以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.回路装置、温度検出装置
図1に本実施形態の回路装置及びこの回路装置を含む温度検出装置の構成例を示す。本実施形態の回路装置(IC)は、検出回路10と制御部50を含む。また特性記憶部70、記憶部80(パラメーター記憶部)、出力部90、I/F部100を含むことができる。また本実施形態の温度検出装置は、回路装置とサーモパイル2とサーミスター4を含む。
サーモパイル2は例えば熱エネルギーを電気エネルギーに変換する素子(電気部品)である。サーモパイル2は例えば複数の熱電対を直列(又は並列)に接続することなどにより実現できる。サーミスター4は例えば温度変化に対して電気抵抗の変化が大きい抵抗体である。
検出回路10は、サーモパイル2、サーミスター4の検出処理を行う。例えばサーモパイル2の一端(正極側)及び他端(負極側)は、回路装置の端子(パッド等)を介して検出回路10に電気的に接続される。またサーミスター4の一端は回路装置の端子(パッド等)を介して検出回路10に電気的に接続される。サーミスター4の他端は電源VSS(GND)のノードに接続される。
検出回路10は、サーモパイル2を用いて検出された検出電圧VDAについてのA/D変換を行って、デジタル値の検出値DTAを出力する。また検出回路10は、サーミスター4を用いて検出された検出電圧VDBについてのA/D変換を行って、デジタル値の検出値DTBを出力する。
具体的には、検出回路10は、サーモパイル用検出回路20、サーミスター用検出回路30、A/D変換回路40を含む。サーモパイル用検出回路20はサーモパイル2の一端及び他端に接続され、検出電圧VDAをA/D変換回路40に出力する。例えばサーモパイル2の両端の電圧の信号増幅等を行って、検出電圧VDAを出力する。そしてA/D変換回路40は、この検出電圧VDAについてのA/D変換を行って、デジタル値の検出値DTAを出力する。
サーミスター用検出回路30は基準電流源32(基準電流生成回路)を含む。そしてサーミスター用検出回路30は、この基準電流源32からの基準電流がサーミスター4に流れることで生成される検出電圧VDBを、A/D変換回路40に出力する。A/D変換回路40は、この検出電圧VDBについてのA/D変換を行って、デジタル値の検出値DTBを出力する。
制御部50は、回路装置の各種の制御処理や各種の演算処理を行う。この制御部50はゲートアレイ回路などのロジック回路やプロセッサー等により実現できる。
特性記憶部70は第1記憶部72、第2記憶部74を含む。特性記憶部70は例えばROM等のメモリーにより実現できる。記憶部80は各種のパラメーターを記憶する。記憶部80は、例えばOTP(One Time Programmable ROM)等の不揮発性メモリー(電気的に情報のプログラミングが可能なメモリー)により実現できる。
出力部90は制御部50で測定された温度検出結果を外部に出力する。I/F(インターフェース)部100は外部デバイスとのインターフェース処理を行うものである。このI/F部100を介して、外部デバイス(マイクロコンピューター、コントローラー等)は、回路装置への各種パラメーター等の設定が可能になる。
2.全体的動作
図2は本実施形態の回路装置の全体的動作を説明する図である。本実施形態では、まず回路装置の機能設定・調整を行った後に、サーモパイル2とサーミスター4を用いた実際の温度計測を行う。
図2の機能設定・調整は、例えば回路装置(温度検出装置)の製造時に行われる。具体的には、まず回路装置の各種の機能設定やセンサー係数のパラメーターを、記憶部80(OTP)に書き込む(ステップS1)。機能設定は、例えば温度測定範囲、測定時間、或いは温度測定結果の出力形式等の設定である。センサー係数はサーモパイル2の感度係数等である。
次に管理温度での測定を行う(ステップS2)。この管理温度での測定は、自己温度(周囲温度)や対象物温度を所定温度に設定して行う測定(温度検出処理)である。例えば管理温度は、自己温度=25度、対象物温度=70度(或いは自己温度=25度、対象物温度=25度等)となる温度設定である。そして、この管理温度での測定結果に基づいて、温度測定のための補正パラメーターを算出し、記憶部80に書き込む(ステップS3)。補正パラメーターは、実際の温度測定時に、温度測定の検出結果に基づき対象物温度や自己温度を演算する際に使用するパラメーターである。
そして、このように機能設定・調整が行われた回路装置を用いて、実際の温度測定を行う(ステップS4)。そして制御部50は、検出回路10の検出結果(DTA、DTB)と、ステップS3で求められた補正パラメーターに基づいて、補正演算を行って、対象物温度や自己温度などの温度測定結果を出力する(ステップS5)。
3.サーミスター用検出回路
図3(A)、図3(B)はサーミスター用検出回路30の構成について説明する図である。図3(A)に示すようにサーミスター用検出回路30は基準電流源32を含む。
基準電流源32からの基準電流IREFがサーミスター4に流れて電流/電圧変換されることにより生成される電圧が、検出電圧VDBとしてA/D変換回路40に出力される。そしてA/D変換回路40は、検出電圧VDBについてのA/D変換を行い、検出電圧VDBのA/D変換により得られたデジタル値の検出値DTBを制御部50に出力する。
制御部50は、検出値DTBにより第1記憶部72(ROM1)を参照することで、自己温度を求める。例えば図3(B)は、サーミスター4の検出電圧の温度特性の例を示す図である。図3(B)に示すように、サーミスター4の検出電圧により自己温度を求めることができる。例えば第1記憶部72は、自己温度の値と検出値DTB(VDB)とを対応づけて記憶する。例えば自己温度の値と検出値DTBとが対応づけられた温度テーブルを記憶する。従って、制御部50は、A/D変換回路40からの検出値DTBと、第1記憶部72と用いて、自己温度を求めることができる。例えば、検出値DTBに対応する自己温度の値を、例えば第1記憶部72に記憶される温度テーブルを用いて検索することで、自己温度を求めることができる。
4.サーモパイル用検出回路
図4にサーモパイル用検出回路20の構成例を示す。サーモパイル用検出回路20は、増幅回路22、ゲイン調整回路24、基準電圧生成回路26を含む。
増幅回路22(チョッパーアンプ)は、例えばスイッチドキャパシター回路を用いた増幅回路により構成される。そして増幅回路22は、第1入力端子(反転入力端子)にサーモパイル2の一端(正側端子)が接続され、第2入力端子(非反転入力端子)にサーモパイル2の他端(負側端子)が接続される。また増幅回路22の第1入力端子のノードはバイアス電圧VBSに設定される。また増幅回路22には、その出力電圧VAQの基準となる電圧として、基準電圧生成回路26により生成された基準電圧VREFが供給される。
増幅回路22は、サーモパイル2に発生した起電圧VTP=THPP−THPM(第1電圧)を増幅する。例えば増幅回路22のゲインをGC(例えばGC=20)とした場合に、増幅回路22の出力電圧VAQは、例えば下式(1)のように表すことができる。
VAQ=−GC・VTP+VREF (1)
ゲイン調整回路24(プログラマブルゲインアンプ)は、演算増幅器OPAと、抵抗RA1、RA2により構成される。抵抗RA1の一端は増幅回路22の出力端子に接続され、抵抗RA1の他端は演算増幅器OPAの第1入力端子(反転入力端子)に接続される。抵抗RA2の一端は演算増幅器OPAの第1入力端子に接続され、抵抗RA2の他端は演算増幅器OPAの出力端子に接続される。演算増幅器OPAの第2入力端子(非反転入力端子)には、基準電圧生成回路26により生成された基準電圧VREFが供給される。抵抗RA2はその抵抗値が可変となる可変抵抗である。抵抗RA2の抵抗値を設定することで、ゲイン調整回路24のゲインが設定される。
ゲイン調整回路24は、増幅回路22の出力電圧VAQを、基準電圧VREFを基準にして、設定されたゲインで増幅し、検出電圧VDA(第2電圧)を出力する。例えば抵抗RA1、RA2の抵抗値をR1、R2とすると、ゲイン調整回路24のゲインはGA=R2/R1となる。従って、ゲイン調整回路24の出力電圧である検出電圧VDAは下式(2)のように表すことができる。
VDA=−(R2/R1)・(VAQ−VREF)+VREF
=−GA・(VAQ−VREF)+VREF (2)
上式(1)、(2)から検出電圧VDAは下式(3)のように表すことができる。
VDA=GC・GA・VTP+VREF (3)
A/D変換回路40は検出電圧VDAについてのA/D変換を行う。そして検出電圧VDAのA/D変換により得られたデジタル値の検出値DTA(電圧データ)を制御部50に出力する。なおA/D変換回路40は基準電圧VREFについてのA/D変換も行い、基準電圧VREFに対応するデジタル値についても制御部50に出力する。
なお以上では、増幅回路22やゲイン調整回路24のオフセット電圧については詳細に説明していないが、制御部50はこれらのオフセット電圧の補正処理(オフセットのキャンセル処理)についても行う。またゲイン調整回路24のゲインGAや基準電圧VREFの値については、図1のI/F部100等を介して可変に設定することができる。これにより、サーモパイル2の感度、温度範囲、精度等を考慮して、ゲインGAや基準電圧VREFを設定できるようになる。
以下に、サーモパイル2による検出値DTAから対象物温度を求める手法について説明する。検出値DTAと基準電圧VREFの差分は、サーモパイル2の起電圧VTPに対応する。制御部50は、この起電圧VTPとサーミスター4により得られた自己温度とに基づいて、対象物温度を求める。
例えば、制御部50は、起電圧VTPと自己温度により第2記憶部74(ROM2)を参照することで、対象物温度を求める。下式(4)に、起電圧VTPの算出式(理論式)を示す。
ここで、Sはサーモパイル2の特性係数である。この特性係数S(単位はV)は、例えば自己温度TTH=25度、対象物温度TP=70度の場合にサーモパイル2が生成する起電圧に相当する。Gは特性バラツキ係数(0.8〜1.2)であり、VTPOFはサーモパイル2のオフセット電圧である。Gはゲイン・バラツキに相当する。VTPOFは、例えば自己温度TTHと対象物温度TPが等しい場合(例えばTTH=TP=25度)にサーモパイル2が発生する起電圧に相当する。これらのG、VTPOFはサーモパイル2の素子バラツキ要因として、起電圧VTPに影響を与える。
下式(5)〜(7)に示すように、起電圧VTPは、サーモパイル単体の起電圧である第1起電圧VTP0と、自己温度TTHにより発生する起電圧である第2起電圧VTHと、オフセット電圧VTPOFとに分けることができる。第1起電圧VTP0は、対象物温度TPと自己温度TTHの温度差により発生する起電圧である。第2起電圧VTHは、自己温度TTHのみに起因する起電圧である。
VTP=VTP0−VTH+VTPOF (7)
第2記憶部74は、対象物温度TPと第1起電圧VTP0とを対応付けた第1温度テーブルと、自己温度TTHと第2起電圧VTHとを対応づけた第2温度テーブルとを記憶する。制御部50は、サーミスター4を用いて得られた自己温度TTHにより第2温度テーブルを検索して第2起電圧VTHを求め、上式(7)から第1起電圧VTP0を求め、その第1起電圧VTP0により第1温度テーブルを検索して対象物温度TPを求める。
なお、上記の手法に限定されず、例えば制御部50は上式(4)の起電圧VTPの算出式(理論式)に、サーモパイル2により得られた起電圧VTPとサーミスター4により得られた自己温度TTHとを代入し、演算により対象物温度TPを求めてもよい。
5.測定手法
次に、本実施形態における対象物温度の詳細な測定手法を説明する。なお、本実施形態ではセンサーとしてサーモパイル2を想定しているが、これに限定されず、温度を電気信号に変換する(温度特性を有する信号を出力する)センサーであれば本発明を適用できる。
図1に示す本実施形態の回路装置は、サーモパイル2(広義にはセンサー)からの起電圧VTP(第1電圧)を受ける検出回路10と、記憶部80と、温度検出処理を行う制御部50と、を含んでいる。記憶部80は、複数の温度測定範囲に対応する複数の動作設定値を記憶する。そして、検出回路10は、記憶部80に記憶された複数の動作設定値に基づいて起電圧VTPを検出電圧VDA(第2電圧)に変換する。制御部50は、検出電圧VDAに基づく検出値DTAを用いて温度検出処理を行う。
以下、具体的に説明する。図5に、温度検出処理のフローチャートを示す。この処理は図2のフローチャートの温度計測において実行する。なお、以下では複数の動作設定値として第1〜第3の動作設定値を用いる場合を例に説明するが、これに限定されず、第1〜第nの動作設定値(nはn≧2の自然数)を用いてもよい。
図5の処理を開始すると、制御部50は、第1の動作設定値によりサーモパイル用検出回路20の動作設定(ゲインGA、基準電圧VREF)を行い、検出回路10は、第1の測定条件MT1で測定を行う(ステップS21)。第1の測定条件MT1は、図6(A)に示すように例えば150度〜250度である第1の温度測定範囲を測定する条件である。
次に、制御部50は、第2の動作設定値によりサーモパイル用検出回路20の動作設定を行い、検出回路10は、第2の測定条件MT2で測定を行う。(ステップS22)。制御部50は、第3の動作設定値によりサーモパイル用検出回路20の動作設定を行い、検出回路10は、第3の測定条件MT3で測定を行う(ステップS23)。第2の測定条件MT2は、例えば−30度〜200度である第2の温度測定範囲を測定する条件であり、第3の測定条件MT3は、例えば200度〜400度である第3の温度測定範囲を測定する条件である。
次に、制御部50は、測定条件MT1〜MT3での測定結果に基づいて対象物温度を求めて、対象物温度TPを出力する(ステップ24)。例えば、図6(A)に示すように対象物温度が300度の場合、測定条件MT3での測定結果が得られるので、制御部50は、その測定結果から対象物温度である300度を求める。或いは、図6(B)に示すように対象物温度が190度である場合、測定条件MT1、MT2での測定結果が得られる。この場合、後述のように優先順位の高い測定条件での測定結果から対象物温度を求める。例えば、測定条件MT1、MT2、MT3の順に優先順位を予め設定しておき、制御部50は、測定条件MT1の測定結果から対象物温度である190度を求める。
以上のように、複数の動作設定値を用いて複数の温度測定範囲で測定を行うことで、各温度測定範囲について測定精度を変えることができる。例えば、第1の温度測定範囲である150度〜250度は、全体の温度測定範囲である−30度〜400度に比べて範囲が狭いので、高精度に温度測定が可能である。これは、図8等で後述のように、測定条件を変えることでA/D変換回路40に入力される検出電圧VDAの範囲(即ち温度測定範囲)が変わるためである。例えば、A/D変換のフルスケールのコード値を4096とし、コード値512〜3584(3072ステップ)の範囲で測定する場合、第1の測定条件MT1では150度〜250度の範囲を3072ステップで測定する。これは、−30度〜400度を3072ステップで測定した場合に比べて温度測定の解像度が高い。
例えばエアーコンディショナーやIH調理器等のアプリケーションに応じて詳細に知りたい温度範囲や使用頻度の高い温度範囲は異なっている。本実施形態では、その詳細に知りたい温度範囲や使用頻度の高い温度範囲(例えば150度〜250度)を高精度に測定しつつ、必要な温度範囲の全体(例えば−30度〜400度)についても温度測定が可能である。また、必要な温度範囲の全体を分割して測定できるので、その全体の測定精度も向上できる。
次に、動作設定値と温度測定範囲の関係について詳細に説明する。図4で説明したように、検出回路10は、起電圧VTPから検出電圧VDAへの変換におけるゲインGA(即ちGC・GA)を調整するゲイン調整回路24を有する。第1〜第3の動作設定値は、このゲイン調整回路24のゲインGAの設定値を含む。また、検出回路10は、起電圧VTPから検出電圧VDAへの変換における基準電圧VREFを生成する基準電圧生成回路26を有する。第1〜第3の動作設定値は、この基準電圧VREFの設定値を含む。
例えば、これらの設定値は、具体的なゲインGAや基準電圧VREFに対応したコード値として記憶部80に記憶される。ゲインGAを例にとると、例えばゲインGAを8段階に設定可能な場合、その8段階のゲインGAにコード値“0”〜“7”が対応する。第1〜第3の動作設定値として、コード値“0”〜“7”の中から選択した1つのコード値が記憶される。制御部50は、そのコード値を読み出し、対応するゲインGAをゲイン調整回路24に設定する。
このようにして第1〜第3の動作設定値により設定された検出回路10の動作状態が第1〜第3の測定条件MT1〜MT3である。即ち、実際に設定されたゲインGAや基準電圧VREFである。また、以下に説明するように、ゲインGAや基準電圧VREFによってA/D変換での温度解像度が変わるが、その温度解像度も測定条件と言える。
図7に、ゲインGA及び基準電圧VREFと、A/D変換回路40に入力される検出電圧VDAの範囲との関係を説明する説明図を示す。
A/D変換回路40の電源電圧を例えば2.8Vとする。この場合、A/D変換回路40の入力フルスケールは2.8Vとなるが、所望のA/D変換特性(例えば線形性等)が得られるように中央部の例えば0.4V〜2.4Vを使う。即ち、検出電圧VDAが0.4V〜2.4Vとなる対象物温度を測定できることになる。
例えば、サーミスター4による測定で得られた自己温度が25度であるとする。この場合、対象物温度−30度〜400度に対して、サーモパイル2からの起電圧VTPは図7の左図のように−1mV〜3mVで変化する。対象物温度が自己温度と同じ25度の場合、VTP=0Vである。上式(3)のように検出温度はVDA=GC・GA・VTP+VREFなので、基準電圧VREF=0.9Vとすると、対象物温度が25度の場合にはVDA=VREF=0.9Vとなる。例えば増幅回路22のゲインGC=20、ゲイン調整回路24のゲインGA=25とすると、図7の右図のように、基準電圧VREF=0.9Vを中心として起電圧VTPがゲインGC・GA=500で増幅され、検出電圧VDAの範囲は0.4V〜2.4Vとなる。
この場合には、対象物温度として−30度〜400度の範囲が測定可能である。即ち、動作設定値として基準電圧VREF=0.9V、ゲインGA=25を設定することで、−30度〜400度の温度測定範囲が得られる。
なお、上式(4)のようにサーモパイル2の起電圧VTPは自己温度TTHにも依存する。即ち、同じ対象物温度の範囲−30度〜400であっても、起電圧VTPの変化する範囲は自己温度によって異なる。そのため、実際には自己温度TTHの範囲を考慮して起電圧VTPの範囲を決定し、その範囲がA/D変換の入力範囲に収まるように基準電圧VREFとゲインGAを決定する。
さて、例えばA/D変換の入力フルスケール2.8Vがデジタル値4096の出力フルスケールに変換されるとする。実際には、0.4V〜2.4Vの入力範囲は、測定のマージンを含めて0.35V〜2.45VのA/D変換の入力範囲を用いてもよい。この場合、A/D変換の結果はデジタル値512〜3584の出力範囲に変換される。図7の例では、−30度〜400度の温度範囲が3584−512=3072ステップで測定されることになる。
A/D変換のステップ数は変わらないので、0.4V〜2.4Vの入力範囲に入る温度範囲を狭くすれば、より小さな温度ステップで(即ち高解像度に)測定できる。例えば、高温側をより小さい温度ステップで測定したい場合を考える。温度範囲を狭くするにはゲイン調整回路24のゲインGAを大きくすればよいが、仮に基準電圧VREFを固定したままゲインGAを大きくすると400度付近は0.4V〜2.4Vの入力範囲から外れてしまう。そこで、基準電圧VREFの設定値を下げることで400度付近を2.4V以下にできる。
図8に、ゲインGA=37.5、基準電圧VREF=0.15Vとした場合の検出電圧VDAの例を示す。ゲインGC・GA=20・37.5=750なので、上式(3)のVDA=GC・GA・VTP+VREFから対象物温度400度での検出電圧がVDA=2.4Vとなる。入力範囲の下限0.4Vは基準電圧VREF=0.15Vより高いので、下限0.4Vには25度より高い対象物温度が対応する。例えば下限0.4Vに対象物温度100度が対応する場合、高温側の100度〜400度の温度範囲が測定可能となる。この温度範囲を3072ステップでA/D変換するため、図7に比べて温度測定の分解能を高くできる。
以上のように、動作設定値により基準電圧VREFとゲイン調整回路24のゲインGAを設定することで、温度測定範囲を変えることができる。そして、複数の動作設定値を記憶部80に記憶しておくことで複数の温度測定範囲で測定することが可能となり、上述のように広い温度範囲或いは特定の温度範囲で測定精度を向上できる。
6.動作設定値の設定手法
次に、所望の温度測定範囲に対応した動作設定値(基準電圧VREF、ゲインGA)を算出する手法を説明する。この手法で算出したパラメーターは、図2の機能設定・調整のステップS1において記憶部80(OTP)に書き込む。
図8に示すように、100度〜400度を対象物温度の測定範囲に設定する場合を例にとる。まず、上式(4)に対象物温度TPの測定範囲と自己温度TTHの測定範囲を代入して、起電圧VTPの最大値Vmaxと最小値Vminを求める。図8では自己温度TTH=25度の場合を図示しているが、実際には自己温度TTHにも想定される測定範囲があり、それによる起電圧VTPの変化も含めて最大値Vmaxと最小値Vminを求める。
次に、起電圧VTPの最大値Vmaxが検出電圧VDAの最大値Vup=2.4Vとなり、起電圧VTPの最小値Vminが検出電圧VDAの最小値Vlow=0.4Vとなればよいので、下式(8)、(9)が成り立つ。
VREF+GC・GA・Vmax=Vup (8)
VREF+GC・GA・Vmin=Vlow (9)
上式(8)から上式(9)を引いて整理すると、下式(10)のようにゲインGAが求まる。そして、下式(10)を上式(9)に代入して整理すると、下式(11)のように基準電圧VREFが求まる。この下式(10)、(11)によりゲインGAと基準電圧VREFを求め、それらに対応する動作設定値(コード値)を記憶部80(OTP)に書き込む。
7.検出値の選択手法
図6(A)等で説明したように、本実施形態では、検出回路10のサーモパイル用検出回路20が、第1〜第3の動作設定値に基づいて第1〜第3の測定条件MT1〜MT3で起電圧VTP(第1電圧)を検出電圧VDA(第2電圧)に変換する。そして、検出回路10のA/D変換回路40が、検出電圧VDAをA/D変換して第1〜第3の動作設定値に対応する第1〜第3の検出値を出力する。制御部50は、その第1〜第3の検出値に基づいて対象物温度を求める。
第1〜第3の検出値をVtp1〜Vtp3とすると、例えば図6(A)や図6(B)では第1〜第3の測定条件MT1〜MT3において異なるデジタル値の第1〜第3の検出値Vtp1〜Vtp3が得られる。この第1〜第3の検出値Vtp1〜Vtp3の中から、対象物温度の算出に用いる検出値を選ぶ手法を以下に説明する。
図9、図10に、検出値を選択する処理のフローチャートを示す。この処理は、図2の温度計測及び図5のステップS24において実行する。
図9、図10の処理を開始すると、制御部50は設定値THSに応じて検出値を取得する(ステップS31)。設定値THSは、取得する検出値を設定する設定値であり、図2の機能設定・調整において記憶部80(OTP)に書き込まれたものである。各設定値THSにおいて取得する検出値はステップS31に記載した通りである。
まず、設定値THS=“11”即ち第1〜第3の検出値Vtp1〜Vtp3を取得する場合について説明する。この場合、ステップS33、S34、S36、S41、S42、S44の判定はNoである。
制御部50は、第1の検出値Vtp1がコード値512〜3584の範囲内であるか否かを判断する(ステップS32)。範囲内の場合には第1の検出値Vtp1を選択し、範囲外の場合には、第2の検出値Vtp2がコード値512〜3584の範囲内であるか否かを判断する(ステップS38)。範囲内の場合には第2の検出値Vtp2を選択し、範囲外の場合には、第3の検出値Vtp3がコード値512〜3584の範囲内であるか否かを判断する(ステップS39)。範囲内の場合には第3の検出値Vtp3を選択し、範囲外の場合にはステップS40に進む。
次に、第1〜第3の検出値Vtp1〜Vtp3とコード値2048との差をΔVtp1〜ΔVtp3として求める(ステップS40)。次に、ΔVtp2とΔVtp1を比較する(ステップS46)。ΔVtp1の方が小さい場合にはΔVtp3とΔVtp1を比較する(ステップS47)。ΔVtp1の方が小さい場合には第1の検出値Vtp1を選択する。一方、ΔVtp3がΔVtp1以下だった場合には第3の検出値Vtp3を選択する。ステップS46において、ΔVtp2がΔVtp1以下だった場合にはΔVtp3とΔVtp2を比較する(ステップS48)。ΔVtp2の方が小さい場合には第2の検出値Vtp2を選択する。一方、ΔVtp3がΔVtp2以下だった場合には第3の検出値Vtp3を選択する。
さて、アナログ回路のみでサーモパイル2の起電圧VTPを増幅して出力する場合には、測定する温度範囲の全体を出力できるように1つの測定条件しか設定できない。この点、本実施形態によれば、アナログ的に増幅した検出電圧VDAをA/D変換することで、そのデジタル値を不図示の記憶部(例えばRAM等)に記憶しておくことができる。これにより、複数の測定条件で検出値を取得して記憶しておき、その複数の検出値から事後的に対象物温度を求めて出力できる。
より具体的には、制御部50は、第1〜第3の検出値Vtp1〜Vtp3の中から所定の条件を満たす検出値を選択し、その選択した検出値に基づいて対象物温度を求める。例えば、ステップS32、S38、S39では、検出値が所定のコード値の範囲内(即ちA/D変換の入力電圧範囲)であるという条件を判断している。また、いずれの検出値も所定のコード値の範囲外である場合には、ステップS40、S46〜S48において最も中心コード値2048に近いという条件を判断している。そして、これらの条件を満たした検出値を選択している。
このように所定の条件を課して検出値を選ぶことにより、複数の検出値から最も適切な検出値を選ぶことが可能となる。一般にA/D変換回路40の特性はフルスケールの中心に近いほど良いと考えられる。そのため、所定のコード値の範囲内という条件により、特性の良いコード値の範囲内の検出値を選ぶことができる。そして、その範囲内の検出値が無かったとしても、その中で最も中心のコード値に近いという条件により、できるだけフルスケールの中心に近い検出値を選ぶことができる。
また本実施形態では、制御部50は、第1〜第3の検出値のうち第iの動作設定値(iはi≦n=3の自然数)の方が第jの動作設定値(jはj≦n、j≠iの自然数)よりも優先順位が高く設定される場合に、第iの検出値を選択する。例えば、ステップS32、S38では、第1の検出値Vtp1、第2の検出値Vtp2の順に判定を行い、所定のコード値の範囲内の検出値があった時点で、その検出値を選択している。両方の検出値が所定のコード値の範囲内であった場合には、第1(第i)の検出値が選ばれることになり、これは、第1(第i)の動作設定値、第2(第j)の動作設定値の順に優先順位が高く設定されていることと同じである。
例えば、上述した図6(B)では対象物温度190度が第1、第2の温度測定範囲に入るが、優先順位の高い第1の温度測定範囲での検出値Vtp1が選択される。このように、優先順位があることで、より温度測定の解像度が高い第1の測定条件MT1で得た検出値Vtp1を選択できる。例えば、アプリケーションに応じて高精度に測定したい温度範囲や使用頻度の高い温度範囲が異なるが、その温度範囲を最も優先順位が高い動作設定値として設定しておくことで、その温度範囲を高精度に測定できる。
また本実施形態では、制御部50は、第1〜第3の検出値Vtp1〜Vtp3に対して有効・無効の判断を行い、有効と判断した検出値を選択する。例えば、ステップS32、S38、S39では、検出値が所定のコード値の範囲内である場合に有効と判断し、範囲外である場合に無効と判断する。
図7等で上述のように、A/D変換の出力コード値の範囲は温度測定範囲に対応している。即ち、検出値がコード値の範囲内であるか否かを判断することで、その検出値が温度測定範囲内であるか否かを判断できる。また、範囲外である場合に無効と判断することで、フルスケールの範囲外の検出値や、フルスケールの中心から遠いことによりA/D変換特性の悪い範囲で測定した検出値を除外できる。例えば図6(A)の測定条件MT1では、対象物温度300度が温度測定範囲150度〜250度の外であり、A/D変換のフルスケールを超えている可能性がある。フルスケールの範囲外となった場合、コード値は0又は4096となり、無効と判断されるため除外される。
なお、THS=10、01の場合にはステップS31において2つの検出値を取得し、その2つの検出値について同様の選択処理を行う。例えば、THS=01の場合、ステップS31において第1の検出値Vtp1と第2の検出値Vtp2を取得する。ステップS34の判定がYesとなるので、ステップS32やステップS35で検出値Vtp1、Vtp2が所定のコード値の範囲に入るか否かを判定する。検出値Vtp1が範囲内なら検出値Vtp1を選択し、検出値Vtp1が範囲外で検出値Vtp2が範囲内なら検出値Vtp2を選択する。いずれの検出値も範囲外の場合、ステップS40でΔVtp1、ΔVtp2を算出する。ステップS42の判定がYesなので、ステップS43でΔVtp1とΔVtp2を比較する。ΔVtp1が小さい場合には検出値Vtp1を選択し、ΔVtp2が小さい場合には検出値Vtp2を選択する。
THS=00の場合には、ステップS31において第1の検出値Vtp1のみを取得するので、第1の検出値Vtp1を選択する。
8.補正手法、温度検出手法
以上に説明した温度測定では、サーモパイル2の温度特性のばらつきや、サーモパイル用検出回路20の特性(例えばゲインやオフセット等)のばらつきによって、誤差が発生する。以下では、この誤差を補正して温度検出を行う手法を説明する。
図11に、温度検出処理の詳細なフローチャートを示す。この処理は、図2の温度計測において実行する。
まず、動作設定値を記憶部80から取得して検出回路10の測定条件(基準電圧VREF、ゲインGA)を設定する(ステップS10)。
次に、サーモパイル2により発生する起電圧VTPを検出して、検出回路10の増幅回路22(チョッパーアンプ)、ゲイン調整回路24(PGA)により増幅する(ステップS11)。増幅後の検出電圧VDAは下式(12)のように表すことができる。
VDA=VREF+VTP×GC×GA (12)
ここで、GCは増幅回路22のゲインであり、GAはゲイン調整回路24のゲインである。
次に、増幅後の検出電圧VDAをA/D変換回路40に入力して、デジタル値の検出値DTAにA/D変換する(ステップS12)。A/D変換結果である検出値DTAは下式(13)のように表すことができる。
DTA=(VDA/VD28)×4096
=(VREF+VTP×GC×GA)/VD28×4096 (13)
VD28はA/D変換回路40の入力フルスケール電圧(入力電圧範囲)であり、例えばVD28=2.8Vである。なお図4のバイアス電圧は例えばVBS=VD28/2に設定される。またA/D変換回路40は12ビット(=4096)のA/D変換を行う回路であり、分解能はVD28/4096となる。
次に、下式(14)に示すように、A/D変換結果である検出値DTAから、基準電圧VREFに関する部分(VREFに対応するA/D変換値ADVREF)を減算する(ステップS13)。
DTA−ADVREF
=(VREF+VTP×GC×GA)/VD28×4096−ADVREF
=(VTP×GC×GA)/VD28×4096 (14)
ここで、上式(5)〜(7)で説明したように、VTPは下式(15)のように表すことができる。
VTP=VTP0−VTH+V0 (15)
従って、上式(14)は、上式(15)を代入することで下式(16)のように表すことができる。
{(VTP0−VTH+V0)×GC×GA}/VD28×4096 (16)
次に、サーモパイル2のオフセット電圧V0に関する部分(VTPOFに対応するAD変換値ADVTPOF)を減算する処理を行う(ステップS14)。これは下式(17)に示すように、上式(16)からADVTPOFを減算する処理である。
{(VTP0−VTH+V0)×GC×GA}/VD28×4096−ADVTPOF
={(VTP0−VTH)×GC×GA}/VD28×4096 (17)
なお、ここで減算するADVTPOFには、サーモパイル2のオフセット電圧に加えて、図4のサーモパイル用検出回路20の増幅回路22、ゲイン調整回路24等のオフセット電圧(残存オフセット電圧)を含めることができる。
次に、ゲイン補正パラメーターGAJを用いてゲイン補正を行う(ステップS15)。ゲイン補正パラメーターGAJはゲインのバラツキ(温度特性の傾き)を補正するためのパラメーターである。即ち、設計上のゲインに対して、実デバイスのゲインにはバラツキが生じる。そこで図2のステップS2に示すように管理温度(例えば自己温度25度、対象物温度200度)において実デバイスの測定を行い、その測定結果に基づいて、実デバイスのゲイン補正パラメーターGAJを算出する。そして、図2のステップS4の実際の温度測定時には、ステップS5に示すように、このゲイン補正パラメーターGAJ等を用いて温度測定結果の補正演算を行う。
次に、第2記憶部74の温度テーブルで温度値を判定するために、特性係数パラメーターGSを乗算する処理を行う(ステップS16)。これは下式(18)に示すように、上式(17)に特性係数パラメーターGSを乗算する処理である。特性係数パラメーターGSを乗算した後の値をROM(VTP0−VTH)と記載する。GSを乗算することで、ROM値に合う値に変換される。
{(VTP0−VTH)×GC×GA}/VD28×4096×GS
=ROM(VTP0−VTH) (18)
ここで特性係数パラメーターGSは下式(19)のように表すことができる。
GS={(472/4096)×VD28)}/(S×GC×GA) (19)
この特性係数パラメーターGSは、A/D変換結果値を、第2記憶部74に記憶される温度テーブルに合わせるための変換係数である。上式(19)に示すように、特性係数パラメーターGSは、サーモパイル2の特性を表す特性係数Sと、検出回路10での信号増幅のゲインGC、GAに応じて設定される。具体的には図2のステップS1において、特性係数パラメーターGSはセンサー係数として製造時に記憶部80(OTP)に書き込まれる。この場合に、書き込まれる特性係数パラメーターGSの値は、回路装置の回路定数(GC、GA)及び回路装置が使用するサーモパイル2の特性(感度)等に応じて製品ごとに設定されることになる。
次に、サーミスター用検出回路30の検出値DTBにより求められた自己温度TTHの値と、上式(18)のROM(VTP0−VTH)により第2記憶部74を参照して、対象物温度TPを求める(ステップS17)。なお、温度テーブルの参照ではなく、上述のように演算により対象物温度TPを求めてもよい。即ち、上式(4)のVTPにROM(VTP0−VTH)を代入し、また自己温度TTHを代入して、演算により対象物温度TPを求めてもよい。
以上のフローは1つの測定条件について記載しているが、本実施形態では複数の測定条件で測定を行う。即ち、以上のフローのうちステップS10〜S12を第1〜第3の測定条件の各々について実行し、第1〜第3の検出値を取得する。そして、図9、図10で説明した選択処理により1つの検出値を選択し、その検出値に対してステップS13〜S17を実行する。
具体的には、記憶部80(OTP)は、第1〜第3の動作設定値に対応付けて第1〜第3の補正値(第1〜第3の補正パラメーター)を記憶し、制御部50は、その第1〜第3の補正値に基づいて第1〜第3の検出値の補正処理を行う。即ち、第1〜第3の補正値のうち、選択処理により選択した検出値に対応する補正値を記憶部80(OTP)から読み出し、その補正値を用いて補正処理を実行する。
補正処理は、ステップS14のオフセットについての補正処理、ステップS15の温度特性についてのゲイン補正処理、ステップS16のサーモパイル2の特性係数パラメーターGSに基づく変換処理である。即ち、補正値は、サーモパイル2のオフセット電圧VTPOFやサーモパイル用検出回路20のオフセット電圧を補正するパラメーターADVTPOF、温度特性の傾きを補正するゲイン補正パラメーターGAJ、検出値を温度テーブルに合わせるための特性係数パラメーターGSである。図2の機能設定・調整では、これらの補正値を、第1〜第3の動作設定値の各々について求め、その求めた補正値を第1〜第3の補正値として記憶部80(OTP)に書き込む。このとき、温度測定範囲が各動作設定値で異なるので、各動作設定値で温度測定範囲に応じて管理温度を設定して、補正値を求めてもよい。
なお、補正処理は上記3つの処理の全てを含む必要はなく、上記3つの処理のうち少なくとも1つを含んでいればよい。
さて、図12(A)に示すように、比較例として全温度範囲−30度〜400度について1つ(1組)の補正値で補正した場合を考える。この場合、1つの管理温度で測定した補正値を用いるので、その管理温度を中心としてばらつきが補正される。そのため、管理温度から離れた低温部や高温部は十分に補正が効かず、誤差が大きくなる。この点、本実施形態によれば、第1〜第3の測定条件MT1〜MT3に対応した第1〜第3の補正値で補正することで、広い温度範囲において精度の高い(誤差の少ない)温度測定が可能となる。即ち、各測定条件で管理温度を変えて測定した補正値を用いるので、3点の管理温度を中心とした補正が行われることになり、全温度範囲−30度〜400度で誤差を小さくできる。
9.電子機器
図13に、本実施形態の回路装置210や温度検出装置200を含む電子機器の構成例を示す。電子機器は、処理部300、記憶部310、操作部320、入出力部330、バス340、温度検出装置200を含む。また温度検出装置200は、本実施形態の回路装置210、サーモパイル2、サーミスター4を含む。
本実施形態が適用される電子機器としては、エアーコンディショナー等の空調設備機器、IH調理器やIH炊飯器等のIH機器、FAX装置、印刷装置、温度計、人感知装置、炎検知装置、ガス検知装置又は光量計などの種々の機器を想定できる。
処理部300は、電子機器の各種の制御処理や演算処理を行うものであり、例えばMPU等のプロセッサーや表示コントローラーなどのASICなどにより実現される。処理部300は、温度検出装置200により検出された対象物温度や自己温度などの温度測定結果に基づいて、各種の処理を行う。
記憶部310は処理部300等の記憶領域となるものであり、例えばDRAM、SRAM、或いはHDD等により実現される。操作部320はユーザーが各種の操作情報を入力するためのものである。入出力部330は、外部との間でデータ等のやり取りを行うものであり、有線のインターフェース(USB等)や無線の通信部等により実現される。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、回路装置や温度検出装置や電子機器の構成や動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。