[印刷システムの構成]
図1は、印刷システム10の概略図である。図1に示すように、印刷システム10は、フレキソ印刷版12(凸版)とインクとを使用して被印刷媒体13(図7参照)に画像を印刷するフレキソ印刷を行うことで、印刷物14を生成する。この印刷システム10は、大別して、本発明の製版部に相当するフレキソ製版装置20と、本発明の印刷部に相当するフレキソ印刷装置30と、本発明の測定部に相当する測定装置40と、管理装置50とにより構成されている。
フレキソ製版装置20は、原稿画像16の画像データに基づき、原稿画像16に対応するレリーフ19(図3参照)をフレキソ版材F(図3参照)に形成することで、フレキソ印刷版12の製版を行う。
図2は、フレキソ製版装置20の一例を示した概略図である。図2に示すように、フレキソ製版装置20は、大別して、RIP(Raster Image Processor)処理部21と、レーザ彫刻を行うCTP(Computer To Plate)描画部22と、を有している。なお、フレキソ製版装置20は、画像データに基づきフレキソ印刷版12の製版するものであれば、その構成は図2に示した構成に限定されるものではない。
RIP処理部21は、原稿画像16の画像データをラスタ画像データに展開する展開処理と、ラスタ画像データから2値画像データを生成するスクリーニング処理と、2値画像データを露光量データに変換する露光量データ生成処理と、を行う。
具体的に、RIP処理部21は、コンピュータ等を用いて編集された原稿画像16のベクトル画像を表現するPDF(Portable Document Format)データやPS(PostScript;登録商標)データ等のページ記述言語(Page Description Language)データを、ラスタ画像データに展開する展開処理を行う。
次いで、RIP処理部21は、ラスタ画像データを、予め指定された網点[AM(Amplitude Modulation)網点、FM(Frequency Modulation)網点等]、角度、スクリーン線数等の条件下でスクリーニング処理して、2値画像データに変換する。
そして、RIP処理部21は、2値画像データに基づき、フレキソ印刷版12に形成するレリーフ19を示すレリーフパターンデータを生成し、このレリーフパターンデータをフレキソ版材Fに対する露光光量に応じた露光量データに変換する。RIP処理部21は、露光量データをCTP描画部22へ出力する。
図3は、CTP描画部22の概略図である。図3に示すように、CTP描画部22は、RIP処理部21から入力される露光量データに基づき、合成樹脂又はゴム等の弾性材などからなる前述のフレキソ版材Fに対してレーザ彫刻処理を施すことで、フレキソ印刷版12を製版する。
CTP描画部22は、ドラム62と、ドラム62上に保持されるフレキソ版材Fを露光彫刻するための露光ヘッド68とを備えており、所謂レーザ彫刻機として機能する。露光ヘッド68はステージ70に搭載され、ピント位置変更機構72及び間欠送り機構78によって移動可能となっている。
ピント位置変更機構72は、フレキソ版材Fが取り付けられたドラム62に対して露光ヘッド68を前後移動させるためのモータ74及びボールネジ76を有する。これらのモータ74及びボールネジ76によって露光ヘッド68の主走査方向の移動が制御され、露光彫刻処理のピント位置が調整される。
間欠送り機構78は、ボールネジ80と、このボールネジ80を回転させる副走査モータ82とを有する。これらのボールネジ80及び副走査モータ82によって露光ヘッド68(ステージ70)の副走査方向への移動が制御され、露光ヘッド68はドラム62の軸線64方向(副走査方向)に間欠送りされる。なお、ドラム62上のフレキソ版材Fは、チャック部材66によってチャックされ、ドラム62上での保持位置が固定される。フレキソ版材Fのうちチャック部材66によってチャックされる位置は、露光ヘッド68による露光が行われない領域である。
ドラム62を回転させながら、露光ヘッド68からのレーザビームをフレキソ版材Fに対して照射することで、フレキソ版材Fの表面に所望のレリーフ19が形成される。なお、ドラム62の回転によってチャック部材66が露光ヘッド68の前を通過する際に、露光ヘッド68(ステージ70)が副走査方向に間欠送りされ、その後、次のラインのレーザ彫刻が行われる。
このような「ドラム62の回転によるフレキソ版材Fの主走査方向の送り」及び「露光ヘッド68の副走査方向の間欠送り」を組み合わせることによって、露光走査位置が制御される。また、露光走査位置毎の露光量データ(深さデータ)に基づくレーザビームの強度やオンオフが制御されることで、所望の形状のレリーフ19がフレキソ版材Fにレーザ彫刻され、フレキソ印刷に使用されるフレキソ印刷版12が形成される。
上記構成のフレキソ製版装置20は、フレキソ印刷版12を製版する際の製版条件25(図1及び図4参照)を調整可能である。この製版条件25を調整することで、フレキソ印刷版12の形状が制御され、その結果、印刷物14に印刷される画像の像構造品質や線品質などの画質特性を適切に調整することができる。
図4は、製版条件25の一例を説明するための説明図である。図4に示すように、製版条件25には、例えば、「網形状」と「網線数」と「網角度系列」と「凸形状」と「凹形状」との条件が含まれている。なお、各条件における「C/M/Y/K」はインクの色[シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)]を表している。
「網形状」は、フレキソ印刷版12の網点の形状である。「網線数」は、複数の網点が規則的に配置されて形成される平網における単位長さあたりの網線の本数である。「網角度系列」は、網線の角度であり、例えば4色刷りではモアレの発生を防止するために色(C/M/Y/K)ごとに角度を変化させて設定する。
図5は製版条件25の「凸形状」を説明するための説明図であり、図6は製版条件25の「凹形状」を説明するための説明図である。図5に示すように、「凸形状」は凸版であるフレキソ印刷版12の凸部分の形状を表すものである。この凸部分の形状は、凸部分の先端部を構成するキャップ層の高さ(図中のCAPで表示)と、凸部分の基端部の傾斜角度θ1とにより表される。
図6に示すように、「凹形状」はフレキソ印刷版12の凸部分の間に位置する凹部分の形状を表すものである。この凹部分の形状は、凹部分の深さ(図中のDで表示)と、凹部分の底部の傾斜角度θ2とにより表される。
このような製版条件25の各条件に従って、フレキソ製版装置20はフレキソ印刷版12の製版を行う。
図7は、フレキソ印刷装置30の一例を示した概略図である。図7に示すように、フレキソ印刷装置30は、フレキソ製版装置20により製版されたフレキソ印刷版12を用いて、被印刷媒体13に画像を印刷して印刷物14を生成する。このフレキソ印刷装置30は、大別して、フレキソ印刷版12と、フレキソ印刷版12が両面テープ等のクッションテープ32を介して取り付けられる版胴34と、ドクターチャンバ36によりインクが供給されるアニロックスローラ38と、版胴34と対向するように設置される圧胴39とを備える。
版胴34に取り付けられているフレキソ印刷版12のレリーフ19の頂部(印刷面)には、アニロックスローラ38からインクが転写される。そして、フレキソ印刷版12が取り付けられた版胴34と圧胴39との間を被印刷媒体13が通過する際に、被印刷媒体13にフレキソ印刷版12(レリーフ19の頂部)が押し当てられることで、フレキソ印刷版12のレリーフ頂部に付着するインクが被印刷媒体13に転写される。これにより、被印刷媒体13上に所望画像が印刷形成されて印刷物14が生成される。
上記構成のフレキソ印刷装置30は、被印刷媒体13に画像を印刷する際の印刷条件27(図1及び図8参照)を調整可能であり、この印刷条件27を調整することで、印刷物14に印刷される画像の階調や色再現性などの色特性を適切に調整することができる。
図8は、印刷条件27の一例を説明するための説明図である。印刷条件27には、例えば、「インキ種」と「インキ粘度」と「クッションテープ」と「印圧」と「アニ圧」と「印刷速度」と「アニロックスローラ線数」と「アニロックスローラセル容量」と「アニロックスローラセル形状」との各条件が含まれている。なお、前述の製版条件25と同様に、「C/M/Y/K」は該当する条件におけるインクの色を表している。
「インキ種」は、フレキソ印刷に用いるインクの種類を表す。「インキ粘度」は、フレキソ印刷に用いるインクの推奨粘度を表す。「クッションテープ」は、クッションテープ32の種類(ソフト、セミソフトなど)を表す。「印圧」は、フレキソ印刷版12にかかる印圧によるフレキソ印刷版12の圧縮量(食い込み量)を表す。「アニ圧」は、アニロックスローラ38とフレキソ印刷版12との間の圧力であるアニ圧によるアニロックスローラ38の圧縮量(食い込み量)を表す。
「アニロックスローラ線数」及び「アニロックスローラセル容量」及び「アニロックスローラセル形状」は、それぞれアニロックスローラ38の線数と、アニロックスローラ38のセルの容量と、アニロックスローラ38のセルの形状とを表す。
このような印刷条件27の各条件に従って、フレキソ印刷装置30はフレキソ印刷を行って印刷物14を生成する。
図1に戻って、測定装置40は、前述のフレキソ製版装置20及びフレキソ印刷装置30により原稿画像16が印刷された印刷物14を測定対象とする。この測定装置40は、詳しくは後述するが、印刷物14に印刷された原稿画像16の特性を測定して第1特性データ42を得て、第1特性データ42を管理装置50へ出力する。
管理装置50は、詳しくは後述するが、測定装置40から入力される第1特性データ42に基づき、モデル構築システム90により生成されたフレキソ印刷特性モデル92を参照して、前述の製版条件25と印刷条件27とを管理(修正)する。
[モデル構築システムの構成]
モデル構築システム90は、印刷システム10を製造するメーカに設置されており、顧客の印刷システム10で使用されるフレキソ印刷特性モデル92の生成を行う。このモデル構築システム90は、前述のフレキソ製版装置20及びフレキソ印刷装置30及び測定装置40とそれぞれ同機種のフレキソ製版装置20A及びフレキソ印刷装置30A及び測定装置40Aと、モデル構築部93とにより構成されている。ここで、「同機種」とは完全に同一に機種に限定されるものではなく、印刷再現性に基本的に差がでない小改良が施されている機種も含まれる。
フレキソ製版装置20Aは、後述の解析チャート95(図9参照)の画像データに基づき、所定の製版条件25にて、解析チャート95に対応するレリーフ19をフレキソ版材Fに形成することで、フレキソ印刷版12Aの製版を行う。具体的な製版の方法は前述のフレキソ製版装置20(図2及び図3参照)と同じであるので、ここでは具体的な説明は省略する。
フレキソ印刷装置30Aは、所定の印刷条件27にて、フレキソ製版装置20Aにより製版されたフレキソ印刷版12Aにより被印刷媒体13に解析チャート95を印刷して印刷物14Aを生成する。具体的な印刷の方法は前述のフレキソ印刷装置30(図7参照)と同じであるので、ここでは具体的な説明は省略する。
測定装置40Aは、前述のフレキソ製版装置20A及びフレキソ印刷装置30Aを経て印刷物14Aに印刷された解析チャート95を読み取り、この解析チャート95の特性を測定して第2特性データ97を得る。
図9は、本発明の画像特性評価用の評価画像に相当する解析チャート95の一例を説明するための説明図である。また、図10は、図9に示した解析チャート95の一部分の拡大図である。この解析チャート95を測定装置40Aにて読み取ることで第2特性データ97が得られる。
図9及び図10に示すように、解析チャート95を、この解析チャート95に対応した画像解析アルゴリズムによって解析することで解析チャート95の画質特性を示す画質特性データ98(図11参照)が得られる。
例えば、解析チャート95の像構造領域95A[複数色(シアン、ピンク、グレー等)ついて網形状及び網線数などを段階的に変更したカラーチャート]の読取結果を画像解析アルゴリズムによって解析することで画質特性として、像構造を示す「粒状性」と「バンディング」と「スジムラ」を算出することができる。また、解析チャート95の階調性領域95B[複数色(イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルー、グレー、ブラックなど)の濃度を段階的に変更したカラーチャート]の読取結果を画像解析アルゴリズムによって解析することで画質特性として、像構造を示す「モアレ」を算出することができる。さらに、解析チャート95のCTF(Contrast Transfer Function)領域95C[縦縞線及び横縞線のチャート]の読取結果を画像解析アルゴリズムによって解析することで画質特性として、像構造を示す「CTF」を算出することができる。
また、解析チャート95の線品質領域95D[線幅の異なる複数線により構成されるチャート]の読取結果を画像解析アルゴリズムによって解析することで画質特性として、線品質を示す「線幅」と「ラジットネス」と「線濃度」と、を算出することができる。
一方、解析チャート95を測定装置40Aにて読み取って測色することで色特性データ99(図11参照)が得られる。例えば、前述の階調性領域95Bを測色することで、階調を示す「階調性」が得られる。また、解析チャート95のトーンジャンプ領域95E[複数色(ブラック、レッド、グリーン、マゼンタ、シアン、ブルー等)の濃度をリニアに変更したカラーチャート]を測色することで、階調を示す「トーンジャンプ」が得られる。さらに、解析チャート95の色再現領域95F[色再現を評価可能な複数色のカラーチャート]を測色することで、色再現を示す「色再現域深さ」と「最大濃度」と「最小濃度」とが得られる。
なお、図9中において、像構造領域95Aと階調性領域95Bとトーンジャンプ領域95Eと色再現領域95Fとは、モノクロで表示されているが、実際には多色のカラー領域である。
図11は、測定装置40Aにより得られる第2特性データ97を説明するための説明図である。図11に示すように、測定装置40Aは、解析チャート95の像構造領域95A及び階調性領域95B及びCTF領域95C及び線品質領域95Dを読み取って解析することで、像構造(「粒状性」、「バンディング」、「スジムラ」、「モアレ」、「CTF」)と線品質(「線幅」、「ラジットネス」、「線濃度」)とを示す画質特性データ98を得る。
また、測定装置40Aは、解析チャート95の階調性領域95Bとトーンジャンプ領域95Eと色再現領域95Fとを測色することで、階調(「階調性」、「トーンジャンプ」)と色再現(「色再現域深さ」、「最大濃度」、「最小濃度」)とを示す色特性データ99を得る。これにより、画質特性データ98と色特性データ99とを含む第2特性データ97が得られる。測定装置40Aは、第2特性データ97をモデル構築部93へ出力する。
図1に戻って、モデル構築システム90では、製版条件25及び印刷条件27を変えながら、フレキソ製版装置20Aによるフレキソ印刷版12Aの製版と、フレキソ印刷装置30Aによる解析チャート95の印刷と、測定装置40Aによる第2特性データ97(画質特性データ98及び色特性データ99)の測定と、が繰り返し実行される。
<フレキソ印刷特性モデルの生成処理>
モデル構築部93は、本発明のフレキソ印刷特性モデル構築部に相当する。このモデル構築部93は、第2特性データ97と、第2特性データ97の測定元の解析チャート95を印刷する際の製版条件25及び印刷条件27と、の対応関係を示すフレキソ印刷特性モデル92を生成する。
モデル構築部93は、複数の製版条件25及び印刷条件27と、条件毎の第2特性データ97とを対応付ける、例えば公知のモデル化手法によってモデル化(多変量解析モデル、機械学習、ニューロンモデル)することで、フレキソ印刷特性モデル92を生成する。このようなモデル化を行うことで、製版条件25及び印刷条件27の全条件について第2特性データ97の測定を行う必要が無くなり、限られた数の条件下での第2特性データ97の測定によりフレキソ印刷特性モデル92を生成することができる。
以下、モデル構築部93によるフレキソ印刷特性モデル92の生成の一例について詳細に説明する。
フレキソ印刷特性モデル92の生成の際には、製版条件25及び印刷条件27の各項目を「説明変数」とし、第2特性データ97の画質特性データ98及び色特性データ99を「目的変数」として、重回帰分析の手法を用いて、説明変数の情報から目的変数の値を予測する重回帰式の各係数を求める。製版条件25及び印刷条件27は、質的データとして以下のように扱う。
製版条件25及び印刷条件27(図4及び図8参照)において、網形状、網角度系列、凸形状、凹形状、インキ種、及びアニロックスローラセル形状は、名義尺度を用いる。また、網線数、インキ粘度、印圧、アニ圧、印刷速度、アニロックスローラ線数、及びアニロックスローラセル容量は、順序尺度を用いる。
多変量解析の数量化1類を用いて、ダミー変数を使用して数値化する。目的変数の粒状性、モアレ、バンディング、・・・に対応する目的変数y1,y2,y3,・・・について、以下の、
・y1 = a11*x1 +a12*x2 +a13*x3 +…
・y2 = a21*x1 +a22*x2 +a23*x3+…
・y3 = a31*x1 +a32*x2 +a33*x3+…
・…
で表される予測式の各係数(a11,a12,a13,・・・)を求める。ここで、変数x1,x2,x3,…は順序尺度または名義尺度を使って数値化した、説明変数(網形状、網角度系列、凸形状、…)に対応している。
上記の多変量解析手法によって、各係数a11,a12,a13,…を決定することで、製版条件25及び印刷条件27から画質特性データ98及び色特性データ99を予測する多項式がフレキソ印刷特性モデル92として求められる。これにより、製版条件25及び印刷条件27と、第2特性データ97(画質特性データ98及び色特性データ99)との対応関係を示すフレキソ印刷特性モデル92を生成することができる。このフレキソ印刷特性モデル92を参照することで、詳しくは後述するが、画質特性データ98及び色特性データ99の入力に対して、製版条件25及び印刷条件27を決定することが可能となる。モデル構築部93が生成したフレキソ印刷特性モデル92は、印刷システム10の管理装置50に入力される。
[印刷システムの測定装置の測定処理]
図12は、印刷システム10の測定装置40及び管理装置50の機能ブロック図を示したものである。図12に示すように、測定装置40は、印刷物14に記録された原稿画像16を読み取って、解析チャート95で評価される評価項目(図9、図11参照)について測定することで、原稿画像16の特性を示す第1特性データ42を得る。
測定装置40には評価領域検出部45が設けられている。評価領域検出部45には、測定装置40による測定前(原稿画像16に基づく製版及び印刷前)に、原稿画像16の画像データが入力される。この評価領域検出部45は、原稿画像16の画像データに基づき、原稿画像16から、解析チャート95にて評価される各評価項目の少なくとも一つを評価可能な評価領域18(図13参照)を検出する。
<評価領域の検出>
図13は、原稿画像16内の評価領域18の一例を説明するための説明図である。図13に示すように、評価領域検出部45は、図示の原稿画像16から、評価領域18として、例えば、粒状性等評価領域18Aと、最大濃度評価領域18Bと、色再現域領域18Cと、最小濃度評価領域18Dと、線濃度等評価領域18Eと、を検出する。なお、図中の各評価領域18に対応する矩形枠内には、評価可能な評価項目の名称が記載されている。
粒状性等評価領域18Aは、原稿画像16内で画像濃度が一様な領域(例えば背景)である。この粒状性等評価領域18A内の画像信号に基づき、前述の解析チャート95において評価可能な評価項目の中で「粒状性、バンディング、スジムラ」をそれぞれ評価することができる。
最大濃度評価領域18Bは、原稿画像16内で画像濃度が最大となる領域(例えば、黒色の被写体領域)である。この最大濃度評価領域18B内の画像信号に基づき、前述の解析チャート95において評価可能な評価項目の中で「最大濃度」を評価することができる。
色再現域領域18Cは、原稿画像16内で色再現域の広さを検出可能な領域(例えば、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の少なくとも一色を含む領域)である。この色再現域領域18C内の画像信号に基づき、前述の解析チャート95において評価可能な評価項目の中で「色再現域広さ」を評価することができる。
最小濃度評価領域18Dは、原稿画像16内で画像濃度が最小となる領域(例えば、白色の被写体領域など)である。この最小濃度評価領域18D内の画像信号に基づき、前述の解析チャート95において評価可能な評価項目の中で「最小濃度」を評価することができる。
線濃度等評価領域18Eは、原稿画像16内で線幅及び線濃度を検出可能な領域(例えば、文字や模様などの線を含む領域)である。この線濃度等評価領域18E内の画像信号に基づき、前述の解析チャート95にて評価可能な評価項目の中で「線幅、線濃度」をそれぞれ評価することができる。
図14(A)〜(E)は、評価領域検出部45による評価領域18の各領域の検出処理の流れを示すフローチャートである。
図14(A)に示すように、評価領域検出部45は、粒状性等評価領域18Aの検出を行う際には、例えば35mmサイズのROI(Region of Interest:以下、ROIサイズ(大)という)を原稿画像16内の任意の位置(例えば四隅部のいずれか1つ)に設定する。そして、評価領域検出部45は、ROIサイズ(大)の範囲内の画像信号を解析して、ROIサイズ(大)の範囲内の濃度(画素値)が一様(ここでは、濃度が予め定められた範囲内に収まる「略一様」を含む)であるか否かを判断する。以下、評価領域検出部45は、ROIサイズ(大)の位置を変えながら原稿画像16の全面を走査し、各位置においてROIサイズ(大)の範囲内の濃度が一様か否かの一様性判定処理を行う(ステップSA1)。
この際に,評価領域検出部45は、濃度の一様性有りと判断したROIサイズ(大)の位置を粒状性等評価領域18Aとして決定する(ステップSA2でYES)。次いで、評価領域検出部45は、粒状性等評価領域18Aとして決定した粒状性等評価領域18A[ROIサイズ(大)]の位置を、濃度別に図示しないメモリに登録する(ステップSA3)。
図14(B)に示すように、評価領域検出部45は、最大濃度評価領域18Bの検出を行う際には、例えば10mmサイズのROI(以下、ROIサイズ(中)という)を原稿画像16内の任意の位置に設定する。そして、評価領域検出部45は、ROIサイズ(中)の範囲内の画像信号を解析して、ROIサイズ(中)の範囲内の濃度が一様であるか否かを判断する。以下、評価領域検出部45は、ROIサイズ(中)の位置を変えながら原稿画像16の全面を走査し、各位置においてROIサイズ(中)の範囲内の濃度が一様であるか否かの一様性判定処理を行う(ステップSB1)。
この際に、評価領域検出部45は、各位置のROIサイズ(中)のうちで濃度の一様性有りと判断したROIサイズ(中)を選択する(ステップSB2でYES)。次いで、評価領域検出部45は、選択したROIサイズ(中)の中で最大濃度となるROIサイズ(中)の位置を最大濃度評価領域18Bとして決定し、この位置をメモリに登録する(ステップSB3でYES、ステップSB4)。
図14(C)に示すように、評価領域検出部45は、色再現域領域18Cの検出を行う際には、ROIサイズ(中)の位置を変えながら原稿画像16の全面を走査して、各位置においてROIサイズ(中)の範囲内の濃度の一様性判定処理を行う(ステップSC1)。
この際に、評価領域検出部45は、各位置のROIサイズ(中)の中で濃度の一様性有りと判断したROIサイズ(中)を選択する(ステップSC2でYES)。次いで、評価領域検出部45は、濃度の一様性があるROIサイズ(中)のうち、色再現域境界となるROIサイズ(中)が存在する場合には、色再現域境界となるROIサイズ(中)を色再現域領域18Cとしてメモリに登録する(ステップSC3でYES、ステップSC4)。
図14(D)に示すように、評価領域検出部45は、最小濃度評価領域18Dの検出を行う際には、ROIサイズ(中)の位置を変えながら原稿画像16の全面を走査して、各位置においてROIサイズ(中)の範囲内の濃度の一様性判定処理を行う(ステップSD1)。
この際に、評価領域検出部45は、各位置のROIサイズ(中)の中で濃度の一様性有りと判断したROIサイズ(中)を選択する(ステップSD2でYES)。次いで、評価領域検出部45は、選択したROIサイズ(中)の中で最小濃度となるROIサイズ(中)の位置を最小濃度評価領域18Dとして決定し、この位置をメモリに登録する(ステップSD3でYES、ステップSD4)。
図14(E)に示すように、評価領域検出部45は、線濃度等評価領域18Eの検出を行う際には、線検出処理を原稿画像16の全面に行う(ステップSE1)。次いで、評価領域検出部45は、線長さが所定値以上の領域を線評価位置として判定する(ステップSE2でYES、ステップSE3でYES)。そして、評価領域検出部45は、線評価位置を含む所定の大きさの領域を線濃度等評価領域18Eとして決定し、この位置をメモリに登録する(ステップSE4)。以上で、評価領域検出部45の検出処理が終了する。
なお、図13及び図14にて説明した各評価領域18は、図13に図示されている原稿画像16から検出可能な評価領域18の例を示したものである。従って、原稿画像16の種類が変わることで、上記以外の解析チャート95の評価項目(「モアレ」、「CTF」、「階調性」など)を評価可能な評価領域18を検出することができる。
測定装置40は、評価領域検出部45により前述のメモリに登録されている評価領域18の各領域の位置の検出結果に基づき、各領域で評価可能な評価項目(図13参照)について測定する。
具体的に、測定装置40は、原稿画像16内の粒状性等評価領域18A内の画像信号に基づき、粒状性及びバンディング及びスジムラを測定する。前述の通り、メモリには濃度別に粒状性等評価領域18Aの位置が登録されているので、粒状性及びバンディング及びスジムラの測定は濃度別に行われる。これにより、原稿画像16の画像信号の濃度値(光学濃度)別に、「粒状性」及び「バンディング」及び「スジムラ」の測定結果が得られる。
また、測定装置40は、原稿画像16内の最大濃度評価領域18B及び色再現域領域18C及び最小濃度評価領域18Dの各領域内の画像信号に基づき、最大濃度、色再現域広さ、最小濃度をそれぞれ測定する。これにより、原稿画像16の「最大濃度」及び「色再現域広さ」及び「最小濃度」の測定結果が得られる。
さらに、測定装置40は、原稿画像16内の線濃度等評価領域18Eの画像信号に基づき、線幅(線幅画素数)及び線濃度(濃度値)を測定する。これにより、原稿画像16の「線幅」及び「線濃度」の測定結果が得られる。
上述の測定装置40の測定結果の中で、「粒状性」と「バンディング」と「スジムラ」と「線幅」と「線濃度」とは、前述の画質特性データ98(図11参照)に含まれる評価項目である。従って、測定装置40は、これらの評価項目(「粒状性」、「バンディング」、「スジムラ」、「線幅」、「線濃度」)により構成される画質特性データ98S(図12参照)を測定する。この画質特性データ98Sは、前述の解析チャート95の測定で得られる画質特性データ98の各評価項目の中で、原稿画像16において評価可能な項目により構成されるデータである。
また、上述の測定装置40の測定結果の中で、「最大濃度」と「色再現域広さ」と「最小濃度」とは、前述の色特性データ99(図11参照)に含まれる評価項目である。従って、測定装置40は、これらの評価項目(「最大濃度」、「色再現域広さ」、「最小濃度」)により構成される色特性データ99S(図12参照)を測定する。この色特性データ99Sは、前述の解析チャート95の測定で得られる色特性データ99の各評価項目の中で、原稿画像16において評価可能な項目により構成されるデータである。
このようにして測定装置40は、原稿画像16から、画質特性データ98S及び色特性データ99Sにより構成される第1特性データ42(図12参照)を測定し、この第1特性データ42を管理装置50へ出力する。
[管理装置の構成]
図12に戻って、管理装置50は、大別してモデル取得部52と、記憶部53と、目標値設定部54と、条件決定部55と、条件修正部56と、を有している。
モデル取得部52は、前述のモデル構築部93にて生成されたフレキソ印刷特性モデル92を取得する。例えば、モデル取得部52とモデル構築部93とが有線又は無線のネットワークを介して接続されている場合、あるいはネットワーク上のサーバにフレキソ印刷特性モデル92が記憶されている場合には、モデル取得部52として、通信インタフェースが用いられる。また、フレキソ印刷特性モデル92がメモリカード等の情報記録媒体に記録されている場合には、モデル取得部52として、情報記録媒体からフレキソ印刷特性モデル92を読み取る読み取りインタフェースが用いられる。また、オペレータが手動でフレキソ印刷特性モデル92のデータを管理装置50に入力する場合には、モデル取得部52として、キーボード等の入力インタフェースが用いられる。モデル取得部52は、取得したフレキソ印刷特性モデル92を記憶部53に記憶させる。
記憶部53は、モデル取得部52から入力されたフレキソ印刷特性モデル92を記憶する。なお、モデル取得部52によるフレキソ印刷特性モデル92の取得から記憶部53へのフレキソ印刷特性モデル92の記憶までの処理は、印刷システム10のメーカにて行われていてもよい。そして、メーカのモデル構築システム90において新たなフレキソ印刷特性モデル92が生成された場合には、モデル取得部52により新たなフレキソ印刷特性モデル92を取得して記憶部53に記憶されているフレキソ印刷特性モデル92に上書きしてもよい。
目標値設定部54は、原稿画像16の印刷前に、予めこの原稿画像16を測定装置40にて測定することにより得られる第1特性データ42(画質特性データ98S及び色特性データ99S)の目標値Pを設定する。この目標値Pの設定は、例えば、前述の評価領域検出部45の検出結果に基づき、オペレータが図示しない操作部に入力する目標値設定操作の内容に従って行われる。
例えば、評価領域検出部45により粒状性等評価領域18Aが検出された場合に、オペレータは、原稿画像16の画像信号の濃度値(光学濃度)別に、「粒状性」及び「バンディング」及び「スジムラ」の各項目の目標値を決定して、各項目の目標値設定操作を行う。また、評価領域検出部45により最大濃度評価領域18B及び色再現域領域18C及び最小濃度評価領域18Dが検出された場合に、オペレータは、「最大濃度」及び「色再現域広さ」及び「最小濃度」の各項目の目標値を決定して、各項目の目標値設定操作を行う。さらに、評価領域検出部45により線濃度等評価領域18Eが検出された場合に、オペレータは、線幅の目標値[原稿画像16の線幅画素数に対する仕上がり目標の線幅(mm単位)、及び線濃度の目標値[濃度値(光学濃度)]を決定して、各項目の目標値設定操作を行う。
目標値設定部54は、前述の各項目の目標値設定操作に基づき、第1特性データ42(画質特性データ98S及び色特性データ99Sの各評価項目)の目標値Pを決定して、この目標値Pを条件決定部55と、条件修正部56とにそれぞれ出力する。
条件決定部55は、目標値設定部54から入力された目標値P(画質特性データ98S及び色特性データ99S)に基づき、記憶部53に記憶されているフレキソ印刷特性モデル92を参照して、目標値Pに対応する初期の製版条件25及び印刷条件27(初期値)を決定する。
[製版条件25及び印刷条件27の決定処理]
以下、条件決定部55による製版条件25及び印刷条件27の決定処理の一例について説明を行う。
条件決定部55は、公知の最適化アルゴリズム(遺伝的アルゴリズム、シミュレーテッドアニーリングなど)を用いて、目標値Pを与える初期の製版条件25と印刷条件27とを上記の予測式(y1=…、y2=…、y3=…、・・・)に基づいて求める。ここでは、最適化手法を使うために、目標値Pは適切な評価式によって1変数に落とし込む。この評価式としては、例えば以下の、
E=(t1−t1x)2+(t2−t2x)2+(t3−t3x)2+・・・
で表される式が用いられる。ここで、t1、t2、t3・・・は画質特性データ98及び色特性データ99の個々の項目の目標値Pであり、t1x、t2x、t3x・・・は評価対象であり、Eは評価値(この例では誤差に相当)である。なお、「1変数に落とし込む」とは、最適化対象が複数ある場合(例えばt1、t2、t3、・・・)に、1つの評価式が最適であることが、複数の最適化対象が最適となるように表現する最適化手法を用いることである。
以下、前述の最適化アルゴリズムとして遺伝的アルゴリズムを用いる場合を例に説明する。
画質特性データ98及び色特性データ99の目標値Pを前述の通りt1、t2、t3・・・として、製版条件25及び印刷条件27の所定数の候補群をs1k、s2k、s3k・・・とする(kは候補数に相当する)。また、突然変異に相当する候補をs1m、s2m、s3m・・・として(mは候補数に相当する)、遺伝に相当する処理である候補群同士の部分的な変更、交換、平均化などの処理を行い、それぞれの評価値を計算して評価値が優れた順に並べた順の所定数を新たな候補群として更新する(イテレーション処理)。
終了条件は、評価値が予め設定した条件(誤差が許容範囲以下)を満たせば終了し、その場合、終了条件に相当する候補を最適値(初期の製版条件25及び印刷条件27)として出力する。条件を満たさない場合、イテレーション処理を再度実行する。イテレーション処理は上限回数を設定しておき、上限回数に達した場合も終了とする。その場合はその時点で最も優れた候補が最適値(初期の製版条件25及び印刷条件27)となる。
なお、前述の最適化アルゴリズムとしてシミュレーテッドアニーリングを用いる場合、候補(s1、s2、s3、・・・)に対して所定回数の乱数加算によって複数の候補群を生成し、それぞれの評価値を計算して評価値が最も優れたものを次の候補として選択する。
(イテレーション処理)
イテレーション処理の乱数は計算開始時点では絶対値が大きく、イテレーション処理回数が増加するにつれて乱数の絶対値が小さくなるように制御する。終了条件は、評価値が予め設定した条件(誤差が許容範囲以下)を満たせば終了し、その場合には条件に相当する候補を最適値として出力する。条件を満たさない場合、イテレーション処理を再度実行する。イテレーション処理は上限回数を設定しておき、上限回数に達した場合も終了とする。
このようにして条件決定部55は、フレキソ印刷特性モデル92を使った計算により、目標値Pに対応する初期の製版条件25及び印刷条件27(初期値)を決定することができる。そして、条件決定部55は、決定した初期の製版条件25及び印刷条件27をそれぞれフレキソ製版装置20、フレキソ印刷装置30へ出力する。これにより、初期の製版条件25及び印刷条件27がそれぞれフレキソ製版装置20、フレキソ印刷装置30に設定される。
条件修正部56は、本発明の特性データ取得部、且つ修正決定部、且つ条件修正部として機能する。条件修正部56は、最初に、測定装置40より第1特性データ42(画質特性データ98S及び色特性データ99S)を取得する。この第1特性データ42は、初期の製版条件25及び印刷条件27に基づいて得られた原稿画像16を、測定装置40により測定することで得られたデータである。
次いで、条件修正部56は、測定装置40から得られた第1特性データ42(画質特性データ98S及び色特性データ99S)と、前述の目標値設定部54から入力された目標値P(画質特性データ98S及び色特性データ99S)と比較して、この比較結果に基づき初期の製版条件25及び印刷条件27の修正を行うか否かを決定する。
具体的に、条件修正部56は、測定装置40から得られた実測値である第1特性データ42(画質特性データ98S及び色特性データ99S)と、目標値P(画質特性データ98S及び色特性データ99S)との誤差(差分)を求め、誤差が予め定めた許容範囲を超えるか否かを判断する。そして、条件修正部56は、誤差が許容範囲を超えると判断した場合には、初期の製版条件25及び印刷条件27の少なくともいずれか一方の修正を行うことを決定し、補正値100(「目標値P−実測値」:図17参照)を目標値Pに加算した値を「補正した目標値P」とする。
次いで、条件修正部56は、前述の比較結果に対応する「補正した目標値P」に基づき、フレキソ印刷特性モデル92を参照して、前述の製版条件25及び印刷条件27の決定処理でなされる計算を行って、初期の製版条件25を修正した修正製版条件25a及び初期の印刷条件27を修正した修正印刷条件27aの少なくともいずれか一方を決定する。そして、条件修正部56は、初期の製版条件25の修正を行う場合には、修正後の修正製版条件25aをフレキソ製版装置20に出力する。また、条件修正部56は、初期の印刷条件27の修正を行う場合には、修正後の修正印刷条件27aをフレキソ印刷装置30に出力する。
フレキソ製版装置20は、条件修正部56から入力された修正製版条件25aに基づき、フレキソ印刷版12の製版を行う。また、フレキソ印刷装置30は、条件修正部56から入力された修正印刷条件27aに基づき、印刷物14(原稿画像16)の印刷を行う。
このような製版条件25及び印刷条件27の修正は、新規の原稿画像16の印刷を行う場合や印刷する原稿画像16を変更する場合、或いは印刷システム10の定期検査(定期メンテナンス)を行う場合など、適宜タイミングで実施される。
[印刷システムの作用]
次に、上記構成の印刷システム10の作用、特に製版条件25及び印刷条件27の修正について説明する。最初に、印刷システム10における製版条件25及び印刷条件27の修正のために必要なフレキソ印刷特性モデル92の生成処理について説明を行う。
<フレキソ印刷特性モデルの生成処理>
図15は、モデル構築システム90によるフレキソ印刷特性モデル92の生成処理の流れを示すフローチャートである。図15に示すように、最初に、解析チャート95(図9参照)の画像データがフレキソ製版装置20Aに入力される(ステップS1)。
解析チャート95の画像データの入力後、製版開始操作がなされると、フレキソ製版装置20Aは、画像データに基づき、所定の製版条件25にて、解析チャート95に対応するレリーフ19をフレキソ版材Fに形成する。これにより、解析チャート95に対応するフレキソ印刷版12Aが製版される(ステップS2)。このフレキソ印刷版12Aは、フレキソ印刷装置30Aの版胴34(図7参照)にセットされる。
この際に、モデル構築部93は、フレキソ製版装置20Aからフレキソ印刷版12Aを製版した際の製版条件25を取得する(ステップS3)。なお、図15中では、フレキソ印刷版12Aの製版後にモデル構築部93による製版条件25の取得が行われているが、製版条件25の取得のタイミングは特に限定されず、例えばフレキソ印刷版12Aの製版前や製版中であってもよい。
フレキソ印刷版12Aの版胴34へのセット後、印刷開始操作がなされると、フレキソ印刷装置30Aは、所定の印刷条件27にてフレキソ印刷版12Aにより被印刷媒体13に解析チャート95を印刷して印刷物14Aを生成する(ステップS4)。この印刷物14Aは、測定装置40Aにセットされる。
この際に、モデル構築部93は、フレキソ印刷装置30Aから解析チャート95を印刷した際の印刷条件27を取得する(ステップS5)。なお、図15中では、解析チャート95の印刷後にモデル構築部93による印刷条件27の取得が行われているが、印刷条件27の取得のタイミングは特に限定されず、例えば解析チャート95の印刷前や印刷中であってもよい。
印刷物14Aの測定装置40Aへのセット後、測定開始操作がなされると、測定装置40Aは、印刷物14Aに印刷された解析チャート95を読み取り、この解析チャート95の特性を測定して第2特性データ97を得る(ステップS6)。測定装置40Aは、第2特性データ97をモデル構築部93へ出力する。
以下、製版条件25及び印刷条件27の少なくとも一方を変えながら、フレキソ印刷版12Aの製版及び製版条件25の取得と、解析チャート95の印刷及び印刷条件27の取得と、解析チャート95の測定及び第2特性データ97の取得と、が繰り返し実行される(ステップS7,S8のいずれかでYES、ステップS2からステップS6)。なお、製版条件25の取得や印刷条件27の取得は条件が変更された場合にのみ行ってもよい。
予め定めた全ての製版条件25及び印刷条件27での第2特性データ97の取得が完了すると(ステップS7,S8の両方でNO)、モデル構築部93は、複数の製版条件25及び印刷条件27と、条件毎の第2特性データ97との関係を前述の公知のモデル化手法によってモデル化する。これにより、製版条件25及び印刷条件27と、第2特性データ97(画質特性データ98及び色特性データ99)と、の対応関係を示すフレキソ印刷特性モデル92が生成される(ステップS9)。
以上で、モデル構築システム90によるフレキソ印刷特性モデル92の生成処理が完了する。
<製版条件及び印刷条件の修正>
図16は、印刷システム10における製版条件25及び印刷条件27の修正処理(本発明の管理方法に相当)の流れを示すフローチャートである。図17は、製版条件25及び印刷条件27の修正処理を説明するための説明図である。
図16及び図17に示すように、印刷システム10では、予め、前述のモデル構築システム90により生成されたフレキソ印刷特性モデル92の取得がモデル取得部52により実行されている。これにより、モデル取得部52により取得されたフレキソ印刷特性モデル92が記憶部53に記憶されている(ステップS11、記憶ステップに相当)。
新規の原稿画像16の印刷を行う場合や印刷する原稿画像16を変更する場合など、印刷する原稿画像16に対して最適な製版条件25及び印刷条件27を求めるタイミングにおいて(ステップS12でYES)、最初に、原稿画像16の画像データが測定装置40に入力される。
測定装置40に原稿画像16の画像データが入力されると、評価領域検出部45が作動する。評価領域検出部45は、原稿画像16の画像データに基づき、前述の図14(A)〜(E)を用いて説明した方法等により、原稿画像16から複数(1つでも可)の評価領域18を検出する(図13参照、ステップS13)。この評価領域18の検出結果は、測定装置40のメモリ等に記憶される。
評価領域18の検出後、オペレータは、評価領域検出部45により検出された各評価領域18に対応する評価項目の目標値を決定して、図示しない操作部にて目標値設定操作を行う。この目標値設定操作を受けて、目標値設定部54は、図17中の括弧付き数字(1)に示すように、第1特性データ42(画質特性データ98S及び色特性データ99S)の目標値Pを設定し、この目標値Pを条件決定部55と条件修正部56とにそれぞれ出力する(ステップS14、目標値設定ステップ)。
条件決定部55は、目標値設定部54から入力された目標値Pに基づき、記憶部53内のフレキソ印刷特性モデル92を参照する。そして、条件決定部55は、このフレキソ印刷特性モデル92を使った前述の計算を行って、図17中の括弧付き数字(2)及び(3)に示すように、目標値Pに対応する初期の製版条件25及び印刷条件27(初期値)を決定する(ステップS15、条件決定ステップ)。これら初期の製版条件25及び印刷条件27は、それぞれフレキソ製版装置20、フレキソ印刷装置30に設定される。
初期の製版条件25及び印刷条件27の設定後、原稿画像16の画像データがフレキソ製版装置20に入力される(ステップS16)。
原稿画像16の画像データの入力後に製版開始操作がなされると、フレキソ製版装置20は、画像データに基づき、初期の製版条件25にて原稿画像16に対応するレリーフ19をフレキソ版材Fに形成する。これにより、原稿画像16に対応するフレキソ印刷版12が製版される(ステップS17)。このフレキソ印刷版12は、フレキソ印刷装置30の版胴34(図7参照)にセットされる。
フレキソ印刷版12の版胴34へのセット後、印刷開始操作がなされると、フレキソ印刷装置30は、初期の印刷条件27にてフレキソ印刷版12により被印刷媒体13に原稿画像16を印刷して印刷物14を生成する(ステップS18)。この印刷物14は、測定装置40にセットされる。
印刷物14の測定装置40へのセット後、測定開始操作がなされると、測定装置40は、先にメモリに格納された各評価領域18の検出結果に基づき、印刷物14に印刷された原稿画像16内での各評価領域18の位置を求める。次いで、測定装置40は、印刷物14に印刷された原稿画像16内の評価領域18ごとに、各領域で評価可能な評価項目(図13参照)について測定を行う。これにより、原稿画像16の特性を示す第1特性データ42(画質特性データ98S及び色特性データ99S)が得られる(ステップS19)。
測定装置40により測定された第1特性データ42は、図17中の括弧付き数字(4)に示すように、測定装置40から条件修正部56に出力される。これにより、条件修正部56は、測定装置40から第1特性データ42を取得する(本発明の特性データ取得ステップに相当)。
次いで、条件修正部56は、測定装置40から得られた実測値である第1特性データ42(画質特性データ98S及び色特性データ99S)と、目標値P(画質特性データ98S及び色特性データ99S)との誤差(差分)を求める(ステップS20)。そして、条件修正部56は、この誤差が予め定めた許容範囲を超えるか否かを判断した結果に基づき、初期の製版条件25及び印刷条件27の少なくともいずれか一方の修正を行うか否かを決定する(ステップS21、本発明の修正決定ステップに相当)。なお、誤差が許容範囲内であると条件修正部56が判断した場合には、初期の製版条件25及び印刷条件27の修正は行われない(ステップS21でNO)。
一方、条件修正部56は、上述の誤差が許容範囲を超えると判断した場合、すなわち、初期の製版条件25及び印刷条件27の少なくともいずれか一方の修正を行うことを決定した場合には(ステップS21でYES)、図17中の括弧付き数字(5)に示すように、前述の補正値100を求める。そして、条件修正部56は、補正値100を目標値Pに加算した値を「補正した目標値P」とする。次いで、条件修正部56は、「補正した目標値P」に基づき、フレキソ印刷特性モデル92を参照して前述の計算を行う。これにより、図17中の括弧付き数字(6)に示すように、初期の製版条件25及び印刷条件27の少なくともいずれか一方(本実施形態では両方の修正を行う)を修正した修正製版条件25a及び修正印刷条件27aが決定する(ステップS22、条件修正ステップ)。
条件修正部56により決定された修正製版条件25a及び修正印刷条件27aは、図17中の括弧付き数字(7)及び(8)に示すように、フレキソ製版装置20及びフレキソ印刷装置30にそれぞれ設定される(ステップS23)。
以上により、印刷システム10における製版条件25及び印刷条件27の修正処理が完了する。なお、目標値P(画質特性データ98S及び色特性データ99Sの少なくとも一方)を変えながら、ステップS14からステップS23までの処理を複数回繰り返し実行してもよい。
製版条件25及び印刷条件27の修正処理後、原稿画像16の印刷を行う場合、フレキソ製版装置20は、原稿画像16の画像データに基づき、修正製版条件25aにてフレキソ印刷版12の製版を行う。そして、フレキソ印刷装置30は、原稿画像16のフレキソ印刷版12を用いて、修正印刷条件27aにて原稿画像16の印刷を行う(ステップS24)。
以下、新規の原稿画像16の印刷を行う場合や印刷する原稿画像16を変更する場合などに、前述の各処理(ステップS12からステップS23)が繰り返し実行され、新たな修正製版条件25a及び修正印刷条件27aに基づき原稿画像16の印刷を行うことができる。
[本実施形態の効果]
以上のように本実施形態の印刷システム10では、予め生成されたフレキソ印刷特性モデル92を参照して製版条件25及び印刷条件27を修正するか否かを決定することができるので、フレキソ印刷特性モデル92を参照せずにオペレータの経験等に基づいて修正を行う場合と比較して、フレキソ印刷において高品質な印刷物を得るための製版条件と印刷条件(修正製版条件25a、修正印刷条件27a)とを容易に把握することができる。また、原稿画像16の評価領域18から検出した第1特性データ42に基づき製版条件25及び印刷条件27の修正を行うので、印刷する原稿画像16に適した製版条件25及び印刷条件27を把握することができる。これにより、フレキソ印刷において高品質な印刷物14が得られる。
さらに、印刷システム10では、上記先行技術文献に記載されているような印刷条件だけでなく、製版条件の修正を行うことができるので、フレキソ印刷における印刷物の像構造と色再現とを両立することができ、高品質な印刷物14が得られる。
[別実施形態の印刷システム]
上記実施形態では、1つの原稿画像16の評価領域18から検出した第1特性データ42に基づき、製版条件25及び印刷条件27の修正を行うか否かを決定する。この際に、原稿画像16は顧客が印刷を希望する画像であるので、1つの原稿画像16内に、必ずしも印刷物14の像構造及び色再現などの印刷再現を評価するのに必要な評価項目(以下、主要な評価項目という)を含む評価領域18が存在するとは限らない。そこで、別実施形態の印刷システムでは、複数の原稿画像16の評価領域18から検出した第1特性データ42を記憶しておき、予め設定された全ての評価項目に対応する第1特性データ42が得られた場合に、製版条件25及び印刷条件27の修正を行うか否かを決定する。
図18は、別実施形態の印刷システムを構成する管理装置120の機能ブロック図である。なお、別実施形態の印刷システムは、管理装置120の構成が上記実施形態の管理装置50の構成と一部異なる点を除けば、上記実施形態の印刷システム10と基本的に同じ構成である。このため、上記第実施形態と機能・構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
管理装置120は、上記実施形態の管理装置50と同様のモデル取得部52及び記憶部53の他に、目標値設定部122と、条件決定部123と、条件修正部124と、を有している。
目標値設定部122は、前述の図11に示した評価項目の中で、例えば主要な評価項目や顧客の要望に応じた評価項目に対応する第1特性データ42の目標値P1を設定する。すなわち、目標値設定部122は、上記実施形態のように評価領域検出部45が事前に検出した評価領域18に含まれる評価項目ではなく、顧客側で予め定めた評価項目に対応する第1特性データ42の目標値P1を設定する。なお、目標値P1の設定は、上記実施形態の目標値P1の設定と同様に、顧客のオペレータが図示しない操作部に入力する目標値設定操作の内容に従って行われる。
条件決定部123は、目標値設定部122から入力された目標値P1に基づき、フレキソ印刷特性モデル92を参照して、目標値P1に対応する初期の製版条件25及び印刷条件27をそれぞれ決定する。そして、条件決定部123は、決定した製版条件25をフレキソ製版装置20に出力し、決定した印刷条件27をフレキソ印刷装置30に出力する。なお、目標値P1に対応する初期の製版条件25及び印刷条件27の具体的な決定方法は、上記実施形態と同じであるので、ここでは具体的な説明は省略する。
別実施形態のフレキソ製版装置20には、複数種類の原稿画像16の画像データがそれぞれ任意のタイミングで入力される。なお、フレキソ製版装置20には、原稿画像16の画像データの入力前に、条件決定部123にて決定された初期の製版条件25が設定されている。フレキソ製版装置20は、複数種類の原稿画像16の画像データごとに、前述の初期の製版条件25にてフレキソ印刷版12を形成する。なお、図中では、複数種類の原稿画像16として、原稿画像16(1)及び原稿画像16(2)及び原稿画像16(3)からなる3種類の原稿画像16を例に挙げて説明しているが、原稿画像16の種類数は特に限定はされない。
別実施形態のフレキソ印刷装置30には、フレキソ製版装置20により形成された複数種類の原稿画像16ごとのフレキソ印刷版12がそれぞれ任意のタイミングでセットされる。なお、フレキソ製版装置20には、フレキソ印刷版12がセットされる前に、条件決定部123にて決定された初期の印刷条件27が設定されている。フレキソ印刷装置30は、複数種類の原稿画像16ごとのフレキソ印刷版12を用いて、前述の初期の印刷条件27にて複数種類の原稿画像16を被印刷媒体13にそれぞれ印刷して、複数種類の原稿画像16の印刷物14をそれぞれ生成する。
例えば、フレキソ印刷装置30は、原稿画像16(1)に対応するフレキソ印刷版12がセットされた場合、前述の初期の印刷条件27にて原稿画像16(1)の印刷物14(1)を生成する。以下同様に、フレキソ印刷装置30は、原稿画像16(2)に対応するフレキソ印刷版12がセットされた場合には原稿画像16(2)の印刷物14(2)を生成し、原稿画像16(3)に対応するフレキソ印刷版12がセットされた場合には原稿画像16(3)の印刷物14(3)を生成する。
別実施形態の測定装置40には、前述のフレキソ印刷装置30により生成された複数種類の原稿画像16ごとの印刷物14がそれぞれ任意のタイミングでセットされる。測定装置40は、各印刷物14から複数種類の原稿画像16のそれぞれの特性を測定して第1特性データ42を取得し、複数種類の原稿画像16ごとの第1特性データ42を条件修正部124へ出力する。
また、別実施形態の測定装置40の評価領域検出部45には、複数種類の原稿画像16ごとの印刷物14がそれぞれセットされる前に、複数種類の原稿画像16の画像データが予め入力される。これにより、評価領域検出部45は、複数種類の原稿画像16の画像データを解析して、前述の図14(A)〜(E)を用いて説明した方法等により、複数種類の原稿画像16からそれぞれ評価領域18を検出する。これら評価領域18の検出結果は、測定装置40のメモリ等に記憶される。
測定装置40は、例えば印刷物14(1)がセットされた場合、前述のメモリに格納された原稿画像16(1)内の評価領域18の検出結果に基づき、原稿画像16(1)内の評価領域18の位置を求める。次いで、測定装置40は、原稿画像16(1)内の評価領域18に対応する評価項目(図13参照)についての測定を行う。これにより、原稿画像16(1)の特性を示す第1特性データ42(1)が得られる。以下同様に、測定装置40は、印刷物14(2)がセットされた場合、原稿画像16(2)の特性を示す第1特性データ42(2)を得る。また、測定装置40は、印刷物14(3)がセットされた場合、原稿画像16(3)の特性を示す第1特性データ42(3)を得る。そして、測定装置40は、複数種類の原稿画像16ごとの第1特性データ42を条件修正部124へ出力する。
図19は、別実施形態の条件修正部124による初期の製版条件25及び印刷条件27の修正処理を説明するための説明図である。図19に示すように、条件修正部124は、目標値設定部122にて設定された評価項目ごとの目標値P1の全てに対応する第1特性データ42を取得した場合、初期の製版条件25及び印刷条件27の修正を行うか否かを決定する。この条件修正部124には、評価項目情報記憶部127と、第1特性データ記憶部128とが設けられている。
評価項目情報記憶部127には、目標値設定部122により設定された目標値P1の評価項目に関する情報が記憶される。例えば目標値設定部122により、「粒状性」及び「バンディング」及び「最大濃度」及び「色再現域広さ」の評価項目に対応する第1特性データ42の目標値P1が設定された場合、これらの評価項目に関する情報が評価項目情報記憶部127に記憶される。
第1特性データ記憶部128には、測定装置40から入力される複数種類の原稿画像16ごとの第1特性データ42が記憶される。ここでは、原稿画像16(1)の第1特性データ42(1)に含まれる評価項目が「粒状性」及び「色再現域広さ」であり、原稿画像16(2)の第1特性データ42(2)に含まれる評価項目が「バンディング」であり、原稿画像16(3)の第1特性データ42(3)に含まれる評価項目が「最大濃度」である。
条件修正部124は、第1特性データ42(1)が第1特性データ記憶部128に記憶された場合、第1特性データ42(1)に含まれる評価項目と、評価項目情報記憶部127に記憶されている評価項目とを比較して、評価項目情報記憶部127内の評価項目の全てに対応する第1特性データ42を取得したか否かを判定する。ここでは、「バンディング」及び「最大濃度」の評価項目に対応する第1特性データ42が未取得であるので、条件修正部124は、初期の製版条件25及び印刷条件27の修正を行うか否かの決定を行わない。
次いで、条件修正部124は、第1特性データ42(2)が第1特性データ記憶部128に記憶された場合、第1特性データ42(1),42(2)に含まれる評価項目と、評価項目情報記憶部127に記憶されている評価項目とを比較して、評価項目情報記憶部127内の評価項目の全てに対応する第1特性データ42を取得したか否かを判定する。依然として、「最大濃度」の評価項目に対応する第1特性データ42が未取得であるので、条件修正部124は、初期の製版条件25及び印刷条件27の修正を行うか否かの決定を行わない。
そして、条件修正部124は、第1特性データ42(3)が第1特性データ記憶部128に記憶された場合、第1特性データ42(1),42(2),42(3)に含まれる評価項目と、評価項目情報記憶部127に記憶されている評価項目とを比較して、評価項目情報記憶部127内の評価項目の全てに対応する第1特性データ42を取得したか否かを判定する。評価項目情報記憶部127内の評価項目の全てに対応する第1特性データ42、すなわち、目標値設定部122にて設定された評価項目ごとの目標値P1の全てに対応する第1特性データ42が取得されているので、条件修正部124は、初期の製版条件25及び印刷条件27の修正を行うか否かの決定を行う。
条件修正部124は、測定装置40から得られた実測値である第1特性データ42[第1特性データ42(1),42(2),42(3)]と、目標値P1との誤差(差分)を求め、誤差が予め定めた許容範囲を超えるか否かを判断する。
次いで、条件修正部124は、誤差が許容範囲を超えると判断した場合には、初期の製版条件25及び印刷条件27の少なくともいずれか一方の修正を行うことを決定し、補正値100(ここでは「目標値P1−実測値」)を目標値P1に加算した値を「補正した目標値P1」とする。そして、条件修正部124は、「補正した目標値P1」に基づき、フレキソ印刷特性モデル92を参照して、初期の製版条件25を修正した修正製版条件25a及び初期の印刷条件27を修正した修正印刷条件27aの少なくともいずれか一方を決定する。これ以降の処理は上記実施形態と同じであるので、具体な説明は省略する。
[別実施形態の印刷システムの作用]
次に、図20を用いて、上記構成の別実施形態の印刷システムの作用、特に製版条件25及び印刷条件27の修正について説明する。図20は、別実施形態の印刷システムにおける製版条件25及び印刷条件27の修正処理(本発明の管理方法に相当)の流れを示すフローチャートである。
図20に示すように、ステップS11からステップS12までの処理は、上記実施形態と同じであるので、ここでは具体的な説明を省略する。原稿画像16に対して最適な製版条件25及び印刷条件27を求める場合(ステップS12でYES)、顧客のオペレータは、前述の図11に示した評価項目の中で主要な評価項目や顧客の要望に応じた評価項目に対応する第1特性データ42の目標値P1を決定する。
次いで、オペレータは、図示しない操作部にて目標値設定操作を行う。この目標値設定操作を受けて、第1特性データ42の目標値P1を設定し、この目標値P1を条件決定部123と条件修正部124とにそれぞれ出力する(ステップS14A、本発明の目標値設定ステップに相当)。条件修正部124は、目標値P1の評価項目に関する情報を評価項目情報記憶部127に記憶させる。
条件決定部123は、目標値設定部54から入力された目標値P1に基づき、記憶部53内のフレキソ印刷特性モデル92を参照して、目標値P1に対応する初期の製版条件25及び印刷条件27(初期値)を決定する(ステップS15A、本発明の条件決定ステップに相当)。初期の製版条件25はフレキソ製版装置20に設定され、初期の印刷条件27はフレキソ印刷装置30に設定される。
初期の製版条件25及び印刷条件27の設定後、原稿画像16(1)の画像データがフレキソ製版装置20に入力される(ステップS16A)。また、原稿画像16(1)の画像データは、測定装置40の評価領域検出部45に入力される。評価領域検出部45は、原稿画像16(1)の画像データに基づき、前述の図14(A)〜(E)を用いて説明した方法等により、原稿画像16(1)から評価領域18を検出する。この評価領域18の検出結果は、測定装置40のメモリ等に記憶される。
原稿画像16(1)の画像データの入力後に製版開始操作がなされると、上記実施形態と同様に、フレキソ製版装置20が初期の製版条件25にて原稿画像16(1)に対応するフレキソ印刷版12を製版する(ステップS17A)。次いで、フレキソ印刷装置30が初期の印刷条件27にてフレキソ印刷版12を用いて被印刷媒体13に原稿画像16(1)を印刷して印刷物14(1)を生成する(ステップS18A)。この印刷物14(1)は、測定装置40にセットされる。
印刷物14(1)の測定装置40へのセット後、測定開始操作がなされると、測定装置40は、先にメモリに格納された評価領域18の検出結果に基づき、印刷物14(1)に印刷された原稿画像16(1)内の評価領域18の位置を求める。次いで、測定装置40は、原稿画像16(1)内の評価領域18で評価可能な評価項目(図13参照)について測定を行う。これにより、原稿画像16(1)の特性を示す第1特性データ42(1)が得られる(ステップS19A)。この第1特性データ42(1)は、測定装置40から条件修正部124に入力された後、第1特性データ記憶部128に記憶される。
条件修正部124は、第1特性データ42(1)が第1特性データ記憶部128に記憶された場合、第1特性データ42(1)に含まれる評価項目と、評価項目情報記憶部127に記憶されている評価項目とを比較して、評価項目情報記憶部127内の評価項目の全てに対応する第1特性データ42を取得したか否かを判定する(ステップS19B)。条件修正部124は、未取得であると判定した場合、初期の製版条件25及び印刷条件27の修正を行うか否かの決定を行わず(ステップS19BでNO)、新たな第1特性データ42が第1特性データ記憶部128に記憶されるまで待機する(ステップS19C)。
次いで、任意のタイミングで原稿画像16(2)の画像データがフレキソ製版装置20に入力されると(ステップS16A)、前述のステップS17AからステップS19Aまでの処理が繰り返し実行され、原稿画像16(2)の特性を示す第1特性データ42(2)が第1特性データ記憶部128に記憶される。
条件修正部124は、第1特性データ42(2)が第1特性データ記憶部128に記憶された場合、第1特性データ42(1),(2)に含まれる評価項目と、評価項目情報記憶部127に記憶されている評価項目とを比較して、評価項目情報記憶部127内の評価項目の全てに対応する第1特性データ42を取得したか否かを再度判定する(ステップS19B)。条件修正部124は、依然として未取得であると判定した場合、初期の製版条件25及び印刷条件27の修正を行うか否かの決定を行わず、新たな第1特性データ42が第1特性データ記憶部128に記憶されるまで再度待機する(ステップS19BでNO、ステップS19C)。
以下、条件修正部124が評価項目情報記憶部127内の評価項目の全てに対応する第1特性データ42を取得したと判定するまで、前述のステップS19C、及びステップS16AからステップS19Bまでの処理が繰り返し実行される。
条件修正部124は、評価項目情報記憶部127内の評価項目の全てに対応する第1特性データ42、すなわち、目標値設定部122にて設定された評価項目ごとの目標値P1の全てに対応する第1特性データ42を取得した場合、初期の製版条件25及び印刷条件27の修正を行うか否かの決定を行う(ステップS19BでYES)。
これ以降の処理は、上記実施形態で説明したステップS20からステップS24までの処理と基本的に同じであるので、ここでは具体的な説明は省略する。
[別実施形態の効果]
以上のように別実施形態の印刷システムでは、目標値設定部122にて設定された第1特性データ42の目標値P1の全てに対応する第1特性データ42を取得した場合、製版条件25及び印刷条件27を修正するか否かを決定するため、前述の主要な評価項目あるいは顧客の要望に応じた評価項目を全て含む第1特性データ42に基づき、製版条件25及び印刷条件27の修正を行うか否かを決定することができる。また、上実施形態で説明した効果と同様の効果が得られる。
[別実施形態の変形例]
上記別実施形態では、条件修正部124が評価項目情報記憶部127内の評価項目の全て(目標値P1の全て)に対応する第1特性データ42を取得するまで、新たな原稿画像16に対応する第1特性データ42の第1特性データ記憶部128への記憶が繰り返し実行される。このため、同一の評価項目に対応する第1特性データ42が第1特性データ記憶部128内に複数記憶される場合がある。
図21(A)及び図21(B)は、同一の評価項目に対応する第1特性データ42が第1特性データ記憶部128内に複数記憶された場合の条件修正部124の処理を説明するための説明図である。図21(A)に示すように、条件修正部124は、例えば評価項目「最大濃度」を含む第1特性データ42(1),(2)が第1特性データ記憶部128内に記憶された場合、第1特性データ42(1),(2)の平均値である第1特性データ平均値42(A)を求める。この場合に条件修正部124は、第1特性データ平均値42(A)に含まれる評価項目と、評価項目情報記憶部127に記憶されている評価項目とを比較する。
このように条件修正部124は、同一の評価項目に対応する第1特性データ42が第1特性データ記憶部128内に複数記憶された場合、これら第1特性データ42の平均値である第1特性データ平均値42(A)を求める。そして、条件修正部124は、第1特性データ平均値42(A)を評価項目情報記憶部127に記憶されている評価項目との比較に用いる。なお、同一の評価項目が複数種類ある場合には、評価項目の種類ごとに第1特性データ平均値42(A)を求めればよい。これにより、同一の評価項目に対応する第1特性データ42が複数ある場合には、これらの平均値に基づき、製版条件25及び印刷条件27を修正するか否かを決定することができる。
また、同一の評価項目に対応する第1特性データ42の平均値を求める代わりに、時間的に新しい第1特性データ42の重みを増加させた第1特性データ42の重み付け平均値を求めてもよい。すなわち、条件修正部124は、同一の評価項目に対応する第1特性データ42が第1特性データ記憶部128内に複数記憶された場合、時間的に新しい第1特性データ42ほど重み係数を高く設定して、各第1特性データ42の重み付け平均を行う。これにより、時間的に新しい第1特性データ42の重みを高くした第1特性データ42の重み付け平均値に基づき、製版条件25及び印刷条件27を修正するか否かを決定することができる。
[その他]
上記実施形態の評価領域検出部45(図12参照)は、印刷システム10に入力される原稿画像16の画像データを解析して各評価領域18の検出を行っているが、例えば、印刷物14に印刷された原稿画像16を測定装置40が読み取って得られた読取結果を解析して各評価領域18の検出を行ってもよい。なお、上記の別実施形態についても同様である。
上記実施形態では、製版条件25の例を図4に示し、印刷条件27の例を図8に示しているが、製版条件25及び印刷条件27の個々の条件は図4及び図8に例示されているものに限定されず、公知の他の条件を含んでいてもよい。また、画質特性データ98及び色特性データ99の例を図11に示したが、画質特性データ98及び色特性データ99の項目は図11に例示されているものに限定されず、公知の他の項目を含んでいてもよい。なお、上記の別実施形態についても同様である。
上記実施形態では、モデル構築システム90において公知のモデル化手法によるモデル化を行うことでフレキソ印刷特性モデル92を生成しているが、製版条件25及び印刷条件27と第2特性データ97とを対応付けてなるフレキソ印刷特性モデル92を生成可能であればその方法はモデル化に限定されるものではない。なお、上記の別実施形態についても同様である。
上記実施形態では、印刷システム10がフレキソ製版装置20とフレキソ印刷装置30と測定装置40と管理装置50との5つの異なる装置により構成されているが、これら5つの異なる装置の少なくとも2つが一体化していてもよく、例えば、管理装置50が他の装置と一体化していてもよい。また、前述の評価領域検出部45(図12参照)が管理装置50に設けられていてもよい。なお、上記の別実施形態についても同様である。
上記実施形態では、1つの管理装置50がモデル取得部52と記憶部53と目標値設定部54と条件決定部55と条件修正部56とを有している場合について説明したが、これら各部を複数の管理装置50に分散して設けていてもよい。なお、上記の別実施形態についても同様である。
上記実施形態では、初期の製版条件及び印刷条件に従って印刷された1つの原稿画像を測定し、この測定で得られた第1特性データと目標値とを用いて、初期の製版条件及び印刷条件の修正を行うか否かの決定、並びに各条件の修正を行っている。これに対して、例えば、初期の製版条件及び印刷条件に従って複数の原稿画像(同一あるいは非同一の原稿画像)を印刷し、各印刷物をそれぞれ測定して得られた複数の第1特性データと目標値とを総合的に判断して、初期の製版条件及び印刷条件の修正を行うか否かの決定、並びに各条件の修正を行ってもよい。なお、上記の別実施形態についても同様である。
更に、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。