JP6314912B2 - H形鋼の粗圧延用孔型及びh形鋼の粗圧延方法 - Google Patents
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Description
すなわち、従来のH形鋼の一般的な製造工程としては、連続鋳造された素材鋼片を加熱工程―粗圧延工程―中間圧延工程―仕上圧延工程を経てH形鋼が製造される。
ここで、従来のH形鋼の粗圧延方法として、例えば、特許文献1に記載されたH形鋼の粗圧延方法や特許文献2に記載にされたH形鋼用粗形鋼片の粗圧延方法が知られている。
そして、特許文献1や特許文献2に記載された従来の粗圧延方法においては、例えば、図4に示す粗圧延用孔型が用いられている。
ここで、第1割り孔型k−1は、加熱工程を経た矩形状の素材鋼片1の両端面にV字形の割り2を入れる第1突起部11を第1割り孔型k−1のロール胴長方向の中央部に設けている。第1突起部11は、左側壁面11a及び右側壁面11bが互いに先端に向けて傾斜する略山形に形成されている。
更に、押し広げ孔型k−3は、第2割り孔型k−2によって深くされたV字形の割り2を左右に広げる第3突起部13を押し広げ孔型k−3のロール胴長方向の中央部に設けている。第3突起部13は、左側壁面13a及び右側壁面13bが互いに先端に向けて傾斜する略山形に形成されている。
また、造形孔型k−5は、ボックス孔型k−4によってV字形の割り2を押し広げて平らにされた素材鋼片1に圧延を行って中間粗形鋼片3を形成するものである。
そして、この粗圧延用孔型を用いて粗圧延を行う際には、第1割り孔型k−1第2割り孔型k−2、及び押し広げ孔型k−3によって素材鋼片1の幅方向を上下にして粗圧延を行う。この際に、第1割り孔型k−1の第1突起部11によって矩形状の素材鋼片1の両端面にV字形の割り2を入れるとともに第2割り孔型k−2の第2突起部12によってV字形の割り2を深くし、更に、第3突起部13を含む押し広げ孔型k−3によってV字形の割り2を押し広げる。そして、ボックス孔型k−4によって両端面のV字形の割り2を更に押し広げて平らにし、その後、素材鋼片1の幅方向(一対のV字形の割り2の対向方向)が水平となるように素材鋼片1を転回した後、造形孔型k−5により圧延を行って中間粗形鋼片3を形成する。
この問題を解決するために、近年では、例えば、図5に示すように(図5においては、下側のロール10のみ図示)、ボックス孔型k−4を省略するとともに、第2割り孔型k−2と押し広げ孔型k−3との間の壁部10a(図4参照)を省略して第2割り孔型k−2と押し広げ孔型k−3とを連続させる孔型配置が実施されている。
即ち、第2突起部12の第1割り孔型k−1側の左側壁面12a及び押し広げ孔型k−3側の右側壁面12bのそれぞれは、ロール胴長方向に対する垂線Lとのなす角度θ2を、第1突起部11の左側壁面11a及び右側壁面11bと垂線Lとのなす角度θ1とほぼ同一とし、第2割り孔型k−2の第2突起部12によって、第1割り孔型k−1で入れたV字形の割り2を深くするようにしている。
一方、押し広げ孔型k−3の第3突起部13の左側壁面13a及び右側壁面13bと垂線Lとのなす角度θ3は、第2突起部12の第1割り孔型k−1側の左側壁面12a及び押し広げ孔型k−3側の右側壁面12bと垂線Lとのなす角度θ2よりもかなり大きく設定されている。このため、図5に示すように、第2割り孔型k−2の第2突起部12で割り2を深く入れた素材鋼片1の割り2を押し広げ孔型k−3の第3突起部13で押し広げる際に、割り2がうまく広がらずに割り2の内側が押しつぶされて疵になることがある。そうなると、素材鋼片1におけるフランジ1c(図4参照)の外面に疵が残るという問題がある。一方、前記角度θ2を前記角度θ3に近づけるように大きくして第3突起部13による素材鋼片1の割り2を円滑に押し広げようとする場合、前記角度θ2が前記角度θ1よりもかなり大きくなってしまい、第2割り孔型k−2の第2突起部12によって、第1割り孔型k−1で入れたV字形の割り2を円滑に深くすることができない。
ここで、第2割り孔型k−2の第2突起部12における右側壁面12bと上下方向に延びるロール胴長方向と垂直をなす垂線Lとのなす角度θ2は、押し広げ孔型k−3の右側の側壁面13dと上下方向に延びる垂線Lとのなす角度θ4よりも大きくなっている。即ち、第2割り孔型k−2の第2突起部12における右側壁面12bが押し広げ孔型k−3の側壁面13dに対してやや寝た形状をなしており、第3突起部13を挟んで第2突起部12における右側壁面12bと押し広げ孔型k−3の側壁面13dとが非対称となっている。このため、押し広げ孔型k−3における粗圧延が不安定になり、素材鋼片1におけるフランジ1cの部分の左右形状にばらつきが生じ易くなるという問題があった。
また、本発明の別の態様に係るH形鋼の粗圧延方法は、前述の粗圧延用孔型を用いてH形鋼を粗圧延することを要旨とする。
H形鋼を製造するに際しては、連続鋳造された素材鋼片を加熱工程―粗圧延工程―中間圧延工程―仕上圧延工程を経てH形鋼が製造される。
ここで、H形鋼の粗圧延工程においては、図1に示す粗圧延用孔型を有する上下一対のロール10,10(図1においては、下側のロール10のみ図示)により、矩形状の素材鋼片1を中間粗形鋼片3に成形していく。
ここで、第1割り孔型k−1は、加熱工程を経た矩形状の素材鋼片1の両端面にV字形の割り2を入れる第1突起部11を第1割り孔型k−1のロール胴長方向の中央部に設けている。第1突起部11は、左側壁面11a及び右側壁面11bが互いに先端に向けて傾斜する略山形に形成されている。第1突起部11の左側壁面11a及び右側壁面11bのそれぞれは、ロール胴長方向に対する垂線Lとなす角度が、θ1に設定されている。当該角度θ1は、素材鋼片1の両端面にV字形の割りを滑らかに入れられる角度に設定されている。
更に、押し広げ孔型k−3は、第2割り孔型k−2によって深くされたV字形の割り2を左右に広げる第3突起部13を押し広げ孔型k−3のロール胴長方向の中央部に設けている。第3突起部13は、左側壁面13a及び右側壁面13bが互いに先端に向けて傾斜する略山形に形成されている。
ここで、第2突起部12の一方の壁面(押し広げ孔型k−3側の壁面12b)が押し広げ孔型k−3の一方の側壁として兼用されている。つまり、第2割り孔型k−2と押し広げ孔型k−3との間の壁部は省略されており、第2割り孔型k−2と押し広げ孔型k−3とが連続されて構成されている。
また、第2突起部12の第1割り孔型k−1側の左側壁面12a及び押し広げ孔型k−3側の右側壁面12bのそれぞれは、ロール胴長方向に対する垂線Lとなす角度θ21が、第1突起部11の左側壁面11a及び右側壁面11bと垂線Lとのなす角度θ1とほぼ同一である第1傾斜部12a1,12b1を備えている。ここで、ロール胴長方向に対する垂線Lとのなす角度θ21が、第1突起部11の左側壁面11a及び右側壁面11bと垂線Lとのなす角度θ1とほぼ同一とは、前記角度θ21が前記角度θ1に対して±5°程度以内を意味する。そして、角度θ21は、20°以上30°以下であることが好ましい。
更に、第2突起部12の第1割り孔型k−1側の左側壁面12a及び押し広げ孔型k−3側の右側壁面12bのそれぞれは、ロール胴長方向に対する垂線Lとなす角度θ23が、押し広げ孔型k−3の第2突起部12とロール胴長方向に対向する側壁面13d(以下、単に側壁面13dともいう)とロール胴長方向に対する垂線Lとのなす角度θ4と同一である第3傾斜部12a3,12b3を備えている。
そして、この場合でも、第2突起部12の第1割り孔型k−1側の左側壁面12a及び押し広げ孔型k−3側の右側壁面12bのそれぞれは、ロール胴長方向に対する垂線Lとなす角度θ21が、第1突起部11の左側壁面11a及び右側壁面11bと垂線Lとのなす角度θ1とほぼ同一である第1傾斜部12a1,12b1を備えている。このため、第1割り孔型k−1の第1突起部11で入れたV字形の割り2を第1傾斜部12a1,12b1によって適切に深くすることができる。
また、前記角度θ21は、前述したように、20°以上30°以下であることが好ましい。角度θ21が20°よりも小さいと、第2突起部12が割損してしまうおそれがある。また、前記角度θ21が30°よりも大きいと、割り2を適切に深くすることができない。
つまり、押し広げ孔型k−3における第3突起部13を挟んで第2割り孔型k−2における第2突起部12の押し広げ孔型k−3側の右側壁面12bの第3傾斜部12b3と押し広げ孔型k−3の側壁面13dとを対称として押し広げ孔型k−3内の材料の拘束力をロール胴長方向において均等とし、押し広げ孔型k−3における粗圧延を安定させて素材鋼片1におけるフランジ1b1,1b2の部分の形状のばらつきを極力抑制することができる。
図3に示すように、押し拡げ孔型k−3によって素材鋼片1を粗圧延すると、素材鋼片1は、上下方向に延びるウェブ1aと、ウェブ1aの上下方向両端に形成された一対のフランジ1b(下側のフランジ1bのみ図示)とからなる鋼片となる。各フランジ1bは、第2割り孔型k−2における第2突起部12の押し広げ孔型k−3側の右側壁面12bの第3傾斜部12b3に対して肉張りをした左側のフランジ1b1と、押し広げ孔型k−3の側壁面13dに対して肉張りをした右側のフランジ1b2とからなる。この左側のフランジ1b1と右側のフランジ1b2とは、ほぼ同一の形状をなしている。
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態の種々の変形例とともに本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲は、本発明の範囲及び要旨に含まれる変形例または実施形態も網羅すると解すべきである。
例えば、本実施形態で説明した粗圧延用孔型においては、ボックス孔型k−4が上下一対のロール10に設けられていないが、必要に応じ設けても良い。
その結果を、表1に示す。
従って、第2突起部12の第1割り孔型k−1側の左側壁面12a及び押し広げ孔型k−3側の右側壁面12bのそれぞれが、垂線Lとなす角度θ22が、第1傾斜部12a1,12b1と垂線Lとのなす角度θ21に対して2°以上大きい第2傾斜部12a2,12b2を備えていることが良好な結果が得られることが理解できよう。
2 割り
3 中間粗形鋼片
10 ロール
11 第1突起部
11a 左側壁面
11b 右側壁面
12 第2突起部
12a 第1割り孔型側の左側壁面
12a1 第1傾斜部
12a2 第2傾斜部
12a3 第3傾斜部
12b 押し広げ孔型側の右側壁面
12b1 第1傾斜部
12b2 第2傾斜部
12b3 第3傾斜部
13 第3突起部
13a 左側壁面
13b 右側壁面
13d 押し広げ孔型の側壁面
k−1 第1割り孔型
k−2 第2割り孔型
k−3 押し広げ孔型
k−5 造形孔型
Claims (4)
- 上下一対のロールに孔設される第1割り孔型と、前記上下一対のロールに前記第1割り孔型に隣接して孔設された第2割り孔型と、前記上下一対のロールに前記第2割り孔型に隣接して孔設された押し広げ孔型とを少なくとも備え、前記第1割り孔型には、矩形状の素材鋼片の両端面にV字形の割りを入れる第1突起部が該第1割り孔型のロール胴長方向の中央部に設けられ、前記第2割り孔型には、前記第1割り孔型によって入れられたV字形の割りを深くする第2突起部が該第2割り孔型のロール胴長方向の中央部に設けられ、前記押し広げ孔型には、前記第2割り孔型によって深くされたV字形の割りを左右に広げる第3突起部が該押し広げ孔型のロール胴長方向の中央部に設けられており、前記第2割り孔型の前記第2突起部の一方の壁面が前記押し広げ孔型の一方の側壁として兼用される粗圧延用孔型であって、
前記第2割り孔型の前記第2突起部は、前記第1割り孔型側の左側壁面と前記押し広げ孔型側の右側壁面とがロール胴長方向に対する垂線に対して傾斜する線対称の形状をなす山形に形成されると共に、前記第2突起部の前記第1割り孔型側の左側壁面及び前記押し広げ孔型側の右側壁面のそれぞれは、ロール胴長方向に対する垂線となす角度が、前記第1突起部の左側壁面及び右側壁面と前記垂線とのなす角度と同一である第1傾斜部と、当該第1傾斜部の前記第2突起部の根元側に連続し、前記垂線となす角度が、前記第1傾斜部と前記垂線とのなす角度に対して2°以上大きい第2傾斜部と、当該第2傾斜部の前記第2突起部の根元側に連続し、前記垂線となす角度が前記押し広げ孔型の前記第2突起部とロール胴長方向に対向する側壁面と前記垂線とのなす角度と同一である第3傾斜部とを備えていることを特徴とするH形鋼の粗圧延用孔型。 - 前記第2傾斜部は、前記垂線となす角度が、前記第1傾斜部と前記垂線とのなす角度に対して3°以上7°以下大きいことを特徴とする請求項1に記載のH形鋼の粗圧延用孔型。
- 前記第1傾斜部は、前記垂線となす角度が20°以上30°以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のH形鋼の粗圧延用孔型。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のH形鋼の粗圧延用孔型を用いてH形鋼を粗圧延することを特徴とするH形鋼の粗圧延方法。
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