本開示に係る有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、光透過性を有する基板1と、有機発光体10とを備えている。有機発光体10は、第1電極3、有機発光層4及び第2電極5を有する。有機EL素子は、基板1と有機発光体10との間に、第1樹脂層21と第2樹脂層22とを有する樹脂部2を備えている。樹脂部2は、第1樹脂層21と第2樹脂層22との間に、凹凸界面20を有する。凹凸界面20は、第1の凹凸構造2Aと第2の凹凸構造2Bとを有する。第2の凹凸構造2Bは、第1の凹凸構造2Aよりも凹凸が小さい。第2の凹凸構造2Bは、凹凸がランダムである。
図1は、有機EL素子の一例である。図1は図1A及び図1Bから構成される。図1Aは有機EL素子の層構成を示し、図2Bはそのうちの一部を拡大して示している。図1A及び図1Bでは、有機EL素子の層構成を模式的に示しており、実際の層の厚みや凹凸の大きさや形状等はこの図とは異なるものであってよい。
基板1は光透過性を有する。基板1は、光を透過させるものであればよく、透明であっても半透明であってもよい。基板1は透明であることがより好ましい。基板1は、ガラス基板、樹脂基板などで構成することができる。基板1がガラスで構成された場合、ガラスは水分の透過性が低いので、基板1側からの水分の浸入を抑制することができる。一方、基板1が樹脂で構成された場合、破損時の飛散を抑制することができ、安全性及び取り扱い性を高めることができる。
有機EL素子は、基板1側の面から光を取り出す構造にすることができる。この構造は、いわゆるボトムエミッション構造と呼ばれる。もちろん、両面から光を取り出すことのできる両面取り出し構造であってもよい。
基板1の有機発光体10とは反対側の面(光取り出し面)には、光拡散性を有する層が設けられてもよい。光拡散性を有する層は、例えば、光学フィルムが貼り付けられることにより形成され得る。光拡散性を有する層が設けられると、基板1から光をより多く取り出すことができる。また、光が拡散されることによって、見る角度による色の変化を少なくすることができる。
有機発光体10は、第1電極3、有機発光層4及び第2電極5の積層体によって構成されている。有機発光体10は、第1電極3、有機発光層4及び第2電極5が厚み方向に積層された構造と定義できる。有機発光体10は、基板1に支持されている。有機発光体10は、基板1がベース基板となって形成されるものであってよい。
第1電極3は光透過性を有する電極である。また、第2電極5は、第1電極3と対となる電極である。一の態様では、第1電極3は陽極を構成し、第2電極5は陰極を構成することができる。他の態様では、第1電極3は陰極を構成し、第2電極5は陽極を構成することができる。要するに、二つの電極のうちの一方が陽極となり、他方が陰極となれば、二つの電極間に電気を流すことが可能である。第1電極3は、光透過性を有するため、光取り出し側の電極を構成することができる。また、第2電極5は光反射性を有していてもよい。その場合、第2電極5側に向って発せられる発光層からの光を、第2電極5で反射させて基板1側から取り出すことができる。また、第2電極5は光透過性の電極であってもよい。第2電極5が光透過性の場合、基板1とは反対側の面(背面)から光を取り出す構造にすることが可能である。あるいは、第2電極5が光透過性の場合、第2電極5の背面(有機発光層4とは反対側の面)に光反射性の層を設けることによって、第2電極5の方向に進行した光を反射させて、基板1側から光を取り出すことが可能である。その際、光反射性の層は、散乱反射性であってもよいし、鏡面反射性であってもよい。
第1電極3は、透明な電極材料を用いて構成することができる。例えば、導電性の金属酸化物などを好ましく用いることができる。透明金属酸化物としては、ITO、IZO、AZOなどが例示される。第1電極3は、スパッタ法、蒸着法、塗布法などで形成され得る。第1電極3の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、10nm〜1000nmの範囲にすることができる。
第2電極5は、適宜の電極材料を用いて構成することができる。例えば、第2電極5は、AlやAgなどにより形成することができる。第2電極5は蒸着法やスパッタ法などで形成され得る。第2電極5の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、10nm〜1000nmの範囲にすることができる。
有機発光層4は、発光を生じさせる機能を有する層であり、通常、ホール注入層、ホール輸送層、発光層(発光ドーパントを含む層)、電子輸送層、電子注入層、中間層などから適宜選ばれる複数の層によって構成されるものである。有機発光層4の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、60〜300nm程度にすることができる。
有機発光層4の積層構造は、例えば、第1電極3を陽極とし、第2電極5を陰極とした場合、第1電極3側から順に、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層とすることができる。なお、積層構造は、これに限定されるものではなく、例えば、発光層の単層としたり、ホール輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造にしたり、ホール輸送層と発光層との積層構造にしたり、発光層と電子輸送層との積層構造にしたりすることができる。また、発光層は単層構造でも多層構造でもよく、例えば発光色が白色の場合には、発光層中に赤色、緑色、青色の3色のドーパント色素をドーピングしたり、赤、緑、青の発光層を積層させたりしてもよい。また、対となる二つの電極に挟んでこの電極間に電圧を印加した際に発光が生じる積層構造を1つの発光ユニットとした場合に、複数の発光ユニットが光透過性及び導電性を有する中間層を介して積層されたマルチユニット構造になっていてもよい。マルチユニット構造とは、対となる電極(陽極と陰極)の間に、厚み方向に重なる複数の発光ユニットを備えた構造である。
有機EL素子は、樹脂部2を有している。樹脂部2は、樹脂により構成される。樹脂部2は層であってよい。樹脂部2は、基板1と有機発光体10との間に配置されている。本形態では、樹脂部2は、基板1に接している。また、樹脂部2は、第1電極3に接している。
樹脂部2は、第1樹脂層21と第2樹脂層22とを有する。樹脂部2はいわゆる複層構造となっている。樹脂部2は、基板1側から第1樹脂層21と第2樹脂層22とをこの順で有している。樹脂部2では、第1樹脂層21は基板1側に配置される。第2樹脂層22は第1電極3側に配置される。樹脂部2は光透過性を有する。そのため、有機発光体10からの光を基板1に取り出すことができる。第1樹脂層21は基板1に接していてよい。第2樹脂層22は第1電極3に接していてよい。
第2樹脂層22は、第1樹脂層と屈折率が異なることが好ましい。すなわち、第1樹脂層21と第2樹脂層22とは屈折率が異なっていることが好ましい。樹脂部2を屈折率の異なる二つの樹脂層で構成することによって、有機発光体10からの光をより多く基板1側に取り出すことができる。ここで、屈折率は、可視光波長での屈折率を意味する。可視光波長の代表波長として550nmが例示される。
樹脂部2は凹凸界面20を有する。凹凸界面20は、第1樹脂層21と第2樹脂層22との間に設けられている。凹凸界面20が設けられることにより、有機発光体10から基板1側に向かう光は全反射が抑制される。凹凸界面20は、第1樹脂層21と第2樹脂層22との界面である。有機EL素子では、通常、有機発光体10を構成する有機層の屈折率と、基板1の屈折率との間には差(屈折率差)があり、この屈折率差に起因する全反射が生じ得る。有機層とは有機発光体10内の有機物を含む層である。例えば、有機層はガラスよりも屈折率が高くなりやすく、有機層の屈折率が基板1の屈折率より高くなる場合が多い。すると、有機層から基板1に向かう光のうち、基板1の表面に垂直な方向に対して高角度で基板1に侵入する光(斜め方向から侵入する光)は、角度が大きくなると、屈折率差によって基板1の表面で全反射し、基板1に入りにくくなる。しかしながら、凹凸界面20が形成されていると、この凹凸界面20によって光を散乱させることができ、全反射する角度の光をより多く基板1側に取り出すことができる。そのため、光取り出し性を効果的に高めることができる。
樹脂部2では、二つの樹脂層の界面で容易に凹凸界面20を形成することができる。また、樹脂部2が二つの層で構成されていると、凹凸界面20が樹脂部2の内部に形成されるため、樹脂部2の両面を平坦化することが可能になる。例えば、基板1側から積層する場合、第2樹脂層22が第1樹脂層21の被膜層として機能して、凹凸が平坦化されるため、有機発光体10を安定して設けることができる。そのため、凹凸に起因する断線不良やショート不良を抑制することができる。また、被覆層を設けた場合、高さ(深さ)の大きい凹凸界面20を設けた場合であっても、有機発光体10を良好に積層形成することが可能になる。このように、第2樹脂層22は平坦化層として機能することが可能である。また、二つの樹脂層は透明であり光透過性を有するため、光を有効に取り出すことができる。
第1樹脂層21と第2樹脂層22とは、どちらの屈折率が大きくてもよい。第1樹脂層21と第2樹脂層22との間には凹凸界面20が設けられているため、二つの樹脂層のどちらの屈折率が高くても光取り出し性を高めることができる。第2樹脂層22の屈折率が第1樹脂層21の屈折率よりも大きいことが好ましい一態様である。この場合、有機層側に屈折率の高い樹脂層を配置して、有機層との屈折率差を低減して光を凹凸界面20に侵入させることができるため、より多くの光を取り出せる可能性がある。この態様は、第1樹脂層21が低屈折率層となり、第2樹脂層22が高屈折率層となる。この場合の屈折率の高低は、樹脂層同士の相対的なものであってよい。また、第1樹脂層21の屈折率が第2樹脂層22の屈折率よりも大きくてもよい。その場合、基板1側に屈折率の高い樹脂層を配置して、基板1と有機層との間の屈折率差を調整することが可能になる。
第2樹脂層22は、基板1よりも屈折率が大きいことが好ましい一態様である。それにより、屈折率差を低減して、光取り出し効率をさらに高めることができる。第2樹脂層22は、可視光波長領域での屈折率が1.75以上であることが好ましい。それにより、屈折率差をより低減して、広い角度において全反射ロスを抑制して、光をより多く取り出すことができる。基板1の屈折率は、例えば、1.3〜1.55の範囲である。第2樹脂層22の屈折率の上限は、特に限定されるものではないが、例えば2.2であってよく、あるいは2.0であってもよい。また、隣接する層である第1電極3との間の屈折率差を小さくすることが好ましい。例えば、この屈折率差を1.0以下にすることができる。
第1樹脂層21は、屈折率が1.3〜1.52の範囲内であることが好ましい一態様である。それにより、光をより多く取り出すことができる。第1樹脂層21と基板1との間の屈折率差は小さい方がよい。例えば、この屈折率差を1.0以下にすることができる。第1樹脂層21の屈折率が基板1の屈折率よりも小さいことも好ましい。その場合、第1樹脂層21と基板1との界面での全反射を抑制することができる。もちろん、樹脂部2では、凹凸界面20での光の散乱によって光を取り出すことができるので、第1樹脂層21は基板1よりも屈折率が高くてもよい。第1樹脂層21の屈折率は1.5より小さくてもよい。第1樹脂層21の屈折率を1.5よりも低くする手段としては、中空ナノ粒子を添加する、分子骨格中にフッ素を添加する、などが例示される。基板1と第1樹脂層21とは、屈折率が低いほどよい。屈折率が大気の屈折率1に近づくほど、基板1と大気との界面での全反射が発生しにくくなる。基板1及び第1樹脂層21の屈折率の下限は理想的には1であるが、それよりも大きくてよい。
樹脂部2、すなわち、第1樹脂層21及び第2樹脂層22は、樹脂により形成されている。それにより、屈折率を容易に調整することができるとともに、凹凸の形成と凹凸の平坦化とを簡単に行うことができる。樹脂材料を用いた場合、比較的高屈折率のものを容易に得ることができる。また、樹脂は塗布によって層を形成することができるため、表面が平坦面となった層をより簡単に形成することができる。
第1樹脂層21及び第2樹脂層22に用いる材料としては、アクリル系やエポキシ系などの有機樹脂が例示される。樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などが例示される。樹脂は紫外線硬化性樹脂であることが好ましい。紫外線硬化性樹脂では加熱することなく、もしくは比較的低温の加熱で、樹脂を硬化できるため、熱履歴を抑えることができる。また、樹脂には、樹脂を硬化させるための添加剤(硬化剤、硬化促進剤、硬化開始剤など)が添加されていてもよい。樹脂は、屈折率を調整する粒子を含有することにより、高屈折率化又は低屈折率化され得る。例えば、金属酸化物などの高屈折率粒子を含有すると、高屈折率の樹脂層を形成することができる。また、例えば、細孔を有する粒子などの低屈折率粒子を含有すると、低屈折率の樹脂層を形成することができる。二つの樹脂層は光吸収性が低いことが好ましい。それにより、光をより多く基板1側に取り出すことができる。樹脂層は、消衰係数kがなるべく小さいことが好ましく、理想的にはk=0(または測定不能なレベルの数値)となることが好ましい。
第2樹脂層22と第1電極3との間の界面は、平坦な面であることが好ましい。この界面は、第2樹脂層22の表面によって形成される。第2樹脂層22が第1樹脂層21を被覆すると、第2樹脂層22の表面は平坦になり得る。この面が平坦になることにより、有機発光体10をより安定して形成することができ、ショート不良や積層不良を抑制することができる。
凹凸界面20は、大きさの異なる少なくとも二種類の凹凸構造を有する。凹凸界面20に含まれる二種類の凹凸構造は、第1の凹凸構造2Aと第2の凹凸構造2Bと定義される。二種類の凹凸構造を有することにより、光をより多く取り出すことができる。
第1の凹凸構造2Aは比較的大きさの大きい凹凸を有する。第2の凹凸構造2Bは微細な凹凸を有する。第2の凹凸構造2Bは、第1の凹凸構造2Aよりも凹凸が小さい。第1の凹凸構造2Aは、第2の凹凸構造2Bよりも凹凸が大きい。凹凸の大小とは凹凸のサイズの大小であってよい。第2の凹凸構造2Bは微細凹凸構造と呼ぶことができる。また、第1の凹凸構造2Aを大凹凸構造と呼び、第2の凹凸構造2Bを小凹凸構造と呼ぶこともできる。この場合の大小は相対的な大小である。
第1の凹凸構造2Aは、凸部11と凹部12とを有する。第1の凹凸構造2Aにおける凸部11は第1樹脂層21が有機発光体10側に突出した部分である。第1の凹凸構造2Aにおける凹部12は第1樹脂層21が基板1側に凹んだ部分である。
第1の凹凸構造2Aの凹凸のサイズは、0.4〜10μmであることが好ましい。凹凸のサイズとは、凹凸の高さであってよい。凹凸の高さとは、凹部12の底部(最も凹んだ部分)から凸部11の頂部(最も突出した部分)までの厚み方向の長さであってよい。厚み方向は基板1の表面に垂直な方向である。第1の凹凸構造2Aの凹凸サイズがこの範囲となることで、光を散乱させて基板1側に光をより多く取り出すことができる。第1の凹凸構造2Aの凹凸高さは、図1Bにおいて、高さ2Hで示されている。高さの基準となる凹部12の底部及び凸部11の頂部の位置は、厚み方向で位置が揃っていない場合は、厚み方向での位置の平均で特定され得る。なお、図2Bでは、凸部11の幅wが示されている。この幅wは、図2及び図3の説明の際に詳述する。
第2の凹凸構造2Bの凹凸は微細な凹凸である。第2の凹凸構造2Bは第1の凹凸構造2Aよりも凹凸のサイズが小さい。第2の凹凸構造2Bは、凸部13と凹部14とを有する。第2の凹凸構造2Bにおける凸部13は第1樹脂層21が有機発光体10側に突出した部分である。第2の凹凸構造2Bにおける凹部14は第1樹脂層21が基板1側に凹んだ部分である。第2の凹凸構造2Bの凹凸高さは、図1Bにおいて、高さ2hで示されている。凹部14の底部及び凸部13の頂部の位置は、厚み方向で位置が揃っていない場合は、厚み方向での位置の平均で特定され得る。高さ2hは、高さ2Hよりも小さい。高さ2hは、例えば、高さ2Hの5分の1以下であり得る。高さ2hは、高さ2Hの10分の1以下であってもよい。高さ2hは、高さ2Hの100分の1以上であり得る。第2の凹凸構造2Bは、モスアイ構造であってもよい。
第2の凹凸構造2Bは、凹凸がランダムである。それにより、光をより多く取り出すことができる。凹凸がランダムとは、第2の凹凸構造2Bの凸部13及び凹部14が不規則に配置されていることを意味する。
凹凸界面20においては、第1の凹凸構造2Aの表面に、微細凹凸構造として第2の凹凸構造2Bが設けられているといってよい。そして、第2の凹凸構造2Bにおける凹凸はランダムである。凹凸界面20が、比較的大きい第1の凹凸構造2Aと、微細な第2の凹凸構造2Bとを有することにより、光取り出し性が高まる。ここで、樹脂部2においては、有機発光体10からの光を凹凸界面20によって基板1側に取り出す。その際、第1の凹凸構造2Aは、比較的サイズの大きい凹凸を有することで、散乱性を発揮する。特に、第1の凹凸構造2Aの凹凸のサイズが、可視光領域の波長と近くなると、光散乱性が高まる。そのため、散乱によって光の進行方向を変化させて、全反射を抑制して光を基板1側に取り出すことが可能である。さらに、凹凸界面20が、微細凹凸構造として第2の凹凸構造2Bを有すると、光をさらに基板1側に取り出すことが可能になる。ここで、第1樹脂層21と第2樹脂層22との界面において、微細凹凸構造が形成されていると、微細凹凸構造が形成されていない場合と比較して、凹凸界面20における凸部11と凹部12との境界部分の電場が乱され、電場ベクトルの周回積分の不均衡が大きくなる。特に、エッジを有する凹凸界面20では、エッジ近傍の電場が乱され、電場ベクトルの周回積分の不均衡がさらに大きくなる。結果、凹凸界面20による光取出しをより効率的に行うことができるため、第1樹脂層21に侵入した光においては、より多くの光が基板1側に入る光へと変換される。第1樹脂層21の表面での反射光を反射させずに基板1側に取り出すことができ、また、基板1側に向かう光の進行方向を基板1で全反射しない角度の光に変換することが可能になるからである。さらに、サイズの大きい第1の凹凸構造2Aの表面にサイズの小さい第2の凹凸構造2Bが形成されていると、第1の凹凸構造2Aによる散乱によって進行方向が変化した光を、第2の凹凸構造2Bによって効率よく取り出すことができる。光の散乱により、光の進行方向が第1樹脂層21や基板1に侵入しないような角度のものになったとしても、微細凹凸構造でエバネッセントを乱して基板1側に向かう光にすることが可能になるからである。このため、第1の凹凸構造2Aのみを有する場合や、第2の凹凸構造2Bのみを有する場合に比べて、光取り出し性を効果的に高めることができるのである。
第2の凹凸構造2Bでは、凹凸がランダムになっている。第2の凹凸構造2Bを構成する凸部13と凹部14とがランダムに配置されているといってもよい。第2の凹凸構造2Bでは、凸部13と凹部14との配置に周期性を有していない。凹凸がランダムになっていることにより、エバネッセントを乱す効果が高まる。また、凹凸が周期性を有すると、特定の波長や方向の光を過剰に取り出したり取り出さなくなったりするおそれがある。そのため、第2の凹凸構造2Bはランダムに凹凸が形成されていることが好ましいのである。第2の凹凸構造2Bのランダム性は完全なランダムであってよい。
図1では、第2の凹凸構造2Bは、第1の凹凸構造2Aの凸部11の表面に配置されている。第2の凹凸構造2Bは、第1の凹凸構造2Aの凹部12の表面に配置されている。第2の凹凸構造2Bは、第1の凹凸構造2Aの凸部11及び凹部12の一方に配置されていてもよいが、両方に配置されていることが好ましい。それにより、エバネッセントを乱す効果をより高めることができる。第2の凹凸構造2Bは、凸部11の側面11sに配置されていてもよい。
第1の凹凸構造2Aは、凹凸の境界にエッジ2Eを有することが好ましい。凹凸の境界とは、凸部11と凹部12との境目である。エッジとは面が屈曲した部分であってよい。第1の凹凸構造2Aがエッジ2Eを有すると散乱性が高まる。そのため、光をより基板1側に取り出すことができる。また、第1の凹凸構造2Aがエッジ2Eを有する場合、エッジ2Eにおいて、電場ベクトルの周回積分に不均衡が生じる。臨界角を超えた光でもこの不均衡は生じるため、全反射する光のエネルギーのうちの一部を第2樹脂層22から第1樹脂層21に透過させることが可能になる。ここでさらに凹凸界面20が微細な凹凸構造として第2の凹凸構造2Bを有すると、エッジ2Eにおいて発生しているエバネッセントを乱すことができ、全反射するエネルギーを低減させることが可能となる。そのため、反射光となり得る光を反射させずに、この光を第1樹脂層21に侵入させることができ、基板1側に光を進行させることができる。また、エッジ2Eにおいては、エバネッセントがより多く発生しやすいため、第2の凹凸構造2Bによって、エバネッセントによって生じた成分(エバネッセント成分)をより多く取り出すことができる。そのため、光取り出し性をさらに高めることができる。
図1の例では、第1の凹凸構造2Aにおける凸部11は台地状になっている。凹部12が盆地状になっているといってもよい。凸部11の側面11sは、厚み方向に平行になっている。凹部12の側面が厚み方向に平行になっているといってもよい。あるいは、凸部11と凹部12との境目が厚み方向に平行になっているといってもよい。エッジ2Eは側面11sの上部に形成されている。エッジ2Eは側面11sの下部に形成されている。要するに、第1の凹凸構造2Aは段状の凹凸である。このため、凹凸の境目にエッジ2Eが形成されるのである。
第1の凹凸構造2Aのエッジ2Eは、角張った部分であってよい。ただし、エッジ2Eの先端は尖っていてもよいが、エッジ2Eの先端は尖っていなくてもよく、角が丸まっていてもよい。エッジ2Eは界面が例えば120度以下の角度で曲がる部分であってよい。エッジ2Eは屈曲部として構成され得る。
第2の凹凸構造2Bは、十点平均粗さRzが100nmより大きく200nmより小さいことが好ましい。それにより、エバネッセントを乱して基板1側に光を取り出す作用をより高めることができる。十点平均粗さRzが上記の範囲では、通常、可視光領域の波長の光は、散乱を受けにくい。そのため、散乱による光取り出し性の向上は得られにくい。しかしながら、第2の凹凸構造2Bの十点平均粗さRzが上記の範囲になると、可視光領域の波長よりも小さい凹凸によってエバネッセントが乱されやすくなる。そのため、大きさの異なる複数の凹凸を設けることにより、光をより多く取り出すことが可能になるのである。十点平均粗さRzは、第2の凹凸構造2Bの凹凸高さ2hであり得る。
第1樹脂層21及び第2樹脂層22の少なくとも一方は粒子を含むことが好ましい。その場合、粒子によって微細な凹凸を形成することが可能になり、第2の凹凸構造2Bをより容易に形成することができる。粒子は微細な凹凸を形成するための粒子であり得る。粒子は、平均粒径が第1の凹凸構造2Aの高さ2Hより小さいことが好ましい。粒子は、平均粒径が第1の凹凸構造2Aの高さ2Hの半分以下であることがより好ましい。
樹脂層が粒子を含む場合、第2の凹凸構造2Bの凹凸の大きさは、粒子の粒径よりも大きいことが好ましい。それにより、第2の凹凸構造2Bの凹凸よりも小さい粒子によって、第2の凹凸構造2Bを形成することができるため、効率よく微細凹凸構造を形成することができる。また、粒子が大きすぎると、全体的な凹凸の形状や微細な凹凸の形状に悪影響を及ぼすおそれがある。しかしながら、第2の凹凸構造2Bの凹凸よりも、凹凸を形成するための粒子の粒径が小さいことにより、全体的な凹凸の形状及び微細な凹凸の形状の両方に悪影響を及ぼすことなく凹凸を形成することが可能になる。そのため、光取り出し性を効果的に高めることができる。
第1樹脂層21が粒子を含むことが好ましい。基板1側から層を積層する場合、第1樹脂層21が粒子を含んでいると、その粒子によって容易に微細な凹凸を形成することができる。第1樹脂層21に含まれる粒子は、屈折率の調整のための機能を有していてもよい。それにより、屈折率の調整された第1樹脂層21を形成しやすくなり、光取り出し性をより高めることができる。
また、第1樹脂層21と第2樹脂層22との両方に粒子が含まれていてもよい。この場合、例えば、第1樹脂層21に微細凹凸を形成するための粒子が含まれ、第2樹脂層22に屈折率を調整するための粒子が含まれるようにすることができる。
なお、第2樹脂層22が、微細凹凸を形成するための粒子を含むものであってもよい。この場合、例えば、第2樹脂層22を第1樹脂層21に押し付けて形成する場合や、積層順を逆にして第2樹脂層22及び第1樹脂層21の順に樹脂部2を形成する場合などにおいて、第2樹脂層22内の粒子によって微細な凹凸を形成することができる。また、樹脂部2を転写形成する場合には、第2樹脂層22に含まれる粒子で微細な凹凸を形成し得る。ただし、作製の容易性からは、第1樹脂層21に、微細な凹凸を形成するための粒子を含むことがより好ましい。
第1樹脂層21及び第2樹脂層22のうちの粒子を含む樹脂層は、粒子の含有率が20体積%以上60体積%以下であることが好ましい。この体積率で含まれる粒子は、微細凹凸を形成するための粒子であってよい。粒子が樹脂層にこの体積率で含まれることにより、微細な凹凸を形成しやすくすることができる。第1樹脂層21が粒子を含む場合、第1樹脂層21における粒子の含有率が20体積%以上60体積%以下であることが好ましい。樹脂層においては、粒子の含有率は、30体積%以上50体積%以下であることがより好ましい。
樹脂層に含まれる粒子は、略球形状の中空粒子であることが好ましい。それにより、屈折率の調整と凹凸の形成を効率よく行うことができる。中空粒子は、特に低屈折率層となる樹脂層において用いられることが好ましい。中空によって屈折率を低下させやすくすることができる。例えば、第1樹脂層21を低屈折率層にする場合には、中空粒子を用いると、第1樹脂層21の表面の微細な凹凸を形成しながら、第1樹脂層21の屈折率を下げることができる。中空粒子は、細孔を有する粒子であり得る。中空粒子は、中空ビーズであってよい。また、中空粒子は、球形状以外の形状でもあってもよいが、略球形状であることがより好ましい。球形状以外の形状としては、ラグビーボール状、楕円体状、不定形の岩状などが挙げられる。中空粒子が略球形であると、粒子の大きさよりも大きい凹凸をより形成しやすくなる。その理由は、粒子の凝集によるものと推測される。したがって、略球形の粒子を用いると、光取り出し性の高い微細凹凸構造を効率よく形成することができる。略球形状の中空ビーズである粒子としては、中空シリカ粒子を好適に用いることができる。
樹脂層に含まれる粒子は、平均粒径が100nmより小さいことが好ましい。それにより、微細凹凸構造を効率よく形成することができる。粒子の粒径は例えばレーザー回折粒度分布計などによって測定することができる。粒子の平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、例えば、粒子の平均粒径は1nmより大きくてよい。それにより、粒子を容易に得ることができるとともに、粒子の取り扱い性が高まる。粒径1〜100nmの粒子は、ナノ粒子であってよい。ナノ粒子では、微細な第2の凹凸構造2Bを形成することが容易である。ナノ粒子はナノ微粒子と呼ばれてもよい。ナノ粒子を分散させた樹脂材料は、粒子を含有する樹脂層の形成に好適に用いられる。粒子としては、中空シリカにより構成されたナノ粒子が好適である。
第1の凹凸構造2Aは、凸部11又は凹部12が区画ごとに割り当てられて配置された構造を有することが好ましい。それにより、第1の凹凸構造2Aにおける散乱性を高めて、光をより多く取り出すことができる。
図2は、第1の凹凸構造2Aの一例を説明する説明図である。図2は図2A及び図2Bから構成される。図2は、第1の凹凸構造2Aにおける凸部11及び凹部12の割り当てが、模式的に示されている。図2では、第2の凹凸構造2Bは省略して記載している。凹凸界面20においては、第1の凹凸構造2Aは、複数の凸部11又は凹部12が面状に配置された構造となっている。複数の凸部11又は凹部12が配置される面は基板1の表面と平行な面であってよい。図2では、複数の凸部11が面状に配置されている様子が示されている。また、複数の凹部12が面状に配置された様子が示されているともいえる。第1の凹凸構造2Aは、複数の凸部11及び凹部12が面状に配置された構造であってよい。
第1の凹凸構造2Aにおいては、図2に示すように、複数の凸部11又は凹部12は、格子状の区画に一区画分の凸部11又は凹部12が割り当てられて配置されていることが好ましい。それにより、同じ大きさの凸部11及び凹部12で凹凸が形成されるため、光を効率よく面全体で散乱させることができる。複数の凸部11又は凹部12は、格子状の区画に一区画分の凸部11又は凹部12がランダムに割り当てられて配置されていることが好ましい。割り当てがランダムとなることにより、角度依存性なく光の散乱作用を高めて、より多くの光を外部に取り出すことができる。また、角度依存性なく光が取り出されると、視野角の依存性を低減して、見る角度によって色の変化が少ない発光を得ることが可能になる。格子状の区画の一例は、一区画が四角形となったものである。四角形は正方形であることがさらに好ましい。この場合、複数の四角形が縦横に敷き詰められるマトリックス状の格子(四角格子)となる。格子状の区画の他の一例は、一区画が六角形となったものである(図3B参照)。このとき、六角形は正六角形であることがさらに好ましい。この場合、複数の六角形が充填構造で敷き詰められるハニカム状の格子(六角格子)となる。なお、格子としては、三角形が敷き詰められた三角格子であってもよいが、四角格子又は六角格子の方が凹凸の制御が容易になる。
図2における第1の凹凸構造2Aは、高さが略等しい複数の凸部11がマトリックス状の凹凸の一区画(格子状の区画)ごとに割り当てられて面状に配置することにより形成されるものである。そして、第1の凹凸構造2Aは、平面視での単位領域における凸部11の面積率が各領域において略同一であるように形成されている。このような、第1の凹凸構造2Aを設けることにより、光取り出し性を効率よく向上させることができる。
図2に示す第1の凹凸構造2Aにおいて、図2Aは基板1の表面と垂直な方向から見た様子を示し、図2Bは基板1の表面と平行な方向から見た様子を示している。図2Aでは凸部11が設けられている区画を斜線で示している。図2AにおけるラインL1、L2、L3は、図2BにおけるラインL1、L2、L3にそれぞれ対応する。図2A及び図2Bでは、凹凸の一区画の幅は幅wで示されている。
図2Aでは、第1の凹凸構造2Aは、縦横に複数の正方形がマス目(行列型)のように並んで構成されるマトリックス状の凹凸区画に、凸部11が割り当てられて配置されて形成されている。各凹凸区画は面積が等しく形成されている。凹凸の一区画(一つの凹凸区画)には一つの凸部11及び凹部12のいずれかが割り当てられている。凸部11の割り当ては規則的であってもよいし、不規則であってもよい。図2の形態では、ランダムに凸部11が割り当てられている形態が示されている。図2Bに示すように、凸部11が割り当てられた区画では、第1の凹凸構造2Aを構成する材料が第1電極3側に突出することにより凸部11を形成している。また、複数の凸部11は高さが略等しく設けられている。ここで、凸部11の高さが略等しいとは、例えば、凸部11の高さを平均した場合、平均の高さの±10%以内に、あるいは好ましくは±5%以内に、凸部11の高さが収まって揃うことであってよい。
図2Bでは、凸部11の断面形状は矩形状になっているが、ひだ状、逆三角形状、台形状など適宜の形状であってよい。前述のように、凸部11は段状に突出することが好ましい。凸部11はエッジを有することが好ましい。凹部12はエッジを有することが好ましい。一の凸部11と他の凸部11とが隣り合う部分では、凸部11は連結して、大きな凸部11が形成されている。また、一の凹部12と他の凹部12とが隣り合う部分では、凹部12は連結して、大きな凹部12が形成されている。凸部11及び凹部12の連結個数は、特に限定されるものではないが、連結個数が大きくなると第1の凹凸構造2Aの散乱性が低下するおそれがあるため、例えば、100個以下、20個以下、10個以下などに適宜設定することができる。3個以上又は2個以上連続で凹部12または凸部11が続いた場合に次の領域を反転(凹の場合は凸、凸の場合は凹)させるという設計ルールを設けてもよい。このルールにより、光散乱効果が高まり、光取り出し性をより高めることが期待できる。
第1の凹凸構造2Aにおいては、単位領域における凸部11の面積率が各領域において略同一となるように形成される。例えば、図2Aでは、縦10個、横10個の合計100個の凹凸区画が図示されており、このような100区画分の領域を単位領域にすることができる。そして、このとき、凹凸界面20の面内において、凸部11の形成された面積率は、単位領域ごとにほぼ等しいものとなる。すなわち、図2Aに示すように、単位領域において、50個分の凸部11が設けられているとすると、凹凸の区画数が同じで面積の等しい他の領域においても50個分程度(例えば45〜55個又は48〜52個)の凸部11が設けられるものであってよい。単位領域は100区画分に限られるものではなく、適宜の区画数分の大きさにすることができる。例えば、1000区画、10000区画、100000区画、又はそれ以上の区画数であってもよい。凸部11の面積率は、領域の取り方によって多少異なる場合があるが、この例では、面積率は略同一であるようにする。例えば、面積率の上限及び下限の範囲を平均の10%以下にすることが好ましく、5%以下にすることがより好ましく、3%以下にすることがさらに好ましく、1%以下にすることがさらにより好ましい。面積率がより等しくなることにより面内においてより均一に光取り出し性を高めることができる。単位領域における凸部11の面積率は、特に限定されるものではないが、例えば、20〜80%の範囲内に、好ましくは30〜70%の範囲内に、より好ましくは40〜60%の範囲内に設定することができる。
凸部11及び凹部12は、単位領域内においてランダムに割り当てられて配置されることが好ましい一形態である。それにより、角度依存性なく、光をより多く取り出すことができる。例えば、白色の有機EL素子においては、角度によって色の変化が少ない白色をより得ることができる。
第1の凹凸構造2Aは、平面視における凹凸のサイズが、凹凸の高さのサイズと同程度であることが好ましい。それにより、光取り出し性をより高めることができる。平面視における凹凸のサイズは、凸部11及び凹部12の幅wであってよい。凸部11の高さは、前述のように、好ましくは0.4〜10μmの範囲である。そのため、例えば、凹凸の一区画を一辺が0.1〜100μmの正方形の範囲にすることにより、散乱性の高い第1の凹凸構造2Aを形成することができる。この一辺の長さは幅wであると言える。図3Aでは、区画の長さが幅wとして示されている。また、凹凸の一区画を形成する正方形の一辺(幅w)は0.4〜10μmであることがより好ましい。それにより、第1の凹凸構造2Aにおける凹凸の高さと幅とが近くなるため、散乱性がより高くなり得る。例えば、凹凸の一区画の一辺を1μmにすると、第1の凹凸構造2Aを精度よく形成することができる。また、単位領域は、縦1mm×横1mmの正方形の領域にしたり、あるいは、縦10mm×横10mmの正方形の領域にしたりすることができる。
ここで、図3Bのように、凹凸の区画を六角形で形成する場合、一区画の大きさは、六角形の対向する二辺の間の距離と定義することができる。図3Bでは、区画の長さが幅wとして示されている。凹凸の区画が六角形の場合、第1の凹凸構造2Aの凹凸は、六角格子の配置となる。六角格子で構成する凹凸の一区画の長さ(幅w)は、0.1〜100μmであることが好ましく、0.4〜10μmであることがより好ましい。
ところで、第1の凹凸構造2Aは、凹部12において第1樹脂層21が分断されていてもよい。その場合、第1樹脂層21は、面全体で多数の凸部11が島状に分散された層となっていてよい。例えば、凹部12の部分において、第2樹脂層22が基板1に直接接していてもよい。
第1の凹凸構造2Aを構成する複数の凸部11は同一形状のものであってよい。図2Aでは、凸部11が一つの凹凸区画全体に設けられて、平面視における形状が矩形状(長方形又は正方形)である凸部11を示しているが、これに限定されるものでなく、凸部11の平面形状は他の形状であってもよい。例えば、円状や、多角形状(三角形、五角形、六角形、八角形など)であってもよい。このとき、凸部11の立体形状は、円柱状、角柱状(三角柱、四角柱など)、角錐状(三角錐、四角錐など)といった適宜の形状であってよい。図2Bに示すように、凸部11及び凹部12は、エッジ2Eを有することがより有利である。
第1の凹凸構造2Aは、回折光学構造として形成されていてもよい。このとき、凸部11は回折光学構造となるように一定の規則性をもって設けられ得る。回折光学構造では周期性をもって凸部11が形成されることがさらに好ましい。樹脂部2が回折光学構造を有する場合、特定の種類の光の光取り出し性を向上することができる。また、樹脂部2を回折光学構造にした場合には、基板1の反対側の一面に光取り出し層(光学フィルムなど)を形成すると、光散乱を生じさせることができるため、視野角依存性の影響を低減することができる。回折光学構造においては、二次元の凹凸の周期P(周期性がない構造の場合は、凹凸の平均的な周期)は、媒質内の波長をλ(真空中の波長を媒質の屈折率で除した値)として、おおよそ波長λの1/4〜100倍の範囲で適宜設定することが好ましい。この範囲は、発光層で発光する光の波長が300〜800nmの範囲内にある場合に設定されるものであってよい。このとき、幾何光学的な効果、つまり、入射角が全反射角未満となる表面の広面積化により、光取り出し効率を向上するか、あるいは回折光による全反射角以上の光を取り出す作用により、光の取り出し効率を向上することができる。また、特に小さな周期P(たとえば、λ/4〜λの範囲)で設定した場合には、凹凸構造付近の有効屈折率が基板の表面からの距離が大きくなるにつれて徐々に低下することとなる。そのため、基板と、凹凸被覆の層(第2樹脂層22)、または電極(第1電極3)との間に、凹凸の構造を形成する層の媒質の屈折率と、被覆層又は電極の屈折率との中間の屈折率を有する薄膜層を介在させるのと同等となる。これにより、フレネル反射を低減させることが可能となる。要するに、周期Pをλ/4〜100λの範囲で設定すれば、反射(全反射あるいはフレネル反射)を抑制することができ、光取り出し効率を向上することができるものである。この中でも、周期Pがλより小さい場合はフレネルロス抑制効果しか発揮できなくなり光取り出し効果が小さくなるおそれがある。一方、20λを超えるとそれに対応して凹凸の高さも大きくすることが求められ(位相差を得るため)、被覆層(第2樹脂層22)での平坦化が容易でなくなるおそれがある。被覆層を非常に厚くする手法(例えば10μm以上)も考えられるが、透過率の低下や材料コスト、樹脂材料の場合はアウトガス増加など、非常に弊害が多いため、厚くする手法は不利益な点もある。そのため、周期Pを例えば、λ〜20λのように設定することが好ましいものである。
第1の凹凸構造2Aは、境界回折構造であってもよい。境界回折構造としては、凸部11がランダムに配置した構造が例示される。また、境界回折構造として、面内に部分的に微細領域内で形成された回折構造が、一面に配設された構造を用いることもできる。この場合、面内に独立した複数の回折構造が形成されている構造といってもよい。境界回折構造では、微細な回折構造によって、回折を利用して光を取り出すとともに、面全体の回折作用が強くなりすぎるのを抑えて、光の角度依存性を低下させることができる。そのため、角度依存性を抑制しつつ光取り出し効果を高めることができる。
完全にランダムに凸部11及び凹部12を配設する場合、凸部11又は凹部12が連続しすぎると十分に光取り出し性を高めることができなくなるおそれがある。そこで、同じブロック(凸部11及び凹部12の一方)が連続して所定個数以上並ばないというルールを設けることが好ましい。すなわち、凸部11は、格子状の区画に同一方向に所定個数以上連続して並ばないように配置され、凹部12は、格子状の区画に同一方向に所定個数以上連続して並ばないように配置されていることが好ましい。それにより、光取り出し効率を高めることができる。また、発光色の角度依存性を低減することができる。凸部11及び凹部12が連続して並ばない所定の個数は、10個以下が好ましく、8個以下がより好ましく、5個以下がさらに好ましく、4個以下がさらにより好ましい。このような配置は、ランダムを前提としつつも、ランダム性が制御されるため、ランダム制御構造と呼ぶことができる。境界回折構造はランダム制御によって形成され得る。
図3に第1の凹凸構造2Aにおける凹凸の配置の各一例を示す。図3は図3A及び図3Bから構成される。図3Aは凹凸の区画が四角形の例である。図3Bは凹凸の区画が六角形の例である。図3では、第1の凹凸構造2Aは、凸部11及び凹部12の配置がランダム性を有しつつ、同一方向に所定個数以上、同じブロック(凸部11及び凹部12)が並ばないように制御されている。図3Aでは3個以上ブロックが同一方向に並んでいない。図3Bでは4個以上ブロックが同一方向に並んでいない。ブロックの並ぶ数の平均は平均ピッチで表すことができる。ブロックとは一区画に割り当てられた凸部11又は凹部12のことである。平均ピッチは、一つのブロックの幅wを用いて表すことができる。図3Aの第1の凹凸構造2Aは、四角格子の構造で平均ピッチ3wである。図3Bの第1の凹凸構造2Aは、六角格子の構造で平均ピッチ3wである。図3では、複数の凸部11又は凹部12は、好ましくは、基板1の表面に垂直な方向から見たときに内接する楕円の軸長さ又は内接円の直径が、0.4〜4μmの範囲になる。図3に示される凹凸構造は境界回折構造と言える。
有機EL素子の製造では、基板1の上に樹脂部2が形成される。このとき、第1樹脂層21及び第2樹脂層22の順で積層され得る。
第1樹脂層21及び第2樹脂層22は、その材料を塗布することにより基板1の表面に設けることができる。材料の塗布方法は、適宜のコート法を採用することができ、スピンコートを用いてもよく、あるいは、スクリーン印刷、スリットコート、バーコート、スプレーコート、インクジェットなどの方法を用途や基板サイズなどに応じて採用することができる。塗布後に、硬化させることにより、固体状の樹脂層を形成することができる。紫外線硬化性樹脂では紫外線の照射により樹脂を硬化させることができる。熱硬化性樹脂では加熱により樹脂を硬化させることができる。
樹脂部2の凹凸界面20は適宜の方法により形成することができる。第1の凹凸構造2Aは、インプリント法により凹凸を形成することが好ましい。インプリント法によれば、第1の凹凸構造2Aのサイズの凹凸を効率よく精度高く形成することができる。また、前述のような凹凸区画ごとに凸部11又は凹部12を割り当てて凹凸を形成する場合、インプリント法を用いれば、精度高く凹凸を形成することが可能になる。インプリント法では、第1の凹凸構造2Aのエッジ2Eを容易に形成することができる。インプリント法によって凹凸を形成する場合、一つの凹凸区画は、プリントを行う一ドットにより構成されるものであってよい。あるいは複数のドットで一つの凹凸区画が構成されてもよい。インプリント法は第1の凹凸構造2Aの凹凸を形成し得るものが好ましく、例えば、ナノインプリントと称せられる方法を用いることができる。
インプリント法は大きく分けてUVインプリント法(紫外線インプリント法ともいう)と熱インプリント法があり、両者のどちらを用いてもよい。例えば、UVインプリント法を好ましく用いることができる。UVインプリント法により簡単に凹凸をプリント(転写)して第1の凹凸構造2Aの凹凸を形成することができる。UVインプリント法では、転写用のモールドが用いられる。例えば、周期2μm、高さ1μmの矩形(ピラー)構造をパターニングしたNiマスターモールドから型取りしたフィルムモールドを用いる。そして、UV硬化性のインプリント用透明樹脂(第1樹脂層21の材料)を基板上に塗布し、この基板の樹脂表面にモールドを押し付ける。その後、UV光(例えば波長λ=365nmのi線など)を基板側から基板を通して、またはモールド側からフィルムモールドを通して照射し、樹脂を硬化させる。そして、樹脂の硬化後にモールドを剥離する。このとき、モールドには事前に離型処理(フッ素系コーティング剤など)を施していることが好ましく、それにより、容易に基板からモールドを剥離することができる。これにより、モールドの凹凸形状を樹脂層に転写することができる。なお、このモールドには、第1の凹凸構造2Aの形状と対応した凹凸が設けられている。そのため、モールドの凹凸が転写されたときには、所望の凹凸形状が樹脂層の表面に形成される。例えば、モールドとして不規則に凹部が区画ごとに割り当てられて形成されているものを用いれば、不規則に凸部11が割り当てられた凹凸を得ることができる。第1樹脂層21の表面は凹凸面となる。
ここで、第1樹脂層21の材料に、粒子が含有されていることが好ましい。その場合、粒子によって、第1の凹凸構造2Aの表面に、微細な第2の凹凸構造2Bを形成することが可能である。すなわち、第1樹脂層21の材料に粒子が含まれていると、第1樹脂層21の材料の塗布後に粒子に起因した凹凸が樹脂層の表面に形成される。そして、モールドが押し付けられた際には、モールドの凹凸形状によって、第1の凹凸構造2Aが第1樹脂層21に形成されると同時に、第1樹脂層21の中に含まれる粒子によって微細な第2の凹凸構造2Bが第1樹脂層21の表面に形成される。第2の凹凸構造2Bは粒子の分散によって形成されるため、凹凸の配置はランダムであり得る。そのため、効率よく二種類の凹凸構造を有する凹凸界面20を形成することができる。第2の凹凸構造2Bを形成するための粒子の好ましい平均粒径は、前述のように1〜100nmである。
第1樹脂層21の材料の塗布及び凹凸面の形成後、第2樹脂層22を塗布する。第2樹脂層22の塗布により、凹凸面は樹脂部2の内部に配置される。第2樹脂層22の表面は、好ましくは平坦となる。第2樹脂層22の塗布では、凹凸面を被覆することができるため、容易に樹脂部2の表面を平坦化することができる。
なお、層を逆から積層する場合には、第2樹脂層22に粒子が含有されていることが好ましい。また、樹脂部2をあらかじめ他の材料に形成した後、これを基板1に転写することもでき、その場合も、第2樹脂層22に粒子を含有させて微細な第2の凹凸構造2Bを形成することが好ましい。また、第1樹脂層21が完全に硬化する前に、粒子を含有するする第2樹脂層22の材料を押し付けるようにして第2の凹凸構造2Bを形成することもできる。ところで、第2の凹凸構造2Bは、インプリントのモールド表面に第2の凹凸構造2Bに対応する微細凹凸を設け、この微細凹凸の形状を転写して形成することも可能ではある。しかしながら、第1の凹凸構造2Aと第2の凹凸構造2Bとの両方をインプリントで形成すると凹凸の制御が難しくなるおそれがある。また、第1の凹凸構造2Aと第2の凹凸構造2Bを精度よく生産することは容易ではない。そのため、第2の凹凸構造2Bは粒子によって形成することが好ましい。
有機EL素子の製造では、樹脂部2の上に、第1電極3、有機発光層4及び第2電極5が積層される。積層は、塗布、蒸着、スパッタなどから選ばれる方法が適宜選択されて行われる。第1電極3、有機発光層4及び第2電極5の積層により有機発光体10が形成される。有機発光体10は、好ましくは、封止されて外部の空気から遮断される。封止は、封止板を基板1に接着することにより行われ得る。
以上に述べたように、樹脂部2は好ましくは次のように形成することができる。まず、基板1の上に、粒子を含む樹脂によって第1樹脂層21の材料を塗布した後、インプリントにより凹凸を形成する。このとき、第1樹脂層21は未硬化又は半硬化であるか、インプリントにより形状が転写可能な状態であってよい。これにより、インプリントの凹凸によって第1の凹凸構造2Aが形成される。また、粒子に起因して第2の凹凸構造2Bが形成される。未硬化又は半硬化の場合は、好ましくは、樹脂を硬化させることにより固化した第1樹脂層21を形成する。インプリントのモールドを押し付けた状態で硬化させてもよい。その後、第1樹脂層21の凹凸面の上に、第2樹脂層22の材料を塗布し、これを硬化させる。樹脂の硬化により固化した第2樹脂層22が得られる。もちろん、第1樹脂層21の硬化と第2樹脂層22の硬化とは同時に行ってもよい。こうして、凹凸界面20を有する樹脂部2が得られる。
図4に、凹凸構造の解析図(写真)を示す。図4は図4A及び図4Bから構成される。図4により、樹脂部2に凹凸界面20を設けたことによる効果を説明する。
図4Aは、粒子を含んだ樹脂層を形成し、その樹脂層の表面の凹凸構造を解析した様子を示す図である。図4Bは、粒子を含まずに樹脂層を形成し、その樹脂層の表面の凹凸構造を解析した様子を示す図である。これらの樹脂層は第1樹脂層21として形成される。樹脂層の形成にあたっては、樹脂層の材料を基板上に塗布し、UVナノインプリント法で凹凸面を形成した。解析は電子顕微鏡により行った。
図4A及び図4Bに示されるように、第1の凹凸構造2Aにおける凸部11と凹部12との境界11Bが濃い色となって確認されている。そのため、第1の凹凸構造2Aはエッジを有していると考えられる。図4A及び図4Bでは、第1の凹凸構造2Aは六角格子状に形成されている。凹凸の一区画は六角形である。図4Aでは、凸部11及び凹部12の領域の中に、影が確認される。影は色の濃淡で表されている。一方、図4Bでは、そのような影はあまり見られない。この影は、第2の凹凸構造2Bの凹凸によるものである。
図4A及び図4Bにおいては、第1の凹凸構造2Aの凹凸パターンは、図3Bに示される六角格子の凹凸パターンである。図4から、第1の凹凸構造2Aは、ランダム性を有しつつ、凸部11及び凹部12のブロックが連続して4個以上ならばないように配置されたランダム制御構造(境界回折構造)を有することが理解される。
図4A及び図4Bにおいて、凸部11の一定領域について測定エリアSを設けることにより、その測定エリアSの十点平均粗さRzが測定される。この方法により、第2の凹凸構造2Bの十点平均粗さRzが求められる。
さらに、粒子の濃度及び平均粒径を変化させて、第2の凹凸構造2Bの十点平均粗さRzを変えた樹脂層を形成した。さらに、この樹脂層(第1樹脂層21)の上に他の樹脂層(第2樹脂層22)を形成し、樹脂部2を形成した。そして、この樹脂部2を用いて有機EL素子を作製し、第2の凹凸構造2Bの十点平均粗さRzと、全光束透過率との関係を調べた。全光束透過率は、ある界面に対してあらゆる角度から光を照射した場合において、照射する光の量の合計に対する透過する光の量の合計と定義される。
図5は、第2の凹凸構造2Bの十点平均粗さ(Rz)と全光束透過率との関係を示すグラフである。光は可視光線である。図5のグラフから分かるように、十点平均粗さRzが100nm以上になることで全光束透過率が高くなる。すなわち、第2の凹凸構造2Bの十点平均粗さRzが100nm以上になると、第1の凹凸構造2Aの光散乱の効果に加えて、エバネッセント成分を取り出す効果が得られやすくなり、光取り出し性を高めやすくすることができる。このグラフから、第2の凹凸構造2Bの十点平均粗さRzは、130nm以上が好ましく、140nm以上がより好ましく、150nm以上がさらに好ましいことが理解される。十点平均粗さRzが大きくなるほど、全光束透過率が増加している。ただし、十点平均粗さRzが200nmより大きくなると、第1の凹凸構造2Aと第2の凹凸構造2Bとの凹凸のサイズが近くなり、目的とする光取り出し効果が得にくくなるおそれがある。そのため、十点平均粗さRzは200nmより小さいことが好ましい。
図6は、図5の方法と同様にして調べた第2の凹凸構造2Bの十点平均粗さ(Rz)と全光束透過率との関係を示すグラフである。図6では、波長450nmの光と、波長550nmの光と、波長650nmの光とにおいて、十点平均粗さ(Rz)と全光束透過率との関係を示している。波長450nmの光は青色光であり得る。波長550nmの光は緑色光であり得る。波長650nmの光は赤色光であり得る。青緑赤の三色を混合することで種々の色を作り出すことができる。特に白色を得ることができる。また、図6のグラフでは、第2の凹凸構造2Bの凹凸をランダム(random)にした場合と、周期的(period)にした場合の結果を示している。粒子の配置の仕方又はモールドの微細凹凸の形状によって、第2の凹凸構造2Bの凹凸をランダムにしたり周期的にしたりすることが可能である。
図6に示すように、波長550nmの光と波長650nmの光とでは、十点平均粗さ(Rz)と全光束透過率との関係において、第2の凹凸構造2Bの周期性の有無はほとんど関係ない。しかしながら、波長450nmの光では、ランダムな場合の方が、周期性を有する場合よりも、全光束透過率が大きくなっている。そのため、第2の凹凸構造2Bでは、凹凸がランダムであることが有利である。ここで、青色光は、輝度に影響を与えやすく、青色光が多く取り出されると、より多く発光を得ると感じることができる。したがって、第2の凹凸構造2Bの凹凸をランダムにすることにより、光取り出し性を向上することができることに加えて、体感的な輝度を高めることが可能である。
図7は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子101)を備えた照明装置100の一例である。有機EL素子101は、基板1と樹脂部2と第1電極3と有機発光層4と第2電極5と封止板6とを有している。樹脂部2は第1樹脂層21と第2樹脂層22とを有する。基板1と封止板6との間には、有機発光体10を収容する収容空間7が設けられている。この収容空間7は、中空であってもよいし、充填材が充填されていてもよい。光の出射方向は、白抜き矢印で示されている。照明装置100は、有機EL素子101と、有機EL素子101の封止外部に形成された電極パッド8とを有する。電極パッド8と有機EL素子101の電極とは適宜の配線構造によって電気的に接続される。電極パッド8には配線41が接続されている。照明装置100は、配線41を備えていてよい。照明装置は配線41を集積したプラグを備えるものであってもよい。配線41は、外部の配線を通じて外部電源40と接続され得る。外部電源40に接続されることで、電極間に電気が流れ、有機発光体10が発光する。それにより、照明装置100から光を出射することができる。