JP6310213B2 - 金属と樹脂との複合体及びその製造方法 - Google Patents

金属と樹脂との複合体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属よりなる金属部と樹脂よりなる樹脂部とが接着された複合体及びその製造方法に関するものである。
今日、異なる材料を接着させ、それらの材料の特性を生かしたさまざまな複合材料が開発されている。特に、金属と樹脂とは互いの特性が大きく異なることから、これらからなる複合材料は、今までにない特徴を有しているため、今後、より用途が拡大していくものと思われる。
金属と樹脂とからなる複合材料において、金属と樹脂とを接着する方法としては、一般的に、金属表面に凹凸を形成し、その凹凸によるアンカー効果により金属と樹脂とを接着する方法や、接着剤を介して金属と樹脂とを接着する方法等がある。なお、接着剤としては、特許文献1に記載のようなものがある。
しかし、アンカー効果による接着は、接着力が弱く、特に、温度の昇降を繰り返すサーマル試験を行うと、金属と樹脂とが界面で破断してしまう問題があった。また、接着剤を介する接着は、界面に接着剤層を形成する必要があり、工程数が多くなる問題があった。
上記以外の方法として、特許文献2に記載のように、エポキシ樹脂をポリアリーレンサルファイド系樹脂中に配合して、金属と樹脂とを接着する方法や、特許文献3に記載のように、金属表面にエポキシ樹脂を熱変性させた膜を形成し、金属と樹脂とを接着する方法が提案されている。しかし、これらの方法では、十分な接着性を確保することができなかった。
そこで、先に、本出願人は、金属部に付与された極性官能基と樹脂に付与された接着性官能基との相互作用により、金属部と樹脂部とが接着された複合体及びその製造方法を提案した(特許文献4)。これによれば、金属よりなる金属部と樹脂よりなる樹脂部とが接着剤を用いることなく強固に接着された複合体を得ることができた。
特開2000−273168号公報 特開平5−214071号公報 特開2004−58646号公報 特開2010−173274号公報
しかしながら、上記の複合体及びその製造方法(特許文献4)でも、金属の種類によっては高い接着性能が得られない場合があることが、その後の検討により分かってきた。
そこで、本発明の目的は、金属の種類に対応した結合性の高い極性官能基を決定して付与し、金属部と樹脂部とが接着剤を用いることなく強固に接着された複合体を得ることにある。ここで、金属部と樹脂部とが強固に接着されているとは、両部を相反する方向に引張った場合に、両部からなる複合体の破断が両部の界面で生じないように、両部が接着されていることである。
1.金属よりなる金属部の表面に極性官能基を付与し、樹脂よりなる樹脂部の少なくとも表面に前記極性官能基と相互に作用し合う接着性官能基を付与し、前記極性官能基と前記接着性官能基との相互作用により、前記金属部と前記樹脂部とを接着させる金属と樹脂との複合体の製造方法において、
前記金属部の表面に最初に付与する極性官能基の種類は、前記金属の酸化物又は水酸化物の等電点と極性官能基の解離定数とから次の(a)、(b)又は(c)の場合分けで求められる値を相互作用パラメーターとし、該相互作用パラメーターが1以上となる極性官能基に決定し、決定した極性官能基を前記金属部の表面に最初に付与するステップを含むことを特徴とする金属と樹脂との複合体の製造方法。
(a)解離定数が7を超える場合は、解離定数から等電点を引いた値
(b)解離定数が7未満の場合は、等電点から解離定数を引いた値
(c)解離定数が7の場合は、等電点が7未満であれば解離定数から等電点を引いた値、等電点が7を超えれば等電点から解離定数を引いた値
ここで、「最初に付与する」とは、その後に付与する第2の極性官能基が必ずあることを意味しない。第2の極性官能基はなくてもよいし、あってもよい。
2.金属よりなる金属部の表面に極性官能基を付与し、樹脂よりなる樹脂部の少なくとも表面に前記極性官能基と相互に作用し合う接着性官能基を付与し、前記極性官能基と前記接着性官能基との相互作用により、前記金属部と前記樹脂部とを接着させる金属と樹脂との複合体の製造方法において、
前記金属部の表面に最初に付与する極性官能基の種類は、前記金属の酸化物又は水酸化物の等電点と極性官能基の解離定数とから次の(a)、(b)又は(c)の場合分けで求められる値を相互作用パラメーターとし、該相互作用パラメーターが1以上となるアミノ基以外の第1の極性官能基に決定し、決定した第1の極性官能基を前記金属部の表面に最初に付与するステップと、
(a)解離定数が7を超える場合は、解離定数から等電点を引いた値
(b)解離定数が7未満の場合は、等電点から解離定数を引いた値
(c)解離定数が7の場合は、等電点が7未満であれば解離定数から等電点を引いた値、等電点が7を超えれば等電点から解離定数を引いた値
その後、前記金属部の表面に第2の極性官能基としてアミノ基を付与するステップと、を含むことを特徴とする金属と樹脂との複合体の製造方法。
3.金属よりなる金属部と樹脂よりなる樹脂部とが接着された金属と樹脂との複合体であって、
前記金属部は表面に、前記金属の酸化物又は水酸化物の等電点と極性官能基の解離定数とから次の(a)、(b)又は(c)の場合分けで求められる値を相互作用パラメーターとし、該相互作用パラメーターが1以上となるアミノ基以外の第1の極性官能基が付与されており、第2の極性官能基としてアミノ基が第1の極性官能基に積層されて付与されているものであり、
(a)解離定数が7を超える場合は、解離定数から等電点を引いた値
(b)解離定数が7未満の場合は、等電点から解離定数を引いた値
(c)解離定数が7の場合は、等電点が7未満であれば解離定数から等電点を引いた値、等電点が7を超えれば等電点から解離定数を引いた値
前記樹脂は前記極性官能基と相互に作用し合う接着性官能基を含む接着性改質剤が配合されたものであり、
前記極性官能基と前記接着性官能基との相互作用により、前記金属部と前記樹脂部とが接着されていることを特徴とする金属と樹脂との複合体。
金属部の表面に極性官能基が付与される態様には、表面(金属)との化学結合等により、極性官能基が直接表面に設けられて、極性官能基が付与される態様と、極性官能基を含む化合物の層が表面に形成されて、極性官能基が付与される態様とがある。そして、本明細書において、金属部の表面に極性官能基が付与されるとは、この両方の態様が含まれる。
前記接着性官能基としては、エポキシ基、ヒドロキシル基、シラノール基、カルボキシル基、イソシアネート基、スルフヒドリル基又はオキサゾリン基を例示できる。
極性官能基と接着性官能基との相互作用は、極性官能基と接着性官能基との間に働く化学結合であり、具体的には、水素結合、共有結合、イオン結合、ファンデルワールス結合等である。
上記のとおり、金属部の表面に最初に付与する極性官能基の種類は、金属の酸化物又は水酸化物の等電点と極性官能基の解離定数とから相互作用パラメーターを求め、該相互作用パラメーターが1以上となる極性官能基に決定することにより、金属と極性官能基とのイオン結合が高くなり、もって金属部と樹脂部との接着性能が高くなると考えられる。
また、そうして決定した極性官能基がアミノ基以外である場合には、金属部の表面に、決定した極性官能基を最初に付与した後、第2の極性官能基としてアミノ基を付与することにより、そのアミノ基が、樹脂部の接着性官能基と特に強い共有結合をするため、さらに強固な接着性能が得られる。
本発明によれば、金属の種類に対応した結合性の高い極性官能基を決定して付与し、もって金属部と樹脂部とが接着剤を用いることなく強固に接着された複合体を得ることができる。
本発明の金属と樹脂との複合体の金属部と樹脂部との界面付近の断面模式図である。 (a)は金属部の表面に最初にアミノ基又はカルボキシル基を付与する場合に、金属の酸化物又は水酸化物の等電点によって接着性能が変化することを説明する説明図、(b)はその変化を観念的にグラフ化した説明図である。
上記手段1.〜3.における各要素の態様を、以下に例示する。
1.金属部
金属部の態様としては、特に限定はされないが、板状、箔状、塊状等が例示でき、複合体の用途にあわせて、加工機等により、予め所定形状に形成されていてもよいし、樹脂部との接着後に所定形状に形成されてもよい。
金属部に用いられる金属としては、特に限定はされないが、銅、ニッケル、錫、金、銀、アルミニウム、鉄、マグネシウム、クロム、タングステン、亜鉛、鉛、マンガン、チタン、コバルト等及びこれらの合金であるステンレス、真鍮等が例示できる。
金属部の表面に最初に付与される極性官能基として前記のとおり決定する際の候補になるものは、特に限定はされないが、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、シラノール基、イソシアネート基、スルフヒドリル基、オキサゾリン基等が例示できる。カルボキシル基及びアミノ基の少なくとも一方であると、金属部表面に付与しやすい点で好ましい。
金属部表面に極性官能基を付与する表面処理方法としては、特に限定はされないが、極性官能基を含む化合物又はその誘導体等を用いた、塗布処理、フレーム処理、蒸着処理、プラズマ処理等が例示できる。
極性官能基を含む化合物又はその誘導体としては、特に限定はされないが、カルボキシル基を含む化合物として、アクリル酸の単量体、アクリル酸の重合体、アクリル酸とマレイン酸の共重合体、メタクリル酸の単量体、メタクリル酸の重合体等が例示でき、アミノ基を含む化合物としては、アリルアミンの単量体、アリルアミンの重合体等が例示でき、カルボキシル基とアミノ基の誘導体としては、カプロラクタム、ポリアミド等が例示できる。
上記表面処理方法の一つであるプラズマ処理は、本出願人が特開2011−140167号公報で開示したように、放電用ガス中でプラズマを発生させて、前記プラズマにより生成したラジカルで有機物を活性化させ、その活性化有機物で前記金属部の表面に極性官能基を付与する方法である。
より詳しくは、プラズマ装置に放電用ガスとしてのアルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを供給し、装置内でプラズマを発生させて、有機物であるアクリル酸あるいはアリルアミン、または有機シラン化合物などを活性化させる。尚、プラズマ発生は大気圧下でも減圧下でも良いが、簡易性、作業性を考えると大気圧下の方が良い。
極性官能基を含む化合物の層が表面に形成されて極性官能基が付与される態様としては、活性化されたアクリル酸あるいはアリルアミン、または有機シラン化合物などの金属表面への照射により、皮膜形成される場合である。
極性官能基と金属表面との化学結合等により直接表面に極性官能基が付与される態様としては、活性化されたアクリル酸あるいはアリルアミン、または有機シラン化合物などから生成された極性官能基が、直接金属表面へ照射される場合である。
有機シラン化合物としてはアルキルシラン化合物であるヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、アルコキシシラン化合物としてテトラエトキシシラン(TEOS)が例示できる。
2.樹脂部
樹脂部の態様としては、特に限定はされないが、板状、フィルム状、塊状等が例示でき、複合体の用途にあわせて、金属部と接するように樹脂部を成形時に、所定形状にすることが、工程の削減になって好ましい。
樹脂部に用いられる樹脂としては、特に限定はされないが、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のエンジニアリングプラスチック、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の汎用樹脂等が例示でき、複合体の特性(耐熱性等)が向上することから、エンジニアリングプラスチックであることが好ましい。
また、樹脂は、機械的強度等を向上させるため、ガラス繊維、無機フィラー等が配合されていてもよいし、配合されていなくてもい。
ポリフェニレンサルファイドとしては、特に限定はされないが、分子内に酸素を介して二次元又は三次元の架橋構造を有する架橋型でもよいし、分子が直鎖状になっている(構造単位が一列に繋がっている)リニア型でもよい。
ポリアミドとしては、特に限定はされないが、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミド6I(PA6I)、ポリアミド9T(PA9T)、芳香族ポリアミドであるアラミド等が例示できる。
樹脂に配合される接着性改質剤としては、特に限定はされないが、容易に樹脂と均一に混合できることが好ましい。具体的には、具体的には、ポリエチレン、ポリスチレン等を主鎖とし、スチレン系ポリマーを側鎖としたグラフト共重合体を接着性官能基で変性した化合物や、ポリエチレン、ポリスチレン等を接着性官能基で変性した化合物等が例示でき、より具体的には、エチレンとスチレンとの共重合体がグリシジルメタクリレートで変性された変性エチレン−スチレン共重合体、ポリエチレンがグリシジルメタクリレートで変性された変性ポリエチレン等が例示できる。その他にも、無水マレイン酸変性ポリエチレン、オキサゾリン変性ポリエチレンが例示できる。
接着性改質剤の含有量は、接着性改質剤の種類(接着性官能基の種類及び接着性改質剤中での接着性官能基の量等)によっても異なり、特に限定はされないが、樹脂と接着性改質剤との合計量100質量部に対し、5〜40質量部であることが好ましい。この値が5質量部未満では、金属部に対する樹脂部の接着性が低下し、40質量部を超えると、樹脂部を成形するときの離型性等が悪くなる。より好ましくは、10〜30質量部である。
接着性改質剤に含まれる接着性官能基としては、特に限定はされないが、エポキシ基(グリシジル基中のエポキシ基を含む、以下同じ)、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、シラノール基、イソシアネート基、スルフヒドリル基、オキサゾリン基等が例示でき、極性官能基と反応しやすいことから、エポキシ基であることが好ましい。
樹脂と接着性改質剤との混合物(成形材料でもある)中における接着性官能基の含有量は、接着性官能基の種類によっても異なり、特に限定はされないが、樹脂と接着性改質剤との合計量の0.15〜1.2質量%であることが好ましい。この値が0.15質量%未満では、金属部に対する樹脂部の接着性が低下し、1.2質量%を超えると、樹脂部を成形するときの離型性等が悪くなる。より好ましくは、0.3〜0.9質量%である。
樹脂に接着性改質剤を配合して成形材料にする配合処理方法としては、特に限定はされないが、一軸又は二軸の押出機等を用いて、所定温度で溶融混練し、均一にした後、ペレット状等にする方法等が例示できる。
金属部と接するように樹脂部を成形する方法としては、特に限定はされないが、金属部と樹脂部との接着及び樹脂部の成形が一度にできることから、内部に金属部が保持されている金型を用いるインサート成形であることが好ましい。インサート成形としては、特に限定はされないが、圧縮成形、射出成形等が例示できる。
また、成形は、アニール工程を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
金属部と樹脂部との接着は、金属部表面の極性官能基と樹脂部の接着性官能基との相互作用によるものと考えられる。
この相互作用は、金属部と樹脂部との界面で極性官能基及び接着性官能基の原子、電子等が互いに引き合う作用である。具体的には、極性官能基及び接着性官能基の原子間で、電子の移動・共有を伴う一次結合(イオン結合、共有結合等)と、極性官能基及び接着性官能基の中で、電子密度の偏在が生じ、両官能基同士がクローン力で引き合う二次結合(水素結合、ファンデルワールス結合等)とである。
3.金属と樹脂との複合体
金属と樹脂との複合体の態様としては、特に限定はされないが、板状、箔状、紐状、筒状、柱状、球状、塊状等が例示できる。
金属と樹脂との複合体の用途としては、特に限定はされないが、電子・電気部品、建築土木部材、自動車部品、農業資材、梱包資材、衣料、日用品等、又はこれらを製造するための材料等が例示できる。自動車部品としては、特に限定はされないが、エンジンオイル等をシールするシール部材、ハイブリット車等のバッテリーをシールするシール部材等が例示できる。
表1、表2に示すとおり、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)の5種の金属よりなる金属部を用い、各金属部に2種の極性官能基を付与し、これらに3種の接着性官能基を付与した樹脂よりなる樹脂部を接着した複合体を作成し、各複合体について引張せん断接着強さ試験を行った。そして、表1に示すように、界面破壊(金属部と樹脂部との界面での破断)が主で、引張せん断接着強さが5MPa未満であった3種類の複合体を、比較例1〜3とした。また、表2に示すように、樹脂破壊(樹脂部中での破断)が主で、引張せん断接着強さが5MPa以上であった11種類の複合体を、実施例1〜11とした。
表1、2には、次の事項も示す。
・金属部に用いた各金属の酸化物又は水酸化物の等電点、金属部に付与した接着官能基の種類とその解離定数、該等電点と該解離定数の差から求められる相互作用パラメーター
・比較例1と実施例2,3,5,7は、接着官能基としてカルボキシル基を付与した後、アミノ基を付与(積層)して接着改質構成としたこと。
・樹脂部に用いた樹脂の種類(PPS)とこれに付与した官能基の種類
・複合体の接着性能として測定したせん断引張強度及び破壊モード
Figure 0006310213
Figure 0006310213
従って、比較例2,3及び実施例1,4,6の複合体は図1(a)に示す構成であり、比較例1及び実施例2,3,5,7の複合体は図1(b)に示す構成であり、実施例8の複合体は図1(c)に示す構成であり、実施例9の複合体は図1(d)に示す構成であり、実施例10の複合体は図1(e)に示す構成であり、実施例11の複合体は図1(f)に示す構成である。
実施例及び比較例には、次の原料を用いた。
金属部として、市販の純Sn、純Zn、純Ni、純Al又は純Feよりなる長さ75mm、幅25mm、厚さ2mmの板を用いた。
金属表面にカルボキシル基を付与する化合物として、アクリル酸の重合体(分子量MW:10,000)を用いた。
金属表面にアミノ基を付与する化合物として、アリルアミンの重合体(分子量MW:1,000)を用いた。
樹脂として、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を用いた。
樹脂にエポキシ基を付与する接着性改質剤として、エチレンとスチレンとの共重合体がグリシジルメタクリレート(GMA)で変性された変性ポリエチレン−ポリスチレン共重合体(変性PE/PS)であった。さらに詳述すると、この変性PE/PSは、ポリエチレンを主鎖とし、スチレン系モノマーを側鎖としたグラフト共重合体に、主鎖のポリエチレンがGMAで変性され、接着性官能基としてエポキシ基(グリシジル基)を含む化合物であり、グリシジルメタクリレートの割合が10質量%であり、エポキシ基の含有量が3質量%であった。
樹脂にカルボキシル基を付与する接着性改質剤として、無水マレイン酸変性ポリエチレンを用いた。カルボキシル基の含有量は3質量%であった。
樹脂にオキサゾリン基を付与する接着性改質剤として、オキサゾリン変性ポリエチレンを用いた。オキサゾリン基の含有量は3質量%であった。
各試料は、次のようにして、作成した。
(1)金属部の前処理
金属部は、表面を粒度#1,000のサンドペーパで擦って、油分を除去した。次いで、23℃の塩酸中に1分間浸漬して、表面のエッチングを行った。さらに、強アルカリ脱脂剤(日本パーカライジング社の「FC−E2001」)の70℃の水溶液中に1分間浸漬して脱脂を行った。
(2)金属部の表面処理
上記前処理を行った金属部の表面に、それぞれの表面処理に用いる、カルボキシル基を付与する化合物又はアミノ基を付与する化合物を塗布した後、150℃の恒温槽中にて、10分間の乾燥処理を行い、金属部の表面にそれぞれの化合物からなる膜(層)を形成した。また、実施例2,3,5,7と比較例では、カルボキシル基を付与する化合物を塗布して同条件で膜(層)を形成した後、アミノ基を付与する化合物を塗布して同条件で膜(層)を形成(積層)した。
(3)樹脂の配合処理
接着性改質剤を樹脂に配合するため、ラボプラストミル(東洋精機製作所社の「KF70V2」)を用い、樹脂(80質量部)と接着性改質剤(20質量部)とを、使用した樹脂が溶融する温度(PPS:320℃)で、5分間溶融混練を行い、成形材料とした。
(4)成形と接着
上記表面処理を行った金属部を金型内に配置した後、上記成形材料又は樹脂を金型内に入れ、成形材料に用いられている樹脂が溶融する上記温度で圧縮成形を行った。また、成形中に、金型の表面温度を150℃で3時間保持してアニール工程を行った。
上記のようにして、長さ75mm、幅15mm、厚さ3mmの板状の複合体を得た。この複合体は、縦12mm、横15mmの広さの面(面積:180mm)で、金属部の表面に接着された樹脂部を形成した。
上記のようにして作成した複合体を、JIS K−6850(接着剤−剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法)に準拠して試験を行い、せん断引張り強度を測定した。
既に述べたとおり、表1に示す比較例1〜3は、界面破壊が主で、引張せん断接着強さが5MPa未満であったグループである。また、表2に示す実施例1〜11は、樹脂破壊が中心で、引張せん断接着強さが5MPa以上であったグループである。両グループの差の要因は、金属の種類とそれに最初に付与した極性官能基との組み合わせにあると考えられる。
すなわち、比較例1では、等電点が低いSnに解離定数が低いカルボキシル基を最初に付与し、比較例2,3では、等電点が高いZnに解離定数が高いアミノ基を最初に付与したため、いずれも金属の酸化物又は水酸化物の等電点と極性官能基の解離定数とから次の(a)、(b)又は(c)の場合分けで求められる値(相互作用パラメーター)が1未満であった。これは、金属と極性官能基とのイオン結合が低いことを示すと考えられるため、高い接着性能が得られなかったと考えられる。
(a)解離定数が7を超える場合は、解離定数から等電点を引いた値
(b)解離定数が7未満の場合は、等電点から解離定数を引いた値
(c)解離定数が7の場合は、等電点が7未満であれば解離定数から等電点を引いた値、等電点が7を超えれば等電点から解離定数を引いた値
これに対して、実施例1〜11では、各金属に上記相互作用パラメーターが1以上となる極性官能基を最初に付与した。これは、金属と極性官能基とのイオン結合が高いことを示すと考えられるため、高い接着性能が得られたと考えられる。
以上の結果に基づいて、次の考察をした。
図2(a)に示すように、金属部の表面に最初にアミノ基を付与する場合に、金属の酸化物又は水酸化物の等電点が5.5未満の場合には実施例1のように接着力が高く、等電点が5.5〜9.0の場合にも実施例4,6,8,9のように接着力が高く、等電点が9.0を超える場合には比較例2,3のように接着力が低くなる。また、金属部の表面に最初にカルボキシル基を付与する場合に、金属の酸化物又は水酸化物の等電点が5.5未満の場合には比較例1のように接着力が低く、等電点が5.5〜9.0の場合には実施例5,7,10,11のように接着力が高く、等電点が9.0を超える場合にも実施例2,3のように接着力が高くなる。
図2(b)は、このように金属部の表面に最初にアミノ基又はカルボキシル基を付与する場合に、等電点によって接着力が変化することを観念的にグラフ化した説明図である。
よって、金属の酸化物又は水酸化物の等電点が5.5未満の場合には、アミノ基を最初に付与すればよく、等電点が5.5〜9.0の場合にはアミノ基又はカルボキシル基のいずれを最初に付与してもよく、等電点が9.0を超える場合にはカルボキシル基を最初に付与すればよいことが分かる。
次に、表3に、実施例1〜11で用いた5種の金属と、それ以外のマンガン(Mn)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)について、それらの酸化物又は水酸化物の等電点が低いものから順に並べ、金属部に最初に付与する極性官能基がカルボキシル基又はアミノ基である場合の相互作用パラメーターを記した。このようにして、実施例1〜11で用いた金属以外の金属についても、上記相互作用パラメーターが1以上となる極性官能基を決定することができる。
Figure 0006310213
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。

Claims (5)

  1. 金属よりなる金属部の表面に極性官能基を付与し、樹脂よりなる樹脂部の少なくとも表面に前記極性官能基と相互に作用し合う接着性官能基を付与し、前記極性官能基と前記接着性官能基との相互作用により、前記金属部と前記樹脂部とを接着させる金属と樹脂との複合体の製造方法において、
    前記金属部の表面に最初に付与する極性官能基の種類は、前記金属の酸化物又は水酸化物の等電点と極性官能基の解離定数とから次の(a)、(b)又は(c)の場合分けで求められる値を相互作用パラメーターとし、該相互作用パラメーターが1以上となる極性官能基に決定し、決定した極性官能基を前記金属部の表面に最初に付与するステップを含むことを特徴とする金属と樹脂との複合体の製造方法。
    (a)解離定数が7を超える場合は、解離定数から等電点を引いた値
    (b)解離定数が7未満の場合は、等電点から解離定数を引いた値
    (c)解離定数が7の場合は、等電点が7未満であれば解離定数から等電点を引いた値、等電点が7を超えれば等電点から解離定数を引いた値
  2. 金属よりなる金属部の表面に極性官能基を付与し、樹脂よりなる樹脂部の少なくとも表面に前記極性官能基と相互に作用し合う接着性官能基を付与し、前記極性官能基と前記接着性官能基との相互作用により、前記金属部と前記樹脂部とを接着させる金属と樹脂との複合体の製造方法において、
    前記金属部の表面に最初に付与する極性官能基の種類は、前記金属の酸化物又は水酸化物の等電点と極性官能基の解離定数とから次の(a)、(b)又は(c)の場合分けで求められる値を相互作用パラメーターとし、該相互作用パラメーターが1以上となるアミノ基以外の第1の極性官能基に決定し、決定した第1の極性官能基を前記金属部の表面に最初に付与するステップと、
    (a)解離定数が7を超える場合は、解離定数から等電点を引いた値
    (b)解離定数が7未満の場合は、等電点から解離定数を引いた値
    (c)解離定数が7の場合は、等電点が7未満であれば解離定数から等電点を引いた値、等電点が7を超えれば等電点から解離定数を引いた値
    その後、前記金属部の表面に第2の極性官能基としてアミノ基を付与するステップと、を含むことを特徴とする金属と樹脂との複合体の製造方法。
  3. 前記接着性官能基は、エポキシ基、ヒドロキシル基、シラノール基、カルボキシル基、イソシアネート基、スルフヒドリル基又はオキサゾリン基である請求項2記載の金属と樹脂との複合体の製造方法。
  4. 金属よりなる金属部と樹脂よりなる樹脂部とが接着された金属と樹脂との複合体であって、
    前記金属部は表面に、前記金属の酸化物又は水酸化物の等電点と極性官能基の解離定数とから次の(a)、(b)又は(c)の場合分けで求められる値を相互作用パラメーターとし、該相互作用パラメーターが1以上となるアミノ基以外の第1の極性官能基が付与されており、第2の極性官能基としてアミノ基が第1の極性官能基に積層されて付与されているものであり、
    (a)解離定数が7を超える場合は、解離定数から等電点を引いた値
    (b)解離定数が7未満の場合は、等電点から解離定数を引いた値
    (c)解離定数が7の場合は、等電点が7未満であれば解離定数から等電点を引いた値、等電点が7を超えれば等電点から解離定数を引いた値
    前記樹脂は前記極性官能基と相互に作用し合う接着性官能基を含む接着性改質剤が配合されたものであり、
    前記極性官能基と前記接着性官能基との相互作用により、前記金属部と前記樹脂部とが接着されていることを特徴とする金属と樹脂との複合体。
  5. 前記接着性官能基は、エポキシ基、ヒドロキシル基、シラノール基、カルボキシル基、イソシアネート基、スルフヒドリル基又はオキサゾリン基である請求項4記載の金属と樹脂との複合体。
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