセスポイント装置や無線端末は、送信フレームを検出した場合、復調処理を開始する。
図2(a)は、アクセスポイント装置APのキャリアセンスの範囲が大きい場合の一例を示す。図2(a)において、キャリアセンス範囲101はアクセスポイント装置AP1のキャリアセンス範囲を示し、キャリアセンス範囲102はアクセスポイント装置AP2のキャリアセンス範囲を示している。
図2(a)において、アクセスポイント装置AP2のキャリアセンス範囲102は、アクセスポイント装置AP1を含むので、アクセスポイント装置AP1が無線端末STA1に送信中、アクセスポイント装置AP2は無線端末STA2への送信を待機する。これにより、アクセスポイント装置AP1は、アクセスポイント装置AP2に影響されることなく、無線端末STA1に送信することができる。しかし、アクセスポイント装置AP1が無線端末STA1に送信中、アクセスポイント装置AP2は、アクセスポイント装置AP1の送信フレームを検出するため、無線端末STA2への送信を待機する。このため、アクセスポイント装置AP2は、送信機会を失い、スループットが減少するという問題が生じる。
そこで、図2(b)に示すように、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、他のアクセスポイント装置がキャリアセンス範囲内に入らないように、自装置のキャリアセンス範囲を小さくする。ここで、図2(b)において、キャリアセンス範囲101aは、アクセスポイント装置AP1のキャリアセンス範囲を示し、キャリアセンス範囲101aは、図2(a)に示したキャリアセンス範囲101よりも小さい。また、キャリアセンス範囲102aは、アクセスポイント装置AP2のキャリアセンス範囲を示し、図2(a)に示したキャリアセンス範囲102よりも小さい。
図2(b)において、アクセスポイント装置AP2のキャリアセンス範囲102aは、アクセスポイント装置AP1を含まないので、アクセスポイント装置AP1が無線端末STA1に送信中であっても、アクセスポイント装置AP2は無線端末STA2に送信することができる。これにより、アクセスポイント装置AP2は、図2(a)の場合に比べて無線端末STA2への送信機会が増え、スループットが増加する。
図3は、無線端末STA1および無線端末STA2のキャリアセンス範囲の一例を示す。なお、図3において、アクセスポイント装置AP1、アクセスポイント装置AP2、無線端末STA1および無線端末STA2は、図1に示した同符号のブロックと同様の機能を有する。また、図3において、キャリアセンス範囲101aおよびキャリアセンス範囲102aは、図2(b)の同符号のキャリアセンス範囲と同じである。また、キャリアセンス範囲103は無線端末STA1のキャリアセンス範囲を示し、キャリアセンス範囲104は無線端末STA2のキャリアセンス範囲を示している。
図3において、無線端末STA1および無線端末STA2は、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2の両方をキャリアセンス範囲に含むので、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2の両方が送信するフレームを受信可能である。例えば、無線端末STA1は、アクセスポイント装置AP1の送信フレームよりも先にアクセスポイント装置AP2の送信フレームを検出した場合、アクセスポイント装置AP2の送信フレームの復調処理を開始する。このため、アクセスポイント装置AP1の送信フレームを受信することができない。無線端末STA2においても同様の問題が生じる。
このように、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2がキャリアセンス範囲を小さくする制御を行って同時にフレームの送信をできるようにした場合でも、無線端末STA1および無線端末STA2において、フレームの衝突が発生する場合がある。なお、図3において、連携して動作するアクセスポイント装置APだけの場合は、アクセスポイント装置APが送信電力制御、ビームフォーミング制御およびアンテナ選択制御などを行うことにより、自装置以外の無線端末STAに自装置のフレームが検出されないように制御することも可能であるが、連携外のアクセスポイント装置APxが無線端末STA1および無線端末STA2の干渉源として存在する場合、無線端末STA1および無線端末STA2は、アクセスポイント装置APxの干渉の影響を受けることになる。
[干渉信号の一例]
図4は、連携外のアクセスポイント装置APxが存在する場合の干渉信号の一例を示す。なお、図4は干渉信号の流れを示し、本来の通信先への送信信号は省略されている。例えば図4において、アクセスポイント装置AP1から無線端末STA1への信号、アクセスポイント装置AP2から無線端末STA2への信号およびアクセスポイント装置APxから無線端末STA3への信号は、記載せずに省略されている。
図4(a)は、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2がCCA制御および送信電力制御の両方を行わない場合の干渉信号の一例を示す。図4(a)において、アクセスポイント装置AP1の送信信号は、アクセスポイント装置AP2、アクセスポイント装置APx、無線端末STA2および無線端末STA3に対する干渉信号となる。同様に、図4(a)において、アクセスポイント装置AP2の送信信号は、アクセスポイント装置AP1、アクセスポイント装置APx、無線端末STA1および無線端末STA3に対する干渉信号となる。また、アクセスポイント装置APxの送信信号は、アクセスポイント装置AP1、アクセスポイント装置AP2、無線端末STA1および無線端末STA2に対する干渉信号となる。
図4(b)は、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2がCCA制御を行うが送信電力制御を行わない場合の干渉信号の一例を示す。図4(b)において、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、CCA制御を行うので、他のアクセスポイント装置APの干渉信号を検出しないようにCCA閾値を設定する。これにより、アクセスポイント装置AP1は、アクセスポイント装置AP2の送信信号およびアクセスポイント装置APxの送信信号を検出しなくなり、アクセスポイント装置AP2およびアクセスポイント装置APxが送信中であっても待機状態にはならない。同様に、アクセスポイント装置AP2は、アクセスポイント装置AP1の送信信号およびアクセスポイント装置APxの送信信号を検出しなくなり、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置APxが送信中であっても待機状態にならない。
図4(c)は、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2がCCA制御を行わないが送信電力制御を行う場合の干渉信号の一例を示す。図4(c)において、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、送信電力制御により、自装置の無線端末STAが受信可能なレベルまで送信電力を抑える。これにより、自装置以外のアクセスポイント装置APや自装置の宛先以外の無線端末STAがキャリアセンスで自装置の送信信号を検出しないようする。これにより、例えばアクセスポイント装置AP1の送信信号は、アクセスポイント装置AP2、アクセスポイント装置APx、無線端末STA2および無線端末STA3に干渉信号として影響を与えなくなる。同様に、アクセスポイント装置AP2の送信信号は、アクセスポイント装置AP1、アクセスポイント装置APx、無線端末STA1および無線端末STA3に干渉信号として影響を与えなくなる。しかし、連携外のアクセスポイント装置APxの送信信号は、アクセスポイント装置AP1、アクセスポイント装置AP2、無線端末STA1および無線端末STA2に影響を与えるという問題がある。
図4(d)は、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2がCCA制御および送信電力制御の両方を行う場合の干渉信号の一例を示す。図4(d)において、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、CCA制御を行うので、他のアクセスポイント装置APの干渉信号を検出しないようにCCA閾値を高くする。これにより、アクセスポイント装置AP1は、アクセスポイント装置AP2の送信信号およびアクセスポイント装置APxの送信信号を検出しなくなる。同様に、アクセスポイント装置AP2は、アクセスポイント装置AP1の送信信号およびアクセスポイント装置APxの送信信号を検出しなくなる。しかし、アクセスポイント装置APxの送信信号は、無線端末STA1および無線端末STA2に対する干渉信号として影響を与える。
このように、CCA制御及び送信電力制御の有無に応じて、干渉信号が与える影響が異なるが、アクセスポイント装置APxが無線端末STA1および無線端末STA2の干渉源になるという問題は残る。
図5は、干渉信号と所望信号との時間的な関係の一例を示す。ここで、所望信号は、受信すべき本来の信号であり、例えば図1の場合、無線端末STA1の所望信号は、アクセスポイント装置AP1が無線端末STA1に送信する信号である。図5において、横軸は受信端(無線端末STAなど)における時間tを示し、縦軸は受信端での受信電力を示す。例えば図5が無線端末STA1の受信電力を示している場合、所望信号はアクセスポイント装置AP1が送信する信号、干渉信号はアクセスポイント装置APxが送信する信号である。
図5において、干渉信号の受信電力値は所望信号の受信電力値よりも小さいが、干渉信号は所望信号が到来するタイミングT2よりも早いタイミングT1で到来する。そして、干渉信号の受信電力値が無線端末STA1のキャリアセンスの閾値よりも大きい場合、タイミングT1において、無線端末STA1は干渉信号の復調処理を開始する。これにより、無線端末STA1は、干渉信号より後のタイミングT2で到来する所望信号の復調処理を行うことが難しくなる。
[待機時間]
アクセスポイント装置APおよび無線端末STAは、衝突回避(CA:Collision Avoidance)のために、フレームの送信前に待機時間(DIFS:Distributedaccess Inter Frame Space)を設けて、使用するチャネルに他の送信信号が無いことを確認する。DIFSは、他の送信信号が存在するビジー状態のチャネルから他の送信信号が検出されなくなってからアイドル状態に移行したと判断されるまでの時間である。ここで、DIFSの時間が経過しても直ぐにフレームの送信ができるわけではなく、DIFSの時間に加えてランダムバックオフ(random BO(BackOff))と呼ばれる待機時間がアクセスポイント装置APや無線端末STAにそれぞれ設定される。(random BO)の時間は、装置毎にランダムに決定される。DIFSだけの場合、複数のアクセスポイント装置APや複数の無線端末STAがDIFSの終了後に同時に送信を開始する可能性があるが、(DIFS+random BO)の時間は、アクセスポイント装置AP毎および無線端末STA毎に待機時間が異なるので、送信が同時に開始されるという問題を防止できる。そして、(DIFS+random BO)の時間が最小のアクセスポイント装置APまたは無線端末STAが実質的な送信権を獲得し、フレームの送信を開始することができる。ここで、(DIFS+random BO)の時間が最小ではないアクセスポイント装置APおよび無線端末STAは、キャリアセンスで先に送信されたフレームを検出して送信を待機するので、フレームの衝突を防止できる。
図6は、CCA制御を行わない場合にアクセスポイント装置AP1から無線端末STA1にフレームを送信する場合の一例を示す。なお、図6は、図2(a)の状態に対応する。
図6において、横軸は時間tを示し、時間軸の上側のフレームは送信フレームを示し、時間軸の下側のフレームは受信フレームを示す。ここで、図6は、アクセスポイント装置AP1の(DIFS+random BO)よりもアクセスポイント装置AP2の(DIFS+random BO)の方が長い場合の一例を示している。従って、図6において、タイミングT10から(DIFS+random BO)の待機時間が開始され、タイミングT11でアクセスポイント装置AP1の待機時間(DIFS+random BO)が先に終了する。そして、アクセスポイント装置AP1は、無線端末STA1宛のフレーム151を送信する。フレーム151は、無線端末STA1により受信されて復調されるが、アクセスポイント装置AP2および無線端末STA2にもフレーム151が到来し、キャリアセンスで検出される。なお、図6において、アクセスポイント装置AP1が送信したフレーム151は、少し遅延して無線端末STA1に届くように描いてあるが、遅延時間はフレーム151の送信時間に比べて殆ど無視できるので、タイミングT11で無線端末STA1、無線端末STA2および無線端末STA3に届くものと考えてよい。また、以降で説明する他の図においても送信フレームの送信タイミングに対して受信フレームの受信タイミングを少し遅らせて描いてある。
図6において、アクセスポイント装置AP2は、タイミングT11の時点でチャネルが空いていない状態(ビジー状態)と判断し、(DIFS+random BO)の待機時間のカウンタを停止して、チャネルがアイドル状態になるまで待機する。そして、タイミングT12でチャネルが空いたことを検出し、(DIFS+random BO)の待機時間のうち未カウントのバックオフ時間(remained BO)とDIFSとの合計の待機時間(DIFS+remained BO)のカウントを再開する。なお、アイドル状態を検出するためのDIFSの期間は、無線LAN規格により、フレームの送信が終了する毎に毎回、設ける必要がある。そして、アクセスポイント装置AP2は、タイミングT12で再開したカウンタのカウント値が(DIFS+remained BO)の待機時間に達すると、チャネルに他のフレームが存在しないことを確認して、無線端末STA2宛のフレーム152を送信し、フレーム152は、無線端末STA2により受信されて復調される。
このように、アクセスポイント装置AP1が無線端末STA1に送信中、アクセスポイント装置AP2は無線端末STA2への送信を待機する。これにより、アクセスポイント装置AP1は、アクセスポイント装置AP2に影響されることなく、無線端末STA1にフレームを送信することができる。しかし、アクセスポイント装置AP1が無線端末STA1に送信中、アクセスポイント装置AP2は無線端末STA2への送信機会を失うので、アクセスポイント装置AP2のスループットが低下するという問題がある。
[CCA制御および送信電力制御を行う場合]
図7は、CCA制御および送信電力制御を行う場合の一例を示す。なお、図7は、図2(b)の状態に対応する。
図7において、図6と同様に、横軸は時間tを示し、時間軸の上側のフレームは送信フレームを示し、時間軸の下側のフレームは受信フレームを示す。また、図7は、図6と同様に、アクセスポイント装置AP1の(random BO)の期間よりもアクセスポイント装置AP2の(random BO)の期間の方が長い場合の一例を示している。図7において、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、連携してCCA制御を実行し、互いに干渉しないように制御される。これにより、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、互いに重複してフレームの送信が可能である。また、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、連携して送信電力制御を実行する。例えばアクセスポイント装置AP1は、アクセスポイント装置AP2の宛先の無線端末STA2がアクセスポイント装置AP1の送信フレームの復調処理を開始しないように、送信電力を抑える制御を行う。同様に、アクセスポイント装置AP2は、アクセスポイント装置AP1の宛先の無線端末STA1がアクセスポイント装置AP2の送信フレームの復調処理を開始しないように、送信電力を抑える制御を行う。これにより、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、互いの送信フレームによる干渉が生じることなく、無線端末STA1および無線端末STA2にそれぞれ送信することができる。
図7において、タイミングT10からチャネルのアイドル状態を検出して送信可能になるまでの(DIFS+random BO)の待機時間が開始され、タイミングT11でアクセスポイント装置AP1の待機時間(DIFS+random BO)が先に終了する。そして、アクセスポイント装置AP1は、無線端末STA1にフレーム151を送信する。フレーム151は、無線端末STA1により復調される。さらに、アクセスポイント装置AP1が無線端末STA1へフレーム151を送信中のタイミングT21でアクセスポイント装置AP2の待機時間(DIFS+random BO)が終了し、アクセスポイント装置AP2は、無線端末STA2にフレーム152を送信する。フレーム152は、無線端末STA2により復調される。
ここで、図7の例では、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、互いの送信信号によりCCA制御を行わないように、CCA閾値を高くする。これにより、片方のアクセスポイント装置APが送信中であっても他方のアクセスポイント装置APは待機状態にならずに送信が可能であると判断する。さらに、アクセスポイント装置APの宛先の無線端末STAが他方のアクセスポイント装置APの送信フレームをキャリアセンスで検知しない受信電力値になるように送信電力を抑える。これにより、受信端の無線端末STAにおける干渉信号の受信電力値がキャリアセンス範囲外の値になり、復調エラーを起こすことなく所望信号のフレームを受信できる。
このように、全てのアクセスポイント装置APが連携して動作して、CCA制御や送信電力制御を行えば、無線端末STAにおける干渉問題は解決ができるように見えるが、連携外のアクセスポイント装置APxが存在する場合、無線端末STAにおける干渉の問題は解決されない。
[連携外のアクセスポイント装置APxが先に送信を開始する場合]
図8は、連携外のアクセスポイント装置APxが先に送信を開始する場合の一例を示す。なお、図8は、図4(d)の状態に対応し、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、連携して送信電力制御とCCA制御とを実行し、互いに干渉しないように制御されるので、連携外のアクセスポイント装置APxが存在しない場合、重複して送信が可能である。なお、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、アクセスポイント装置APxの送信フレームを受信してもキャリアセンスでビジー判定とならないようにCCA閾値を高く設定しており、アクセスポイント装置APxが送信中であっても送信可能と判断する。また、アクセスポイント装置APxは、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2の送信電力制御により、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2の送信フレームを検出しないので、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2が送信中であっても送信可能と判断する。ここで、図8において、タイミングT10,T11,T21は、図7と同じである。また、図7と同様に、アクセスポイント装置AP1は、タイミングT11にフレーム151の送信を開始し、アクセスポイント装置AP2は、タイミングT21にフレーム152の送信を開始する。
図8において、連携外のアクセスポイント装置APxは、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2よりも待機時間(DIFS+random BO)が短いタイミングT31に無線端末STA3宛のフレーム153を送信する。
ここで、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、図7と同様に、連携してCCA制御および送信電力制御を行っているので、互いの送信フレームが相手の無線端末STAで復調されることはないが、連携外のアクセスポイント装置APxは、無線端末STA1および無線端末STA2に対して送信電力制御を行っていないので、アクセスポイント装置APxが送信するフレーム153は、無線端末STA1および無線端末STA2で検出され、復調処理が開始される。このため、無線端末STA1および無線端末STA2は、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2が送信する所望のフレーム(フレーム151およびフレーム152)を復調することが難しい。
このように、連携外のアクセスポイント装置APxが干渉源として存在する場合、且つ、アクセスポイント装置APxが先に送信を開始する場合、連携して動作するアクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、無線端末STA1および無線端末STA2への送信を失敗する可能性がある。
[連携外のアクセスポイント装置APxが先に送信を開始しない場合]
図9は、連携外のアクセスポイント装置APxがアクセスポイント装置AP1の後に送信を開始する場合の一例を示す。なお、図9は、図8と同様に図4(d)の状態に対応し、アクセスポイント装置AP1、アクセスポイント装置AP2およびアクセスポイント装置APxは、互いの送信信号を検出しないので、アクセスポイント装置APxは、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2が送信中であっても送信可能と判断するが、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置APxの送信開始タイミングが図8の例と異なる。
図9において、アクセスポイント装置AP1は、タイミングT11aでアクセスポイント装置APxのタイミングT31aよりも先にフレーム151の送信を開始する。これにより、アクセスポイント装置APxの無線端末STA3宛てのフレーム153よりもアクセスポイント装置AP1の無線端末STA1宛てのフレーム151の方が先に無線端末STA1に到着するので、無線端末STA1は、フレーム151の復調を開始できる。しかし、アクセスポイント装置AP2は、アクセスポイント装置APxよりも後のタイミングT21でフレーム152の送信を開始するので、アクセスポイント装置AP2の無線端末STA2宛てのフレーム152よりもアクセスポイント装置APxの無線端末STA3宛てのフレーム153の方が先に無線端末STA2に到着する。このため、無線端末STA2は、干渉信号の無線端末STA3宛てのフレーム153の復調を開始し、自端末宛のフレーム152の復調を行うことが難しい。なお、図9の例では、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、送信電力制御により、送信電力を抑えているので、無線端末STA3がアクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2の送信フレームの復調を開始することなく、アクセスポイント装置APxの送信フレームを復調することができる。ここで、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、送信電力制御だけでなく、ビームフォーミング制御やアンテナ選択制御などを組み合わせて無線端末STA3がアクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2の送信フレームをキャリアセンスで検知しないように制御してもよい。
このように、連携外のアクセスポイント装置APxが無線端末STA3への送信を開始するタイミングよりも後に送信する場合、連携して動作しているアクセスポイント装置APであっても連携外のアクセスポイント装置APxの送信フレームによる干渉の問題が生じる。
[本実施例に係る無線LANシステム100]
そこで、本実施例に係る無線LANシステム100では、連携外のアクセスポイント装置APxが、連携関係にあるアクセスポイント装置AP1,AP2よりも先に送信を開始しないように制御する。
ここで、本実施例に係るアクセスポイント装置APは、送信を禁止する期間(duration値)を示す無線LANフレームを自装置宛に送信する。本実施形態では、duration値を示す無線LANフレームの一例として、無線LAN規格の制御フレーム(CTSフレーム)を自装置宛に送信する[CTS to self]の機能を利用する。CTSフレームは、duration値を記述できるフィールドを有する。duration値は、送信を禁止するNAV(Network Allocation Vector)期間を示し、例えば、アクセスポイント装置APは、他のアクセスポイント装置AP、アクセスポイント装置APxおよび無線端末STAの送信をNAV期間(実際には(DIFS+random BO+NAV期間)だけ待機させることができる。
また、CTSフレーム、RTSフレームおよびデータフレームには、送信終了後、予め決められたSIFS(Short Inter Frame Space)と呼ばれるキャリアセンスを行うための待ち時間が無線LAN規格で規定されている。そして、自装置宛のCTSフレームを送信したアクセスポイント装置APは、SIFSの期間、キャリアセンスで他の送信フレームを検出しなかった場合、データフレームの送信を開始する。
本実施例において、CTSフレームを送信するアクセスポイント装置APは、CTSフレームのNAV期間がSIFSの期間よりも長くなるように、duration値を設定する。そして、CTSフレームを送信するアクセスポイント装置APは、SIFSの期間の経過後にフレームの送信を開始する。これにより、CTSフレームを送信するアクセスポイント装置APは、連携外のアクセスポイント装置APxおよび連携する他のアクセスポイント装置APよりも早くフレームの送信を開始することができる。
さらに、本実施例において、CTSフレームを送信するアクセスポイント装置APは、連携する他のアクセスポイント装置APに対して連携経路を介して一定期間を指定する。ここで、連携する他のアクセスポイント装置に対して指定される一定期間は、自装置宛のCTSフレームで指定するNAV期間よりも短く、且つ、SIFSの期間以上の期間である。なお、連携経路は、例えばシステムサーバSV1を経由する経路であってもよいし、連携するアクセスポイント装置AP間で直接、無線フレームを送受信する経路であってもよい。
ここで、連携するアクセスポイント装置APにおいて、互いに他方のアクセスポイント装置APが送信するフレームを自装置の送信先の無線端末STAが検出しない場合、所定期間はSIFSの期間と同じであってもよい。つまり、連携するアクセスポイント装置APは、同じタイミングでフレームの送信を開始してもよい。
一方、一方のアクセスポイント装置APにおいて、他方のアクセスポイント装置APが送信するフレームを自装置の送信先の無線端末STAが検出する虞がある場合、所定期間は(SIFS+データフレームのプリアンブル期間)以上に設定する。ここで、データフレームのプリアンブル期間は、無線端末STAがデータフレームの復調処理を行うための受信タイミングや周波数同期を確立するための期間である。従って、無線端末STAは、干渉信号が無い状態でプリアンブル期間まで受信できれば復調処理を行うための同期を確立できる。さらに、無線端末STAは、プリアンブル期間以降に干渉信号が到来した場合でも、所望信号のSINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)が高ければ正常に復調処理を行うことができる。なお、連携するアクセスポイント装置APは、送信電力制御、ビームフォーミング制御およびアンテナ選択制御により、送信先の無線端末STAにおけるSINRができるだけ高くなるように制御する。これにより、連携するアクセスポイント装置APは、先に送信されたデータフレームのプリアンブル期間後に重複してデータフレームの送信を開始できるので、送信機会を増やすことができる。
なお、連携するアクセスポイント装置APは、送信電力制御、ビームフォーミング制御およびアンテナ選択制御により、送信先の無線端末STAにおけるSINRができるだけ高くなるように制御した場合でも正常な受信が難しいと予測される場合(例えば送信先の無線端末STAにおける自装置の信号レベルに対して干渉信号のレベルが高過ぎる場合)、 (SIFS+データフレーム期間)以上の期間または(SIFS+データフレーム期間+SIFS+ACK期間)以上の期間を一定期間として指定する。これにより、アクセスポイント装置APは、自装置のデータフレームの送信が終了してACK信号の受信を完了するまで、他の装置の送信を待機させることができ、確実にデータフレームの送信を終了することができる。
さらに、連携外のアクセスポイント装置APxは、[CTS to self]のCTSフレームのduration値で指定されるNAV期間の終了後、(DIFS+random BO)または(DIFS+AIFS)の期間、キャリアセンスを実施してチャネルがアイドル状態であるか否かを判断し、アイドル状態である場合、フレームの送信を開始する。ここで、(NAV期間+DIFS+random BO)または(NAV期間+DIFS+AIFS)の期間は、連携するアクセスポイント装置APがデータフレームの送信を開始してプリアンブル期間が終了するまでの期間以上に設定される。これにより、連携外のアクセスポイント装置APxがフレームの送信を開始した時点において、連携するアクセスポイント装置APは、データフレームの送信を開始してプリアンブル期間が終了した状態になっている。このため、連携するアクセスポイント装置APの送信先の無線端末STAは、既に受信処理を開始しており、連携外のアクセスポイント装置APxが送信するフレームの影響を低減でき、送信機会を増やすことができる。なお、連携するアクセスポイント装置APは、送信電力制御、ビームフォーミング制御およびアンテナ選択制御により、送信先の無線端末STAにおけるSINRができるだけ高くなるように制御する。
なお、連携するアクセスポイント装置APは、送信電力制御、ビームフォーミング制御およびアンテナ選択制御により、送信先の無線端末STAにおけるSINRができるだけ高くなるように制御した場合でも正常な受信が難しいと予測される場合(例えば送信先の無線端末STAにおける自装置の信号レベルに対して干渉信号のレベルが高過ぎる場合)、 (SIFS+データフレーム期間)以上の期間または(SIFS+データフレーム期間+SIFS+ACK期間)以上の期間を[CTS to self]のCTSフレームのduration値で指定する。これにより、アクセスポイント装置APは、自装置のデータフレームの送信が終了してACK信号の受信を完了するまで、連携外のアクセスポイント装置APxの送信を待機させることができ、干渉信号を受けることなく確実にデータフレームの送信を終了することができる。
図10は、待機時間と送信タイミングの一例を示す。図10において、横軸は時間tを示している。
タイミングT41において、アクセスポイント装置AP1は、自装置宛のCTSフレーム161の送信を開始する。CTSフレーム161は、アクセスポイント装置AP2およびアクセスポイント装置APxで受信される。ここで、アクセスポイント装置AP1は、送信電力制御を行わずにCTSフレーム161を送信する。この理由は、アクセスポイント装置AP1が送信電力制御を行って送信電力を下げた場合、例えば干渉源の連携外のアクセスポイント装置APxでCTSフレーム161が受信されない可能性があるためである。アクセスポイント装置APxがCTSフレーム161を受信できない場合、アクセスポイント装置APxは、CTSフレーム161で指定されたNAV期間の送信待機を行わないので、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP1が送信するデータフレームの宛先となる無線端末STAは、アクセスポイント装置APxの影響を受けることになる。
タイミングT42において、CTSフレーム161の送信が終了する。ここで、アクセスポイント装置AP1は、CTSフレーム161の送信終了からキャリアセンスを行うためのSIFS期間、送信を待機する。
タイミングT43において、CTSフレーム161の終了後、SIFSの期間が経過すると、アクセスポイント装置AP1は、無線端末STA1宛てのデータフレーム162の送信を開始する。
タイミングT44において、CTSフレーム161の終了後、連携するアクセスポイント装置AP1から連携経路を介して指定された一定期間が経過すると、アクセスポイント装置AP2は、無線端末STA2宛てのデータフレーム163の送信を開始する。
タイミングT45において、CTSフレーム161の終了後、CTSフレーム161で指定されたNAV期間が経過すると、アクセスポイント装置APxは、さらに、(DIFS+random BO)または(DIFS+AIFS)の期間、キャリアセンスを実施してチャネルがアイドル状態であるか否かを判断する。
タイミングT46において、アクセスポイント装置APxは、チャネルがアイドル状態である場合、無線端末STA3宛のデータフレーム164の送信を開始する。
このように、本実施例に係るアクセスポイント装置AP1は、自装置宛のCTSフレーム161を送信して、連携外のアクセスポイント装置APxの送信を待機させておき、自装置の無線端末STA1へのデータフレーム162の送信を開始する。そして、アクセスポイント装置AP1は、連携するアクセスポイント装置AP2にアクセスポイント装置APxの待機時間よりも短い一定期間を指定して送信を待機させた後、アクセスポイント装置AP2は、自装置の無線端末STA2へのデータフレーム163の送信を開始する。さらに、アクセスポイント装置APxは、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2が送信を開始した後、自装置の無線端末STA3へのデータフレーム164の送信を開始する。これにより、アクセスポイント装置AP1、アクセスポイント装置AP2およびアクセスポイント装置APxは、互いに重複してデータフレームを送信できるので、各装置のデータフレームの送信が完了後に次のデータフレームの送信を順番に行う場合に比べて送信機会を増やすことができる。
図11は、本実施例に係るアクセスポイント装置AP1の一例を示す。ここでは、アクセスポイント装置AP1の場合について説明するが、アクセスポイント装置AP2も同様の構成を有する。
図11において、アクセスポイント装置AP1は、無線通信部201、制御部202、情報管理部203、制御情報交換部204および同時送信判断部205を有する。
無線通信部201は、IEEE802.11a、IEEE802.11b、IEEE802.11gおよびIEEE802.11n、IEEE802.11nおよびIEEE802.11acなどの無線LAN規格に基づく通信方法を用いて、2.4GHz帯、5GHz帯などの無線周波数で無線端末と通信を行う。例えば、無線通信部201は、到来する信号を受信して、送信元の情報と受信電力値とを制御部202に通知する。また、無線通信部201は、制御部202の指令に基づいて、送信電力値を変えることができる。ここで、無線通信部201は、複数のアンテナを有し、各アンテナに供給する無線信号の位相を制御することによって、電波の放射パターンを変えることができる。例えば、無線通信部201は、放射パターンのヌル点を干渉信号が到来する方向に配置することにより、干渉信号を抑制することができる。逆に、無線通信部201は、放射パターンの利得が大きい部分を通信先の無線端末STAの方向に配置することにより、弱い電波でも通信することができる。また、無線通信部201は、複数のアンテナのそれぞれが異なる方向に指向性を有する場合、制御部202の指令により、複数のアンテナのうち、干渉信号が到来する方向のアンテナを選択せずに、通信先の所望信号が到来する方向のアンテナを選択する。これにより、無線通信部201は、干渉信号を抑え、所望信号の受信レベルを上げてSINRを向上することができる。
制御部202は、装置全体の動作を制御する。例えば、制御部202は、無線端末STAとの間で送受信するフレームの種類(制御フレーム、データフレームなど)を識別する。そして、制御フレームである場合は、制御フレームに格納されている制御情報に応じた処理を行う。例えば制御フレームがACKフレームの場合、制御部202は、無線端末STAが正常に受信したことを確認する。そして、ACKフレームが返ってこない場合、制御部202は、データフレームの再送を行う。また、制御部202は、無線通信部201を制御して、CCA制御、送信電力制御、ビームフォーミング制御、アンテナ選択制御の少なくとも一つの制御を行って、自装置の送信先の無線端末STA以外の無線端末STAが自装置の送信フレームを検出しないように制御する。これにより、制御部202は、自装置の送信先の無線端末STA以外の無線端末STAが自装置の送信フレームを検出して復調を開始するのを防止する。
さらに、制御部202は、指定した待機時間(NAV期間)だけ送信を待機させるための自装置宛の制御フレームを無線通信部201から送信した後、指定した待機時間よりも短い待機時間(SIFS期間)が経過後に自装置に接続される無線端末STA宛てのフレームを送信する。これにより、制御部202は、アクセスポイント装置APxの送信を指定した時間だけ待機させ、先に送信する自装置の送信フレームとアクセスポイント装置APxの送信フレームとの衝突を回避することができる。
情報管理部203は、接続されている無線端末STAの情報や後述する制御情報交換部204が収集した情報などを管理する。無線端末STAの情報は、例えば無線端末STAのMAC(Media Access Control)アドレスや搭載機能(CCA制御や送信電力制御の有無など)に関する情報と、無線端末STAがアクセスポイント装置APやアクセスポイント装置APxから受信するビーコンフレームの受信電力値や送信元アドレスなどの無線環境情報である。
制御情報交換部204は、接続される無線端末STAや無線通信部201から得られた受信電力値や送信元アドレスなどの無線環境情報をネットワークNW1上にあるシステムサーバSV1へ転送する。そして、システムサーバSV1は、他のアクセスポイント装置APに無線環境情報を送信する。逆に、システムサーバSV1は、他のアクセスポイント装置APが収集した無線環境情報を制御情報交換部204に送信する。なお、制御情報交換部204は、システムサーバSV1を介さずに直接、連携する他のアクセスポイント装置APに無線環境情報を送信してもよい。この場合、制御情報交換部204は、他のアクセスポイント装置APが収集した無線環境情報を直接、他のアクセスポイント装置APから受信する。
また、制御情報交換部204は、無線端末STAがインターネットなどの上位網にアクセスするときのデータフレームもシステムサーバSV1に送信する。逆に、制御情報交換部204は、システムサーバSV1から受信する無線端末STA宛のデータフレームを制御部202および無線通信部201を介して無線端末STAに送信する。
同時送信判断部205は、制御情報交換部204が収集した情報を参照し、自装置に接続される無線端末STAに対して他の連携するアクセスポイント装置APや連携外のアクセスポイント装置APxと同時に送信が可能であるか否かを判断する。そして、同時送信判断部205は、同時送信が可能であると判断した場合、CCA制御の閾値、送信電力値、ビームフォーミングの制御値およびアンテナの選択先などを決定し、制御部202に出力する。制御部202は、同時送信判断部205が決定したCCA制御の閾値、送信電力値、ビームフォーミングの制御値およびアンテナの選択先などに応じて無線通信部201を制御し、自装置に接続される無線端末STAにフレームを送信する。これにより、アクセスポイント装置APは、他のアクセスポイント装置APやアクセスポイント装置APxからの干渉信号を検出しないようにしたり、自装置の送信信号が他のアクセスポイント装置APや自装置以外の無線端末STAの干渉信号にならないようにすることができる。
このように、本実施例では、連携するアクセスポイント装置AP間で無線環境情報を交換して同時通信が可能であるか否かを判別し、CCA制御、送信電力制御、ビームフォーミング制御およびアンテナ選択制御などを実施して、同時通信を行うことができる。さらに、本実施例では、アクセスポイント装置APは、指定した待機時間だけ送信を待機させるための自装置宛の制御フレームを送信し、指定した待機時間よりも短い待機時間が経過後に自装置に接続される無線端末STA宛てのフレームを送信することにより、干渉源のアクセスポイント装置APxの送信を待機させて、自装置の送信フレームとアクセスポイント装置APxの送信フレームとの衝突を回避することができる。
図12は、キャリアセンスの閾値を制御する処理例を示す。図12において、アクセスポイント装置APは、宛先の無線端末STAが受信感度の制御を行うことができず、連携外のアクセスポイント装置APxが干渉源として存在する場合、CCA閾値を高くしないように制御する。
ステップS101において、アクセスポイント装置APは、周辺の無線環境情報を収集する。例えば図1に示したアクセスポイント装置AP1は、アクセスポイント装置AP2、アクセスポイント装置APxおよび無線端末STAが送信するフレームの受信電力値や送信元アドレスなどの無線環境情報を収集する。同様に、アクセスポイント装置AP2は、アクセスポイント装置AP1、アクセスポイント装置APxおよび無線端末STAが送信するフレームの受信電力値や送信元アドレスなどの無線環境情報を収集する。そして、アクセスポイント装置AP1は、連携するアクセスポイント装置AP2が収集した無線環境情報を取得し、アクセスポイント装置AP2は、連携するアクセスポイント装置AP1が収集した無線環境情報を取得する。これにより、アクセスポイント装置AP1は、自装置が送信するフレームに対して、無線端末STA1における受信電力値、無線端末STA2における受信電力値、アクセスポイント装置AP2における受信電力値、アクセスポイント装置AP2やアクセスポイント装置APxが送信するフレームの自装置での受信電力値などの無線環境情報を取得することができる。アクセスポイント装置AP1は、収集した無線環境情報に基づいて、アクセスポイント装置AP2や無線端末STA2に影響を与えない送信電力値を求めることができる。アクセスポイント装置AP2についても同様に、収集した無線環境情報に基づいて、アクセスポイント装置AP1や無線端末STA1に影響を与えない送信電力値を求めることができる。
ステップS102において、アクセスポイント装置APは、宛先の無線端末STAが干渉信号の影響を排除する制御が可能であるか否かを判別する。アクセスポイント装置APは、判別結果がYesの場合、ステップS103の処理に進み、判別結果がNoの場合、ステップS105の処理に進む。
ここで、干渉信号の影響を排除する機能は、例えば受信感度の制御などである。また、接続される可能性がある無線端末STAの機能情報を無線端末STAの固有の識別番号(MACアドレスなど)に対応させてシステムサーバSV1またはアクセスポイント装置APに予め登録しておくことにより、無線端末STAが干渉信号の影響を排除する制御が可能であるか否かを知ることができる。
ステップS103において、アクセスポイント装置APは、宛先の無線端末STAが干渉信号の復調処理を開始しないように調整可能であるか否かを判別する。アクセスポイント装置APは、判別結果がYesの場合、ステップS104の処理に進み、判別結果がNoの場合、ステップS106の処理に進む。
ここで、干渉信号の復調処理を開始しないように調整するには、例えば図3で説明したように、アクセスポイント装置APの送信電力を低くするか、無線端末STAの受信感度を低くしてキャリアセンス範囲を小さくする必要がある。なお、アクセスポイント装置APが無線端末STAに対して受信感度を変更するように制御する方法として、例えば無線LANの制御フレームにより無線端末STAに直接通知する方法やその他の回線(モバイル回線等)を利用して無線端末STAに直接通知する方法を用いることができる。或いは、無線端末STA自身が接続先のアクセスポイント装置APの送信フレームに対する受信電力値を計測し、送信フレームを復調するのに必要な最小限の受信感度を設定する方法を用いることができる。さらに、必要な最小限の受信感度を求める数式や受信感度の決定手順をアクセスポイント装置APが無線端末STAに通知する方法を用いることができる。そして、アクセスポイント装置APは、無線端末STAが上記のような受信感度を変更する機能を有さない場合、干渉信号の復調処理を開始しないように調整できないと判断する。
ステップS104において、アクセスポイント装置APは、送信機会が多くなるようにCCA制御の閾値を高くする制御を実施する。これにより、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、重複してそれぞれの無線端末STA1および無線端末STA2にフレームを送信することができる。
ステップS105において、アクセスポイント装置APは、無線端末STAが干渉信号の復調処理を実施しているか否かを判別する。アクセスポイント装置APは、判別結果がYesの場合、ステップS106の処理に進み、判別結果がNoの場合、ステップS104の処理に進む。ここで、無線端末STAが干渉信号の復調処理を実施しているか否かは、例えばIEEE802.11kの規格に基づく処理を実施することにより判別できる。無線端末STAは、各アクセスポイント装置APから送信されたビーコンフレームの受信電力値や送信元アドレスなどを自端末の接続先のアクセスポイント装置APに報告する。例えば、アクセスポイント装置APは、送信先の無線端末STAが報告する情報の中に、アクセスポイント装置APxのアドレスと受信電力値の情報が含まれている場合、無線端末STAがアクセスポイント装置APxの干渉信号を検出する可能性があると判断できる。そして、無線端末STAがアクセスポイント装置APxの干渉信号を検出する可能性がある場合、且つ、アクセスポイント装置APxがフレームを送信している場合、アクセスポイント装置APは、無線端末STAが干渉信号の復調処理を実施していると判断できる。なお、アクセスポイント装置APxがフレームを送信しているか否かは、例えばアクセスポイント装置APがアクセスポイント装置APxのフレームを検出しているか否かにより判別できる。
ステップS106において、アクセスポイント装置APは、CCA制御の閾値を高くしないように制御する。これにより、アクセスポイント装置APは、アクセスポイント装置APxの送信中に待機状態になり、無線端末STAにおけるフレームの衝突を防止できる。
このように、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、周辺の無線環境情報を収集して共有することにより、干渉信号の影響を受けないように制御することができる。
図13は、制御フレーム([CTS to self])を送信するか否かを判断する処理の一例を示す。なお、図13のフローチャートは、連携可能なアクセスポイント装置APのいずれかのアクセスポイント装置APがチャネルを使用する権利(アクセス権)を取得したときの処理内容を示している。図13の説明では、アクセスポイント装置AP1の動作例を説明するが、制御フレームを送信するか否かを判断する処理をアクセスポイント装置AP2が実行する場合もアクセスポイント装置AP1の場合と同様に行われる。この場合の動作説明では、図13の説明におけるアクセスポイント装置AP1とAP2を入れ替えればよい。
ステップS201において、連携可能なアクセスポイント装置AP1は、キャリアセンスを行って送信可能なタイミングになったか否かを判別する。アクセスポイント装置AP1は、送信可能なタイミングになるまでステップS201の処理を繰り返し、送信可能なタイミングになった場合はステップS202の処理に進む。例えば、アクセスポイント装置AP1は、送信チャネルがアイドル状態であるか否かを確認するためのDIFSの期間において、送信チャネルのキャリアセンスを行って他の装置の信号が検出されない場合、当該チャネルがアイドル状態であると判断する。さらに、アイドル状態がランダムに設定されるバックオフ期間(random BO)の経過後も継続している場合に、フレーム送信の開始が可能なタイミングとなる。
ステップS202において、アクセスポイント装置AP1は、同時に送信を予定している他のアクセスポイント装置AP2の有無や無線環境情報などをシステムサーバSV1または連携するアクセスポイント装置AP2から直接取得する。
ステップS203において、アクセスポイント装置AP1は、同時に送信を予定している他のアクセスポイント装置AP2が存在し、且つ、自装置または連携する他のアクセスポイント装置AP2のいずれかの宛先の無線端末STAが干渉の影響を受ける可能性が有るか否かを判別する。アクセスポイント装置AP1は、判別結果がYesの場合、ステップS204の処理に進み、判別結果がNoの場合、ステップS205の処理に進む。
ステップS204において、アクセスポイント装置AP1は、送信電力制御、ビームフォーミング制御およびアンテナ選択制御などの受信範囲を狭める処理を実施せずに、NAV期間を指定する自装置宛の制御フレーム(CTSフレーム)を送信する。
ステップS205において、CTSフレームを送信したアクセスポイント装置AP1は、直ぐにデータフレームの送信を開始する。
このように、連携可能なアクセスポイント装置AP1は、同時送信予定の連携する他のアクセスポイント装置AP2が存在し、且つ、自装置または連携する他のアクセスポイント装置AP2のいずれかの宛先の無線端末STAが干渉の影響を受ける場合、干渉源となるアクセスポイント装置APxの送信を待機させるために自装置宛のCTSフレームの送信を行って干渉の影響が生じないようにすることができる。
図14は、制御フレーム([CTS to self])を受信した後の処理例を示す。なお、図14において、連携するアクセスポイント装置AP1は、図13で示した処理によって他の連携するアクセスポイント装置AP2が送信した制御フレームを受信する。そして、制御フレームを受信したアクセスポイント装置AP2は、制御フレームを送信したアクセスポイント装置AP1から連携経路を介して指定された一定期間(SIFS+データフレームのプリアンブル期間)後に、送信を開始する。これにより、制御フレームを受信した連携するアクセスポイント装置AP2は、制御フレームのNAV期間よりも早期に送信を開始できると共に、制御フレームを送信したアクセスポイント装置AP1が先に送信を開始したデータフレームのタイミングや周波数同期に影響を与えないように待機時間を制御することができる。以下、制御フレームを受信したアクセスポイント装置AP2の処理内容について詳しく説明する。図14の説明では、アクセスポイント装置AP2の動作例を説明するが、制御フレームを受信した後の処理をアクセスポイント装置AP1が実行する場合もアクセスポイント装置AP2の場合と同様に行われる。この場合の動作説明では、図14の説明においてアクセスポイント装置AP1,AP2を入れ替えるとともに、無線端末STA1,STA2とを入れ替えればよい。
ステップS301において、アクセスポイント装置AP2は、連携する他のアクセスポイント装置AP1が送信した制御フレームを受信する。
ステップS302において、制御フレームを受信したアクセスポイント装置AP2は、制御フレームを送信したアクセスポイント装置AP1と同時に送信予定のデータフレームが存在するか否かを判別する。制御フレームを受信したアクセスポイント装置AP2は、判別結果がYesの場合、ステップS303の処理に進み、判別結果がNoの場合、処理を終了する。ここで、同時に送信予定のデータフレームが存在するか否かは、例えば送信バッファにデータフレームが蓄積されているか否かによって判別できる。
ステップS303において、アクセスポイント装置AP2は、制御フレームの受信完了後、予め指定された一定期間だけデータフレームの送信を待機する。
ステップS304において、アクセスポイント装置AP2は、一定期間の送信待機が完了後、連携するアクセスポイント装置AP1が先に送信したデータフレームの受信に影響を与えないように送信側の制御処理を実施して、無線端末STA2にデータフレームの送信を開始する。ここで、連携するアクセスポイント装置AP1が先に送信したデータフレームの受信に影響を与えないように実施する送信側の制御処理は、例えば、送信電力制御、ビームフォーミング制御およびアンテナ選択制御などである。アクセスポイント装置AP2は、上記の制御処理を行うことにより、送信先の無線端末STA2以外の無線端末STA1における自装置の送信フレームの受信電力値ができるだけ小さくなるようにする。
このように、後で送信を開始するアクセスポイント装置AP2は、先に送信を開始したデータフレームの受信タイミングや周波数同期などの処理に影響を与えないように一定期間、送信を待機した後、送信を開始する。これにより、先に送信を開始したアクセスポイント装置AP1の送信先の無線端末STA1は、復調処理に必要な受信タイミングや周波数同期を確実に行うことができる。さらに、後で送信を開始するアクセスポイント装置AP2は、連携するアクセスポイント装置AP1が先に送信したデータフレームの受信に影響を与えないように送信側の制御処理を実施して、無線端末STA2にデータフレームの送信を開始する。これにより、先に送信を開始したアクセスポイント装置AP1の送信先の無線端末STA1は、後で送信を開始したアクセスポイント装置AP2の干渉信号の影響が低減され、SINRを高くすることができ、所望フレームを誤りなく復調することができる。
図15は、連携外のアクセスポイント装置APxの干渉の影響を受けないように同時送信を実現する一例を示す。なお、図15は、図8および図9と同様に図4(d)の状態に対応し、無線端末STA1および無線端末STA2は、アクセスポイント装置APxの送信フレームをキャリアセンスで検出する状況にある。従って、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2がフレームの送信を開始する前にアクセスポイント装置APxが送信を開始した場合、無線端末STA1および無線端末STA2は、アクセスポイント装置APxの送信フレームを復調する可能性がある。
そこで、本実施例では、図10で説明したように、アクセスポイント装置AP1が自装置宛のCTSフレーム161を送信する。ここで、図15は、図4(d)の状態に対応するが、アクセスポイント装置AP1が自装置宛のCTSフレームを送信するとき、送信電力制御が無い状態(図4(b)または図4(a)と同様の状態)で送信する。つまり、送信権を獲得したアクセスポイント装置AP1が送信するCTSフレームは、連携外のアクセスポイント装置APx、連携するアクセスポイント装置AP2および各無線端末STAなどの周辺の装置で受信される。そして、周辺の装置は、CTSフレームのduration値で指定するNAV期間+αの期間だけ送信を待機する。ここで、αの期間は、先に送信権を獲得したアクセスポイント装置AP1がCTSフレーム161の送信を開始した時点で残っていた(random BO)の残期間(remained BO)と、無線LAN規格で規定されている送信権獲得前に設ける必要があるキャリアセンスの期間(DIFS)との合計の期間である。
なお、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2は、自装置宛のCTSフレームの送信時以外において送信電力制御、ビームフォーミング制御およびアンテナ選択制御などの少なくとも一つを行ってアクセスポイント装置APxを含む他のアクセスポイント装置APのキャリアセンスで検出されないように制御する。これにより、例えば、アクセスポイント装置AP1が送信中であってもアクセスポイント装置AP2は送信可能であり、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2が送信中であってもアクセスポイント装置APxは送信可能である。
図15において、図7から図9と同様に、タイミングT10から(DIFS+random BO)の待機時間のカウントが開始される。
タイミングT41において、アクセスポイント装置AP1の待機時間(DIFS+random BO)が先に終了し、アクセスポイント装置AP1がチャネルのアクセス権を獲得する。そして、アクセスポイント装置AP1は、自装置宛のCTSフレーム161を送信電力制御無しで送信する。フレーム161は、アクセスポイント装置AP2およびアクセスポイント装置APxで受信され、アクセスポイント装置AP2およびアクセスポイント装置APxは、CTSフレーム161のduration値で指定されるNAV期間の待機を要求される。ここで、アクセスポイント装置AP2は、CTSフレーム161を送信したアクセスポイント装置AP1と連携しているので、アクセスポイント装置AP1から連携経路を介してNAV期間よりも短く、且つ、SIFS期間よりも長い一定期間の送信待機が指示される。
タイミングT42において、CTSフレーム161の送信が終了し、アクセスポイント装置AP1はSIFS期間の送信待機、アクセスポイント装置AP2は一定期間の送信待機、アクセスポイント装置APxは、(NAV期間+DIFS+(remained BO))の期間の送信待機、をそれぞれ実行する。
タイミングT43において、アクセスポイント装置AP1は、SIFS期間が終了し、無線端末STA1宛てのデータフレーム151の送信を開始する。
タイミングT44において、アクセスポイント装置AP2は、一定期間が終了し、無線端末STA2宛てのデータフレーム152の送信を開始する。
タイミングT45において、アクセスポイント装置APxは、(NAV期間+DIFS+(remained BO))期間が終了し、無線端末STA3宛てのデータフレーム153の送信を開始する。
タイミングT46において、アクセスポイント装置AP1の無線端末STA1宛てのデータフレーム151の送信が終了する。
タイミングT47において、アクセスポイント装置AP2の無線端末STA2宛てのデータフレーム152の送信が終了する。
タイミングT48において、アクセスポイント装置APxの無線端末STA3宛てのデータフレーム153の送信が終了する。
ここで、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2が連携して動作し、送信電力制御、ビームフォーミング制御およびアンテナ選択制御などの送信側の制御処理を行って、互いに相手の送信フレームが無線端末STA1および無線端末STA2で検出されないように制御できる場合、一定期間はSIFS期間と同じであってもよく、アクセスポイント装置AP1の無線端末STA1宛てのデータフレーム151とアクセスポイント装置AP2の無線端末STA2宛てのデータフレーム152とは干渉しないので、同時に送信を開始することができる。
或いは、アクセスポイント装置AP2の送信フレームがアクセスポイント装置AP1の無線端末STA1の干渉源となる可能性がある場合、アクセスポイント装置AP1は、一定期間を(SIFS+アクセスポイント装置AP1のデータフレーム151のプリアンブル期間)に設定する。これにより、タイミングT44でアクセスポイント装置AP2がデータフレーム152の送信を開始するときには、無線端末STA1はデータフレーム151のプリアンブル部分まで受信を終了している。これにより、無線端末STA1は、データフレーム151に対して受信タイミングや周波数同期を確立できる。さらに、アクセスポイント装置AP1は、送信電力制御、ビームフォーミング制御およびアンテナ選択制御などの送信側の制御処理を行うことにより、無線端末STA1における他のフレームに対するSINRを高くすることができる。そして、アクセスポイント装置APxの送信フレームに対するSINRが十分に高ければ、データフレーム151がデータフレーム153と重複した場合でも、無線端末STA1はデータフレーム151の復調処理を誤りなく行うことができる。
同様に、アクセスポイント装置AP2は、送信電力制御、ビームフォーミング制御およびアンテナ選択制御などの送信側の制御処理を行うことにより、無線端末STA2における他のフレームに対するSINRを高くすることができる。そして、アクセスポイント装置APxの送信フレームに対するSINRが十分に高ければ、データフレーム152がデータフレーム153と重複した場合でも、無線端末STA2はデータフレーム152の復調処理を誤りなく行うことができる。
また、アクセスポイント装置APxは、アクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2が送信電力制御、ビームフォーミング制御およびアンテナ選択制御などの送信側の制御処理を行うことにより、アクセスポイント装置APxの無線端末STA3がアクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2の送信フレームを検出しないように制御される。これにより、アクセスポイント装置APxの送信先の無線端末STA3は、アクセスポイント装置APxが送信するデータフレーム153をアクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2が送信するデータフレーム151およびデータフレーム152に干渉されずに受信することができる。
このように、アクセスポイント装置AP1が無線端末STA1に送信中に、アクセスポイント装置AP2が無線端末STA2への送信を開始し、さらにアクセスポイント装置AP1およびアクセスポイント装置AP2が無線端末STA1および無線端末STA2に送信中に、アクセスポイント装置APxが無線端末STA3への送信を開始することができるので、送信機会を増やすことができ、スループットを向上することができる。
ここで、RTSフレームやCTSフレームで指定するNAV期間は、データフレームの送信が終了してACKを受信するまでの予想期間以上に設定されるのが一般的である。これに対して、本実施例に係る無線LANシステム100では、自装置宛のCTSフレームで指定するNAV期間をできるだけ短く設定する。これにより、連携外のアクセスポイント装置APxは、連携するアクセスポイント装置APがデータフレームを送信中であっても送信を開始できるので、他装置の送信完了を待って自装置の送信を開始する場合に比べて送信機会を増やすことができる。
以上、説明したように、本実施例に係る無線LANシステム100は、連携するアクセスポイント装置AP間では周辺の無線環境情報を収集して干渉が生じないように送信側の制御処理を行うことにより、連携するアクセスポイント装置APは互いのデータフレームを重複して送信することができる。また、本実施例に係る無線LANシステム100は、連携外のアクセスポイント装置APxの送信を待機させておき、連携するアクセスポイント装置APが先にデータフレームの送信を開始することにより、連携外のアクセスポイント装置APxの干渉の影響を低減することができる。