以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
(第1の実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るセンサ回路100の構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るセンサ回路を示す回路構成図である。なお、本実施形態では、熱源の温度を非接触で測定するセンサ回路を用いて説明する。すなわち、測定対象は熱源であり、測定対象の物理量は温度である。
センサ回路100は、図1に示されるように、電源V1と、第1の検出回路10と、第2の検出回路20と、差動増幅回路30と、A/D(アナログ/デジタル)変換回路40と、を有する。
電源V1は、第1の検出回路10および第2の検出回路20に直流電圧を供給する。電源V1としては、それぞれの回路出力へのノイズの影響を抑制するため、安定化した定電圧電源が用いられる。また、電源V1は、第1の極と第2の極を有する。本実施形態では、第1の極を正極、第2の極を負極として説明する。以下、第1の極は「正極」と記し、第2の極は「負極」と記す。
第1の検出回路10は、熱源から放射される赤外線を検知するための回路である。第1の検出回路10は、電源V1の正極に接続される第1の抵抗R1と電源V1の負極に接続される第1のサーミスタRth1の直列回路で構成されている。
第1のサーミスタRth1は、測定対象の物理量である熱源から放射される赤外線の熱量の影響を受けるように配置されている。つまり、第1のサーミスタRth1は、熱源から放射される赤外線の熱量の影響を受けたとき、第1のサーミスタRth1の温度が変化することにより抵抗値が変化することとなる。この第1のサーミスタRth1の温度は、外部環境温度と熱源から放射される赤外線の熱量の影響により加わる温度で抵抗値が決まる。
第1のサーミスタRth1としては、金属酸化物を主成分とする負の温度係数を持つNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタが用いられる。サーミスタの特性は、任意の温度TA[K]およびTB[K]におけるサーミスタの抵抗値をRA、RB、サーミスタ定数をB(B定数)とすると、以下の式(1)のように近似される。なお、B定数はその値が大きいほど、温度変化に対する抵抗変化率が大きいことを意味する。
RA=RB×eB(1/TA−1/TB) 式(1)
また、サーミスタは、温度と抵抗特性が直線関係でないため、第1の検出回路10では、第1のサーミスタRth1に第1の抵抗R1を直列接続して、温度と出力電圧を直線関係に近づけている。第1の抵抗R1の抵抗値Rr1は、外部環境温度範囲の下限温度でのサーミスタの抵抗値をRthl、外部環境温度範囲の中間温度でのサーミスタの抵抗値をRthm、外部環境温度範囲の上限温度でのサーミスタの抵抗値をRthhとすると、以下の式(2)の関係を満たす。
Rr1={2×Rthl×Rthh−Rthm(Rthl+Rthh)}/{2×Rthm−(Rthl+Rthh)} 式(2)
したがって、上記式(2)から温度と出力電圧を直線関係に近づける第1の抵抗R1の抵抗値Rr1を算出することができる。
第1の検出回路10は、電源V1から供給される直流電圧を第1の抵抗R1と第1のサーミスタRth1により分圧した電圧を出力VO1として出力する。すなわち、第1の検出回路10の出力VO1は、電源V1から供給される直流電圧値をVr1、第1の抵抗R1の抵抗値をRr1、第1のサーミスタRth1の抵抗値をRthr1とすると、第1の検出回路10の出力VO1は、以下の式(3)の関係を満たすこととなる。
VO1=Vr1×Rthr1/(Rthr1+Rr1) 式(3)
この第1の検出回路10の出力VO1は、差動増幅回路30に接続されている。
第2の検出回路20は、外部環境温度を検知するための回路である。第2の検出回路20は、電源V1の正極に接続される第1の抵抗R1の抵抗値に略等しい第2の抵抗R2と、電源V1の負極に接続される第2のサーミスタRth2と、第2の抵抗R2と第2のサーミスタRth2との中点に接続される付加抵抗R3と、電源V1の負極に接続される付加サーミスタRth3から構成されている。より具体的には、第2の抵抗R2と第2のサーミスタRth2が直列に接続されて直列回路を構成し、付加抵抗R3と付加サーミスタRth3が直列に接続されて直列回路を構成し、付加抵抗R3および付加サーミスタRth3の直列回路が第2のサーミスタRth2に並列に接続されている。なお、本実施形態では、付加抵抗R3が第2の抵抗R2と第2のサーミスタRth2との中点に接続され、付加サーミスタRth3が電源V1の負極に接続されているが、付加サーミスタRth3が第2の抵抗R2と第2のサーミスタRth2との中点に接続され、付加抵抗R3が電源V1の負極に接続されるように構成しても良い。
第2のサーミスタRth2および付加サーミスタRth3の温度は、外部環境温度と同じであり、この温度により抵抗値が決まる。つまり、第2のサーミスタRth2および付加サーミスタRth3は、測定対象の物理量である熱源から放射される赤外線の熱量の影響が低減されるように配置されている。ここで、第2のサーミスタRth2および付加サーミスタRth3は、熱源から放射される熱量の影響を全く受けない位置に配置されると好ましいが、第1の検出回路10と第2の検出回路20とを構造上近接して配置せざるを得ない場合は、機能的に問題ない程度で、第2のサーミスタRth2および付加サーミスタRth3が熱源から放射される赤外線の熱量の影響を受ける位置に配置しても良い。
第2のサーミスタRth2および付加サーミスタRth3は、第1のサーミスタRth1と同様に、金属酸化物を主成分とする負の温度係数を持つNTCサーミスタが用いられる。
第2の検出回路20は、電源V1から供給される直流電圧を第2の抵抗R2と第2のサーミスタRth2、付加抵抗R3、および付加サーミスタRth3の合成抵抗により分圧した電圧を出力VO2として出力する。すなわち、第2のサーミスタRth2、付加抵抗R3、および付加サーミスタRth3の合成抵抗値Rcbは、第2のサーミスタRth2の抵抗値をRthr2、付加抵抗R3の抵抗値をRr3、付加サーミスタRth3の抵抗値をRthr3とすると、以下の式(4)となる。
Rcb=Rthr2×(Rr3+Rthr3)/(Rthr2+Rr3+Rthr3) 式(4)
また、第2の検出回路20の出力VO2は、電源V1から供給される直流電圧値をVr1、第2の抵抗R2の抵抗値をRr2とすると、以下の式(5)の関係を満たすこととなる。
VO2=Vr1×Rcb/(Rcb+Rr2) 式(5)
この第2の検出回路20の出力VO2は、差動増幅回路30とA/D変換回路40に接続されている。
本実施形態では、第1の検出回路10の第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1と、第2の検出回路20の第2のサーミスタRth2、付加抵抗R3、および付加サーミスタRth3の合成抵抗値Rcbとが、第1のサーミスタRth1が熱源から放射される赤外線の熱量を受けているときに、略等しくなっている。つまり、第1のサーミスタRth1が熱源から放射される赤外線の熱量の影響を受けているときの第1の検出回路10の出力VO1と第2の検出回路20の出力VO2を少なくとも外部環境温度範囲内で同等な出力電圧とすることができる。このとき、第2の検出回路20が熱源から放射される赤外線の熱量の影響を受けているときの第1の検出回路10と同様の動作を示すこととなり、第1の検出回路10の出力VO1と第2の検出回路20の出力VO2の出力電圧の差分は、外部環境温度範囲で0Vに近くなる。この状態における熱源の温度を基準として、熱源の温度が変化した場合、第1の検出回路10の出力VO1と第2の検出回路20の出力VO2の出力電圧の差分は、変動分のみ出力される。すなわち、熱源の温度変化分のみを反映した出力電圧を得ることができる。ここで、第2のサーミスタRth2は、外部環境温度範囲の上限温度を調整することができる。しかしながら、外部環境温度範囲の上限温度を調整できる第2のサーミスタRth2のみでは、第2のサーミスタRth2の抵抗値を熱源から放射される熱量を受けているときの第1のサーミスタRth1の抵抗値に等しくすることは難しい。一方、本実施形態のように、第2のサーミスタRth2に加えて、外部環境温度範囲の中間温度を微調整できる付加抵抗R3と、外部環境温度範囲の下限温度を調整できる付加サーミスタRth3を備えることで、外部環境温度範囲の全ての温度範囲が調整可能となるため、第2のサーミスタRth2、付加抵抗R3、および付加サーミスタRth3の合成抵抗値Rcbを第1のサーミスタRth1の抵抗値に略等しくすることができる。
差動増幅回路30は、2つの入力電圧の差分を一定係数で増幅する回路である。本実施形態では、第1の検出回路10の出力VO1と第2の検出回路20の出力VO2を2つの入力電圧として、これら出力VO1である出力電圧と出力VO2である出力電圧の差分を取り、この差分のみを増幅させている。つまり、第1の検出回路10の出力VO1と第2の検出回路20の出力VO2は、差動入力用の信号である。差動増幅回路30は、2つの入力電圧の差分を増幅させた電圧を出力VO3として出力する。この差動増幅回路30の出力電圧は、基準電圧に2つの入力電圧の差分を増幅させた電圧を加えた電圧が出力される。このとき、基準電圧は次段の回路の入力電圧範囲内となるように設定する。例えば、次段の回路の入力電圧範囲が0Vから1Vで差動増幅回路30の増幅率が20倍、差動増幅回路30の基準電圧を0.5Vに設定すると、差動増幅回路30の出力電圧は、2つの入力電圧の差分が0Vの場合は0.5V、2つの入力電圧の差分が0.01Vの場合は0.7V、2つの入力電圧の差分が−0.01Vの場合は0.3Vとなる。なお、差動増幅回路30の増幅率は、次段の回路の入力電圧範囲内で適宜設定される。差動増幅回路30の出力VO3は、A/D変換回路40に接続されている。
A/D変換回路40は、アナログ値をデジタル値に変換する回路である。本実施形態では、差動増幅回路30の出力VO3と第2の検出回路20の出力VO2をデジタル値に変換する。アナログ値からデジタル値に変換する場合、1ビット分の電圧、つまり非接触温度センサの場合は1ビット分の温度が小さいほど温度精度が上がる。高精度にするには、分解能が高いA/D変換回路40を使うこと、そして入力電圧を大きくすることが考えられる。したがってA/D変換回路40の入力電圧範囲内で出来る限り大きな入力電圧にすると精度を向上することができる。なお、図1では図示していないが、A/D変換回路40によってデジタル値に変換された値は、マイクロコンピュータに取り込まれ、温度変換テーブルもしくは関数により変換して熱源の温度を検出する。
以上のように、本実施形態に係るセンサ回路100は、測定対象の物理量が温度であって、熱源から放射される赤外線の熱量の影響を受けているとき、第1の検出回路10の出力電圧と第2の検出回路20の出力電圧が略等しくなり、第1の検出回路10の出力電圧と第2の検出回路20の出力電圧の差は0Vに近くなる。ここで、第1の検出回路10の出力VO1と第2の検出回路20の出力VO2は、差動入力用の信号であるため、この出力電圧差を差動増幅回路30に入力すると、差動増幅回路30の出力は0Vに近くなる。つまり、熱源から放射される赤外線の熱量を基準に熱源の温度が変化して熱源から放射される赤外線の熱量が変動したとしても差動増幅回路30の出力は0Vを基準に変動分のみが出力されることとなるため、差動増幅回路30の増幅率を効率的に上げることができることから、温度あたりの出力電圧変化が大きくなる。その結果、熱源の温度の検出精度の低下を抑制することができる。
(第2の実施形態)
次に、図2を参照して、本発明の第2の実施形態に係るセンサ回路200の構成について説明する。図2は、本発明の第2の実施形態に係るセンサ回路を示す回路構成図である。なお、第2の実施形態に係るセンサ回路200も熱源の温度を非接触で測定するセンサ回路を用いて説明する。すなわち、測定対象は熱源であり、測定対象の物理量は温度である。第2の実施形態に係るセンサ回路200は、第2の検出回路120が付加抵抗R4と付加サーミスタRth4を備えている点およびA/D変換回路40の代わりにウィンドウコンパレータ50を備えている点において、第1の実施形態に係るセンサ回路100と異なっている。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
センサ回路200は、図2に示されるように、電源V1と、第1の検出回路10と、第2の検出回路120と、差動増幅回路30と、ウィンドウコンパレータ50と、を有する。
第2の検出回路120は、第1の実施形態の第2の検出回路20と同様に、外部環境温度を検知するための回路である。第2の検出回路120は、電源V1の正極に接続される第2の抵抗R2と、電源V1の負極に接続される第2のサーミスタRth2と、第2の抵抗R2と第2のサーミスタRth2との中点に接続される付加抵抗R3と、電源V1の負極に接続される付加サーミスタRth3と、第2の抵抗R2と第2のサーミスタRth2との中点に接続される付加抵抗R4と、電源V1の負極に接続される付加サーミスタRth4から構成されている。より具体的には、第2の抵抗R2と第2のサーミスタRth2が直列に接続されて直列回路を構成し、付加抵抗R3と付加サーミスタRth3が直列に接続されて直列回路を構成し、付加抵抗R4と付加サーミスタRth4が直列に接続されて直列回路を構成し、付加抵抗R3および付加サーミスタRth3の直列回路が第2のサーミスタRth2に並列に接続され、付加抵抗R4および付加サーミスタRth4の直列回路が第2のサーミスタRth2に並列に接続されている。つまり、第2の検出回路120は、複数の付加抵抗(R3,R4)と複数の付加サーミスタ(Rth3,Rth4)をそれぞれ備え、複数の付加抵抗(R3,R4)の数と複数の付加サーミスタ(Rth3,Rth4)の数が同じとなっている。なお、本実施形態では、付加抵抗R4が第2の抵抗R2と第2のサーミスタRth2との中点に接続され、付加サーミスタRth4が電源V1の負極に接続されているが、付加サーミスタRth4が第2の抵抗R2と第2のサーミスタRth2との中点に接続され、付加抵抗R4が電源V1の負極に接続されるように構成しても良い。
付加サーミスタRth4の温度は、外部環境温度と同じであり、この温度により抵抗値が決まる。つまり、付加サーミスタRth4は、測定対象の物理量である熱源から放射される赤外線の熱量の影響が低減されるように配置されている。ここで、付加サーミスタRth4は、熱源から放射される熱量の影響を全く受けない位置に配置されると好ましいが、第1の検出回路10と第2の検出回路120とを構造上近接して配置せざるを得ない場合は、機能的に問題ない程度で、付加サーミスタRth4が熱源から放射される赤外線の熱量の影響を受ける位置に配置しても良い。
付加サーミスタRth4は、第1のサーミスタRth1、第2のサーミスタRth2、および付加サーミスタRth3と同様に、金属酸化物を主成分とする負の温度係数を持つNTCサーミスタが用いられる。
第2の検出回路120は、電源V1から供給される直流電圧を第2の抵抗R2と第2のサーミスタRth2、付加抵抗R3、付加サーミスタRth3、付加抵抗R4、および付加サーミスタRth4の合成抵抗により分圧した電圧を出力VO4として出力する。すなわち、第2のサーミスタRth2、付加抵抗R3、付加サーミスタRth3、付加抵抗R4、および付加サーミスタRth4の合成抵抗値Rcb2は、第2のサーミスタRth2の抵抗値をRthr2、付加抵抗R3の抵抗値をRr3、付加サーミスタRth3の抵抗値をRthr3、付加抵抗R4の抵抗値をRr4、付加サーミスタRth4の抵抗値をRthr4とすると、以下の式(6)となる。
Rcb2=Rthr2×(Rr3+Rthr3)×(Rr4+Rthr4)/(Rthr2×(Rr3+Rthr3)+(Rr3+Rthr3)×(Rr4+Rthr4)+Rthr2×(Rr4+Rthr4)) 式(6)
また、第2の検出回路120の出力VO4は、電源V1から供給される直流電圧値をVr1、第2の抵抗R2の抵抗値をRr2とすると、以下の式(7)の関係を満たすこととなる。
VO4=Vr1×Rcb2/(Rcb2+Rr2) 式(7)
この第2の検出回路120の出力VO4は、差動増幅回路30にのみ接続されている。
ウィンドウコンパレータ50は、電圧比較回路素子の一種であり、2つのコンパレータを組み合わせた機能を有している。具体的には、1つの入力電圧を2つの基準電圧と比較し、入力電圧が基準電圧範囲以内であればハイレベルを、入力電圧が基準電圧範囲外であればローレベルをデジタル出力する回路素子である。本実施形態では、差動増幅回路30の出力VO3を入力電圧として、2つの基準電圧と比較して、ハイレベルあるいはローレベルをデジタル出力する。つまり、ウィンドウコンパレータ50の2つの基準電圧範囲を検出したい熱源温度となるように設定しておくことで、特定の熱源温度か否かを検出することができる。つまり、特定の熱源温度とそれ以外の熱源温度の2つの状態を判別することができる。
本実施形態も第1の実施形態と同様に、第1の検出回路10の第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1と、第2の検出回路120の第2のサーミスタRth2、付加抵抗R3、付加サーミスタRth3、付加抵抗R4、および付加サーミスタRth4の合成抵抗値Rcb2とが、第1のサーミスタRth1が熱源から放射される赤外線の熱量を受けているときに、略等しくなっている。つまり、第1のサーミスタRth1が熱源から放射される赤外線の熱量の影響を受けているときの第1の検出回路10の出力VO1と第2の検出回路120の出力VO4を少なくとも外部環境温度範囲内で同等な出力電圧とすることができる。なお、本実施形態では、第2の検出回路120が複数の付加抵抗(R3,R4)と複数の付加サーミスタ(Rth3,Rth4)を備えているため、外部環境温度範囲の中間温度と下限温度をより綿密に調整することができる。したがって、第1の検出回路10の出力VO1である出力電圧と第2の検出回路120の出力VO4である出力電圧の差分は0Vに極めて近づくこととなる。
以上のように、本実施形態に係るセンサ回路200は、第2のサーミスタRth2に並列接続される複数の付加抵抗(R3,R4)と複数の付加サーミスタ(Rth3,Rth4)をそれぞれ備え、複数の付加抵抗(R3,R4)の数と複数の付加サーミスタ(Rth3,Rth4)の数が同じである。これにより、第1の検出回路10の第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1と第2の検出回路120の第2のサーミスタRth2と複数の付加抵抗(R3,R4)と複数の付加サーミスタ(Rth3,Rth4)の合成抵抗値Rcb2をさらに近づけることができる。つまり、第1の検出回路10の出力電圧と第2の検出回路120の出力電圧の差は0Vに極めて近づくこととなる。したがって、測定対象の物理量が一定であるとき、複雑な回路を必要としない0V近くに閾値電圧を設定した2値化処理でも測定対象の物理量を精度良く検出することができるため、回路の簡素化が可能となる。
(第2の実施形態の変形例)
続いて、図3を参照して、本発明の第2の実施形態に係るセンサ回路200の変形例であるセンサ回路300の構成について説明する。図3は、本発明の第2の実施形態に係るセンサ回路の変形例を示す回路構成図である。
本変形例に係るセンサ回路300は、電源V1、第1の検出回路10、第2の検出回路120、差動増幅回路30について、第2の実施形態に係るセンサ回路200と同様である。本変形例では、ウィンドウコンパレータ50の代わりに、第1のコンパレータ60と第2のコンパレータ70を備えている点において、第2の実施形態に係るセンサ回路200と相違する。以下、第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
第1のコンパレータ60および第2のコンパレータ70は、1つの入力電圧と基準電圧を比較し、比較した結果をデジタル出力する回路素子である。本変形例では、第1のコンパレータ60は、差動増幅回路30の出力VO3を入力電圧として、入力電圧が第1の基準電圧を超えるときローレベルを、入力電圧が第1の基準電圧以下のときハイレベルを出力する。第2のコンパレータ70は、差動増幅回路30の出力VO3を入力電圧として、入力電圧が第2の基準電圧以上のときハイレベルを、入力電圧が第2の基準電圧未満のときローレベルを出力する。ここで、第1のコンパレータ60の第1の基準電圧を特定の熱源温度の誤差範囲の上限に設定し、第2のコンパレータ70の第2の基準電圧を特定の熱源温度の誤差範囲の下限に設定すると、第1のコンパレータ60の出力と第2のコンパレータ70の出力がともにハイレベルのとき、特定の熱源温度であると判別でき、第1のコンパレータ60の出力がローレベルのとき、特定の熱源温度よりも高い熱源温度であると判別でき、第2のコンパレータ70の出力がローレベルのとき、特定の熱源温度よりも低い熱源温度であると判別できる。以上のように、本変形例では、第1のコンパレータ60と第2のコンパレータ70を備えているため、特定の熱源温度と、特定の熱源温度よりも高い熱源温度と、特定の熱源温度よりも低い熱源温度の3つの状態を判別することができる。例えば、特定の熱源温度を180℃±1℃、第1の基準電圧を181℃、第2の基準電圧を179℃とすると、第1のコンパレータ60の出力と第2のコンパレータ70の出力と本変形例で検出できる熱源温度の関係は表1に示すような関係となる。
以下、本実施形態によって熱源の温度の検出精度の低下を抑制できることを実施例1、2と比較例1とによって具体的に示す。但し、本発明はこれらに限定されない。実施例1、2と比較例1では、第1の検出回路の出力と第2の検出回路の出力の温度特性と差動増幅回路の出力の温度特性を測定した。
実施例1では、上述した第1の実施形態に係るセンサ回路100を用いた。実施例2では、上述した第2の実施形態に係るセンサ回路200を用いた。比較例1では、図10に示されるセンサ回路400を用いた。図10は、比較例1に係るセンサ回路を示す回路構成図である。
まず、比較例1に係るセンサ回路400の構成について説明する。センサ回路400は、図10に示されるように、電源V2と、第1の検出回路210と、第2の検出回路220と、差動増幅回路230と、A/D変換回路240と、を有する。
電源V2は、第1の検出回路210および第2の検出回路220に直流電圧を供給する。電源V2は、第1の極(以下、「正極」と記す。)と第2の極(以下、「負極」と記す。)を有する。
第1の検出回路210は、熱源から放射される赤外線を検知するための回路である。第1の検出回路210は、電源V2の正極に接続される第1の抵抗R21と電源V2の負極に接続される第1のサーミスタRth21の直列回路で構成されている。第1の検出回路210は、電源V2から供給される直流電圧を第1の抵抗R21と第1のサーミスタRth21により分圧した電圧を出力VO21として出力する。この第1の検出回路210の出力VO21は、差動増幅回路230に接続されている。
第2の検出回路220は、外部環境温度を検知するための回路である。第2の検出回路220は、電源V2の正極に接続される第2の抵抗R22と、電源V2の負極に接続される第2のサーミスタRth22の直列回路で構成されている。第2の検出回路220は、電源V2から供給される直流電圧を第2の抵抗R22と第2のサーミスタRth22により分圧した電圧を出力VO22として出力する。この第2の検出回路220の出力VO22は、差動増幅回路230とA/D変換回路240に接続されている。
差動増幅回路230は、2つの入力電圧の差分を一定係数で増幅する回路である。本比較例1では、第1の検出回路210の出力VO21と第2の検出回路220の出力VO22を2つの入力電圧として、これら出力VO21である出力電圧と出力VO22である出力電圧の差分を取り、この差分のみを増幅させている。差動増幅回路230は、2つの入力電圧の差分を増幅させた電圧を出力VO23として出力する。
A/D変換回路240は、アナログ値をデジタル値に変換する回路である。本比較例1では、差動増幅回路230の出力VO23と第2の検出回路220の出力VO22をデジタル値に変換する。図10では図示していないが、A/D変換回路240によってデジタル値に変換された値は、マイクロコンピュータに取り込まれ、温度変換テーブルもしくは関数により変換して熱源の温度を検出する。
続いて、図4および図5を参照して、実施例1のセンサ回路100の温度特性を示す。図4は、第1の実施形態に係るセンサ回路の第1の検出回路の出力と第2の検出回路の出力の温度特性を示すグラフである。図5は、第1の実施形態に係るセンサ回路の差動増幅回路の出力の温度特性を示すグラフである。
まず、センサ回路100の各検出回路の回路定数を設定する。第1の検出回路10の回路定数は、第1のサーミスタRth1の25℃のときの抵抗値Rthr1を33kΩ(B定数は4600K)に設定すると、式(2)より第1の抵抗R1の抵抗値Rr1が3.3kΩとなる。第2の検出回路20の回路定数は、第2の抵抗R2の抵抗値Rr2を第1の抵抗R1の抵抗値Rr1と同じ3.3kΩに設定する。また、合成抵抗値Rcbは、外部環境温度が0℃から120℃の温度範囲において、180℃の熱源から放射される赤外線の熱量を第1のサーミスタRth1が受けているとのきの抵抗値Rthr1に略等しくなるように各定数を設定する。具体的には、第2のサーミスタRth2の25℃のときの抵抗値Rthr2を25kΩ(B定数は4380K)、付加抵抗R3の抵抗値Rr3を10kΩ、付加サーミスタRth3の25℃のときの抵抗値Rthr3を82kΩ(B定数は3400K)に設定すると、外部環境温度が0℃から120℃の温度範囲において、合成抵抗値Rcbが第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1と略等しくなる。ここで、熱源温度が180℃のときの外部環境温度が0℃から120℃の温度範囲における合成抵抗値Rcbと第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1の関係を表2に示す。
表2に示されるように、外部環境温度が0℃から120℃の温度範囲においては、合成抵抗値Rcbと第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1は略等しくなっており、その精度は第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1に対して合成抵抗値Rcbが100%±1%の範囲となっている。
そして、上述のように回路定数を設定したセンサ回路100について、外部環境温度が0℃から120℃における熱源温度が160℃,180℃,200℃のときの第1の検出回路10の出力VO1の温度特性と外部環境温度が0℃から120℃における第2の検出回路20の出力VO2の温度特性を測定した。ここで、電源V1の電圧値は1Vに設定した。
測定結果を図4に示す。図4に示されるように、熱源温度が180℃のときの第1の検出回路10の出力VO1は、電圧特性43となる。熱源温度が200℃のときの第1の検出回路10の出力VO1は、外部環境温度が同じとき、熱源から放射される赤外線の熱量の増加分が加算された温度によって第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1が決まるため、電圧特性44となる。熱源温度が160℃のときの第1の検出回路10の出力VO1は、外部環境温度が同じとき、熱源から放射される赤外線の熱量の減少分が減算された温度によって第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1が決まるため、電圧特性42となる。
一方、第2の検出回路20の出力VO2は、電圧特性41となり、電圧特性43と近似する。これは、合成抵抗値Rcbと熱源温度が180℃の赤外線の熱量を受けている第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1が略等しくなっており、第1の抵抗R1の抵抗値Rr1と第2の抵抗R2の抵抗値Rr2も同じ抵抗値となっていることから、電源V1から供給される直流電圧を第1の検出回路10の第1の抵抗R1と第1のサーミスタRth1により分圧した出力VO1が電源V1から供給される直流電圧を第2の検出回路20の第2の抵抗R2と第2のサーミスタRth2、付加抵抗R3、および付加サーミスタRth3の合成抵抗により分圧した出力VO2が等しくなったためである。言い換えれば、熱源温度が180℃の赤外線の熱量を受けているときに、第1の検出回路10の出力VO1と第2の検出回路20の出力VO2が等しい出力電圧となるように、合成抵抗値Rcbを第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1に等しくなるように調整しているためである。
次に、上述の回路定数に設定したセンサ回路100について、外部環境温度が0℃から120℃における熱源温度が160℃,180℃,200℃のときの差動増幅回路30の出力VO3の温度特性を測定した。つまり、図4に示した熱源温度が160℃,180℃,200℃のときの第1の検出回路10の出力VO1である電圧特性42〜44と第2の検出回路20の出力VO2である電圧特性41との差分を増幅したときの差動増幅回路30の出力VO3を測定したこととなる。ここで、差動増幅回路30の増幅率は、次段に接続されるA/D変換回路40の入力電圧許容範囲の電圧幅を1Vと仮定して、1Vを有効に使えるように25倍に設定した。また、差動増幅回路30の基準電圧は0Vに設定した。なお、プラス電源で使用する場合は、差動増幅回路30の基準電圧を0.5Vに設定すれば良い。この場合、差動増幅回路30の出力VO3を0Vから1Vの範囲で検出することができるようになる。
測定結果を表3および図5に示す。表3に示されるように、熱源温度が180℃のときの差動増幅回路30の出力VO3は、外部環境温度が0℃から120℃の温度範囲において、0V±0.03Vとなる。すなわち、熱源温度が180℃のときの差動増幅回路30の出力VO3はほぼ一定の出力電圧となる。また、図5に示されるように、熱源温度が180℃のときの差動増幅回路30の出力VO3は、第1の検出回路10の出力VO1である電圧特性43と第2の検出回路20の出力VO2である電圧特性41が近似しているため、外部環境温度0℃から120℃の温度範囲において、0Vに近いほぼ一定の出力電圧である電圧特性56となる。熱源温度が200℃のときの差動増幅回路30の出力VO3は、第1の検出回路10の出力VO1である電圧特性44と第2の検出回路20の出力VO2である電圧特性41との差分を増幅した出力電圧である電圧特性57となる。つまり、電圧特性57は、熱源温度が180℃のときの赤外線の熱量を基準に熱源温度が200℃に増加したときの赤外線の熱量の増加分のみが出力された電圧特性となる。熱源温度が160℃のときの差動増幅回路30の出力VO3は、第1の検出回路10の出力VO1である電圧特性42と第2の検出回路20の出力VO2である電圧特性41との差分を増幅した出力電圧である電圧特性55となる。つまり、電圧特性55は、熱源温度が180℃のときの赤外線の熱量を基準に熱源温度が160℃に減少したときの赤外線の熱量の減少分のみが出力された電圧特性となる。
このように、差動増幅回路30の出力VO3である電圧特性55、57は、外部環境温度が0℃から120℃の温度範囲において、熱源温度が180℃のときのほぼ一定の出力電圧である電圧特性56を基準として、熱源温度が180℃からの赤外線の熱量の変動分のみが出力に反映されるため、差動増幅回路30の増幅率を効率的に上げることができる。
続いて、図6および図7を参照して、実施例2のセンサ回路200の温度特性を示す。図6は、第2の実施形態に係るセンサ回路の第1の検出回路の出力と第2の検出回路の出力の温度特性を示すグラフである。図7は、第2の実施形態に係るセンサ回路の差動増幅回路の出力の温度特性を示すグラフである。
まず、センサ回路200の各検出回路の回路定数を設定する。第1の検出回路10の回路定数は、第1のサーミスタRth1の25℃のときの抵抗値Rthr1を33kΩ(B定数は4600K)に設定すると、式(2)より第1の抵抗R1の抵抗値Rr1が3.3kΩとなる。第2の検出回路120の回路定数は、第2の抵抗R2の抵抗値Rr2を第1の抵抗R1の抵抗値Rr1と同じ3.3kΩに設定する。また、合成抵抗値Rcb2は、外部環境温度が0℃から120℃の温度範囲において、180℃の熱源から放射される赤外線の熱量を第1のサーミスタRth1が受けているとのきの抵抗値Rthr1に略等しくなるように各定数を設定する。具体的には、第2のサーミスタRth2の25℃のときの抵抗値Rthr2を25kΩ(B定数は4370K)、付加抵抗R3の抵抗値Rr3を32kΩ、付加サーミスタRth3の25℃のときの抵抗値Rthr3を100kΩ(B定数は3200K)、付加抵抗R4の抵抗値Rr4を16kΩ、付加サーミスタRth4の抵抗値Rthr4を310kΩ(B定数は4800K)に設定すると、外部環境温度が0℃から120℃の温度範囲において、合成抵抗値Rcb2が第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1と極めて等しくなる。ここで、熱源温度が180℃のときの外部環境温度が0℃から120℃の温度範囲における合成抵抗値Rcb2と第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1の関係を表4に示す。
表4に示されるように、外部環境温度が0℃から120℃の温度範囲においては、合成抵抗値Rcb2と第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1は極めて等しくなっており、その精度は第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1に対して合成抵抗値Rcb2が100%±0.1%の範囲となっている。
そして、上述の回路定数に設定したセンサ回路200について、外部環境温度が0℃から120℃における熱源温度が180℃のときの第1の検出回路10の出力VO1の温度特性と外部環境温度が0℃から120℃における第2の検出回路120の出力VO4の温度特性を測定した。ここで、電源V1の電圧値は1Vに設定した。
測定結果を図6に示す。図6に示されるように、熱源温度が180℃のときの第1の検出回路10の出力VO1は、実施例1と同様に、電圧特性43となる。一方、第2の検出回路120の出力VO4は、電圧特性61となり、電圧特性43に極めて近似する。これは、合成抵抗値Rcb2と熱源温度が180℃の赤外線の熱量を受けている第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1が極めて等しくなっており、第1の抵抗R1の抵抗値Rr1と第2の抵抗R2の抵抗値Rr2も同じ抵抗値となっていることから、電源V1から供給される直流電圧を第1の検出回路10の第1の抵抗R1と第1のサーミスタRth1により分圧した出力VO1が電源V1から供給される直流電圧を第2の検出回路120の第2の抵抗R2と第2のサーミスタRth2、付加抵抗R3、付加サーミスタRth3、付加抵抗R4、付加サーミスタRth4の合成抵抗により分圧した出力VO4が極めて等しくなったためである。言い換えれば、熱源温度が180℃の赤外線の熱量を受けているときに、第1の検出回路10の出力VO1と第2の検出回路120の出力VO4が極めて等しい出力電圧となるように、合成抵抗値Rcb2を第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1に等しくなるように調整しているためである。
次に、上述の回路定数に設定したセンサ回路200について、外部環境温度が0℃から120℃における熱源温度が180℃のときの差動増幅回路30の出力VO3の温度特性を測定した。つまり、図6に示した熱源温度が180℃のときの第1の検出回路10の出力VO1である電圧特性43と第2の検出回路120の出力VO4である電圧特性61との差分を増幅したときの差動増幅回路30の出力VO3を測定したこととなる。ここで、差動増幅回路30の増幅率は、25倍に設定した。また、差動増幅回路30の基準電圧は0Vに設定した。
測定結果を表5および図7に示す。表5に示されるように、熱源温度が180℃のときの差動増幅回路30の出力VO3は、外部環境温度が0℃から120℃の温度範囲において、0V±0.00Vとなる。すなわち、熱源温度が180℃のときの差動増幅回路30の出力VO3は一定の出力電圧となる。図7に示されるように、熱源温度が180℃のときの差動増幅回路30の出力VO3は、第1の検出回路10の出力VO1である電圧特性43と第2の検出回路120の出力VO4である電圧特性61が極めて近似しているため、外部環境温度0℃から120℃の温度範囲において、0Vに極めて近い一定の出力電圧である電圧特性76となる。このように、差動増幅回路30の出力VO3である電圧特性76は、外部環境温度が0℃から120℃の温度範囲において、一定の出力電圧となるため、複雑な回路を必要としない0V近くに閾値電圧(基準電圧)を設定した2値化処理でも熱源の温度を精度良く検出することができるため、回路の簡素化が可能となる。つまり、実施例2のセンサ回路200は、A/D変換回路や温度変換テーブルを用いなくとも、回路規模の小さいウィンドウコンパレータ50で熱源の温度を検出することができる。
続いて、図8および図9を参照して、比較例1のセンサ回路400の温度特性を示す。図8は、比較例1に係るセンサ回路の第1の検出回路の出力と第2の検出回路の出力の温度特性を示すグラフである。図9は、比較例1に係るセンサ回路の差動増幅回路の出力の温度特性を示すグラフである。
まず、センサ回路400の各検出回路の回路定数を設定する。第1の検出回路210の回路定数は、第1のサーミスタRth21の25℃のときの抵抗値Rthr21を33kΩ(B定数は4600K)に設定すると、式(2)より第1の抵抗R21の抵抗値Rr21が3.3kΩとなる。第2の検出回路220の回路定数は、第2のサーミスタRth22の25℃のときの抵抗値Rthr22を33kΩ(B定数は4600K)に設定すると、式(2)より第2の抵抗R22の抵抗値Rr22が第1の抵抗R21の抵抗値Rr21と同じ3.3kΩとなる。第1の検出回路210が熱源から放射される赤外線の熱量を受けないとき、すなわち第1の検出回路210と第2の検出回路220の間に温度差がないときは、第1の検出回路210の第1の抵抗R21および第1のサーミスタRth21と第2の検出回路220の第2の抵抗R22および第2のサーミスタRth22の回路定数が等しいことから、第1の検出回路210と第2の検出回路220は熱平衡状態となる。つまり、第1の検出回路210の出力VO21と第2の検出回路220の出力VO22が同じ出力電圧となるため、差動増幅回路230の出力VO23は、外部環境温度がいずれの温度であっても、0Vの一定電圧となる。一方、第1の検出回路210が熱源から放射される赤外線の熱量を受けているときは、第1の検出回路210と第2の検出回路220の熱平衡状態が崩れ、第1のサーミスタRth21の抵抗値Rthr21と第2のサーミスタRth22の抵抗値Rthr22が大きく異なることになる。ここで、熱源温度が180℃のときの外部環境温度が0℃から120℃の温度範囲における第1のサーミスタRth21の抵抗値Rthr21と第2のサーミスタRth22の抵抗値Rthr22の関係を表6に示す。
表6に示されるように、外部環境温度が0℃から120℃の温度範囲においては、第1のサーミスタRth21の抵抗値Rthr21と第2のサーミスタRth22の抵抗値Rthr22は大きく異なっており、第1のサーミスタRth21の抵抗値Rthr21に対して第2のサーミスタRth22の抵抗値Rthr22が最大で200%程度となっている。このように、比較例1のセンサ回路400では、第1の検出回路210が熱源から放射される赤外線の熱量を受けているときに第1の検出回路210と第2の検出回路220が熱平衡状態とはならない。これに対して、実施例1のセンサ回路100のように、第1の検出回路10が熱源から放射される赤外線の熱量を受けているときに合成抵抗値Rcbと第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1を略等しくすると、第1の検出回路10が熱源から放射される赤外線の熱量を受けているときに第1の検出回路10と第2の検出回路20が熱平衡状態となる。また、実施例2のセンサ回路200のように、第1の検出回路10が熱源から放射される赤外線の熱量を受けているときに合成抵抗値Rcb2と第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1を極めて等しくすると、第1の検出回路10が熱源から放射される赤外線の熱量を受けているときに第1の検出回路10と第2の検出回路120が熱平衡状態となる。
そして、上述の回路定数に設定したセンサ回路400について、外部環境温度が0℃から120℃における熱源温度が160℃,180℃,200℃のときの第1の検出回路210の出力VO21の温度特性と外部環境温度が0℃から120℃における第2の検出回路220の出力VO22の温度特性を測定した。ここで、電源V2の電圧値は1Vに設定した。
測定結果を図8に示す。図8に示されるように、熱源温度が160℃,180℃,200℃のときの第1の検出回路210の出力VO21は、それぞれ電圧特性42〜44となる。つまり、実施例1の熱源が160℃,180℃,200℃のときの第1の検出回路10の出力VO1である電圧特性42〜44と同様である。一方、第2の検出回路220の出力VO22は、電圧特性81となり、電圧特性42〜44から大きく異なっている。これは、第1の検出回路210が熱源から放射される赤外線の熱量を受けているときに第1の検出回路210と第2の検出回路220の熱平衡状態が崩れるためである。
次に、上述の回路定数に設定したセンサ回路400について、外部環境温度が0℃から120℃における熱源温度が160℃,180℃,200℃のときの差動増幅回路230の出力VO23の温度特性を測定した。つまり、図8に示した熱源温度が160℃,180℃,200℃のときの第1の検出回路210の出力VO21である電圧特性42〜44と第2の検出回路220の出力VO22である電圧特性81との差分を増幅したときの差動増幅回路230の出力VO23を測定したこととなる。
測定結果を図9に示す。図9に示されるように、熱源温度が160℃,180℃,200℃のときの差動増幅回路230の出力VO23は、それぞれ電圧特性95〜97となる。具体的には、第1の検出回路210は、外部環境温度に熱源から放射される赤外線の熱量で発生する温度を加えた温度を反映させた電圧を出力し、第2の検出回路220は、外部環境温度を反映させた電圧を出力する。つまり、差動増幅回路230の出力VO23である電圧特性95〜97は、熱源から放射される赤外線の熱量で発生する温度を反映した出力となる。このような比較例1のセンサ回路400では、第1の検出回路210の出力VO21と第2の検出回路220の出力VO22を直線に近似するように各抵抗(R21,R22)と各サーミスタ(Rth21,Rth22)の抵抗値を設定しているが、この場合、同じ外部環境温度で第1の検出回路210が熱源から放射される赤外線の熱量を受けているときの差動増幅回路230の出力VO23は、外部環境温度が0℃から120℃の温度範囲において、中間温度である60℃で最も電圧が大きくなり、上限温度である120℃または下限温度である0℃で最も電圧が小さくなる。したがって、比較例1のセンサ回路400は、外部環境温度からの変動分となるため、変動分が大きく、外部環境温度の中間温度である60℃の差動増幅回路230の出力VO23の出力電圧と上限温度である120℃および下限温度である0℃での差動増幅回路230の出力VO23の出力電圧の差が大きいため、差動増幅回路230の増幅率は、次段に接続されるA/D変換回路240の入力電圧許範囲の電圧幅を1Vと仮定して、1Vを有効に使えるように大きくしたとしても最大で10倍となってしまう。
一方、実施例1のセンサ回路100では、合成抵抗値Rcbを、熱源温度が180℃であって第1の検出回路10が熱源から放射される赤外線の熱量を受けているときの第1のサーミスタRth1の抵抗値Rthr1に略等しくしているため、差動増幅回路30の出力VO3である電圧特性55〜57は、熱源温度が180℃のときの差動増幅回路30の出力VO3を基準として、変動分のみを出力している。この場合、外部環境温度が0℃から120℃の温度範囲において、熱源温度が200℃で外部環境温度が60℃のときに最も電圧が大きくなり、熱源温度が160℃で外部環境温度が60℃のときに最も電圧が小さくなる。そのため、差動増幅回路30の増幅率は、熱源温度が180℃のときの出力VO3である電圧特性56が0Vで一定であり、この電圧特性56の変動分である電圧特性55、57を増幅するために、25倍と大きく設定できる。
このように、比較例1のセンサ回路400では、差動増幅回路230の増幅率が最大で10倍であり、実施例1(実施例2)のセンサ回路100(200)の差動増幅回路30(30)の増幅率である25倍のように、増幅率を効率的に上げることができない。その結果、温度あたりの出力電圧が小さくなり、熱源の温度の検出精度が低くなる。
また、比較例1のセンサ回路400は、図9に示されるように、1mVあたりの温度検出が、外部環境温度が60℃で0.1℃/mV、外部環境温度が0℃で0.4℃/mV程度であるのに対して、実施例1のセンサ回路100は、図5に示されるように、1mVあたりの温度検出が、外部環境温度が60℃で0.04℃/mV、外部環境温度が0℃で0.16℃/mV程度であることから、実施例1のセンサ回路100は、比較例1のセンサ回路400に比べて温度検出精度が2.5倍向上することになる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。また、記載した構成要素は、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一なものが含まれる。さらに、記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
例えば、各回路間にボルテージフォロアなどのバッファーを追加してもよい。この場合、特に第1の検知回路10および第2の検出回路20の出力インピーダンスが差動増幅回路30およびA/D変換回路40の入力インピーダンスに比べ、十分に低くない場合に電圧信号を減衰せず伝えることができるようになる。
また、上記実施形態では熱源の温度を非接触で測定する、いわゆる非接触温度センサに本発明に係るセンサ回路を適用した例について説明したが、これに限定されない。例えば、2つのサーミスタの温度差を利用して物理量を検出する、ガスセンサ、湿度センサ、流速センサにおいても、本発明が適用できる。
NDIR(non−dispersive infrared detector, 非分散型赤外線センサ)といわれる光学式のガスセンサは、2つのサーミスタのうち第1のサーミスタには測定対象の気体を透過した赤外線を照射し、第2のサーミスタには測定対象のガスを含まない標準気体を透過した赤外線を照射し、2つのサーミスタの温度上昇の違いから測定対象の気体内のガス濃度を検出するものである。すなわち、第1のサーミスタはガス濃度という物理量の影響を受け、第2のサーミスタはその影響が低減されている。このような2つのサーミスタを用いたガスセンサにおいても、上記実施形態に係るセンサ回路を適用することで、測定対象の物理量、すなわちガス濃度の検出精度の低下を抑制することができる。
2つのサーミスタを用いた湿度センサは、2つのサーミスタのうち第1のサーミスタは測定対象の雰囲気にさらされ、第2のサーミスタは密閉された乾燥空気の中に配置されているものである。これらの2つのサーミスタを同等の条件にて加熱すると、第1のサーミスタは湿度による雰囲気の熱伝導率の変化に影響され温度が変わるが、第2のサーミスタは湿度の影響を受けない。2つのサーミスタの温度差は湿度を反映している。すなわち、第1のサーミスタは湿度という物理量の影響を受け、第2のサーミスタはその影響が低減されている。このような2つのサーミスタを用いた湿度センサにおいても、上記実施形態に係るセンサ回路を適用することで、測定対象の物理量、すなわち湿度の検出精度の低下を抑制することができる。
2つのサーミスタを用いた流速センサは、2つのサーミスタのうち第1のサーミスタは測定対象の流体にさらされ、第2のサーミスタは流体にさらされない位置に配置されるものである。これらの2つのサーミスタを同等の条件にて加熱すると、第1のサーミスタは流速に応じて熱を奪われ温度が変わるが、第2のサーミスタはその影響を受けない。2つのサーミスタの温度差は流速を反映している。すなわち、第1のサーミスタは流速という物理量の影響を受け、第2のサーミスタはその影響が低減されている。このような2つのサーミスタを用いた流速センサにおいても、上記実施形態に係るセンサ回路を適用することで、測定対象の物理量、すなわち流速の検出精度の低下を抑制することができる。
以上のように、物理量を2つのサーミスタの温度差として検出する各種センサにおいては、上記実施形態に係るセンサ回路を適用することで、測定対象の物理量の検出精度の低下を抑制することができる。