JP6313137B2 - ポリシロキサン化合物、その製造方法及びポリシロキサン含有無機組成物 - Google Patents

ポリシロキサン化合物、その製造方法及びポリシロキサン含有無機組成物 Download PDF

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Description

本発明は、ポリシロキサン化合物、その製造方法及びポリシロキサン含有無機組成物に関する。より詳しくは、様々な用途に有用なポリシロキサン化合物、その製造方法及びそれを含むポリシロキサン含有無機組成物等に関する。
ポリシロキサン化合物とは、Si−O結合(シロキサン結合)を有する化合物であり、従来から、各種工業製品の原料として広く使用されている。そして昨今では、シロキサン結合に起因する耐熱性等の特性から、様々な用途へ適用されている。従来のポリシロキサン化合物としては、例えば、シロキサン結合を形成するケイ素原子にイミド結合を有する有機骨格が結合してなる構成単位を有するシラン化合物(特許文献1)の他、ケイ素原子に、イソシアネート基又はアミド基と水酸基とを有する炭化水素基が直接結合した構造を有するシルセスキオキサン化合物(特許文献2)や、アンモニウム基含有ラダー状ポリシルセスキオキサン塩酸塩(非特許文献1等)が開示されている。
特許第5193207号公報 特開2012−136449号公報
Y カネコ(Y KANEKO)、外5名、「ケミストリー オブ マテリアルズ(Chemistry of Materials)」、(米国)、2004年、第16巻、p.3417−3423
ポリシロキサン化合物に要求される特性は用途によって異なるため、更にポリシロキサン化合物の構造のバリエーションを増やすことは、用途に応じた最適な特性のポリシロキサン化合物の選択の幅を広げる点から好ましい。そこで本発明者は、新たな用途として、層状無機化合物を用いたナノコンポジット材用途を見いだしたが、従来のポリシロキサン化合物では層状無機化合物を充分に分散することができないため、この点で課題があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、これまでにない新しい構造を有し、耐熱性や分散性等の各種物性に優れるポリシロキサン化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。また、このようなポリシロキサン化合物と層状無機化合物とを含むポリシロキサン含有無機組成物を提供することも目的とする。
本発明者は、ポリシロキサン化合物について種々検討したところ、籠(かご)状構造のポリシロキサン骨格を有し、かつ側鎖に疎水基含有アミド構造を有する籠状ポリシロキサン化合物の合成に成功し、同時に、この籠状ポリシロキサン化合物とともに、側鎖に疎水基含有アミド構造を有するラダー状ポリシロキサン化合物を含むポリシロキサン混合物の合成にも成功し、これらの好適な合成方法を見いだした。また、これらが耐熱性に極めて優れる他、層状無機化合物等の分散性にも優れることを見いだし、層状無機化合物と併用してポリシロキサン含有無機組成物とすれば、ナノコンポジット材料として様々な用途に有用な組成物となることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち本発明は、籠状構造のポリシロキサン骨格を有し、かつ側鎖に疎水基含有アミド構造を有する籠状ポリシロキサン化合物である。
本発明はまた、上記籠状ポリシロキサン化合物と、ラダー状構造のポリシロキサン骨格を有し、かつ側鎖に疎水基含有アミド構造を有するラダー状ポリシロキサン化合物とを含むポリシロキサン混合物でもある。
本発明は更に、層状無機化合物と、上記籠状ポリシロキサン化合物又はポリシロキサン混合物とを含むポリシロキサン含有無機組成物でもある。
本発明はそして、上記籠状ポリシロキサン化合物を製造する方法であって、該製造方法は、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物と疎水性酸塩化物との反応工程と、加水分解・縮合工程とを含む籠状ポリシロキサン化合物の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態である。
〔籠状ポリシロキサン化合物〕
本発明の籠状ポリシロキサン化合物は、籠状構造のポリシロキサン骨格を有する。
籠状構造のポリシロキサン骨格とは、シロキサン結合(Si−O結合)からなるシロキサン鎖が立体的に結合された骨格を意味し、例えば、〔RSiO1.5(nは2の倍数であり、かつ4以上の整数である。Rは後述する。)で表すことができる。
なお、本明細書中、籠状構造は、不完全型籠状構造も含むものとする。
本発明では、ポリシロキサン骨格が籠状構造をとることにより、耐熱性や低吸湿性に特に優れたポリシロキサン化合物となるとともに、これを含む組成物の粘度を低減することができる。
上記籠状ポリシロキサン化合物において、籠状構造のポリシロキサン骨格の占める割合としては、ポリシロキサン化合物100質量%中、80〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは70〜15質量%であり、更に好ましくは50〜20質量%である。
上記籠状ポリシロキサン化合物として好ましくは、例えば、下記式(1−a)〜(1−d):
Figure 0006313137
(式中、Rは、同一又は異なって、1価の有機基、水酸基、ハロゲン原子又は水素原子を表し、Rのうち少なくとも1つが、疎水基含有アミド構造である。)で表される化合物等である。
上記籠状ポリシロキサン化合物の重量平均分子量は、300以上、5000以下であることが好適である。これにより、例えば層状無機化合物をより充分に分散することができるため、ナノコンポジット材用途等の各種用途により好適なものとなる。重量平均分子量の下限としてより好ましくは500以上、更に好ましくは1000以上、特に好ましくは1300以上である。また、重量平均分子量の上限としてより好ましくは5000未満、更に好ましくは4000以下、特に好ましくは3000以下、最も好ましくは2000以下である。
本明細書中、重量平均分子量及び数平均分子量は、後述する測定条件下、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
また各ポリシロキサン化合物の構造は、例えば、H−NMR、13C−NMR、MALDI−TOF−MS、FT−IRを測定して同定することができる。
上記籠状ポリシロキサン化合物は、例えば、層状無機化合物を充分に分散させることができる他、耐熱性、耐圧性、機械的・化学的安定性、熱伝導性等にも優れ、各種材料に優れた特性を付与することができる。また、上記籠状ポリシロキサン化合物と層状無機化合物とを併用した場合には、絶縁性やガスバリア性等に優れる組成物を与えることができる。特に、上記籠状ポリシロキサン化合物は、層状無機化合物の分散剤として有用である。
〔ラダー状ポリシロキサン化合物〕
本発明のポリシロキサン混合物は、上述した籠状ポリシロキサン化合物に加え、ラダー状構造のポリシロキサン骨格を有し、かつ側鎖に疎水基含有アミド構造を有するラダー状ポリシロキサン化合物を含む。
ラダー状構造のポリシロキサン骨格とは、シロキサン結合(Si−O結合)からなる直鎖状のシロキサン鎖を2つ有し、一の直鎖状のシロキサン鎖を構成するケイ素原子と他の直鎖状のシロキサン鎖を構成するケイ素原子とが1つの酸素原子を介して結合することにより、当該2つの直鎖状のシロキサン鎖が、平行に位置している骨格を意味する。ラダー状ポリシロキサン化合物は、耐熱性や分散性等に優れるものである。
上記ラダー状ポリシロキサン化合物において、ラダー状構造のポリシロキサン骨格の占める割合としては、ポリシロキサン化合物100質量%中、80〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは70〜15質量%、更に好ましくは50〜20質量%である。
上記ラダー状ポリシロキサン化合物として好ましくは、下記一般式(2):
Figure 0006313137
(式中、Rは、同一又は異なって、1価の有機基、水酸基、ハロゲン原子又は水素原子を表し、Rのうち少なくとも1つが、疎水基含有アミド構造である。Rは、同一又は異なって、1価の有機基、水酸基、ハロゲン原子、水素原子又はOR基を表す。Rは、炭素数1〜20のアルキル基、アシル基、アリール基及び不飽和脂肪族残基のいずれかの基を表し、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族基等の置換基があってもよい。nは、重合度を表す。)で表される化合物である。
上記式(2)中、重合度nは、10〜1000であることが好ましい。重合度がこのような好ましい範囲にあれば、上記ポリシロキサン化合物は耐熱性により優れたものとなる。より好ましくは15〜800、更に好ましくは20〜500である。
上記ラダー状ポリシロキサン化合物の重量平均分子量は、上述した本発明の籠状ポリシロキサン化合物の重量平均分子量よりも大きいことが好ましい。具体的には、5000以上であることが好ましく、より好ましくは6000以上、更に好ましくは8000以上である。また、重量平均分子量の上限は20万以下であることが好ましい。
〔籠状及びラダー状ポリシロキサン化合物〕
上記籠状ポリシロキサン化合物及びラダー状ポリシロキサン化合物(両者を「ポリシロキサン化合物」とも総称する。)は、いずれも、側鎖に疎水基含有アミド構造を有する。
疎水基含有アミド構造とは、疎水基とアミド結合(−N(H)−C(=O)−)とを含むものであれば、その他の部位の構造は特に限定されない。中でも、疎水基含有アミド構造は、−N(H)−C(=O)−R(Rは、疎水基を表す。)で表される基を含むことが好ましい。
上記Rで表される疎水基としては、例えば、炭素数1〜30の飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)、炭素数3〜30の飽和脂環式炭化水素基(シクロアルキル基)、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基等が好ましい。より好ましくは、炭素数3〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基であり、直鎖又は分岐鎖アルキル基の中でも直鎖アルキル基が特に好適である。これらの中でも、耐熱性が特に求められる用途に用いる場合は、籠状又はラダー状ポリシロキサン化合物が含む疎水基(R)は、芳香族炭化水素基であることが好ましい。また、層状無機化合物や有機ポリマーと併用する場合は、これらとの相溶性を考慮して疎水基を適宜選択することも好適である。
なお、上記疎水基は、置換基を有していてもよい。置換基としては特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基等が挙げられる。
上記疎水基含有アミド構造は、有機骨格を含むことが好適である。
有機骨格としては、例えば、(1)炭素数1〜6の(ポリ)アルキレン基を有する構造、(2)2級アミノ基を有する構造、又は、(3)3級アミノ基を有する構造、のいずれか1以上の構造が好ましく、上記疎水基含有アミド構造は、これらのいずれか1以上の構造の末端に、アミド結合を介して疎水基を有する構造であることがより好ましい。中でも、ポリシロキサン化合物の熱的安定性がより高まる点で、炭素数1〜6の(ポリ)アルキレン基の末端に、アミド結合を介して疎水基を有する構造が更に好ましい。
なお、上記籠状ポリシロキサン化合物は、有機骨格層がシェル部分、無機骨格層がコア部分となる形態であることが特に好ましい。
上記疎水基含有アミド構造として好ましくは、下記一般式(3):
Figure 0006313137
(式中、Rは、上述した疎水基を表す。x及びzは、同一又は異なって、0以上5以下の整数であり、yは、0又は1である。)で表される構造(基)である。式(3)中、x+zは、0以上10以下の整数であるが、3〜7であることが好ましく、より好ましくは3〜5、更に好ましくは3である。また、yは0であることが好ましい。
上記ポリシロキサン化合物において、疎水基含有アミド構造が占める割合としては、各ポリシロキサン化合物に含まれるケイ素原子100モルに対して、それぞれ20〜100モルであることが好ましい。これにより、耐熱性、耐加水分解性等がより向上するとともに、層状無機化合物と併用して組成物とした場合に、層状無機化合物の分散性がより高まり、絶縁性やガスバリア性等がより一層向上することになる。より好ましくは50〜100モル、更に好ましくは70〜100モル、特に好ましくは80〜100モル、最も好ましくは100モルである。
上記ポリシロキサン化合物は、それぞれ、下記計算式(α)で求められるシラノール基量が、0.1以下であることが好ましい。
[Si−OH結合モル数〕/[Si−O結合モル数〕 (α)
これにより、上記ポリシロキサン化合物やそれを含む組成物が著しく低粘度化し、また、これら化合物、組成物や、その硬化物が耐吸湿性(低吸湿性)に極めて優れたものとなる。上記計算式(α)で求められるシラノール基量として、より好ましくは0.05以下、更に好ましくは0.01以下である。特に好ましくは、上記ポリシロキサン化合物が残存シラノール基を有さないことである。
ここで、[Si−OH結合モル数〕とは、SiとOHとの結合数をモル数で表す。例えば、1モルのSi原子のそれぞれに2つのOH基が結合している場合には、[Si−OH結合モル数〕は2モルとなる。Si−O結合モル数についても同様に数えるものとする。
上記ポリシロキサン化合物はまた、それぞれ、疎水基含有アミド構造以外のその他の基(骨格)を側鎖に有していてもよい。
その他の基としては特に制限されないが、例えば、水素原子;水酸基;ハロゲン原子;OR基;アルキル基;アリール基、アラルキル基等の芳香族残基;不飽和脂肪族残基;等が挙げられる。これらは置換基を有していてもよい。好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜8のアルキル基、又は、アリール基、アラルキル基等の芳香族残基である。Rは、同一若しくは異なって、アルキル基、アシル基、アリール基又は不飽和脂肪族残基である。
〔ポリシロキサン混合物〕
本発明のポリシロキサン混合物は、上述した籠状ポリシロキサン化合物とラダー状ポリシロキサン化合物とを含むが、好ましくは、上記籠状ポリシロキサン化合物と、当該ラダー状ポリシロキサン化合物とからなる形態である。
上記ポリシロキサン混合物において、籠状ポリシロキサン化合物とラダー状ポリシロキサン化合物との質量比は特に限定されない。例えば、両者の合計量100質量%に対し、籠ポリシロキサン化合物が1〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜80質量%である。
上記質量比は、例えば、分子量分布を示すGPC曲線の面積比から算出することができる。また、GPC曲線の分子量ピークから、籠状ポリシロキサン化合物とラダー状ポリシロキサン化合物とを区別することができる。それぞれの分子量ピークは、上述した各ポリシロキサン化合物の好ましい重量平均分子量の範囲内にあることが好ましい。
上記ポリシロキサン混合物の重量平均分子量は、300以上、5万以下であることが好ましい。これにより、例えば層状無機化合物をより充分に分散することができるため、ナノコンポジット材用途等の各種用途により好適なものとなる。より好ましくは1000以上、更に好ましくは2000以上である。また、重量平均分子量の上限としてより好ましくは4万以下、更に好ましくは3万以下、特に好ましくは2万以下、最も好ましくは1万以下である。
上記ポリシロキサン混合物は、例えば、層状無機化合物を充分に分散させることができる他、耐熱性、耐圧性、機械的・化学的安定性、熱伝導性等にも優れ、各種材料に優れた特性を付与することができる。また、上記籠状ポリシロキサン化合物と層状無機化合物とを併用した場合には、絶縁性やガスバリア性等に優れる組成物を与えることができる。特に、上記ポリシロキサン混合物は、層状無機化合物の分散剤として有用である。
〔籠状ポリシロキサン化合物の製造方法〕
本発明の籠状ポリシロキサン化合物を得るための方法は特に制限されないが、本発明の製造方法、すなわちアミノ基を有するアルコキシシラン化合物と疎水性酸塩化物との反応工程と、加水分解・縮合工程とを含む製造方法を採用することが好適である。
この製造方法により、上述した本発明のポリシロキサン混合物を得ることもできる。すなわち上記ポリシロキサン混合物を製造する方法であって、該製造方法は、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物と疎水性酸塩化物との反応工程と、加水分解・縮合工程とを含む、ポリシロキサン混合物の製造方法もまた、本発明者による発明の1つである。
上記製造方法は、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物と疎水性酸塩化物との反応工程(単に「反応工程」とも称す)と、加水分解・縮合工程とを含むが、更に必要に応じて、通常の製法で行われる工程(例えば、ろ過工程、精製工程等)を1又は2以上含んでもよい。
<反応工程>
−アミノ基を有するアルコキシシラン化合物−
上記反応工程で使用されるアミノ基を有するアルコキシシラン化合物は、アミノ基及びアルコキシシリル基を有する限り特に限定されないが、例えば、ケイ素原子に、(1)炭素数1〜6のアルキレン基を有する構造、(2)2級アミノ基を有する構造、又は、(3)3級アミノ基を有する構造、のいずれかの構造が結合し、該構造の、ケイ素原子とは反対側の末端に、アミノ基が結合した構造を有するものが好ましい。上記(1)〜(3)の中でも、(1)炭素数1〜6のアルキレン基を有する構造がより好ましい。
上記アミノ基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えば、下記式(4):
Figure 0006313137
(式中、Rは、同一若しくは異なって、炭素数1〜20のアルキル基、アシル基、アリール基及び不飽和脂肪族残基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、置換基があってもよい。x及びzは、同一若しくは異なって、0以上5以下の整数であり、yは、0又は1である。)で表される化合物が好ましい。
上記式(4)において、x、y及びzはすべて一般式(3)における各記号と同じであり、yは0であることが好ましく、x及びzの合計は3であることが好ましい。また、R39としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。
上記アミノ基を有するアルコキシシラン化合物として好ましくは、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピル―トリプロポキシシラン、3−アミノプロピルトリ(イソプロポキシ)シラン、3−アミノプロピルトリブトキシシランである。
−疎水性酸塩化物−
上記反応工程において、疎水性酸塩化物としては、疎水基(R)を有する酸塩化物であれば特に限定されず、酸塩化物としては、例えば、スルホン酸塩化物、カルボン酸塩化物等が挙げられる。中でも、疎水性酸塩化物は、R−C(=O)−Cl(Rは、疎水基を表す)で表される疎水性カルボン酸塩化物であることが好ましい。なお、Rで表される疎水基については、上述したとおりである。
上記反応工程において、疎水性酸塩化物の使用量(添加量)は、上記アルコキシシラン化合物が有するアミノ基1モルに対し、0.5〜3モルとすることが好ましい。より好ましくは0.8〜1.2モル、更に好ましくは1モルである。
上記アミノ基を有するアルコキシシラン化合物と疎水性酸塩化物との反応は、例えば、上記アミノ基を有するアルコキシシラン化合物に対し、疎水性酸塩化物によって求電子置換反応させることで、疎水基を側鎖に導入することが好ましい。
上記反応工程では、反応温度を室温〜250℃として行うことが好ましい。より好ましくは室温〜200℃である。反応時間としては、反応温度、反応組成によって変わるが、3分〜24時間が好ましい。
上記反応工程は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。
溶媒としては、有機溶媒を1種又は2種以上を用いることが好適である。具体的には、例えば、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒等が挙げられるが、この中でも、エーテル系溶媒が好ましい。これらエーテル系溶媒は、後の加水分解工程で水に溶けるため、製造工程がシンプルとなって好ましい。
エーテル系溶媒としては、ジグライム、テトラヒドロフラン(THF)、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられ、中でもジグライムがより好ましい。
上記反応工程はまた、触媒の存在下で行うことが好ましく、触媒として、例えば、塩化水素、トリエチルアミン等の1種又は2種以上を用いることが好適である。
上記アミノ基を有するアルコキシシラン化合物と疎水性酸塩化物との反応の一例として、疎水性酸塩化物としてベンゾイルクロリドを用いた例を下記式(5)に示す。
Figure 0006313137
<加水分解・縮合工程>
上記加水分解・縮合工程は、上記反応工程で得られた生成物中のアルコキシシリル基を加水分解反応させ、その後、縮合反応させる工程であることが好ましい。加水分解反応により得られたシラノール基(Si(OH))の縮合反応により、本発明の籠状ポリシロキサン化合物を得ることができる。
加水分解・縮合反応の一例として、上記式(5)で得た生成物を例にして下記式(6)に示す。
Figure 0006313137
上記加水分解・縮合工程においては、水を用いることが好ましい。例えば、上記反応工程の生成物中の固形分100質量部に対し、10〜2000質量部の水を添加して反応させることが好適である。水の添加量としてより好ましくは10〜500質量部、更に好ましくは20〜400質量部である。
上記反応に用いる水は、イオン交換水、pH調整水等のいずれを用いてもよいが、pH7前後の水を用いることが好ましい。このような水を用いることにより、イオン性不純物量を低減させることが可能となり、低吸湿性又は高絶縁性のポリシロキサン化合物を得ることが可能になる。なお、水の純度は、pH7である方が好ましいが、塩化水素、シュウ酸、ピリジン、トリエチルアミン等は高温で反応系外へ揮散するので、微量添加してpHを2〜12の範囲で調整してもよい。
上記水の使用形態は、上記反応工程の生成物に滴下する形態でもよいし、一括投入する形態でもよい。
上記加水分解・縮合工程では、触媒を1種又は2種以上用いることが好ましい。
触媒としては、亜鉛化合物を少なくとも使用することが好適である。亜鉛化合物としては亜鉛カルボン酸塩が好ましく、飽和脂肪族カルボン酸の亜鉛カルボン酸塩がより好ましい。飽和脂肪族カルボン酸の炭素数は1〜20が好ましく、より好ましくは2〜10、更に好ましくは6〜8である。これらの中でも、水に可溶性の化合物が特に好ましく、最も好ましくは、2−エチルヘキサン酸亜鉛を用いることである。
上記加水分解・縮合工程における反応温度は、室温〜200℃であることが好ましい。より好ましくは室温〜160℃であり、更に好ましくは、副生物としてアルコールが生じるので、アルコール、水、溶媒の共沸還流下で保持することである。
上記加水分解・縮合工程における反応圧力は、常圧であっても加圧下であっても減圧下であってもよいが、副生アルコールを効率よく反応系外へ留去することで反応が進行しやすいので、常圧以下である方が好ましい。また、反応時間としては、反応温度、反応組成によって変わるが、2〜48時間であることが好適である。
<その他の工程>
上記製造方法はまた、ろ過工程及び洗浄工程を行うことが好適である。例えば、上記反応工程で得られた生成物に対してろ過及び洗浄工程を行った後、加水分解・縮合工程に供することが好ましい。
洗浄工程では、水や、有機溶媒等の1種又は2種以上を使用して、1回又は2回以上洗浄を行うことが好ましい。有機溶媒は特に限定されず、例えば、アセトン、メタノール、ジエチルエーテル、トルエン等の通常の洗浄工程で使用される溶媒を用いればよい。
また上記加水分解・縮合工程の後に、各工程等で用いた溶媒を除去する工程を行うことが好適である。
〔ポリシロキサン含有無機組成物〕
本発明のポリシロキサン含有無機組成物は、層状無機化合物と、上述した本発明の籠状ポリシロキサン化合物又はポリシロキサン混合物とを含むが、必要に応じてその他の成分を更に含んでいてもよい。各含有成分は、それぞれ1種又は2種以上であってもよい。
−層状無機化合物−
層状無機化合物とは、結晶格子が一定距離ごとに層を形成している構造を有する無機化合物を意味するが、膨潤可能な化合物であることが好適である。具体的には、層状シリケート、層状アルミネート、これらの混合物等を用いることができる。中でも、上記層状無機化合物は、層状シリケートを含むことが好適である。この場合、層状無機化合物の総量100質量%中、層状シリケートが占める割合が50〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは100質量%である。
上記層状無機化合物はまた、粉粒体(粉体又は粒体)であることが好ましく、例えば、平均一次粒子径が0.01〜200μmにあることが好適である。より好ましくは0.1〜100μm、更に好ましくは0.2〜50μm、特に好ましくは0.3〜10μmである。
上記層状シリケート(珪酸塩)とは、シリケート層間に陽イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等)が存在し、水等の膨潤剤が該陽イオンと水和反応することによって、膨潤し、層間距離が広がる性質を有するものである。具体的には、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト等のスクメタイトの他、バーキュライト、ハロサイト、マイカ等が挙げられる。これらの中でも、スクメタイトを用いることが好ましく、より好ましくはモンモリロナイトを用いることである。すなわち上記層状無機化合物は、モンモリロナイトを含むことが特に好ましい。
−ポリシロキサン化合物−
上記ポリシロキサン含有無機組成物においては、求められる物性等を考慮して、ポリシロキサン化合物が含む疎水基を適宜選択することが好適である。例えば、耐熱性が特に求められる場合には、籠状又はラダー状ポリシロキサン化合物が含む疎水基(R)は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であることが好ましい。これにより、耐熱性が極めて高く、かつ層状無機化合物が充分に分散されたポリシロキサン含有無機組成物を得ることができる。中でも特に、籠状ポリシロキサン化合物が含む疎水基(R)が置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であることが好ましい。芳香族炭化水素基として好ましくは、フェニル基である。
上記ポリシロキサン含有無機組成物において、ポリシロキサン化合物の総含有量(籠状ポリシロキサン化合物と、ラダー状ポリシロキサン化合物を含む場合は該化合物と、の合計量)は、層状無機化合物の総量100質量部に対し、10〜1000質量部であることが好ましい。これにより、ポリシロキサン化合物が層状無機化合物をより充分に分散させることができる。より好ましくは20〜500質量部、更に好ましくは50〜200質量部である。
−溶媒−
上記ポリシロキサン含有無機組成物はまた、溶媒を更に含むことが好ましい。通常、層状無機化合物は、溶媒(特に有機溶媒)への溶解性又は分散性が充分ではないが、本発明の籠状ポリシロキサン化合物又はポリシロキサン混合物を層状無機化合物と併用することで、層状無機化合物を溶媒中に充分に分散することができる。
上記溶媒としては特に限定されないが、有機溶媒であることが好ましい。具体的には、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒等が挙げられるが、この中でも、極性溶媒を少なくとも用いることが好適である。より好ましくは、アルコール系溶媒である。
上記アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ブタノール等の他、メチルセロソルブや、mアルキレングリコールnアルキルエーテル(m及びnは、同一又は異なって、モノ、ジ、トリ、テトラ等に代表される1以上の倍数接頭辞である。)等の末端に水酸基を有するエーテル類等が好適である。
mアルキレングリコールnアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシプロパノール)等が挙げられる。
なお、末端に水酸基を有するエーテル類(すなわちエーテル結合を有するアルコール類)は、その末端水酸基に起因してアルコール系溶媒としての性能を有するため、エーテル系溶媒ではなくアルコール系溶媒に該当するものとする。
上記溶媒の含有量は、ポリシロキサン化合物の総含有量(籠状ポリシロキサン化合物と、ラダー状ポリシロキサン化合物を含む場合は該化合物と、の合計量)と層状無機化合物との合計量100質量部に対し、10〜10000質量部であることが好ましい。より好ましくは50〜5000質量部、更に好ましくは100〜1000質量部である。
−その他の成分−
上記ポリシロキサン含有無機組成物はまた、必要に応じ、求められる物性等に応じてその他の成分を1又は2以上含んでいてもよい。
上記ポリシロキサン含有無機組成物は、層状無機化合物が充分に分散した形態(好ましくは、層状無機化合物が溶媒中に充分に分散した形態)からなるため、ナノコンポジット材料として様々な用途に有用なものである。例えば、ガスバリア性や絶縁性等に優れる組成物となるため、絶縁材料やガスバリア材等の用途に好適に適用できる。その他、実装用途、光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途等の各種用途の他、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料、塗料や接着剤の材料等にも好適に使用できる。
〔ポリシロキサン含有樹脂組成物〕
本発明の籠状ポリシロキサン化合物及びポリシロキサン混合物はまた、有機ポリマーとの相溶性にも優れるものである。したがって、有機ポリマーと、上述した本発明の籠状ポリシロキサン化合物又はポリシロキサン混合物とを含むポリシロキサン含有樹脂組成物とすれば、極めて透明性が高い硬化物を与えることができ、また、有機無機ハイブリッド(複合)材料用途にも特に好適なものとなる。このように有機ポリマーと、上記籠状ポリシロキサン化合物又はポリシロキサン混合物とを含むポリシロキサン含有樹脂組成物もまた、本発明者による発明の1つである。
上記ポリシロキサン含有樹脂組成物は、有機ポリマーと、上述した本発明の籠状ポリシロキサン化合物又はポリシロキサン混合物とを含むが、必要に応じてその他の成分を更に含んでいてもよい。各含有成分は、それぞれ1種又は2種以上であってもよい。
−有機ポリマー−
上記有機ポリマー(有機樹脂とも称す)としては特に限定されず、意図される用途(例えば、屈折率の調整に用いる光学フィルム用途等)等によって適宜選択すればよい。例えば、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマーのいずれもが好適に用いられる。具体的には、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)等のアクリル樹脂や、ポリスチレン(PSt)等が好ましい。また、グリシジル基及び/又はエポキシ基を少なくとも1つ有する化合物、多価フェノール化合物、マレイミド化合物も好ましく使用できる。これら化合物は、特許第5193207号公報に記載のものと同様のものが好適である。その他、特許第5193207号公報〔0131〕に記載の種々の有機樹脂も好ましく使用できる。
−ポリシロキサン化合物−
上記ポリシロキサン含有樹脂組成物においては、有機ポリマーとの相溶性を考慮して、籠状又はラダー状ポリシロキサン化合物が含む疎水基を適宜選択することが好適である。
例えば、有機ポリマーとしてPMMAを用いる場合、ポリシロキサン化合物が含む疎水基(R)は、直鎖状アルキル基であることが好ましく、中でも、炭素数3〜20の直鎖状アルキル基であることがより好ましい。更に好ましくは、炭素数6〜11の直鎖状アルキル基である。これにより、PMMAとの相溶性がより向上され、透明性に優れる硬化物が得られるため、光学フィルム用途に特に好適なものとなる。また、有機ポリマーとしてPStを用いる場合、疎水基(R)は、芳香族炭化水素基であることが好ましく、中でも、フェニル基であることがより好ましい。これにより、PStとの相溶性がより向上され、透明性に優れる硬化物が得られるため、光学フィルム用途に特に好適なものとなる。
上記ポリシロキサン含有樹脂組成物において、ポリシロキサン化合物の総含有量(籠状ポリシロキサン化合物と、ラダー状ポリシロキサン化合物を含む場合は該化合物と、の合計量)は、有機ポリマーの総量100質量部に対し、10〜1000質量部であることが好ましい。これにより、ポリシロキサン化合物と有機ポリマーとの相溶性がより高まって、透明性や耐熱性等の各種物性に優れる硬化物を与えることが可能になる。より好ましくは20〜500質量部である。
−その他の成分−
上記ポリシロキサン含有樹脂組成物はまた、必要に応じ、求められる物性等に応じてその他の成分を1又は2以上含んでいてもよい。
その他の成分としては特に限定されず、例えば、溶媒、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、マット剤等が挙げられる。中でも、溶媒を少なくとも含むことが好適である。溶媒としては特に限定されないが、例えば、クロロホルム、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N’−ジメチルホルマミド等の非極性溶媒である。より好ましくはクロロホルムである。
上記その他の成分の含有量は、該成分に求められる性能等によって適宜設定すればよいが、例えば、溶媒を含む場合、その含有量は、ポリシロキサン含有樹脂組成物に含まれるポリシロキサン化合物と有機ポリマーとの合計量100質量部に対し、10〜10000質量部であることが好ましい。より好ましくは50〜5000質量部、更に好ましくは100〜1000質量部である。
上記ポリシロキサン含有樹脂組成物は、含有成分であるポリシロキサン化合物と有機ポリマーとの相溶性に特に優れるためフィラー用途等に有用であり、また、透明性に優れる硬化物を与えることができるため、光学フィルム等の光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途にも好適に使用できる。また、優れた耐熱性を示すため、耐熱性の高い実装用材料としても好適に使用できる。その他、高い熱安定性が必要とされる実装分野だけでなく、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料、塗料や接着剤の材料等にも好適に用いることができる。
本発明の籠状ポリシロキサン化合物及びポリシロキサン混合物は、上述の構成よりなるので、耐熱性や分散性等の各種物性に優れる他、層状無機化合物の分散性能にも優れるため、籠状ポリシロキサン化合物と層状無機化合物とを含むポリシロキサン含有無機組成物は、ナノコンポジット材料として様々な用途に有用なものである。
図1は、化合物A及び化合物DのGPC曲線である。 図2は、化合物A及び化合物DのTGA曲線である。 図3は、組成物E、G又はIから濾取された分散体(固形分)についてのX線回折曲線(XRDパターン)である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
なお、下記の合成例において、分子量は、以下のGPC測定条件の下で求めた。
<GPC測定条件>
計測機器:東ソー社製「HLC−8220GPC」
カラム:Shodex GF−7MHQを2本、
展開液:10mMol/L LiBr添加N,N’−ジメチルホルムアミド
流速:0.6mL/分
温度:40℃
検量線:ポリスチレン標準サンプル(東ソー社製)を用いて作成。
<ポリシロキサン化合物の合成>
合成例1
籠型構造含有型ポリ〔3−(ベンズアミド)プロピル〕シルセスキオキサンの合成
窒素導入管、温度センサ、撹拌翼、コンデンサーを取り付けた200mLの4つ口フラスコに3−アミノプロピルトリエトキシシラン33.21g、トリエチルアミン15.18g及びジグライム50gを投入して撹拌しながら均一な溶液にし、オイルバスに浸けて室温に保持した。次に、ガラス製バイアルにベンゾイルクロリド21.09gとジグライム26gを投入して均一な溶液にしたのち、4つ口フラスコ中に撹拌を続けながら10分間かけて滴下投入した。フラスコ内部は滴下投入開始直後から白濁し始め、内温も60℃まで上昇した。滴下終了後、オイルバスで加熱しながら内温を80℃まで昇温し6時間保持したのち室温まで冷却した。
フラスコ内容物はスラリー状になっており、ろ過することにより白色沈殿物を除去し、白色沈殿物を更にトルエン10gで洗浄及びろ過する工程を2回繰り返し、濾液を回収した。濾液を再び4つ口フラスコに戻してイオン交換水27.03g及び2−エチルヘキサン酸亜鉛0.264gを加え、オイルバスで加熱しながら撹拌を続けた。87℃に到達したところで副生エタノールと水による還流が開始し、そのまま2時間保持したのちオイルバスで更に加熱を加えて副生エタノール、過剰水及びトルエンをコンデンサーを通じて回収しながら6時間かけて160℃に到達、更に3時間保持した。得られた反応液を真空オーブンで乾燥させてジグライムを除去して化合物Aを得た。
収率は93.2%で外観は白色固体であり、FT−IR、NMRによる分析結果からポリ〔3−(ベンズアミド)プロピル〕シルセスキオキサンであることを確認した。
GPC測定では、数平均分子量Mnは3810、重量平均分子量Mwは7020、分子量分布Mw/Mnは1.85であった。
合成例2
籠型構造含有型ポリ〔3−(2−ナフトアミド)プロピル〕シルセスキオキサンの合成
合成例1のベンゾイルクロリド21.09gの代わりに2−ナフトイルクロリド28.59gを用いる以外は合成例1と同様の操作を行い、化合物Bを得た。
収率は91.8%で外観は白色固体であり、FT−IR、NMRによる分析結果からポリ〔3−(2−ナフトアミド)プロピル〕シルセスキオキサンであることを確認した。
GPC測定では、数平均分子量Mnは4590、重量平均分子量Mwは8670、分子量分布Mw/Mnは1.89であった。
合成例3
籠型構造含有型ポリ〔3−(4−フェニルベンズアミド)プロピル〕シルセスキオキサンの合成
合成例1のベンゾイルクロリド21.09gの代わりに2−ナフトイルクロリド32.50gを用いる以外は合成例1と同様の操作を行い、化合物Cを得た。
収率は91.8%で外観は白色固体であり、FT−IR、NMRによる分析結果からポリ〔3−(4−フェニルベンズアミド)プロピル〕シルセスキオキサンであることを確認した。
GPC測定では、数平均分子量Mnは5160、重量平均分子量Mwは9514、分子量分布Mw/Mnは1.84であった。
合成例4
ラダー状ポリ〔3−(ベンズアミド)プロピル〕シルセスキオキサンの合成
300mLのビーカー中に3−アミノプロピルトリメトキシシラン8.695gと0.5mol/L塩酸150mLを加えて、マグネティック・スターラーで2時間室温で撹拌した。その後、容量50mLのディスポトレー5枚の上で60℃で加熱し、更に100℃のオーブンで10時間加熱して完全に残存塩化水素と水とメタノールを蒸発させた。得られた板状固形分を300mLのビーカー中で精製水50mLに溶解し、100mLのアセトンを撹拌しながら投入してデカンテーションにより沈殿物を回収、更に回収物にメタノール100mLを加えて洗浄する工程を5回実施し、最後にアセトン100mLで回収物を洗浄したものを減圧乾燥することで化合物D’を3.667g得た。
化合物D’は、FT−IR、NMR、XRDによる分析結果から非特許文献1の同定結果と一致しており、ラダー状ポリ(3−アミノプロピル)シルセスキオキサン塩酸塩であることを確認した。
GPC測定では、数平均分子量Mnは3200、重量平均分子量Mwは5760、分子量分布Mw/Mnは1.80であった。
次に20mLの窒素導入管付の2つ口フラスコにマグネティック・スターラーを取り付け、フラスコ中に上記ラダー状ポリ(3−アミノプロピル)シルセスキオキサン塩酸塩を0.147gと精製水3mLを入れて1時間撹拌して完全に溶解したのち、N,N’−ジメチルホルムアミド2mLを投入して更に30分撹拌して内容物が均一な溶液になるのを確認した。つづいてトリエチルアミン0.507gとベンゾイルクロリド0.563gを投入し、10分間室温で撹拌し続けた。バイアル内容液は当初白濁していたが、しばらくすると発熱が収まり、1.0mol/L塩酸6mLを入れると白色の沈殿物が発生した。吸引ろ過で沈殿物を回収し、更に水洗浄、ジエチルエーテル洗浄を交互に2回繰り返して減圧乾燥して化合物Dを0.160g得た。
収率は74.4%で外観は白色粉末であり、FT−IR、NMRによる分析結果からポリ〔3−(ベンズアミド)プロピル〕シルセスキオキサンであることを確認した。
GPC測定では、数平均分子量Mnは25600、重量平均分子量Mwは63900、分子量分布Mw/Mnは2.50であった。
実施例1、比較例1
図1に、合成例1で得た化合物Aと、合成例4で得た化合物Dとの分子量分布の比較図として、GPC曲線を示す(実施例1:化合物A、比較例1:化合物D)。
使用したGPCは、東ソー製HLC−8220GPC、カラムはShodex GF−7MHQを2本、展開液は10mMol/L LiBr添加N,N’−ジメチルホルムアミドであり、ポリスチレン(PSt)を用いて検量線を作成した。
図1より、化合物Aでは、26〜28分の溶出時間で低分子量成分の存在が確認でき、検量線との相対比較からこのピークの分子量はMw=1670であることが分かった。これは、籠型構造の分子量(Mw=1714)とほぼ同一であることから、このピークから、化合物Aは、籠型あるいはそれに類する構造をとると判断できる。
これに対し、化合物Dは低分子量成分を一切含んでいないため、ラダー状構造をとるものと考えられる。
実施例2〜4、比較例2
合成例1〜4で得た化合物A〜Dの耐熱性を、TG−DTA(熱重量測定−示差熱分析)を用いて比較した。具体的には、Nガス流通下で測定を行い、昇温速度10℃/分で50℃〜450℃まで重量変化を追跡した。重量減少が1%、3%、5%となる各温度を測定したところ、表1のようになった。
Figure 0006313137
表1より、本発明の籠状ポリシロキサン化合物を含むポリシロキサン混合物に該当する化合物A〜Cは、ラダー状ポリシロキサン化合物である化合物Dに比べて、重量減少温度が著しく高く、したがって、極めて耐熱性に優れることが確認された。
実施例5、比較例3
化合物Aと化合物DとのTGA(熱重量)曲線の比較を、図2に示す(実施例5:化合物A、比較例3:化合物D)。
図2では、側鎖の疎水基含有アミド構造が全く同じでありながら、主鎖骨格の違いによって耐熱性が異なることが示唆された。いずれの化合物も400℃付近で大きな重量減少が確認されることから、側鎖の熱分解は主骨格に寄らず400℃付近で進行していると考えられるが、比較例3のラダー構造のみ有する化合物Dは150〜200℃付近の温度領域で有意な重量減少が確認されるのに対し、実施例5の籠型構造を含む化合物Aでは400℃付近まで大きな重量変化はなかった。
<層状無機化合物の分散検討>
実施例6〜7、比較例4〜6
化合物A、化合物D及び第4級アンモニウム塩3種をそれぞれ用いて、モンモリロナイトのアルコールへの分散検討を行った。
具体的には、20mLのガラス製バイアルに表2に示す組成で秤量したのちにバイアルをウォーターバスに固定して30℃以下に保持し、超音波ホモジナイザー(機種名「VCX−750」、SONIC社製)を用いてマイクロチップをバイアル内容液に浸漬した状態で分散処理を行った。処理条件は、出力150W、処理時間30分とした。
分散状態は、処理液を目視で確認した。結果を表2に示す。
Figure 0006313137
表2中、各略号等は以下のとおりである。化合物A、Dは、上述したとおりである。
モンモリロナイト:製品名「クニピアF」、クニミネ工業社製
PGM:1−メトキシ−2−プロパノール:製品名「MFG」、日本乳化剤社製
表2に関し、一般に層状シリケートは有機溶媒中には分散しないが、比較例6でもこの結果が再現された。これに対し、実施例6、7では化合物Aを添加することでモンモリロナイトを分散できることが明らかとなった。また、側鎖構造が同じ化合物Dを用いた場合も検討したが(比較例4、5)、分散できなかった。
実施例8、比較例7〜8
実施例6、比較例4、6で各々得た組成物E、G、Iから、分散処理後にメンブレンフィルターで分散体(固形分)のみを濾取し、X線回折測定を行った(実施例8:組成物E、比較例7:組成物G、比較例8:組成物I)。
X線回折に用いた機種は、リガク社製の粉末X線回折装置「RINT−TTR III」であり、2θ=4〜12度を観測して、モンモリロナイトの層間距離を表す(001)面に由来するピークの位置を調べた。図3に、各XRDパターンを示す。
図3より、化合物A及びDのいずれも添加せずに分散処理を行った比較例8と比べると、化合物Aを用いた実施例8では、(001)面に帰属されるピークが低角側へシフトしており、モンモリロナイトの層間が広がっていることが示されており、層状シリケートの層間にインターカレーションしたことが示唆される。
これに対し、化合物Dを用いた比較例7では、比較例8とXRDパターンがほぼ同等であり、インターカレーションが進行しなかったことが示唆された。化合物Dは、化合物Aよりも分子量が大きいために層間に侵入するのが難しいのではと考えられ、良好な分散体調製には分子量や分子構造が大きく影響することが伺える。
これらの結果から、籠状構造のポリシロキサン骨格を有し、かつ側鎖に疎水基含有アミド構造を有する籠状ポリシロキサン化合物は、層状無機化合物を分散する性能に特に優れることが分かった。

Claims (6)

  1. 籠状構造のポリシロキサン骨格を有し、かつ側鎖に疎水基含有アミド構造を有し、
    該疎水基含有アミド構造は、−N(H)−C(=O)−R(Rは、炭素数1〜30の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の飽和脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基である疎水基を表す。)で表される基を含む
    ことを特徴とする籠状ポリシロキサン化合物。
  2. 請求項1に記載の籠状ポリシロキサン化合物と、ラダー状構造のポリシロキサン骨格を有し、かつ側鎖に疎水基含有アミド構造を有するラダー状ポリシロキサン化合物とを含むことを特徴とするポリシロキサン混合物。
  3. 層状無機化合物と、請求項1に記載の籠状ポリシロキサン化合物、又は、請求項に記載のポリシロキサン混合物とを含むことを特徴とするポリシロキサン含有無機組成物。
  4. 前記層状無機化合物は、層状シリケートを含むことを特徴とする請求項に記載のポリシロキサン含有無機組成物。
  5. 請求項1に記載の籠状ポリシロキサン化合物を製造する方法であって、
    該製造方法は、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物と疎水性酸塩化物との反応工程と、加水分解・縮合工程とを含むことを特徴とする籠状ポリシロキサン化合物の製造方法。
  6. 前記疎水性酸塩化物は、R−C(=O)−Cl(Rは、炭素数1〜30の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の飽和脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基である疎水基を表す。)で表される疎水性カルボン酸塩化物であることを特徴とする請求項に記載の籠状ポリシロキサン化合物の製造方法。
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