JP6308957B2 - 耐チッピング用水性塗料組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車等の車体の床裏部やホイルハウス部等のフロアアンダーに施工(塗布)される耐チッピング用のコーティング塗料に関するもので、特に、軽量性と耐チッピング性が両立した塗膜を形成できる水性樹脂エマルジョン系の耐チッピング用水性塗料組成物である。
自動車車体の下部構造部、即ち、床裏部、ホイルハウス(タイヤハウス)部、ロッカパネル部、サイドシル部、フロントエプロン部、フロント・リアフェンダー部、ドアの下部、ガソリンタンクの底面部等においては、自動車走行時にタイヤが撥ね上げる小石や砂利等の衝突により塗膜が剥がされるというチッピング現象が発生する。このため、走行中の石・砂跳ね等から車体を保護してこのチッピング現象を防止すべく、自動車用鋼板の表面に、アンダーコートとして耐チッピング塗料を塗装して、車体保護用のコーティング膜を形成している。
耐チッピング塗料としては、従来から、ポリ塩化ビニル系樹脂を可塑剤によってゾル化したポリ塩化ビニル系プラスチゾル(PVCプラスチゾル)が使用されてきたが、このポリ塩化ビニル系プラスチゾルは、焼却時に塩化水素ガスを発生するため、それがオゾン層の破壊原因物質のもととなり、さらには酸性雨の原因となり、また、焼却時にダイオキシンも発生するという問題を有している。
そこで、地球環境保護のために、塩化ビニル系の材料を使用しない塗料の開発が望まれており、その一手段として、溶剤排出量の少ない水性樹脂エマルジョン系塗料が開発されている。
ところで、近年、自動車の高性能化や高級化が進み、さらには、地球温暖化の抑制と地球環境の保護等の環境側面から自動車の燃費の向上を主目的として自動車の低燃費化が加速しているのに伴い、車両の軽量化が求められている。このため、車両に使用されるアンダーコートについても、低比重化のニーズが高まっている。
ところが、ポリ塩化ビニル系プラスチゾル塗料に代わる耐チッピング塗料としての水性樹脂エマルジョン系塗料では、可塑剤を配合しないため、従来のポリ塩化ビニル系プラスチゾル塗料の場合と比較して、比重が高くなる傾向がある。このため、自動車の車体重量の軽量化というトレンドに対応できないでいた。
そこで、塗膜の比重を小さくするために、一般的に、ガラスバルーン(無機質中空体)や樹脂バルーン(プラスチック中空体)等を配合するという手段が提案されている。
しかしながら、軽量化を図るためにガラスバルーンや樹脂バルーン等を配合すると、塗料中の水性樹脂エマルジョンの比率が減少するため、塗膜の耐チッピング性が不足する。
そこで、十分な耐チッピング性を確保するために、厚膜塗布(塗膜の厚膜化)を行うことも考えられるが、高膜厚化では塗膜重量が増大して、塗膜の低比重化のためにガラスバルーンや樹脂バルーン等を配合した利点が失われ、塗布された塗膜の軽量化を図ることができない。
このため、水性樹脂エマルジョン系塗料においては、耐チッピング性と軽量化(低比重化)を両立させることが困難であった。
ところで、このようなアンダーコート用の耐チッピング塗料は、自動車用鋼板の表面に対して、焼付けが行なわれる下塗り、中塗り、上塗り塗料として塗装するほか、車体の設計や顧客の要望等に応じて上塗り焼き付け後に塗装したり、上塗り焼き付け後のガラス、内装材、タイヤ等を取り付ける組立(艤装)工程が終了した後に塗装したり、車体の修理時等に塗装したりすることもある。
ここで、上塗り焼き付け後の塗装において、塗料の加熱乾燥を行う場合には、加熱乾燥による下地(上塗りされた箇所)への影響が懸念される。また、組立工程終了後の再塗装において、塗料を加熱乾燥させる場合には車体本体そのものを加熱乾燥しなければならず、車体本体そのものを加熱乾燥するとなると、大きなスペースと乾燥設備が必要となる。
このため、下地や組み付けた部品等に影響を与えずに塗装を行うことができる作業環境的観点から、さらには、二酸化炭素排出の削減や省エネ等の環境側面から、アンダーコート用の耐チッピング塗料においては乾燥炉を使用せずに常温でも乾燥できる常乾型の塗料であることが要望される。
しかし、水性樹脂エマルジョンを使用した塗料においては、常温乾燥させた場合、塗布条件によっては、樹脂に特有の乾燥による体積減少のために収縮や亀裂が発生し易く、また、その残留内部応力により被着体(下地、素地、基材とも呼ばれる)との接着性が低下し易いという問題がある。
ここで、常温乾燥型の耐チッピング塗料として、特許文献1に、ポリスチレン末端ブロックとポリエチレンブチレンゴム中間ブロックからなるブロック共重合体、及び、水素添加ロジンエステルまたは水素添加した石油樹脂または芳香族炭化水素で変性したテルペン樹脂からなる粘着付与剤、及び、有機ベントナイトまたは粉末シリカからなる揺変剤を所定量含有した耐チッピング塗料組成物の開示がある。この特許文献1の常温乾燥型の耐チッピング塗料によれば、厚塗り可能でその塗膜が耐チッピング性、耐候性に優れるとされている。
特開平5−179195号公報
ところが、この特許文献1の発明は、塗膜の厚塗り可能(厚膜化)によって耐チッピング性の向上を可能としているものであり、被着体との密着性を向上させるための粘着付与剤として水素添加したロジンエステルが配合されているものの、塗料の耐チッピング性と軽量化との両立については、何ら解決するものではない。
そこで、本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、軽量化(低比重化)及び耐チッピング性が両立した塗膜の形成が可能であり、常温乾燥でも耐チッピング性等の塗膜性能を発揮する塗膜を形成できる耐チッピング用水性塗料組成物の提供を課題とするものである。
請求項1の発明の耐チッピング用水性塗料組成物は、少なくとも水性樹脂エマルジョン、バルサム状ロジンエステル、及び中空充填剤を含有するものである。
ここで、上記バルサム状ロジンエステルは、塗膜に柔軟性(伸び)を付与するものであり、液状のバルサム状ロジンエステルであればよく、例えば、松脂を原料とするガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン類と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等のアルコールとを反応させたエステル化合物が挙げられる。上記バルサム状とは、樹脂状分泌物が溶解して粘稠であるが流動性がある状態を示す。
なお、「エマルジョン(emulsion,エマルションともいう。)」とは、乳濁液ともいい、液体中に液体粒子がコロイド粒子あるいはそれより粗大な粒子として乳状をなすもの(分散系)、が本来の意味であるが(長倉三郎他編「岩波理化学辞典(第5版)」152頁,1998年2月20日株式会社岩波書店発行)、本明細書及び特許請求の範囲においては、より広い意味で一般的に用いられている「液体中に固体または液体の粒子が分散しているもの」として、「エマルジョン」という用語を用いるものとする。
この発明の耐チッピング用水性塗料組成物は、前記バルサム状ロジンエステルが、水性樹脂エマルジョンの樹脂100重量部に対して70重量部〜140重量部の範囲内で配合されるものである。
この発明の耐チッピング用水性塗料組成物は、更に、架橋剤が配合されるものである。
この発明の耐チッピング用水性塗料組成物は、前記架橋剤が、前記水性樹脂エマルジョン100重量部に対して7重量部〜22重量部の範囲内で配合されるものである。
なお、上記配合量の数値やガラス転移温度(Tg)の数値は、厳格であることを要求するものでなく、材料の種類や計量・計測等による誤差を含む概略値であり、当然、数割の誤差を否定するものではない。
請求項2の発明の耐チッピング用水性塗料組成物は、前記水性樹脂エマルジョンの樹脂が、−50℃〜5℃の範囲内にガラス転移温度(Tg)を有するアクリル系樹脂であるものである。
ここで、上記アクリル系樹脂とは、広くアクリル樹脂及びメタクリル樹脂を含むものであって、アクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸アルキルエステル等から選ばれるモノマーの単一重合体や共重合体を意味するものである。
請求項1の耐チッピング用水性塗料組成物は、少なくとも水性樹脂エマルジョン、バルサム状ロジンエステル、及び中空充填剤を含有するものである。
本発明者らは、中空充填剤の配合によって塗膜の軽量化(低比重化)を可能としつつ、塗膜の耐チッピング性も確保するために、鋭意実験研究を重ねた結果、水性樹脂エマルジョンに液状のバルサム状ロジンエステルを配合することによって塗膜の柔軟性(伸び)を向上させることができ、この塗膜の柔軟性の向上により、耐チッピング性の確保が可能となり、また、常温乾燥であっても硬化して良好な耐チッピング性を発揮する塗膜となることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
即ち、水性樹脂エマルジョンに中空充填剤を配合して塗膜の軽量化を図る水性塗料組成物において、バルサム状ロジンエステルを含有させると、水性樹脂エマルジョンの造膜時に液状のバルサム状ロジンエステルが塗膜中に取り込まれ、これによって造膜した塗膜に適度な柔軟性を付与するという固形のロジンエステルでは得られない特性が発現する。そのため、低比重化しても良好な耐チッピング性を有する塗膜が得られ、軽量化と耐チッピング性の両立が可能となる。
しかも、このような組成からなる本発明の耐チッピング用水性塗料組成物によれば、被着体(下地、素地、基材とも呼ばれる)に塗布した後は、常温乾燥であっても造膜し、良好な耐チッピング性等の塗膜性能を発揮する塗膜となる。このとき、常温乾燥であっても塗膜形成過程(硬化過程)において亀裂等の塗膜不良が生じることもなく、被着体との接着性も良好である。これは、常温乾燥時における水性樹脂エマルジョンの体積減少による内部応力が塗膜中に取り込まれたバルサム状ロジンエステルによって緩和され、亀裂の発生が抑制されて被着体との接着性も低下することがなく、さらに、被着体に対して適度な密着性を向上させることができるためであると推定される。
この耐チッピング用水性塗料組成物は、前記バルサム状ロジンエステルが、前記水性樹脂エマルジョンの樹脂100重量部に対して70重量部〜140重量部の範囲内で配合される。
ここで、水性樹脂エマルジョンの樹脂に対するバルサム状ロジンエステルの配合量が少なすぎると、塗膜に対して十分な柔軟性を付与できず塗膜の伸び率が不足し、所望とする耐チッピング性を得ることができない。一方で、バルサム状ロジンエステルの配合量が多すぎる場合には、塗膜の弾性(引張強度・抗張力)が小さくなり、所望とする耐チッピング性を得ることができない。しかし、前記水性樹脂エマルジョンの樹脂100重量部に対する前記ロジンエステルの配合量が70重量部〜140重量部の範囲内であれば、安定した耐チッピング性を確保できる。
したがって、この発明の耐チッピング用水性塗料組成物によれば、確実に塗膜の耐チッピング性を確保して、軽量化との両立を図ることができる。
この耐チッピング用水性塗料組成物によれば、更に、架橋剤が配合されることから、水性樹脂エマルジョンの樹脂と架橋剤が反応して塗膜の弾性を向上させることができる。特に、水性樹脂エマルジョンの樹脂の種類(特性)によっては所望とする耐チッピング性を確保するための塗膜の弾性を効果的に向上させて、耐チッピング性の確保を可能とする。
この耐チッピング用水性塗料組成物によれば、前記架橋剤が、前記水性樹脂エマルジョン100重量部に対して7重量部〜22重量部の範囲内で配合されるものである。
ここで、水性樹脂エマルジョンに対する架橋剤の配合量が少なすぎると、塗膜に対して十分な弾性を付与できず塗膜の引張強度・抗張力が不足し、所望とする耐チッピング性を得ることができない。一方で、架橋剤の配合量が多すぎる場合には、塗膜の弾性(引張強度・抗張力)が高くなりすぎることで、塗膜の柔軟性(伸び)が小さくなり、所望とする耐チッピング性を得ることができない。しかし、前記水性樹脂エマルジョン100重量部に対する前記架橋剤の配合量が7重量部〜22重量部の範囲内であれば、安定した耐チッピング性を確保できる。
したがって、の発明の耐チッピング用水性塗料組成物によれば、より確実に塗膜の耐チッピング性を確保して、軽量化との両立を図ることができる。
請求項2の耐チッピング用水性塗料組成物によれば、前記水性樹脂エマルジョンの樹脂が、−50℃〜5℃の範囲内にガラス転移温度(Tg)を有するアクリル系樹脂である。
したがって、請求項1に記載の効果に加えて、水性樹脂エマルジョンの樹脂の中でもアクリル系樹脂は、汎用性があって入手が容易であり、接着性、強度、剛性等の特性に優れ、ガラス転移温度(Tg)が−50℃〜5℃の範囲内であれば、造膜(成膜)に優れるため常温乾燥に適する。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態の耐チッピング用水性塗料組成物は、少なくとも水性樹脂エマルジョン、バルサム状ロジンエステル、及び中空充填剤を含有してなるものである。
水性樹脂エマルジョンは、塗膜成分となる樹脂を水に分散してなるものであり、例えば、アクリル樹脂(メタクリル樹脂を含む)エマルジョン、スチレン−ブタジエン−ラテックス(SBR)エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、アクリル−スチレンエマルジョン、スチレン−ブタジエンエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−アクリルエマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、フェノール樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、アクリロニトリル−ブタジエン−ラテックス(NBR)エマルジョン、アクリル酸エステル樹脂(メタクリル酸エステル樹脂を含む)エマルジョン等の1種または2種以上が使用される。
これらの中でも、特に、アクリル系樹脂エマルジョンは、汎用性があって入手が容易であり、また、接着性(特に上塗り付着性)、軟化点、粘度、乾燥時表面硬度、強度、耐候性等の各特性に優れており、アンダーコート材等として使用するのに適している。
アクリル系樹脂エマルジョンとして用いられるアクリル系樹脂は、(メタ) アクリル酸〔アクリル酸またはメタアクリル酸を意味する。以下、同様。〕及び(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体または共重合体、または、これら(メタ)アクリル酸等と共重合可能な単量体との共重合体である。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2,2−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、(メタ)アクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸等と共重合可能な単量体としては、エチレン性不飽和基を有する単量体が好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルフェノール、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルアルコール、アリルアルコール、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。このときの共重合法としては、乳化重合が一般的であるが、これに限定されるものではない。また、酸の場合は、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等であってもよい。さらに、上記(メタ)アクリル酸等の重合体及び共重合体をウレタン樹脂で変性したウレタン変性(メタ)アクリル酸等の重合体等やエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等で変性したエポキシ変性、フェノール変性、メラミン変性(メタ)アクリル酸等の重合体等であってもよい。
これらの単独重合体または共重合体成分は、常温乾燥型塗料として適する常温硬化速度等を考慮してアンダーコート材等として塗膜に要求される強度や弾性等に応じて、適宜選択される。
ここで、水性樹脂エマルジョンとしてのアクリル系樹脂エマルジョンのアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が−50℃〜5℃の範囲内にあるものであるときは架橋剤を配合することが好ましい。
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が5℃以下のアクリル系樹脂エマルジョンは、成膜(造膜)した塗膜の弾性(引張強度・抗張力)が小さく所望の耐チッピング性の確保が困難である。そこで、架橋剤を配合することで、塗膜の弾性(引張強度・抗張力)を向上させることができる。なお、ガラス転移温度(Tg)が−50℃未満のアクリル系樹脂エマルジョンは実用的でない。
即ち、水性樹脂エマルジョンの樹脂の特性によっては所望の耐チッピング性を確保するための塗膜の弾性が不足する場合であっても、架橋剤を配合することで、水性樹脂エマルジョンの樹脂と架橋剤の反応によって、塗膜の弾性を向上させて所望の耐チッピング性を確保することが可能となる。
このような架橋剤としては、例えば、亜鉛、ニッケル、マグネシウム、カルシウム等の2価の陽イオンからなる金属化合物の酸化物や塩が使用される。酸化亜鉛等の2価の陽イオンからなる金属化合物等を配合することで、塗膜の弾性(引張強度・抗張力)が向上されるのは、水性樹脂エマルジョンの樹脂に対して架橋剤がイオン結合して架橋する架橋効果によるものと推定される。
特に、酸化亜鉛は、防錆性に優れ、また、水性樹脂エマルジョンの樹脂とのイオン結合による架橋性が良く、中でもアクリル系樹脂エマルジョン等のカルボキシル基を有する水性樹脂エマルジョンに対しては、カルボキシル基との反応性が高くて三次構造が形成されやすく、塗膜の弾性(引張強度・抗張力)を効果的に向上させることができる。
酸化亜鉛としては、例えば、JISに規定する1種、2種、3種の酸化亜鉛が使用できる。なお、酸化亜鉛は、分散剤で水分散液の状態にして組成物に配合するのが好ましいが、粉末のまま配合してもよい。
また、架橋剤は、水性樹脂エマルジョンの樹脂が−50℃〜5℃の範囲内のガラス転移温度(Tg)を有するアクリル系樹脂のときには、このアクリル系樹脂100重量部に対して7重量部〜22重量部の範囲内で配合されるのが好ましい。
アクリル系樹脂に対する架橋剤の配合量が少なすぎる場合には、塗膜に対して十分な弾性を付与できず塗膜の抗張力(引張強度)が不足し、所望とする耐チッピング性を得ることができない。一方で、架橋剤の配合量が多すぎる場合には、塗膜の弾性(引張強度・抗張力)が高くなりすぎることで、所定量のバルサム状ロジンエステルを添加しても、塗膜の柔軟性(伸び)が小さく、所望とする耐チッピング性を得ることができない。
架橋剤の配合量がアクリル系樹脂100重量部に対して7重量部〜22重量部の範囲内であれば、形成される塗膜において確実に良好な耐チッピング性を確保できる。
さらに、本実施の形態の耐チッピング用水性塗料組成物に含有されるロジンエステルは、松脂を原料とするガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン(これらは三員環化合物のアジエチン酸を主成分とする)等のロジン類とアルコールを脱水縮合して得られる樹脂状のエステル化合物、または、ロジンフェノール樹脂をエステル化物としたものである。
上記ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、更にはマレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル等で変性したロジン類が挙げられる。
また、このロジン類と共に脱水縮合するアルコールとしては、n−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等の1価アルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコールや、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコールや、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の4価アルコール等が挙げられる。
これらは、単独で用いられても良いし、2種類以上を併用しても良い。
そして、本実施の形態のロジンエステルは、水性樹脂エマルジョンの成膜時に塗膜中に取り込まれることで成膜した塗膜の硬さを柔らげて塗膜の柔軟性(伸び)を向上させるものであり、常温乾燥下において塗膜を硬化形成する場合であっても、塗膜において高い柔軟性(伸び)を付与できて耐チッピング性等の塗膜性能を発揮可能とするために、液状のバルサム状ロジンエステルが使用される。
このバルサム状ロジンエステルは、水性樹脂エマルジョンの樹脂100重量部に対して70重量部〜140重量部の範囲内の配合量とするのが好ましい。
水性樹脂エマルジョンの樹脂に対するバルサム状ロジンエステルの配合量が少なすぎる場合、塗膜に対して十分な柔軟性を付与できず所望とする耐チッピング性を得ることができない。一方で、バルサム状ロジンエステルの配合量が多すぎる場合には、塗膜が柔らかくなりすぎることで、所望とする耐チッピング性を得ることが困難となる。
バルサム状ロジンエステルの配合量が水性樹脂エマルジョンの樹脂100重量部に対して70重量部〜140重量部の範囲内であれば、形成される塗膜において適当な柔軟性が付与され、これによって耐チッピング性の確保が容易となる。
さらに、詳細に説明すると、本実施の形態の耐チッピング用水性塗料組成物によれば、塗膜の柔軟性は、水性樹脂エマルジョンの樹脂だけで決定されるものでなく、バルサム状ロジンエステルを含有することで、水性樹脂エマルジョンの樹脂及びバルサム状ロジンエステルによって塗膜の柔軟性が決定されることになる。このため、塗膜の柔軟性の設定自由度が増し、柔軟性の制御が容易となって、要求される仕様に対して幅広い対応が可能となる。
ここで、水性樹脂エマルジョンの樹脂の種類(特性)によって得られる塗膜の弾性が所望とする耐チッピング性の確保に不十分である場合、酸化亜鉛等の2価の陽イオンの金属化合物等からなる架橋剤を配合することで、塗膜の弾性(引張強度・抗張力)を向上させて、良好な耐チッピング性を確保することが可能である。
即ち、本実施の形態の耐チッピング用水性塗料組成物によれば、使用する水性樹脂エマルジョンの樹脂によって、使途等に応じて要求される耐チッピング性を十分に確保するための塗膜の弾性が不足する場合であっても、架橋剤を配合することで、塗膜の弾性を改良し、要求仕様への対応が可能となる。
そして、このような特性の本実施の形態の耐チッピング用水性塗料組成物を用いることで、膜厚を厚くすることなく耐チッピング性を保持できるので、薄膜化が可能となり、軽量性の向上も可能となる。
また、従来の水性樹脂エマルジョンを使用した水性塗料においては、常温乾燥させた場合、樹脂に特有の乾燥による体積減少のため収縮や亀裂等が発生し易く、更に、塗膜形成後に残る残留内部応力により被着体(下地塗装、素地、基材と呼ばれることもある)との接着性が低下し易いという問題があった。
しかし、本実施の形態の耐チッピング用水性塗料組成物によれば、常温乾燥時において亀裂等の塗膜不良が生じることもなく、被着体との接着性も良好で、常温乾燥下であっても耐チッピング性等の良好な塗膜性能を発揮できる塗膜を形成できる。
これは、液状であるバルサム状ロジンエステルが配合されていることで、常温乾燥時における水性樹脂エマルジョンの融着過程で発生する内部応力が緩和されるため、また、被着体に対して適度な密着性を向上させることができるためであると考えられる。
よって、本実施の形態の耐チッピング用水性塗料組成物によれば、常温乾燥時における体積減少による収縮や亀裂等の塗膜不良が抑制され、また、被着体との接着性の低下が防止されて、常温乾燥下でも良好な耐チッピング性を発揮する塗膜を形成できる。
なお、本実施の形態の耐チッピング用水性塗料組成物によれば、常温で乾燥できることで、焼付け乾燥時において内部の水分が急激に気泡状となって短時間で突沸することにより発生するわきの問題が生じることはない。
さらに、本実施の形態の耐チッピング用水性塗料組成物は、中空充填剤を含むものである。
中空充填剤(中空フィラー)は、塗膜の比重を低下させ軽量化を図るものであり、例えば、塩化ビニリデン樹脂、アクリロニトリル樹脂等の有機合成樹脂からなる樹脂バルーンや、ガラスバルーンや、ホウ珪酸ソーダ等からなるシリカバルーンや、シラスバルーンや、炭素中空球等が使用される。
因みに、樹脂バルーンは、通常、耐熱性が低く、しかも樹脂バルーン自体の吸湿によって加熱時に発泡が生じやすいため、焼付塗料では使用し難いものであるが、本実施の形態の耐チッピング用水性塗料組成物においては、常温乾燥下において硬化塗膜を形成できるため、樹脂バルーンも好適に使用できる。
なお、中空充填剤の配合量は、所望の塗膜比重を得るのに必要な量を本実施の形態の耐チッピング用水性塗料組成物中に配合する。また、中空充填剤は、その真比重が0.02〜0.4であるのが好ましい。中空充填剤の真比重が小さすぎると、取扱いが難しくなり、一方で、中空充填剤の真比重が大きすぎると、比重低下の効果が小さくなる。
また、本発明を実施する場合には、充填剤として、増量の目的や、塗膜に適度な強度等を付与する目的や、乾燥時の膨れ等を防止する目的等で、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩及び硫酸塩や、タルク(滑石)、珪藻土、カオリン、クレー、シリカ、ゼオライト、石膏、セメント、転炉スラグ、シラス、ワラストナイト(針状カルシウムメタシリケート)、グラファイト、硝子フレーク(硝子ビーズ)、ヒル石、マイカ(雲母)等の無機質充填剤や、セルロース粉、粉末ゴム等の有機質充填剤を単独でまたは組み合わせて使用することができる。
なお、本発明を実施する場合には、必要に応じて、添加剤として、消泡剤、増粘剤、分散剤、表面調整剤、低沸点親水性溶剤、感熱ゲル化剤、湿潤剤(界面活性剤等)、安定剤(金属石ケン類、無機酸塩類、有機金属化合物等)、着色剤(酸化チタン、カーボンブラック等)、吸湿剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤・分解剤、希釈剤、硬化剤、レベリング剤、タレ止め剤、難燃剤、防錆剤、老化防止剤等を配合することも可能である。
例えば、消泡剤は、組成物調製の攪拌等によって生じる泡の発生を抑制したり、生じた泡を消し易くしたりするものである。増粘剤は、配合材料の分散性を上げて沈降を防止塗料の安定性を良くすると共に、適度の粘度調製に仕上げ、塗布性とチキソ性の両者のバランスを図るものであり、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、水溶性多糖類、たんぱく質、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩等、無水シリカ、合成雲母、金属石鹸、有機ベントナイト等を使用できる。分散剤は、配合材料の分散性を上げるものであり、例えば、ポリリン酸ソーダ類、界面活性剤等を使用できる。表面調整剤は、塗料の水の蒸発を調製し、亀裂や膨れの発生を防止するものであり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等を使用できる。低沸点の親水性溶剤は、初期の短時間の水揮散に効果的なものであり、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を使用できる。感熱ゲル化剤は、乾燥性を改善するものである。
また、本発明を実施する場合には、組成物の成分を溶解・希釈したり、塗布作業時において適度な粘性に調整したり、塗面の仕上がり性を良くしたりするために、水等の溶剤が添加されることもある。
これらの配合材料からなる本実施の形態の耐チッピング用水性塗料組成物は、公知の混合分散機等を用いて均一に混合撹拌することによって調製される。
なお、このときの混合分散機としては、ディゾルバー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、バタフライミキサー、スパイラルミキサー、ロールミル、グレンミル、オープンニーダー、真空ニーダー、アトライター、高速ディスパー等が挙げられる。
調製した耐チッピング用水性塗料組成物は、公知の塗装方法、例えば、吹付け塗装用のスプレーガン、エアスプレーガン、エアレススプレーガン、エアアシストエアレススプレーガン、モルタルガン、リシンガン、カーテンフローコーター、刷毛塗り、ローラー塗装、静電塗装等の塗布手段により、所定の塗装部位に常温にて任意の塗布量・厚さ及び塗布形態で塗布される。
そして、上述したような水性樹脂エマルジョン、バルサム状ロジンエステル、及び中空充填剤を含有する本実施の形態の耐チッピング用水性塗料組成物によれば、塗布後は、常温乾燥でも造膜し硬化塗膜を形成することができる。
特に、本実施の形態の耐チッピング用水性塗料組成物によれば、中空充填剤が配合されていることで、形成される塗膜は低比重なものとなり、バルサム状ロジンエステルが配合されていることで、形成される塗膜の柔軟性(伸び)が向上する。場合によっては、酸化亜鉛等の2価の陽イオンの金属化合物等からなる架橋剤を配合することで、形成される塗膜の弾性(引張強度・抗張力)も向上し、強靭な塗膜が得られる。
このため、中空充填剤の配合によって低比重化しても耐チッピング性が低下せず、良好な耐チッピング性を保持し軽量化した塗膜が得られる。即ち、耐チッピング性と軽量性が両立した塗膜を形成できる。
そして、このように、形成される塗膜において良好な耐チッピング性を有することで、飛石等による塗膜の傷付き及び錆の発生を防止することができ、また、耐チッピング用塗膜の低比重化がなされることで、自動車の車両の塗膜重量が減少して軽量化が可能となり、燃費の低減化に寄与できる。
このような本実施の形態の耐チッピング用水性塗料組成物は、自動車車体の下部構造部、即ち、床裏部、ホイルハウス(タイヤハウス)部、ロッカパネル、サイドシル部、フロントエプロン部、フロント・リアフェンダー部、ドアの下部、ガソリンタンクの底面部等へのアンダーコート用塗料として適用できる。勿論、自動車の車両に限られず、鉄道車両、船舶、航空機、電気機器、建築構造物、建設機器等に適用することも可能である。
特に、常温で乾燥して耐チッピング性等の塗膜性能を発揮する塗膜を形成できることで、車体全体を乾燥させる大型乾燥炉等も必要とせずに、また、組み付けた部品に影響を与えずに、現行の自動車塗装工程にその工程を変更することなく組み入れて塗装を行うことができ、上塗り塗膜上にアンダーコート層を形成する場合にも好適に用いられる。
また、バルサム状ロジンエステルが配合されていることで、被着体に対して適度な密着性を向上させることができるため、金属面や金属塗装面の被着体に対しても、比較的容易に、かつ、強固に接着させることができる。
そして、本実施の形態の耐チッピング用水性塗料組成物によれば、塗膜の低比重化により車両の軽量化が可能で燃費の低減化を図ることができるうえ、常温で乾燥して耐チッピング性等の塗膜性能を発揮する塗膜となることで、二酸化炭素の排出量を削減する等の環境保護や省エネルギー化に貢献でき、環境に極めて優しいものとなる。
[実施例]
次に、本発明の実施の形態に係る耐チッピング用水性塗料組成物の実施例を具体的に説明する。
本実施の形態に係る耐チッピング用水性塗料組成物の配合組成として、表1に示すように、実施例1乃至実施例7までの7種類の配合の耐チッピング用水性塗料組成物を調製した。また、比較のために、比較例1乃至比較例6までの6種類の耐チッピング用水性塗料組成物を合わせて調製した。
各実施例及び各比較例の配合内容を表1の上段に示す。表1上段の数値は配合量を重量部で表したものである。
Figure 0006308957
本実施例及び比較例の耐チッピング用水性塗料組成物においては、水性樹脂エマルジョンとして、アクリル系樹脂エマルジョン((株)日本触媒製)を使用した。また、ロジンエステルとしては、ロジンエステルをエマルジョン化したロジンエステルエマルジョン(ハリマ化成(株)製)を用い、架橋剤としては、酸化亜鉛を用いた。さらに、中空充填剤として、比重0.38のガラスバルーンを使用し、中空充填剤以外の充填剤として、炭酸カルシウムを使用した。さらに、これらの配合成分の他に、添加剤として分散剤、消泡剤、増粘剤を添加し、また、溶剤として水を加えた。
表1に示されるように、実施例及び比較例の耐チッピング用水性塗料組成物は、アクリル系樹脂エマルジョン、ロジンエステルエマルジョン、酸化亜鉛以外の配合成分、即ち、ガラスバルーン、炭酸カルシウム、分散剤、消泡剤、増粘剤、水の各配合成分の重量部は実施例及び比較例の全てで同一の分量で統一している。即ち、ガラスバルーンは13重量部、炭酸カルシウムは39重量部、分散剤は0.5重量部、消泡剤は0.2重量部、増粘剤は0.3重量部、水は18重量部の配合である。このため、以下、主に、アクリル系樹脂エマルジョン、ロジンエステルエマルジョン、酸化亜鉛の配合内容について説明する。
実施例1乃至実施例3では、アクリル系樹脂エマルジョンのアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)を変化させており、実施例4及び実施例5では、アクリル系樹脂とバルサム状ロジンエステルの配合量(重量部)を変えており、実施例6及び実施例7では、酸化亜鉛の配合量(重量部)を変えている。
具体的には、実施例1においては、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が−50℃のアクリル系樹脂エマルジョン((株)日本触媒製『AD40』、固形分(樹脂分):50%)を14重量部、バルサム状のロジンエステルエマルジョン(ハリマ化成(株)製『HARIESTER SK−501NS』、ロジンエステル含有量:50%)を14重量部、酸化亜鉛を1重量部配合した。
この実施例1の配合では、アクリル系樹脂エマルジョンの樹脂固形分、つまり、アクリル系樹脂100重量部に対して、バルサム状ロジンエステルの配合量が100重量部、酸化亜鉛の配合量が14.2重量部となる。
実施例2においては、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が−25℃のアクリル系樹脂エマルジョン((株)日本触媒製『AD57S』、固形分:50%)を14重量部、バルサム状のロジンエステルエマルジョンを14重量部、酸化亜鉛を1重量部配合した。
この実施例2の配合でも、アクリル系樹脂100重量部に対して、バルサム状ロジンエステルの配合量が100重量部、酸化亜鉛の配合量が14.2重量部となる。
実施例3においては、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が5℃のアクリル系樹脂エマルジョン((株)日本触媒製『AD30』、固形分:50%)を14重量部、バルサム状のロジンエステルエマルジョンを14重量部、酸化亜鉛を1重量部配合した。
この実施例3の配合でも、アクリル系樹脂100重量部に対して、バルサム状ロジンエステルの配合量が100重量部、酸化亜鉛の配合量が14.2重量部となる。
即ち、実施例1乃至実施例3においては、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が−50℃〜5℃の範囲内であるアクリル系樹脂エマルジョンを使用していて、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)のみが異なり、それ以外は全て同一の配合内容である。
実施例4においては、実施例2で使用したのと同じアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が−25℃のアクリル系樹脂エマルジョンを16重量部、バルサム状のロジンエステルエマルジョンを12重量部、酸化亜鉛を1重量部配合した。
この実施例4の配合では、アクリル系樹脂100重量部に対して、バルサム状ロジンエステルの配合量が75重量部、酸化亜鉛の配合量が12.6重量部となる。
実施例5においては、実施例4と同様に、実施例2で使用したのと同じアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が−25℃のアクリル系樹脂エマルジョンを12重量部、バルサム状のロジンエステルエマルジョンを16重量部、酸化亜鉛を1重量部配合した。
この実施例5の配合では、アクリル系樹脂100重量部に対して、バルサム状ロジンエステルの配合量が133.3重量部、酸化亜鉛の配合量が16.6重量部となる。
即ち、実施例4と実施例5は、実施例2で使用したのと同じガラス転移温度(Tg)が−25℃のアクリル系樹脂に対するバルサム状ロジンエステルの配合量(重量部)を変化させたものである。より詳細には、実施例4では、実施例2よりもアクリル系樹脂の配合量(重量部)を増やし、その分バルサム状ロジンエステルの配合量(重量部)を減らした。一方、実施例5では、実施例2よりもアクリル系樹脂の配合量(重量部)を減らし、その分バルサム状ロジンエステルの配合量(重量部)を増やした。それ以外は全て実施例2と同一の配合内容とした。
実施例6においては、実施例4、実施例5と同様に実施例2で使用したのと同じアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が−25℃のアクリル系樹脂エマルジョンとバルサム状ロジンエステルエマルジョンを実施例2と同様に各々14重量部配合し、酸化亜鉛を実施例2の半量となる0.5重量部配合した。
この実施例6の配合では、アクリル系樹脂100重量部に対して、バルサム状のロジンエステルの配合量が100重量部、酸化亜鉛の配合量が7.2重量部となる。
実施例7においては、実施例2で使用したのと同じアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が−25℃のアクリル系樹脂エマルジョンを14重量部、バルサム状のロジンエステルエマルジョンを14重量部、酸化亜鉛を1.5重量部配合した。
この実施例7の配合では、アクリル系樹脂100重量部に対して、バルサム状のロジンエステルの配合量が100重量部、酸化亜鉛の配合量が21.4重量部となる。
即ち、実施例6と実施例7は、酸化亜鉛の配合量(重量部)を変化させたものである。より詳細には、実施例6では、実施例2よりも酸化亜鉛の配合量(重量部)を減らし、実施例7では、実施例2よりも酸化亜鉛の配合量(重量部)を増やした。それ以外は全て実施例2と同一の配合内容とした。
これらに対して、比較のために、比較例1及び比較例2では、液状のバルサム状ロジンエステルに代えて、固形のロジンエステルをエマルジョン化したロジンエステルエマルジョンを用い、比較例1では軟化点が85℃のものを、比較例2では軟化点が100℃のものを使用して耐チッピング用水性塗料組成物とした。なお、実施例で使用したバルサム状ロジンエステルは液状のため固形のものと同様の方法では軟化点の測定はできない。
さらに、アクリル系樹脂とバルサム状ロジンエステルの配合量(重量部)を実施例と変えて比較例3及び比較例4の耐チッピング用水性塗料組成物とした。加えて、架橋剤としての酸化亜鉛を配合しないものを比較例5の耐チッピング用水性塗料組成物とし、また、酸化亜鉛の配合量(重量部)を実施例と変えて比較例6の耐チッピング用水性塗料組成物とした。
具体的に、比較例1においては、実施例2で使用したのと同じアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が−25℃のアクリル系樹脂エマルジョン((株)日本触媒製『AD57S』、固形分:50%)を14重量部、軟化点85℃の固形のロジンエステルをエマルジョン化したロジンエステルエマルジョン(ハリマ化成(株)製『HARIESTER SK−385NS』、固形分:50%)を14重量部、酸化亜鉛を1重量部配合した。
この比較例1の配合では、アクリル系樹脂100重量部に対して、軟化点85℃のロジンエステルの配合量が100重量部、酸化亜鉛の配合量が14.2重量部となる。
比較例2においては、実施例2で使用したのと同じアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が−25℃のアクリル系樹脂エマルジョンを14重量部、軟化点100℃の固形のロジンエステルをエマルジョン化したロジンエステルエマルジョン(ハリマ化成(株)製『HARIESTER SK−370N』、固形分:50%)を14重量部、酸化亜鉛を1重量部配合した。
この比較例2の配合でも、アクリル系樹脂100重量部に対して、軟化点100℃のロジンエステルの配合量が100重量部、酸化亜鉛の配合量が14.2重量部となる。
比較例3においては、実施例2で使用したのと同じアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が−25℃のアクリル系樹脂エマルジョンを18重量部、バルサム状のロジンエステルエマルジョン(ハリマ化成(株)製『HARIESTER SK−501NS』、ロジンエステル含有量:50%)を10重量部、酸化亜鉛を1重量部配合した。即ち、比較例3では、実施例4よりも、アクリル系樹脂の配合量(重量部)を増やし、その分バルサム状ロジンエステルの配合量を減らした。それ以外は全て実施例2、実施例4、及び実施例5と同一の配合内容である。
この比較例3の配合では、アクリル系樹脂100重量部に対して、バルサム状ロジンエステルの配合量が55.6重量部、酸化亜鉛の配合量が11.1重量部となっており、実施例4よりもアクリル系樹脂に対するバルサム状ロジンエステルの配合量(重量部)が低くなっている。
比較例4においては、実施例2で使用したのと同じアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が−25℃のアクリル系樹脂エマルジョンを10重量部、バルサム状のロジンエステルエマルジョンを18重量部、酸化亜鉛を1重量部配合した。即ち、比較例4では、実施例5よりもアクリル系樹脂の配合量(重量部)を少なくし、その分バルサム状ロジンエステルの配合量(重量部)を増やした。それ以外は全て実施例2、実施例4、及び実施例5と同一の配合内容である。
この比較例4の配合では、アクリル系樹脂100重量部に対して、バルサム状ロジンエステルの配合量が180重量部、酸化亜鉛の配合量が20重量部となっており、実施例5と比較して、アクリル系樹脂に対するバルサム状ロジンエステルの配合量(重量部)が高くなっている。
比較例5においては、実施例2で使用したのと同じアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が−25℃のアクリル系樹脂エマルジョンを14重量部、バルサム状のロジンエステルエマルジョンを14重量部配合し、酸化亜鉛は配合しなかった。酸化亜鉛を配合しない以外は全て実施例2、実施例6、及び実施例7と同一の配合内容である。
この比較例5の配合では、アクリル系樹脂100重量部に対して、バルサム状ロジンエステルの配合量が100重量部となる。
比較例6においては、実施例2で使用したのと同じアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が−25℃のアクリル系樹脂エマルジョンを14重量部、バルサム状のロジンエステルエマルジョンを14重量部、酸化亜鉛を3重量部配合した。即ち、比較例6では、実施例7よりも酸化亜鉛の配合量(重量部)を増やした。それ以外は全て実施例2、実施例6、及び実施例7と同一の配合内容である。
この比較例6の配合では、アクリル系樹脂100重量部に対して、バルサム状ロジンエステルの配合量が100重量部、酸化亜鉛の配合量が42.8重量部となっており、実施例7と比較して、アクリル系樹脂に対する酸化亜鉛の配合量(重量部)が高くなっている。
各実施例及び各比較例の耐チッピング用水性塗料組成物は、表1に示した配合量(重量部)にしたがって、それぞれ配合材料を混合し、高速ディスパーを用いて脱泡攪拌することにより調製した。
そして、それぞれ調製した耐チッピング用水性塗料組成物を塗布し常温乾燥することによって形成された塗膜について、塗膜性能に関する耐チッピング性、伸び率、及び抗張力の特性評価試験を実施した。
塗膜の耐チッピング性の評価試験については、70mm×150mm×厚み0.8mmの電着塗板上に耐チッピング用水性塗料組成物を乾燥後の膜厚が350μmとなるように塗布し、常温で3日間乾燥させたものを試験板とし、この試験板に対し、試験機械としてSUGA社製のグラベロメータを用い、ショット材にチッピング用の石として6号砕石500gを用いて、20℃の雰囲気下において4kgf/cm2の空気圧で5回、試験板からの距離が55cmの位置にて吹き付けを行った。塗膜が剥離して電着塗板に至るまで傷が付いている(孔食が生じている)箇所の数(傷の数)を目視により確認し、傷の数が0〜5点であった場合は○と評価し、傷の数が6点以上あった場合を×と評価した。
伸び率及び抗張力の測定試験については、100mm×100mm×厚さ3〜5mmの鋼板上に離型紙をはり、その上に耐チッピング用水性塗料組成物を膜厚が2mmとなるように塗布し、常温で3日間乾燥させた後、3号ダンベル状打ち抜き型を用いて打ち抜いたものを試験片とした。この試験片に対し、中心の平行部分に20mmの標線を付けた後、20℃下にて、つかみ具の移動速度(引張速度)200mm/minで3号ダンベルを引張る引張試験を行い、破断した時の伸び率(チャック間距離に対する引張前のチャック間距離の比率(%))と単位断面積当たりの抗張力(引張り強さ(Mpa))を測定した。
なお、伸び率が大きいほど破断するまでの伸びが大きいといえる。
また、抗張力は、試験片が破断するときの最大荷重を測定して次式より算出したものである。
抗張力(Mpa=N/mm2)=最大荷重(N)/試験前の試験片の断面積(mm2
各特性試験の評価結果は、表1の下段に示した通りである。
表1の左欄に示されるように、実施例1乃至実施例7の耐チッピング用水性塗料組成物においては、伸び率が20%〜35%と高い値を示し、また、抗張力が0.7Mpa〜1.0MPaと高い値を示し、さらに、耐チッピング性評価試験についても合格の評価が得られた。
ここで、実施例1乃至実施例7の水性塗料組成物において、耐チッピング性の評価試験で用いた試験板上に形成された塗膜について、即ち、70mm×150mm×厚み0.8mmの電着塗板上に耐チッピング用水性塗料組成物を乾燥後の膜厚が350μmとなるように塗布し、常温で3日間乾燥させることによって電着塗板上に形成した塗膜について、その乾燥比重を測定したところ、0.92以下であった。即ち、実施例1乃至実施例7の水性塗料組成物によって形成された塗膜は、比重がとても小さいものであった。
これより、実施例1乃至実施例7の耐チッピング用水性塗料組成物においては、中空充填剤の配合によって塗膜の比重を小さくして軽量化しても良好な耐チッピング性を確保できることが確認され、また、常温乾燥であってもこのような良好な耐チッピング性を発揮する塗膜を形成できることが確認された。
これに対し、表1の右欄に示した、軟化点が85℃の固形ロジンエステルを配合した組成の比較例1及び軟化点が100℃の固形ロジンエステルを配合した組成の比較例2では、伸び率及び抗張力が実施例より小さく、耐チッピング性に劣る結果となった。
また、アクリル系樹脂100重量部に対して、バルサム状ロジンエステルの配合量が55.6重量部であり、アクリル系樹脂に対するバルサム状ロジンエステルの配合量(重量部)を少なく設定した組成の比較例3も、抗張力は実施例と同等の強度を有するが、伸び率が実施例より小さく、耐チッピング性に劣る結果となった。
同様に、アクリル系樹脂100重量部に対して、バルサム状ロジンエステルの配合量が180重量部であり、アクリル系樹脂に対するバルサム状ロジンエステルの配合量(重量部)を高く設定した組成の比較例4も、伸び率は実施例よりも大きくなるが抗張力が実施例よりなり、耐チッピング性に劣っていた。
さらに、酸化亜鉛を配合していない組成の比較例5は、伸び率は実施例より大きいが抗張力が実施例の半分以下と小さく、耐チッピング性に劣っていた。
また、アクリル系樹脂100重量部に対して酸化亜鉛の配合量が21.4重量部と、アクリル系樹脂に対する酸化亜鉛の配合量(重量部)を高く設定した組成の比較例6も、抗張力は実施例と同等の大きさを示したが、伸び率が実施例より小さく耐チッピング性に劣る結果となった。
以上の結果をまとまると、中空充填剤(バルーン)の配合により耐チッピング用水性塗料組成物中の水性樹脂エマルジョンの樹脂(本実施例ではアクリル系樹脂)の比率が減少しても、バルサム状ロジンエステルを含有していることで、塗膜の柔軟性が向上して伸び率が高まり、耐チッピング性の確保が容易となる。
ここで、水性樹脂エマルジョンの樹脂の種類(本実施例では5℃以下のガラス転移温度を有するアクリル系樹脂)によっては、成膜した塗膜の弾性が耐チッピング性を満足させるのに不十分である場合でも、架橋剤(本実施例では酸化亜鉛)を配合することで、抗張力が高まり塗膜の弾性が向上して、所望とする耐チッピング性を十分に確保することができる。つまり、塗膜の高い柔軟性及び高い弾性によって、飛石等による衝突エネルギーを吸収して傷が下地(被着体)まで至らないようにする耐チッピング性が発揮される。このことは、実施例と、比較例1、比較例2、比較例5との比較から確認できる。
このように、本実施例の耐チッピング用水性塗料組成物は、液状のバルサム状ロジンエステルを塗膜中に含有させることで、塗膜に柔軟性を与え耐チッピング性の確保を容易とする。
この際、水性樹脂エマルジョンの樹脂の種類(特性)によって所望とする耐チッピング性を確保するための塗膜の弾性が不十分である場合でも、酸化亜鉛等の架橋剤を配合することで、塗膜の抗張力を高めて所望とする耐チッピング性を十分に確保することができる。
そして、中空充填剤を所定量含有することで本実施例の耐チッピング用水性塗料組成物を被着体に塗布して常温乾燥後に形成される塗膜は、低比重でありながらも良好な耐チッピング性を有することとなる。
ところで、配合量に関し、アクリル系樹脂100重量部に対してバルサム状ロジンエステルを70重量部〜140重量部の範囲内で配合した実施例1乃至実施例7では、塗膜の伸び率及び抗張力が適度に大きく、良好な耐チッピング性を示した。
これに対し、アクリル系樹脂100重量部に対してバルサム状ロジンエステルの配合量が70重量部未満である比較例3では、塗膜の伸び率が不足していて耐チッピング性に劣っていた。一方、アクリル系樹脂100重量部に対して、バルサム状ロジンエステルの配合量が140重量部を超える比較例4では、抗張力が小さくなり、耐チッピング性に劣っていた。
ここで、バルサム状ロジンエステルは粘着性を有した液状の性状を示す。このことから、塗膜中ではアクリル系樹脂とバルサム状ロジンエステルとが、所謂、海島構造を成して付着しているものと推定できる。したがって、本発明のバルサム状ロジンエステルの効果はアクリル系樹脂に限定されず、各種樹脂に対しても同じ効果が発現されるものといえる。
よって、水性樹脂エマルジョン樹脂としての樹脂100重量部に対してバルサム状ロジンエステルの配合量が70重量部〜140重量部の範囲内であれば、本実施の形態と同様の良好な耐チッピング性を確保することができる。
また、架橋剤に関し、5℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する軟質のアクリル系樹脂100重量部に対して酸化亜鉛を7重量部〜22重量部の範囲内で配合した実施例1乃至実施例7では、塗膜の伸び率及び抗張力が適度に大きく、良好な耐チッピング性を示した。
これに対し、酸化亜鉛が配合されていない比較例5や、酸化亜鉛の配合量が22重量部を超えた比較例6では、塗膜の伸び率が小さくなり耐チッピング性に劣っていた。
よって、5℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する軟質のアクリル系樹脂100重量部に対して架橋剤としての酸化亜鉛の配合量が7重量部〜22重量部の範囲内であれば、確実に塗膜の良好な耐チッピング性を確保することができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る実施例1乃至実施例7の耐チッピング用水性塗料組成物は、水性樹脂エマルジョンとしてのアクリル系樹脂エマルジョン、ロジンエステルの中でも液状のバルサム状ロジンエステル、及び中空充填剤としてのガラスバルーンを含有するものである。さらに、アクリル系樹脂エマルジョンが5℃以下のガラス転移温度を有するアクリル樹脂であることから、架橋剤としての酸化亜鉛を配合したものである。
したがって、本実施例の耐チッピング用水性塗料組成物によれば、中空充填剤としてのガラスバルーンの配合により、形成される塗膜は低比重なものであるうえ、塗膜中のバルサム状ロジンエステルよって塗膜の伸び(柔軟性)が向上する。さらに、塗膜の弾性の確保が難しい樹脂の使用、即ち、5℃以下のガラス転移温度を有する軟質のアクリル樹脂の使用であっても、架橋剤としての酸化亜鉛を配合することによって塗膜の抗張力(弾性)を向上させている。この架橋剤の配合により、成膜性に優れる5℃以下のガラス転移温度を有するアクリル樹脂の使用であっても、塗膜の強靭性が増して良好な耐チッピング性を確保することができる。勿論、水性樹脂エマルジョンの樹脂の種類(特性)によって使用される架橋剤は異なり、水性樹脂エマルジョンの樹脂によって得られる塗膜の抗張力(弾性)が耐チッピング性の確保に十分であるときには、架橋剤は不要である。
このように、本実施例の耐チッピング用水性塗料組成物によれば、良好な耐チッピング性を有し、軽量化した塗膜が得られる。
以上説明してきたように、本発明の耐チッピング用水性塗料組成物によれば、中空充填剤を適量含有させることで低比重化を実現させ、中空充填剤を含有することによる水性樹脂エマルジョンの樹脂量の低下に伴う耐チッピング性の低下に対し、バルサム状ロジンエステルを塗膜中に含有させることで塗膜の伸び(柔軟性)を改良し、これによって、耐チッピング性の確保を行う。
この際、水性樹脂エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対して、バルサム状ロジンエステルの配合量を70重量部〜140重量部の範囲内とすることで、耐チッピング性確保に適した塗膜の伸び(柔軟性)とすることができる。
また、水性樹脂エマルジョンの樹脂の種類(特性)によって得られる塗膜の弾性が所望とする耐チッピング性の確保に不十分である場合には、架橋剤を配合することで、塗膜の抗張力(弾性)を向上させて、十分な耐チッピング性の確保が可能となる。このときの架橋剤としては、水性樹脂エマルジョンの樹脂と反応するものが使用できる。上記実施例では、アクリル系樹脂と架橋性能が良い2価の陽イオンからなる酸化亜鉛を使用し、その配合量が、アクリル系樹脂100重量部に対し、7重量部〜22重量部の範囲内と少ない配合量でも、塗膜の抗張力(弾性)を効果的に向上させている。
なお、本発明を実施するに際しては、耐チッピング用水性塗料組成物のその他の部分の構成、組成、配合、成分、形状、数量、材質、大きさ、製造方法等について、本実施の形態及び実施例に限定されるものではない。また、本実施の形態及び実施例で挙げている数値は、臨界値を示すものではなく、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。

Claims (2)

  1. 少なくとも水性樹脂エマルジョン、バルサム状ロジンエステル、中空充填剤及び架橋剤を含有し、
    前記バルサム状ロジンエステルが、前記水性樹脂エマルジョンの樹脂100重量部に対して、70重量部〜140重量部の範囲内で配合され、
    前記架橋剤が、前記水性樹脂エマルジョン100重量部に対して、7重量部〜22重量部の範囲内で配合されたことを特徴とする耐チッピング用水性塗料組成物。
  2. 前記水性樹脂エマルジョンの樹脂が、−50℃〜5℃の範囲内にガラス転移温度(Tg)を有するアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の耐チッピング用水性塗料組成物。
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