JP6312118B2 - 電気特性測定装置、電気特性測定方法およびプログラム - Google Patents

電気特性測定装置、電気特性測定方法およびプログラム Download PDF

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Description

本発明は、測定対象物の電気特性を非接触で測定する電気特性測定装置、電気特性測定方法およびプログラムに関する。
液体の導電率および比誘電率等を含む電気特性の測定は、該液体の組成変化を把握するために必要であり、導電率の変化のモニタリングは、プロセス産業においてプロセス制御を行う上で必要となる。
従来、導電率の測定方式には、主に電極式と電磁式の2つの方式がある。電極式は、電極を測定対象の液体に直接接触させて該液体の導電率を測定する方式である。電極式では、強酸または強アルカリ性の液体を測定対象とした場合、電極が液体中に溶出し、試料本来の性質が変化してしまうおそれがある。また、電極式では、例えばコンクリートを測定対象とし、電極を挿入したままコンクリートが凝結に至るまでの導電率の経時変化をモニタするといった目的で使用することは困難である。
一方、電磁式は、測定対象の液体を介して2個のリング状トランス(トロイダルコイル)間で電磁結合を形成する測定方式であり、検出器の通電部分と測定対象の液体とが非接触の状態で導電率の測定を行うことが可能である。電磁式の測定方式を採用する従来の導電率検出器としては、例えば特許文献1に記載のものがある。
電磁式の測定方式によれば、トロイダルコイル自体は測定対象の液体とは非接触となるものの、カバーで覆われたトロイダルコイルを液体中に挿入する必要がある。従って電極式の場合と同様、トロイダルコイルを覆うカバー材料が液体中に溶出するおそれがある。
完全に非接触で液体の導電率を測定する検出器としては、例えば、特許文献2および3に記載のものがある。
特開2010−85216号公報 特開昭60−190873号公報 特開2001−153844号公報
上記の特許文献2および3に記載されているように、液体が流れる管路を2つのトロイダルコイルの中心を貫通するように配置することで、完全に非接触の状態で該液体の導電率を測定することが可能となる。しかしながら、これらの検出器は、出力側のトロイダルコイルに生じる起電力をリアルタイムで検出するので、摂動する電場や液体内の電荷の変化に影響されやすく、測定値が不安定になる傾向があった。
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、液体を含む測定対象物の導電率や比誘電率等の電気特性を非接触且つ安定的に測定することができる電気特性測定装置、電気特性測定方法およびプログラムを提供することを目的とする。
本発明の第1の観点によれば、測定対象物が環状の電流経路を形成するように前記測定対象物を収容する容器と、前記環状の電流経路を流れる電流と電磁的に結合するように配置された第1のトロイダルコイルおよび第2のトロイダルコイルと、前記第1のトロイダルコイルに周波数の異なる複数の交流電圧を順次入力する電圧入力手段と、前記第1のトロイダルコイルに入力される入力電圧と、前記第2のトロイダルコイルから出力される出力電圧と、の電圧比および位相差の少なくとも一方の周波数特性を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記電圧比および前記位相差の少なくとも一方の周波数特性に基づいて前記測定対象物の電気特性を導出する導出手段と、を含む電気特性測定装置が提供される。
本発明の第2の観点によれば、前記容器内の導電率および比誘電率が既知である場合の前記入力電圧と前記出力電圧との電圧比および位相差の少なくとも一方の周波数特性を、基準周波数特性として当該導電率および比誘電率に対応付けて記憶し、且つ複数の導電率
および比誘電率の各々に対応する複数の基準周波数特性を記憶した記憶部を更に含み、前記導出手段は、前記記憶部に記憶された複数の基準周波数特性のうち、前記取得手段によって取得された前記電圧比および前記位相差の少なくとも一方の周波数特性に最も近似する基準周波数特性を抽出し、抽出した基準周波数特性に対応する導電率および比誘電率の少なくとも一方を前記測定対象物の電気特性として導出する第1の観点による電気特性測定装置が提供される。
本発明の第3の観点によれば、前記導出手段は、前記取得手段によって取得された前記電圧比の周波数特性に最も近似する基準周波数特性に対応する導電率および比誘電率と、前記取得手段によって取得された前記位相差の周波数特性に最も近似する基準周波数特性に対応する導電率および比誘電率と、の双方に基づいて前記測定対象物の導電率および比誘電率を導出する第2の観点による電気特性測定装置が提供される。
本発明の第4の観点によれば、測定対象物が環状の電流経路を形成するように前記測定対象物を収容する容器と、前記環状の電流経路を流れる電流と電磁的に結合するように配置された第1のトロイダルコイルおよび第2のトロイダルコイルと、前記第1のトロイダルコイルに周波数の異なる複数の交流電圧を順次入力する電圧入力手段と、前記第1のトロイダルコイルに入力される入力電圧と、前記第2のトロイダルコイルから出力される出力電圧と、の電圧比および位相差の少なくとも一方の周波数特性を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記電圧比および前記位相差の少なくとも一方の周波数特性に基づいて前記測定対象物の特定もしくは性状に関する判定結果を導出する導出手段と、を含む電気特性測定装置が提供される。
本発明の第5の観点によれば、前記導出手段が前記測定対象物に関する判定結果を導出する際の判定基準として使用される基準周波数特性を記憶した記憶部を更に含み、
前記導出手段は、前記取得手段によって取得された前記電圧比および前記位相差の少なくとも一方の周波数特性と、前記記憶部に記憶された基準周波数特性との比較結果に基づいて前記測定対象物に関する判定結果を導出する第4の観点による電気特性測定装置が提供される。
本発明の第6の観点によれば、前記容器は、前記測定対象物が流入する入口側流路と、前記測定対象物が流出する出口側流路と、を含み、前記入口側流路と前記出口側流路とを隔てる壁が半透膜を含む第1乃至第5のいずれかの観点による電気特性測定装置が提供される。
本発明の第7の観点によれば、前記容器は、前記測定対象物が流通する管路と、両端が前記管路内を流通する測定対象物と電気的に接続される導体配線と、を含む第1乃至第5のいずれかの観点による電気特性測定装置が提供される。
本発明の第8の観点によれば、前記交流電圧の周波数は、100kHzから1MHzまでの範囲を含む第1乃至第7のいずれかの観点による電気特性測定装置が提供される。
本発明の第9の観点によれば、測定対象物が環状の電流経路を形成するように前記測定対象物を容器に収容するステップと、前記環状の電流経路を流れる電流と電磁的に結合するように第1のトロイダルコイルおよび第2のトロイダルコイルを配置するステップと、前記第1のトロイダルコイルに周波数の異なる複数の交流電圧を順次入力するステップと、前記第1のトロイダルコイルに入力される入力電圧と、前記第2のトロイダルコイルから出力される出力電圧と、の電圧比および位相差の少なくとも一方の周波数特性を取得するステップと、前記電圧比および前記位相差の少なくとも一方の周波数特性に基づいて前記測定対象物の電気特性を導出するステップと、を含む電気特性測定方法が提供される。
本発明の第10の観点によれば、測定対象物が環状の電流経路を形成するように前記測定対象物を容器に収容するステップと、前記環状の電流経路を流れる電流と電磁的に結合するように第1のトロイダルコイルおよび第2のトロイダルコイルを配置するステップと、前記第1のトロイダルコイルに周波数の異なる複数の交流電圧を順次入力するステップと、前記第1のトロイダルコイルに入力される入力電圧と、前記第2のトロイダルコイルから出力される出力電圧と、の電圧比および位相差の少なくとも一方の周波数特性を取得するステップと前記電圧比および前記位相差の少なくとも一方の周波数特性に基づいて前記測定対象物に関する判定結果を導出するステップと、を含む電気特性測定方法が提供される。
本発明の第11の観点によれば、コンピュータを、第1乃至第8のいずれかの観点による電気特性測定装置における前記導出手段として機能させるためのプログラムが提供される。
本発明に係る電気特性測定装置、電気特性測定方法およびプログラムによれば、測定対象物の電気特性を非接触且つ安定的に測定することが可能となる。
本発明の実施形態に係る電気特性測定装置の構成を示す機能ブロック図である。 図2(a)は、本発明の実施形態に係る容器の斜視図、図2(b)は容器の上面図、図2(c)は、図2(b)における2c−2c線に沿った断面図である。 本発明の実施形態に係るトロイダルコイルを構成するフェライトコアの正面図および側面図である。 本発明の実施形態に係る電気特性導出部および制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係る電気特性測定装置の測定系の構成を示す図である。 図6(a)は、本発明の実施形態に係る電気特性測定装置を用いて基準周波数特性データを取得する場合の構成を示す図、図6(b)は、図6(a)に対応する等価回路図である。 図7(a)は、本発明の実施形態に係る基準周波数特性を取得する際に使用する抵抗素子の抵抗値を示す図、図7(b)は、容量素子の容量値を示す図である。 図8(a)〜図8(c)は、本発明の実施形態に係る電圧比の基準周波数特性を示すグラフである。 図9(a)〜図9(c)は、本発明の実施形態に係る電圧比の基準周波数特性を示すグラフである。 図10(a)〜図10(c)は、本発明の実施形態に係る電圧比の基準周波数特性を示すグラフである。 図11(a)〜図11(c)は、本発明の実施形態に係る位相差の基準周波数特性を示すグラフである。 図12(a)〜図12(c)は、本発明の実施形態に係る位相差の基準周波数特性を示すグラフである。 図13(a)〜図13(c)は、本発明の実施形態に係る位相差の基準周波数特性を示すグラフである。 本発明の実施形態に係る電気特性測定処理プログラムにおける処理の流れを示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係る第1の導出処理の流れを示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係る第2の導出処理の流れを示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係る電気特性測定装置における測定対象として使用したNaCl水溶液の濃度と導電率および比誘電率の理論値を示す図である。 図18(a)は、NaCl水溶液について取得した電圧比の周波数特性を示すグラフであり、図18(b)は、NaCl水溶液について取得した位相差の周波数特性を示すグラフである。 本発明の実施形態に係る電気特性測定装置における測定対象として使用したコンクリートの材料と配合率を示す図である。 本発明の実施形態に係る電気特性測定装置を用いてコンクリートの電気特性を測定する場合における測定点を示す図である。 図21(a)および図21(b)は、周囲温度、湿度およびコンクリートの表面温度の時間推移を示すグラフである。 図22(a)および図22(b)は、コンクリートについて取得した電圧比の時間推移を示すグラフである。 図23(a)および図23(b)は、コンクリートについて取得した位相差の時間推移を示すグラフである。 図24(a)は、コンクリートについて取得した電圧比の周波数特性を示すグラフである。図24(b)は、コンクリートについて取得した位相差の周波数特性を示すグラフである。 本発明の実施形態に係る電気特性測定装置における測定対象として使用した乳製品の成分を示す図である。 図24(a)は、乳製品について取得した電圧比の周波数特性を示すグラフである。図24(b)は、乳製品について取得した位相差の周波数特性を示すグラフである。 周波数特性を用いて乳製品のうまみを判定する場合における判定基準を例示する図である。 図28(a)は、血液について取得した電圧比の周波数特性を示すグラフである。図28(b)は、血液について取得した位相差の周波数特性を示すグラフである。 図29(a)〜図29(c)は、本発明の実施形態に係る容器の構成を示す図である。 本発明の他の実施形態に係る電気特性測定装置の構成を示す機能ブロック図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符を付与している。
[第1の実施形態]
(装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気特性測定装置100の構成を示す機能ブロック図である。電気特性測定装置100は、容器20内に収容された液体を含む測定対象物の導電率および比誘電率を含む電気特性を2つのトロイダルコイル10および11を用いて非接触で測定する電磁式の測定装置である。
容器20は、電気特性の測定対象となる液体を収容するためのものである。図2(a)は容器20の斜視図、図2(b)は容器20の上面図、図2(c)は、図2(b)における2c−2c線に沿った断面図である。容器20は、容器20内に充填された測定対象の液体が環状の電流経路を形成するように矩形環状をなしている。容器20は、例えばアクリル等の樹脂材料を用いて構成することが可能である。本実施形態の一態様において、容器20の外周側の壁の長さL1およびL2は、それぞれ80mm、内周側の壁の長さL3およびL4は、それぞれ52mm、高さTは15mm、アクリル板の板厚は1mmとされている。また、図2(b)における破線gの長さに対応する、容器20によって形成される管路の平均長Lは260mmとされている。なお、平均長Lは、容器20によって構成される管路の中央を通る線の全長である。また、図2(c)に示されるように、容器20の管路の内側の幅Wは13mmとされている。
本実施形態において、一対のトロイダルコイル10および11は、それぞれ、直径0.05mmのポリウレタン被膜導線120本を一束としたリッツ線を円環状のフェライトコアに10回巻き付けて構成される。本実施形態において、フェライトコアは、SIEMENS社製N30(基材:MnZn、初透磁率μ:4300±25%、磁界強度H:1200A/m、抵抗率σ:0.5Ωm)を使用した。図3は、トロイダルコイル10および11を構成するフェライトコア12の正面図および側面図である。フェライトコア12の外径D1は50mm、内径D2は30mm、幅Eは20mmとされている。トロイダルコイル10および11は、容器内に形成される電流ループとトロイダルコイル10および11とが電磁的に結合するように、容器20の管路が円環状のフェライトコアの貫通孔12aを挿通するように配置される。
なお、トロイダルコイル10および11の容器20からの取り外しを容易とするために、フェライトコア12は、予め環を横断するように半分に切断されており、切断部分がタイバンドで結合されている。半分に切断したフェライトコア12をタイバンドで結合する際には、切断面にゴミなどの異物が付着しないように注意する必要がある。ゴミなどの異物が切断面に付着しなければ、フェライトコア12の磁路は完全に閉じており、且つフェライトコア12の比透磁率が高いことから、高い相互インダクタンス(磁気結合)を得ることができる。従って、本装置によって取得される電気特性の測定値にフェライトコア12を切断したことによる影響が及ぶことはない。
信号発振器30は、入力側のトロイダルコイル10の端子に接続されている。信号発振器30は、正弦波の交流電圧を発生する発振器であり、制御部60からの制御信号に基づいて周波数を順次変化させつつ入力側のトロイダルコイル10に交流電圧を供給する。
入力側のトロイダルコイル10および出力側のトロイダルコイル11の端子は、それぞれ、電圧比測定部32および位相差測定部34に接続されている。電圧比測定部32は、制御部60から供給される制御信号に基づいて、入力側のトロイダルコイル10に入力される入力電圧の実効値V1と、出力側のトロイダルコイル11から出力される出力電圧の実効値V2とを測定し、入力電圧と出力電圧の比V2/V1を演算により導出して出力する。
位相差測定部34は、制御部60から供給される制御信号に基づいて、入力側のトロイダルコイル10に入力される入力電圧の波形と出力側のトロイダルコイル11から出力される出力電圧の波形を取得し、入力電圧の位相P1と、出力電圧の位相P2との位相差を導出する。位相差測定部34は、位相P2に対して位相P1が遅れている場合、位相差を負の値として出力し、位相P2に対して位相P1が進んでいる場合、位相差を正の値として出力する。電圧比測定部32および位相差測定部34は、例えば、チャンネル間の演算処理が可能な多チャンネル式のデジタルオシロスコープで構成されていてもよい。
記憶部40は、ハードディスク、半導体メモリ、光ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含んで構成されており、後述する電気特性導出部50が容器20に収容された液体の電気特性を導出する際に、電気特性導出部50が参照する基準周波数特性を記憶している。なお、基準周波数特性については後述する。
電気特性導出部50は、電圧比測定部32および位相差測定部34からトロイダルコイル10および11の入出力電圧の電圧比および位相差を各周波数毎に取得し、該電圧比および該位相差の周波数特性を記憶部40に記憶された基準周波数特性と比較した結果に基づいて、容器20内に収容された液体の電気特性(導電率および比誘電率)を導出する。より具体的には、電気特性導出部50は、該電圧比および該位相差の周波数特性に最も近い周波数特性を、記憶部40に記憶された複数の基準周波数特性の中から選択し、選択した基準周波数特性に対応する導電率および比誘電率を、測定対象の液体の導電率および比誘電率として導出する。
制御部60は、信号発振器30、電圧比測定部32、位相差測定部34および電気特性導出部50に所定のタイミングで制御信号を供給することにより、これらの構成部分の動作タイミングを制御する。
電気特性導出部50および制御部60は、図4に示すように、CPU200と、CPU200において実行される各種プログラムを記憶したROM201(Read Only Memory)と、CPU200における演算処理に供されるデータ等を一時的に保存するRAM(Random Access Memory)202と、電圧比測定部32および位相差測定部34から供給される電圧比および位相差の周波数特性を記憶するハードディスク(HDD)203と、を含むコンピュータを含んで構成されている。
(測定の原理)
図5に、本発明の実施形態に係る電気特性測定装置100の測定系の構成を示す図である。電気特性測定装置100は、測定対象となる液体によって形成される電流ループを介して入力側のトロイダルコイル10と出力側のトロイダルコイル11との間に電磁結合を形成する。すなわち、図5に示すように、入力側のトロイダルコイル10は1次コイル10aに相当し、出力側のトロイダルコイル11は4次コイル11aに相当する。また、トロイダルコイル10および11の貫通孔を挿通する容器20内に収容された測定対象の液体は、1回巻の2次コイル21aおよび3次コイル22aとみなすことができる。
信号発振器30によって1次コイル10aに相当する入力側のトロイダルコイル10に交流電圧を印加すると、アンペールの法則に従ってトロイダルコイル10の内部に、電流を打ち消す方向の磁界が生じる。これにより、2次コイル21aに相当する液体は、磁界を妨げる方向に誘導電流を発生させる。この誘導電流は、3次コイル22aにも流れる。これにより、4次コイル11aに相当する出力側のトロイダルコイル11に磁界が生成され、その結果、トロイダルコイル11に起電力が生じることとなる。なお、トロイダルコイル10および11自体の漏れ磁束は少ないので、容器20とトロイダルコイル10および11との間に空気層があっても、高い結合度が維持される。
電圧比測定部32は、入力側のトロイダルコイル10に入力される入力電圧の実効値V1と、出力側のトロイダルコイル11から出力される出力電圧の実効値V2を測定し、入力電圧と出力電圧の比V2/V1を演算により導出して出力する。信号発振器30は、制御部60の制御に基づいて周波数が互いに異なる複数の交流電圧を順次入力側のトロイダルコイル10に印加する。これにより、電圧比V2/V1の周波数特性が取得される。
位相差測定部34は、入力側のトロイダルコイル10に入力される入力電圧の波形と出力側のトロイダルコイル11から出力される出力電圧の波形を取得し、入力電圧の位相P1と、出力電圧の位相P2との位相差を導出する。信号発振器30は、制御部60の制御に基づいて周波数が互いに異なる複数の交流電圧を順次入力側のトロイダルコイル10に印加する。これにより、入力電圧と出力電圧の位相差の周波数特性が取得される。
トロイダルコイル10および11の入出力電圧の電圧比および位相差の周波数特性は、測定対象の液体の導電率および比誘電率に応じて定まるので、電圧比および比誘電率の周波数特性を取得することにより、測定対象の液体の導電率および比誘電率を導出することが可能である。本実施形態に係る電気特性測定装置100は、電気特性測定部50が、測定対象の液体について取得した電圧比および位相差の周波数特性を、記憶部40に記憶された電圧比および位相差に関する基準周波数特性と照合した結果に基づいて測定対象の液体の導電率および比誘電率を導出する。
(基準周波数特性の取得)
以下に、記憶部40に記憶される基準周波数特性の取得方法について説明する。図6(a)は、電気特性測定装置100を用いて基準周波数特性データを取得する場合の構成を示す図、図6(b)は、図6(a)に対応する等価回路図である。
本実施形態では、図6(a)に示すように、抵抗素子Rと容量素子Cとを並列に接続したRC並列回路の両端を導線Yで接続し、導線Yを容器20内に収容したものを基準周波数特性を取得するための測定回路とした。導線Yは、トロイダルコイル10および11の貫通孔を挿通するように配置される。このような測定回路を構成することで、容器20内に導電率σ、比誘電率εの液体を充填した状態が模擬される。換言すれば、容器20内に導電率σおよび比誘電率εの電流経路が形成される。ここで、真空の誘電率をε、容器20の管路の平均長をL、容器20の断面積をSとすると、抵抗素子Rの抵抗値rおよび容量素子Cの容量値cは、それぞれ、下記の(1)式および(2)式で表すことができる。
r=L/σS ・・・(1)
c=εεS/L ・・・(2)
本実施形態の一態様において、容器20の平均長Lおよび断面積Sは、それぞれL=260mm、S=130mm(容器20の底から高さ10mmまで液体を充填した場合)であり、真空の誘電率εは、8.8541×10−12F/mであるので、これらの値を上記の(1)式および(2)式に代入すると、下記の(3)式および(4)式が得られる。
r=2000/σ ・・・(3)
c=ε×4.42705×10−15 ・・・(4)
すなわち、抵抗素子Rの抵抗値rを(3)式に代入することにより、容器20内に充填されたものと想定された液体の導電率σを求めることができる。例えば、抵抗素子Rの抵抗値rを10Ωとした場合、導電率σが200S/mである液体が容器20内に充填された状態が模擬される。また、容量素子Cの容量値cを(4)式に代入することにより、容器20内に充填されたものと想定された液体の比誘電率εを求めることができる。例えば、容量素子Cの容量値cを1.0pFとした場合、比誘電率εが225.9である液体が容器20内に充填された状態が模擬される。
上記したようなRC並列回路を用いて電圧比および位相差の基準周波数特性を以下の手順で取得した。初めに、図6(a)および図6(b)に示す測定回路を構成し、信号発振器30を用いて入力側のトロイダルコイル10に交流電圧を印加する。次に、入力側のトロイダルコイル10に入力される入力電圧と、出力側のトロイダルコイル11から出力される出力電圧との電圧比および位相差を電圧比測定部32および位相差測定部34を構成するオシロスコープを用いて測定する。次に、信号発振器30から出力される交流電圧の周波数を変化させ、上記と同様に電圧比と位相差を取得する。本実施形態では、交流電圧の周波数を100kHz〜1MHzの範囲で、100kHzずつ変化させ、各周波数毎に電圧比と位相差を取得した。これにより、当該抵抗値r(導電率σ)および容量値c(比誘電率ε)に対応する電圧比と位相差の周波数特性が取得される。次に、抵抗値rおよび容量値cを変化させ、上記と同様に電圧比と位相差の周波数特性を取得する。本実施形態では、図7(a)に示す抵抗値rの抵抗素子Rおよび図7(b)に示す容量値cの容量素子Cを使用し、これらの全ての組み合わせについて電圧比および位相差の周波数特性を取得した。なお、図7(a)および図7(b)には、各抵抗値および各容量値に対応する導電率および比誘電率の値が併記されている。これらの導電率および比誘電率は、上記の(3)式および(4)式に基づいて算出された値である。以上のようにして抵抗素子および容量素子の各組み合わせについて取得した電圧比および位相差の周波数特性を、当該抵抗値r(導電率σ)および容量値c(比誘電率ε)に対応付け、これを基準周波数特性として記憶部40に格納する。
図8〜図10は、上記の手順に従って取得した電圧比の基準周波数特性を示すグラフである。図8(a)、図8(b)、図8(c)は、容量素子Cの容量値cをそれぞれ、0pF、0.3pF、1.0pFとしたときの抵抗値毎の周波数特性である。図9(a)、図9(b)、図9(c)は、容量素子Cの容量値cをそれぞれ、10pF、100pF、200pFとしたときの抵抗値毎の周波数特性である。図10(a)、図10(b)は、容量素子Cの容量値cをそれぞれ、500pF、1000pFとしたときの抵抗値毎の周波数特性である。図8〜図10に示すグラフにおいて、縦軸はトロイダルコイル10および11の入出力電圧の電圧比であり、対数をとっている。横軸は、トロイダルコイル10に入力される交流電圧の周波数である。各図において100kHz〜300kHzの範囲で測定点が不足している箇所があるが、これは位相差を測定するための十分な電圧がなかったためである。各図において、抵抗値が大きくなるにつれて電圧比の変化量が小さくなっていることが確認できる。これは、トランス内の負荷抵抗が大きくなることで電流が流れにくくなり、4次コイルに相当するトロイダルコイル11の出力電圧が小さくなったためと考えられる。
図11〜図13は、上記の手順に従って取得した位相差の基準周波数特性を示すグラフである。図11(a)、図11(b)、図11(c)は、容量素子Cの容量値cをそれぞれ、0pF、0.3pF、1.0pFとしたときの抵抗値毎の周波数特性である。図12(a)、図12(b)、図12(c)は、容量素子Cの容量値cをそれぞれ、10pF、100pF、200pFとしたときの抵抗値毎の周波数特性である。図13(a)、図13(b)は、容量素子Cの容量値cをそれぞれ、500pF、1000pFとしたときの抵抗値毎の周波数特性である。図11〜図13に示すグラフにおいて、縦軸はトロイダルコイル10および11の入出力電圧の位相差であり、横軸は、トロイダルコイル10に入力される交流電圧の周波数である。
(電気特性測定装置の動作)
以下に、本発明の実施形態に係る電気特性測定装置100の動作について説明する。図14は、制御部60および電気特性導出部50として動作するCPU200によって実行される電気特性測定処理プログラムにおける処理の流れを示すフローチャートである。当該プログラムは、ROM201内に格納され、電気特性測定装置100に設けられた図示しない入力部に対して所定の入力操作がなされると実行される。なお、容器20内には、測定対象となる所定量の液体が充填されているものとする。なお、本実施形態おいて、所定量とは容器20における液面の高さが10mmとなる量である。
ステップS10において、制御部60は、信号発振器30に対して交流電圧を出力すべき制御信号を供給する。かかる制御信号を受信した信号発振器30は、所定周波数の交流電圧を出力して入力側のトロイダルコイル10に供給する。出力側のトロイダルコイル11の端子間には、電磁誘導によって出力電圧が出力される。
ステップS11において、制御部60は、電圧比測定部32および位相差測定部34に対して、トロイダルコイル10および11の入出力電圧の電圧比および位相差を取得すべき制御信号を供給する。これにより、電圧比測定部32は、トロイダルコイル10および11の入出力電圧の電圧比を測定し、その測定値を電気特性導出部50に供給する。電気特性取得部50は、電圧比の測定値をハードディスク203に記憶する。一方、位相差測定部34は、トロイダルコイル10および11の入出力電圧の位相差を測定し、その測定値を電気特性導出部50に供給する。電気特性取得部50は、位相差の測定値をハードディスク203に記憶する。
ステップS12において、制御部60は、予め定められた全ての周波数について電圧比および位相差の測定値を取得したか否かを判断する。制御部60は、全ての周波数について電圧比および位相差の測定値を取得していないと判断した場合には、処理をステップS13に移行させ、全ての周波数について電圧比および位相差の測定値を取得したと判断した場合には、処理をステップS14に移行させる。
ステップS13において、制御部60は、交流電圧の周波数を変更すべき制御信号を信号発振器30に供給した後、処理をステップS10に戻す。これにより、信号発振器30は、先に供給した交流電圧の周波数とは異なる周波数の交流電圧を入力側のトロイダルコイル10に供給する。ステップS10からステップS13の処理が繰り返されることで、周波数が例えば100kHz〜1MHzの範囲で、100kHzずつ変化する交流電圧が入力側のトロイダルコイル10に印加され、各周波数毎に取得された電圧比および位相差の測定値が、ハードディスク203に記憶される。これにより、トロイダルコイル10および11の入出力電圧の電圧比および位相差の周波数特性が取得されることになる。
ステップS14において、電気特性導出部50は、測定対象の液体について取得した電圧比の周波数特性に基づいて当該液体の導電率および比誘電率を導出する第1の導出処理を実行する。
すなわち、電気特性導出部50は、第1の導出処理において、上記ステップS10〜S13の処理を実行することによって測定対象の液体について取得した電圧比の周波数特性と、記憶部40に記憶されている電圧比の基準周波数特性とを比較して、測定対象の液体について取得した電圧比の周波数特性に最も近い基準周波数特性に対応する導電率および比誘電率を導出する。
ここで、図15は、ステップS14において電気特性導出部50によって実行される第1の導出処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS20において、電気特性導出部50は、記憶部40から識別番号iに対応する電圧比の基準周波数特性を抽出する。
ステップS21において、電気特性導出部50は、測定対象の液体について取得した電圧比と、ステップS20において抽出した基準周波数特性における電圧比の差分値の絶対値を各周波数毎に算出する。電気特性導出部50は、各周波数毎に算出した上記差分値の絶対値の合算値Sを算出し、これをRAM202に記憶する。合算値Sは、測定対象の液体について取得した電圧比の周波数特性と、ステップS20において抽出された基準周波数特性との近似度合を示す指標値として使用される。すなわち、合算値Sの大きさが小さい程、2つの周波数特性が近似していると判定することができる。
ステップS22において電気特性導出部50は、識別番号iの値が所定値nと一致しているか否かを判断する。上記所定値nは、記憶部40に記憶された電圧比の基準周波数特性の数と等しい値である。電気特性導出部50は、識別番号iの値が所定値nと一致しないと判定した場合には、ステップ23においてiの値を1つインクリメントして処理をステップS20に戻す。ステップS20からステップS23までの処理が繰り返し実行されることにより、上記合算値Sが、記憶部40に記憶された電圧比に関する全ての基準周波数特性について取得される。一方、電気特性導出部50は、識別番号iが所定値nと一致していると判定した場合には、処理をステップS24に移行する。
ステップS24において、電気特性導出部50は、電圧比に関する基準周波数特性の各々について算出した上記合算値Sが最も小さくなる基準周波数特性に対応する導電率および比誘電率を導出する。すなわち、本ステップでは、測定対象の液体について取得した電圧比の周波数特性に最も近い基準周波数特性に対応する導電率および比誘電率が導出される。
図14を参照し、ステップS15において、電気特性導出部50は、測定対象の液体について取得した位相差の周波数特性に基づいて当該液体の導電率および比誘電率を導出する第2の導出処理を実行する。
すなわち、電気特性導出部50は、第2の導出処理において、上記ステップS10〜S13の処理を実行することによって測定対象の液体について取得した位相差の周波数特性と、記憶部40に記憶されている位相差の基準周波数特性とを比較して、測定対象の液体について取得した位相差の周波数特性に最も近い基準周波数特性に対応する導電率および比誘電率を導出する。
ここで、図16は、ステップS15において電気特性導出部50によって実行される第2の導出処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS30において、電気特性導出部50は、記憶部40から識別番号iに対応する位相差の基準周波数特性を抽出する。
ステップS31において、電気特性導出部50は、測定対象の液体について取得した位相差と、ステップS30において抽出した基準周波数特性における位相差の差分値の絶対値を各周波数毎に算出する。電気特性導出部50は、各周波数毎に算出した上記差分値の絶対値の合算値Sを算出し、これをRAM202に記憶する。合算値Sは、測定対象の液体について取得した位相差の周波数特性と、ステップS30において抽出された基準周波数特性との近似度合を示す指標値として使用される。すなわち、合算値Sの大きさが小さい程、2つの周波数特性が近似していると判定することができる。
ステップS32において電気特性導出部50は、識別番号iの値が所定値nと一致しているか否かを判断する。上記所定値nは、記憶部40に記憶された位相差の基準周波数特性の数と等しい値である。電気特性導出部50は、識別番号iの値が所定値nと一致しないと判定した場合には、ステップ33においてiの値を1つインクリメントして処理をステップS30に戻す。
ステップS30からステップS33までの処理が繰り返し実行されることにより、上記合算値Sが、記憶部40に記憶された位相差に関する全ての基準周波数特性について取得される。一方、電気特性導出部50は、識別番号iが所定値nと一致していると判定した場合には、処理をステップS34に移行する。
ステップS34において、電気特性導出部50は、位相差の基準周波数特性の各々について算出した上記合算値Sが最も小さくなる基準周波数特性に対応する導電率および比誘電率を導出する。すなわち、本ステップでは、測定対象の液体について取得した位相差の周波数特性に最も近い基準周波数特性に対応する導電率および比誘電率が導出される。
図14を参照し、ステップS16において、電気特性導出部50は、上記の第1の導出処理および第2の導出処理の結果に基づいて、液体の導電率および比誘電率を導出する。例えば、第1の導出処理において導出された導電率および比誘電率の値と、第2の導出処理において導出された導電率および比誘電率の値が等しい場合には、電気特性導出部50は、当該導電率および比誘電率の値を測定対象の液体の導電率および比誘電率の値として出力する。一方、第1の導出処理において導出された導電率および比誘電率の値と、第2の導出処理において導出された導電率および比誘電率の値が異なる場合には、電気特性導出部50は、第1の導出処理において導出された導電率および比誘電率の値と、第2の導出処理において導出された導電率および比誘電率の値の平均値(中央値)を測定対象の液体の導電率および比誘電率として出力してもよい。また、第1の導出処理において導出された導電率および比誘電率の値と、第2の導出処理において導出された導電率および比誘電率の値を測定対象の液体の導電率および比誘電率の推定値の上限値および下限値として出力してもよい。
(測定精度の検証)
本発明の実施形態に係る電気特性測定装置100を用いて25.0℃における導電率および比誘電率の理論値が既知であるNaCl水溶液の導電率および比誘電率を測定し、得られた測定値と理論値との比較を行うことにより、電気特性測定装置100における測定精度の検証を行った。
本実験では濃度の異なる3種類のNaCl水溶液を用意し、それぞれをA、B、Cとした。各NaCl水溶液の濃度と導電率および比誘電率の理論値を図17に示す。各NaCl水溶液は、大和化研社製のイオン交換水および鳴門塩業株式会社の鳴門のにがり塩を用いて作製した。また、NaCl水溶液を充填した容器20をぬるま湯に浸すことで、NaCl水溶液を25.0℃に調節した。容器20の底から10mmの高さまでNaCl水溶液を充填してトロイダルコイル10に印加する交流電圧の周波数を100kHz〜1MHzの範囲で100kHzずつ変化させ、トロイダルコイル10および11の入出力電圧の電圧比と位相差の周波数特性を取得した。その結果を図18(a)および図18(b)に示す。
図18(a)は、電圧比の周波数特性を示すグラフであり、図18(b)は、位相差の周波数特性を示すグラフである。測定点が不足している箇所があるが、位相差を得るための十分な電圧がなかったためと考えられる。
NaCl水溶液Aの電気特性を導出する手順は以下のとおりである。はじめに、NaCl水溶液Aについて取得した電圧比の周波数特性と近似する電圧比の基準周波数特性(図8〜図10参照)を検索する。抵抗値5kΩ〜10kΩ且つ容量値0pF〜100pFに対応する電圧比の基準周波数特性が、NaCl水溶液Aにおける電圧比の周波数特性と近似していることがわかる。上記の抵抗値および容量値を図7(a)および図7(b)を参照してそれぞれ導電率および比誘電率に換算すると、電圧比の周波数特性から推定できるNaCl水溶液Aの導電率は2.0×10−1S/m〜4.0×10−1S/m、比誘電率は0〜2.259×10であることが導出される。
次に、NaCl水溶液Aについて取得した位相差の周波数特性と近似する位相差の基準周波数特性(図11〜図13参照)を検索する。抵抗値10kΩ且つ容量値1pF〜100pFに対応する位相差の基準周波数特性が、NaCl水溶液Aにおける位相差の周波数特性と近似していることがわかる。上記の抵抗値および容量値を図7(a)および図7(b)を参照してそれぞれ導電率および比誘電率に換算すると、位相差の周波数特性から推定できるNaCl水溶液Aの導電率は2.0×10−1S/m、比誘電率は6.777×10〜2.259×10であることが導出される。
ここでは、以上のようにして電圧比および位相差の周波数特性の各々に基づいて導出した導電率および比誘電率が重なる範囲を、NaCl水溶液Aの導電率および比誘電率の推定範囲とする。すなわち、最終的に導出されるNaCl水溶液Aの導電率の推定範囲は、2.0×10−1S/m、比誘電率の推定範囲は6.777×10〜2.259×10となる。
NaCl水溶液Bの電気特性を導出する手順は以下のとおりである。NaCl水溶液Bについて取得した電圧比の周波数特性と近似する電圧比の基準周波数特性(図8〜図10参照)を検索する。抵抗値1kΩ且つ容量値0pF〜100pFに対応する電圧比の基準周波数特性が、NaCl水溶液Bにおける電圧比の周波数特性と近似していることがわかる。上記の抵抗値および容量値を図7(a)および図7(b)を参照してそれぞれ導電率および比誘電率に換算すると、電圧比の周波数特性から推定できるNaCl水溶液Aの導電率は2.0S/m、比誘電率は0〜2.259×10であることが導出される。
次に、NaCl水溶液Bについて取得した位相差の周波数特性と近似する位相差の基準周波数特性(図11〜図13参照)を検索する。抵抗値1kΩ〜2kΩ且つ容量値0pF〜100pFに対応する位相差の基準周波数特性が、NaCl水溶液Bにおける位相差の周波数特性と近似していることがわかる。上記の抵抗値および容量値を図7(a)および図7(b)を参照してそれぞれ導電率および比誘電率に換算すると、位相差の周波数特性から推定できるNaCl水溶液Bの導電率は1.0S/m〜2.0S/m、比誘電率は0〜2.259×10であることが導出される。
ここでは、以上のようにして電圧比および位相差の周波数特性の各々に基づいて導出した導電率および比誘電率が重なる範囲を、NaCl水溶液Bの導電率および比誘電率の推定範囲とする。すなわち、最終的に導出されるNaCl水溶液Bの導電率の推定範囲は2.0S/m、比誘電率の推定範囲は0〜2.259×10となる。
NaCl水溶液Cの電気特性を導出する手順は以下のとおりである。NaCl水溶液Cについて取得した電圧比の周波数特性と近似する電圧比の基準周波数特性(図8〜図10参照)を検索する。抵抗値500Ω〜1kΩ且つ容量値0pF〜100pFに対応する電圧比の基準周波数特性が、NaCl水溶液Cにおける電圧比の周波数特性と近似していることがわかる。上記の抵抗値および容量値を図7(a)および図7(b)を参照してそれぞれ導電率および比誘電率に換算すると、電圧比の周波数特性から推定できるNaCl水溶液Cの導電率は2.0S/m〜4.0S/m、比誘電率は0〜2.259×10であることが導出される。
次に、NaCl水溶液Cについて取得した位相差の周波数特性と近似する位相差の基準周波数特性(図11〜図13参照)を検索する。抵抗値500Ω〜1kΩ且つ容量値0pF〜100pFに対応する位相差の基準周波数特性が、NaCl水溶液Cにおける位相差の周波数特性と近似していることがわかる。上記の抵抗値および容量値を図7(a)および図7(b)を参照してそれぞれ導電率および比誘電率に換算すると、位相差の周波数特性から推定できるNaCl水溶液Cの導電率は2.0S/m〜4.0S/m、比誘電率は0〜2.259×10であることが導出される。
ここでは、以上のようにして電圧比および位相差の周波数特性の各々に基づいて導出した導電率および比誘電率が重なる範囲を、NaCl水溶液Cの導電率および比誘電率の推定範囲とする。すなわち、最終的に導出されるNaCl水溶液Cの導電率の推定範囲は2.0S/m〜4.0S/m、比誘電率の推定範囲は0〜2.259×10となる。
以上のようにしてNaCl水溶液A、B、Cのそれぞれについて導出した導電率は、図17に示す理論値と極めて近いという結果が得られた。このことから、本発明の実施形態に係る電気特性測定装置100は、十分に高い測定精度を有していることが実証された。
(コンクリートの電気特性の測定)
本発明の実施形態に係る電気特性測定装置100を用いて電気特性が未知であるコンクリートの導電率および比誘電率を、フレッシュ性状から凝結に至る期間に亘り測定した。測定対象のコンクリートの材料と配合率を図19に示す。
容器20に底から10mmの高さまでコンクリートを充填し、容器20の側面と底にそれぞれ15秒間振動を与えてアバターを抜く作業を行った。測定開始時点から60時間が経過するまでの間、図20に示す各時点においてトロイダルコイル10に印加する交流電圧の周波数を100kHz〜1MHzの範囲で100kHzずつ変化させ、トロイダルコイル10および11の入出力電圧の電圧比と位相差の周波数特性を取得した。コンクリートはフレッシュ性状から数時間の間に電気特性が変化することが知られている。このため、この期間において測定間隔をより短くした。
コンクリートの電気特性の測定と同時に、各測定点における周囲温度(室温)、湿度およびコンクリートの表面温度の測定を行った。周囲温度と湿度は、生活管理温湿度計(EMPEX,TM-2416)を用いて測定を行った。コンクリートの表面温度は、放射温度計(CUSTOM,IR−303)を用いて測定を行った。放射温度計は、物体から放射される赤外線のエネルギー量を垂直方向で受け取り、感知センサで検知することにより物体の温度を測定する。しかし、物体から放射される赤外線の放射量は材質や表面状態により異なるため、各物質の放射率に合わせた補正を行う必要がある。ここでは、正確な温度測定を行うためにコンクリートを測定対象とした補正を行い、コンクリート表面に放射させた赤外線が拡散しないよう放射温度計を近づけることで正確な放射率を得る対策をとった。
周囲温度、湿度およびコンクリートの表面温度の時間推移を図21(a)(測定開示時点から60時間までの時間推移)および図21(b)(測定開始時点から360分までの時間推移)に示す。
トロイダルコイル10および11の入出力電圧の電圧比および位相差の測定開始時点から60時間までの時間推移をそれぞれ図22(a)および図23(a)に示し、測定開始時点から120分までの時間推移をそれぞれ図22(b)および図23(b)に示す。また、測定開始時点から0分、20分、1時間40分、60時間における電圧比と位相差の周波数特性を図24に示す。図22〜図24において、100kHzおよび200kHzにおける測定点が不足しているが、これは、位相差を得るための十分な電圧がなかったためだと考えられる。
図21(a)および図21(b)より、測定開始時点から6時間までの間にコンクリートの表面温度に変化が起きていることが確認できる。これは、混練時から凝結に至る際のセメントの化学反応によって生じた水和熱によるものであると考えられる。化学反応によりコンクリートの表面温度は、測定開始時点から2時間10分後には23.9℃まで上昇した後、徐々に温度が下がり、6時間後には21.5℃まで低下した。8時間〜10時間後にかけてコンクリートの表面温度は熱平衡により周囲温度(室温)に近づき10時間以降は周囲温度と略同じ温度となった。
図22(b)に示すように、測定開始時点から20分後と100分後に微小ながら電圧比の変動がみられた。また、図22(a)に示すように、測定開始時点から10時間〜20時間後にかけては時間経過とともに電圧比が低下していることが確認された。これは、コンクリートの凝結に伴い、試料に含まれる水分が減少していくことで電流が流れにくくなっているためであると考えられる。測定開始時点から20時間以降は電圧比の変動は小さく、ほぼ一定であった。
図23(b)に示すように、測定開始時点から20分後に位相差の変動がみられた。また、図23(a)に示すように、10時間〜20時間後にかけては時間経過とともに位相差が低下していることが確認された。これは、コンクリートの凝結に伴って水分が減少したことで電流が流れにくくなったと考えられる。測定開始時点から20時間以降は位相差の変動は小さく、ほぼ一定であった。
図24に示すように、フレッシュ性状から凝結に至るまでの期間内において、時間経過に伴ってコンクリートの電気特性が変動していることが確認された。
本発明の実施形態に係る電気特測定装置100における測定原理を用いて、測定開始時点から0分後におけるコンクリートの電気特性を以下のように推定した。測定開始時点から0分後における電圧比の周波数特性と近似する電圧比の基準周波数特性(図8〜図10参照)を検索する。抵抗値10kΩ〜100kΩ且つ容量値0.3pF〜10pFに対応する基準周波数特性が、測定開始時点から0分後における電圧比の周波数特性と近似していることがわかる。次に、測定開始時点から0分後における位相差の周波数特性と近似する位相差の基準周波数特性(図11〜図13参照)を検索する。抵抗値10kΩ〜100kΩ且つ容量値10pFに対応する位相差の基準周波数特性が、測定開始時点から0分後における位相差の周波数特性と近似していることがわかる。電圧比の周波数特性から導出された抵抗値および容量値の範囲と、位相差の周波数特性から導出された抵抗値および容量値の範囲とが重なる点として、10kΩ近傍および10pF近傍が導出され、これにより、測定開始時点から0分後におけるコンクリートの導電率は約2.0×10−1S/m、比誘電率は0〜2.259×10であると推定される。
次に、測定開始時点から60時間後におけるコンクリートの電気特性を以下のように推定した。測定開始時点から60時間後における電圧比の周波数特性と近似する電圧比の周波数特性(図8〜図10参照)を検索する。抵抗値100kΩ〜10MΩ且つ容量値0pF〜1pFに対応する電圧比の基準周波数特性が、測定開始時点から60時間後における電圧比の周波数特性と近似していることがわかる。次に、測定開始時点から60時間後における位相差の周波数特性と近似する位相差の基準周波数特性(図11〜図13)参照を検索する。抵抗値100kΩ〜10MΩ且つ容量値0pF〜100pFに対応する位相差の基準周波数特性が、測定開始時点から60時間後における位相差の周波数特性と近似していることがわかる。電圧比の周波数特性から導出された抵抗値および容量値の範囲と、位相差の周波数特性から導出された抵抗値および容量値の範囲とが重なる点として、100kΩ〜10MΩ近傍および0pF〜100pF近傍が導出され、これにより、測定開始時点から60時間後におけるコンクリートの導電率は約2.0×10−4S/m〜2.0×10−2S/m、比誘電率は0〜2.259×10であると推定される。
このように、コンクリートは、時間経過とともに導電率が低下し、60時間後には、初期状態の1/10〜1/100となる結果となった。比誘電率においては、幅があるため正確な推定は困難であるが、測定開始時点から0分後と60時間後の間で2259から226へ低下しており(ただし、最大値を用いた場合)、乾燥とともに比誘電率が低下する傾向にあることが確認された。
(乳製品の電気特性の測定結果)
本発明の実施形態に係る電気特性測定装置100を用いて乳脂肪分が既知である3種類の乳製品X、Y、Zの電気特性の測定を行った。測定対象の乳製品X、Y、Zの成分を図25に示す。
乳製品X、Y、Zを容器20の底から10mmの高さまで充填してトロイダルコイル10に印加する交流電圧の周波数を100kHz〜1MHzの範囲で100kHzずつ変化させ、トロイダルコイル10および11の入出力電圧の電圧比と位相差の周波数特性を取得した。図26(a)は、乳製品X、Y、Zについて取得された電圧比の周波数特性を示すグラフであり、図26(b)は、位相差の周波数特性を示すグラフである。なお、図26(a)には、図9(a)に示す容量値10pFに対応する電圧比の基準周波数特性が併せて示されている。図26(a)において、乳製品X、Y、Zについての周波数特性がそれぞれ破線で表示され、基準周波数特性が実線で表示されている。同様に、図26(b)には、図12(a)に示す容量値10pFに対応する位相差の基準周波数特性が併せて示されている。図26(b)において、乳製品X、Y、Zについての周波数特性がそれぞれ破線で表示され、基準周波数特性が実線で表示されている。
乳製品YおよびZの電圧比の周波数特性は、400kHz〜1MHzの帯域において、容量値10pF且つ抵抗値2kΩ〜5kΩに対応する電圧比の基準周波数特性に近似しているが、100kHz〜400kHzの帯域では、容量値10pF且つ抵抗値5kΩ以上に対応する電圧比の基準周波数特性に近似している。
乳製品Xの位相差の周波数特性は、300kHzにおいて容量値10pF且つ抵抗値5kΩに対応する位相差の基準周波数特性と近似し、1MHzにおいて容量値10pF且つ抵抗値2kΩに対応する位相差の基準周波数特性と近似している。また、400kHzにおいて、乳製品YおよびZの位相差は一致し、160kHzにおいて乳製品XとZの位相差は一致している。図26(b)に示すように、乳製品X、YおよびZについて取得された位相差の周波数特性は、いずれも基準周波数特性とは異なっている。
一般的に、NaCl水溶液は、周波数が変化しても導電率および比誘電率はほとんど変化しないことが知られている。そのため、NaCl水溶液について取得された電圧比および位相差の周波数特性と近似する周波数特性を、導電率および比誘電率が各周波数において一定であることを前提とする基準周波数特性の中から抽出することが可能であった。しかしながら、乳製品X、YおよびZは、成分が複雑であり、周波数の変化に伴って導電率および比誘電率が変化し、その結果、基準周波数特性とは異なる周波数特性が取得されたものと考えられる。
このことは、液体の成分の識別等に本装置を利用できる可能性があることを示している。すなわち、電圧比および位相差の周波数特性を観察することにより、乳脂肪分のみならず、様々な成分の総合的な分析や、うまみなどの判定等に本装置を利用できる可能性がある。今回の乳製品の測定結果から、例えば、位相差の周波数特性を示す曲線が、図27に示す破線で囲む領域Aおよび領域Bの双方に入っていれば、うまい牛乳であるという判定ができる可能性がある。
(血液の電気特性の測定結果)
本発明の実施形態に係る電気特性測定装置100を用いて血液の電気特性の測定を行った。測定対象の血液としてコージンバイオ社製の無菌羊保存血(健康な動物から無菌的に採血した新鮮血液にアルセバー液(ALSEVER’S SOLUTION)を混合し、1:1の比率になるよう調整した血液)を使用した。また、人工透析を必要とする状態の一つである高マグネシウム血症を模擬するため、上記血液にマグネシウムを加えた試料についても測定を行った。
上記の血液試料を容器20の底から10mmの高さまで充填してトロイダルコイル10に印加する交流電圧の周波数を100kHz〜1MHzの範囲で100kHzずつ変化させ、トロイダルコイル10および11の入出力電圧の電圧比と位相差の周波数特性を取得した。図28(a)は、電圧比の周波数特性を示すグラフであり、図28(b)は、位相差の周波数特性を示すグラフである。
添加するマグネシウムの濃度によって、電圧比および位相差の周波数特性が変化することが確認された。また、100kHzにおける位相差においては、マグネシウム濃度の違いによる差異が現れないが、100kHz以上の複数の周波数における位相差を測定することで、マグネシウム濃度の違いによる差異が明確となった。このことは、1つの周波数における電圧比および位相差を測定するだけでは、測定対象となる液体の成分分析を適切に行うことは困難であるが、本実施形態のように複数の周波数における電圧比および位相差を測定すれば、測定対象の成分分析を適切に行うことができることを示している。また、電圧比の周波数特性と位相差の周波数特性の双方を測定することで、より多くの情報を得ることが可能となる。
上記の測定結果は、例えば、人工透析などにおいて、血液あるいは透析液の電気特性を本発明の実施形態に係る電気特性測定装置100を用いて測定することで、透析が完了しているかどうかの判定を行うことができる可能性を示している。このように、本発明の実施形態に係る電気特性測定装置100を医療分野において利用する場合には、図29(a)〜図29(c)に例示するような、血液や透析液等の通路を兼ねる容器20を用いることで、非接触でこれらの液体の電気特性を測定が可能となる。非接触での測定が可能となることで、感染や血栓を防ぐことができる。図29(a)および図29(b)に示す例では、容器20は、液体が流入する入口側流路と液体が流出する出口側流路とを隔てる壁が透析膜(半透膜)29で構成されている。これにより、容器20の入口側と出口側が電気的に接続され、電流ループを形成することができ、本実施形態に係る電気特性測定装置100による電気特性の測定が可能となる。なお、透析膜(半透膜)22に代えて極薄の絶縁膜を使用することも可能である。図29(c)に示す例では、環状に成形されていない容器20の管路内を流通する液体と電気的に接続される導体配線24の両端が管路に接続されている。このような態様によっても、電流ループを形成することができ、本実施形態に係る電気特性測定装置100による電気特性の測定が可能となる。
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態に係る電気特性測定装置100によれば、測定対象の液体に対して非接触で当該液体の電気特性を測定することができるので、測定対象が強酸性または強アルカリ性の液体であっても、測定対象の液体を汚染することなく測定を行うことが可能である。また、時間経過に伴って凝結を生じるコンクリートのような物質を測定対象とすることも可能であり、この場合、液体の状態から凝結に至る比較的長い期間に亘り継続して電気特性をモニタするといった用途に本装置を利用することも可能である。また、食品や製薬、生体サンプル(血液、体液、透析液など)のような衛生を保つことが要求され且つ迅速な測定が求められるものの電気特性を測定する場合にも本装置を好適に利用することが可能である。
また、本発明の実施形態に係る電気特性測定装置100によれば、一対のトロイダルコイル10および11の電圧比および位相差の周波数特性に基づいて測定対象の液体の電気特性を導出するので、摂動する電場や液体内の電荷の変化に影響されにくく、安定的に測定を行うことが可能である。すなわち、本発明の実施形態に係る電気特性測定装置100によれば、単一の周波数の交流電圧を用いて測定対象の電気特性を導出する従来の方式と比較して、高精度な測定を行うことが可能である。
なお、上記の実施形態では、電気特性測定装置100が測定対象の液体の電気特性として導電率および比誘電率の双方を導出する場合を例示したが、これらのいずれか一方を導出するように構成してもよい。
また、上記の実施形態では、一対のトロイダルコイル10および11の入出力電圧の電圧比および位相差の双方の周波数特性を用いて測定対象の液体の電気特性を導出する場合を例示したが、電圧比および位相差のいずれか一方の周波数特性を用いて電気特性を導出してもよい。しかしながら、電圧比および位相差の双方の周波数特性を用いることにより、より精度の高い測定値を得ることができるものと考えられる。
また、上記の実施形態では、測定対象の液体について取得した電圧比(又は位相差)の周波数特性に近似する基準周波数特性を抽出する際に、測定対象の液体について取得した電圧比(または位相差)と、基準周波数特性における電圧比(または位相差)の差分値の絶対値を各周波数毎に算出し、各周波数毎に算出した上記差分値の絶対値を合算した合算値Sを指標値として用いることとしたが、これに限定されるものではなく、測定対象の液体について取得した電圧比(又は位相差)の周波数特性と、基準周波数特性との近似度合を示す他の指標値を用いることとしてもよい。
また、上記の実施形態では、交流電圧の周波数を100kHz〜1MHzの範囲で、100kHzずつ変化させ、各周波数毎に電圧比と位相差を取得する場合を例示したが、交流電圧の周波数の範囲および周波数の数を適宜変更することが可能である。例えば、周波数の異なる2つの交流電圧のみをトロイダルコイル10に供給して、各周波数について電圧比と位相差を取得してもよい。トロイダルコイル10に供給する周波数の数を少なくすることで、処理の高速化を図ることが可能となる。一方、周波数の範囲を広げると共に、周波数の数を増加させることにより、測定精度の向上を図ることが可能となる。
また、上記の実施形態では、容器20の形状を矩形環状とした場合を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば円環状であってもよい。また容器20の管路の断面形状や各部分の寸法は、トロイダルコイル10および11の大きさ等に応じて適宜変更することが可能である。
また、上記の実施形態では、入力側のトロイダルコイル10と出力側のトロイダルコイル11の巻数比を1:1とした場合を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、出力側のトロイダルコイル11の巻数を入力側のトロイダルコイル10の巻数よりも大きくしてもよい。
また、上記の実施形態では、電圧比測定部32および位相差測定部34をオシロスコープで構成する場合を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、トロイダルコイル10に入力される入力電圧およびトロイダルコイル11から出力される出力電圧を所定のサンプリング周期で測定する電圧測定器と、該電圧測定器から出力される測定値を演算処理することによって電圧比および位相差を導出する演算処理装置と、で構成してもよい。
[第2の実施形態]
図30は、本発明の第2の実施形態に係る電気特性測定装置101の構成を示す機能ブロック図である。なお、図30において、上記した第1の実施形態に係る電気特性測定装置100と同一の構成要素には、同一の参照符号を付与している。第2の実施形態に係る電気特性測定装置101は、第1の実施形態に係る電気特性測定装置100の電気特性導出部50に代えて、判定部51を有する。
判定部51は、測定対象の液体についての取得した電圧比および位相差の周波数特性と、記憶部40に予め記憶された基準周波数特性とを比較する。判定部51は、測定対象の液体について取得した電圧比および位相差の周波数特性と、基準周波数特性の近似度合を示す指標値が所定値以上である場合、所定の判定結果を出力する。近似度合を示す指標値としては、上記第1の実施形態と同様、測定対象の液体について取得した電圧比(または位相差)と、基準周波数特性における電圧比(または位相差)の差分値の絶対値を各周波数毎に算出し、その値を合算した合算値Sを用いることが可能である。
なお、判定部51は、測定対象の液体について取得した電圧比および位相差のいずれか一方の周波数特性と基準周波数特性との近似度合を示す指標値が所定値以上である場合に所定の判定結果を出力するように構成してもよい。また、本実施形態に係る電気特性測定装置101においては、記憶部40は、判定部51による上記の判定処理に供される、判定基準としての少なくとも1つの基準周波数特性を記憶していればよい。本実施形態においては基準周波数特性は、上記したような既知の抵抗値を有する抵抗素子および既知の容量値を有する容量素子を用いて取得したもの以外に、測定対象の液体について目的とする判定を行うことができるように、任意の周波数特性を基準周波数特性として設定することが可能である。
このように、第2の実施形態に係る電気特性測定装置101は、測定対象の液体の導電率や比誘電率等の電気特性の測定値を導出するものではなく、測定対象の液体が所定の特性を有しているか否かの判定結果を導出する。第2の実施形態に係る電気特性測定装置101は、例えば、上記したように、人工透析などにおいて、透析が完了しているかどうかの判定結果を導出するものであってもよい。この場合、透析が完了している場合の血液の電圧比または位相差の周波数特性を基準周波数特性として記憶部40に記憶しておく。また、第2の実施形態に係る電気特性測定装置101は、上記したように食品のうまみに関する判定結果を導出するものであってもよい。
10、11 トロイダルコイル
20 容器
30 信号発振器
32 電圧比測定部
34 位相差測定部
40 記憶部
50 電気特性導出部
51 判定部
60 制御部

Claims (11)

  1. 測定対象物が環状の電流経路を形成するように前記測定対象物を収容する容器と、
    前記環状の電流経路を流れる電流と電磁的に結合するように配置された第1のトロイダルコイルおよび第2のトロイダルコイルと、
    前記第1のトロイダルコイルに周波数の異なる複数の交流電圧を順次入力する電圧入力手段と
    記第1のトロイダルコイルに入力される入力電圧と、前記第2のトロイダルコイルから出力される出力電圧と、の電圧比および位相差の少なくとも一方の周波数特性を取得する取得手段と、
    前記取得手段によって取得された前記電圧比および前記位相差の少なくとも一方の周波数特性に基づいて前記測定対象物の電気特性を導出する導出手段と、
    を含む電気特性測定装置。
  2. 前記容器内の導電率および比誘電率が既知である場合の前記入力電圧と前記出力電圧との電圧比および位相差の少なくとも一方の周波数特性を、基準周波数特性として当該導電率および比誘電率に対応付けて記憶し、且つ複数の導電率および比誘電率の各々に対応する複数の基準周波数特性を記憶した記憶部を更に含み、
    前記導出手段は、前記記憶部に記憶された複数の基準周波数特性のうち、前記取得手段によって取得された前記電圧比および前記位相差の少なくとも一方の周波数特性に最も近似する基準周波数特性を抽出し、抽出した基準周波数特性に対応する導電率および比誘電率の少なくとも一方を前記測定対象物の電気特性として導出する請求項1に記載の電気特性測定装置。
  3. 前記導出手段は、前記取得手段によって取得された前記電圧比の周波数特性に最も近似する基準周波数特性に対応する導電率および比誘電率と、前記取得手段によって取得された前記位相差の周波数特性に最も近似する基準周波数特性に対応する導電率および比誘電率と、の双方に基づいて前記測定対象物の導電率および比誘電率を導出する請求項2に記載の電気特性測定装置。
  4. 測定対象物が環状の電流経路を形成するように前記測定対象物を収容する容器と、
    前記環状の電流経路を流れる電流と電磁的に結合するように配置された第1のトロイダルコイルおよび第2のトロイダルコイルと、
    前記第1のトロイダルコイルに周波数の異なる複数の交流電圧を順次入力する電圧入力手段と
    記第1のトロイダルコイルに入力される入力電圧と、前記第2のトロイダルコイルから出力される出力電圧と、の電圧比および位相差の少なくとも一方の周波数特性を取得する取得手段と、
    前記取得手段によって取得された前記電圧比および前記位相差の少なくとも一方の周波数特性に基づいて前記測定対象物の特定もしくは性状に関する判定結果を導出する導出手段と、
    を含む電気特性測定装置。
  5. 前記導出手段が前記測定対象物に関する判定結果を導出する際の判定基準として使用される基準周波数特性を記憶した記憶部を更に含み、
    前記導出手段は、前記取得手段によって取得された前記電圧比および前記位相差の少なくとも一方の周波数特性と、前記記憶部に記憶された基準周波数特性との比較結果に基づいて前記測定対象物に関する判定結果を導出する請求項4に記載の電気特性測定装置。
  6. 前記容器は、前記測定対象物が流入する入口側流路と、前記測定対象物が流出する出口側流路と、を含み、前記入口側流路と前記出口側流路とを隔てる壁が半透膜を含む請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電気特性測定装置。
  7. 前記容器は、前記測定対象物が流通する管路と、両端が前記管路内を流通する測定対象物と電気的に接続される導体配線と、を含む請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電気特性測定装置。
  8. 前記交流電圧の周波数は、100kHzから1MHzまでの範囲を含む請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電気特性測定装置。
  9. 測定対象物が環状の電流経路を形成するように前記測定対象物を容器に収容するステップと、
    前記環状の電流経路を流れる電流と電磁的に結合するように第1のトロイダルコイルおよび第2のトロイダルコイルを配置するステップと、
    前記第1のトロイダルコイルに周波数の異なる複数の交流電圧を順次入力するステップと
    記第1のトロイダルコイルに入力される入力電圧と、前記第2のトロイダルコイルから出力される出力電圧と、の電圧比および位相差の少なくとも一方の周波数特性を取得するステップと、
    前記電圧比および前記位相差の少なくとも一方の周波数特性に基づいて前記測定対象物の電気特性を導出するステップと、
    を含む電気特性測定方法。
  10. 測定対象物が環状の電流経路を形成するように前記測定対象物を容器に収容するステップと、
    前記環状の電流経路を流れる電流と電磁的に結合するように第1のトロイダルコイルおよび第2のトロイダルコイルを配置するステップと、
    前記第1のトロイダルコイルに周波数の異なる複数の交流電圧を順次入力するステップと
    記第1のトロイダルコイルに入力される入力電圧と、前記第2のトロイダルコイルから出力される出力電圧と、の電圧比および位相差の少なくとも一方の周波数特性を取得するステップと
    前記電圧比および前記位相差の少なくとも一方の周波数特性に基づいて前記測定対象物に関する判定結果を導出するステップと、
    を含む電気特性測定方法。
  11. コンピュータを、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電気特性測定装置における前記導出手段として機能させるためのプログラム。
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